特許第5731171号(P5731171)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5731171薄膜トランジスタ組成物およびこれに関する方法
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  • 特許5731171-薄膜トランジスタ組成物およびこれに関する方法 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731171
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタ組成物およびこれに関する方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20150521BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H01L29/78 626C
   H01L29/78 618B
【請求項の数】10
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2010-259876(P2010-259876)
(22)【出願日】2010年11月22日
(65)【公開番号】特開2011-109108(P2011-109108A)
(43)【公開日】2011年6月2日
【審査請求日】2013年11月21日
(31)【優先権主張番号】12/622,789
(32)【優先日】2009年11月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390023674
【氏名又は名称】イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン シー.オーマン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エドワード カーニー
(72)【発明者】
【氏名】コスタンティノス クルタキス
(72)【発明者】
【氏名】サラ ブサード
【審査官】 岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0163968(US,A1)
【文献】 特開2003−306553(JP,A)
【文献】 特表2003−531487(JP,A)
【文献】 特開2007−046045(JP,A)
【文献】 特開2009−194324(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/023929(WO,A1)
【文献】 特開2005−105035(JP,A)
【文献】 特公昭60−003430(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16、15/08−15/14
C08J 5/00− 5/24
H01L 21/336、29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのトランジスタを基板上に形成する方法であって:
基板上に、少なくとも1層の半導体材料を堆積させる工程であって、基板が:
a)層の40〜95重量パーセントの量のポリイミドであって:
i)少なくとも1種の芳香族二無水物であって、その少なくとも85モルパーセントが、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、およびこれらの混合物からなる群から選択される剛直性(rigid)ロッド型(rod type)二無水物である芳香族二無水物、および
ii)少なくとも1種の芳香族ジアミンであって、その少なくとも85モルパーセントが、1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジデン(TFMB)、1,5−ナフタレンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、およびこれらの混合物から選択される剛直性(rigid)ロッド型(rod type)ジアミンである芳香族ジアミン
に由来するポリイミド;ならびに
b)充填材であって:
a)少なくとも一方向の寸法が800ナノメートル未満であり;
b)3:1を超えるアスペクト比を有し;
c)すべての寸法が前記基板の厚さ未満であり;および
d)前記基板の総重量の5〜60重量パーセントの量で存在する
充填材
を含む工程を含み、
前記基板が8〜150ミクロンの厚さを有する方法であり、
前記半導体材料が前記基板上に堆積される前に、不活性化層が前記基板上に堆積される方法。
【請求項2】
前記不活性化層が、二酸化シリコンまたは窒化アルミニウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記不活性化層が、前記基板の両面に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
50ナノメートル未満の厚さを有する金属層が、基板上の、前記半導体材料と同じ側に、前記半導体材料の堆積よりも前に堆積される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記金属層が、連続フィルムとして堆積されると共に、その後、前記半導体材料のその上への堆積の前にパターン化される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
誘電体材料の層が、前記半導体材料の堆積の前に前記金属層上に堆積される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記半導体材料が非晶質シリコンを含み、前記半導体材料は、非晶質シリコン上に堆積されたn型シリコンの層をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
n型シリコンの連続層が非晶質シリコン上に堆積され、金属のパターン化層がその後n型シリコン上に形成され、および、得られた構造がその後エッチされて、前記金属のパターン化層によって被覆されていないn型シリコンの一部が除去される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体材料の堆積が前記基板の連続ウェブで実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記充填材が針状の二酸化チタンを含み、その少なくとも一部が酸化アルミニウムで被覆されていると共に、前記半導体材料が非晶質シリコンを含む、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄膜トランジスタ(「TFT」)アレイの製造に有用な基板に関する。より具体的には、本開示のフィルムは、ナノスケール繊維充填材が加えられた剛直性ポリイミドを含む。
【背景技術】
【0002】
概して、薄膜トランジスタ(TFT)は公知である。TFTは、例えば、液晶または電気泳動ディスプレイ等といった種々のタイプのディスプレイの制御に有用である。一般的に、TFTは、通例、通例ガラスである剛性の基板上に構成される。しかしながら、軽量性および高い堅牢性(ガラスと比して)のために、特に可撓性ポリマーフィルムといった可撓性基板上へのTFTの製作に関心が高まっている。非晶質シリコン半導体ベースのTFTは、比較的少ないプロセスステップ数および比較的低い熱収支での製作を可能とするため、このような可撓性基板での使用に魅力的である。しかしながら、ポリマーフィルムは、一般に、このようなTFT用途に対して十分な熱安定性または寸法安定性を有さない。従って、TFT用途においてガラスの代替として機能することが可能であるポリマー基板であって、特に、総コストを削減し、性能を向上し、軽量化し、堅牢性を高め、および、製造を単純化することが可能であるポリマー基板の発見に対する産業における関心は高まる一方である。Denisらへの(特許文献1)は、半導体非晶質シリコンがポリフェニレンポリイミドを含む基板上に製作されている半導体複合体に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,825,068号明細書
【特許文献2】米国特許第5,930,026号明細書
【特許文献3】米国特許第5,961,804号明細書
【特許文献4】米国特許第6,017,584号明細書
【特許文献5】米国特許第6,067,185号明細書
