特許第5731251号(P5731251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731251
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ロータ、及びモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/27 20060101AFI20150521BHJP
【FI】
   H02K1/27 501C
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-68829(P2011-68829)
(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公開番号】特開2012-205429(P2012-205429A)
(43)【公開日】2012年10月22日
【審査請求日】2013年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000101352
【氏名又は名称】アスモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂昌
【審査官】 マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2748694(JP,B2)
【文献】 特開平08−088963(JP,A)
【文献】 特開2011−004519(JP,A)
【文献】 特開平03−074151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石が径方向に移動規制された状態で配置されて一方の極性を構成する磁石磁極部がロータコアの周方向に複数形成されるとともに、前記ロータコアに一体形成された擬似磁極部が各磁石磁極部間に空隙を以て配置され、前記擬似磁極部を他方の磁極として機能するように構成されたロータにおいて、
前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータコアに装着される保持部材が前記永久磁石の軸方向各端部に当接し、該保持部材にて前記永久磁石の軸方向の移動を規制するように構成され
前記ロータコアは、磁性金属板材から形成されるコアシートを軸方向に複数枚積層してなり、その軸方向に延びるように形成された磁石収容孔に前記永久磁石が挿入されて配置され、各コアシートは、前記磁石収容孔の周縁における前記永久磁石の周方向両側に位置する径方向連結部において他の部分よりも薄肉に形成して磁気抵抗を高く構成された薄肉部が形成され、
前記保持部材は、前記各磁石磁極部のそれぞれに設けられた複数の部材から構成されるとともに、各保持部材には軸方向に延びて形成されたコア固定部が設けられ、該コア固定部の先端部分に設けられた係合部が軸方向に積層の前記コアシートの薄肉部間の隙間に挿入されて該薄肉部に係合されて前記ロータコアに装着されたことを特徴とするロータ。
【請求項2】
永久磁石が径方向に移動規制された状態で配置されて一方の極性を構成する磁石磁極部がロータコアの周方向に複数形成されるとともに、前記ロータコアに一体形成された擬似磁極部が各磁石磁極部間に空隙を以て配置され、前記擬似磁極部を他方の磁極として機能するように構成されたロータにおいて、
前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータコアに装着される保持部材が前記永久磁石の軸方向各端部に当接し、該保持部材にて前記永久磁石の軸方向の移動を規制するように構成され、
前記ロータコアは、軸方向に延びるように形成された磁石収容孔に前記永久磁石が挿入されて配置され、
前記保持部材は、前記各磁石磁極部のそれぞれに設けられた複数の部材から構成されるとともに、各保持部材には軸方向に延びて形成されたコア固定部が設けられ、該コア固定部の先端部分に設けられた嵌合連結部が軸方向他方側の保持部材のコア固定部の嵌合連結部と互いに連結して前記ロータコアに装着されたことを特徴とするロータ。
【請求項3】
永久磁石が径方向に移動規制された状態で配置されて一方の極性を構成する磁石磁極部がロータコアの周方向に複数形成されるとともに、前記ロータコアに一体形成された擬似磁極部が各磁石磁極部間に空隙を以て配置され、前記擬似磁極部を他方の磁極として機能するように構成されたロータにおいて、
前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータの回転軸及び前記ロータコアの少なくとも一方に装着される保持部材が前記永久磁石の軸方向各端部に当接し、該保持部材にて前記永久磁石の軸方向の移動を規制するように構成され、
前記ロータコアは、軸方向に延びるように形成された磁石収容孔に前記永久磁石が挿入されて配置され、周方向においてその磁石収容孔の周縁と前記永久磁石との間に隙間が生じるように構成され、
前記保持部材は、軸方向に延びて形成された磁石固定部が設けられ、該磁石固定部が前記永久磁石と前記ロータコアの磁石収容孔の周縁との間の隙間に挿入され前記永久磁石を周方向から保持するように構成されたことを特徴とするロータ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のロータにおいて、
前記ロータコアは、周方向において前記磁石収容孔の周縁と前記永久磁石との間に隙間が生じるように構成され、
前記保持部材は、前記コア固定部が前記永久磁石と前記ロータコアの磁石収容孔の周縁との間の隙間に挿入されて前記ロータコアへの装着を図るとともに、該コア固定部にて前記永久磁石を周方向から保持するように構成されたことを特徴とするロータ。
【請求項5】
永久磁石が径方向に移動規制された状態で配置されて一方の極性を構成する磁石磁極部がロータコアの周方向に複数形成されるとともに、前記ロータコアに一体形成された擬似磁極部が各磁石磁極部間に空隙を以て配置され、前記擬似磁極部を他方の磁極として機能するように構成されたロータにおいて、
前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータコアに装着される保持部材が前記永久磁石の軸方向各端部に当接し、該保持部材にて前記永久磁石の軸方向の移動を規制するように構成され、
