特許第5731230号(P5731230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731230
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20150521BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H01L21/26 J
   H01L21/265 602B
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-35349(P2011-35349)
(22)【出願日】2011年2月22日
(65)【公開番号】特開2012-174879(P2012-174879A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2013年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】青谷 俊明
【審査官】 正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−272399(JP,A)
【文献】 特開平07−061827(JP,A)
【文献】 特開2009−260061(JP,A)
【文献】 特開2002−110580(JP,A)
【文献】 特開2004−186495(JP,A)
【文献】 特開2003−264157(JP,A)
【文献】 特開昭63−227014(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/265
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に対して光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を支持する支持手段と、
前記基板よりも大きい形状の発光領域面を有し、該発光領域面を前記支持手段に支持された基板に対向させて光照射を行う光源構成体と、
筒形をなし、前記支持手段に支持された基板と前記光源構成体との間に配置されて入射した光の一部を透過し一部を散乱させるよう構成された半透明の光散乱部材と
を備え
前記光源構成体は、その発光領域面の中央部よりも周縁部のほうが、単位面積あたりの発光光量が多くなるように複数のハロゲンランプを配列して構成され、
前記光散乱部材は、前記光源構成体の前記周縁部からの光を散乱させることを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の熱処理装置において、
前記光散乱部材は、前記光源構成体と前記支持手段に支持された基板との中間よりも前記光源構成体に近い位置に配置されることを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の熱処理装置において、
前記基板が半導体ウエハであり、前記光散乱部材は前記半導体ウエハと同軸位置に配置された無底の円筒形であることを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の熱処理装置において、
前記光散乱部材の円筒形は、前記半導体ウエハの直径と略同じ直径であることを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記光散乱部材が、光散乱用の微細構造を形成したガラス材よりなることを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記光源構成体が、平行に配置された複数の棒状のハロゲンランプからなる光源群を備えることを特徴とする熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板等の薄板状の精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に対して光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、イオン注入後の半導体ウエハの不純物(イオン)活性化工程においては、ハロゲンランプを使用したランプアニール装置が一般的に使用されていた。また近年では、キセノンなどを用いたフラッシュランプを使用して半導体ウエハの表面にフラッシュ光を照射することにより、イオンが注入された半導体ウエハの表面のみを極めて短時間(数ミリセカンド以下)に1100℃程度にまで昇温させる技術が提案されている。またさらに、キセノンフラッシュランプとハロゲンランプを併用し、半導体ウエハをキセノンフラッシュランプでフラッシュ加熱する前に、ハロゲンランプで所定温度まで予備加熱する技術も提案されている。
【0003】
ところで、このようなハロゲンランプによる加熱機構において、棒状のハロゲンランプを例えば等間隔に配列配置したような構成では、半導体ウエハの中央部よりも周縁部のほうが照度が低くなってしまう傾向があり、処理の温度均一性に問題があった。そのため、特許文献1に示されるように半導体ウエハの周縁部に対応する領域にハロゲンランプを高密度に配置したり、あるいは、半導体ウエハの周縁部に対応する領域のハロゲンランプをより高出力になるように電力供給を制御するなどの対応により、半導体ウエハの周縁部に対して光量をより多く照射するようにした構成も提案されている。
【0004】
しかしながら、このように半導体ウエハの周縁部への光量をより多く照射する構成をとると、基板全体の温度の均一性としては改善されることにはなるが、今度は半導体ウエハの周縁部側に温度が高くなるピークが現れる場合があり、さらに改善を求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−260061号公報
【特許文献2】特開2002−110580号公報
