特許第5731156号(P5731156)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731156
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】器具固定枠
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/02 20060101AFI20150521BHJP
   H01H 9/02 20060101ALN20150521BHJP
【FI】
   H02G3/02 301C
   !H01H9/02 N
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-216610(P2010-216610)
(22)【出願日】2010年9月28日
(65)【公開番号】特開2012-75220(P2012-75220A)
(43)【公開日】2012年4月12日
【審査請求日】2013年2月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 佳樹
【審査官】 神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−067228(JP,A)
【文献】 特開2004−088913(JP,A)
【文献】 特開2007−228652(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/02
H01H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を介して壁裏に配置されるとともに、前記固定部を使用して器具又は前記器具の器具枠が壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具固定枠であって、
前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面と、前記器具が挿通される挿通孔とを有する枠本体を備え、
前記枠本体の辺部には、前記固定部を備えるとともに剛性を有する少なくとも一対の剛性部が設けられるとともに、前記剛性部の間に位置する辺部には、前記剛性部を互いに接離する方向へ変位させる弾性変形可能な変形部が設けられ、
前記枠本体の辺部の上枠部、下枠部、左側枠部及び右側枠部に設けられた前記剛性部の表面が前記当接面として機能することを特徴とする器具固定枠。
【請求項2】
前記変形部の厚みは、前記剛性部の厚みよりも薄く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の器具固定枠。
【請求項3】
前記変形部は、前記当接面から離間する方向に向けて膨出しながら弧状に湾曲する湾曲部を備えていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の器具固定枠。
【請求項4】
前記変形部は、対向する固定部を結ぶ第1直線の両側に位置する前記枠本体の辺部に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の器具固定枠。
【請求項5】
前記第1直線に直交し、各固定部を通過する直線を第2直線とすると、前記辺部において、前記第1直線に沿って前記変形部から前記第2直線に達するまでの部位、及び前記第2直線よりも外方に位置する部位が前記剛性部になっているとともに、前記剛性部の表面のうちの前記壁孔よりも外側に位置する部位は前記当接面になっていることを特徴とする請求項4に記載の器具固定枠。
【請求項6】
前記枠本体は矩形枠状に形成されるとともに、
前記変形部は、前記枠本体の長辺側の辺部に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の器具固定枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具固定枠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の壁に例えば配線器具を設置するために、壁裏には器具固定枠が配設される。この器具固定枠は、壁材に形成された壁孔を介して壁表側から壁裏に配置される。そして、配線器具が保持された器具枠と器具固定枠とで壁材を挟持した状態で、器具枠のビス挿通孔及び壁孔を介して器具固定枠のボス孔に固定ビスを螺合することで、器具固定枠を用いて配線器具が壁に設置される。このような器具固定枠としては、例えば特許文献1に開示されているものがある。
【0003】
