(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731264
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】移送ローラ及びプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 11/04 20060101AFI20150521BHJP
B65H 20/02 20060101ALI20150521BHJP
B41J 15/04 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
B41J11/04
B65H20/02 B
B41J15/04
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-90562(P2011-90562)
(22)【出願日】2011年4月15日
(65)【公開番号】特開2012-223887(P2012-223887A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2014年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前川 仁
【審査官】
小川 恭司
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−015337(JP,A)
【文献】
特開2010−082915(JP,A)
【文献】
特開2012−071981(JP,A)
【文献】
実開昭61−056354(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 11/04
B41J 15/04
B65H 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面が粘着層であり、表面に剥離剤が塗布されたシート状部材を、前記シート状部材の裏面に当接して移送する移送ローラであって、
前記シート状部材の移送方向と交差する方向に回転可能に支持した軸と、
弾性部材で形成したスカート部を有するとともに、前記軸に間隙を空けて配置した複数の傾斜ローラと、を備え、
前記スカート部は、少なくともその一部分が、スカート部の小径部の径方向外方に突出するとともに、径方向に加えられた外力に対して軸方向に変形し、前記間隙が埋まることで、前記移送ローラが均一平面を形成することを特徴とする移送ローラ。
【請求項2】
前記傾斜ローラは、
前記軸に配置したコア部と、
前記コア部の外周に沿って、形成したスカート部と、とから構成する請求項1に記載の移送ローラ。
【請求項3】
前記傾斜ローラの前記スカート部および前記コア部は、一体形成していることを特徴とする請求項2に記載の移送ローラ。
【請求項4】
前記傾斜ローラの表面には、前記シート状部材の裏面に塗布された粘着剤に対しての剥離処理が施してあることを特徴とする請求項1乃至3に記載の移送ローラ。
【請求項5】
前記移送ローラは、これをプラテンローラとし、サーマルヘッドと対向配置していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の移送ローラ。
【請求項6】
前記移送ローラは、これを駆動ローラとし、従動ローラと対向配置していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の移送ローラ。
【請求項7】
裏面が粘着層であり、表面に剥離剤が塗布されたシート状部材を供給するラベル供給部と、
前記シート状部材の表面に印字を行うラベル印字部と、が備えられたプリンタであって、
前記ラベル印字部はサーマルヘッドと、
前記サーマルヘッドと対向配置されたプラテンローラとからなり、
前記プラテンローラは、
前記シート状部材の移送方向と交差する方向に回転可能に支持した軸と、
弾性部材で形成したスカート部を有するとともに、前記軸に間隙を空けて配置した複数の傾斜ローラと、を備え、
