(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731189
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】立体形状布帛
(51)【国際特許分類】
D03D 3/08 20060101AFI20150521BHJP
D03D 1/00 20060101ALI20150521BHJP
D04B 1/22 20060101ALI20150521BHJP
D04B 21/20 20060101ALI20150521BHJP
A47C 27/12 20060101ALI20150521BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
D03D3/08
D03D1/00 Z
D04B1/22
D04B21/20 Z
A47C27/12 E
A47C27/12 F
A47C31/02 Z
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-285751(P2010-285751)
(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2012-132123(P2012-132123A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高水 達哉
(72)【発明者】
【氏名】伊達 寛晃
(72)【発明者】
【氏名】山尾 亮介
(72)【発明者】
【氏名】土倉 弘至
【審査官】
松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−510115(JP,A)
【文献】
特開2004−033543(JP,A)
【文献】
特開2009−052157(JP,A)
【文献】
特開2005−330645(JP,A)
【文献】
特開2006−132047(JP,A)
【文献】
特開2002−219985(JP,A)
【文献】
特開2009−233403(JP,A)
【文献】
特開2003−159141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00−27/18
D04B 1/00−1/28
A47C 27/12
A47C 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛の縁部が枠部材で支持されて張設されることにより立体的な形状の布帛面を形成した立体形状布帛であって、前記布帛面を形成する布帛自体に、少なくとも糸種または/および布帛組織種が周囲の隣接部位とは異なる異種部位を少なくとも一つ混在させ、前記異種部位が前記隣接部位とは異なる曲面の立体形状に形成されたことを特徴とする立体形状布帛。
【請求項2】
前記立体的な形状の布帛面が無縫製、無接着で形成されている、請求項1に記載の立体形状布帛。
【請求項3】
前記異種部位と隣接部位間の収縮差または/および張力差によって両部位が互いに異なる立体形状に形成されている、請求項2に記載の立体形状布帛。
【請求項4】
前記枠部材に沿う形状の布帛の縁部が枠部材で支持されて張設されることにより立体的な形状の布帛面が形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の立体形状布帛。
【請求項5】
前記枠部材の形状に対し切欠き部を有する形状の布帛の縁部が枠部材で支持されて張設されることにより立体的な形状の布帛面が形成されている、請求項1〜3のいずれかに記載の立体形状布帛。
【請求項6】
前記枠部材に張設された布帛を熱収縮させることで、熱収縮前とは異なる立体形状の布帛面が形成されている、請求項1〜5のいずれかに記載の立体形状布帛。
【請求項7】
前記布帛に対し、該布帛の各部位を構成する繊維中、重量比50%以上を占める主繊維の糸条直径の5倍以上を一片とする正方形にて熱セット前の布帛部位を2カ所以上切り取り、160℃での乾熱収縮を経緯両方向に測った場合に、前記布帛中に熱収縮が5%以上異なる部位が混在している、請求項6に記載の立体形状布帛。
【請求項8】
前記異種部位と隣接部位が互いに異なる性状を有する部位に形成されている、請求項1〜7のいずれかに記載の立体形状布帛。
【請求項9】
前記互いに異なる性状が、弾力性、通気性、触感の少なくともいずれかからなる、請求項8に記載の立体形状布帛。
【請求項10】
前記布帛の各部位を構成する繊維中、重量比50%以上を占める主繊維がエラストマーポリエステルからなる、請求項1〜9のいずれかに記載の立体形状布帛。
【請求項11】
前記布帛が織物からなる、請求項1〜10のいずれかに記載の立体形状布帛。
【請求項12】