前記擬似磁極部は、径方向の磁束の向きに沿うように形成され磁束の整流機能を有するスリットが設けられ、
前記保持部材は、前記各磁石磁極部のそれぞれに設けられた複数の部材から構成されるとともに、各保持部材には軸方向に延びて形成されたコア固定部が設けられ、該コア固定部が前記スリットに挿入されて前記ロータコアに装着されたことを特徴とするロータ。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載のロータを備えたことを特徴とするモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンシクエントポール型(ハーフマグネット型)構造のロータ、及び該ロータを備えたモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータに用いられるロータとしては、例えば特許文献1にて示されているように、ロータコアの周方向に一方の極性を有する永久磁石が配置された磁石磁極部が複数形成されるとともに、前記ロータコアに一体形成された擬似磁極部が各磁石磁極部間に空隙を以て配置され、前記擬似磁極部を他方の磁極として機能するように構成された所謂コンシクエントポール型構造のロータが知られている。
【0003】
また、同ロータにおいては、永久磁石がロータコアの外周面に配置され、その永久磁石の外周面に当接するように保持部材がロータコアに装着されて構成され、遠心力による永久磁石の径方向外側への移動が規制、飛散が防止されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−252554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成のロータにおいて、永久磁石の位置が径方向外側のみならず、何らかの原因で軸方向にずれるようなことがあると、モータの回転性能に影響を及ぼす虞がある。そのため、永久磁石を軸方向においてもより確実に保持することが求められている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、永久磁石の保持をより確実に行うことができるロータ、及びそのロータを備えるモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、永久磁石が径方向に移動規制された状態で配置されて一方の極性を構成する磁石磁極部がロータコアの周方向に複数形成されるとともに、前記ロータコアに一体形成された擬似磁極部が各磁石磁極部間に空隙を以て配置され、前記擬似磁極部を他方の磁極として機能するように構成されたロータにおいて、前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータコアに装着される保持部材が前記永久磁石の軸方向各端部に当接し、該保持部材にて前記永久磁石の軸方向の移動を規制するように構成され、前記ロータコアは、磁性金属板材から形成されるコアシートを軸方向に複数枚積層してなり、その軸方向に延びるように形成された磁石収容孔に前記永久磁石が挿入されて配置され、各コアシートは、前記磁石収容孔の周縁における前記永久磁石の周方向両側に位置する径方向連結部において他の部分よりも薄肉に形成して磁気抵抗を高く構成された薄肉部が形成され、前記保持部材は、前記各磁石磁極部のそれぞれに設けられた複数の部材から構成されるとともに、各保持部材には軸方向に延びて形成されたコア固定部が設けられ、該コア固定部の先端部分に設けられた係合部が軸方向に積層の前記コアシートの薄肉部間の隙間に挿入されて該薄肉部に係合されて前記ロータコアに装着されたことをその要旨とする。
【0008】
この発明では、所謂コンシクエントポール型構造のロータにおいて、径方向に移動規制された状態で磁石磁極部に配置された永久磁石は、ロータコアの軸方向両側においてロータコアに装着される保持部材が軸方向各端部に当接し軸方向の移動が規制される。これにより、ロータに配置された永久磁石は、従来のような径方向への移動規制のみならず軸方向両側の保持部材により軸方向においても移動規制され、永久磁石の保持をより確実に行うことができる。結果、永久磁石の位置がずれる可能性を極めて低くしてモータの回転性能を良好に維持することができる。
【0014】
この発明では、ロータコアは、磁性金属板材のコアシートを複数枚積層して構成され、永久磁石が挿入配置される磁石収容孔の周縁でその永久磁石の周方向両側に位置する径方向連結部には、その部分の漏れ磁束を低減するために磁気抵抗を高くする薄肉部が形成される。そして、磁石磁極部毎に設けられて永久磁石の軸方向の移動を規制するための保持部材は、それぞれ軸方向に延びるコア固定部の先端部分の係合部が軸方向に積層のコアシートの薄肉部間の隙間に挿入され該薄肉部に係合されてロータコアに装着される。これにより、上記のような漏れ磁束を低減させる薄肉部を利用して保持部材のコア固定部を係合させるため、保持部材を装着(係合)させるための手段をロータコアに別途設ける必要がない。
【0015】
請求項に記載の発明は、永久磁石が径方向に移動規制された状態で配置されて一方の極性を構成する磁石磁極部がロータコアの周方向に複数形成されるとともに、前記ロータコアに一体形成された擬似磁極部が各磁石磁極部間に空隙を以て配置され、前記擬似磁極部を他方の磁極として機能するように構成されたロータにおいて、前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータコアに装着される保持部材が前記永久磁石の軸方向各端部に当接し、該保持部材にて前記永久磁石の軸方向の移動を規制するように構成され、前記ロータコアは、軸方向に延びるように形成された磁石収容孔に前記永久磁石が挿入されて配置され、前記保持部材は、前記各磁石磁極部のそれぞれに設けられた複数の部材から構成されるとともに、各保持部材には軸方向に延びて形成されたコア固定部が設けられ、該コア固定部の先端部分に設けられた嵌合連結部が軸方向他方側の保持部材のコア固定部の嵌合連結部と互いに連結して前記ロータコアに装着されたことをその要旨とする。
