(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記折り返し部は、前記インフレータの中心と巻回された前記クッション部の中心とを通過する中心線より車室側面側に位置するように形成されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ装置。
前記折り返し部が前記車室側面側に位置するよう、前記クッション部の姿勢を保持する保持手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のカーテンエアバッグ。
前記保持手段は、前記クッション部の上端に取り付けられ、前記巻回されたクッション部を周回して車体に固定され、前記クッション部の膨張によって破断可能なタブであることを特徴とする請求項5に記載のカーテンエアバッグ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のエアバッグでは、案内折畳部の折り目、および内ロール部と外ロール部との間の折り目が、エアバッグの長手方向の一端から他端まで形成されている。折り目が形成された位置にガスが流入して膨張すると、ロールされている部分のエアバッグの規則的な展開とは異なり、変則的な展開挙動となる。折り目の位置はこのようにエアバッグの展開挙動を左右するため、折り目が偏曲したり、折り目が一定の場所に形成されていなかったりすると、ガスの流入が不均一になり、エアバッグの展開挙動は不安定となってしまう。これを防ぐため、設計された位置に直線の折り目を精度よく形成する必要があるが、車両側面にわたる長さを有するカーテンエアバッグに対して、一端から他端まで長手方向に折り目を精度よく施すのは困難である。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、簡易な構成で、収納位置の下側にピラートリムが存在してもピラートリムに干渉することなく円滑に膨張展開可能なカーテンエアバッグ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここで、発明者らはカーテンエアバッグの展開試験を行い、カーテンエアバッグの展開挙動に影響を与える要因として、インフレータ挿入部近傍の構成が重要であることを確認した。詳細には、上部に突出した構成でインフレータを収納するカーテンエアバッグ(センターフィルタイプ)において、インフレータ挿入部からガスが供給されることで始まる膨張展開の初期挙動が、その後の展開挙動を左右することを突き止めた。このことに鑑み、いかなる手段をもってカーテンエアバッグのピラートリムへの干渉を防ぐかについて検討し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、上記課題を解決するために、本発明にかかるカーテンエアバッグ装置の代表的な構成は、車室側面上方に収納されるカーテンエアバッグ装置であって、ガスを供給するインフレータが挿入されるインフレータ挿入部と、インフレータ挿入部と連通しガスを導くスロート部と、スロート部と連通し、車両前後方向に延伸し、巻回された状態で収納され、スロート部からガスを受けて下方へ膨張展開するクッション部と、当該カーテンエアバッグ装置のインフレータ挿入部からクッション部の上端近傍までの間に形成され、クッション部の車室側面側に位置する折り返し部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成であれば、クッション部の車室側面側に折り返し部が形成されるため、最初にガスの供給を受けて膨張するクッション部の上端は、車室側面を押動する。この押動による反力とともに、折り返し部を解消しようとする展開挙動が発生し、その下の巻回状態のクッション部は、ピラートリム側(車外方向)でなくルーフヘッドトリム側(下方向)に向けて膨張展開する。そして、クッション部からの圧力によって、ルーフヘッドトリムが押しのけられて、エアバッグは車室内へ膨張展開することができる。このようにクッション部は、簡易な構成で、その収納位置から車外方向に存在するピラートリムに干渉することなく、円滑に膨張展開可能である。
【0011】
折り返し部は、インフレータの中心と巻回されたクッション部の中心とを通過する中心線より車室側面側に位置するように形成されるとよい。インフレータとクッション部は、通常、車室側面に近接して上下に配置される。したがって、クッション部の上端が押動すべき車室側面は、上記の中心線に概ね平行になる。よって、上記の中心線より車室側面側に折返し部があれば、ほとんどの場合、クッション部の上端は自然に車室側面を押動することとなる。
【0012】
