特許第5731252号(P5731252)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731252
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】配線部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 5/06 20060101AFI20150521BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20150521BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20150521BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20150521BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20150521BHJP
   H02K 3/30 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H01F5/06 S
   H01B7/00 303
   H01B7/02 C
   H01F5/00 F
   H01F41/12 E
   H02K3/30
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-73172(P2011-73172)
(22)【出願日】2011年3月29日
(65)【公開番号】特開2012-209391(P2012-209391A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2013年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】511080627
【氏名又は名称】浦谷エンジニアリング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000219266
【氏名又は名称】東レ・デュポン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000899
【氏名又は名称】特許業務法人新大阪国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦谷 達昭
(72)【発明者】
【氏名】三宅 隼
(72)【発明者】
【氏名】中尾 優一
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−260618(JP,A)
【文献】 特開昭58−049073(JP,A)
【文献】 実開昭62−095449(JP,U)
【文献】 特開昭63−250010(JP,A)
【文献】 実開昭48−089849(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/02
H01F 5/00− 5/06
H01F 27/28−27/30
H01F 27/32
H01F 41/12
H02K 3/30− 3/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドおよびテフロン(登録商標)の2層で形成された薄膜の絶縁テープを、平角導体の外周に、エッジワイズ巻きされる前に加熱して密着するように横巻に巻き付けられた平角絶縁線が、前記エッジワイズ巻きにされており、
前記エッジワイズ巻きされた前記平角絶縁線は、その巻き始めから巻き終わりまでの前記平角導体に対して、前記巻き始めから前記巻き終わりまでの全体にわたって前記絶縁テープが横巻きに巻き付けられている、配線部品。
【請求項2】
前記平角絶縁線は、前記絶縁テープの1/2以上の幅が重なるように巻き付けられている、請求項1に記載の配線部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平角絶縁線をエッジワイズ巻きにして形成される配線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイル巻線用絶縁電線として、単線導体上に、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等の絶縁被膜を施したエナメル線が多く用いられてきた。
【0003】
しかし、エナメル線ではピンホールが生じる問題があり、モータではU相とV相が短絡してしまうと重大な問題となる。
【0004】