【特許文献3】特開2003−31517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載されているように、光源と半導体ウエハとの間を仕切るように全体にわたって光拡散板を設ければ、照度分布は改善されるが、全体にわたって照度も低下してしまい、加熱効率が低下し、温度が低くなったり加熱に長時間を要するようになってしまう。また特許文献3に記載のように、光源と半導体ウエハとの間に集光度が異なる複数のレンズを二次元に配列したレンズ群を配置する構成では、集光度が異なる複数のレンズを適切にレイアウトして配置固定しなければならず、製造が難しくコストが高い。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、製造が簡単でコストが安く、また全体的な照度を低下させることなく照度分布の均一性を改善する熱処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板に対して光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、基板を支持する支持手段と、前記基板よりも大きい形状の発光領域面を有し、該発光領域面を前記支持手段に支持された基板に対向させて光照射を行う光源構成体と、筒形をなし、前記支持手段に支持された基板と前記光源構成体との間に配置されて入射した光の一部を透過し一部を散乱させるよう構成された半透明の光散乱部材とを備え、前記光源構成体は、その発光領域面の中央部よりも周縁部のほうが、単位面積あたりの発光光量が多くなるように複数のハロゲンランプを配列して構成され、前記光散乱部材は、前記光源構成体の前記周縁部からの光を散乱させることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の熱処理装置において、前記光散乱部材は、前記光源構成体と前記支持手段に支持された基板との中間よりも前記光源構成体に近い位置に配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の熱処理装置において、前記基板が半導体ウエハであり、前記光散乱部材が前記半導体ウエハと同軸位置に配置された無底の円筒形であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の熱処理装置において、前記光散乱部材の円筒形が、前記半導体ウエハの直径と略同じ直径であることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の熱処理装置において、前記光散乱部材が、光散乱用の微細構造を形成したガラス材よりなることを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の熱処理装置において、前記光源構成体が、平行に配置された複数の棒状のハロゲンランプからなる光源群を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、基板より大きい形状の発光領域面を有する光源構成体から照射される光のうちの一部が、基板と光源構成体との間に配置された筒形の光散乱部材によって散乱されるので、製造が簡単でコストが安く、また全体的な照度を低下させることなく照度分布の均一性を改善できる。また、光源構成体の周縁部から単位面積あたりの発光光量が多い光が照射されるが、光源構成体の周縁部に近い光散乱部材による散乱で基板周縁部の照度のピークが低くなり、照度分布の均一性を改善できる。
【0016】
請求項3および請求項4の発明によれば、無底の円筒形の光散乱部材によって、その中央部を通過する光は透過されるので散乱されず、周縁部を通過する光の一部が散乱されて、基板周縁部の光のピークが低くなり、照度分布の均一性を改善できる。
の取付角度を容易にそろえることができて製造が容易で、高効率で均一性も良好な照明装置と検査装置が得られる。
【0017】
請求項5の発明によれば、光散乱部材を、光散乱用の微細構造を形成したガラス材により簡単に製造できる。
【0018】
請求項6の発明によれば、光源構成体を、平行に配置された複数の棒状のハロゲンランプからなる光源群により簡単に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
図2】保持部の斜視図である。
図3】保持プレートの平面図である。
図4】保持プレートに半導体ウエハが載置されたときのバンプ近傍を拡大した図である。
図5】移載機構の平面図である。
図6】移載機構の側面図である。
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
図8】半導体ウエハ、ハロゲンランプ、ルーバーの位置関係を示す模式図である。
図9】ルーバーと支持体を示す図である。
図10】ハロゲンランプ、ルーバーの位置関係を示す模式図である。
図11】フラッシュランプの駆動回路を示す図である。
図12】半導体ウエハ上での照度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
<1.全体構成>
【0022】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。本実施形態の熱処理装置1は、基板としてφ300mmの円板形状の半導体ウエハWに対して光照射を行うことによってその半導体ウエハWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。熱処理装置1に搬入される前の半導体ウエハWには不純物が注入されており、熱処理装置1による加熱処理によって注入された不純物の活性化処理が実行される。
【0023】