前記スカート部は、少なくともその一部分が、スカート部の小径部の径方向外方に突出するとともに、径方向に加えられた外力に対して軸方向に変形し、前記間隙が埋まることで、前記プラテンローラが均一平面を形成することを特徴とするプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移送ローラ及びプリンタに係り、詳しくはシート状部材の移送に適した移送ローラ及びプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシート状部材を移送するローラとして、裏面が粘着層であり、表面に剥離剤が塗布された感熱層を有する台紙無しラベルの表面に、印字を行うプリンタの移送ローラを例として説明する。
【0003】
図12は、台紙無しラベルに印字行う従来の台紙無しラベルプリンタ60の側面図である。この台紙無しラベルプリンタ60は、ラベル供給部61と、ラベル移送部62と、ラベル検出部63と、ラベル印字部64と、ラベル切断部65と、制御部66とから構成されている。
【0004】
ラベル供給部61は、ラベル供給リール67に、ロール状の台紙無しラベル連続体Lを装填させ、ラベル移送部62に帯状に台紙無しラベル連続体Lを供給するよう構成されている。
【0005】
ラベル移送部62は、ガイドローラ68と、従動ローラ69と、駆動ローラ70とで構成されている。ガイドローラ68はラベル印字部64の上流側に回動自在に配置されており、台紙無しラベル連続体Lがラベル印字部64へ移送されるよう案内させる。従動ローラ69と駆動ローラ70は、ラベル印字部64の上流側、ガイドローラ68の下流側に、台紙無しラベル連続体Lを挟持し、蛇行を防止しながらラベル印字部64へ移送するよう対向配置されている。駆動ローラ70の軸の一端は、図示しないモータと、ベルトを介して接続されており、駆動源からの力が伝達され、移送方向およびその逆方向に回動するようになっている。
【0006】
ラベル検出部63は、発光器71と、受光器72とで構成されている。発光器71と受光器72は、ラベル印字部の上流側、ラベル移送部62の下流側に台紙無しラベル連続体Lの裏側に配置されている。台紙無しラベル連続体Lの裏面には、この発光器71から発光される光を反射するマーク(図示せず)が等間隔に印字されており、前記ラベル検出部63は、発光器71から台紙無しラベル連続体Lの裏側に発光させ、受光器72で前記マークからの反射光を受光させることによって、台紙無しラベル連続体Lの位置と移送量を検知する。
【0007】
ラベル印字部64は、サーマルヘッド73と、プラテンローラ74とで構成されている。サーマルヘッド73とプラテンローラ74は互いに対向配置され、台紙無しラベル連続体Lを所定の押圧力で挟みこみ、台紙無しラベル連続体Lに印字を行うとともに、台紙無しラベル連続体Lを移送するようになっている。プラテンローラ74には剥離剤が塗布されており、粘着層がプラテンローラ74に粘着し、台紙無しラベル連続体Lがプラテンローラ74に巻き込むことを防止する。
【0008】
ラベル切断部65は、上カッタ75と、下カッタ76とを備え、上カッタ75の刃と下カッタ76が噛み合うようラベル印字部64の下流側に対向配置されている。上カッタ75と下カッタ76との間に台紙無しラベル連続体Lを挟み、下カッタ76を駆動することにより、台紙無しラベル連続体Lを切断するようになっている。
【0009】
制御部66は図示省略のCPUやROM、RAMなどを備えており、前記各部61、62、63とデータバス(図示せず)で接続されており、各部の動作の制御を行う。
【0010】
従来の台紙無しラベルプリンタ60は以上の構成を有し、台紙無しラベル連続体Lは、ラベル供給部61にて供給され、供給された台紙無しラベル連続体Lはラベル移送部62により、ラベル印字部64にガイド移送される。ラベル印字部64では、台紙無しラベル連続体Lをヘッドおよびプラテンローラ74で押圧して、サーマルヘッド73の発熱体と台紙無しラベル連続体Lの印字面が接触し、熱を受けることにより設定した位置に情報が印字面に印字される。印字が行われた後、台紙無しラベル連続体Lは、ラベル切断部65にて、上カッタ75と下カッタ76が駆動され、設定された位置で切断が行われる。
【0011】