特許文献1の配線器具取付け具は、壁板に形成された配線器具取付孔(壁孔)を介して壁表から壁裏へ挿入される挟み金具(器具固定枠)を備える。さらに、配線器具取付け具は、挟み金具のねじ孔にねじを螺合させて締め付けることにより、配線器具取付孔の上下部の壁板を挟み金具とで挟着固定する器具取付板(器具枠)を備えている。
【0004】
挟み金具は、配線器具を挿入可能とする長方形状の挿入孔を有する略ロ字型の枠状に形成された挟み金具本体(枠本体)と、この挟み金具本体の上下部の中央部であって、配線器具取付孔内に位置する部位に形成されたねじ孔とを備えている。さらに、挟み金具は、配線器具取付孔の上下部と係止する上下位置決め片と、挟み金具本体と一体形成された挿入孔の両端部より他方の端部方向に突出する二対の壁に係止可能な係止片とを備えている。
【0005】
そして、特許文献1の配線器具取付け具において、上記構成の挟み金具は、挟み金具本体を壁裏に配置した状態で、上下位置決め片を配線器具取付孔の上下部の周縁部に係止させ、さらに、係止片を配線器具取付孔の周縁部の壁板に沿うように折り曲げることで壁板に仮固定される。その後、配線器具取付孔を覆うように器具取付板を配線器具取付孔に配置するとともに、挟み金具本体のねじ孔に、器具取付板のねじ挿入孔に挿通されたねじを螺合して締め込む。すると、挟み金具が壁板に本固定され、壁板に配線器具が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−328984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、壁においては、一対の壁板が対向配置されてなるものがあるが、一対の壁板間の間隔が狭かったり、一枚の壁板の厚みが厚かったりする場合がある。これらの場合、挟み金具本体を配線器具取付孔に挿入する際に、挟み金具本体が壁裏側の壁板に干渉してしまうため、配線器具取付孔に対して挟み金具本体を通過させることができない。
【0008】
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的は、壁孔に対して枠本体全体を容易に通過させることができる器具固定枠を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、対向配置された固定部を少なくとも一対備え、壁材に穿設された壁孔を介して壁裏に配置されるとともに、前記固定部を使用して器具又は前記器具の器具枠が壁表に設置されることで、前記壁材を前記器具又は前記器具枠とで挟持して壁裏に固定される器具固定枠であって、前記壁材の裏面における前記壁孔の周縁に当接する当接面と、前記器具が挿通される挿通孔とを有する枠本体を備え、前記枠本体の辺部には、前記固定部を備えるとともに剛性を有する少なくとも一対の剛性部が設けられるとともに、前記剛性部の間に位置する辺部には、前記剛性部を互いに接離する方向へ変位させる弾性変形可能な変形部が設けられ、前記枠本体の辺部の上枠部、下枠部、左側枠部及び右側枠部に設けられた前記剛性部の表面が前記当接面として機能することを要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記変形部の厚みは、前記剛性部の厚みよりも薄く形成されていることを要旨とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記変形部は、前記当接面から離間する方向に向けて膨出しながら弧状に湾曲する湾曲部を備えていることを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記変形部は、対向する固定部を結ぶ第1直線の両側に位置する前記枠本体の辺部に設けられていることを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記第1直線に直交し、各固定部を通過する直線を第2直線とすると、前記辺部において、前記第1直線に沿って前記変形部から前記第2直線に達するまでの部位、及び前記第2直線よりも外方に位置する部位が前記剛性部になっているとともに、前記剛性部の表面のうちの前記壁孔よりも外側に位置する部位は前記当接面になっていることを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の発明において、前記枠本体は矩形枠状に形成されるとともに、前記変形部は、前記枠本体の長辺側の辺部に設けられていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、壁孔に対して枠本体全体を容易に通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における器具固定枠及び器具枠を示す斜視図。