熱処理装置1は、半導体ウエハWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウエハWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウエハWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウエハWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0024】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射された光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0025】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0026】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウエハWを保持する保持部7を囲繞する。
【0027】
チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。また、反射リング68,69の内周面は電解ニッケルメッキによって鏡面とされている。
【0028】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウエハWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66はチャンバー6の外側からチャンバー側部61を貫通して凹部62まで連通している。また搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウエハWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウエハWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0029】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガス(本実施形態では窒素ガス(N2))を供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は窒素ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、窒素ガス供給源85から緩衝空間82に窒素ガスが送給される。緩衝空間82に流入した窒素ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。
【0030】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、チャンバー6の熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。また、窒素ガス供給源85および排気部190は、熱処理装置1に設けられた機構であっても良いし、熱処理装置1が設置される工場のユーティリティであっても良い。
【0031】
また、搬送開口部66の先端にも熱処理空間65内の気体を排出するガス排気管191が接続されている。ガス排気管191はバルブ192を介して排気部190に接続されている。バルブ192を開放することによって、搬送開口部66を介してもチャンバー6の熱処理空間65内の気体が排気される。
【0032】
<2.保持部7と移載機構10>
【0033】
図2は、保持部7の斜視図である。保持部7は、サセプタ70および保持プレート74を備えて構成される。サセプタ70は、石英により形成され、円環形状のリング部71に複数の爪部72(本実施形態では4本)を立設して構成される。図3は、保持プレート74の平面図である。保持プレート74は石英にて形成された円形の平板状部材であって、サセプタ70の上方に後述する爪部72および支持棒73により支持される。保持プレート74の直径は半導体ウエハWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート74は、半導体ウエハWよりも大きな平面サイズを有する。保持プレート74の上面には複数個のバンプ75が立設されている。本実施形態においては、保持プレート74の外周円と同心円の周上に沿って60°毎に計6本のバンプ75が立設されている。6本のバンプ75を配置した円の径(対向するバンプ75間の距離)は半導体ウエハWの径よりも小さく、本実施形態ではφ280mmである。それぞれのバンプ75は石英にて形成された支持ピンである。なお、バンプ75の個数は6本に限定されるものではなく、半導体ウエハWを安定して支持可能な3本以上であれば良い。
【0034】
また、保持プレート74の上面には、6本のバンプ75と同心円状に複数個(本実施形態では5個)のガイドピン76(図2では図示省略)が立設されている。5個のガイドピン76を配置した円の径は半導体ウエハWの径よりも若干大きい。各ガイドピン76は石英にて形成されている。
【0035】
リング部71が凹部62の底面に載置されることによって、保持部7のサセプタ70がチャンバー6の熱処理空間65内に装着される。そして、保持プレート74はチャンバー6に装着されたサセプタ70の爪部72に装着保持される。チャンバー6に搬入された半導体ウエハWはサセプタ70に保持された保持プレート74の上に水平姿勢にて載置される。
【0036】
図4は、保持プレート74に半導体ウエハWが載置されたときのバンプ75近傍を拡大した図である。サセプタ70の各爪部72には支持棒73が立設されている。支持棒73の上端部が保持プレート74の下面に穿設された凹部に嵌合することによって、保持プレート74が位置ずれすることなくサセプタ70に保持される。
【0037】