【特許文献6】米国特許第6,118,426号明細書
【特許文献7】米国特許第6,120,588号明細書
【特許文献8】米国特許第6,120,839号明細書
【特許文献9】米国特許第6,124,851号明細書
【特許文献10】米国特許第6,130,773号明細書
【特許文献11】米国特許第6,130,774号明細書
【特許文献12】米国特許第6,172,798号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の組成物は、充填ポリイミド基板を含む。ポリイミド基板は、約8〜約150ミクロンの厚さを有すると共に、i.少なくとも1種の芳香族二無水物であって、少なくとも約85モルパーセントが剛直性二無水物であるこのような芳香族二無水物、ii.少なくとも1種の芳香族ジアミンであって、少なくとも約85モルパーセントが剛直性ジアミンであるこのような芳香族ジアミンに由来する約40〜約95重量パーセントのポリイミドを含有する。本開示のポリイミド基板は:i.少なくとも一方向の寸法が約800ナノメートル未満であり;ii.約3:1を超えるアスペクト比を有し;iii.すべての寸法がフィルムの厚さ未満であり;およびiv.基板の総重量の約5〜約60重量パーセントの量で存在する一次粒子(数値平均として)を有する充填材をさらに含む。本開示の組成物は、ポリイミド基板によって支持されているトランジスタアレイをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示のポリイミド基板上に形成された薄膜トランジスタアレイの単一トランジスタの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
「フィルム」は、基板上の自立形フィルムまたはコーティングを意味することが意図されている。「フィルム」という用語は用語「層」と同義的に用いられると共に、所望の領域を被覆していることを指す。
【0007】
「半導体」は、いずれかの半導体材料であって、特に非晶質シリコンを意味することが意図されているが、以下のいずれかも包含される:
1.第IV族半導体(シリコン、ゲルマニウム、ダイアモンド);
2.第IV族化合物半導体(SiGe、SiC);
3.第III−V族半導体(AlSb、AlAs、AlN、AlP、BN、BP、BAs、GaSb、GaAs、GaN、GaP、InSb、InAs、InN、InP);
4.第III−V族半導体合金(AlGaAs、InGaAs、InGaP、AlInAs、AlInAs、AlInSb、GaAsN、GaAsP、AlGaN、AlGaP、InGaN、InAsSb、InGaSb);
5.第III−V族第4級半導体合金(AlGaInP、AlGaAsP、InGaAsP、InGaAsP、AlInAsP、AlGaAsN、InGaAsN、InAlAsN、GaAsSbN);
6.第III−V族5元半導体合金(GaInNAsSb、GaInAsSbP):
7.第II−VI族半導体(CdSe、CdS、CdTe、ZnO、ZnSe、ZnS、ZnTe);
8.第II−VI族3元合金半導体(CdZnTe、HgCdTe、HgZnTe、HgZnSe);
9.第I−VII族半導体(CuCl);
10.第IV−VI族半導体(PbSe、PbS、PbTe、SnS、SnTe);
11.第IV−VI族3元半導体(PbSnTe、Tl2SnTe5、Tl2GeTe5);
12.第V−VI族半導体(Bi2Te3)
13.第II−V族半導体(Cd32、Cd3As2、Cd3Sb2、Zn32、Zn3As2、Zn3Sb2)
14.多層半導体(PbI2、MoS2、GaSe、SnS、Bi23)
15.その他(CIGS、PtSi、BiI3、HgI2、TlBr);
16.等。
【0008】
本明細書において用いられるところ、「二無水物」は、技術的には二無水物ではないかもしれないが、それにもかかわらず、ジアミンと反応して、次いでポリイミドに転化されることが可能であるポリアミド酸を形成することが可能であるために機能的に等しい、二無水物の前駆体および誘導体(またはこれに関連する組成物)をも包含することが意図される。
【0009】
同様に、「ジアミン」は、技術的にはジアミンではないかもしれないが、それにもかかわらず、二無水物と反応して、次いでポリイミドに転化されることが可能であるポリアミド酸を形成することが可能であるために機能的に等しいジアミンの前駆体および誘導体(またはこれに関連する組成物)も包含することが意図される。
【0010】
本明細書において用いられるところ、「を含む(comprises)」、「を含んでいる(comprising)」、「を含む(includes)」、「を含んでいる(including)」、「を有する(has)」、「を有している(having)」という用語またはこれらのいずれかの他の変形は、非排他的な包含を網羅すると意図される。一連の構成要素を含む、例えば、方法、プロセス、物品、または装置は、必ずしも、これらの構成要素のみに限定されず、明白に列挙されていない、または、このような方法、プロセス、物品、あるいは装置に固有の他の構成要素を含んでいてもよい。さらに、そうでないと明記されていない限りにおいて、「または」は、包括的な「または」を指し、排他的な「または」を指さない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれか1つにより満たされる:Aが真であり(または存在し)およびBが偽である(または不在である)、Aが偽であり(または不在であり)およびBが真である(または存在する)、およびAおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0011】
また、単数形の冠詞(「a」または「an」)の使用は、本発明の要素および構成要素を説明するために利用される。これは、単に簡便性のため、および本発明の一般的な意味を提供するためになされる。この記載は1つまたは少なくとも1つを包含し、単数形はまた、そうでないことを意味することが明らかでなければ複数形を包含すると読解されるべきである。
【0012】
本開示の支持フィルムは、略室温から400℃、425℃または450℃を超える温度までなどの幅広い温度範囲内で、収縮またはクリープ(リールツーリール処理などの張力下でも)に耐える。一実施形態において、本開示の支持フィルムは、7.4〜8.0MPa(メガパスカル)の範囲内の応力下にありながら、30分間、450℃の温度に供された場合、1、0.75、0.5、または0.25パーセント未満の寸法変化を伴う。
【0013】
本開示のポリイミド支持フィルムは、熱的に安定な無機物:布、紙(例えば、マイカ紙)、シート、スクリムまたはこれらの組み合わせで強化されていることが可能である。本開示の支持フィルムは、TFT用途に適切な電気絶縁性、または、誘電特性を有する。いくつかの実施形態において、本開示の支持フィルムは:
i.低表面粗度、すなわち、1000、750、500、400、350、300または275ナノメートル未満の平均表面粗度(Ra);
ii.低レベルの表面欠陥;および/または
iii.他の有用表面形態学、
をもたらして、電気的短絡などの不要な欠陥を低減させるか抑制する。
【0014】
一実施形態において、本開示のフィルムは、以下:1、5、10、15、20、および25ppm/℃のいずれか2つの間(および任意により両端を含む)の範囲内の面内CTEを有し、ここで、面内熱膨張係数(CTE)は、50℃〜350℃で計測される。いくつかの実施形態において、この範囲内のCTEは、さらに最適化されて、本開示により選択されたいずれかの特定の被支持半導体材料の熱膨張の不整合による望ましくない亀裂をさらに低減するかなくす。一般に、ポリイミドが形成される場合、化学転化法(熱転化法と対照的に)が、CTEがより低いポリイミドフィルムをもたらすこととなる。これは、その上に堆積された繊細な導体および半導体層ときわめて整合性の高い、きわめて低いCTE(<10ppm/℃)値を達成することが可能であるために、いくつかの実施形態において特に有用である。ポリアミド酸をポリイミドに転化する化学転化法は周知であって、ここでのさらなる説明は必要ない。ポリイミド支持フィルムの厚さもまたCTEに影響することが可能であり、ここで、より薄いフィルムはより低いCTE(および、より厚いフィルムはより高いCTE)をもたらす傾向にあり、従って、フィルム厚さは、選択されたいずれかの特定の用途に応じてフィルムCTEを微調整するために用いられることが可能である。
【0015】