図2】(a)は器具固定枠の正面図、(b)は図2(a)におけるA−A線断面図。
図3】器具固定枠の一部が壁孔に挿入された状態を示す斜視図。
図4】変形部が弾性変形して一対のボス部が互いに近づく側へ変位している状態を示す斜視図。
図5】器具固定枠が壁孔に対して位置決めされた状態で壁裏に仮止めされた状態を示す正面図。
図6】輪ゴムを壁表側へ引っ張った状態を示す斜視図。
図7】スイッチの前面に輪ゴムを引っ掛けた状態を示す斜視図。
図8】器具枠が壁に設置された状態を示す縦断面図。
図9】(a)及び(b)は別の実施形態における器具固定枠を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1図8にしたがって説明する。また、本実施形態における器具固定枠10は、器具としてのスイッチSが保持された状態の器具枠Hを建築物の壁Wに一つ設置するために壁W裏に設置されるものである。
【0017】
まず、壁Wについて説明する。
図8に示すように、壁Wは、図示しない柱と、その柱の前後両面に立設される一対の壁材W1とによって構成されている。また、一対の壁材W1の間には中空部K(壁W裏)が形成されるとともに、中空部KにはケーブルCが配設されている。なお、本実施形態において、壁材W1の所望位置には縦長楕円形状の壁孔W2が穿設される。この壁孔W2は、開口形状が縦長楕円形状をなすカップ状のケーシングを備えた電動穿孔具(図示せず)を用いて壁材W1に穿設される。
【0018】
次に、器具固定枠10について説明する。
図1に示すように、器具固定枠10は、矩形枠状に形成される合成樹脂材料製の枠本体11を備えている。
【0019】
図2(a)に示すように、枠本体11は、対向する短辺を構成するとともに互いに平行に延びる辺部としての上枠部12及び下枠部13を備えている。また、枠本体11は、対向する長辺を構成するとともに上枠部12の右端部と下枠部13の右端部とを繋ぐ辺部としての右側枠部14、及び上枠部12の左端部と下枠部13の左端部とを繋ぐ辺部としての左側枠部15を備えている。そして、枠本体11の中央部には、上枠部12、下枠部13、右側枠部14及び左側枠部15により挿通孔11aが囲み形成されている。
【0020】
上枠部12及び下枠部13における長辺方向の長さは同じであるとともに、右側枠部14及び左側枠部15における長辺方向の長さは同じになっている。右側枠部14及び左側枠部15は、上枠部12及び下枠部13に対して直交する方向へ延びている。上枠部12及び下枠部13の表面12a,13a(一端面)と、右側枠部14及び左側枠部15の表面14a,15a(一端面)とは同一面上に位置しており、これら表面12a,13a,14a,15aは、壁材W1の裏面における壁孔W2の周縁全周に亘って当接する当接面として機能する。
【0021】
上枠部12及び下枠部13の中央部内側それぞれには、固定部としてのボス部16が互いに対向配置され、枠本体11は一対のボス部16を備えている。各ボス部16の表面は上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aよりも突出しており、各ボス部16の厚みは上枠部12及び下枠部13の厚みよりも厚くなっている。各ボス部16には、上枠部12又は下枠部13の厚み方向へ貫通する円孔状のボス孔16aが形成されるとともに、各ボス部16内にはナットN1(図1参照)が埋設されている。そして、ナットN1には、器具枠Hを一対のボス部16に固定するための固定ビスB1が螺合可能になっている。各ボス部16は剛性を有するとともに、ナットN1に固定ビスB1が螺進退されても弾性変形することがない。
【0022】
上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aにおいて、各ボス部16よりも外側には係止突起17がそれぞれ設けられている。各係止突起17は、上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aに対して直交する方向へ延びるように突出するとともに、各ボス部16に対して外側へ膨らむように弧状に湾曲して形成されている。また、各係止突起17は、各係止突起17における各ボス部16側とは反対側の側面全体が、壁孔W2の内周面において、壁孔W2における長辺側の対向する円弧部分それぞれに沿うように円弧状に形成されている。
【0023】