また、バンプ75およびガイドピン76も保持プレート74の上面に穿設された凹部に嵌着されて立設されている。保持プレート74の上面に立設されたバンプ75およびガイドピン76の上端は当該上面から突出する。半導体ウエハWは保持プレート74に立設された複数のバンプ75によって点接触にて支持されて保持プレート74上に載置される。バンプ75の上端の高さ位置から保持プレート74の上面までの距離は0.5mm以上3mm以下(本実施形態では1mm)である。従って、半導体ウエハWは複数のバンプ75によって保持プレート74の上面から0.5mm以上3mm以下の間隔を隔てて支持されることとなる。また、ガイドピン76の上端の高さ位置はバンプ75の上端よりも高く、複数のガイドピン76によって半導体ウエハWの水平方向の位置ずれが防止される。なお、バンプ75およびガイドピン76を保持プレート74と一体に石英にて加工するようにしても良い。また、これら複数個のガイドピン76に代えて上側に向けて拡がるように水平面と所定の角度をなすテーパ面が形成された円環状部材を設けるようにして、半導体ウエハWの水平方向の位置ずれを防止するようにしても良い。
【0038】
そして、保持プレート74の上面のうち少なくとも複数のバンプ75に支持された半導体ウエハWに対向する領域は平面となる。この場合、半導体ウエハWは複数のバンプ75によって保持プレート74の当該平面から0.5mm以上3mm以下の間隔を隔てて支持されることとなる。
【0039】
また、図2および図3に示すように、保持プレート74には、上下に貫通して開口部78および切り欠き部77が形成されている。切り欠き部77は、熱電対を使用した接触式温度計130のプローブ先端部を通すために設けられている。一方、開口部78は、放射温度計120が保持プレート74に保持された半導体ウエハWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。
【0040】
図5は、移載機構10の平面図である。また、図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウエハWの移載を行う移載動作位置(図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウエハWと平面視で重ならない退避位置(図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0041】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12が保持プレート74に穿設された貫通孔79(図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端が保持プレート74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、サセプタ70のリング部71の直上である。リング部71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0042】
<3.フラッシュ加熱部5>
【0043】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0044】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、保持部7に保持される半導体ウエハWの真上の位置にその主面に沿って(つまり水平方向に沿って)それぞれの長手方向が互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。
【0045】
図10は、フラッシュランプFLの駆動回路を示す図である。同図に示すように、コンデンサ93と、コイル94と、フラッシュランプFLと、スイッチング素子96とが直列に接続されている。フラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部に陽極および陰極が配設された棒状のガラス管(放電管)92と、該ガラス管92の外周面上に付設されたトリガー電極91とを備える。コンデンサ93には、電源ユニット95によって所定の電圧が印加され、その印加電圧に応じた電荷が充電される。また、トリガー電極91にはトリガー回路97から電圧を印加することができる。トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加するタイミングは制御部3によって制御される。
【0046】
本実施の形態では、スイッチング素子96として絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT;Insulated gate bipolar transistor)を用いている。IGBTは、ゲート部にMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field effect transistor)を組み込んだバイポーラトランジスタであり、大電力を取り扱うのに適したスイッチング素子である。スイッチング素子96のゲートには制御部3のパルス発生器31からパルス信号が印加される。
【0047】
コンデンサ93が充電された状態でスイッチング素子96のゲートにパルスが出力されてガラス管92の両端電極に高電圧が印加されたとしても、キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、通常の状態ではガラス管92内に電気は流れない。しかしながら、トリガー回路97がトリガー電極91に電圧を印加して絶縁を破壊した場合には両端電極間の放電によってガラス管92内に電流が瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。
【0048】
また、図1のリフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射された光を保持部7の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されて梨地模様を呈する。
【0049】
<4.ハロゲン加熱部4>