ところで、上述した台紙無しラベルプリンタ64では、プラテンローラ74に塗布された剥離剤は、使用に伴って消耗され、剥離効果が減少する。よってラベル印字部64にてプラテンローラ74で、台紙無しラベル連続体Lの粘着層を押圧して、サーマルヘッド73に印字面を接触させ、印字を行い、ラベル切断部65に台紙無しラベル連続体Lが移送される際、剥離作用が減少している場合、プラテンローラ74に台紙無しラベル連続体Lが貼り付いたまま移送され易くなり、ジャムなどの不具合も発生し易くなる。特に台紙無しラベル連続体Lの粘着強度が大きな場合にはさらに不具合が起こり易くなる。
【0012】
図13は、台紙無しラベルプリンタ60の、プラテンローラ74の斜視図である。従来ではこのような問題を解決するため、プラテンローラ74の、台紙無しラベル連続体Lの裏面と接触する面に、複数の周溝78を設けて、粘着層と接触する表面積を減らし、巻き込みを防止する対策が採用されている。また、巻き込み防止板をプラテンローラ74の下流側に設け、プラテンローラ4に貼付したラベルを剥離する方法が採用されている。特許文献1にはプラテンローラ74に複数の周溝78を設けて、その周溝78間に非粘着処理が施された無端ベルトを掛設し、プラテンローラ74への台紙無しラベル連続体Lの巻き込みを防止する発明が開示されている。
【0013】
しかしながら、プラテンローラ74に複数の周溝78を設けて印字を行うと、周溝78部分が押圧される台紙無しラベル連続体Lの印字面部分では、適切な印字圧力が付与されず、サーマルヘッド73の発熱が印字面に伝わらないため、その部分では印字されない現象が起こる。また、サーマルヘッド73とプラテンローラ74による圧接部分では、周溝78部分にはラベル連続体Lが粘着しないので、移送および印字に適切な摩擦力がプラテンローラ74と台紙無しラベル連続体Lの間に生じず、プラテンローラ74上で台紙無しラベル連続体Lが前後左右にすべり、台紙無しラベル連続体Lが適切に移送されない現象が起こり、ジャムや適切な位置に印字されないという不具合が発生する。また、周溝78に無端ベルトを配置して、剥離させる部材を用いた場合、部品数が増加し、スペースも取るので、コスト高、装置大型化等の問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平09−048414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は斯かる問題点を鑑みてなされたものであり、シート状部材の移送ローラへの巻き込みを、簡素な構成で防止する移送ローラおよびプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の実施形態に係る移送ローラは、裏面が粘着層であり、表面に剥離剤が塗布されたシート状部材を
、上記シート状部材の裏面に当接して移送する移送ローラであって、上記シート状部材の移送方向と交差する方向に回転可能に支持した軸と、
弾性部材で形成したスカート部を有するとともに、上記軸に間隙を空けて配置した複数の傾斜ローラと、を備え
、上記スカート部は、少なくともその一部分が、スカート部の小径部の径方向外方に突出
するとともに、径方向に加えられた外力に対して軸方向に変形し、上記間隙が埋まることで、上記移送ローラが均一平面を形成することを特徴とする。
また、
上記傾斜ローラは、上記軸に配置したコア部と、上記コア部の外周に沿って、形成したスカート部と、とから構成する。
また、上記傾斜ローラの上記スカート部および上記コア部は、一体形成していることを特徴とする。
また、上記傾斜ローラの表面には、上記シート状部材の裏面に塗布された粘着剤に対しての剥離処理が施してあることを特徴とする。
また、上記移送ローラは、これをプラテンローラとし、サーマルヘッドと対向配置していることを特徴とする。
また、上記移送ローラは、これを駆動ローラとし、従動ローラと対向配置していることを特徴とする。
本発明の実施形態に係るプリンタは、裏面が粘着層であり、表面に剥離剤が塗布されたシート状部材を供給するラベル供給部と、
上記シート状部材
の表面に印字を行うラベル印字部と、が備えられたプリンタであって、上記ラベル印字部はサーマルヘッドと、
上記サーマルヘッドと対向配置されたプラテンローラとからなり、
上記プラテンローラは、上記シート状部材の移送方向と交差する方向に回転可能に支持した軸と、
弾性部材で形成したスカート部を有するとともに、上記軸に間隙を空けて配置した複数の傾斜ローラと、を備え