右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向中央部の挿通孔11a側それぞれには、取付片25が右側枠部14及び左側枠部15の長辺方向に沿って細長に延びるように設けられている。各取付片25は、右側枠部14又は左側枠部15と一体形成されており、各取付片25における挿通孔11a側の側面と、右側枠部14又は左側枠部15における挿通孔11a側の側面とが同一平面上になっている。
【0024】
また、各取付片25は、基端のみが右側枠部14又は左側枠部15に一体化されるとともに、各取付片25の先端と右側枠部14又は左側枠部15との間には隙間25aが形成されている。さらに、各取付片25における挿通孔11a側とは反対側の側面と、右側枠部14又は左側枠部15との間には取付用空間25bが形成されるとともに、各取付用空間25bは、隙間25aを介して挿通孔11a側に開放されている。また、各取付片25の先端には、取付用空間25b側へ膨出する膨出部25cが形成されている。図1に示すように、各取付片25には、引寄せ部としての輪ゴムGが各取付片25同士の間に架け渡されるようにして取り付けられる。
【0025】
図2(b)に示すように、右側枠部14及び左側枠部15における取付片25を挟む位置それぞれには、湾曲部32が設けられている。この湾曲部32は、右側枠部14又は左側枠部15の表面14a,15aから離間する方向に向けて膨出しながら弧状に湾曲するように形成されている。右側枠部14及び左側枠部15の中央部、すなわち、両湾曲部32を挟む部位、及び両湾曲部32の間の部位は、右側枠部14及び左側枠部15のその他の部位の厚みよりも薄く形成されている。また、両湾曲部32の間の部位において、上枠部12及び下枠部13の長辺方向に沿った取付片25と重合する部位の幅は、取付片25が形成されている分だけ、右側枠部14及び左側枠部15のその他の部位の幅よりも狭くなっている。そして、右側枠部14及び左側枠部15の中央部は、一対のボス部16を互いに接離する方向へ変位させるべく弾性変形可能な変形部31となっている。つまり、変形部31は、枠本体11における一対のボス孔16a同士を結ぶ第1直線L1の両側に位置する右側枠部14及び左側枠部15に設けられている。
【0026】
図2(a)に示すように、第1直線L1に直交し、各ボス部16を通過する直線を第2直線L2とすると、枠本体11において、第1直線L1に沿って変形部31から第2直線L2に達するまでの部位、及び第2直線L2よりも外方に位置する部位が剛性部として機能する。よって、右側枠部14及び左側枠部15における変形部31が設けられた位置よりも上枠部12側の部位、及びボス部16を備えた上枠部12は、剛性を有する一方の剛性部として機能する。一方、右側枠部14及び左側枠部15における変形部31が設けられた位置よりも下枠部13側の部位、及びボス部16を備えた下枠部13は、剛性を有する他方の剛性部として機能する。
【0027】
次に、上記構成の器具固定枠10を用いてスイッチSを壁Wに設置する方法について説明する。なお、各取付片25には、輪ゴムGが各取付片25同士の間に架け渡されるように予め取り付けられている。
【0028】
まず、一方の壁材W1の所望位置に壁孔W2を、電動穿孔具を用いて穿設するとともに、中空部Kに配設されたケーブルCを壁孔W2から壁材W1の表側に引き出す。
次に、図3に示すように、作業者は、枠本体11における上枠部12側のボス部16辺りを掴んで器具固定枠10を把持するとともに、ケーブルCを挿通孔11aの内側を通過させた状態で、枠本体11を、長辺方向に沿う方向を挿入方向として、下枠部13側から壁孔W2を介して中空部K内に挿入する。すると、下枠部13の外側面が他方の壁材W1における中空部K側の壁面に当接(干渉)する。ここで、作業者は、上枠部12側のボス部16を上枠部12の裏面側に向けて押圧する。
【0029】
すると、図4に示すように、各湾曲部32の間隔が狭くなるように変形部31が弾性変形する。これにより、枠本体11の表面側では、一対のボス部16が互いに近づく側へ変位し、枠本体11が、枠本体11の裏面側が外方へ膨出して弧状に湾曲するように撓った状態になる。作業者は、この状態を維持しながら、枠本体11を中空部K内に挿入する。すると、枠本体11全体が壁孔W2を通過して、器具固定枠10が中空部K内に位置する。枠本体11全体が壁孔W2を通過すると変形部31は原形状に復帰する。
【0030】
次に、図5に示すように、作業者は、各係止突起17における各ボス部16側とは反対側の側面全体が、壁孔W2の内周面において、壁孔W2における長辺側の対向する円弧部分それぞれに沿うように位置調整しながら、各係止突起17を壁孔W2内に挿入する。さらに、各表面12a,13a,14a,15aにおける壁孔W2よりも外側に位置する部位が壁材W1の裏面における壁孔W2周縁全周に亘って当接し、枠本体11は、壁孔W2に対して位置決めされた状態で仮固定される。このとき、取付片25は、壁孔W2内に位置するとともに壁W表に臨んだ状態になっている。