折り返し部は、クッション部とスロート部との境界に形成されてもよい。この場合、スロート部の幅法分だけ折り返し部を形成させればよいため、従来のカーテンエアバッグ装置のように、長手方向の一端から他端まで折返しを形成させる場合と比べて、略直線の折り返しを精度よく、かつ容易に形成させることができる。
【0013】
当該カーテンエアバッグは、折り返し部が車室側面側に位置するよう、クッション部の姿勢を保持する保持手段をさらに備えてもよい。これによって、クッション部がルーフヘッドトリム側へ向かっての膨張展開が可能な状態で、当該カーテンエアバッグを収納することができる。
【0014】
保持手段は、クッション部の膨張によって破断可能な粘着テープであってもよい。かかる手段によれば、クッション部の膨張展開を阻害することなく、折り返し部を形成させた状態で、クッション部にその姿勢を保持させることができる。
【0015】
保持手段は、クッション部の膨張によって解ける縫製糸であってもよい。かかる手段によれば、クッション部の膨張展開を阻害することなく、折り返し部を形成させた状態で、クッション部にその姿勢を保持させることができる。
【0016】
保持手段は、クッション部の上端に取り付けられ、巻回されたクッション部を周回して車体に固定され、クッション部の膨張によって破断可能なタブであってもよい。かかる手段によれば、クッション部の膨張展開を阻害することなく、折り返し部を形成させた状態で、クッション部にその姿勢を保持させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡易な構成で、収納位置の下側にピラートリムが存在してもピラートリムに干渉することなく円滑に膨張展開可能なカーテンエアバッグ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
(カーテンエアバッグ装置の収納位置)
図1は、第1実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置の収納位置を例示する図である。
図1(a)はカーテンエアバッグ装置の非展開時、
図1(b)はカーテンエアバッグ装置の展開時をそれぞれ例示する。なお、以下では、右側面用のカーテンエアバッグ装置を用いて説明を行う。
【0021】
本実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置(以下、「エアバッグ100」と記載する)は、
図1(a)のように、車両室内の側面部上方に収納することができる。エアバッグ100は、ルーフサイドレール110に取り付けられる。通常、車両室内の側面部には複数のピラーが存在している。これらは車両102の前方から、フロントピラー(Aピラー104)、センターピラー(Bピラー106)、リアピラー(Cピラー108)と呼ばれる。各ピラーの車両室内側はクッション材等で構成されたピラートリムで覆われていて、車内の美観を向上させている。
【0022】
車両102に側面衝突時やロールオーバ(横転)等が発生すると、まず車両102に備えられたセンサ(図示省略)による衝撃の感知に起因して、インフレータ120へ発火信号が発信される。次に、インフレータ120の火薬が燃焼し、発生したガスがエアバッグ100へ供給される。そして、
図1(b)に例示するように、エアバッグ100は、ルーフヘッドトリム180(
図4)を押しのけて車両室内の側面部(サイドウィンドウ112等)に沿うように膨張展開する。
【0023】
(カーテンエアバッグ装置)
図2は、
図1のカーテンエアバッグ装置の展開状態を例示する図である。
図2(a)は、車両102の進行方向に向かって右側面部のエアバッグ100を車両室内側から見た状態で例示している。
【0024】
エアバッグ100は、例えば、その表面を構成する基布を表裏で縫製したり、OPW(One-Piece Woven)を用いて紡織したりすることにより袋状に形成される。
【0025】
エアバッグ100は、インフレータ120と、インフレータブラケット124と、車両102の衝突時や横転時に膨張する膨張領域と、膨張せず、膨張領域を区画する非膨張領域(図中ハッチングで示す)と、保持手段(タブ170)と、を備えている。
【0026】
インフレータ120は、円筒状のシリンダ型インフレータである。インフレータ120は、エアバッグ100の中央近傍の上縁に突出した状態で収納されている。インフレータ120は、ガス噴出口122を有している。ガス噴出口122は、インフレータ120の円周上に配置されていて、ガスを放射状に排出することができる。
【0027】