本開示のフィルムは、以下の:4、6、8、10、12、15、20、25、50、75、100、125および150ミクロンの厚さ(単位ミクロン)のいずれかの間(および、任意により両端を含む)の範囲の厚さを有する。本開示の範囲内のモノマーおよび充填材もまた、上記範囲内にCTEを微調整するために選択または最適化されることが可能である。選択されたいずれかの特定の用途に応じて、本開示のポリイミドフィルムのいずれかの特定のCTEの微調整には通常の技能および実験が必要であり得る。本開示のポリイミドフィルムの面内CTEは、TA InstrumentsTMA−2940を10℃/分で380℃まで作動させ、次いで、冷却すると共に380℃に再加熱する熱機械分析により得ることが可能であり、ここで、ppm/℃でのCTEは、50℃から350℃の間での再加熱走査の最中に得られる。
【0016】
本開示のポリイミド支持フィルムは、フィルムが、例えば、半導体堆積法の最中に、実質的に劣化せず、重量を損失せず、低い機械特性を有さず、または、顕著な揮発分を放出しないよう、高い熱安定性を有しているべきである。本開示のポリイミド支持フィルムは、過剰な重量または費用が加えられることのないよう十分に薄いが、場合によっては400、500、750または1000ボルト以上に達し得る作動電圧で高い電気絶縁性がもたらされるよう十分に厚くすべきである。
【0017】
本開示によれば、充填材が、ポリイミド貯蔵弾性率を高めるためにポリイミドフィルムに添加される。いくつかの実施形態において、本開示の充填材は、貯蔵弾性率をさらに高めつつも、ポリイミド層の熱膨張係数(CTE)を維持するか低下させるであろう。いくつかの実施形態において、充填材は、ポリイミドフィルムのガラス転移温度(Tg)を超えて貯蔵弾性率を高める。充填材の添加は、典型的には、高温での機械特性の維持を可能とすると共に、取り扱い特徴を向上させることが可能である。本開示の充填材は:
1.少なくとも一方向の寸法で、800ナノメートル未満(および、いくつかの実施形態においては、750、650、600、550、500、475、450、425、400、375、350、325、300、275、250、225、または200ナノメートル未満)の寸法を有し(充填材は任意の寸法で多様な形状を有することが可能であると共に充填材形状は任意の寸法に沿って異なることが可能であるため、「少なくとも一方向の寸法」は、その寸法に沿う数値的平均であると意図される);
2.3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15対1を超えるアスペクト比を有し;
3.すべての寸法において、フィルムの厚さの100、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15または10パーセント未満であり;ならびに
4.以下のパーセント:フィルムの総重量を基準とする5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、および60重量パーセントの任意により両端を含むいずれか2つの間の量で存在する。
【0018】
好適な充填材は、一般に、450℃超の温度で安定であると共に、いくつかの実施形態においてはフィルムの電気絶縁特性を顕著には低下させない。いくつかの実施形態において、充填材は、針様充填材、繊維状充填材、小板充填材およびこれらの混合物からなる群から選択される。一実施形態において、本開示の充填材は、少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15対1のアスペクト比を示す。一実施形態において、充填材アスペクト比は、6:1以上である。他の実施形態において、充填材アスペクト比は10:1以上であり、他の実施形態において、アスペクト比は12:1以上である。いくつかの実施形態において、充填材は、酸化物(例えば、シリコン、チタン、マグネシウムおよび/またはアルミニウムを含む酸化物)、窒化物(例えば、ホウ素および/またはシリコンを含む窒化物)またはカーバイド(例えば、タングステンおよび/またはシリコンを含むカーバイド)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、充填材は、酸素と、アルミニウム、シリコン、チタン、マグネシウムおよびこれらの組み合わせからなる群の少なくとも1種の構成要素とを含む。いくつかの実施形態において、充填材は、小板タルク、針状の二酸化チタン、および/または針状の二酸化チタンを含み、これにより、充填材の少なくとも一部が酸化アルミニウムで被覆されている。いくつかの実施形態において、充填材は、すべての寸法において、50、25、20、15、12、10、8、6、5、4、または2ミクロン未満である。
【0019】
さらに他の実施形態において、炭素繊維およびグラファイトは、機械特性を高めるために、他の充填材と組み合わせて用いられることが可能である。しかしながら、グラファイトおよび炭素繊維充填材は絶縁特性を低下させることが可能であると共に、多くの実施形態において電気絶縁特性の低下は所望されないために、グラファイトおよび/または炭素繊維の充填量を10%未満に維持するために頻繁に注意がなされなければならない。いくつかの実施形態において、充填材はカップリング剤で被覆されている。いくつかの実施形態において、充填材がアミノシランカップリング剤で被覆されている。いくつかの実施形態において、充填材は分散剤で被覆されている。いくつかの実施形態において、充填材は、カップリング剤および分散剤の組み合わせで被覆されている。あるいは、カップリング剤および/または分散剤は、フィルム中に直接的に組み込まれることが可能であり、必ずしも充填材に被覆される必要性はない。
【0020】
いくつかの実施形態において、最終フィルムが、確実に、所望の最大充填材サイズを超える非連続的ドメインを含有していることがないようろ過システムが用いられる。いくつかの実施形態において、充填材は、フィルムに組み込まれるとき(または、フィルム前駆体に組み込まれるとき)に、所望の最大充填材サイズを超える望ましくない凝塊を抑制するため、分散剤の使用が含まれる、攪拌および/または高せん断力混合または媒体ミルまたは他の分散技術などの強い分散エネルギーに供される。充填材のアスペクト比が高くなるに伴って、充填材の配向する傾向、または、自身をフィルムの外表面の間に位置させる傾向も高まり、これにより、特に充填材サイズが小さくなるに伴って、ますます平滑なフィルムがもたらされる。
【0021】
一般的に、表面粗度は、その上に堆積された1つまたは複数の層の機能に干渉することが可能であり、電気的または機械的欠陥の可能性を高めることが可能であり、および、フィルムに沿った特性の均一性を低下させることが可能であるため、フィルムの平滑性は本開示のTFT用途において所望される。一実施形態において、充填材(および、任意の他の非連続的なドメイン)は、フィルム形成において、充填材(および任意の他の非連続的なドメイン)が十分にフィルムの表面間にあって、1000、750、500または400ナノメートル未満の平均表面粗度(Ra)を有する最終フィルムがもたらされるよう、フィルム形成の最中に十分に分散される。本明細書においてもたらされる表面粗度は、Veeco Wyco NT 1000 Series機器で、25.4×または51.2×でのVSIモードで、Wyco Vision 32ソフトウェアを用いて計測されるなど、光学表面プロフィロメトリによって測定されてRa値がもたらされることが可能である。
【0022】
いくつかの実施形態において、充填材は、所望の処理温度で自身が劣化しないか、または、オフガスを生成しないよう選択される。同様に、いくつかの実施形態において、充填材は、ポリマーの劣化に寄与しないよう選択される。
【0023】