そのため最近では、絶縁電線として、断面が平角形の線状の銅導体やアルミ導体が用いられ、絶縁材料としてクラフト紙、アミン処理紙、アラミド紙等の繊維系材料や、ポリイミド(PI)等の有機ポリマーフィルムをテープ状にしたものを、導体にそのまま巻き付けた横巻平角線が広く使用されるようになってきた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、絶縁電線として平角線を用いることにより、トランスのコイルの断面積を大きくすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−67943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の横巻平角線では、エッジワイズ方向に曲げることができないため、小型で信頼性の高い配線部品を形成することができなかった。
【0008】
絶縁材料として繊維系材料を用いた横巻平角線では、絶縁紙の厚みにより、その横巻平角線を用いて形成した配線部品のサイズが大きくなってしまう。
【0009】
また、絶縁材料としてポリイミドを用いた横巻平角線は、フラットワイズ方向に曲げることはできるものの、エッジワイズ方向に曲げると皺ができてしまう。この横巻平角線をエッジワイズ方向に曲げてコイルを形成すると、皺ができるために、その部分の厚みが増し、形成されたコイルのサイズが大きくなってしまう。また、皺ができた部分の空気層で部分放電が生じるために耐電圧が低下してしまう。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を考慮して、平角絶縁線をエッジワイズ巻きに加工して形成した、小型で信頼性の高い配線部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、第1の本発明は、
ポリイミドおよびテフロン(登録商標)の2層で形成された薄膜の絶縁テープを、平角導体の外周に、エッジワイズ巻きされる前に加熱して密着するように横巻に巻き付けられた平角絶縁線が、前記エッジワイズ巻きにされており、
前記エッジワイズ巻きされた前記平角絶縁線は、その巻き始めから巻き終わりまでの前記平角導体に対して、前記巻き始めから前記巻き終わりまでの全体にわたって前記絶縁テープが横巻きに巻き付けられている、配線部品である。
【0012】
また、第2の本発明は、
前記平角絶縁線は、前記絶縁テープの1/2以上の幅が重なるように巻き付けられている、第1の本発明の配線部品である。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、平角絶縁線をエッジワイズ巻きに加工して形成した、小型で信頼性の高い配線部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態の絶縁フィルムの模式断面図
図2】本発明の実施の形態の平角絶縁線の作成方法を説明する図
図3】(a)、(b)本発明の実施の形態の平角絶縁線表面部分の断面模式図
図4】本発明の実施の形態の平角絶縁線により形成したコイル部品の斜視図
図5】本発明の実施の形態の平角絶縁線により形成したコイル部品の斜視図
図6】本発明の実施の形態の平角絶縁線により形成したコイル部品の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
(実施の形態)
本発明の実施の形態の平角絶縁線は、テープ状の絶縁フィルムを平角銅線に横巻きに巻きつけたものである。
【0017】
図1に、本実施の形態の絶縁フィルム10の模式断面図を示す。
【0018】
本実施の形態の絶縁フィルム10は、絶縁材料として一般的に使われているポリイミドの層の下に、テフロン(登録商標)の層を形成させた2層構造である。
【0019】
図1に示すように、絶縁フィルム10は、テフロン層12の上にポリイミド層11が形成されており、例えば、ポリイミド層11の厚さTpは25μmであり、テフロン層12の厚さTtは12.5μmであり、絶縁フィルム10厚さTfは37.5μmである。
【0020】
図2に、本実施の形態の平角絶縁線の作成方法を説明する図を示す。図2は、平角絶縁線の幅広の面に向かった見た図を示している。
【0021】
平角銅線13に、絶縁フィルム10を、少なくとも一部が重なるようにして横巻きに巻きつけていく。図2では、絶縁フィルム10の幅Wfに対して、重なりの幅Wdが、Wd=1/4Wfとなるように巻きつける例を示している。
【0022】
なお、絶縁フィルム10が、本発明の絶縁テープの一例にあたり、平角銅線13が、本発明の平角導体の一例にあたる。
【0023】
平角銅線13に、絶縁フィルム10を巻きつけていく際、約300℃に加熱しながら巻きつけていく。加熱することにより、テフロン層12が溶けて、平角銅線13の表面に密着するとともに、重ね合わされるポリイミド層11の部分に密着する。
【0024】
なお、絶縁フィルム10を巻きつける際に加熱するのではなく、平角銅線13に絶縁フィルム10を巻きつけた後に加熱して密着させるようにしてもよい。
【0025】
一般的なポリイミドのフィルムを用いて横巻きにする場合には、平角銅線13との接合に接着剤を用いるが、本実施の形態の絶縁フィルム10では、テフロン層12が加熱されて溶けて平角銅線13に密着するので、接着剤を用いる必要がない。