【0050】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、チャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行うものであって、筐体101の内部に、保持部7に保持される半導体ウエハWの真下の位置に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを配列して構成された光源構成体LSと、その光源構成体LSと半導体ウエハWとの間に配置されたルーバー100とを備える。
【0051】
図7は、光源構成体LSの複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図、図8は半導体ウエハWとハロゲンランプHL等の配置を示す模式図、図9はルーバー100の取り付け状態を示す平面図および断面図、図10はルーバー4とハロゲンランプHLの位置関係をしめす模式図である。光源構成体LSは、20本のハロゲンランプHLを平行に配列した上側ランプ列UHLと、その直下位置にて同じく20本のハロゲンランプHLを平行に配列した下側ランプ列LHLとからなる。それらを構成するハロゲンランプHLは、すべて同一の特性を有する長さ約50cmの円筒形状を有する棒状ランプである。上側ランプ列UHLと下側ランプ列LHLのそれぞれは、水平面内の40cm×50cmの領域に20本のハロゲンランプHLを後述の如く平行に配列して構成される。
【0052】
上側ランプ列UHLを構成するハロゲンランプHLと下側ランプ列LHLを構成するハロゲンランプHLとは、互いに直交する方向でかつそれぞれの中央部分が平面視で重なるように配列されており、このようにそれらを直交する方向に配列することで、ランプ配列に起因する照度むらを防止または低減するようにしている。上側ランプ列UHLと下側ランプ列LHLとが平面視で重なる40cm四方の領域を、以下ではランプ配置領域LAと称する。このランプ配置領域LAは、処理対象であるφ300mmの円板形状の半導体ウエハWよりも大きく、ランプ配置領域LAの中心が、保持部7に保持されている半導体ウエハWの中心の直下に位置するように配置されている。そしてこのランプ配置領域LAの上面が、半導体ウエハWの加熱に寄与する発光領域面である。
【0053】
また、図7に示すように、上側ランプ列UHL、下側ランプ列LHLのそれぞれは、それぞれを構成する20本のハロゲンランプHLのうち、両端側の6本づつが密に配列され、残りの8本は、中央部に向って徐々に間隔が広くなるように配列されていて、略正方形のランプ配置領域LAの中心が最もハロゲンランプHLの間隔が大きくハロゲンランプHLの密度が疎らとなっている。これは、一般に光照射による加熱時においては半導体ウエハWの周縁部において温度低下が生じやすいため、熱処理装置1ではそれを補償すべく半導体ウエハWの周縁部により多い光量の照射を行うことができるものである。
【0054】
なお、ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウエハWへの放射効率が優れたものとなる。
【0055】
ルーバー100は、厚さ3mm、高さ20mmで、外径は処理しようとする半導体ウエハWと略同じ300mmの無底円筒形状であって、透明な石英ガラスに微細な気泡を形成して入射した光をその気泡で散乱させ、約30%程度の光を透過させるように半透明になした素材により形成されている。そしてルーバー100は、図8に示すように、透明な石英ガラスにより形成された支持体102により筐体101の内壁に取り付け支持されて、光源構成体LSの上方であって保持部7に保持されている半導体ウエハWとの間、さらに詳しくは、光源構成体LSと下側チャンバー窓64との間のハロゲン加熱部4内に配置されている。
【0056】
ルーバー100の取り付け位置は、半導体ウエハWに近すぎると、半導体ウエハWに対する影響が局所的になり、極端な場合は半導体ウエハWにルーバー100の影ができて照度分布が悪化するおそれがある。逆に半導体ウエハWから遠すぎると半導体ウエハWへの照度均一化の効果が薄れる。本実施形態では、ルーバー100の取り付け位置は、光源構成体LSの上側ランプ列UHLのハロゲンランプHLと保持部7に保持されている半導体ウエハWとのちょうど中間よりも、ハロゲンランプHL寄りである。具体的には、ルーバー100の下端と上側ランプ列UHLを構成するハロゲンランプHLの上端との距離が15mm、ルーバー100の上端と半導体ウエハWとの距離が70mmとなるように配置した。
【0057】
かかる配置によって、ルーバー100は、図8および図10に示すように、半導体ウエハWの端縁の直下に位置し、かつ上側ランプ列UHL、下側ランプ列LHLのそれぞれのハロゲンランプHLのうち、半導体ウエハWの周縁部における温度低下を補償すべく密に配置された両端側の6本づつの近傍に位置することになる。これにより、それら密に配置されたハロゲンランプHLからの光をルーバー100が適度に散乱させて、半導体ウエハWの周縁部への直接的な照射の集中を軽減し、後述の如く照度分布のピークを低くし、照度分布のばらつきを少なくして温度分布を均一化することができたものと考えられる。
【0058】
<5.制御部3>
【0059】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行うCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えて構成される。また、図9に示すように、制御部3は、パルス発生器31および波形設定部32を備えるとともに、入力部33に接続されている。入力部33としては、キーボード、マウス、タッチパネル等の種々の公知の入力機器を採用することができる。入力部33からの入力内容に基づいて波形設定部32がパルス信号の波形を設定し、その波形に従ってパルス発生器31がパルス信号を発生する。この制御部3と、トリガー回路97と、スイッチング素子96とによってフラッシュランプFLの発光を制御する発光制御手段が構成される。また、制御部3は、ハロゲンランプHLの発光も制御する。