本開示の有用なポリイミドは:i.少なくとも1種の芳香族ジアミンであって、少なくとも85、90、95、96、97、98、99、99.5または100モルパーセントが剛直性モノマーであるもの;および、ii.少なくとも1種の芳香族二無水物であって、少なくとも85、90、95、96、97、98、99、99.5または100モルパーセントが剛直性モノマーであるものから誘導される。好適な剛直性、芳香族ジアミンモノマーとしては:1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジデン(TFMB)、1,4−ナフタレンジアミン、および/または1,5−ナフタレンジアミンが挙げられる。好適な剛直性、芳香族二無水物モノマーとしては、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、および/または3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が挙げられる。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明のいずれかの特定の用途について所望される特性に応じて、芳香族二無水物の15モルパーセント以下および/または芳香族ジアミンの15モルパーセント以下について、例えば:3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)、1,3−ジアミノベンゼン(MPD)、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、9,9’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、4,4’−オキシジフタル酸無水物(ODPA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、およびこれらの混合物といった他のモノマーもまた考慮され得る。本開示のポリイミドは、当該技術分野において周知である方法により形成されることが可能であり、これらの調製は、ここでのさらなる説明は必要ない。
【0025】
いくつかの実施形態において、フィルムは、溶剤、モノマー、プレポリマーおよび/またはポリアミド酸組成物などのフィルム前駆体材料中に充填材を組み込むことにより製造される。最終的には、充填ポリアミド酸組成物は、一般に、フィルムにキャストされ、これが乾燥工程および硬化工程(化学的硬化および/または熱硬化工程)に供されて、充填ポリイミド自立形または非自立形フィルムが形成される。いずれかの従来のまたは非従来式の充填ポリイミドフィルムを製造する方法が、本開示により用いられることが可能である。充填ポリイミドフィルムの製造は周知であり、ここでのさらなる説明は必要ない。一実施形態において、本開示のポリイミドは、300、310、320、330、340、350、360、370、380、390または400℃を超える高いガラス転移温度(Tg)を有する。高いTgは、一般に、高温での貯蔵弾性率などの機械特性の維持を助ける。
【0026】
いくつかの実施形態において、ポリイミド支持フィルムの結晶性および架橋の量は、貯蔵弾性率の保持を補助することが可能である。一実施形態において、480℃でのポリイミド支持フィルム貯蔵弾性率(動的機械分析DMAによる計測)は、少なくとも:400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1800、2000、2200、2400、2600、2800、3000、3500、4000、4500、または5000MPaである。
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示のポリイミド支持フィルムは、不活性雰囲気下で、500℃で約30分間の間に、1、0.75、0.5または0.3パーセント未満の等温性の重量損失を有する。本開示のポリイミドは、一般に通常の無機絶縁体よりも高い、強い誘電強度を有する。いくつかの実施形態において、本開示のポリイミドは、10V/マイクロメートル以上の破壊電圧を有する。いくつかの実施形態において、充填材は、酸化物、窒化物、カーバイドおよびこれらの混合物からなる群から選択され、フィルムは、以下の特性:i.300℃を超えるTg、ii.500ボルト/25.4ミクロンを超える誘電強度、iii.不活性雰囲気下に500℃で30分間の間に1%未満の等温性重量損失、iv.25ppm/℃未満の面内CTE、v.10×(10)-6/分未満の絶対値無応力残留勾配、および、vi.7.4〜8MPaで1%未満のemaxの、少なくとも1、2、3、4、5またはすべての6種を有する。いくつかの実施形態において、本開示のフィルムは、熱的に安定な無機物:布、紙、シート、スクリムまたはこれらの組み合わせで強化される。
【0028】
いくつかの実施形態において、電気絶縁性充填材がフィルムの電気特性を変更するために添加され得る。いくつかの実施形態において、ポリイミド支持フィルムは、ポリイミド支持フィルムの電気的整合性および誘電強度に悪影響をおよぼし得るピンホールまたは他の欠陥(外来性粒子、ゲル、充填材凝集物または他の混入物)を含んでいないことが重要であり、これは、一般にろ過により対応することが可能である。このようなろ過は、1種以上のモノマーに添加される前または後での溶媒和充填材のろ過、および/または、ポリアミド酸、特に低粘度であるときのポリアミド酸のろ過、または、ろ過が可能である製造プロセスにおける任意のステップでのろ過などの、フィルム製造における任意の段階で行われることが可能である。一実施形態において、このようなろ過は、最小の好適なフィルタ孔径で、または、選択された充填材材料の最大寸法よりもわずかに大きいレベルで実施される。
【0029】
単層フィルムは、フィルム中の望ましくない(または所望されないほどに大きな)非連続相材料によって生じてしまう欠陥の影響を低減させる試みにおいては、より厚くすることが可能である。あるいは、多層のポリイミドは、いずれかの特定の層における、いずれかの特定の欠陥(所望の特性を損ない得るサイズの望ましくない非連続相材料)の害を低減させるために用いられ得、一般的には、このような多層は、同一の厚さの単一のポリイミド層と比して、性能においてより少ない欠陥を有するであろう。多層のポリイミドフィルムの使用は、個別の層の各々に重複する欠陥を有する可能性はきわめて小さい傾向にあるため、フィルムの全厚にまたがり得る欠陥の発生を低減またはなくすことが可能である。従って、いずれか一層における欠陥が、フィルムの全厚を貫通する電気的破壊または他のタイプの破壊を生じさせる可能性はかなり低い。いくつかの実施形態において、ポリイミド支持フィルムは、2層以上のポリイミド層を含む。いくつかの実施形態において、ポリイミド層は同一である。いくつかの実施形態において、ポリイミド層は異なっている。いくつかの実施形態において、ポリイミド層は、独立して、熱的に安定な充填材、強化用の布、無機紙、シート、スクリムまたはこれらの組み合わせを含んでいてもよい。任意により、フィルムの0〜60重量パーセントは、他の処方成分(ポリイミドポリマーに追加して)も含むことで、任意の特定の用途に所望されるか、または、要求されるとおり特性が変更される。
【0030】
本開示のポリイミド基板の前述の特性は、TFTの製造における追加の層の堆積がポリイミド基板の連続ウェブで実施されることが可能である、ロールツーロール法での使用に良好に適応されている。
【0031】
ポリイミド基板は十分に熱安定性および寸法安定性を有しており、金属(または他の強化)バッキング層は一般に必要とされない。しかしながら、このような強化を、任意により、トランジスタ層が堆積されることとなる面と反対のフィルム表面に設けることが可能である。TFT用途において、このような金属(または他の強化)バッキング層は、一般に不要であるか、または、従来のこのような金属層の使用に比して、例えばわずかに約10、20、30、50、または75ナノメートルといったかなり薄い厚さで適用されることが可能である。この金属層は、トランジスタ構成プロセスの最中におけるフィルムの機械的完全性の増強に有用であることが可能であり、それ故、取り扱いの最中にポリイミドフィルムが延伸または歪んでしまういずれかの傾向の防止をさらに確実とし、これにより、その上へのトランジスタの形成の最中に基板が歪んでしまう可能性の低減に有用であることが可能である。加えて、金属(または他の強化)バッキング層は、ポリイミドフィルムの裏面への光の入射によって生じる半導体材料(例えば、非晶質シリコンフィルムにおける光発生電流)におけるあらゆる望ましくない光の影響を低減させるための光バリアとして機能することが可能である。金属(または他の強化)バッキング層は、用いられる場合、連続的である必要はなく;この層は、貫通して延びるアパーチャを有してその剛性を低減させていると共に、これにより、金属で裏打ちされた基板に更なる柔軟性をもたらしていてもよい。このようなアパーチャが設けられる場合、一般に、これらは規則的なパターンで形成されていることが所望され、従って、アパーチャのいくつかまたはすべてが、基板と構成プロセスにおいて用いられる装置との機械的位置合わせに用いられてもよい。実際に、場合によっては、パターン化された金属バッキング層は、基板上へのトランジスタの形成の最中のパターン化ステップにおけるフォトレジストの露光用のシャドーマスクとして用いられ得る。あるいは、または、加えて、染料をポリイミド自体に組み込んで、このような望ましくない光の影響を断つか、または、なくすことが有利であり得る。