インフレータブラケット124は、インフレータ120を車室側面に固定する部材である。インフレータブラケット124は、インフレータ120を収容した状態の後述するインフレータ挿入部132を加締めによって保持し、ボルト等を利用して車室側面に固定する。インフレータブラケット124は金属製であって、ガス発生時の衝撃に耐え得る強度を有している。
【0028】
膨張領域は、インフレータ挿入部132、スロート部134、クッション部140で構成されている。
【0029】
インフレータ挿入部132は、エアバッグ100の中央近傍の上縁に突出して配置され、インフレータ120を収容する部分である。インフレータ挿入部120へのインフレータ120の収納は、インフレータ120のガス噴出口122がインフレータ挿入部120の中央(スロート部134の上方中央)に位置するように行うことが好適である。
【0030】
スロート部134は、インフレータ挿入部132の下部とクッション部140の上部とを連通する通路である。スロート部によって、インフレータ120のガス排出口122から放射状に供給されたガスが整流され、下方のクッション部に導かれる。本実施形態にかかるエアバッグ100では、上記のインフレータ挿入部132およびスロート部134によって、ガスがエアバッグ100の中央から前後方向に供給される。
【0031】
クッション部140は、スロート部134の下部と連通し、膨張して乗員の保護を行う部分である。クッション部140は、中央のスロート部134からみて車両前後方向に延伸し、前部座席の乗員の保護および後部座席の乗員の保護を併せて行うことができる。クッション部140は、当該エアバッグ100の収納時において、後述するように下端から上端にむかって巻回された状態で収納される。
【0032】
クッション部140は、メインダクト142と、複数のチャンバ146とを有している。メインダクト142は、クッション部140の上部に略水平に配設されていて、スロート部134から流入したガスを、車両前後方向にわたって設けられている複数のチャンバ146へ分流させる。複数のチャンバ134は、衝突時等の非常事態時において乗員と直接接触する部分である。複数のチャンバ134によって、乗員は、車両側面への激突や、車外への飛び出し等から保護される。
【0033】
保持手段は、後述する折り返し部150が車室側面側に位置するようにクッション部140の姿勢を保持する。本実施形態にかかるエアバッグ100では、保持手段として、粘着テープ160(
図1(a))および布製のタブ170を使用している。
【0034】
粘着テープ160は、クッション部140の膨張によって破断可能であって、クッション部140の膨張展開を阻害することなく後述する折り返し部150を形成させた状態で、クッション部140の姿勢を保持させておくことができる。
【0035】
タブ170は、クッション部140の上端に取り付けられている帯状の部材であって、巻回された状態のクッション部140を周回して巻き付くことでクッション部140の姿勢を保持し、その姿勢でルーフサイドレール110に固定することができる。
【0036】
タブ170には、ボルト穴172、破断部174が設けられている。ボルト穴172は、タブ170の両端に設けられていて、ボルト等を挿通することで、巻回されたクッション部140をルーフサイドレール110に固定することができる。破断部174は、千鳥状の切れ込みであって、巻回されたクッション部140が膨張することで破断する。
【0037】
なお、タブの構成はこれに限るものではなく、例えばクッション部140から突出した構成でクッション部140には巻き付けずにルーフサイドレール110へ固定を行ってもよい。この構成のクッション部140であっても、粘着テープ160と併用することで保持手段として機能できる。その他には、破断部を有する袋状または筒状の布(ソックとも称される)で構成し、巻回されたクッション部140を包み込むことでその姿勢を保持させてもよい。
【0038】
(折り返し部の形成)
図3は
図2のカーテンエアバッグ装置における折り返し部150の形成を説明する図である。
図3は、
図2のエアバッグ100のクッション部140を巻回して、折り返し部150を形成し、車両102に取り付けた状態(
図1(b))となるまでを例示している。
【0039】
図3(a)は
図2のエアバッグ100を車両室内側からみた状態を例示している。
図3(a)のように、クッション部140は、収納時において下端から上端に向かって矢印方向に巻回され、
図3(b)の状態となる。
【0040】
