(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
緯糸(2)が挿通される案内孔(4)を先端部に有する緯糸案内レバー(3)を含む緯糸案内機構(5)であって、織布(6)に連なる緯糸(2)をレピアヘッド(7)による捕捉が可能な位置へ案内する緯糸案内機構(5)を有する緯入れ装置(1)を備えたレピア織機による緯入れ方法であって、
前記緯糸案内機構(5)は、前記緯糸案内レバー(3)としての第1の案内レバー(31)と、該第1の案内レバー(31)よりも反織前側に設けられて前記第1の案内レバー(31)との協働でレピアヘッド(7)による捕捉が可能な位置へ緯糸(2)を案内する第2の案内レバー(32)を含み、前記第1の案内レバー(31)が、経糸方向に関して織前(8)の近傍に設定された退避位置としての第1の位置(P1)と緯入れ方向に関して前記第1の位置(P1)と同じ位置で経糸方向に関してレピアヘッド(7)の走行経路上に設定された案内位置としての第2の位置(P2)とに前記案内孔(4)を選択的に位置させるように往復運動可能に構成されると共に、前記第2の案内レバー(32)が、退避位置としての第3の位置(P3)と緯入れ開始時の位置である案内位置としての第4の位置(P4)との間で往復運動可能に構成されており、
緯入れ開始に先立ち、前記第1の案内レバー(31)を前記案内孔(4)が前記第2の位置(P2)に位置するように移動させて緯糸(2)をレピアヘッド(7)の走行経路側へ移動させると共に、前記第2の案内レバー(32)を前記第3の位置(P3)から前記第4の位置(P4)へ向けて移動させることにより、前記第2の位置(P2)に位置する前記案内孔(4)で案内されている緯糸(2)と係合して緯糸(2)をレピアヘッド(7)による捕捉可能な位置へもたらし、
筬(12)による筬打ちが行われる前であってレピアヘッド(7)が経糸(9)の開口(10)から抜け出た時点以降に、前記案内孔(4)が前記第1の位置(P1)へ向けて移動を開始するように前記第1の案内レバー(31)を駆動し、
その前記第1の案内レバー(31)の駆動時における動作態様を、筬(12)と前記案内孔(4)との経糸方向における相対位置関係を製織許容範囲に収めるように設定する
ことを特徴とするレピア織機の緯入れ方法。
緯入れ開始時において前記第4の位置(P4)で緯糸(2)を案内する前記第2の案内レバー(32)を、レピアヘッド(7)による緯糸(2)の捕捉が行われた時点以降に前記退避位置としての第3の位置(P3)側へ移動させる、ことを特徴とする請求項1記載のレピア織機の緯入れ方法。
緯糸(2)が挿通される案内孔(4)を先端部に有する緯糸案内レバー(3)と、該緯糸案内レバー(3)を駆動するための駆動機構(11)とを含み、織布(6)に連なる緯糸(2)をレピアヘッド(7)による捕捉が可能な位置へ案内する緯糸案内機構(5)を有するレピア織機の緯入れ装置(1)であって、
前記緯糸案内機構(5)は、前記緯糸案内レバー(3)としての第1の案内レバー(31)と、該第1の案内レバー(31)よりも反織前側に設けられて前記第1の案内レバー(31)との協働でレピアヘッド(7)による捕捉が可能な位置へ緯糸(2)を案内する第2の案内レバー(32)と、経糸方向に関して織前(8)の近傍に設定された退避位置としての第1の位置(P1)と緯入れ方向に関して前記第1の位置(P1)と同じ位置で経糸方向に関してレピアヘッド(7)の走行経路上に設定された案内位置としての第2の位置(P2)とに前記案内孔(4)を選択的に位置させるように前記第1の案内レバー(31)を往復駆動する前記駆動機構(11)としての第1の駆動機構と、退避位置としての第3の位置(P3)と緯入れ開始時の位置である案内位置としての第4の位置(P4)との間で前記第2の案内レバー(32)を往復駆動する第2の駆動機構(52)とを含み、
前記第1の駆動機構(11)は、緯入れ開始に先立ち、前記案内孔(4)が前記第2の位置(P2)へ位置するように前記第1の緯糸案内レバー(31)を駆動し、
前記第2の駆動機構(52)は、前記第2の位置(P2)に位置する前記案内孔(4)で案内されている緯糸(2)をレピアヘッド(7)による捕捉可能な位置へもたらすべく、前記第2の案内レバー(32)を前記第3の位置(P3)から前記第4の位置(P4)へ向けて移動させて前記第2の案内レバー(32)を緯糸(2)と係合させ、
前記第1の駆動機構(11)は、筬(12)による筬打ちが行われる前であってレピアヘッド(7)が経糸(9)の開口(10)から抜け出た時点以降に、前記第2の位置(P2)に位置する前記案内孔(4)が前記第1の位置(P1)へ向けて移動を開始するように前記第1の案内レバー(31)を駆動し、
更に、前記第1の駆動機構(11)は、筬(12)と前記案内孔(4)との経糸方向における相対位置関係を製織許容範囲に収めるように設定された動作態様で前記第1の案内レバー(31)を駆動する
ことを特徴とするレピア織機の緯入れ装置(1)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の課題は、レピア織機において、選択された緯糸をレピアヘッドによる把持が可能な位置へもたらす緯糸案内部材と筬との位置関係に起因して生じる緯糸の屈曲や緯糸と筬等との摺動を可及的に少なくし、屈曲や摺動による緯糸の損傷を防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題のもとに、本発明は、緯入れ装置を備えたレピア織機において、緯糸案内部材としての緯糸案内レバーの先端部の案内孔に緯糸を挿通して、織布に連なる緯糸をレピアヘッドによる捕捉が可能な位置へ案内するために、織前側に設定された退避位置としての第1の位置とレピアヘッドの走行経路側に設定された案内位置としての第2の位置との間で、前記緯糸案内レバーを往復運動可能に構成し、緯入れ開始に先立ち、前記緯糸案内レバーの前記案内孔を前記第2の位置に移動させることによって緯糸がレピアヘッドによる捕捉可能位置で案内されるようにし、レピアヘッドによる緯糸捕捉後の筬打ちが行われる前に、前記緯糸案内レバーを筬の前進運動の方向に駆動し、前記案内孔を前記第1の位置へ向けて移動させて、前記緯糸案内レバーと筬との位置関係に起因して生じる緯糸の屈曲や緯糸と筬等との摺動を可及的に少なくし、緯糸の屈曲や摺動による緯糸の損傷を防止するようにしている。なお、本発明で言う「筬打ち」とは、織前へ向けての筬の前進運動では無く、緯糸を織前に打ちつける動作を意図した表現である。これに対して、「筬打ち動作」とは、緯糸を織前へ向けて運ぶための筬の前進運動を言う。