前記布帛が編物からなる、請求項1〜10のいずれかに記載の立体形状布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛面が立体形状を有する立体形状布帛に関し、例えば椅子などの物体支持具において、背もたれや座面などの立体形状を有する物体支持面に使用して好適な立体形状布帛に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィスの椅子や自動車の座席などの身体支持具では、背もたれや座面などの身体支持面にクッション性を持たせ、接触する身体を支持するようにしている。身体ばかりではなく、身体と同様に立体的な形状を有する物体を支持する物体支持具の物体支持面にも、クッション性を持たせる必要がある場合もある。クッション性を有する物体支持面は、一般に、弾性を有するカバー体で表面を覆い、内部に金属フレーム等の芯部材と、ウレタンフォーム等の発泡弾性部材とを設ける構成で形成していることが多い。
【0003】
近年、ウレタンフォーム等を内蔵しなくても、身体の支持面に編地や織地などによる布帛のメッシュシートを使用して、良好なクッション性が得られるようにした椅子も各種市販されており、また新たな構成も提案されている(例えば、特許文献1、2)。このうち、特許文献1には、背もたれに、周囲が袋状となるシート材を使用し、袋状の部分に芯部材の骨格を挿入して支えるようにした椅子の構成が開示されている。特許文献2には、ダブルラッシェル経編機を使用して編成する経編地を椅子の座面とする構成が開示されている。クッション性は、経編地に弾性糸条による緯糸を挿入することで得るようにしている。両特許文献共に支持面の布帛組織や糸種は単一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−117537号公報
【特許文献2】特開2006−132047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えばメッシュシートを使用する場合、金属フレーム等の枠を平面的な矩形とすれば、得られる物体支持面も平面となるが、物体支持面で支持すべき身体などの物体は、立体的な形状を有している。平面的な支持面では、たとえ物体支持面が良好なクッション性を有しても、身体などの物体の突出している部分を支持する際には、その支持部位が大きく弾性変形し、身体などに対して大きな反力を与え続けることとなる。椅子などを適度な座り心地とするためには、被支持体の接触面形状に支持面を極力合わせ、各部位に応じた弾性(=初期張力)を調節することが重要である。
【0006】
上記のような先行技術文献に記載の技術においては、支持面の形状と弾性を適正化するために、複雑な形状のフレームとメッシュ布帛を組み合わせ、これらを高張力下で組み立てなければならないという、困難な組立作業が強いられることとなっている。
【0007】
そこで本発明の課題は、必ずしも複雑な形状のフレームを用いずとも、所望形態の構造物を簡易に組み立てることが可能で、物体支持面の形状と各部位の弾性等を容易に適正化できる立体形状布帛を提供することにある。
【0008】
なお、上記課題を解決する手法として、1面の支持体内の部位ごとに異なる素材や異なる布帛を縫製や接着によりつないだり加えたりすることも考えられるが、通常、メッシュシート等の縫製や接着は非常に困難である上にコスト面でも大きな負担となるので、このような手法は実用的なものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る立体形状布帛は、布帛の縁部が枠部材で支持されて張設されることにより立体的な形状の布帛面を形成
した立体形状布帛であって、前記布帛面を形成する布帛自体に、少なくとも糸種または/および布帛組織種が
周囲の隣接部位とは異なる異種部位を少なくとも一つ混在させ
、前記異種部位が前記隣接部位とは異なる曲面の立体形状に形成されたことを特徴とするものからなる。
【0010】
このような本発明に係る立体形状布帛においては、上記異種部位と隣接部位が互いに異なる立体形状に形成されている構成とすることができ、例えば、上記異種部位と隣接部位間の収縮差または/および張力差によって両部位が互いに異なる立体形状に形成されている構成とすることができ、とくに、上記異種部位と隣接部位が互いに異なる曲面の立体形状に形成されている構成とすることができる。
【0011】
上記布帛の張設に際しては、上記枠部材に沿う形状の布帛の縁部が枠部材で支持されて張設されることにより立体的な形状の布帛面が形成されている構成とすることもでき、上前記枠部材の形状に対し切欠き部(例えば、後述の実施形態に示すような湾曲形状の切欠き部)を有する形状の布帛の縁部が枠部材で支持されて張設されることにより立体的な形状の布帛面が形成されている構成とすることもできる。いずれの構成においても、上記異種部位と隣接部位間の収縮差または/および張力差を利用して両部位が互いに異なる立体形状を有するように立体形状布帛を構成することが可能である。
【0012】
所望の布帛面の立体形状を形成するには、例えば、上記枠部材に張設された布帛を熱収縮させることで、熱収縮前とは異なる立体形状の布帛面を形成することができる。このような熱収縮の手法を採用する場合、本発明では、次のような好ましい形態を規定している。すなわち、上記布帛に対し、該布帛の各部位を構成する繊維中、重量比50%以上を占める主繊維の糸条直径の5倍以上を一片とする正方形にて熱セット前の布帛部位を2カ所以上切り取り、160℃での乾熱収縮を経緯両方向に測った場合に、上記布帛中に熱収縮が5%以上異なる部位が混在していることが好ましい。
