(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
管状帯内の中立浮力粒子の流れは、流体粘性、平均チャネル速度、粒子半径、流体密度、チャネルの水力直径、角速度、および粒子間の差速の関数として調整可能である、請求項3に記載の方法。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ここに記載した実施形態の一態様では、システムは、中立浮力粒子を含む流体の少なくとも一部分を受け取る入口と、中立浮力粒子がチャネルの中心からずれた管状帯で流れるように流体が流れる渦巻き状チャネルと、管状帯が流れる流体のための第1の出口と、残りの流体または汚水のための第2の出口とを有する。
【0011】
ここに記載した実施形態の別の態様では、入口は、壁摩擦が衝突流を付着させるのを支援するコアンダ効果(Coanda effect)を使用して、管状帯が渦巻き状チャネルの内壁に沿って早期に形成され易くするように傾けられる。
【0012】
ここに記載した実施形態の別の態様では、システムは、更に、渦巻き状チャネルと入れ子にされた(nest)第2の渦巻き状チャネルを有し、第2の渦巻き状チャネルを流れる結果として管状帯が狭くなる。
【0013】
ここに記載した実施形態の別の態様では、システムは、更に、渦巻き状チャネルの第2の出口に接続され、残りの流体を受け取る第2の入口と、残りの中立浮力粒子が第2のチャネルの中心からずれた第2の管状帯で流れるように残りの流体が流れる第2の渦巻き状チャネルと、第2の管状帯が流れる流体のための第3の出口と、更に残りの流体のための第4の出口とを有する。
【0014】
ここに記載した実施形態の別の態様では、残りの中立浮力粒子が、第1の出口から放出される中立浮力粒子と異なるサイズのものである。
【0015】
ここに記載した実施形態の別の態様では、システムは、更に、流体の少なくとも別の部分が流れる第2の渦巻き状チャネルを有する。
【0016】
ここに記載した実施形態の別の態様では、システムは、更に、第1の出口と入口の間に再循環チャネルを有する。
【0017】
ここに記載した実施形態の別の態様では、管状帯は、流体粘性、平均チャネル速度、粒子半径、流体密度、チャネルの水力直径、角速度、および粒子間の差速のうちの少なくとも1つの関数として形成される。
【0018】
ここに記載した実施形態の別の態様では、管状帯は、渦巻き状チャネルの曲率半径の関数としてチャネルの中心からずらされる。
【0019】
ここに記載した実施形態の別の態様では、渦巻き状チャネルは、渦巻き形構造である。
【0020】
ここに記載した実施形態の別の態様では、渦巻き状チャネルは、螺旋状渦巻き構造である。
【0021】
ここに記載した実施形態の別の態様において、方法は、中立浮力粒子を含む流体の少なくとも一部分を入口に受け取る段階と、中立浮力粒子が渦巻き状チャネル内を非対称的に管状帯で流れるように渦巻き状チャネル内に流体の流れを確立する段階と、管状帯がチャネルの第1の出口を流れる流体を放出する段階と、渦巻き状チャネルの第2の出口から残りの流体を出力する段階とを含む。
【0022】
ここに記載した実施形態の別の態様では、流体は、渦巻き状チャネルの内壁に沿って管状帯を形成し易いように斜めに(ある角度を持って)受け取られる。
【0023】
ここに記載した実施形態の別の態様では、方法は、更に、管状帯を狭くするために渦巻き状チャネルと入れ子にされた第2の渦巻き状チャネルを通る流体の第2の流れを確立する段階を含む。
【0024】
ここに記載した実施形態の別の態様では、方法は、更に、第1の渦巻き状チャネルとカスケード接続された(cascaded)第2の渦巻き状チャネル内に残りの流体の流れを確立して、第1の出口から放出される中立浮力粒子と異なるサイズの中立浮力粒子を分離する段階を含む。
【0025】
ここに記載した実施形態の別の態様では、方法は、更に、第2の渦巻き状チャネル内に流体の少なくとも別の部分の流れを確立する段階を含む。
【0026】
ここに記載した実施形態の別の態様では、方法は、システム内で第1の出口から放出される流体の少なくとも一部分を再循環させる段階を含む。
【0027】
ここに記載した実施形態の別の態様では、管状帯の中立浮力粒子の流れは、流体粘性、平均チャネル速度、粒子半径、流体密度、チャネルの水力直径、角速度、および粒子間の差速の関数として調整可能である。
【0028】
ここに記載した実施形態の別の態様では、管状帯の流れの非対称性は、渦巻き状チャネルの曲率半径の関数である。