この発明では、所謂コンシクエントポール型構造のロータにおいて、径方向に移動規制された状態で磁石磁極部に配置された永久磁石は、ロータコアの軸方向両側においてロータコアに装着される保持部材が軸方向各端部に当接し軸方向の移動が規制される。これにより、ロータに配置された永久磁石は、従来のような径方向への移動規制のみならず軸方向両側の保持部材により軸方向においても移動規制され、永久磁石の保持をより確実に行うことができる。結果、永久磁石の位置がずれる可能性を極めて低くしてモータの回転性能を良好に維持することができる。
【0016】
この発明では、磁石磁極部毎に設けられて永久磁石の軸方向の移動を規制するための保持部材は、それぞれ軸方向に延びるコア固定部の先端部分の嵌合連結部が軸方向他方側の保持部材のコア固定部の嵌合連結部と互いに連結されてロータコアに装着される。これにより、磁石磁極部の軸方向両側に備えられた各保持部材を互いの嵌合連結部を連結してロータコアに装着することで、保持部材を装着させるための手段をロータコアに別途設ける必要がない。
【0017】
請求項3に記載の発明は、永久磁石が径方向に移動規制された状態で配置されて一方の極性を構成する磁石磁極部がロータコアの周方向に複数形成されるとともに、前記ロータコアに一体形成された擬似磁極部が各磁石磁極部間に空隙を以て配置され、前記擬似磁極部を他方の磁極として機能するように構成されたロータにおいて、前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータの回転軸及び前記ロータコアの少なくとも一方に装着される保持部材が前記永久磁石の軸方向各端部に当接し、該保持部材にて前記永久磁石の軸方向の移動を規制するように構成され、前記ロータコアは、軸方向に延びるように形成された磁石収容孔に前記永久磁石が挿入されて配置され、周方向においてその磁石収容孔の周縁と前記永久磁石との間に隙間が生じるように構成され、前記保持部材は、軸方向に延びて形成された磁石固定部が設けられ、該磁石固定部が前記永久磁石と前記ロータコアの磁石収容孔の周縁との間の隙間に挿入され前記永久磁石を周方向から保持するように構成されたことをその要旨とする。
この発明では、所謂コンシクエントポール型構造のロータにおいて、径方向に移動規制された状態で磁石磁極部に配置された永久磁石は、ロータコアの軸方向両側においてロータの回転軸及びロータコアの少なくとも一方に装着される保持部材が軸方向各端部に当接し軸方向の移動が規制される。これにより、ロータに配置された永久磁石は、従来のような径方向への移動規制のみならず軸方向両側の保持部材により軸方向においても移動規制され、永久磁石の保持をより確実に行うことができる。結果、永久磁石の位置がずれる可能性を極めて低くしてモータの回転性能を良好に維持することができる。
また、ロータコアは、周方向において永久磁石とその磁石収容孔の周縁との間に隙間が生じるように構成され、その隙間が磁石収容孔の周縁と永久磁石との間の磁気抵抗を高くし漏れ磁束が低減される。そして、保持部材の磁石固定部は、永久磁石とロータコアの磁石収容孔の周縁との間のその隙間に挿入され永久磁石を周方向から保持するように構成される。これにより、保持部材(磁石固定部)を非磁性又は磁石固定部の磁気抵抗を高く構成することで漏れ磁束の低減を図りつつ、永久磁石の周方向に対する移動をも規制して保持することができる。
請求項に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のロータにおいて、前記ロータコアは、周方向において前記磁石収容孔の周縁と前記永久磁石との間に隙間が生じるように構成され、前記保持部材は、前記コア固定部が前記永久磁石と前記ロータコアの磁石収容孔の周縁との間の隙間に挿入されて前記ロータコアへの装着を図るとともに、該コア固定部にて前記永久磁石を周方向から保持するように構成されたことをその要旨とする。
【0018】
この発明では、ロータコアは、周方向において永久磁石のその磁石収容孔の周縁との間に隙間が生じるように構成され、その隙間が磁石収容孔の周縁と永久磁石との間の磁気抵抗を高くし漏れ磁束が低減される。そして、保持部材のコア固定部は、永久磁石とロータコアの磁石収容孔の周縁との間のその隙間に挿入されてロータコアへの装着を図るとともに、該コア固定部にて永久磁石を周方向から保持するように構成される。これにより、コア固定部にて保持部材の装着も行い、保持部材(コア固定部)を非磁性又はコア固定部の磁気抵抗を高く構成することで漏れ磁束の低減を図りつつ、永久磁石の周方向に対する移動をも規制して保持することができる。
【0021】
請求項に記載の発明は、永久磁石が径方向に移動規制された状態で配置されて一方の極性を構成する磁石磁極部がロータコアの周方向に複数形成されるとともに、前記ロータコアに一体形成された擬似磁極部が各磁石磁極部間に空隙を以て配置され、前記擬似磁極部を他方の磁極として機能するように構成されたロータにおいて、前記ロータコアの軸方向両側において前記ロータコアに装着される保持部材が前記永久磁石の軸方向各端部に当接し、該保持部材にて前記永久磁石の軸方向の移動を規制するように構成され、前記擬似磁極部は、径方向の磁束の向きに沿うように形成され磁束の整流機能を有するスリットが設けられ、前記保持部材は、前記各磁石磁極部のそれぞれに設けられた複数の部材から構成されるとともに、各保持部材には軸方向に延びて形成されたコア固定部が設けられ、該コア固定部が前記スリットに挿入されて前記ロータコアに装着されたことをその要旨とする。
この発明では、所謂コンシクエントポール型構造のロータにおいて、径方向に移動規制された状態で磁石磁極部に配置された永久磁石は、ロータコアの軸方向両側においてロータコアに装着される保持部材が軸方向各端部に当接し軸方向の移動が規制される。これにより、ロータに配置された永久磁石は、従来のような径方向への移動規制のみならず軸方向両側の保持部材により軸方向においても移動規制され、永久磁石の保持をより確実に行うことができる。結果、永久磁石の位置がずれる可能性を極めて低くしてモータの回転性能を良好に維持することができる。
【0022】