【0010】
更に具体的に記載すると、本発明に係るレピア織機の緯入れ方法は、緯糸(2)が挿通される案内孔(4)を先端部に有する緯糸案内レバー(3)を含む緯糸案内機構(5)であって、織布(6)に連なる緯糸(2)をレピアヘッド(7)による捕捉が可能な位置へ案内する緯糸案内機構(5)を有する緯入れ装置(1)を備えたレピア織機による緯入れ方法であって、前記緯糸案内機構(5)
は、前記緯糸案内レバー(3)としての第1の案内レバー(31)と、該第1の案内レバー(31)よりも反織前側に設けられて前記第1の案内レバー(31)との協働でレピアヘッド(7)による捕捉が可能な位置へ緯糸(2)を案内する第2の案内レバー(32)を含み、前記第1の案内レバー(31)が、経糸方向に関して
織前(8)の近傍に設定された退避位置としての第1の位置(P1)
と緯入れ方向に関して前記第1の位置(P1)と同じ位置で経糸方向に関し
てレピアヘッド(7)の走行経路上に設定された案内位置としての第2の位置(P2)
とに前記案内孔(4)を選択的に位置させるよう
に往復運動可能に構成され
ると共に、前記第2の案内レバー(32)が、退避位置としての第3の位置(P3)と緯入れ開始時の位置である案内位置としての第4の位置(P4)との間で往復運動可能に構成されており、緯入れ開始
に先立ち、前記第1の案内レバー(31)を前記案内孔(4)が前記第2の位置(P2)に位置するように
移動させて緯糸(2)をレピアヘッド(7)の走行経路側へ移動させると共に、前記第2の案内レバー(32)を前記第3の位置(P3)から前記第4の位置(P4)へ向けて移動させることにより、前記第2の位置(P2)に位置する前記案内孔(4)で案内されている緯糸(2)と係合して緯糸(2)をレピアヘッド(7)による捕捉可能な位置へもたらし、筬(12)による筬打ちが行われる前であってレピアヘッド(7)が経糸(9)の開口(10)から抜け出た時点以降に、前記案内孔(4)が前記第1の位置(P1)へ向けて移動を開始するように
前記第1の案内レバー(31)を駆動し、その前記
第1の案内レバー(31)の駆動時における動作態様を、筬(12)と前記案内孔(4)との経糸方向における相対位置関係を製織許容範囲に収めるように設定するようにしている。
【0011】
また、本発明に係るレピア織機の緯入れ装置(1)は、緯糸(2)が挿通される案内孔(4)を先端部に有する緯糸案内レバー(3)と、該緯糸案内レバー(3)を駆動するための駆動機構(11)とを含み、織布(6)に連なる緯糸(2)をレピアヘッド(7)による捕捉が可能な位置へ案内する緯糸案内機構(5)を有するレピア織機の緯入れ装置(1)であって、
前記緯糸案内機構(5)は、前記緯糸案内レバー(3)としての第1の案内レバー(31)と、該第1の案内レバー(31)よりも反織前側に設けられて前記第1の案内レバー(31)との協働でレピアヘッド(7)による捕捉が可能な位置へ緯糸(2)を案内する第2の案内レバー(32)と、経糸方向に関して
織前(8)の近傍に設定された退避位置としての第1の位置(P1)
と緯入れ方向に関して前記第1の位置(P1)と同じ位置で経糸方向に関し
てレピアヘッド(7)の走行経路上に設定された案内位置としての第2の位置(P2)
とに前記案内孔(4)を選択的に位置させるように
前記第1の案内レバー(31)を往復駆動する
前記駆動機構(11)としての第1の駆動機構と、退避位置としての第3の位置(P3)と緯入れ開始時の位置である案内位置としての第4の位置(P4)との間で前記第2の案内レバー(32)を往復駆動する第2の駆動機構(52)とを含み、前記第1の駆動機構(11)は、緯入れ開始に先立ち、前記案内孔(4)が前記第2の位置(P2)へ位置するように前記第1の緯糸案内レバー(31)を駆動し、前記第2の駆動機構(52)は、前記第2の位置(P2)に位置する前記案内孔(4)で案内されている緯糸(2)をレピアヘッド(7)による捕捉可能な位置へもたらすべく、前記第2の案内レバー(32)を前記第3の位置(P3)から前記第4の位置(P4)へ向けて移動させて前記第2の案内レバー(32)を緯糸(2)と係合させ、前記第1の駆動機構(11)は、筬(12)による筬打ちが行われる前であってレピアヘッド(7)が経糸(9)の開口(10)から抜け出た時点以降に
、前記第2の位置(P2)に位置する前記案内孔(4)が前記第1の位置(P1)へ向けて移動を開始するように前記
第1の案内レバー(31)を駆動し、更に、前記
第1の駆動機構(11)は、筬(12)と前記案内孔(4)との経糸方向における相対位置関係を製織許容範囲に収めるように設定された動作態様で前記
第1の案内レバー(31)を駆動するようにしている。
【0012】
なお、ここで言
う緯糸案内レバー(3)の
「動作態様」とは、前記案内孔(4)を前記第2の位置(P2)から前記第1の位置(P1)へ向けて移動させるために前記緯糸案内レバー(3)が移動を開始するタイミング及び/又はその移動速度のことである。
【0013】
また
、相対位置関係の
「製織許容範囲」とは、筬(12)と前記案内孔(4)との経糸方向における相対的な位置関係の製織に関する許容範囲であって、所望の品質の織物が製織可能となる両者の相対的な位置関係の範囲である。詳しくは、以下の通りである。
【0014】