【0029】
ここに記載した実施形態は、渦巻き状装置の湾曲チャネルを使用して、流体(例えば、水)中に流れる中立浮力粒子(例えば、水、または粒子が中にある流体と実質的に同じ密度を有する粒子)に遠心力を導入して、そのような粒子が流体から容易に分離されるように改善する。そのような中立浮力粒子がチャネル内に流れるとき、管状ピンチ効果(tubular pinch effect)によって、粒子は管状帯(tubular band)で流れる。導入された遠心力によって管状帯が乱れ(例えば、管状帯が強制的にチャネルの中心からずれて流される)、その結果、帯の慣性的移動がチャネルの内壁の方に非対称になる。この力平衡によって、懸濁粒子を抽出用の細い帯に収束させ圧縮することができる。本明細書で考察する分離原理は、遠心力と流体力を平衡させて内壁の近くで非対称的な慣性平衡状態を達成する。また、内壁に入る流れを斜めに衝突させることにより、壁摩擦を使用して衝突流を付着させるコアンダ効果のためにより初期の帯形成が可能になる。
【0030】
ここに記載した実施形態は、連続的な流れと高処理量の操作を可能にするメンブレンを使用しないろ過技術に関する。機能原理は、主に、湾曲チャネル構造内の純粋な流体的な流れに依存し、フィルタ界面または外部力場を必要としない。平衡した横方向の力成分は、設計サイズのカットオフによって粒子流を集中させ分流する。この渦巻き流のろ過の概念は、生物学的試薬を含む微粒子のサイズおよび質量ベースの分離に対応することができる。設計の単純さのために、この装置は、他の下流処理と直列統合するように修正するように修正可能であり、また独立した高処理量の大規模用途あるいは極小規模のラボ・オン・チップ用途として働くように修正することができる。
【0031】
図1を参照すると、粒子12が内部を流れる湾曲チャネル10(例えば、渦巻きの湾曲部分)が示されている。様々な力によって作り出されるチャネル内の非対称的な管状ピンチ効果が示されている。そのような力には、内壁からの揚力F
w、サフマン力(Saffman force)F
s、マグヌス力(Magnus force)F
m、および遠心力F
cfがある。遠心力F
cfが、チャネルの曲率半径の関数として生成されることを理解されたい。この点に関して、この付加的な遠心力F
cfは、通常の管状ピンチ効果の対称性を乱す遅い二次的な流れまたはディーン渦流(Dean vortex)(点線の矢印で示した)を引き起こす。粒子は、速度コンター(velocity contour)の内側平衡内に集中される(点線の楕円で示した)。
【0032】
より具体的には、直線チャネル内の流体せん断は、粒子の慣性移動を引き起こす横方向の力を生成することが知られている。(G. SegreおよびA. Silberberg, 「Nature」, v.189, p.209 (1961)、G. SegreおよびA.Silberberg, 「J. Fluid Mech.」, v.14, p.136 (1962)、D. LeightonおよびA. Acrivos, 「Z. angew. Math. Phys.」, v.36 p.174 (1985)、P. CherukatおよびJ. B. McLaughlin, 「J. Fluid Mech.」, v.263, p.1 (1994)、P. G. Saffman, 「J. Fluid Mech.」, v.22, p.385 (1965)、S. l. RubinowおよびJ. B. Keller, 「J. Fluid Mech.」, v.11, p.447 (1961)、B. P. HoおよびL. G. Leal, 「J. Fluid Mech.」, v.65, p.365 (1974)、P. VasseurおよびR. G. Cox, 「J. Fluid Mech.」, v.78, p.385 (1976)、J. Feng, H. H. HuおよびD. D. Joseph, 「J. Fluid Mech.」, v.277, p.271 (1994)、E. Ashmolov, 「J. Fluid Mech.」, v.381, p.63 (1999)、E. Ashmolov, 「Phys. Fluids」, v.14, p.15 (2002)、J.-P. Matas、J. F. MorrisおよびE. Guazzelli, 「J. Fluid Mech.」, v.515, p.171 (2004)、B. H. Yang、J. Wang、D. D. Joseph、H. H. Hu、T. -W. PanおよびR. Glowinski, 「J. Fluid Mech.」, v.540, p.109 (2005)、E. E. Michaelides, 「J. Fluids Eng.」, v.125, p.209, (2003)、P. CherukatおよびJ. B. McLaughlin, 「Int. J. Multiphase Flow」, v.16, p.899 (1990)、P. Cherukat、J. B. McLaughlinおよびA. L. Graham, 「Int. J. Multiphase Flow」, v.20, p.339 (1994)。)