、上記スカート部は、少なくともその一部分が、スカート部の小径部の径方向外方に突出
するとともに、径方向に加えられた外力に対して軸方向に変形し、上記間隙が埋まることで、上記プラテンローラが均一平面を形成することを特徴とするプリンタ。
【発明の効果】
【0017】
本発明の移送ローラおよびプリンタは、簡易な構成で、シート状部材のローラへの巻き込みを、防止することを可能とする。特に第一の発明の移送ローラによれば、安定した移送を実現することができる。特に第二の発明のプリンタによれば、印字においてジャムを防ぎ、印字品質を所定レベルに保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例1に係る移送ローラをプラテンローラ1に応用した正面図である。
【
図4】同、
図1のプラテンローラ1がサーマルヘッド73に押圧された際の側面図である。
【
図5】本発明の実施例2に係る移送ローラをプラテンローラ20に応用した正面図である。
【
図6】同、プラテンローラ20の軸21の正面図である。
【
図7】同、プラテンローラ20の第一傾斜ローラ22を説明する図であって、
図7(1)は斜視図、
図7(2)は側面図、
図7(3)は
図7(2)のIII−III線断面図、
図7(4)はコア部29が截頭円錐体である変形例であり、
図7(3)と同様の断面図である。
【
図8】同、プラテンローラ20がサーマルヘッド73に押圧された際の正面図である。
【
図9】同プラテンローラ20に剥離部材40を組み合わせた上面図である。
【
図10】本発明の実施例3に係る移送ローラを駆動ローラ50に応用した正面図である。
【
図11】同、駆動ローラ50が従動ローラ69に押圧された際の正面図である。
【
図12】従来の台紙無しラベルプリンタ60を説明する側面図である。
【
図13】同、プラテンローラ74を説明する斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
実施例1を
図1ないし
図4に基づいて説明する。なお、以下において、従来と同様の部分は、同一符号を付すに止め、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係る移送ローラとしてのプラテンローラ1の正面図であって、図示のようにプラテンローラ1は、軸2と、第一傾斜ローラ3と、第二傾斜ローラ4とで構成されている。
【0021】
軸2は、円柱形状のステンレス等の金属である。形状は円柱形状に限定されず、例えば円筒形状等であってもよい。素材は金属に限らず、樹脂などでもよい。軸の両端は、図示しない台紙無しラベルプリンタの軸受けに、サーマルヘッド73と対向配置するよう軸支されている。また、軸2の一端は、図示しないモータ等の駆動源と、ベルトを介して接続されており、駆動源からの力が伝達され、搬送方向およびその逆方向に回動するようになっている。
【0022】
図2は、
図1のII−II線断面図であって、プラテンローラ1の断面図である。図示のように傾斜ローラとしての第一傾斜ローラ3および第二傾斜ローラ4はそれぞれ、コア部6と、スカート部7とで構成されている。第一傾斜ローラ3および第二傾斜ローラ4は互いに対となり、互いの間に間隙5を介して対向配置されている。
【0023】
図3は、要部の拡大断面図であり、コア部6は、円筒形状の弾性体であり、軸2に挿通、固定され、軸2が回転駆動されると、コア部6も共に回転駆動するようになっている。その直径E1は、軸2の直径E2よりも大きく、互いに対向配置された第一傾斜ローラ3および第二傾斜ローラ4のそれぞれのコア部6は、一体形成されている。なお、素材は弾性体に限定されないが、台紙無しラベル連続体Lの裏面の粘着層が接触しても粘着しないように、剥離処理が施されている弾性体であることが望ましい。
【0024】
一対のスカート部7は、コア部6と一対であって、コア部6の外周部に位置しており、断面弧状の外周面を有する円錐台形の弾性体であり、互いの大径部と相対し、互いに間隙5を空けて対向配置されている。スカート部7の小径部は、大径部とは反対に位置するスカート部7の小径部と相対し、小径部の直径F1は、コア部の直径E2よりも大きく、相対する小径部と互いに一体形成されている。また、スカート部7の接合点7Aと大径部の最外端点7Bとを結ぶ外周7Cは弧状であり、外力に対して内側に弾性変形して、間隙5を埋めるようになっている。