【0060】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウエハWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造(図示せず)とされている。ルーバー100はハロゲン加熱部4の気体流を妨げないように扁平で無底の円筒形状とされ、また支持体102の中心部に開口103が、またルーバー100の内側位置には4つの開口104が形成され、また、支持体102はハロゲン加熱部4の四隅に対応する部分を切り欠いた形状とされている。上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0061】
<6.熱処理装置1の動作とルーバー100の効果>
【0062】
次に、熱処理装置1における半導体ウエハWの処理手順について説明する。ここで処理対象となる半導体ウエハWはイオン注入法により不純物(イオン)が添加された半導体基板である。図12は、熱処理装置1での処理対象となる半導体ウエハWに形成された素子の構造を示す図である。シリコン基板111にはソース・ドレイン領域112とエクステンション領域113とが形成されるとともに、その上面にはゲート電極115が設けられる。エクステンション領域113はソース・ドレイン領域112とチャネルとの電気的接続部である。金属のゲート電極115はゲート絶縁膜114を介してシリコン基板111上に設けられており、その測方にはセラミックスのサイドウォール116が形成される。ソース・ドレイン領域112およびエクステンション領域113にはイオン注入法によって不純物が導入されており、その不純物の活性化が熱処理装置1による光照射加熱処理(アニール)により実行される。以下に説明する熱処理装置1の処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0063】
まず、給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89,192が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0064】
また、バルブ192が開放されることによって、搬送開口部66からもチャンバー6内の気体が排気される。さらに、図示省略の排気機構によって移載機構10の駆動部周辺の雰囲気も排気される。なお、熱処理装置1における半導体ウエハWの熱処理時には窒素ガスが熱処理空間65に継続的に供給されており、その供給量は処理工程に応じて適宜変更される。
【0065】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介してイオン注入後の半導体ウエハWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。搬送ロボットによって搬入された半導体ウエハWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通って保持プレート74の上面から突き出て半導体ウエハWを受け取る。
【0066】
半導体ウエハWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウエハWは移載機構10から保持部7の保持プレート74に受け渡されて水平姿勢に保持される。半導体ウエハWは図8に示すように6本のバンプ75によって点接触にて支持され、保持プレート74の上面から0.5mm以上3mm以下の間隔(本実施形態では1mm)を隔てて保持される。これにより、半導体ウエハWの下面と保持プレート74の上面との間には厚さ1mmの気体層が挟み込まれることとなる。保持プレート74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0067】
半導体ウエハWが保持部7の保持プレート74に載置されて保持された後、ハロゲン
加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯する。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64および保持プレート74を透過して半導体ウエハWの裏面から照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウエハWの温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0068】
図11は、このハロゲンランプHLによる加熱時の半導体ウエハWの照度分布のシミュレーションの結果を示す図である。ルーバー100を設置しない比較例では、半導体ウエハWの両端縁から内側5cm程度の位置に照度のピークが高くなっており、半導体ウエハWの周縁部を必要以上に加熱した結果、温度分布にもむらが生じていたことが考えられる。それに対し、ルーバー100を設置した本発明では、比較例と比べて、半導体ウエハWの両端縁から内側5cm程度の位置に生じていたピーク部分の山が低くなってほぼフラットになっている一方、また半導体ウエハWの中央部では照度の低下は見られるもののそれはごくわずかにとどまる。総じて、全体としては照度のピークが低くなり照度の最大と最小との差が少なくなり、また中央部における照度の低下はごくわずかである。これは、密に配置されたハロゲンランプHLからの光をその前に配置されたルーバー100が適度に散乱させて、半導体ウエハWの周縁部への直接的な照射の集中を軽減し、他方、ルーバー100は無底形状であり、半導体ウエハWの中央部に照射される光はほとんど散乱されることがないためであると考えられる。なお、図11において各グラフに細かな凹凸があるのは、シミュレーションに用いているモンテカルロ法の乱数計算のためであり、実際の照度とは異なっている。
【0069】