【0013】
本発明では、少なくとも糸種または/および布帛組織種が隣接部位とは異なる異種部位を少なくとも一つ混在させた構成を備え、上述の如く、上記異種部位と隣接部位が互いに異なる立体形状に形成されている構成とすることができが、このような互いに異なる立体形状の形成とは別に、あるいは、互いに異なる立体形状の形成とともに、本発明においては、上記異種部位と隣接部位が互いに異なる性状を有する部位に形成されている構成とすることもできる。すなわち、糸種または/および布帛組織種が隣接部位とは異なる異種部位を少なくとも一つ混在させることにより、弾力性、通気性、触感等の少なくともいずれかの性状が互いに異なる部位を形成することが可能である。
【0014】
このように、本発明に係る立体形状布帛においては、例えば物体支持面を形成する一布帛面内で、各部位に応じて、糸種や布帛組織種を切り替え、フレームとなる枠部材に布帛をセットした上で、例えば素材に応じた温度で熱セットを加えることによる収縮差を利用することによって、複雑な形状のフレームを用いずとも、被支持体の接触面に合わせた立体形状、とくに被支持体の接触面に合わせた曲面形状と、望ましい弾力性等の性状とを、簡易な手法で容易に実現できる。
【0015】
例えば、一部位の経方向の収縮と張力を緯方向のそれらよりも充分大きくすれば、隣接する経方向の2部位をつなぐ平坦な面とすることが可能であるし、逆に緯方向のそれらを経方向のそれらより充分大きくすれば、隣接する緯方向の2部位をつなぐ平坦な面とすることが可能である。しかしこのとき、経方向の隣接する2部位と緯方向の隣接する2部位の位置関係に法線方向のズレが生じるので、それらの中心部位の経方向と緯方向の収縮と張力が適度にバランスされれば、隣接する4部位を結ぶ曲面を形成することが可能となる。その結果、全布帛面内のうち、目標とする特定の部位に、周囲とは異なる望ましい曲面を形成することが可能となり、布帛としては無縫製、無接着でありながら、したがって、前述したような組立上の困難性を伴うことなく、望ましい曲面部位が混在した立体形状の布帛面の形成が可能になる。
【0016】
本発明において、布帛を構成する繊維はとくに限定されないが、該布帛を用いて形成される立体形状の布帛面に、適切な弾力性等が要求される場合には、例えば、上記布帛の各部位を構成する繊維中、重量比50%以上を占める主繊維がエラストマーポリエステルからなる構成が好ましい。この他、合成繊維、天然繊維等を特に限定することなく用いることができ、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等が好適に用いられる。
【0017】
また、本発明において、望ましい立体形状の布帛面を形成するために、布帛の形態(組織)としては、織物、編物のいずれの形態も採り得る。上述したような各部位での経緯両方向の収縮と張力の互いに異なる発現度合いは、布帛を構成する糸種と布帛組織を切り替えることで実現可能である。より具体的には、緯編み等の整形編やジャガード織で部位別にデザインすることで実現可能である。
【0018】
編物としては経編、横編いずれも用いることができるが、中でも横編が好適に用いられる。横編み組織としては、天竺組織(表目ニット)、ガーター組織(縦方向に表目ニットと裏目ニットが交互に編成されている)、スムース組織(ニットとミスが交互に編成されている)、リブ組織(横方向に表目ニットと裏目ニットが交互に編成されている)等を用いることができる。
【0019】
編地の場合、ミス編みやタック編みを混ぜて編成することで、縦方向の編目の目数を減少させることができ、その結果縦方向の張力を増加させることができる。周囲に比べ編目の目数が少ないほど張力が増す。また目数を変化させなくても、例えばガーター組織は縦方向の張力を増加させることができ、リブ組織は横方向の張力を増加させることができる。
【0020】
なお、部位毎の編成方法については、編成する横編機及びそのゲージ、用いる糸の素材や太さなどにより得られる弾性特性は異なる。所望する各部位毎の特性に合わせて、編成方法を適宜選択あるいは組み合わせればよい。
【0021】
また、本発明に係る立体形状布帛の用途も特に限定されず、無縫製、無接着でありながら所望の立体形状の布帛面の形成が望ましいあらゆる用途に展開可能であり、例えば、椅子の背もたれや座面等の用途を挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る立体形状布帛によれば、必ずしも複雑な形状のフレームを用いずとも、簡易な組み立てで、支持面の形状を目標とする望ましい立体形状へと容易に適正化することができる。したがって、容易に、所望の曲面等を有する物体支持面等を実現できるようになる。また、被支持体を支持する際に、部分的に大きく沈み込ませたり、逆に沈み込ませずに面で支持体をサポートする等、機能面でのデザインの幅が飛躍的に大きくなる。加えて、各部位での弾力性や通気性、触感の変更も可能であるため、各部位に応じて最適な機能を持たせることが可能になり、しかも、色や風合いの変更も可能であるため、意匠面での付加価値もつけやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施態様に係る立体形状布帛に用いられる枠部材の一例を示す正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)である。