【0031】
次に、図6に示すように、輪ゴムGを壁W表側へ引っ張り、枠本体11を壁W表側へ引き寄せる。輪ゴムGを壁W表側へ引っ張ると、取付片25を介して右側枠部14及び左側枠部15が壁W表側へ引っ張られる。これにより、枠本体11を中空部K内へ挿入する際に生じた枠本体11の撓りを元に戻すことができる。
【0032】
次に、図7に示すように、器具枠Hに予め保持されたスイッチSにケーブルCを接続するとともに、その器具枠Hを輪ゴムGの内側に配置しながら壁材W1の表側に配置し、スイッチSの前面に輪ゴムGを引っ掛ける。すると、輪ゴムGにより、器具枠Hが壁W側に引き寄せられるとともに、器具枠Hの上下両部が壁材W1の表面に当接する。そして、図8に示すように、固定ビスB1を、器具枠Hのビス挿通孔H1、壁孔W2及びボス孔16aを介してナットN1に締め込む。これにより、器具固定枠10は、壁材W1を器具枠Hと共に挟持した状態で、壁材W1裏面に固定されるとともに、スイッチSが壁Wに設置される。その後、取付片25を、基端を基点にして折り曲げ除去し、輪ゴムGを回収する。
【0033】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)枠本体11の右側枠部14及び左側枠部15には、一対のボス部16を互いに接離する方向へ変位させるべく弾性変形可能な変形部31が設けられている。よって、一対の壁材W1の間隔が狭く、壁孔W2に枠本体11を挿入する際に、壁W裏側の壁材W1に枠本体11が干渉しても、変形部31によって枠本体11の裏面側が外方へ膨出して弧状に湾曲するように枠本体11を変形させることで、壁孔W2に対して枠本体11全体を容易に通過させることができる。
【0034】
(2)枠本体11において、第1直線L1に沿って変形部31から第2直線L2に達するまでの部位、及び第2直線L2よりも外方に位置する部位が剛性部として機能するとともに、この剛性部の表面における壁孔W2よりも外側に位置する部位は当接面として機能する。よって、例えば、上枠部12及び下枠部13の表面12a,13aのみが壁材W1の裏面に当接する場合に比べて、枠本体11と壁材W1の裏面との接触面積が大きくなるとともに、枠本体11と壁孔W2との接触部位が剛性を有しているため、器具固定枠10と器具枠Hとの間に壁材W1を強固に挟持することができる。また、各表面12a,13a,14a,15aは、壁孔W2を取り囲むように壁材W1の裏面に当接する。よって、スイッチSを壁W表側に引っ張る力が作用しても、枠本体11の変形を防止することができる。
【0035】
(3)変形部31の厚みは、右側枠部14及び左側枠部15の変形部31以外の部位の厚みよりも薄く形成されている。よって、変形部31の厚みが右側枠部14及び左側枠部15の変形部31以外の部位の厚みと同じ厚みに形成されている場合に比べて、変形部31の弾性変形を容易なものとすることができる。
【0036】
(4)変形部31は湾曲部32を備えている。よって、変形部31が弾性変形する際に、各湾曲部32の間隔が狭くなるように湾曲部32が弾性変形することで、変形部31が弾性変形し易くなる。その結果、枠本体11を、枠本体11の裏面が外方へ膨出して弧状に湾曲するように撓った状態にさせ易くすることができる。
【0037】
(5)変形部31は枠本体11の長辺を構成する右側枠部14及び左側枠部15に設けられている。枠本体11を壁孔W2を介して中空部K内に挿入する際には、壁孔W2に枠本体11を通過させるため、枠本体11は、短辺側から壁孔W2に挿入され、長辺方向に沿う方向を挿入方向として中空部K内に挿入される。よって、枠本体11を中空部K内に挿入すると、枠本体11が壁材W1に当接し易くなるが、変形部31が、枠本体11の長辺を構成する部位に設けられているため、枠本体11を変形させて、壁孔W2に対して枠本体11を通過させることができる。
【0038】
(6)各ボス部16は剛性を有している。よって、ナットN1に固定ビスB1が螺進退されても、各ボス部16が弾性変形することがなく、壁材W1を枠本体11と器具枠Hとで強固に挟持した状態で、器具固定枠10を壁材W1裏面に固定することができる。
【0039】