織機においては、筬(12)の動作タイミングは基本的に一定であるため、筬(12)と前記案内孔(4)との相対位置関係は、前記緯糸案内レバー(3)の動作態様によって変化する。また、緯入れ期間と筬打ち動作との関係も一定であるため、上記の相対位置関係は、緯入れ期間と前記案内孔(4)の位置との関係をも表しているといえる。そして、筬(12)や緯入れ期間との関係における前記案内孔(4)の位置によっては、緯糸(2)や経糸(9)が損傷を受け、製織される織物の品質に影響を及ぼす場合がある。そのような場合として、例えば次のことが考えられる。
【0015】
1)緯入れ完了後に開始される筬(12)の筬打ち動作に対し、前記緯糸案内レバー(3)の移動開始が早い場合について、その移動開始タイミングが早すぎる、すなわち、緯入れ期間中の早い時期に前記緯糸案内レバー(3)が移動を開始すると、筬(12)と前記案内孔(4)との相対距離が大きくなり、その距離は、筬打ち動作が開始される前に前記案内孔(4)が前記第1の位置(P1)に達したときに最大となる。すなわち、この場合において、筬(12)と前記案内孔(4)との相対距離が大きくなるということは、前記案内孔(4)に案内される緯糸(2)の給糸側の部分が、より早い時期(緯入れ期間中)に織前(8)に接近することを意味する。そして、緯入れ期間中に緯糸(2)が織前(8)の近傍に達すると、織前(8)の近傍では経糸(9)の開口量が小さいため、緯入れに伴って緯糸(2)が給糸側の経糸(9)に対し緯入れ方向に摺動し、その結果として、それらの糸(特に経糸)が損傷し、製織される織物の品質が低下する虞がある。
【0016】
2)逆に、筬打ち動作の開始に対し前記緯糸案内レバー(3)の移動開始が遅い場合、特に、経糸方向において筬(12)が前記案内孔(4)の位置を通過した後に前記緯糸案内レバー(3)が移動を開始した場合については、緯入れされた緯糸(2)が筬(12)の給糸側端部で屈曲された状態となり、この屈曲が大きくなった場合、すなわち、筬(12)と前記案内孔(4)との相対距離が大きくなった場合、前述の従来技術と同様に、筬(12)の給糸側端部での屈曲や摺動に伴って緯糸(2)が損傷し、製織される織物の品質が低下する虞がある。
【0017】
但し、前記した緯入れ方向における緯糸(2)と経糸(9)との摺動が発生すること、言い換えれば、筬(12)と前記案内孔(4)との相対距離が前記摺動の発生するような大きさとなるように前記緯糸案内レバー(3)の動作態様が設定されることが、全てにおいて許容されない訳ではなく、緯糸(2)や経糸(9)の種類、あるいは求められる織物の品質によっては、ある程度の前記摺動が許容される場合もあれば、前記摺動が織物の品質に影響を及ぼさない場合もある。また、前記案内孔(4)が筬(12)によりも反織前側に位置した状態で両者間の相対距離が大きくなることに伴う筬(12)の給糸側端部における緯糸(2)の屈曲についても、織物の品質を考慮した場合、ある程度は許容される場合がある。そこで、前記緯糸案内レバー(3)の動作態様は、筬(12)の筬打ち動作との関係において変化する前記案内孔(4)と筬(12)との相対位置関係について、その相対位置関係が及ぼす織物の品質への影響を考慮し、その影響度合いが求められる織物の品質を満たすような範囲に前記相対位置関係が収まるように設定すればよく、この範囲が前述の製織許容範囲となる。なお、ここで言う筬(12)と前記案内孔(4)との相対位置関係は、単に両者間の距離(相対距離)のみを指すものではなく、両者がある位置関係となるタイミングをも含めたものである。
【0020】
更に、前記レピア織機の緯入れ方法及び緯入れ装置(1)において、緯入れ開始時に前記第4の位置(P4)で緯糸(2)を案内する前記第2の案内レバー(32)を、前記レピアヘッド(7)による緯糸(2)の捕捉が行われた時点以降に前記退避位置としての第3の位置(P3)側へ移動させるようにしてもよい。その場合、前記緯入れ装置(1)においては、前記第2の案内レバー(32)の移動は、前記第2の駆動機構(52)によって行われる。
【0021】
なお、本発明は、主として多色の緯入れを対象としているが、1色の緯入れにも適用できる。多色の緯入れの場合、緯糸案内機構(5)は、複数の緯糸(2)から選択された緯糸(2)を緯入れ可能な位置(第2の位置)に案内することになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るレピア織機の緯入れ方法及び緯入れ装置(1)によれば、前述のように構成
された前記緯糸案内機構(5)を用い、緯入れ開始時に、前記案内孔(4)が第2の位置
(P2)に位置するように配置された前記緯糸案内レバー(3)としての
第1の案内レバー(31)を、筬(12)による筬打ちが行われる前に、前記案内孔(4)が前記第1の位置(P1)へ向けて移動するように駆動している。言い換えると、緯入れ開始時に前記第2の位置(P2)に配置されている前記案内孔(4)が、前記
第1の案内レバー(31)の移動動作により、経糸方向について前記第1の位置(P1)へ変位するように前記緯糸案内機構(5)が構成されている。これにより、筬(12)の筬打ち動作時において経糸(9)列と前記
第1の案内レバー(31)との間に位置する緯糸(2)が経糸(9)の開口(10)内の緯糸(2)に対し経糸方向へなす角度を、従来に比べ小さくすることができる。その結果、前記筬(12)の給糸側端部や前記案内孔(4)での緯糸(2)の屈曲を小さくすることができ、緯糸(2)が前記筬(12)の給糸側端部や前記案内孔(4)に対して摺動することによる緯糸(2)の損傷を軽減することができる。
【0023】
前記筬(12)と前記案内孔(4)との経糸方向における相対位置関係を製織許容範囲に
収めるように前記
第1の案内レバー(31)の動作態様を設定すると、緯糸(2)の屈曲や緯入れ方向における緯糸(2)と経糸(9)との摺動に伴ってそれらの糸に許容できないほどの損傷が発生することもなく、織り欠点が生じる虞はない。従って、製織許容範囲の内であれば、前記
第1の案内レバー(31)の動作態様、特に前記案内孔(4)が前記第2の位置(P2)から前記第1の位置(P1)へ向けて変位するタイミング、速度、加速度等の設定の自由が高められる。
【0024】
また、レピアヘッド(7)が経糸(9)の開口(10)から抜け出た時点以降、つまり経
糸(9)の開口(10)内への緯入れがほぼ完了した時点以降に、前記