【0032】
一実施形態において、シリカ、窒化アルミニウム、窒化シリコンまたは他の材料の不活性化層は、トランジスタの堆積に先立って基板上に堆積される。しかしながら、本開示のポリイミド基板は:i.比較的高い熱安定性および寸法安定性;ii.比較的低い引湿性膨張;および/またはiii.比較的高い表面電気抵抗(典型的には>1016オーム)を有するために、このような不活性化層は任意である。このような不活性化層は、任意により用いられることが可能であり、用いられる場合には、不活性化層は、一般に、ポリイミド基板の優れた性能により、例えば、任意により両端を含む、以下の厚さ:4、5、8、10、12、15、20、25および50nmのいずれか2つの間の範囲内といった従来よりも薄い厚さであることが可能である。不活性化は、ポリイミド表面の表面抵抗を高めて、これにより、隣接する導体との間の電気絶縁性を高めるためのみならず、処理の最中の基板による吸水を防止することにより基板の寸法安定性を高めるために有用であることが可能であり、後者の目的については、基板の両面上への不活性化層の配置のために所望される。本発明の基板の性能は、従来の不活性化基板の後焼成が不必要となり得るようなものである。不活性化基板のこのような後焼成が所望される場合には、例えば、任意により約300、275または250℃未満の温度といった従来よりも低い温度で、例えば、約1、2、3、4、5または6時間未満といった任意により従来よりも短い時間で実施されることが可能である。トランジスタ層がその上に形成された基板のこのような後焼成は、ポリイミドに吸収された水およびいずれかの他の揮発性材料を飛ばして、これにより、吸水によるポリイミドの膨潤を低減させると共に、その上へのトランジスタの形成の最中のポリイミドの寸法安定性を高めることが可能である。
【0033】
一実施形態においては、ゲート電極が基板に隣接して配設されている反転トランジスタ設計が実施される。このような反転トランジスタを形成するために、第1のステップ(既述の方法による任意の不活性化および/または基板の任意の前焼成のいずれかの後)は、例えばクロムといった金属層の基板上への堆積である。金属は、典型的には約50〜約200nmの範囲内の厚さを有する連続フィルムとして堆積されることが可能であり、その後、この金属は、典型的には、半導体材料の堆積に先立って従来のフォトリソグラフィー技術により、パターン化されて、形成されるべきトランジスタアレイのゲート電極およびセレクトラインを形成することが可能である。このような実施形態において、プロセスにおける次のステップは、例えば窒化シリコンといった誘電体材料の層の堆積であり;この堆積は、プラズマ促進化学蒸着により簡便に実施されることが可能である。次いで、非晶質シリコンなどの半導体材料が、プラズマ促進化学蒸着などによって蒸着される。非晶質シリコン層(および関連する誘電体層)は、非晶質シリコン層が隣接するトランジスタの対の間に連続して延在するよう、パターン化されないままとされることが可能である。次いで、n型シリコンの層が、プラズマ促進化学蒸着によって非晶質シリコンの上に堆積されることが可能である。最後に(化学蒸着プロセスから残渣を除去するための洗浄ステップの後)、例えばアルミニウム層といった金属層が、熱蒸発によってn型シリコン層上に蒸着されることが可能である。次いで、この金属層は、従来のフォトリソグラフィー技術によってパターン化されてソース電極およびドレイン電極を形成していることが可能であり、このパターン化された金属層は、例えば四フッ化炭素/酸素混合物でのエッチングといった、n型シリコン層の反応性イオンエッチング用のエッチングマスクとして用いられることが可能である。
【0034】
ここで、本開示のポリイミド基板上に形成された単一トランジスタを通る概略的な断面を示す添付の図面を参照して、本開示の一実施形態をより詳細に説明するが、これは単に例示のためである。添付の図面は、ポリイミド基板12上に形成されたトランジスタアレイ(一般に10で示されている)の単一トランジスタを示す。この基板12は、図面中においては、規則的に離間しているアパーチャ16(図面中においてはその1つのみが視認可能である)が貫通して延在している任意のステンレス鋼金属バッキング層14が設けられて示されている。基板12の上面(図面中に示されているとおり)上には、この基板からの種々の層の層剥離を生じさせるための、シリカまたは窒化シリコン製の任意の不活性化層18が堆積されている。
【0035】
不活性化層18の上面上には、離間された金属ゲート電極20のアレイ(図面中にはその1つしか示されていない)が堆積されていると共に、電極20の上には、窒化シリコン製の誘電体層22、および非晶質シリコンの層24が順番に堆積されている。誘電体層22および非晶質シリコン層24は、パターン化されないままであることが可能である。最後に、トランジスタアレイはn型シリコンの層26および金属電極層28を備え;これらの層は共に、任意の従来の方法を用いてパターン化されて、トランジスタのソース電極およびドレイン電極が設けられている。
【0036】
TFTの他の実施形態は一般に上記のものと同様であるが、金属バッキングまたは不活性化層を備えていないポリイミド基板を有する。このような実施形態においては、ポリイミド基板は、任意により前焼成され得、ならびに、100nm厚のクロム層が基板に熱蒸発によって堆積されていることが可能であると共に、フォトリソグラフィー手法によるパターン化で最終トランジスタアレイのゲート電極およびセレクトラインが形成されていることが可能である。次いで、320nm窒化シリコン誘電体層が、シラン/アンモニア混合物を用いるプラズマ促進化学蒸着(PECVD)によって基板上に蒸着されていることが可能であり;この蒸着の最中に、基板は、300、325、350、375、400、425または450℃の処理温度に供される。次いで、160nm非晶質シリコン半導体材料層がPECVDによって純粋なシランから蒸着され、続いて、40nmのn型非晶質シリコン層がPECVDによってシラン/ホスフィン混合物から蒸着されることが可能である。
【0037】
これらのPECVDステップに続いて、アルミニウムの層が基板上に堆積されると共に、フォトリソグラフィー手法によりパターン化されてトランジスタアレイのソース電極およびドレイン電極が形成されることが可能である。次いで、この基板は、四フッ化炭素/酸素混合物を用いる反応性イオンエッチングに供されて、パターン化されたアルミニウム層をエッチングマスクとして用いてn型シリコン層がパターン化されることが可能であり;このステップの最中では、非晶質シリコンおよび窒化シリコン層がパターン化される必要はない。最後に、低解像度パターン化ステップが用いられて、非晶質シリコンおよび窒化シリコン層がパターン化されて、セレクト結合ライン部位との電気的接続がなされることが可能である。
【0038】
このように構成された薄膜トランジスタアレイは、電気泳動ディスプレイまたは他のタイプのディスプレイの製造業者において、さらなる処理なしで直接的に用いられることが可能である。場合によっては、薄膜トランジスタを被覆するバリア層を設けて、電気泳動ディスプレイから拡散される傾向にあり得る溶剤または他の物質の影響からトランジスタを保護することが所望される。
【0039】
本開示の方法によって製造される薄膜トランジスタアレイは、(特許文献2);(特許文献3);(特許文献4);(特許文献5);(特許文献6);(特許文献7);(特許文献8);(特許文献9);(特許文献10);(特許文献11);および(特許文献12)に記載のものなどのマイクロカプセル型電気泳動ディスプレイにおいて用いられることが可能である。
【0040】
前述の記載から、本発明の方法は、従来技術のプロセスより高い処理温度の使用を許容すると共に、これにより、従来技術のプロセスよりも高品質の半導体層を生産することが可能である、可撓性基板上へトランジスタを形成する方法を提供することが分かるであろう。本方法において用いられる基板は、ほとんどの半導体層の熱膨張係数に対して整合性が高い熱膨張係数を有し、従って、半導体層と基板との間の熱膨張の差に起因する半導体層のクラッキングおよび/または層剥離の恐れが低減される。本発明は、ロールツーロール操作に良好に適応されている方法を提供し、それ故、本方法は、可撓性基板上への大面積トランジスタアレイの構成にきわめて好適である。