【0033】
G. SegreおよびA. Silberberg, 「Nature」, v.189, p.209 (1961)と、G. SegreおよびA.Silberberg, 「J. Fluid Mech」, v.14, p.136 (1962)は、中立浮力粒子が幅0.6Dの対称的な帯を構成するように移動する管状ピンチ効果を実験的に実証した。ここで、Dはチャネル径である。二次ポアズイユ流(quadratic Poiseuille flow)では、剛体球の横方向移動が3つの寄与で説明された。壁揚力F
wは、潤滑により壁から粒子を跳ね返す働きをする。(D. LeightonおよびA. Acrivos「Z. angew. Math. Phys.」v.36 p.174 (1985)、P. CherukatおよびJ. B. McLaughlin, 「J. Fluid Mech.」, v.263, p.1 (1994)。)第2の寄与は、次の剪断摺動による壁の方へのサフマン慣性揚力(Saffman inertial lift)F
sである。
【0034】
(1)F
s=6.46ηVaR
e1/2
【0035】
ここで、η、V、a、およびR
eはそれぞれ、流体粘性、平均チャネル速度、粒子半径、および次の式で与えられるチャネルレイノルズ数である。
【0036】
(2)R
e=ρVD/η
【0037】
ここで、ρとDは、チャネル(10,14)の流体密度と水力直径である。第3は、壁の方への粒子回転によるマグヌス力F
mである。
【0038】
【数1】
【0039】
ここで、Ω
rは、ΔV/rによって与えられる角速度であり、ΔVは、粒子間の差速である。(S. I. RubinowおよびJ. B. Keller, 「J. Fluid Mech.」, v.11, p.447 (1961)。)F
wは、壁の近くで支配的であり、F
sとF
mの複合効果との平衡状態を達成して帯内に粒子を閉じ込める。G. SegreおよびA. Silberberg, 「J. Fluid Mech.」, v.14, p.136 (1962)は、この管状ピンチ効果の大きさを単純な形で調整するために小さい長さパラメータを開発した。
【0040】
(4)L=(ρVI/η)(a/d)
3
【0041】
ここで、Iは実際のチャネル長、dは水力チャネル半径である。湾曲したチャネル形状では、遠心力F
cfによって対称的管状ピンチ効果が修正される。この力による流体慣性は、
図1に点線矢印で示したような二重再循環である二次的横方向流れまたはディーン渦流を発生させる。(P. CherukatおよびJ. B. McLaughlin, 「Int.J.Multiphase Flow」, v.16, p.899 (1990)、P.Cherukat、 J. B. McLaughlinおよびA. L. Graham, 「Int. J. Multiphase Flow」, v.20, p.339 (1994)、S. A. Berger、L. TalbotおよびL. -S. Yao, 「Ann. Rev. Fluid Mech.」, v.15, p.461 (1983)、Yu. P. Gupalo、Yu. V. MartynovおよびYu. S. Ryazantsev, 「Fluid Dyn.」, 12, 109 (1977)。)ディーン数は、次のように、この再循環強度の尺度である。
【0042】
(5)D
e=2(d/R)
1/2R
e
【0043】
ここで、Rは、チャネルの曲率半径である(S. A. Berger、L. TalbotおよびL. -S. Yao, 「Ann. Rev. Fluid Mech.」, v.15, p.461 (1983))。中間高さの粒子は、ディーン渦流により横方向外方に移動し、壁揚力によってはね返され、上壁と下壁に沿って循環し続けて内壁の方に戻る。サフマン力とマグヌス力の組み合わせは、ディーン渦流の粘性抵抗よりも大きく、従って、粒子は、内壁のすぐ近くの最小の力で閉じ込められる。