第1の案内レバー(31)の移動を開始させることにより、筬(12)による筬打ち動作の開始後において、経糸(9)の開口内の緯糸(2)が筬(12)と平行に近い状態で筬(12)と係合するため、緯糸(2)の織前(8)に対する打ち込みが安定して行われる。
【0025】
緯糸(2)を捕捉可能な位置へもたらす動作が、前記緯糸案内レバー(3)である第1の
案内レバー(31)と第2の案内レバー(32)との協働で行われる構成とすることによ
って、各レバー(31、32)を駆動するための前記駆動機構(51、52)の負荷を軽
減し、緯入れを安定して行えるようにすることができる。詳しくは、前述の緯糸(2)の
屈曲を可及的に小さくするために前記第1の位置(P1)を織前(8)
の近傍に設定した場合、その第1の位置(P1)から捕捉可能位置へ緯糸(2)をもたらすように前記案内孔(4)を移動させようとすると、前記緯糸案内レバー3(第1の案内レバー31)の移動量が大きくなり、前記駆動機構(51)に掛かる負荷が大きくなる。特に、前記駆動機構(51)が専用の回転駆動源を用いて前記緯糸案内レバー(3)を駆動する構成では、織機の高速化に伴って目標の動作に追従させることができなくなって、緯入れミスを生じる虞が生じるため、織機の高速化の障害となってしまう。
【0026】
これに対し、前記緯糸案内機構(5)を前記2つの案内レバー(31、32)の協働で緯
糸(2)を捕捉可能位置へもたらすように構成
することにより、すなわち、前記第1の案内レバー(31)の移動量を小さくし、捕捉可能位置までの残りの緯糸(2)の移動を前記第2の案内レバー(32)が受け持つように構成
することにより、各案内レバー(31、32)の前記駆動機構(51、52)に掛かる負荷は小さくて済み、織機が高速化されても安定した緯入れを行うことができる。
【0027】
緯入れ開始時に前記第4の位置(P4)で緯糸を案内する前記第2の案内レバー(32)をレピアヘッド(7)による緯糸(2)の捕捉が行われた時点以降に待機位置である前記第3の位置(P3)へ戻すように動作させることにより、緯糸(2)が筬(12)の給糸側端部に擦れながら緯入れされることが防止される。詳しくは、レピアヘッド(7)により緯糸(2)を捕捉させるためには、レピアヘッド(7)の走行経路と交差するように緯糸(2)を案内する必要がある。従って、緯糸(2)を把持可能位置で案内する前記第2の案内レバー(32)は、緯入れ時において、レピアヘッド(7)の走行経路よりも反織前側で緯糸(2)を案内した状態となる。また、一般的には、レピアヘッド(7)の走行経路は、経糸方向において筬(12)の近傍に設定される。そのため、前記第2の案内レバー(32)による案内位置が筬(12)の前面よりも反織前側となり、緯糸(2)は緯入れ期間中において筬(12)の給糸側端部に擦られながら引き出される状態となる。その結果、緯糸(2)に毛羽等が発生し、製織される織物の品質低下を招いてしまう。また緯糸(2)が前述の扁平糸の場合には、糸に捩れが生じて織物の欠点となってしまう虞もある。
【0028】
これに対し、緯入れ開始時においてレピアヘッド(7)の走行経路の反織前側で緯糸(2)を案内する前記第2の案内レバー(32)を、レピアヘッド(7)による緯糸(2)の把持が行われた時点以降において待機位置側へ戻すように動作させることにより、緯糸(2)の案内位置を筬(12)の前面よりも織前(8)側とすることができ、緯入れ期間中における前記筬(12)の給糸側端部と緯糸(2)との擦れを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1ないし
図4は、本発明に係るレピア織機の緯入れ装置1の例を示している。ここでのレピア織機は、一例として給糸側からインサート用のレピアヘッド7、反給糸側からキャリア用のレピアヘッド71を経糸9の開口10内にそれぞれ進入させ、開口10内の中間点で、緯糸2をレピアヘッド7からレピアヘッド71へと受け渡して緯入れを行う形式の両側レピア織機である。そして図示のレピア織機の緯入れ装置1は、単一の給糸体から供給される緯糸2をレピアヘッド7及びレピアヘッド71で緯入れする1色の緯入れの例であり、緯糸2は、一例として扁平糸を用いている。
【0030】
図1及び
図2において、緯入れ装置1は、緯入れ時に、織布6の織端に連なる緯糸2をレピアヘッド7により捕捉可能位置へ案内する緯糸案内機構5、及び緯糸案内機構5を駆動する駆動機構11を含む。また、緯糸案内機構5は、緯糸2を挿通するための案内孔4を先端部に有する緯糸案内レバー3である第1の案内レバー31に加えて、第1の案内レバー31との協働でレピアヘッド7による捕捉可能位置へ緯糸2を案内する第2の案内レバー32を含む。
【0031】
第1の案内レバー31は、経糸方向に直線的に往復運動可能に設けられており、駆動機構11である第1の駆動機構51によって駆動される。この第1の駆動機構51は、第1の駆動モータ21と回動レバー27とを含み、第1の駆動モータ21の出力軸25の往復回転を回動レバー27を介して第1の案内レバー31に伝達する。
【0032】
第1の駆動機構51は、経糸方向に関してレピアヘッド7の走行経路よりも織前8側に設定された退避位置としての第1の位置P1、及び経糸方向に関して第1の位置P1よりも織前8から離間した位置であって織前8に対しレピアヘッド7の走行経路側に設定された案内位置としての第2の位置P2へ案内孔4を選択的に位置させるように第1の案内レバー31を駆動するものである。因みに、図示の例では、第1の位置P1は、経糸方向に関し、その位置において案内孔4の筬12側の端部が織前8の近傍に位置するように設定されており、第2の位置P2は、その位置において案内孔4の中間部がレピアヘッド7の走行経路上に位置するように設定されている。
【0033】