この発明では、擬似磁極部は、径方向の磁束の向きに沿うように形成され磁束の整流機能を有するスリットが設けられる。そして、磁石磁極部毎に設けられて永久磁石の軸方向の移動を規制するための保持部材は、それぞれ軸方向に延びるコア固定部がそのスリットに挿入されてロータコアに装着される。これにより、上記のような磁束の整流を行うスリットを保持部材の装着に用いることで、保持部材を装着させるための手段をロータコアに別途設ける必要がない。
【0023】
請求項に記載の発明は、請求項1〜のいずれか1項に記載のロータを備えたモータである。
この発明では、ロータの磁石磁極部に配置された永久磁石の保持をより確実なものとしたモータを提供することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、永久磁石の保持をより確実に行うことができるロータ、及びそのロータを備えるモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態におけるモータの平面図である。
図2】第1実施形態におけるロータの分解斜視図である。
図3】(a)は第1実施形態におけるロータの部分拡大図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
図4】(a)は第1実施形態におけるロータコアの上面図、(b)は(a)のB−B線断面図である。
図5】(a)は第1実施形態におけるカバー部材の上面図、(b)はカバー部材の側面図である。
図6】(a)は第2実施形態におけるロータの部分拡大図、(b)は(a)のC−C線断面図、(c)はカバー部材の上面図、(d)はカバー部材の側面図である。
図7】(a)は第3実施形態におけるロータの部分拡大図、(b)は(a)のD−D線断面図、(c)はカバー部材の上面図、(d)はカバー部材の側面図である。
図8】(a)は第4実施形態におけるロータの部分拡大図、(b)は(a)のE−E線断面図、(c)はカバー部材の上面図、(d)はカバー部材の側面図である。
図9】(a)は第5実施形態におけるロータの部分拡大図、(b)は(a)のF−F線断面図、(c)はカバー部材の上面図、(d)はカバー部材の側面図である。
図10】第6実施形態におけるロータの分解斜視図である。
図11】(a)は第6実施形態におけるロータの部分拡大図、(b)は(a)のG−G線断面図、(c)はカバー部材の上面図、(d)はカバー部材の側面図である。
図12】第7実施形態におけるロータ及び回転軸の概略構成図である。
図13】第7実施形態におけるロータの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1図5に従って説明する。
図1及び図2に示すように、本実施形態のブラシレスモータ(以下、単にモータという)10は、略円環状のステータ11の内側にロータ21が回転可能に収容されてなるインナロータ型にて構成されている。ステータ11は、磁性金属板材を複数枚積層してなる略円筒状のステータコア12を有し、そのステータコア12に等角度間隔に設けられた12個のティース12aに集中巻きにて巻回される12個の巻線磁極13とで構成されている。
【0027】
ステータ11の内側に配置されるロータ21は、回転軸22に固定された略円環状のロータコア23を有する。ロータコア23は、磁性金属板材からなるコアシート24を軸方向に複数枚(本実施形態では16枚)積層し互いにかしめにより連結して構成されている。ロータコア23は、径方向の中央部分に圧入孔23aが設けられ、該圧入孔23aへの回転軸22の圧入にて該回転軸22に対して固定されている。ロータコア23は、外周部の周方向90°間隔において径方向外側に突出した凸形状の磁石磁極部25が4個形成されている。各磁石磁極部25には、略直方体形状の嵌合孔25aが形成され、長手方向が軸方向となるように形成されている。各嵌合孔25aには、略直方体形状の永久磁石26がそれぞれ挿入されて埋込まれ、モータ10が所謂埋込磁石型モータとして構成されている。各嵌合孔25aは、磁石磁極部25の周方向中央を通る磁極中心線の直交方向の幅L1が永久磁石26よりも長くなるように形成されており、ロータコア23は、嵌合孔25a周縁における永久磁石26の周方向両側に位置しロータコア23に一体形成された径方向連結部25bと永久磁石26との間に隙間S1が生じるように構成されている。
【0028】
各永久磁石26は、径方向外側がN極、径方向内側がS極となるように着磁され、磁石磁極部25をN極の磁極として構成している。また、各磁石磁極部25間には、ロータコア23の外周部分に一体形成され径方向外側に突出した凸形状の擬似磁極部27がそれぞれ磁石磁極部25と軸方向から見て所定面積の空隙Kを設けて形成されている。つまり、各磁石磁極部25及び擬似磁極部27は等角度(45°)間隔に交互に配置される。そして、ロータ21は、N極の磁石磁極部25に対して擬似磁極部27をS極として機能させ8磁極の所謂コンシクエントポール型にて構成されている。
【0029】
本実施形態のロータ21は、ロータコア23の軸方向両側にカバー部材31を有し、該カバー部材31は、各磁石磁極部25のそれぞれに設けられた複数の部材から構成される。各カバー部材31は、永久磁石26の軸方向で対向配置されている。図3(a)に示すように、磁石磁極部25に配置された各カバー部材31は、各嵌合孔25aに埋込まれ径方向への移動が規制された永久磁石26の軸方向端部を覆うようにして配置され永久磁石26の軸方向への移動を規制している。
【0030】
ここで、図4(a)(b)に示すように、ロータコア23は、各コアシート24の径方向連結部25bにおいて他の部分よりも薄肉形成して磁気抵抗を高く構成された薄肉部25cが形成されている。各薄肉部25cは、コアシート24の軸方向の一端から他端に向かって凹設して薄肉形成されている。コアシート24は、薄肉部25cの凹設部分が軸方向で対向するようにして積層され磁石磁極部25の各コアシート24の薄肉部25c間に複数個(本実施形態では8個)の隙間S2が生じるように構成されている。各隙間S2は、前記嵌合孔25a(隙間S1)と連通している。
【0031】