なお、このルーバー100に代えて、半透明なガラス製のドーナツ状の円盤を用いることも考えられるが、その場合、半導体ウエハWから遠い位置では半導体ウエハW前面の照度が低下してしまい、効率が悪くなり、また半導体ウエハWに近い位置ではドーナツ状の円盤の影が半導体ウエハW表面にできてしまって均一性が悪化する。本発明の無底の円筒型のルーバー100は、半導体ウエハWの表面方向の厚みが薄いため半導体ウエハW表面に影ができにくく、また無底であるため中央部は完全に光を透過するので、半導体ウエハWの中央部における照度の低下はわずかであるので、効率の悪化もわずかですむ。このような効果を得られるルーバーの形状は、発明者の実験によれば、直径300mmの半導体ウエハW用としては、高さ10mm〜30mmでは良好な結果が得られた。これは半導体ウエハWの直径の30分の1〜10分の1に相当する。また、厚みは5mm以下であればよい。また直径は上記実施形態では半導体ウエハWと略同じ300mmであったが、250mm〜330mmの範囲で効果がみられる。
【0070】
ハロゲンランプHLによって加熱される半導体ウエハWの温度は接触式温度計130および放射温度計120によって測定されている。これらによって測定された半導体ウエハWの温度は制御部3に伝達される。本実施形態においては、ハロゲンランプHLからの光照射によって半導体ウエハWを一旦650℃以下の予備加熱温度(本実施形態では500℃)にまで昇温して保持している。そして、予備加熱温度に維持されている半導体ウエハWに対してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射してフラッシュ加熱が実行される。フラッシュ加熱においては、ハロゲンランプHLによって予備加熱温度(500℃)にまで加熱した半導体ウエハWにフラッシュランプFLからフラッシュ光照射を行うことによって、半導体ウエハWの表面温度を1000℃以上に到達させている(本実施形態では1100℃)。このようなフラッシュ加熱によって、イオン注入後の半導体ウエハの不純物(イオン)活性化工程がなされる。
【0071】
フラッシュ加熱が終了した後、半導体ウエハWの表面温度が予備加熱温度近傍にまで降温する程度の時間が経過すると、ハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウエハWが予備加熱温度からの降温を開始する。なお、ハロゲンランプHLが消灯しても、すぐにフィラメントや管壁の温度が低下するものではなく、暫時高温のフィラメントおよび管壁から輻射熱が放射され続け、これが半導体ウエハWの降温を妨げとなることがある。その場合には、ハロゲンランプHLが消灯するのと同時に、ハロゲン加熱部4とチャンバー6との間の遮光位置に挿入するシャッター機構(図示せず)を設けて放射熱を遮断すれば、半導体ウエハWの降温速度を高めることができる。
【0072】
そして、半導体ウエハWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が保持プレート74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウエハWを保持プレート74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウエハWが装置外部の搬送ロボットにより搬出され、熱処理装置1における半導体ウエハWの加熱処理が完了する。
【0073】
本実施形態においては、ハロゲンランプHLからの光照射によって650℃以下の予備加熱温度に加熱した半導体ウエハWにフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射して半導体ウエハWの表面到達温度を1000℃以上とするフラッシュ加熱を行うことによって、注入された不純物の拡散を抑制しつつも不純物注入時に導入された欠陥の回復を促進でき、しかも不純物の良好な活性化を行うことができる。
【0074】
<7.変形例>
【0075】
上記実施形態では、上側ランプ列UHLを構成するハロゲンランプHLと下側ランプ列LHLを構成するハロゲンランプHLとを互いに直交する方向に配列して、ランプ配列に起因する照度むらを防止または低減するようにしているが、これ以外のたとえば一方向のみの配列であってもよい。
【0076】
また、上記実施形態では、上側ランプ列UHL、下側ランプ列LHLのそれぞれは、両端側の6本づつを密に、中央部の8本は、中央部に向って徐々に間隔が広くなるように配列されていて、略正方形のランプ配置領域LAの中心が最もハロゲンランプHLの間隔が大きくハロゲンランプHLの密度が疎らとすることで、そのランプ配置領域LAの発光領域面の中央部よりも周縁部のほうが、単位面積あたりの発光光量が多くなるように構成しているが、これに限らず、例えばハロゲンランプの配置は等間隔であっても、発光領域面の中央部に位置するハロゲンランプは50W、周縁部のハロゲンランプは100Wにする、といったように、発光領域面の中央部に位置するハロゲンランプよりも周縁部のハロゲンランプのほうが定格容量が大きなものを用いるようにしてもよい。
【0077】
また、ルーバー100は、上記のように透明な石英ガラスに微細な気泡を形成したものに限らず、当初から半透明な素材、または透明な素材の表面を粗面にして半透明にしたものでもよい。ルーバー100の取り付け位置は、光源構成体LSの上側ランプ列UHLのハロゲンランプHLと保持部7に保持されている半導体ウエハWとのちょうど中間よりも、ハロゲンランプHL寄りであればよい。
【符号の説明】
【0078】
1 熱処理装置
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
100 ルーバー
102 支持体
W 半導体ウエハ
HL ハロゲンランプ
FL フラッシュランプ
LS 光源構成体
LA ランプ配置領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12