また、第1の駆動機構51は、緯入れ開始時において案内孔4が第2の位置P2に位置するように配置されている第1の案内レバー31を、筬12による筬打ち前に案内孔4が第1の位置P1へ向けて移動を開始するように駆動するものであり、本実施例では、第1の案内レバー31の移動は、経糸9の開口10内への緯糸2の緯入れが完了した後、より詳しくは、レピアヘッド7、71が開口10内から抜け出た後の筬12による筬打ち動作が開始された時点よりも後であって経糸方向に関し筬12が第2の位置P2に達して筬12が緯入れされた緯糸2と係合する時点に開始されるように、第1の駆動機構51の駆動態様が設定されているものとする。また、第1の案内レバー31の移動速度については、筬12の移動速度に合わせたものに設定されている。従って、本実施例における緯糸案内レバー3としての第1の案内レバー31の動作態様は、筬12による筬打ち動作の移動開始後に移動を開始し、経糸方向における位置を筬12に合せた状態で筬12と共に移動するように設定されている。
【0034】
第2の案内レバー32は、図示の例では、経糸方向に往復揺動駆動されるものであり、第2の駆動機構52によって駆動される。この第2の駆動機構52は、第2の駆動モータ22の出力軸26の往復回転によって第2の案内レバー32を往復揺動運動させる。これにより、第2の案内レバー32は、退避位置としての第3の位置P3と緯入れ開始時の位置であって経糸方向に関し筬12の前面よりも反織前8側で緯糸2を案内する案内位置としての第4の位置P4との間で往復駆動され、第3の位置P3から第4の位置P4へ向けての揺動過程で、第2の位置P2にある第1の案内レバー31の案内孔4に案内された緯糸2に係合し、第4の位置P4において緯糸2をレピアヘッド7により捕捉可能な位置に案内する。因みに、第3の位置P3は、図示の例では、第4の位置P4から織前8側に揺動した位置であって筬12による筬打ち動作に伴って織前8側へ移動する緯糸2と係合しない位置に設定されている。
【0035】
また、本実施例では、緯入れ開始時に第4の位置P4に位置する第2の案内レバー34をレピアヘッド7による緯糸2の捕捉が行われた時点以降に退避位置としての第3の位置P3へ向けて移動するものとしてある。この移動のために、第2の駆動モータ22は、レピアヘッド7による緯糸2の捕捉が行われた時点以降の所定のタイミングで、第2の案内レバー32を第4の位置P4から第3の位置P3へ向けて後退駆動する。
【0036】
次に、
図1及び
図2に基づいて、緯入れ装置1の各部の構成について更に具体的に説明する。
【0037】
第1の案内レバー31は、断面円形の棒状の部材を主体として、その先端に緯糸2を案内するための案内部材13を取り付けた構成である。案内部材13は、板材で形成され、緯糸2として扁平糸を案内するための方形の案内孔4が形成されている。そして、図示しない給糸体から引き出された緯糸2は、緯入れ前の状態で、第1の位置P1にある案内孔4を通過して織布6の織端に連なっている。
【0038】
また、第1の案内レバー31は、第1の支持ブラケット14に取付けボルト15によって取付けられたガイド部材16のガイド孔によってワープラインと略平行に移動可能に支持されている。なお、ガイド部材16は、第1の支持ブラケット14の織布6側の面に取り付けられており、第1の案内レバー31を2箇所で滑り案内するように2つ設けられている。また、第1の支持ブラケット14は、長孔17と調節ボルト19とによってL型ブラケット23に調節自在に取付けられており、L型ブラケット23は、長孔18と調節ボルト20とによってベースブラケット24に調節自在に取付けられている。この結果、第1の支持ブラケット14は高さ方向及び経糸方向に調節可能な状態で取付けられている。
【0039】
第1の駆動機構51は、第1の駆動モータ21やガイド部材16の他、第1の駆動モータ21の出力軸25と第1の案内レバー31とを連結する回動レバー27、第1の案内レバー31に取付けられた係合ピン29、係合ピン29に回転自在に保持されて回動レバー27の係合溝28に係合するローラ30を含む。そして、第1の駆動機構51は、第1の駆動モータ21の出力軸25の往復回転に伴う回動レバー27の揺動運動によって緯糸案内レバー3を往復進退駆動する。
【0040】
第1の駆動モータ21は、出力軸25の方向を緯入れ方向と平行にした状態で、第1の支持ブラケット14により支持されている。回動レバー27は、その一端において、第1の駆動モータ21の出力軸25に対し、所定の位相で取り付け固定されている。図示の例では、割り締め固定によって回動レバー27が第1の駆動モータ21の出力軸25に固定される構成を採用しており、出力軸25に対して回動レバー27を任意の位相で固定可能となっている。
【0041】
係合ピン29は、第1の案内レバー31の後端部に固定されており、球面状のローラ30を回転可能に保持している。ローラ30は、球状部材の対向部分を面取して平面としたものにより構成されている。また、回動レバー27の他端は、一対の連結脚を対向させた二股状に形成され、二股状の部分で係合溝28を形成しており、係合溝28の対向面は、ローラ30と球面で嵌り合うように円弧状に形成されている。この構成により、第1の案内レバー31と回動レバー27とは、ローラ30を介し、係合溝28内を回動レバー27の長手方向にスライド可能な状態で連結される。そして、経糸方向に直線的にのみ移動可能となっている第1の案内レバー31と揺動駆動される回動レバー27との連結位置の回動レバー27の揺動に伴う変位は、ローラ30が係合溝28内をスライドすることにより許容される。
【0042】
これらの構成によれば、回動レバー27が第1の駆動モータ21によって所定角度の範囲で往復揺動駆動されることにより、第1の案内レバー31は、案内孔4が第1の位置P1に位置する前進位置と案内孔4が第2の位置P2に位置する後退位置との間で、往復移動し、この移動に伴って案内孔4が第1の位置P1及び第2の位置P2のいずれかに選択的に位置する。なお、
図1は、案内孔4が第1の案内レバー31の前進によって第2の位置P2(緯入れ時の案内位置)にある状態を実線で示し、第1の案内レバー31の後退によって第1の位置P1(退避位置)にある状態を2点鎖線で示している。
【0043】