【0026】
図3(a)および(b)に、本実施の形態の平角絶縁線の表面部分の、図2におけるA−A断面を示す。図3(a)は、重なりの幅Wdが、Wd=1/4Wfとなるように巻きつけた場合の断面、すなわち図2のように巻きつけた場合の断面を示している。図3(b)は、Wd=1/2Wfとなるように巻きつけた場合の断面を示している。
【0027】
図3(a)に示すように、次に巻きつけられてくる絶縁フィルム10の少なくとも一部が重なるように巻きつけることにより、重なる部分のテフロン層12とポリイミド層11が密着し、平角銅線13の表面を隙間無く絶縁することができる。したがって、本実施の形態1の絶縁フィルム10は、いわゆる「チョイラップ巻き」としてもよい。
【0028】
図3(b)に示すように、重なりの幅Wdを絶縁フィルム10の幅Wfの1/2以上となるように巻きつけることにより、平角銅線13の全体に亘って、テフロン層12とポリイミド層11が密着している状態で、絶縁フィルム10の2枚分の厚さとなり、より信頼性の高い絶縁膜が形成される。
【0029】
絶縁材料として従来のポリイミドのフィルムを横巻きにした平角絶縁線では、エッジワイズ方向に曲げると、フィルムの重なり部分での密着性が低いために皺が生じていたが、本実施の形態の絶縁フィルム10では、ポリイミド層11とテフロン層12間の密着性が高く、エッジワイズ方向に曲げても皺が生じない。
【0030】
したがって、本実施の形態の平角絶縁線を用いて、エッジワイズ巻きにして、信頼性が高くコンパクトな配線部品を形成させることができる。
【0031】
なお、上記で説明したポリイミド層11の厚さTpおよびテフロン層12の厚さTtは一例であり、これらの厚さが限定されるものではない。それぞれの層の厚さを、ポリイミド層11の厚さTp=7.5〜75μm、テフロン層12の厚さTt=1〜25μmの範囲とすることで、その絶縁フィルム10を横巻きにした平角絶縁線を、皺が生じることなくエッジワイズ方向に曲げることができる。
【0032】
また、上記では、平角絶縁線の導体として平角銅線13を用いることとしたが、アルミ導体などの他の金属の導体を用いた平角絶縁線としてもよい。
【0033】
図4図6は、それぞれ、本実施の形態の平角絶縁線を用いて形成した配線部品の一例の斜視図を示している。
【0034】
図4は、本実施の形態の平角絶縁線をエッジワイズ巻きにした矩形形状のコイル部品(矩形コイル20)であり、図5は、エッジワイズ巻きにした円筒形状のコイル部品(円筒形コイル21)である。図6は、アルファ巻きにしたコイル部品(アルファ巻きコイル22)である。
【0035】
本実施の形態の平角絶縁線は、エッジワイズ巻きにしても皺が生じないので、図4図6に示すように、平角絶縁線が重なる方向へのサイズが大きくならず、かつ信頼性の高いコイル部品を形成させることができる。
【0036】
なお、図4図6に示した、矩形コイル20、円筒形コイル21およびアルファ巻きコイル22などのように、平角絶縁線に対してエッジワイズに曲げる方向が一方向のみの場合には、平角銅線13に絶縁フィルム10を巻き付けている斜め方向の向きに対して、より安定して曲げることができるエッジワイズ方向にのみ曲げるようにして加工するのが好ましい。
【0037】
また、平角絶縁線に対してエッジワイズに曲げる方向が二方向ある部材の場合には、平角銅線13に絶縁フィルム10を巻き付けている斜め方向の向きに対して、エッジワイズ方向へ曲げる箇所が多い方の曲げる向きがより安定して曲げられる向きとなるようにして加工すればよい。
【0038】
また、本実施の形態の平角絶縁線は、これら以外にもエッジワイズ方向に曲げる部分を有するバスバーやバスリングにも適用することができ、信頼性の高いバスバーやバスリングを形成させることができる。
【0039】
このように、本実施の形態の平角絶縁線は、エッジワイズ巻きにしても皺が生じないので、本実施の形態の平角絶縁線を用いることにより、エッジワイズ巻きに加工したコイル、バスバー、バスリング等の配線部品を形成することができる。
【0040】
したがって、本発明の配線部品を用いることにより、部品厚みを薄くできるので実装スペースを節約でき、また駆動モータの小型化や高出力化も実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明に係る配線部品は、エッジワイズ方向に曲げても皺が生じない平角絶縁線によって形成されているため、小型で信頼性が高いので、平角絶縁線をエッジワイズ巻きにして形成される配線部品等として有用である。
【符号の説明】
【0042】
10 絶縁フィルム
11 ポリイミド層
12 テフロン層
13 平角銅線
20 矩形コイル
21 円筒形コイル
22 アルファ巻きコイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6