本実施形態にかかるエアバッグ100は、上記の巻回を、車両側面側で行っている。これによって、ガスの流れ方向の上流である上端からみて、下流である下端が車室側面方向に向かって巻かれる状態(車両前方からみて、下端へ向かって時計回り)となる。この方向の巻回によって、膨張展開時に上方から乗員に接触したとしても、乗員を越えて室内方向に展開することなく、サイドウィンドウ112側にすべりこむように膨張展開することが可能になる。なお、車両左側面用のエアバッグは、エアバッグ100とは反対方向へ巻回されて取り付けられる(車両前方からみて、下端へ向かって反時計回り)。
【0041】
図3(b)に例示するように、クッション部140を上端まで巻回すると、インフレータ挿入部132と巻回されたクッション部140との間には、スロート部134が存在している状態となる。
【0042】
図3(c)は、クッション部140を巻回した状態のエアバッグ100の背面側(車室側面側)を例示している。
図3(c)のように、本実施形態にかかるエアバッグ100では、スロート部134とクッション部140との境界(境界L1(
図2参照))で、巻回されたクッション部140を上方へ移動させるように、矢印方向へ折り返す。言い換えればスロート部134を上方へ向けるように折り返す。
【0043】
図2(a)に例示するように、本実施形態では境界L1に折り返し部150を形成している。このとき、折り返し部150は、スロート部134の略幅寸法分(W1)だけ折り返して形成すればよいため、従来のカーテンエアバッグのように、長手方向の一端から多端まで折返しを形成させる場合と比べて、略直線の折り返しを精度よく、かつ容易に形成させることが可能である。
【0044】
折り返し部150は、クッション部140が巻回されている収納時に形成される。折り返し部150は、エアバッグ100のインフレータ挿入部132からクッション部140の上端近傍までの間に形成される。具体的には、
図2(a)に例示する境界L1の上下40mm程度までの領域dに形成するとよい。
【0045】
このように、本実施形態では、従来のようにクッション部140の一端から他端までにわたる長い折り目を設ける必要がない。したがって、従来のような長い折り目を施すための高精度の工程を行う必要が本実施形態にはない。むしろ高い精度を要さず、大まかに折り返しを設ける工程ですむため、カーテンエアバッグ製造工程がきわめて簡単になる。
【0046】
図3(d)は、折り返し部150を形成させた状態のエアバッグ100の車両室内側を例示している。本実施形態にかかるエアバッグ100では、保持手段として、粘着テープ160を備えている。なお、粘着テープ160は、
図4(a)に例示するように、境界L1(本実施形態では折り返し部150も兼ねる)が、巻回されたクッション部140のルーフサイドレール110側に位置するように配置する。これについて詳細は後述する。
【0047】
このようにして、
図1(a)のように、当該エアバッグ100は、粘着テープ160およびタブ170によって折り返し部150が形成された状態で車両102に取り付けられる。
【0048】
(カーテンエアバッグ装置の展開挙動)
図4および
図5を参照して、本実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置の展開挙動を説明する。
図4は
図1(a)のC−C断面における展開挙動を例示する図、
図5は
図1(a)のD−D断面における展開挙動を例示する図である。
【0049】
図4(a)は収納状態におけるカーテンエアバッグを例示している。本実施形態にかかるエアバッグ100は、インフレータ挿入部132の下部にスロート部134が連通していて、そのスロート部134とクッション部140の境界L1に折り返し部150が形成されている(
図2(b))。そして、前述したように、クッション部140を下端から上端に巻回した後、スロート部134を境界L1から上方へ向けるように折り返すことで折り返し部150が形成されている(
図4(a))。
【0050】
インフレータ120からガスが供給されると、ガスはまずスロート部134に流れ込む。そして、
図4(b)に例示するように、膨張展開の開始に伴って、粘着テープ160が破断して、膨張展開が進行する。
【0051】
ガスの流れ方向からみてスロート部134の下流には、折り返し部150が形成されている。前述したように、本実施形態にかかるエアバッグ100は、境界L1(折り返し部150)が、巻回されたクッション部140のルーフサイドレール110側に位置するように取り付けられている(