【0044】
従って、意図された管状帯は、流体粘性、平均チャネル速度、粒子半径、流体密度、チャネルの水力直径、角速度、および粒子間の差速のうちの少なくとも1つの関数として形成されることは明らかである。更に、前述のように、管状帯は、渦巻き状チャネルの曲率半径の関数としてチャネルの中心からずらされる。従って、システムの構成と動作は、例えば式4によって示された因子の関数である。これらの因子またはパラメータは、極めて適応性が高く、微小規模の装置から大規模な装置までの範囲で用途により変化するであろう。本明細書で例を提供するが、他の実施態様が意図される。
【0045】
本明細書で述べる方法の実施により、汚水流から特定のサイズの粒子を分離するように粒子を渦巻き状チャネル内で分離し放出することができるシステムが得られる。例えば、
図2を参照すると、そのような粒子抽出のクールター計数定量化(Coulter counter quantification)が示されている。流速92mm/sでは、
図2(b)に示したような微粒子帯20内の抽出粒子の集中度は、渦巻き状チャネル24によって放出される汚水22の集中度の300倍である。実験的には、これは、ここに記載した実施形態を使用する粒子除去の効率の99.1%に達する。
【0046】
ここに記載した実施形態の他の利点には、次のものがある。
【0047】
1)流体パラメータと寸法パラメータを調整することによって、サンプル、体積、水力滞留時間、ろ過速度、カットオフ粒子サイズおよび濃縮係数などのろ過能力を調整することができる。
2)サイズで分離するように拡張するには、流れパラメータを単調な範囲の粒子サイズに調整し、渦巻き状チャネルに沿って連続的に捕捉チャネルを提供するだけでよい。
3)粒子サイズ範囲カットオフが小さくなるようにそれぞれ適合された、いくつかの渦巻き構造をカスケード接続することができる。
4)この装置を他の下流プロセスと直列統合し且つ独立用途として働くように単純に修正できる設計。
5)ろ過能力の動的粒子サイズ範囲が大きいため、高処理量の大規模用途と極小細規模のラボ・オン・チップ用途の両方に適する。
6)処理量を高めるためにモジュールユニットの並列化を実現できる。
7)このメンブレンを使用しない装置は、高処理量と低コストの望ましい組み合わせを有し、本質的に大規模用途から小規模用途での予備的ろ過に適する。
8)メンブレンを使用せずに中立浮力粒子を迅速に流体分離するための渦巻き構造のための設計技術が提供される。
9)帯を両側から首尾良く圧縮するために二重入れ子渦巻き状チャネルを実施することができる。
10)短い長さの方式に基づいて極めて拡大可能性の高い実装が実現される。
11)従来の水処理の凝集および沈殿段階をなくすことができる。
12)意図された構造は、IC製造の再生材料、冷却塔水、MBR(膜バイオリアクタ)、RO(逆浸透)の前処理を含む他の水用途に使用することができる。
【0048】
これらの利点を様々な異なる実施形態で達成できることを理解されたい。これらの実施形態は、チャンネル設計と操作パラメータにより制御可能かつ/または設定可能な前述のパラメータの関数として変化するであろう。それにもかかわらず、示したシステムは、一般に、中立浮力粒子を含む流体の少なくとも一部分を受け取る入口と、中立浮力粒子が渦巻き状チャネルの中心からずれた管状帯で流れるように流体が流れる渦巻き状チャネルと、管状帯が中に流れる流体のための第1の出口と、残りの流体のための第2の出口とを有する。従って、動作において、この方法は、中立浮力粒子を含む流体の少なくとも一部分を入口で受け取る段階と、中立浮力粒子が渦巻き状チャネル内を非対称的に管状帯で流れるように渦巻き状チャネル内の流体の流れを確立する段階と、管状帯がチャネルの第1の出口を通って流れ、流体を放出する段階と、残りの流体を渦巻き状チャネルの第2の出口から放出する段階とを含む。
【0049】
この点に関して、
図3(a)は、ここに記載した実施形態に従って実施することができる渦巻き構造30を示す。この構造30は、第1の渦巻き状チャネルが第2の渦巻き状チャネルと入れ子にされた二重入れ子構造である。即ち、入口32は、構造30の中心に向かって渦巻きになり、次に方向の変化以外に中断なしに構造30の外周に渦巻きになって戻る渦巻き状チャネルに接続される。従って、第1の出口部分36と第2の出口部分38を有する出口34が、構造30の中心と対照的に外周に配置される。
【0050】