図5(a)(b)に示すように、各カバー部材31は、好ましい材料として例えば非磁性材料(例えば、黄銅等の金属や樹脂)からなり、略長方形の板状に形成された磁石保持部32と、該磁石保持部32の端部部分から直交方向に延設された一対のコア固定部33とから構成されている。磁石保持部32は、長手方向の幅が前記磁石磁極部25の磁極中心線の直交方向の幅と同じ長さに形成されており、その長手方向の端部部分にコア固定部33が設けられている。また磁石保持部32は、短手方向の幅が前記嵌合孔25aの径方向の幅よりも若干長く形成されている。コア固定部33は、磁石保持部32の直交方向の長さL2がロータコア23の軸方向端部から所定の数の隙間S2(本実施形態では軸方向に三個目)までの長さに設定されている。コア固定部33は、その先端部分に磁石保持部32の長手方向に沿うように内側に向かって形成され互いに向き合うように構成された係合部34が設けられている。
【0032】
図3(b)に示すように、各カバー部材31は、コア固定部33が前記空隙Kに軸方向から挿入され、そのコア固定部33の係合部34が磁石磁極部25の隙間S2に周方向から挿入されて薄肉部25cに係合するとともに、磁石保持部32の内側面32aが永久磁石26の軸方向の端面26aに当接するように装着される。また各コア固定部33の係合部34は、隙間S2を挿通して隙間S1に到達し先端面34aが永久磁石26の周方向の側面26bに当接され永久磁石26を周方向から固定するように構成されている。
【0033】
尚、このように構成されたロータ21では、ロータ21の回転動作にともなって各磁石磁極部25の隙間S2に空気が流れ込むことで騒音が大きくなることが懸念されるが、その様な場合であっても各隙間S2を塞ぐようにカバー部材31のコア固定部33の長さL2(図5(b)参照)の長さを十分に設けて隙間S2への空気の流入を低減することで騒音の増大が抑制されることが期待できる。
【0034】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)コンシクエントポール型の本実施形態のロータ21では、ロータコア23の各磁石磁極部25の嵌合孔25aに収容され径方向に移動規制された永久磁石26が軸方向両側においてロータコア23(コアシート24)の薄肉部25cに係合されるカバー部材31にて軸方向の移動が規制されている。これにより、ロータコア23に配置された永久磁石26は、径方向への移動規制のみならず軸方向両側のカバー部材31により軸方向においても移動規制され、永久磁石26の保持をより確実に行うことができる。結果、永久磁石26の位置がずれる可能性を極めて低くしてモータ10の回転性能を良好に維持することができる。
【0035】
(2)本実施形態の磁石磁極部25と擬似磁極部27とは、ロータコア23の径方向外側に突出した形状に形成されており、各カバー部材31は、擬似磁極部27と非当接となるように磁石磁極部25に対して装着されている。ここで、カバー部材31を磁石磁極部25と擬似磁極部27とに跨るような形状とした場合、磁石磁極部25(永久磁石26)から発生した磁束の一部がカバー部材31を介して擬似磁極部27に短絡した漏れ磁束となることを避けるため、非磁性材料で構成するというようにカバー部材31の材料が限定される。これに対して本実施形態では、カバー部材31を擬似磁極部27と非当接となるようにロータコア23に対して装着することで、仮にカバー部材31を磁性材料で構成した場合であってもカバー部材31を介して生じ得る漏れ磁束を抑制できるため、カバー部材31の材料選択の自由度が大きくなる。
【0036】
(3)磁石磁極部25は、ロータコア23の径方向外側に突出した形状に形成されており、カバー部材31は、その磁石磁極部25に対応する部分に限り設けられている。これにより、カバー部材31を磁石磁極部25に限定して設けることで、カバー部材31の構成に必要な材料を減らすことができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0037】
また、本実施形態のロータ21は、所謂コンシクエントポール型にて構成されており、全磁極を磁石磁極部25とする従来のロータ構成に比べて永久磁石26を有する磁石磁極部25の数が半分となっている。従って、本実施形態のカバー部材31をコンシクエントポール型のロータ構成に適用させたことで、カバー部材31の構成に必要な材料をより多く減らすことができる。
【0038】
(4)ロータコア23は、磁性金属板材のコアシート24を複数枚積層して構成され、永久磁石26が埋込まれる嵌合孔25a周縁でその永久磁石26の周方向両側に位置する径方向連結部25bには、その部分の漏れ磁束を低減するために磁気抵抗を高くする薄肉部25cが形成されている。ここで、ロータコア23の嵌合孔25aに永久磁石26が埋込まれる埋込磁石型のロータ21では、永久磁石26の端部周縁で径方向に繋った径方向連結部25bにおいて漏れ磁束が生じ得る。これに対し本実施形態では、径方向連結部25bに生じ得る漏れ磁束が薄肉部25cを設けて磁気抵抗を高くしたことで低減される。そして、磁石磁極部25毎に設けられて永久磁石26の軸方向の移動を規制するためのカバー部材31は、それぞれ軸方向に延設されたコア固定部33の係合部34が積層されたコアシート24の薄肉部25c間の隙間S2に挿入され該薄肉部25cに係合されてロータコア23に装着されている。これにより、上記のような漏れ磁束を低減させる薄肉部25cを利用してカバー部材31のコア固定部33を係合させるため、カバー部材31を装着(係合)させるための手段をロータコア23に別途設ける必要がない。
【0039】
(5)各嵌合孔25aは、磁石磁極部25の周方向中央を通る磁極中心線の直交方向の幅L1が永久磁石26よりも長くなるように形成されており、ロータコア23は、周方向において径方向連結部25bと永久磁石26との間に隙間S1が生じるように構成され、その隙間S1が嵌合孔25aの周縁と永久磁石26との間の磁気抵抗を高くし漏れ磁束が低減される。そして、各コア固定部33の係合部34は、隙間S2を挿通して隙間S1に到達し先端面34aが永久磁石26の周方向の側面26bに当接され永久磁石26を周方向から固定している。これにより、コア固定部33にてカバー部材31の装着も行い、カバー部材31(コア固定部33)を非磁性又はコア固定部33の磁気抵抗を高く構成することで漏れ磁束の低減を図りつつ、永久磁石26の周方向に対する移動も規制して保持することができる。