第2の案内レバー32は、第2の駆動モータ22の出力軸26に固定される取付け部材33と、取付け部材33に固定されると共に緯糸2と係合して緯糸2を捕捉可能位置へ案内する係糸部材34とを組み合わせてなる。取付け部材33は、回動レバー27と同様に割り締め固定によって第2の駆動モータ22の出力軸26に固定されている。従って、第2の案内レバー32は、出力軸26に対して任意の位相で固定可能となっている。ここで、第2の駆動モータ22、取付け部材33は、第2の案内レバー32を駆動するための第2の駆動機構52を構成している。すなわち、取付け部材33は、第2の案内レバー32の一部であると共に、第2の駆動機構52の一部を構成する部材にも兼ねている。
【0044】
第2の駆動モータ22は、第2の支持ブラケット39に対し、長孔35と調節ボルト37により上下方向に位置調整可能に取り付けられ、第2の支持ブラケット39は、ベースブラケット24に対して長孔36と調節ボルト38により経糸方向に位置調節自在に取り付けられている。この結果、第2の駆動モータ22は、高さ方向及び経糸方向に位置調整可能に取り付けられている。
【0045】
これらの構成によれば、第2の駆動モータ22の出力軸の往復回転により、第2の案内レバー34は、第3の位置P3と第4の位置P4との間で往復揺動駆動される。なお、
図1では、第2の案内レバー32が第4の位置P4(緯入れ開始時に捕捉可能位置で緯糸2を案内する案内位置)にある状態が実線で示され、第2の案内レバー32が第3の位置P3(退避位置)にある状態が2点鎖線で示されている。そして、第2の案内レバー32が第2の駆動モータ22に駆動されて第3の位置P3から第4の位置P4へ向けて回動する過程において、第2の位置P2にある第1の案内レバー31の案内孔4を経由して、織布6の織端に連なる緯糸2は、第2の案内レバー32と係合してレピアヘッド7によって捕捉可能位置へもたらされる。
【0046】
つぎに、
図3及び
図4は、
図1及び
図2のレピア織機の緯入れ装置1の動作及び作用の説明図である。
図3の(a)は第1の案内レバー31の変位線図、(b)は第2の案内レバー32の変位線図をそれぞれ示し、それらの変位線図の横軸は、織機の主軸の回転角度(織機のクランク角度)であり、縦軸は、(a)では第1の案内レバー31を往復移動させるための回動レバー27の第1の位置P1(退避位置)を基準とした動作角度(回転角度)、(b)では第2の案内レバー32の第3の位置P3(退避位置)を基準とした動作角度(回転角度)である。また、
図4の(1)〜(5)は緯入れ動作の説明図である。以下の動作説明は
図1や
図3等を参照しながら
図4の(1)〜(5)の動作順序に基づいている。
【0047】
1)緯入れ開始に先立ち、第1の案内レバー31は、退避位置である第1の位置P1に案内孔4が位置する後退位置(
図1の2点鎖線の位置)から緯入れ時の位置である第2の位置P2に案内孔4が位置する前進位置(
図1の実線の位置)へ向けて前進駆動され(
図3:クランク角0°〜40°)、その第2の位置P2で停止する(
図3:クランク角40°〜320°)。これにより、給糸体から引き出された緯糸2は、インサートレピアのレピアヘッド7の走行経路(固定ガイド40)上に位置する第1の案内レバー31の案内孔4を経由して織布6の織端に連なる状態となる。
【0048】
なお、固定ガイド40は、
図1及び
図2のように、レピアヘッド7の走行経路を形成するために、図示しない織機フレームに取付けられている。レピアヘッド7は、図示しない往復駆動機構によって固定ガイド40の走行経路にそって案内され、往復移動可能となっており、緯入れ時に、上記往復駆動機構に駆動されて、
図1で紙面の裏側から表側の方向(
図2で図面の上から下の方向)に移動する。
【0049】
2)第1の案内レバー31の駆動開始に次いで第2の案内レバー32の駆動が開始され、退避位置である第3の位置P3から案内位置である第4の位置P4へ向けて第2の案内レバー32が回動する(
図3:クランク角5°〜40°)。この回動の過程で、第2の案内レバー32が第1の案内レバー31の案内孔4から織布6の織端に連なる部分の緯糸2と係合し、第2の案内レバー32が第4の位置P3へ達することによって上記部分の緯糸2がレピアヘッド7による捕捉可能位置へ案内された状態となる〔
図4:(1)〕。
【0050】
第2の案内レバー32が第4の位置P4で緯糸2を案内する状態では、織布6の織端に連なる緯糸2は、インサートレピアのレピアヘッド7を正面から見て、レピアヘッド7の走行経路と交差する様に、すなわち、レピアヘッド7による捕捉が可能な位置に案内されている。
【0051】
このように、第1の案内レバー31と第2の案内レバー32との協働によって、緯糸2を捕捉可能位置へもたらすように構成されていると、第1の案内レバー31の移動量を小さくし、捕捉可能位置までの残りの緯糸2の案内移動を第2の案内レバー32が受け持つようにできるため、第1の駆動機構51、第2の駆動機構52に掛かる負荷が分散され、小さくて済み、織機が高速化されても安定した緯入れが可能な状態となる。
【0052】
3)この状態で、レピアヘッド7が経糸9の開口10へ向けて前進を開始し、レピアヘッド7の緯糸把持部が緯糸2の経路と交錯することにより、レピアヘッド7の緯糸把持部によって緯糸2が捕捉される。次いで、給糸側の織前8の近傍に配置された緯糸カッタ41により、レピアヘッド7と織前8との間で緯糸2が切断され、給糸体から引き出されてレピアヘッド7に捕捉された緯糸2が織布6の緯入れ側織端から分離される〔
図4:(2)/クランク角60°付近〕。
【0053】
4)ここで、
図3(b)に示すように、第2の案内レバー32は、レピアヘッド7による緯糸2の捕捉後のクランク角70°付近から退避のために第3の位置P3側へ後退駆動される。但し、図示の例では、第2の案内レバー32を第4の位置P4よりも第3の位置P3側の中間位置にまで回動させて一旦停止させ、クランク角度120°付近から再度第3の位置P3へ向けての回動を開始している。
【0054】