また、渦巻き状チャネルの内壁に沿って管状帯をより迅速に形成し易くするために、入口は、流体を系に角度付きまたは勾配付きで入れてもよいことを理解されたい。この結果、壁摩擦を使用して衝突流を付着させるコアンダ効果が生じる。
図8を参照すると、チャネル10は、入口流が内壁の方に角度θだけ傾けられた入口11を有する。これにより、管状帯18は、出口14から外に出るためにより速く形成される。当然ながら、管状帯18が流れていない残りの流体の第2の出口16も示されている。任意の適切な機構または技術を使用して入口角度を実現できることを理解されたい。
【0051】
次にここに記載した実施形態による
図3(a)に戻って参照すると、渦巻き状チャネル形状を横切る顕著な横方向の力は、入口32における粒子の比較的均一な分布を出口34における整然とした帯に変換する。渦巻き状の循環後、粒子は、内側の出口36に収集され、汚水(水)は、外側の出口38に収集される。
【0052】
流体経路に沿った連続的な画像を示す。これらの画像は、比較のためにその流れ方向と一致するように回転され鏡像化されている。下側は、渦巻きの中心の方に向いてる。流体は、左から右または下から上に平均流体速度92mm/sで流れる。図示したように、分散した粒状浮遊物は、平均移送速度92mm/sで入口(P#1)(
図3(b))に導入された。2つの渦巻きの後(P#2)(
図3(c))、内壁(下側境界)に最も近い粒子は、チャネル中心から0.6wに集中し始めた(wは、チャネル幅の半分である)。12回廻った後の遷移点(P#3)(
図3(d))で、粒子濃度は、内側に鋭いエッジと外側により拡散したエッジを有する帯を示す。これ(P#3)(
図3(d))が、流れを時計回り方向から反時計回り方向に変化させる遷移点であることに注意されたい。この遷移は、粒子の帯の圧縮に有益な効果がある。遷移点の後、帯の鋭いエッジは外側に切り替わり、持続的な横方向の力は、ブラウン運動と拡散の分散効果を緩和する働きをする。一方、帯の拡散的な外側のエッジは、内側に切り替わり、このとき、遠心力と揚力によって引き起こされる効果の圧縮効果を受ける。その結果、(P#4)(
図3(e))に観察されるような鋭いエッジが生じる。粒子の集中された帯は内側出口(P#5、L=34.2)(
図3(f))に分流され、汚水流は外側出口に送られる。SegreとSilberbergは、1桁の濃度差には小さい長さパラメータがL>9でなければならないことを示した。(G. SegreとA. Silberberg, 「J. Fluid Mech.」, c.14, p.136 (1962)。)収集されたサンプル間の濃度差は、約2桁の大きさであることが期待される。得られる帯は、幅が0.2Dより小さく、更に圧縮される可能性がある。
【0053】
ろ過後に収集されたサンプルの粒子計数により、前の観察による結果が確認された。サンプルが異なる流量でろ過された後、収集されたサンプルは、クールター計数(Z2(商標) COULTER COUNTER(登録商標), Beckman Coulter, CA, USA)で50倍に希釈された。外側出口からの粒子の濃度は、流速が大きくなるほど低下した。前述のように、ろ過効率は、(粒子速度)の関数である対応する長さLに依存する。流速が速くなると、ろ過効率(粒子捕捉効率)が23mm/sで64.7%から92mm/sで99.1%まで改善された。粒子の濃度と汚水出口(effluent outlet)の分離係数または分離比は300倍を超え、更に最適化することができる。渦巻き形状の重要な効果は、非対称的な管状ピンチ効果によって粒子を強制的に狭い帯にすることである。この入れ子二重渦巻き(
図3(a))は、帯のそれぞれの側を連続的に圧縮して、管状ピンチ効果だけによって予測されるものより鋭くかつ狭い帯になるようにする働きをする。
【0054】
別の実施形態において、
図4は、ここに記載した実施形態による渦巻き状分離装置を浄化システム400内に実現する様子を示す。図示したように、このシステムは、スクリーン402、瞬間混合器(flash mixer)405、および還元凝集タンク404を有する。ここに記載した実施形態による渦巻き状装置408は、入口410ならびに第1の出口412と第2の出口414を有する。また、システム400内には、入口410と凝集タンク404の間に配置された再循環チャネルまたは経路416が示されている。
【0055】