図4(a))。より厳密に言えば、境界L1は、インフレータ120の中心と巻回されたクッション部140の中心とを通過する中心線L2よりもルーフサイドレール110側に位置する。インフレータ120とクッション部140は、通常、車室側面に近接して上下に配置される。したがって、クッション部140の上端が押動すべきルーフサイドレール110は、上記の中心線L2に概ね平行になる。よって、上記の中心線L2よりルーフサイドレール110側に折り返し部150があれば、ほとんどの場合、クッション部140の上端は自然に車室側面を押動することとなる。そして、この押動の反力とともに、折り返し部150を解消しようとする展開挙動が発生し、その下流の巻回されているクッション部140にルーフヘッドトリム180に向けて膨張展開し、ルーフヘッドトリム180に接触して圧力が加えられる。
【0052】
なお、折り返し部150がその機能を好適に発揮するためには、折り返し部150を次の領域に形成することが望ましい。すなわち、巻回されたクッション部140の中心線L2よりルーフサイドレール110側の領域である。この領域に折り返し部150が位置することで、
図4(a)のクッション部140はルーフサイドレール110に近接しているが、かかる位置にクッション部140がなくても、折り返し部150を解消しようとする展開挙動は、ルーフヘッドトリム180に向かって発生する。つまり、ルーフサイドレール110と中心線L2とが平行ではなくても、折り返し部150を解消しようとする展開挙動は、ルーフヘッドトリム180に向かって発生する。
【0053】
図4(c)に例示するように、クッション部140からの圧力によってルーフヘッドトリム180が、ヒンジ部182を起点に湾曲し、フランジ部190から外れる。そしてルーフヘッドトリム180が押しのけられて、フランジ部190とルーフヘッドトリム180との間に間隙E1が形成される。
【0054】
そして、
図4(d)に例示するように、間隙E1からクッション部140が車室へ露出し、サイドウィンドウ112に沿って下方へ膨張展開する。
【0055】
図5(a)に例示するように、
図1(a)のD−D断面には、エアバック100からみて車外方向にはBピラー106が存在していて、さらにBピラートリム184によって間隙E3が形成されている。各ピラーのなかでも、Bピラートリム184に引っかかることで、エアバッグ100の乗員保護機能は大きく低下する。Bピラートリム184に引っかかったエアバッグ100は、長手方向の中央部分だけでなく、その前後部分の膨張展開も阻害されてしまう。つまり、サイドウィンドウ112と乗員との間に膨張展開できなくなってしまうからである。
【0056】
車両102には、間隙E3を塞ぐジャンプブラケット186が備えられている。ジャンプブラケット186は、金属製であって、エアバッグ100が間隙E3に引っかかることなく車室内に出現するように案内するガイド機能を有している。しかし、金属製のジャンプブラケット186であっても耐久力には限りがあり、膨張するエアバッグ100から衝撃を受けると、変形して間隙E3を塞ぎきれなくなったり、周囲のトリムに接触して破損させたりしてしまう。
【0057】
本実施形態の利点は以上の課題を解決したことである。
図5(b)に例示するように、エアバッグ100では、ダクトトップ144によるルーフサイドレール110の押動の反力と、折り返し部150を解消しようとする展開挙動によって、クッション部140がルーフヘッドトリム180に向かって膨張展開する。そして、ルーフヘッドトリム180が押しのけられて、Bピラートリム184とルーフヘッドトリム180との間に間隙E2が発生する。
【0058】
図5(c)に例示するように、エアバッグ100は、間隙E2へ膨張展開することができる。つまり、間隙E3を乗り越えて膨張展開することができ、ジャンプブラケット186に対して過剰に衝撃を加えることもない。そして、
図5(d)に例示するように、エアバッグ100は、Bピラートリム184に干渉することなく、車室内へ円滑に膨張展開することができる。
【0059】
本実施形態にかかるエアバッグ100では、粘着テープ160およびタブ170によってクッション部140の姿勢を保持して、境界L1(折り返し部150)を中心線L2よりもルーフサイドレール110側に位置させている。このように、エアバッグ100の姿勢は、粘着テープ160およびタブ170の両方によって保持されている。
【0060】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置(以下、「エアバッグ200」と記載する)を例示する図、
図7は
図6のカーテンエアバッグ装置の展開状態を例示する図である。エアバッグ200は、折り返し部の位置、および保持手段たる粘着テープの配置箇所が、第1実施形態のエアバッグ100と異なる。以下、第1実施形態と機能および構成が同様の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
図6(a)は、本実施形態のエアバッグ200を背面側(車室側面側)からみた状態を例示する図であり、第1実施形態における