このように、レピアヘッド7による緯糸2の捕捉後に第2の案内レバー32を回動させる目的は、筬12の給糸側端部における緯糸2の屈曲や擦れを防止するためである。詳しくは、第2の案内レバー32が筬12の前面よりも反織前側で緯糸2を案内するため、緯入れ期間中において緯糸2が筬12の前面の給糸側端部で屈曲して擦れながら引き出される状態となり、緯糸2の損傷等が発生してしまう。但し、第2の案内レバー32は、緯糸2をレピアヘッド7による捕捉可能位置で案内するために機能するものであるため、レピアヘッド7による緯糸2の捕捉が完了すれば、その役目を果たしたこととなり、それ以降において緯糸2を案内する必要がなくなる。そこで、レピアヘッド7による緯糸2の捕捉後に第2の案内レバー32を緯糸2と干渉しない第3の位置P3へ退避させ、緯入れ期間中における筬12の給糸側端部での緯糸2の擦れを防止しようとするものである。
【0055】
また、本実施例では、第2の案内レバー32を連続的に第3の位置P3まで回動させるのではなく、前記のように中間位置で一旦停止させて、その後に再び回動を開始している。これは、図示の構成では、緯入れ方向における第2の案内レバー32の回動位置をレピアヘッド7が通過中に第2の案内レバー32がその走行経路を横切ると、第2の案内レバー32がレピアヘッド7と干渉してしまうためであるが、その場合でも、レピアヘッド7が前記回動位置を通過するまで第2の案内レバー32を第4の位置P4に停止させておくのではなく、筬12に対する緯糸2の擦れをできるだけ軽減すべく、前記回動位置を通過中であってもレピアヘッド7による緯糸2の捕捉直後に第2の案内レバー32の回動を開始し、レピアヘッド7と干渉しない前記中間位置で一旦停止させる構成としてある。但し、機械構成上、第2の案内レバー32とレピアヘッド7が干渉しないものであれば、図示の例のように中間位置で停止させることなく、第3の位置P3まで回動させればよい。
【0056】
5)そして、緯入れ方向における第2の案内レバー32の位置をレピアヘッド7が通過した後において、第2の案内レバー32を前記中間位置から退避位置である第3の位置P3まで回動させる(クランク角120°〜180°)。このように、第2の案内レバー32は、レピアヘッド7による緯糸2の把持が行われた時点以降において待機位置側へ戻すように動作する。これにより、緯糸2の案内位置を筬12の前面よりも織前8側の位置とすることができ、これにより緯入れ期間中における筬12の給糸側端部と緯糸2との擦れを回避することができる。
【0057】
第2の案内レバー32の退避位置への移動によって、第2の案内レバー32と緯糸2との係合が解除されるため、緯糸2は、第1の案内レバー31の案内孔4より開口10側では第2の位置P2にある案内孔4のみによって案内された状態となる。この状態では、第1の案内レバー31の案内孔4は、固定ガイド40の走行経路上に位置するため、緯糸2は筬12の給糸側端部に擦れること無く、レピアヘッド7の走行経路に沿った状態で、筬12とほぼ平行に経糸9の開口10内へ挿入されることになる〔
図4:(3)〕。
【0058】
6)次いで、経糸9の開口10の中間部でインサートレピアのレピアヘッド7からキャリアレピアのレピアヘッド71へ緯糸2が受け渡された後、両者のレピアヘッド7、71がそれぞれの織布6の織端の方向へ後退して、経糸9の開口10内からほぼ同時に抜け出る(クランク角300°付近)。これによって、経糸9の開口10内に対する緯糸2の緯入れが完了する〔
図4:(4)〕。
【0059】
7)その後、筬12による筬打ち動作が開始されると共に、クランク角320°付近より第1の案内レバー31の第2の位置P2から退避位置である第1の位置P1へ向けて、第1の案内レバー31の駆動が開始される〔
図4:(4)、(5)〕。なお、経糸方向において、筬12の位置は、レピアヘッド7による緯入れ位置よりも反織前側に位置する。従って、緯糸2が筬12との係合によって織前8側へ移動し始めるタイミングは、筬12が織前8側へ前進し始める時点(筬打ち動作の開始時点)と同時ではなく、時間的に間をおいた時点である。因みに、本実施例では、筬12はクランク角300°付近から前進を開始するものとする。
【0060】
筬12の織前8側への前進が開始された後、筬12は緯入れされた緯糸2と係合(接触)し、これ以降、緯糸2は筬12の前進に伴って筬12と共に織前8側へ向けて移動を開始する。この緯糸2の移動に合せて、第1の案内レバー31が第1の位置P1へ向けて駆動されることにより、第1の案内レバー31の案内孔4は、緯糸2と共に織前8側へ向けて移動する。これにより、筬12と第1の案内レバー31との間の緯糸2は、筬12の端部で経糸方向へ殆ど屈曲することなく、筬12の前進により織前8側へ運ばれる。
【0061】
なお、緯入れされた緯糸2の反給糸側の部分については、緯入れの完了に伴ってキャリア用のレピアヘッド71の緯糸把持部が緯糸2の把持を解放するため、反給糸側においては緯糸2の屈曲が生じることはない。また、給糸側の部分について、緯糸2は、第1の案内レバー31よりも反経糸列側においても、他の部材又は装置(例えば、糸の走行を検出するセンサ等)によって固定位置で案内されている。そのため、第1の案内レバー31の移動に伴い、緯糸2は第1の案内レバー31の位置において反経糸列側へ屈曲するが、上記した他の部材等による案内位置と第1の案内レバー31との緯入れ方向における距離が大きく、また、上記案内位置は適宜に設定可能であるため、屈曲量は小さくてすみ、その屈曲によって緯糸2が損傷を受けることは無い。
【0062】
以上で説明した実施例では、レピアヘッド7により緯糸2が把持された後の第1の位置P1へ向けての第1の案内レバー31の動作について、最良の実施形態として、筬12によって緯糸2が織前8側へ運ばれるのに合せて、第1の案内レバー31の案内孔4が筬12の前進方向に移動するように、第1の案内レバー31を動作させており、第1の案内レバー31の動作開始タイミングを緯糸2が筬打ち動作による筬12の前進に伴って筬12と係合して筬12と共に織前8側へ移動を開始する時点(以下、「移動開始時点」ともいう。)としてある。この動作態様によると、緯糸2の屈曲を可能な限り小さくでき、有利である。