【0040】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図6に従って説明する。尚、本実施形態と上記第1実施形態との主たる相違点は、カバー部材31に磁石固定部35を設けた構成の変更のみである。このため、説明の便宜上、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
【0041】
図6(a)(b)に示すように、本実施形態のロータ21では、カバー部材31には磁石固定部35が設けられ、該磁石固定部35を永久磁石26と径方向連結部25bとの間の隙間S1に軸方向から嵌挿させて永久磁石26を周方向から保持している。図6(c)(d)に示すように、カバー部材31の磁石保持部32には、長手方向の両側に隙間S1の位置に応じて磁石保持部32から直交方向(軸方向)に延びて形成された板状の磁石固定部35がそれぞれ設けられている。磁石固定部35は、径方向の幅がコア固定部33と同等に形成され、軸方向の長さがコア固定部33よりも短く形成されている。また、カバー部材31のコア固定部33は、各係合部34の突出長さが上記第1実施形態のものに比べて若干短くなっている。
【0042】
図6(b)に示すように、磁石磁極部25に装着された各カバー部材31は、隙間S1に挿入された磁石固定部35の内側の側面35aが永久磁石26の周方向の側面26bに当接し、外側の側面35bがロータコア23の径方向連結部25bの内側の側面25dに当接するとともに、各コア固定部33の係合部34がロータコア23の隙間S2に周方向から挿入され薄肉部25cに係合するように固定される。
【0043】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態のカバー部材31は、磁石保持部32の長手方向の両側に軸方向に延びて形成された磁石固定部35が設けられている。カバー部材31は、磁石固定部35が隙間S1に嵌挿され永久磁石26と径方向連結部25bとに当接するとともに、コア固定部33の係合部34がロータコア23の隙間S2に周方向から挿入され薄肉部25cに係合するように固定されている。これにより、非磁性のカバー部材31を用いていることで、漏れ磁束の低減を図りつつ、そのカバー部材31の磁石固定部35にて永久磁石26の周方向に対する移動も規制して保持することができる。
【0044】
(第3実施形態)
以下、本発明を具体化した第3実施形態を図7に従って説明する。尚、本実施形態と上記第1実施形態との主たる相違点は、カバー部材31のコア固定部33をコア固定部41とした構成の変更のみである。このため、説明の便宜上、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
【0045】
図7(a)(b)に示すように、本実施形態のロータ21は、カバー部材31のコア固定部41を永久磁石26と径方向連結部25bとの間の隙間S1に軸方向から嵌挿させて永久磁石26を周方向から保持している。カバー部材31は、磁石保持部32の長手方向の幅が嵌合孔25aと同じ長さに形成されコア固定部41が隙間S1の位置となるように構成されている。図7(c)(d)に示すように、コア固定部41は、基端側に比べて先端側の厚みが薄くなるように形成されている。コア固定部41の先端部分に設けられた係合部42は、磁石保持部32の長手方向に沿うように外側に向かって形成され、その係合部42の軸方向の端部部分は、半球面状の丸みを帯びた形状に形成されている。このように構成されたカバー部材31は、係合部42を薄肉部25cに係合させる際に、その先端側の部分が周方向に傾動可能となるとともに、丸みの帯びた形状の端部部分により薄肉部25cとの摩擦が緩和され、取り付け作業が容易とされている。
【0046】
図7(b)に示すように、磁石磁極部25に装着された各カバー部材31は、隙間S1に挿入されたコア固定部41の基端側の厚肉部分において内側の側面41aが永久磁石26の周方向の側面26bに当接し、外側の側面41bがロータコア23の径方向連結部25bの側面25dに当接するとともに、係合部42がロータコア23の隙間S2に周方向の内側から挿入され薄肉部25cに係合するように固定される。
【0047】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態のカバー部材31は、コア固定部41が隙間S1に嵌挿され係合部42が隙間S2に周方向の内側から挿入され薄肉部25cに係合して固定されている。これにより、非磁性のカバー部材31を用いていることで、漏れ磁束の低減を図りつつ、そのカバー部材31のコア固定部41にて永久磁石26の周方向に対する移動も規制して保持することができる。
【0048】
(2)本実施形態のカバー部材31は、磁石保持部32の長手方向の幅が嵌合孔25aと同じ長さに形成されコア固定部41が隙間S1の位置となるように構成されている。これにより、カバー部材31のコア固定部41が磁石磁極部25の周方向端部から空隙Kに突出することなく、永久磁石26を保持することができる。
【0049】
(3)カバー部材31は、コア固定部41が基端側に比べて先端側の厚みが薄くなるように形成されている。コア固定部41の係合部42は、磁石保持部32の長手方向に沿うように外側に向かって形成され、その係合部42の軸方向の端部部分は、半球面状の丸みを帯びた形状に形成されている。これにより、コア固定部41の取り付け作業が容易となる。
【0050】
(第4実施形態)
以下、本発明を具体化した第4実施形態を図8に従って説明する。尚、本実施形態と上記第2実施形態との主たる相違点は、コア固定部33の係合部34を嵌合連結部44とした構成の変更のみである。このため、説明の便宜上、第2実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
【0051】
図8(a)(b)に示すように、本実施形態のロータ21は、各カバー部材31に設けられたコア固定部33を空隙Kに軸方向から挿入されている。図8(c)(d)に示すように、各カバー部材31には、コア固定部33の先端部分に嵌合連結部44が設けられ、軸方向他方側のカバー部材31の嵌合連結部44と互いに連結されるように構成されている。尚、コア固定部33と磁石固定部35との軸方向の長さは、ロータコア23の軸方向の長さの半分に形成されている。