【
図2】本発明の実施例1に係る立体形状布帛の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)である。
【
図3】比較例1における立体形状布帛の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)である。
【
図4】比較例2における立体形状布帛の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)である。
【
図5】本発明の実施例2に係る立体形状布帛の枠はめ込み前の布帛の正面図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る立体形状布帛の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)である。
【
図7】本発明の実施例3に係る立体形状布帛の枠はめ込み前の布帛の正面図である。
【
図8】本発明の実施例3に係る立体形状布帛の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
本発明の一実施態様に係る立体形状布帛に用いられる枠部材の一例(後述の各実施例、比較例で用いた枠部材)を示している。本例では、枠部材1は金属製のフレーム部材からなり、十分に高い剛性を有しているが、プラスチック製の枠部材も使用可能である。この枠部材1は、正面図(
図1(A))に示すように、正面から見た場合矩形形状を有しており、両側の側辺は直線状に延びる線条体1aから構成されている。上下辺は、上面図(
図1(B)) に示すように、曲率半径Rの湾曲した線条体1bから構成されており、側面図(
図1(C))に示すように、上下辺間距離はLとされている。なお、図におけるA、B、Cおよび(1)、(2)、(3)は、後述の実施例、比較例における立体形状布帛の形状を説明するために用いた、枠部材1の上下方向位置および水平方向位置をそれぞれ示している。
【実施例】
【0025】
実施例1
図2は、本発明の実施例1に係る立体形状布帛2の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)を示しており、布帛の縁部が上記枠部材1で支持されて張設され、加熱により各部位ごとに収縮が発現されることにより、無縫製、無接着でありながら、所望の曲面部位が混在した立体形状の布帛面が形成されている。本実施例では、例えば物体支持面を構成する1面の布帛面内に4種類の布帛形態を含んでいる。
【0026】
また本実施例に係る立体形状布帛は、前後に針床を有する横編機、例えば(株)島精機製作所製の“NSSG”(登録商標)で編成される編地からなる。立体形状布帛を形成する素材としては、熱融着性弾性糸、例えば“ハイトレル”(登録商標)などを用いる。
【0027】
物体支持面を構成する部位iでは、表目ニットで編成されており、張設後加熱されることにより縦横方向に均一な弾性特性を得ることができる。
【0028】
部位iiでは、スムース組織によりニットとミスが交互に編成されている。スムース組織にすることにより部位iiの縦方向の目数を周囲の部位iに比べ、例えば1/2にすることができ、その結果、枠部材に張設した状態での単位面積当たりの目数も部位iの1/2になり、縦方向の張力を増加させることができる。なお、部位iiの編成をスムース組織に変えて縦方向に縮むガーター組織としても構わない。
【0029】
部位iiiでは、周辺輪郭形状が円形とされて、その中に弾性のない組織が形成されている。本実施例では組織の種類としては、弾性のない組織としてニットとタックの組み合わせを用いているが、これはニットとミスとの組み合わせとしても構わない。これらの組織において、タックやミスは伸びを抑える働きがある。部位iiiの内部には、ガーター組織とリブ組織を組み合わせにより、縦横方向に非常に高弾性な組織が形成されている。
【0030】
また部位ivでは、リブ組織により横方向に大きく縮むように形成されている。リブ組織は横方向に表目ニットと裏目ニットとが所定の個数毎に繰り返し編成される組織であり、本実施例では2×2リブ組織で編成を行っている。リブ組織とすることで周囲の部位iに比べ目数は同じであるが、組織の特性により横方向の張力が増加する。なお所望の張力となるようにリブ組織を、1×1リブ組織、3×3リブ組織などを選択すればよい。
【0031】
このように、部位iに対して編成組織が異なる異種部位ii、iii、ivが混在することによって、
図2の(B)、(C)に示すとおり、各部位ごとに形状が異なる複雑な曲面を有する支持面(布帛面)を有しており、かつ部位iiiにおいては、周辺部分と異なる局所的な沈み込みを得ることができた。