【0025】
なお、スカート部7は、外力によって、第一傾斜ローラ3および第二傾斜ローラ4が内方に変形し、間隙5の間隙幅Dが埋まればよく、例えば、
図4に示すように、外力によって第一傾斜ローラ3および第二傾斜ローラ4が間隙5を埋める長さに弾性変形するものであれば、特に限定されない。
【0026】
実施例1に係るプラテンローラ1は以上の構成を有し、ラベル印字部64(
図12)に移送された台紙無しラベル連続体Lは、
図4に示すように押圧スプリング8によって押圧されたサーマルヘッド73とプラテンローラ1に圧接挟持され、サーマルヘッド73の発熱体と台紙無しラベル連続体Lの印字面の接触点で熱を受けることにより、設定した所定位置に設定した情報が印字される。プラテンローラ1はサーマルヘッド73から径方向の外力を受けると、圧接箇所におけるスカート部7の外方に突出した部分が軸方向に変形し、間隙5が埋まることで、プラテンローラ1は均一平面を成し、印字が正常に行われる。印字後はプラテンローラ1にかかる外力が解除され、スカート部7が弾性力によって元の位置に戻ることにより、台紙無しラベル連続体Lはプラテンローラ1から押し出され、プラテンローラ1から剥離される。
【0027】
このように実施例1に係れば、印字中にスカート部7が弾性変形し、間隙5を埋めることができるので、裏面が粘着層の台紙無しラベル連続体Lを印字する際に生じる、印字抜け、印字縮み防止と同時に、間隙5によって生じる台紙無しラベル連続体Lの巻き込み防止を、コスト高で場所をとる制御装置を用いることなく、プラテンローラ1の構造のみで可能とさせる。
【0028】
次に、実施例2を
図5ないし
図9に基づいて説明する。
図5は本発明の実施例2に係る移送ローラとしてのプラテンローラ20の正面図であり、プラテンローラ20は、軸21と、第一傾斜ローラ22と、第二傾斜ローラ23で構成されている。
【0029】
図6は、プラテンローラ20の軸21の正面図であって、軸21は、前記軸2と同様に、円柱形状のステンレス等の金属製であり、所定の間隔をもって第一傾斜ローラ用周溝25および第二傾斜ローラ用周溝26を形成している。形状は、円柱形状に限定されず、円筒形状、断面がD型にカットされたD型形状等であってもよい。
【0030】
図7(1)は、第一傾斜ローラ22の斜視図であり、
図7(2)は第一傾斜ローラ22の側面図である。図示のように、傾斜ローラとしての第一傾斜ローラ22および第二傾斜ローラ23は、それぞれ別部材のコア部27およびスカート部28で構成されている。
【0031】
第一傾斜ローラ22と第二傾斜ローラ23はそれぞれ対となり、互いの間に間隙24を介して対向配置されている。
【0032】
図7(3)は、
図7(2)のIII−III線断面図である。コア部27は、中心が空孔の円筒状の弾性体でできている。その空孔を有した内面には軸21の第一および第二傾斜ローラ用周溝25、26と嵌合する幅を持った凸部27Aが形成され、軸21と嵌合するようになっている。素材は弾性体に限定されず、例えば金属、樹脂等でもよい。
【0033】
スカート部28は、中心にコア部27を内包する空孔を有した截頭円錐状の弾性体である。一対のスカート部28の底面は互いに間隙24(
図5)を開けて対峙されている。スカート部28とコア部27は摩擦力により嵌合しており、コア部27が回転するとスカート部28も回転するようになっている。摩擦力でなく、スカート部28に凸部と、コア部27に溝を設けて、嵌合させてもよい。
【0034】
スカート部28の上面の直径は、コア部27の直径G1と略一致し、底面の直径G2はコア部27の直径G1よりも大きい。また、本体ローラ22とスカート部28の接合点を23Aと、底面の最外端点23Bとを結ぶ外周23Cは直線であり、外力に対して内方に弾性変形し、間隙24を埋めるようになっている。
【0035】
実施例1と同様に、スカート部28は、外力によって、傾斜ローラが内方に変形し、間隙が埋まればよく、
図8に示すように、外力によって、ローラが間隙を埋める長さに延びるものであれば、特に限定されない。
【0036】
実施例2に係るプラテンローラ20の構成は以上の構成を有し、