【実施例】
【0041】
本発明を以下の実施例においてさらに説明することとするが、これは、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施例において、「プレポリマー」とは、化学量論的よりわずかに過剰量のジアミンモノマー(約2%)と一緒に形成されて、25℃で約50〜100ポアズの範囲内のブルックフィールド溶液粘度が得られる低分子量ポリマーを指す。分子量(および溶液粘度)の増加は、ジアミンに対する二無水物の化学量論的当量に近づけるために、追加的な二無水物を小さな増分量添加することにより達成した。
【0042】
以下の実施例においては、以下の略語が用いられている:
BPDA=3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
PPD=1,4−ジアミノベンゼン
【0043】
実施例1
BPDA/PPDプレポリマー(69.3gの無水DMAC中の17.5重量%溶液)を5.62gの針状のTiO2(FTL−110、Ishihara Corporation,USA)と組み合わせると共に、得られたスラリーを24時間攪拌した。個別の容器中に、ピロメリト酸無水物(PMDA)の6重量%溶液を、0.9gのPMDA(Aldrich 412287、Allentown,PA)および15mLのDMACを組み合わせることにより調製した。
【0044】
PMDA溶液をプレポリマースラリーに徐々に添加して、653ポアズの最終粘度を達成した。配合物を0℃で一晩保管して脱気させた。
【0045】
25milドクターブレードを用いて、ガラスプレートの表面上に配合物をキャストして3インチ×4インチフィルムを形成した。ガラスは離型剤で前処理しており、ガラス表面からのフィルムの剥がしを促進させた。フィルムをホットプレートで80℃で20分間乾燥させた。その後、フィルムを表面から持ち上げて3インチ×4インチピンフレームに取り付けた。
【0046】
室温で、減圧下に12時間さらに乾燥させた後、取り付けたフィルムを炉(Thermolyne、F6000箱型炉)中に置いた。炉は窒素でパージすると共に、以下の温度プロトコルに従って加熱した:
・125℃(30分)
・125℃〜350℃(4℃/分の勾配)
・350℃(30分)
・350℃〜450℃(5℃/分の勾配)
・450℃(20分)
・450℃〜40℃(8℃/分での冷却)
【0047】
比較例A
実施例1に記載のものと同等の手順を用いたが、ただし、TiO2充填材をプレポリマー溶液に添加しなかった。キャスティング前の最終粘度は993ポアズであった。
【0048】
実施例2
実施例1に記載のものと同一の手順を用いたが、ただし、69.4gのBPDA/PPDプレポリマー(DMAC中に17.5重量%)を5.85gのTiO2(FTL−200、Ishihara USA)と組み合わせた。配合物のキャスティング前の最終粘度は524ポアズであった。
【0049】
実施例3
実施例1に記載のものと同一の手順を用いたが、ただし、69.4gのBPDA/PPDプレポリマーを5.85gの針状のTiO2(FTL−300、Ishihara USA)と組み合わせた。キャスティング前の最終粘度は394ポアズであった。
【0050】
実施例4A
実施例1に記載のものと同一の手順を用いたが、ただし、69.3gのBPDA/PPDプレポリマー(DMAC中に17.5重量%)を5.62gの針状のTiO2(FTL−100、Ishihara USA)と組み合わせた。
【0051】
DMAC中のPMDA溶液を添加する前に、材料を、80ミクロンフィルタ媒体(Millipore、ポリプロピレンスクリーン、80ミクロン、PP8004700)を通してろ過した。
【0052】
キャスティング前の最終粘度は599ポアズであった。
【0053】
実施例4
実施例1に記載のものと同一の手順に従ったが、ただし、139gのBPDA/PPDプレポリマー(DMAC中に17.5重量%)を11.3gの針状のTiO2(FTL−100)と組み合わせた。BPDA/PPDプレポリマーと針状のTiO2(FTL−110)の混合物を小さな容器に入れた。角孔の、高せん断スクリーンを備えたSilverson Model L4RT高せん断ミキサ(Silverson Machines,LTD,Chesham Baucks,England)を用いて、配合物を(およそ4000rpmの翼速度で)20分間混合した。氷浴を用いて混合操作の最中に配合物を冷たいままに維持した。
【0054】
キャスティング前の材料の最終粘度は310ポアズであった。
【0055】
実施例5
実施例4に記載のものと同一の手順を用いたが、ただし、133.03gのBPDA/PPDプレポリマー(DMAC中に17.5重量%)を6.96gの針状のTiO2(FTL−110)と組み合わせた。
【0056】
材料を小さな容器に入れると共に高せん断ミキサで(およそ4000rpmの翼速度で)およそ10分間混合した。次いで、材料を45ミクロンフィルタ媒体(Millipore、45ミクロンポリプロピレンスクリーン、PP4504700)を通してろ過した。
【0057】
キャスティング前で、最終粘度はおよそ1000ポアズであった。
【0058】
実施例6
実施例5に記載のものと同一の手順を用いたが、ただし、159.28gのBPDA/PPDプレポリマーを10.72gの針状のTiO2(FTL−110)と組み合わせた。材料を高せん断ミキサで5〜10分間混合した。
【0059】
キャスティング前の最終配合物粘度はおよそ1000ポアズであった。
【0060】
実施例7
実施例5に記載のものと同一の手順を用いたが、ただし、157.3gのBPDA/PPDプレポリマーを12.72グラムの針状のTiO2(FTL−110)と組み合わせた。材料を、高せん断ミキサでおよそ10分間ブレンドした。
【0061】
キャスティング前の最終粘度はおよそ1000ポアズであった。
【0062】
実施例8
実施例5に記載のものに類似する手順を用いたが、ただし、140.5gのDMACを24.92gのTiO2(FTL−110)と組み合わせた。このスラリーは高せん断ミキサを用いておよそ10分間ブレンドした。
【0063】
このスラリー(57.8g)を、250ml、3首丸底フラスコ中で107.8gのBPDA/PPDプレポリマー(DMAC中に17.5重量%)と組み合わせた。混合物を、パドル攪拌機で、一晩、ゆっくりとした窒素パージ下でゆっくりと攪拌した。材料を高せん断ミキサで再び(およそ10分間、4000rpm)攪拌し、次いで、45ミクロンフィルタ媒体(Millipore、45ミクロンポリプロピレン、PP4504700)を通してろ過した。
【0064】
最終粘度は400ポアズであった。
【0065】
実施例9
実施例8に記載のものと同一の手順を用いたが、ただし、140.49gのDMACを24.89gのタルク(Flex Talc610、Kish Company,Mentor,OH)と組み合わせた。材料を、実施例8に記載の高せん断混合手順を用いてブレンドした。
【0066】
このスラリー(69.34g)を129.25gのBPDA/PPDプレポリマー(DMAC中に17.5重量%)と組み合わせ、高せん断ミキサを用いて再び混合し、次いで、25ミクロンフィルタ媒体(Millipore、ポリプロピレン、PP2504700)を通してろ過すると共に、1600ポアズでキャストした。
【0067】
実施例10
この配合物を同様の体積%(TiO2、FTL−110)で調製して、実施例9と比較した。実施例1に記載のものと同一の手順を用いた。67.01gのBPDA/PPDプレポリマー(17.5重量%)を79.05グラムの針状のTiO2(FTL−110)粉末と組み合わせた。配合は、キャスティングの前で255ポアズの粘度で終了した。
【0068】
動的機械分析(DMA)機器を用いて、比較例Aおよび実施例10の機械的挙動の特性を決定した。DMA操作は、温度および時間に応じて小さな振動歪みに供したポリマーの粘弾性応答を基準とした(例えば、10μm)(TA Instruments、New Castle,DE,USA、DMA 2980)。フィルムは、有限サイズの矩形の試料を固定されたジョーと可動式のジョーとの間に固定する張力および多周波数−歪みモードで操作した。6〜6.4mm幅、0.03〜0.05mm厚さおよびMD方向に10mm長さのサンプルを、3in−lbトルク重で固定した。長さ方向での静的な力は、125%の自動張力で0.05Nであった。フィルムを、1Hzの周波数で0℃から500℃に3℃/分の速度で加熱した。室温、500および480℃での保管係数は表1に記録されている。