図3(c)に対応する図である。本実施形態にかかるエアバッグ200では、クッション部140の上端近傍で、スロート部134を上方へ向けるように折り返している(折り返し部250)。
図6(b)に例示するように、粘着テープ260がスロート部134の幅方向の両端近傍にそれぞれ設けられていて、これによって折り返し部250が形成された状態のクッション部140を保持している。本実施形態では、粘着テープ260をインフレータ挿入部132の車両前後方向における幅と略同等の間隔で2箇所に配置している。
【0062】
図7(a)および
図7(b)に例示するように、折り返し部250は、クッション部140の上端より下方のクッション部140(より厳密にはクッション部140のメインダクト142)に形成されている。折り返し部250はインフレータ挿入部132の車両前後方向の幅分(W2)にわたって略直線状に形成され、その両端においてクッション部140の上縁へ向かって湾曲している。
【0063】
折り返し部250がかかる形状を有するのは、折り返し部250の車両前後方向にわたる長さを、長くともインフレータ挿入部132の前後程度の、限られた短い長さにするためである。折り返し部250のように、スロート部134とクッション部140の境界L1(
図2)より下方のクッション部140に形成されるものであっても、クッション部140の一端(前端)から他端(後端)までの全長にわたって形成されることはない。
【0064】
なお、本実施形態では、インフレータ挿入部132の幅分(W2)において折り返し部250を略直線状に形成し、両端を湾曲させて終了させている。しかし、折り返し部は、クッション部140の上縁から始まって上縁で終了する、限られた長さを有するものであれば、折り返し250のような形状に限るものではない。例えば全体が湾曲した折り返し部を形成してもよい。
【0065】
本実施形態にかかるエアバッグ200においても、第1実施形態にかかるエアバッグ100と同様に、粘着テープ260およびタブ170によって、境界L1が、中心線L2よりもルーフサイドレール110側に位置するような姿勢を保持することができる。この姿勢によって、エアバッグ200は、Bピラートリム184に干渉することなく、車室内へ円滑に膨張展開することが可能である。
【0066】
(第3実施形態)
図
8は、第3実施形態にかかるカーテンエアバッグ装置(以下、「エアバッグ300」と記載する)を例示する図である。エアバッグ300は、保持手段が第2実施形態にかかるエアバッグ200のそれと異なる。なお、第2実施形態と機能および構成が同様の要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0067】
図
8(a)は、エアバッグ300を背面側(車室側面側)からみた状態を例示する図であり、第2実施形態における
図6(a)に対応する図である。本実施形態にかかるエアバッグ300では、保持手段として縫製糸360が、スロート部134の幅方向の両端近傍にそれぞれ設けられていて、これによって折り返し部250が保持されている。
【0068】
縫製糸360は、クッション部140の膨張によって解けるように縫製されていて、クッション部140の膨張展開を阻害することなく折り返し部250を保持可能である。本実施形態にかかるエアバッグ300においても、第2実施形態にかかるエアバッグ200と同様に、境界L1が、中心線L2よりもルーフサイドレール110側に位置するような姿勢を保持する必要がある。ここで、エアバッグ300では、保持手段たるタブ170によってもこの姿勢を保持することができるため、粘着テープの有する姿勢保持機能を利用しなくても支障はない。この姿勢によって、エアバッグ300は、Bピラートリム184に干渉することなく、車室内へ円滑に膨張展開することができる。
【0069】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、以上に述べた実施形態は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定される主旨の記載がない限り、この発明は、添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨の記載がない限り、それに限定されるものではない。
【0070】
したがって、当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0071】
また、上記実施形態においては本発明にかかるカーテンエアバッグを自動車に適用した例を説明したが、自動車以外にも航空機や船舶などに適用することも可能であり、同様の作用効果を得ることができる。