図8に示すように、実施例1と同様、印字の際に、プラテンローラ20のスカート部28は、押圧スプリング9により押圧されたサーマルヘッド73から径方向の外力を受けると軸方向に変形し、間隙24を埋め、プラテンローラ20は均一表面を成す。また、印字後は、弾性力による元に戻る力を利用して、プラテンローラ20から台紙無しラベル連続体Lを剥離させる。実施例2に係れば、サーマルヘッド73の押圧により、スカート部28の突出部分は磨耗がコア部27よりも早くなると予測されるが、別部材としたことで、交換が容易に行える。また、台紙無しラベル連続体Lの幅や長さ、粘着剤の粘着力、プリンタの種類等により、適正な印字、ラベルを剥がす最適な弾性力、摩擦力、硬度がそれぞれ異なるが、条件を満たすスカート部28を交換すれば良いので、色々な種類の台紙無しラベル連続体Lに対応することができる。
【0037】
なお、実施例2では本体ローラ22と第一傾斜ローラ22および第二傾斜ローラ23のコア部27、スカート部28を全て別部材としたが、本体ローラ22とコア部27を一体形成させ、スカート部28のみを交換可能とさせても良い。また、コア部27を交換可能とさせた場合、つまり焼付け等により軸21と固着されていない場合は、軸21との嵌合する力が弱く、軸21の回転が、コア部27と軸21の接触面で空回りする等などの原因により伝わらない現象が発生し易くなると予測されるので、軸21の形状はD型形状であることが望ましい。また、コア部27をスカート部28の上面の半径と同一の円柱状の弾性部材としたが、半径はそれに限定されず、例えば
図7(4)に示したように截頭円錐型の弾性部材であっても良い。
【0038】
図7(4)は傾斜ローラとしての第一傾斜ローラ22のコア部27を截頭円錐状のコア部29に変形した場合の、
図7(3)と同様の断面図である。截頭円錐状のコア部29は弾性体でできている。コア部29の底面の直径H1は、スカート部28の上面の直径と略一致しており、上面の直径H2は、本体ローラ22の直径よりも小さく、軸21の直径よりも大きな構成をとる。
【0039】
スカート部30は、コア部29の外周に位置しており、コア部29よりも弾性力が弱い弾性体である。コア部29が回転するとスカート部30も回転するようになっている。スカート部30は、外力に対して、内方に弾性変形し、前記間隙24を埋めるようになっている。
【0040】
なお、コア部29の形状は、截頭円錐状に限らず、スカート部30に内包するものであればよい。このように、コア部29の形状を適宜変更することにより、様々なスカート部30に対応することができ、様々な台紙無しラベル連続体Lの印字に対応が可能となる。
【0041】
図9は、実施例2に係るプラテンローラ20に剥離部材40を組み合わせた上面図である。プラテンローラ20は実施例2に記したプラテンローラ20と同じ構成とし、その説明を省略する。
【0042】
剥離部材40は一対の支持枠41と、支持板42と、剥離片43で構成される。
【0043】
一対の支持枠41は、プラテンローラ20の
図9中左右に位置し、プラテンローラ20の軸21を回動自在に支持する軸受けを有すると共に、支持板42を支持する。
【0044】
支持板42は、プラテンローラ20の下流側において、その両端を支持枠41に支持されており、プラテンローラ20の軸21と平行に配置されている。
【0045】
剥離片43は、間隙25の幅と略一致する幅、およびプラテンローラ20の間隙25部分に配置できるほどの長さを有し、サーマルヘッド73とプラテンローラ20の圧接箇所より下流側の間隙26に侵入するよう支持板42に立設されている。上記支持板42およびこの剥離片43のそれぞれの表面には剥離処理が施されていることが望ましい。
【0046】
剥離部材40は以上の構成を有し、印字がなされた台紙無しラベル連続体Lがプラテンローラ20に巻き込まれる前に、剥離片43によりプラテンローラ20から確実に剥離させ、剥離片43上、支持板42上を通過して、ラベル切断部65(
図12)に到達させる。また、弾性力が弱いスカート部29を選択した場合、印字後に台紙無しラベル連続体Lをスカート部29の弾性力により剥離させる際、弾性力が弱いと剥離が正常に行われないことがあるが、この剥離部材40を用いることで確実に台紙無しラベル連続体Lを剥離することができる。
【0047】
実施例3を
図10および
図11に基づいて説明する。