【0069】
比較例Aおよび実施例10の熱膨張係数は、熱機械分析(TMA)により計測した。TA Instrumentモデル2940を張力モードに設定し、30〜50ml/分速でN2パージすると共に機械的冷却器を備えさせた。フィルムをMD(キャスティング)方向に2.0mm幅に切断し、フィルムクランプの間に縦方向に固定して、7.5〜9.0mm長さとさせた。前負荷張力は、5グラム重に設定した。次いで、フィルムを10℃/分の速度で0℃から400℃に加熱して3分間保持し、0℃に冷却し戻し、および、400℃に同じ速度で再加熱した。μm/m−C(またはppm/℃)の単位での60℃から400℃までの熱膨張係数の計算を、60℃〜400℃、また、60℃〜350℃にわたる第2の加熱サイクルについてのキャスティング方向(MD)に関して報告した。
【0070】
熱重量分析機器(TA、Q5000)を重量損失のサンプル計測に用いた。計測は窒素流中で実施した。温度プログラムは、20℃/分の速度での500℃への加熱を含んでいた。500℃での30分間の保持の後の重量損失は、吸収された水のすべてが除去された200℃での重量に正規化することにより算出して、200℃を超える温度でのポリマーの分解を判定した。
【0071】
【表1】
【0072】
比較例B
以下の差異を除いて、実施例8に記載のものと同一の手順を用いた。145.06gのBPDA/PPDプレポリマーを用いた(DMAC中に17.5重量%)。
【0073】
800ナノメートルを超える最小寸法(12:1アスペクト比により定義した均等円柱幅および2.3ミクロンの平均均等球状サイズ分布を用いて算出した)を有する、127.45グラムのWallastonite粉末(Vansil HR325、R.T.Vanderbilt Company,Norwalk CT)を、127.45グラムのDMACと組み合わせると共に、実施例8の手順に従って高せん断混合に供した。
【0074】
145.06gのBPDA/PPDプレポリマー(DMAC中に17.5重量%)を、38.9グラムの高せん断混合に供した珪灰石のDMAC中のスラリーと組み合わせた。配合物を、実施例8の手順に従って、再度高せん断混合に供した。
【0075】
配合は3100ポアズの粘度で終了し、次いで、キャスティングの前に600ポアズの粘度にDMACで希釈した。
【0076】
高温クリープの計測
DMA(TA Instruments Q800モデル)を、フィルム試料のクリープ/回復研究について、張力およびカスタマイズした力制御モードで用いた。6〜6.4mm幅、0.03〜0.05mm厚さおよび10mm長さのプレスしたフィルムを、固定されたジョーと可動式のジョーとの間に、3in−lbトルク重で固定した。長さ方向における静的な力は0.005Nであった。フィルムを20℃/分の速度で460℃に加熱すると共に、460℃で150分保持した。クリーププログラムを2MPaに20分設定し、続いて、初期の静的な力(0.005N)以外の追加的な力を加えずに30分回復させた。クリープ/回復プログラムを、4MPaおよび8MPaについて、2MPaと同じ時間間隔で反復した。
【0077】
以下の表2においては、8MPa(より正確には、最大応力は約7.4〜8.0MPaである)でのサイクルの後の歪みおよび回復が表記されている。伸度は、伸度を開始時のフィルム長で除することにより無単位の同等の歪みに換算されている。8MPa(より正確には、最大応力は約7.4〜8.0MPaである)および460℃での歪みが「emax」と表記されている。「e max」という用語は、8MPaサイクル(より正確には、最大応力は約7.4〜8.0MPaである)の終了時での分解および溶剤損失(無応力残留勾配から外挿)によるフィルムの変化について補正されている無次元での歪みである。「e rec」という用語は、8MPaサイクル(より正確には、最大応力は約7.4〜8.0MPaである)の直後であるが、追加の力が付加されていない(0.005Nの初期の静的な力以外の)状態での歪み回復であって、これは、分解および溶剤損失(無応力残留勾配によって計測される)によるフィルムの変化について補正されている材料の回復の尺度である。「無応力残留勾配」と標記されているパラメータはまた無次元での歪み/分の単位で標記されており、8Mpa応力(より正確には、最大応力は約7.4〜8.0MPaである)の初期の付加の後にサンプルに0.005Nの初期の静的な力が付加されている場合の歪みの変化である。この勾配は、8MPa応力サイクル(より正確には、最大応力は約7.4〜8.0MPaである)の適用に続く30分の間にわたるフィルムにおける寸法変化(「無応力残留歪み」)に基づいて算出される。典型的には、無応力残留勾配は負である。しかしながら、無応力残留勾配値は、絶対値として示され、従って、これは常に正の数である。
【0078】
第3のカラムe plastはプラスチック流を記載しており、これは、高温クリープの直接的な尺度であると共に、e maxとe recとの差である。
【0079】
普通、可能な限り最小の歪み(e max)、最低量の応力プラスチック流(e plast)および低い値の無応力残留勾配を示す材料が所望される。
【0080】
【表2】
【0081】
表2は、重量分率および体積率の両方で充填材配合量をもたらす。少なくとも本開示に関しては、充填材性能は主に充填材によって占有される空間に応じる傾向にあるため、同様の体積率の充填材配合量が、一般には、充填材のより正確な比較である。フィルム中の充填材の体積率は、完全に密なフィルムを想定すると共に、種々の成分については以下の密度を用いて対応する重量分率から算出した:
ポリイミドの密度については1.42g/cc;針状のTiO2の密度については4.2g/cc;タルクの密度については2.75g/cc;および、珪灰石については2.84g/cc。
【0082】
実施例11
168.09グラムのポリアミド酸(PAA)プレポリマー溶液は、DMAC(ジメチルアセタミド)中のBPDAおよびPPDから、わずかに過剰量のPPD(DMAC中に15重量%PAA)で、10.05グラムのFlextalc610タルクと、2分間、Thinky ARE−250遠心ミキサでブレンドして調整して、オフホワイトのPAA溶液中の充填材の分散体を得た。
【0083】
次いで、この分散体を45ミクロンポリプロピレンフィルタメンブランを通して加圧ろ過した。その後、少量のPMDA(DMAC中に6重量%)をこの分散体に添加し、その後の混合で分子量を増加させ、これにより、溶液粘度を約3460ポアズとした。減圧下でろ過した溶液を脱気して気泡を除き、次いで、この溶液を、Duofoil(登録商標)アルミニウム剥離シート(約9mil厚)片の上にコートし、ホットプレート上に置き、約80〜100℃で30分〜1時間乾燥させて非粘着性のフィルムを得た。
【0084】
その後、このフィルムを基板から注意深く外し、ピンフレーム上に置き、次いで、窒素でパージしたオーブンに入れ、40℃から320℃に約70分間かけて昇温させ、320℃で30分間保持し、次いで、450℃に16分間かけて昇温させると共に450℃で4分間保持し、続いて冷却した。ピンフレーム上のフィルムをオーブンから取り出すと共にピンフレームから剥離して、充填ポリイミドフィルムを得た(約30重量%充填材)。
【0085】
およそ1.9mil(およそ48ミクロン)フィルムは以下の特性を示した。
【0086】
50℃で12.8GPaおよび480℃で1.3GPaの動的機械分析(TA Instruments、DMA−2980、5℃/分)による貯蔵弾性率(E’)、ならびに、341℃のTg(正接δピークの最大)。
【0087】
50〜350℃の間で2回目の走査で評価したところ、それぞれ、キャストおよび交差方向で、13ppm/℃および16ppm/℃の熱膨張係数(TA Instruments、TMA−2940、10℃/分、380℃まで、次いで、冷却および380℃への再走査)。
【0088】
最初から最後までの500℃での等温保持で、0.42%の等温性重量損失(TA Instruments、TGA 2050、20℃/分で500℃まで、次いで、500℃で30分保持した)。
【0089】
比較例C