【0052】
図8(b)に示すように、各カバー部材31は、軸方向で対向する各カバー部材31の嵌合連結部44が互いに嵌め込まれて固定されている。また、磁石磁極部25に装着されたカバー部材31は、隙間S1に嵌挿された磁石固定部35の側面35aが永久磁石26の側面26bに当接し、側面35bが径方向連結部25bの側面25dに当接するとともに、軸方向の先端面35cが互いに当接して固定されている。
【0053】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態のカバー部材31は、コア固定部33の先端部分に設けられた嵌合連結部44が軸方向他方側のカバー部材31のコア固定部33の嵌合連結部44と互いに嵌め込まれて磁石磁極部25に固定されている。これにより、磁石磁極部25の軸方向両側に備えられた各カバー部材31を互いの嵌合連結部44を連結してロータコア23に装着することで、カバー部材31を装着させるための手段をロータコア23に別途設ける必要がない。
【0054】
(第5実施形態)
以下、本発明を具体化した第5実施形態を図9に従って説明する。尚、本実施形態と上記第4実施形態との主たる相違点は、磁石固定部35の先端部分に嵌合連結部44を設けコア固定部としての機能を備えた構成の変更のみである。このため、説明の便宜上、第4実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
【0055】
図9(a)(b)に示すように、本実施形態のロータ21は、各カバー部材31に設けられた磁石固定部35を隙間S1に軸方向から嵌挿させて永久磁石26を周方向から保持している。図9(c)(d)に示すように、各カバー部材31には、磁石固定部35の先端部分に嵌合連結部44が設けられている。因みに、コア固定部33の軸方向の長さは、空隙Kに挿入して径方向連結部25bに係合する程度に短く形成されている。
【0056】
図9(b)に示すように、磁石磁極部25に装着された各カバー部材31は、磁石固定部35が隙間S1に嵌挿され、その磁石固定部35の嵌合連結部44が互いに嵌め込まれて固定されている。
【0057】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態のカバー部材31は、磁石固定部35が隙間S1に嵌挿され、その磁石固定部35の嵌合連結部44が互いに嵌め込まれて固定されている。これにより、カバー部材31を装着させるための手段をロータコア23に別途設ける必要がなく、且つ漏れ磁束の低減を図りつつ、永久磁石26の周方向に対する移動をも規制して保持することができる。
【0058】
(第6実施形態)
以下、本発明を具体化した第6実施形態を図10及び図11に従って説明する。尚、本実施形態と上記第1実施形態との主たる相違点は、ロータコア23の擬似磁極部27にスリット27aを設けた構成及びカバー部材31をカバー部材51とした構成の変更のみである。このため、説明の便宜上、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
【0059】
図10に示すように、本実施形態のロータ21は、ロータコア23の各擬似磁極部27の周方向中間部に磁束の整流機能を有するスリット27aが設けられている。スリット27aは、擬似磁極部27の磁極中心線に対して線対称となる位置に同一形状のものが一対設けられている。一対のスリット27aは、ロータコア23の内周側から外周側に向かうにつれて互いの周方向の間隔が若干広くなるように設けられている。尚、スリット27aは、軸方向から見て略長方形をなし、ロータコア23を軸方向に貫通している。
【0060】
ここで、本実施形態のようなコンシクエントポール型構造のロータ21は、磁束の強制力(誘導)のある永久磁石26と、磁束の強制力のない擬似磁極部27とが混在する磁極にて構成されているため、磁気的な乱れが生じ易い。これに対し本実施形態では、各擬似磁極部27にスリット27aが形成されていることで、擬似磁極部27内の磁束が整流されて磁気的な乱れを抑えることができる。そして、本実施形態のカバー部材51は、そのスリット27aに磁石保持部52に設けられたコア固定部53が挿入されるようにして構成されている。
【0061】
図11(a)(b)に示すように、カバー部材51の磁石保持部52は、長手方向の両側部分が磁石磁極部25の周方向端部で屈曲し空隙Kを覆うようにして擬似磁極部27のスリット27aの位置まで延設され、コア固定部53がスリット27aに挿入されている。本実施形態のロータ21は、カバー部材51のコア固定部53をスリット27aに軸方向から挿入するとともに、磁石固定部54を永久磁石26と径方向連結部25bとの間の隙間S1に嵌合させて永久磁石26を周方向から保持している。
【0062】
図11(c)(d)に示すように、コア固定部53は、磁石磁極部25の周方向端部で屈曲した磁石保持部52の端部部分に軸方向に延びて形成されている。磁石固定部54は、隙間S1の位置に応じて磁石保持部52を軸方向一側面から凹設して他側面側に突出させた凸設部分で構成されている。
【0063】
図11(b)に示すように、磁石磁極部25に装着された各カバー部材51は、磁石固定部54が隙間S1に嵌め込まれ永久磁石26の周方向の側面26bとロータコア23の径方向連結部25bの側面25dとに当接するとともに、コア固定部33が擬似磁極部27のスリット27aに挿入され、該スリット27aに係合するように固定される。また、磁石保持部52の内側面52aが永久磁石26の軸方向の端面26aに当接するように固定される。
【0064】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態のロータ21は、ロータコア23の各擬似磁極部27の周方向中間部に磁束の整流機能を有するスリット27aが一対設けられている。そして、磁石磁極部25毎に設けられて永久磁石26の軸方向の移動を規制するためのカバー部材51は、それぞれ軸方向に延びるコア固定部53がそのスリット27aに挿入されて該スリット27aに係合してロータコア23に固定されている。これにより、磁束の整流を行うスリット27aをカバー部材51の装着に用いることで、カバー部材31を装着させるための手段をロータコア23に別途設ける必要がない。