図10は、実施例3に係る移送ローラとしての駆動ローラ50の正面図である。駆動ローラ50は、軸51と、傾斜ローラ52とで構成されている。
【0048】
軸51は棒状の金属でできており、前記従動ローラ69(
図11、
図12)と対向配置した状態で、軸受けに取り付けられている。図示しない駆動モータとベルトを介して繋がれ、回転駆動するようになっている。素材は金属に限らず、樹脂などでもよい。
【0049】
複数の傾斜ローラ52は互いに間隙53をあけて、配置されている。複数の傾斜ローラ52は、全て同じ軸方向を向いた配置となる。
【0050】
複数の傾斜ローラ52は、既述した実施例1による傾斜ローラ4、5(
図1)と同様に、スカート部およびコア部を一体形成して構成されている。
【0051】
傾斜ローラ52は、外力に対して内方に弾性変形し、間隙53を埋めるようになっている。なお、ラベル連続体Lの移送の妨げにならなければ、間隙53は全て埋まるようにしなくともよい。
【0052】
従動ローラ69は軸54と、本体ローラ55で構成されている。
【0053】
軸54は棒状の金属でできており、前記ラベル印字部64(
図12)の上流の図示しない軸受けに、移送方向と垂直に、回動自在に取り付けられている。素材は金属に限らず、樹脂などでもよい。
【0054】
本体ローラ55は例えば円筒状の弾性部材でできており、空孔が軸54に挿通して固定されており、軸54が回動すると共に回転するようになっている。
【0055】
実施例3に係る駆動ローラ50と従動ローラ69は以上の構成を有し、ラベル供給部61より供給された台紙無しラベル連続体Lは、ガイドローラ68によって前記ラベル印字部64方向に案内され、駆動ローラ50と従動ローラ69に挟持され前記ラベル印字部64に移送される。
【0056】
以上の構成にすることによって、圧接移送された台紙無しラベル連続体Lは、傾斜ローラ52の弾性力により、駆動ローラ50への巻き込みが防止され、正常に移送が行われる。また、単一の傾斜ローラ52を取り付ければよいので、実施例1および2で示した、一対の傾斜ローラの弾性力を利用してプラテンローラから剥離させる構成の場合には、傾斜ローラの向きが交互になっているため交換等の取り付けに手間が掛るが、上記の構成にすることによって、取り付けが容易になる。
【0057】
なお、実施例3では駆動ローラ50を従動ローラ69の下側に対向配置させたが、従動ローラ69の上側に対向配置させてもよく、また、従動ローラ69に、傾斜ローラ52を装着させてもよい。また、傾斜ローラ52の向きを全て同じ向きとしたが、ラベル連続体Lの巻き込みを防ぐことができれば傾斜ローラ52の配置の向きは、特に限定されない。
【0058】
また、上述した実施例1ないし3の傾斜ローラは、全て同種を配置させなくともよく、例えば、塗布された粘着剤の粘着力が部分的に異なる台紙無しラベル連続体Lを移送する場合、粘着力の強い粘着剤を塗布した部分のみに、実施例1ないし3で示した傾斜ローラの軸方向幅よりも小さな傾斜ローラを配置して、剥離させる傾斜ローラの数を増やしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 プラテンローラ(実施例1、
図1)
2 軸
3 第一傾斜ローラ
4 第二傾斜ローラ
5 間隙
6 コア部
7 スカート部
8 押圧スプリング
20 プラテンローラ(実施例2、
図5)
21 軸
22 第一傾斜ローラ
23 第二傾斜ローラ
24 間隙
25 第一傾斜ローラ用周溝
26 第二傾斜ローラ用周溝
27 コア部(
図7(1))
27A 凸部
28 スカート部
29 コア部(
図7(4))
30 スカート部
40 剥離部材(
図9)
41 支持枠
42 支持板
43 支持片
50 駆動ローラ(実施例3、
図10)
51 軸
52 傾斜ローラ
53 間隙
54 軸
55 本体ローラ
60 台紙無しラベルプリンタ(
図12)
61 ラベル供給部
62 ラベル移送部
63 ラベル検出部
64 ラベル印字部
65 ラベル切断部
66 制御部
67 ラベル供給リール
68 ガイドローラ
69 従動ローラ
70 駆動ローラ
71 発光器
72 受光器
73 サーマルヘッド
74 プラテンローラ
75 上カッタ
76 下カッタ
77 軸
78 周溝
L 台紙無しラベル連続体