DMAC中のBPDAおよびPPDから、わずかに過剰量のPPD(DMAC中の15重量%PAA)で調製した200グラムのポリアミド酸(PAA)プレポリマー溶液を計量した。その後、少量のPMDA(DMAC中に6重量%)をThinky ARE−250遠心ミキサ中に段階的に添加して分子量を増加させ、これにより、溶液粘度を約1650ポアズとした。次いで、減圧下で溶液を脱気して気泡を除き、次いで、この溶液をDuofoil(登録商標)アルミニウム剥離シート片(約9mil厚)にコートし、ホットプレート上に置くと共に、約80〜100℃で30分〜1時間乾燥させて非粘着性のフィルムを得た。その後、このフィルムを基板から注意深く外し、ピンフレーム上に置き、次いで、窒素でパージしたオーブン中に入れ、40℃から320℃に約70分間かけて昇温させ、320℃で30分間保持し、次いで、450℃に16分間かけて昇温させると共に450℃で4分間保持し、続いて冷却した。ピンフレーム上のフィルムをオーブンから取り出すと共にピンフレームから剥離して、充填ポリイミドフィルムを得た(0重量%充填材)。
【0090】
およそ2.4mil(およそ60ミクロン)フィルムは以下の特性を示した。
【0091】
50℃で8.9GPaおよび480℃で0.3GPaの動的機械分析(TA Instruments、DMA−2980、5℃/分)による貯蔵弾性率(E’)、ならびに、348℃のTg(正接δピークの最大)。
【0092】
50〜350℃の間で2回目の走査で評価したところ、それぞれ、キャストおよび交差方向で、18ppm/℃および16ppm/℃の熱膨張係数(TA Instruments、TMA−2940、10℃/分、380℃まで、次いで、冷却および380℃への再走査)。
【0093】
最初から最後までの500℃での等温保持で、0.44%の等温性重量損失(TA Instruments、TGA2050、20℃/分で500℃まで、次いで500℃で30分保持した)。
【0094】
実施例12
実施例11と同様の様式で、約30重量%でのFlextalc 610とのポリアミド酸ポリマーを5milポリエステルフィルム上にキャストした。ポリエステル上のキャストフィルムを、およそ等量の無水酢酸および3−ピコリンを室温で含有する浴中に入れた。浴中でキャストフィルムがイミド化されるに伴って、ポリエステルが放出され始めた。この時点で、キャストフィルムを浴およびポリエステルから取り出し、ピンフレーム上に置き、次いで、オーブンに入れると共に実施例11に記載のとおり昇温させた。得られたタルク−充填ポリイミドフィルムは、キャストおよび交差方向のそれぞれにTMA(実施例11のとおり)による9ppm/℃および6ppm/℃のCTEを示した。
【0095】
概要または実施例における上述のすべての作業が必須であるわけではなく、特定の作業の一部分が必要とされない場合があり、さらなる作業を上述のものに追加して実施してもよい場合があることに留意されたい。さらに、作業の各々が列挙されている順番は、必ずしも、これらが実施される順番ではない。この明細書を読了した後、当業者は、特定の必要性または要求のためにどの作業を行うことが可能であるかを判定することができるであろう。
【0096】
以上の明細書において、本発明を、特定の実施形態に言及して記載してきた。しかしながら、当業者は、添付の特許請求の範囲に既定の本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良および変更をすることが可能であることを認識する。従って、明細書およびいかなる図も、限定的な意味ではなく、むしろ例示的であるとみなされるべきであり、すべてのこのような改良が発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0097】
有益性、他の利点、および問題に対する解答を、特定の実施形態に関して上述してきた。しかしながら、有益性、利点、問題への解答、およびいずれかの有益性、利点、または回答を生じさせ得るまたはより明確にさせ得るいずれかのエレメントは、重要であり、必要であり、または必須である機構またはいずれかのまたはすべての特許請求の範囲の要素として解釈されるべきではない。
【0098】
量、濃度、または、他の値あるいはパラメータが、範囲、好ましい範囲または上方値および下方値の列挙のいずれかとして与えられている場合、これは、範囲が個別に開示されているかどうかに関わらず、いずれかの上限の範囲または好ましい上方値、および、いずれかの下限の範囲または好ましい下方値のいずれかの対から形成されるすべての範囲を明示的に開示しているとして理解されるべきである。数値の範囲が本明細書において言及されている場合、他に明記されていない限りにおいて、この範囲は、その端点、ならびにその範囲内のすべての整数および分数を含むことが意図される。本発明の範囲が、範囲が定義されるときに言及された特定の値に限定されることは意図されていない。
以下に、本発明の好ましい態様を示す。
[1] 少なくとも1つのトランジスタを基板上に形成する方法であって:
基板上に、少なくとも1層の半導体材料を堆積させる工程であって、基板が:
a)層の40〜95重量パーセントの量のポリイミドであって:
i)少なくとも1種の芳香族二無水物であって、その少なくとも85モルパーセントが剛直性(rigid)ロッド型(rod type)二無水物である芳香族二無水物、および
ii)少なくとも1種の芳香族ジアミンであって、その少なくとも85モルパーセントが剛直性(rigid)ロッド型(rod type)ジアミンである芳香族ジアミン
に由来するポリイミド;ならびに
b)充填材であって:
a)少なくとも一方向の寸法が800ナノメートル未満であり;
b)3:1を超えるアスペクト比を有し;
c)すべての寸法がフィルムの厚さ未満であり;および
d)フィルムの総重量の5〜60重量パーセントの量で存在する
充填材
を含む工程を含み、
支持体が8〜150ミクロンの厚さを有する方法であり、
前記半導体材料が前記基板上に堆積される前に、不活性化層が前記基板上に堆積される方法。
[2] 前記不活性化層が、二酸化シリコンまたは窒化アルミニウムを含む、[1]に記載の方法。
[3] 前記不活性化層が、前記基板の両面に堆積される、[1]に記載の方法。
[4] 50ナノメートル未満の厚さを有する金属層が、基板上の、前記半導体材料と同じ側に、前記半導体材料の堆積よりも前に堆積される、[1]に記載の方法。
[5] 前記金属層が、連続フィルムとして堆積されると共に、その後、前記半導体材料のその上への堆積の前にパターン化される、[1]に記載の方法。
[6] 誘電体材料の層が、前記半導体材料の堆積の前に前記金属層上に堆積される、[5]に記載の方法。
[7] 前記半導体材料が非晶質シリコンを含み、前記半導体材料は、非晶質シリコン上に堆積されたn型シリコンの層をさらに含む、[1]に記載の方法。
[8] n型シリコンの連続層が非晶質シリコン上に堆積され、金属のパターン化層がその後n型シリコン上に形成され、および、得られた構造がその後エッチされて、前記金属のパターン化層によって被覆されていないn型シリコンの一部が除去される、[7]に記載の方法。
[9] 前記半導体材料の堆積が前記基板の連続ウェブで実施される、[1]に記載の方法。
[10] 前記充填材が小板、針様または繊維状であると共に、前記半導体材料が非晶質シリコンである、[1]に記載の方法。
[11] 前記充填材が酸素と、アルミニウム、シリコン、チタン、マグネシウムおよびこれらの組み合わせからなる群の少なくとも1種の構成要素とを含む、[1]に記載の方法。
[12] 前記充填材が針状の二酸化チタンを含み、その少なくとも一部が酸化アルミニウムで被覆されていると共に、前記半導体材料が非晶質シリコンを含む、[1]に記載の方法。
[13] a)剛直性二無水物が、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、ピロメリト酸二無水物(PMDA)、およびこれらの混合物からなる群から選択され;
ならびに
b)剛直性ジアミンが、1,4−ジアミノベンゼン(PPD)、4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジデン(TFMB)、1,5−ナフタレンジアミン、1,4−ナフタレンジアミン、およびこれらの混合物から選択される、
[1]に記載の方法。
[14] ジアミンの少なくとも25モルパーセントが1,5−ナフタレンジアミンである、[1]に記載の方法。
[15] 前記フィルムが、熱的に安定な無機物:布、紙、シート、スクリムまたはこれらの組み合わせで強化されている、[1]に記載の方法。
【符号の説明】
【0099】
10 トランジスタアレイ
12 ポリイミド基板
14 金属バッキング層
16 アパーチャ
18 不活性化層
20 金属ゲート電極
22 誘電体層
24 非晶質シリコン層
26 n型シリコンの層
28 金属電極層
図1