【0065】
(2)本実施形態の磁石固定部54は、隙間S1の位置に応じて磁石保持部52を軸方向一側面から凹設して他側面側に突出させた凸設部分で構成されている。これにより、例えばカバー部材51を板状の金属から形成する場合に、プレス加工等にて磁石固定部54を容易に形成することができる。
【0066】
(3)各カバー部材51は、擬似磁極部27に設けられたスリット27aにコア固定部33が固定されている。これにより、永久磁石26への影響を考慮することなく、圧入等の強固な固定手段を採用することもできる。
【0067】
(第7実施形態)
以下、本発明を具体化した第7実施形態を図12及び図13に従って説明する。尚、本実施形態と上記第1実施形態との主たる相違点は、カバー部材31をカバー部材61とした構成の変更のみである。このため、説明の便宜上、第1実施形態と同一の部分については同一の符号を付すこととして、その説明を省略する。
【0068】
図12及び図13に示すように、本実施形態のカバー部材61は、ロータコア23の軸方向両側に設けられ略円板状に形成された一対のカバー部材61から構成されている。各カバー部材61は、径方向の中央部分に固定孔61aがそれぞれ設けられている。カバー部材61は、各固定孔61aへの回転軸22の圧入にて該回転軸22に対して固定されている。両カバー部材61は、回転軸22が圧入されることにより、該回転軸22及びロータコア23と一体回転可能に固定される。
【0069】
各カバー部材61は、外周部に磁石磁極部25に応じて径方向に突出した凸形状の磁石保持部62が周方向90°間隔において4個形成されている。また各カバー部材61は、磁石保持部62間が擬似磁極部27及び空隙Kに対応する部分を省略して構成されている。そして、ロータ21は、カバー部材61が擬似磁極部27と非当接となるように回転軸22に装着されるとともに、磁石保持部62の内側面62aが永久磁石26の軸方向の端面26aに当接するように固定される。
【0070】
次に、本実施形態の特徴的な効果を記載する。
(1)本実施形態のロータ21では、ロータコア23の軸方向両側に設けられる略円板状の各カバー部材61にて各磁石磁極部25の永久磁石26の軸方向端部を保持することができる。これにより、カバー部材61の部品点数を減らして永久磁石26の保持をより確実に行うことができる。
【0071】
(2)本実施形態の各カバー部材61は、ロータコア23の擬似磁極部27と非当接になるようにロータ21の回転軸22に装着されている。これにより、仮にカバー部材61を磁性材料で構成した場合であってもカバー部材61を介して生じ得る漏れ磁束を抑制できるため、カバー部材61の材料選択の自由度が大きくなる。
【0072】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態のカバー部材31,51について、金属製板材のプレス加工にて形成してもよい。この場合、磁石固定部35を有するカバー部材51についてはその位置を磁石保持部32の周縁に位置を変更して対応する。
【0073】
・上記各実施形態において、各カバー部材31,51,61は、ロータ21の回転軸22、又はロータコア23のいずれかに固定(装着)されていたが、回転軸22及びロータコア23の両方に固定する構成に変更してもよい。
【0074】
・上記各実施形態において、各カバー部材31,51,61の形状は一例であり、例えば、軸方向両側のカバー部材31を非対称とする構成や第6実施形態においてカバー部材51を環状に形成する構成等、適宜構成を変更してもよい。
【0075】
・上記各実施形態では、ロータ21の永久磁石26が各磁石磁極部25の嵌合孔25aに埋め込まれた所謂埋込磁石型モータ10のロータ21に適用したが、これに限らない。例えば、従来のような永久磁石26の径方向外側への移動がカバー部材の装着等で規制されたロータ構成に適用してもよい。
【0076】
・上記各実施形態において、永久磁石26と径方向連結部25bとの間の隙間S1を省略した構成に変更してもよい。
・上記第4〜第7実施形態において、ロータコア23の薄肉部25cを形成しない構成に変更してもよい。また、上記第1〜第3実施形態において、例えば薄肉部25cは、コア固定部33の係合部34が係合する位置のコアシート24にのみに設けてもよい。
【0077】
・上記各実施形態において、例えば磁石磁極部25の薄肉部25cから樹脂材料を充填し隙間S1を含め磁石磁極部25を樹脂材料でモールドした構成としてもよい。これにより、永久磁石26の保持をより確実に行うことができる。
【0078】
・上記各実施形態では、ロータコア23及びステータコア12を磁性金属板材の積層にて構成したが、このような積層型のコアに限らず、例えば磁性粉体の成形にてコアを構成してもよい。
【0079】
・上記各実施形態でのロータ21の磁極数、ステータ11の磁極数は一例であり、適宜変更してもよい。
・上記各実施形態では、ステータ11は、各ティース12aに対して集中巻きにて構成されていたが、各ティース12aの数の増加とともに分布巻きされた構成に変更してもよい。
【0080】
・上記各実施形態では、各永久磁石26は、その径方向外側の面がN極となるように配置されたが、径方向外側がS極となるように変更してもよい。
・上記各実施形態では、インナロータ型のモータ10に用いられるロータ21に適用したが、アウタロータ型のモータのロータに適用してもよい。この場合、ロータとステータとの径方向の対向関係が逆になる。
【符号の説明】
【0081】
10…モータ、21…ロータ、22…回転軸、23…ロータコア、24…コアシート、25…磁石磁極部、25a…嵌合孔(磁石収容孔)、25b…径方向連結部、25c…薄肉部、26…永久磁石、27…擬似磁極部、27a…スリット、31,51,61…カバー部材(保持部材)、33,41,53…コア固定部、34,42…係合部、35,54…磁石固定部、44…嵌合連結部、K…空隙、L1…幅、S1,S2…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13