動作において、中立浮力粒子を含む流体は、システムに受け取られ、最初にスクリーン402によってろ過される。次に、ろ過された水は、入口410から渦巻き状装置408に導入される前に瞬間混合(405)される。流体が渦巻き状装置408内を流れるとき、中立浮力粒子の管状帯がチャネルの中心に対して非対称的に流れるように維持される。この非対称性により、管状帯が流れる流体(出口412から放出される)と、残りの流体(出口414から放出される)を都合よく分離することができる。濃度の高い流れは、必要に応じて、例えば出口412から還元凝集タンクに再循環されて水回収が高められる。
【0056】
次に
図5を参照すると、ここに記載した実施形態の更に他の実施形態が示されている。この実施形態では、浄化システム500は、異なるサイズの粒子を分離するために2段階渦巻き状分離システムを含む。示した例示的システムでは、1〜10マイクロメートルの範囲の粒子が分離される。図示したように、システムは、入口506ならびに第1の出口508と第2の出口510を有する渦巻き状分離器504に接続する入力水源502を有する。第2の出口510は、入口522を介して第2の渦巻き状分離器520に接続される。渦巻き状分離器520は、図示したように第1の出口524と第2の出口526を有する。
【0057】
動作において、カスケード接続された渦巻き段を有するシステム500は、廃水流において第1の渦巻き状分離器から放出される10マイクロメートルを超える粒子と、更なる処理のために第2の渦巻き状分離器520に入れられる10マイクロメートル未満の粒子の間の第1の粒子分離を容易にする。次に、第2の渦巻き状分離器は、1マイクロメートルを超える粒子を分離し、粒子が存在する流体を出口524から放出する。残りの流体または汚水は、出口526から放出される。このように、システム500は、様々なサンプリング処理のために1〜10マイクロメートルの粒子を分離することができる。この概念は、小さい粒子サイズ範囲を有する粒子の分別を実現するために、より小さいサイズのカットオフを有する渦巻き構造を連続的にカスケード接続することにより拡張することができる。
【0058】
次に、
図6(a)と
図6(b)を参照すると、更に他の実施形態が示されている。
図6では、ここに記載した実施形態による渦巻き状装置600が示されている。この実施形態では、渦巻き状装置600は、螺旋渦巻き形状をとる。この点に関して、装置604の渦巻き状本体部分は、入口606、第1の出口608および第2の出口610を有する螺旋状渦巻きである。
図6(b)に示したように、システムの処理量を高めるために
図6(a)に示したような渦巻き状装置を並列構成で配置することができる。図示したように、渦巻き状装置600はすべて、流体マニホールドからの入力主管620に接続され、装置600のそれぞれの第1の出口は、第1の出口主管622に接続される。装置600の第2の出口は、第2の出口主管624に接続される。
【0059】
図7(a)と
図7(b)を参照すると、類似のシステムが示されている。しかしながら、
図7(a)の実施形態は、渦巻き形装置である渦巻き状装置700を示す。この装置700は、入口706、第1の出口708および第2の出口710を有する渦巻き形本体704を有する。
図6(a)と
図6(b)に示した実施形態と同じように、
図7(b)に示した装置700は、複数の装置700が流体マニホールドから水入口主管720に並列接続されたシステムで配置されてもよい。同様に、装置の第1の出口ラインは、第1の出口主管722に接続される。装置700の第2の出口ラインは、第2の出口主管724に接続される。
【0060】
本明細書において意図された渦巻き状装置は、そのような装置が、流体内の中立浮力粒子を有利に処理するように構成され、寸法決めされ、操作されるという条件で、2006年11月30日に出願された「Particle Separation and Concentration System」と題する同時係属の同一出願人による米国出願番号11/606,460号(本出願は、参照によって全体が本明細書に組み込まれる)と関連して説明された任意の渦巻き状装置の形を含む様々な形を取ることができることを理解されたい。当然ながら、そのような装置には、ここに記載した実施形態に適応するように適切な修正が行なわれる。更に、本明細書に記載されまたは意図された、どの渦巻き状装置も、
図5に示したようなカスケード接続で配置されてもよく、また
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)および
図7(b)に示したように並列に配置されもよいことを理解されたい。更に、本明細書に示した渦巻き状装置を構成するために任意の適切な材料を使用することができる。