【0063】
ただし、第1の案内レバー31の動作態様については、これに限らず、前述した筬12と案内孔4との相対位置関係が前述の製織許容範囲に収まる範囲においては、緯糸2の上記移動開始時点よりも前あるいは後に案内孔4の移動を開始するように、第1の案内レバーの動作態様を設定するようにしてもよい。例えば、その動作態様としては、次のものが考えられる。
【0064】
(1)前記移動開始時点よりも前であって、レピアヘッド7、71が経糸9の開口10から抜け出た時点以降に動作開始タイミングを設定する。すなわち、第1の案内レバー31(案内孔4)の動作開始が上記移動開始時点前であっても、レピアヘッド7が経糸9の開口10から抜け出た時点以降であれば、緯入れ期間中の残りの緯糸2の走行期間における案内孔4の織前8側への移動量は小さく、筬12との間に生じる距離(筬12と案内孔4との相対距離)が小さいままとなる。そのため、緯入れ期間中(緯糸2の走行中)においては、緯糸2は経糸9の開口量の大きい部分に存在することになり、緯入れ方向における緯糸2と経糸9との摺動が生じることはない。また、仮に上記摺動が生じたとしても、摺動量が僅かであるため、緯糸2や経糸9が許容できないほどの損傷を受けることなく、製織には悪影響を及ぼすことは無い。従って、上記のようにレピアヘッド7、71が経糸9の開口10から抜け出た時点以降としてもよい。
【0066】
なお、上記の「動作態様」については、先に述べたように、第1の案内レバー31の動作開始タイミングだけでなく、その移動速度も考慮したものである。すなわち、経糸方向における案内孔4の位置を考えた場合、例えば、移動開始タイミングが早い場合と、移動開始タイミングは遅いが移動速度が早い場合とでは、同じタイミングで同じ位置に達し得るため、第1の案内レバー31の動作態様は、移動開始タイミングだけでなく、移動速度も考慮したものでなければならない。
【0067】
(3)筬12の筬打ち動作が開始される前に案内孔4が移動を開始した場合、緯糸2の先端部はレピアヘッド71によって筬12の近傍に位置するのに対し、給糸側の部分が筬12から離間する案内孔4によって案内されるため、緯入れの完了時点では、緯糸2は筬12に対し平行ではなく、角度を為した状態となる。そして、筬12の筬打ち動作時には、筬12は反給糸側の部分から順に漸次的に緯糸2と係合していくこととなる。そのため、場合によっては、その筬打ち動作の過程で緯糸2が折れ曲がり、その状態で筬打ちされて織り欠点が生じる虞がある。そこで、第1の案内レバー31の動作態様を、緯入れ完了時点における案内孔4とキャリア用のレピアヘッド71とを結ぶ直線が筬12に対し為す角度を考慮して設定するようにしてもよい。なお、緯入れ完了時点におけるレピアヘッド71の位置は基本的に一定であるため、上記角度は、経糸方向における案内孔4の位置、すなわち、経糸方向における筬12と案内孔4との相対距離に置き換えることができる。
【0069】
本発明は、図示の例に限らず、以下のような実施態様に変形して実施できる。
【0070】
1)前述の実施例では、単一の給糸体から供給される緯糸2を緯入れする1色の緯入れ装置を例に述べたが、本発明はこれに限定されるものではなく、2以上の給糸体(緯糸2の種類の異同は問わず)から供給される緯糸2を緯入れするための多色の緯入れ装置にも適用可能である。
【0071】
図5の(a)、(b)に示すものは、本発明を適用するための2色の緯入れ装置における駆動機構11の一例であり、2色に対応して2つの第1の案内レバー31、2つの第1の駆動モータ21が設けられ、また、2色に兼用となる1つの第2の案内レバー32、第2の駆動モータ22が設けられている。2つの第1の駆動モータ21は、緯糸2の選択順序に基づいて選択的に動作し、1つの第2の駆動モータ22は、何れの緯糸2についても案内動作をする。この例で、第1の駆動機構51は、2つの第1の駆動モータ21や2つの第1の案内レバー31を含むことになる。
【0072】
図6に示すものは、3色の緯入れ装置における緯糸案内機構5の一例であり、3色の緯入れに対応して3つの第1の案内レバー31が設けられ、これらはそれぞれ図示しない3つの第1の駆動モータ21によって駆動されるようになっている。また各色に共通な1つの第2の案内レバー32が設けられる。この例で、第1の駆動機構51は、3つの第1の駆動モータ21や3つの第1の案内レバー31を含むことになる。
【0073】
2)第1の駆動機構51については、前述の実施例の構成のほかに以下の変形例が考えられる。
【0074】
(1)第1の案内レバー31と回動レバー27との連結構造について、前述の実施例のように、ローラ30を介して連結するものに代えて、
図7のように第1の案内レバー31と回動レバー27との間にリンク部材42を介して両端のピン43によりリンク連結としてもよい。この場合、回動レバー27、リンク部材42、ピン43が第1の駆動機構51を構成している。
【0075】
(2)第1の案内レバー31を直線的に進退駆動するものに代え、
図8のように第1の案内レバー31を回動駆動することにより案内孔4が第1の位置P1と第2の位置P2との間で変位する構成とすることも可能である。この例の場合、第1の案内レバー31の一部が第1の駆動機構51の一部を構成する部材をも兼ねている。
【0076】
(3)駆動源を専用の駆動モータ(21、22)とすることに代え、織機の原動モータを駆動源としてもよい。すなわち、第1、第2の各レバー(31、32)の動作はカムによって実現することが可能であるため、織機の原動モータを駆動源として回転駆動されるカムによって各レバー(31、32)を動作させるようにしてもよい。
【0077】
(4)第1の案内レバー31を直線的に往復駆動する第1の駆動機構51について、駆動モータ21によって回転駆動されるピニオンと第1の案内レバー31に取り付けられたラックとの組み合わせで構成することも可能である。また、駆動源としてリニアモータやエアシリンダを用いて第1の案内レバー31を直接的に駆動する構成としてもよい。