【0032】
比較例1
図3は、上記実施例1との比較のために示した比較例1に係る立体形状布帛3の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)を示しており、物体支持面を構成する1面の布帛面内に該布帛面を経方向に大きく収縮させる主として経糸が均一配置された布帛で構成しているが、枠部材1に沿ったほぼ半円柱の形態のままであった。弾性率も部位ごとに大きく変わらない。したがって、各部位ごとに形状が異なる複雑な曲面の形成はできず、かつ、各部位ごとに性状の異なる布帛面の形成も困難であった。
【0033】
比較例2
図4は、上記実施例1との比較のために示した比較例2に係る立体形状布帛4の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)を示しており、物体支持面を構成する1面の布帛面内に該布帛面を緯方向に大きく収縮させる主として緯糸が均一配置された布帛で構成しているが、枠部材1に沿ったほぼ半円柱の形態に対し、多少なりとも曲面を有するが、左右上下対象な曲面であった。したがって、各部位ごとに形状が異なる複雑な曲面の形成はできず、かつ、各部位ごとに局所的に性状の異なる布帛面の形成も困難であった。
【0034】
実施例2
図5、
図6は、本発明の実施例2に係る立体形状布帛を示しており、布帛の枠はめ込み前の正面形態5(
図5)と、それを枠部材1に張設した、複雑な曲面形状を有する立体形状布帛6に形成した場合の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)を示している。枠はめ込み前の布帛5は、幅aがa<RΠで、上下方向長さbがb<Lに形成されており、この布帛5の縁部が上記枠部材1で支持されて張設され、枠はめ込み前の寸法よりも大きな枠にストレッチ性を活かして張設されることにより、無縫製、無接着でありながら、所望の曲面部位が混在した立体形状の布帛面が形成されている。
【0035】
実施例では、立体形状布帛6の部位iでは同じ経緯糸が均一に織成または編成されており、張設後拡張されることにより経緯ほぼ均一に均等なストレッチによる張力がかかり(経緯ストレッチ均等)、部位iiでは経方向ストレッチが緯方向ストレッチに比較し、大幅に小さいため、経方向に大きな張力がかかり、部位ivでは緯方向ストレッチが経方向ストレッチに比較し、大幅に小さいため、緯方向に大きな張力がかかる。部位iiiでは周辺輪郭形状が円形とされて、その中に弾性のない繊維が高密度で編み込まれ、内部が非常に高弾性な布帛部位とされている(周辺部ストレッチ=0、内部ストレッチ=極大)。このように、部位iに対し、糸種、とくに本実施例では布帛組織の違いによる経緯方向に対するストレッチ応力が互いに異なる異種部位ii、iii、ivが混在されることによって、
図6の(B)、(C)に示すとおり、実施例1同様に、各部位ごとに形状が異なる複雑な曲面を有する支持面(布帛面)を実現しており、かつ部位iiiにおいては、周辺部分と異なる局所的な沈み込みを得ることができた。
【0036】
実施例3
図7、
図8は、本発明の実施例3に係る立体形状布帛を示しており、布帛の枠はめ込み前の正面形態7(
図7)と、それを枠部材1に張設した、複雑な曲面形状を有する立体形状布帛8に形成した場合の正面図(A)、上面図(B)、側面図(C)を示している。枠はめ込み前の布帛7は、幅aがa=RΠで、上下方向長さbがb=Lに形成されており、かつ、本実施例では、枠はめ込み前の布帛7には、枠部材1に沿う形状に対して半円状の切欠き9a、9b、9cが形成されている。この布帛7の縁部が上記枠部材1で支持されて張設され、切欠き部が平坦な枠に沿って局所的なストレッチ応力を発現させることで、無縫製、無接着でありながら、所望の曲面部位が混在した立体形状の布帛面が形成されている。
【0037】
そして本実施例では、部位iでは同じ経緯糸が均一に織成または編成されており、張設後加熱されることにより経緯ほぼ均一に収縮して均等な張力がかかり(経緯ストレッチ均等)、部位iiでは周辺輪郭形状が円形とされて、その中に弾性のない繊維が高密度で編み込まれ、内部が非常に高弾性な布帛部位とされている(周辺部ストレッチ=0、内部ストレッチ=極大)。このように、部位iに対し、糸種、布帛組織が互いに異なる異種部位iiが混在されることによって、かつ、枠はめ込み前の布帛7に切欠き9a、9b、9cを設けておくことによって、
図8の(B)、(C)に示すとおり、実施例1および2同様に、各部位ごとに形状が異なる複雑な曲面を有する支持面(布帛面)を実現しており、かつ部位Cにおいては、切欠き9b、9cにより周辺部分と異なる局所的な沈み込みを得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明に係る立体形状布帛は、簡易に所望の立体形状の布帛面の形成が望まれるあらゆる用途に適用可能であり、とくに、オフィスの椅子や自動車の座席などの身体支持具の支持面に用いて好適なものである。
【符号の説明】
【0039】
1 枠部材
2、3、4、6、8 立体形状布帛
5、7 枠はめ込み前の布帛
9a、9b、9c 切欠き