(7)右側枠部14及び左側枠部15において、その長辺方向における中央部の挿通孔11a側それぞれには取付片25が設けられるとともに、各取付片25には輪ゴムGが各取付片25同士の間に架け渡されるようにして取り付けられている。よって、輪ゴムGを壁W表側へ引っ張ることで、枠本体11を中空部K内へ挿入する際に生じた枠本体11の撓りを元に戻すことができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 本発明を、スイッチSが保持された状態の器具枠Hを壁Wに一つ設置する場合に用いられる器具固定枠10に適用したが、これに限らず、器具枠Hを壁Wに二つ以上並設する場合に用いられる器具固定枠に適用してもよい。例えば、図9(a)又は(b)に示すように、器具固定枠60,70の枠本体61,71を構成する上枠部62,72及び下枠部63,73の内側には、ボス部16が互いに対向するように二対又は三対設けられている。隣り合うボス部16同士の間の間隔は、同じ幅のスイッチSが保持された器具枠Hが各一対のボス部16に対して固定されて、器具枠Hを壁Wに二つ又は三つ並設可能な間隔になっている。また、枠本体61,71を構成する右側枠部64,74及び左側枠部65,75における長辺方向の中央部には変形部31が設けられている。
【0041】
なお、図9(b)に示す枠本体71においては、上枠部72及び下枠部73が枠本体71の長辺を構成するとともに、右側枠部74及び左側枠部75が枠本体71の短辺を構成している。よって、図9(b)に示す実施形態では、変形部31が、上枠部72及び下枠部73における隣り合うボス部16の間に設けられていてもよい。これによれば、枠本体71を壁孔W2を介して中空部K内に挿入する際に、枠本体71の長辺方向に沿う方向を挿入方向とするため、上枠部72及び下枠部73側が弾性変形することで、枠本体71を壁孔W2を介して中空部K内に容易に挿入することができる。この場合、変形部31が設けられた位置よりも右側枠部74側の一対のボス部16及び右側枠部74が一方の剛性部として機能するとともに、変形部31が設けられた位置よりも左側枠部75側の一対のボス部16及び左側枠部75が他方の剛性部として機能する。
【0042】
○ 実施形態において、変形部31の厚みは、右側枠部14及び左側枠部15の変形部31以外の部位の厚みよりも薄く形成されていたが、これに限らず、変形部31の厚みが右側枠部14及び左側枠部15の変形部31以外の部位の厚みと同じであってもよい。この場合、変形部31を、例えば蛇腹状に形成することで、変形部31を弾性変形し易くする。
【0043】
○ 実施形態において、変形部31は湾曲部32を備えていたが、これに限らず、湾曲部32を削除してもよい。
○ 実施形態において、輪ゴムGは、各取付片25同士の間に架け渡されるように取り付けられていたが、これに限らず、例えば、輪ゴムGを、右側枠部14及び左側枠部15の中央部外側面を取り囲むように巻き付けて、右側枠部14及び左側枠部15の中央部の間に架け渡されるように取り付けてもよい。
【0044】
○ 実施形態において、壁材W1に穿設される壁孔W2の形状は縦長楕円形状であったが、これに限らず、例えば、縦長四角形状、小判形状、真円を一部分が重合するように二つ形成した略瓢箪状、又は複数の円形の穿孔を一部重合させて形成された壁孔であってもよい。
【0045】
○ 実施形態において、器具枠Hに取り付けられる器具はスイッチSであったが、これに限らず、器具枠Hに取り付けられる器具は、例えば、コンセントや報知器であってもよい。
【0046】
○ 器具として報知器を適用した場合は、報知器をボス部16に直接固定して、報知器と器具固定枠10とで壁材W1を挟持することで、壁Wに報知器を設置するようにしてもよい。
【0047】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記変形部には、前記枠本体を前記壁表側に引き寄せるための引寄せ部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の器具固定枠。
【0048】
(ロ)前記引寄せ部は伸縮可能な弾性体で形成されていることを特徴とする前記技術的思想(イ)に記載の器具固定枠。
【符号の説明】
【0049】
B1…固定ビス、G…引寄せ部としての輪ゴム、H…器具枠、W…壁、W1…壁材、W2…壁孔、S…器具としてのスイッチ、10,60,70…器具固定枠、11,61,71…枠本体、11a…挿通孔、12…剛性部として機能する辺部としての上枠部、12a,13a,14a,15a…当接面として機能する表面、13…剛性部として機能する辺部としての下枠部、14…辺部としての右側枠部、15…辺部としての左側枠部、16…固定部としてのボス部、31…変形部、32…湾曲部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9