特許第5731275号(P5731275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5731275建築構造物の壁材に適した複合パネルおよびその複合パネルの取り付け施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731275
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】建築構造物の壁材に適した複合パネルおよびその複合パネルの取り付け施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/12 20060101AFI20150521BHJP
   E04F 13/21 20060101ALI20150521BHJP
   E04F 13/24 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   E04F13/12 E
   E04F13/08 101F
   E04F13/08 101L
   E04F13/12 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-110064(P2011-110064)
(22)【出願日】2011年5月17日
(65)【公開番号】特開2012-241352(P2012-241352A)
(43)【公開日】2012年12月10日
【審査請求日】2014年1月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080687
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 順三
(74)【代理人】
【識別番号】100077126
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 盛夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107227
【弁理士】
【氏名又は名称】藤谷 史朗
(72)【発明者】
【氏名】太田 克也
【審査官】 南澤 弘明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−127344(JP,A)
【文献】 特開2009−097298(JP,A)
【文献】 特開平09−184271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/12
E04F 13/21
E04F 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に一対の縁部とこれら一対の縁部を両側に挟み込む左右一対の縁部により区画された輪郭形状を有し、その外表面を仕上げ面とする硬質材と、この硬質材の裏面に固定保持される軽量軟質材とを備え、建築構造物の下地材への取り付けによって仕上げ壁を形成する複合パネルであって、
前記軽量軟質材に、前記下地材に設けられた係止受具を受け入れると共に、前記硬質材の裏面に到達して該硬質材の裏面壁部にて行き止まり端を形成する複数の貫通開口を設け
前記貫通開口は、前記係止受具の受け幅よりも広く、かつ、該係止受具の幅方向に沿う複合パネルのスライドを可能として該複合パネルと下地材との相互間の温度変化、湿度変化によって生じる収縮差を吸収する開口幅を有すること特徴とする建築構造物の壁材に適した複合パネル。
【請求項2】
上下に一対の縁部とこれら一対の縁部を両側に挟み込む左右一対の縁部により区画された輪郭形状を有し、その外表面を仕上げ面とする硬質材と、この硬質材の裏面に固定保持される軽量軟質材とを備え、建築構造物の下地材への取り付けによって仕上げ壁を形成する複合パネルであって、
前記軽量軟質材に、前記下地材に設けられた係止受具を受け入れると共に、前記硬質材の裏面に到達して該硬質材の裏面壁部にて行き止まり端を形成する複数の貫通開口を設け、
前記硬質材に、該硬質材の外表面と一致する外表面を有し、隣接するパネルの端面に突き合わさってその相互間にてフラットな継ぎ目を形成する耳部を設けたことを特徴とする建築構造物の壁材に適した複合パネル。
【請求項3】
上下に一対の縁部とこれら一対の縁部を両側に挟み込む左右一対の縁部により区画された輪郭形状を有し、その外表面を仕上げ面とする硬質材と、この硬質材の裏面に固定保持される軽量軟質材とを備え、建築構造物の下地材への取り付けによって仕上げ壁を形成する複合パネルであって、
前記軽量軟質材に、前記下地材に設けられた係止受具を受け入れると共に、前記硬質材の裏面に到達して該硬質材の裏面壁部にて行き止まり端を形成する複数の貫通開口を設け、
前記軽量軟質材は、前記貫通開口の少なくとも一つに、該貫通開口の通路内へ張り出し、前記係止受具との連係を可能とする係止片を有する裏張り材を備え、
前記係止片が、コの字状スリットによって輪郭形状が形成された舌状片を、前記貫通開口の通路内に向けて折り返した折り曲げ片からなることを特徴とする建築構造物の壁材に適した複合パネル。
【請求項4】
前記貫通開口の通路内に、前記硬質材の裏面および前記係止受具にそれぞれ吸着可能なマグネットを設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載した建築構造物の壁材に適した複合パネル。
【請求項5】
請求項2または4に記載した複合パネルを、建築構造物の下地材に取り付ける取り付け施工方法において、
前記貫通開口に、前記下地材に設けられた係止受具をそれぞれ連係させて該複合パネルを前記下地材に順次支持するとともに、前記耳部の裏面に、粘着層を有する接合部材を配置することにより、隣接する複合パネル同士を相互に接続することを特徴とする建築構造物の壁材に適した複合パネルの取り付け施工方法。
【請求項6】
前記接合部材が、前記軽量軟質材であることを特徴とする請求項に記載した建築構造物の壁材に適した複合パネルの取り付け施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築構造物の壁材に適した複合パネルおよびその複合パネルの取り付け施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の内外装工事等では、木製間柱あるいはスタッド、ランナーからなる軽量鉄骨下地に、石膏ボード等の下地材をビス止めして壁面(下地)を形成し、その後に、該壁面の表面に仕上げ材(内装工事にあっては糊付けによって貼付する壁紙等)を取り付けることによって仕上げ壁を形成するのが普通である。
【0003】
ところで、近年、装飾性や機能面で優れた塗装鋼板が開発されてきており、係る塗装鋼板を、建築構造物の下地材に直接取り付けて表面仕上げを行う施工法が採用されている。
【0004】
この点に関する従来技術として、特許文献1には、下地材に取り付ける取り付け面板に複数の係止爪を設ける一方、タイルブロックの内面に係止凹部を設け、該係止凹部を、該係止爪に係止させることによって、該タイルブロックを、取り付け面板に保持するようにしたタイルブロック外装壁が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、長尺基板の一側に係合鈎部を設け、この係合鈎部を、下地金具の通孔より突出した鈎片に引っ掛けて支持するようにしたサイディングが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5―84779号公報
【特許文献2】実開平5―500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1、特許文献2に開示のものは何れも、係止部位における形状が複雑であり、その製作に際しては手間がかかるためコストの面で不利がある。
【0008】
また、下地材への取り付けに際しては、係止凹部と係止爪、あるいは係合鈎部と鈎片との正確な位置合わせを伴う煩雑な作業を必要とし、効率的な施工を実施するのが難しいものであった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、簡素化された形状を有し、簡便な取り付け作業のもとに建築構造物の壁面を仕上げることができる複合パネルおよびその複合パネルの取り付け施工方法を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上下に一対の縁部とこれら一対の縁部を両側に挟み込む左右一対の縁部により区画された輪郭形状を有し、その外表面を仕上げ面とする硬質材と、この硬質材の裏面に固定保持される軽量軟質材とを備え、建築構造物の下地材への取り付けによって仕上げ壁を形成する複合パネルであって、
前記軽量軟質材に、前記下地材に設けられた係止受具を受け入れと共に、前記硬質材の裏面に到達して該硬質の裏面壁部にて行き止まり端を形成する複数の貫通開口を設け、前記貫通開口は、前記係止受具の受け幅よりも広く、かつ、該係止受具の幅方向に沿う複合パネルのスライドを可能として該複合パネルと下地材との相互間の温度変化、湿度変化によって生じる収縮差を吸収する開口幅を有すること特徴とする建築構造物の壁材に適した複合パネルである。
【0011】
また、本発明は、上下に一対の縁部とこれら一対の縁部を両側に挟み込む左右一対の縁部により区画された輪郭形状を有し、その外表面を仕上げ面とする硬質材と、この硬質材の裏面に固定保持される軽量軟質材とを備え、建築構造物の下地材への取り付けによって仕上げ壁を形成する複合パネルであって、
前記軽量軟質材に、前記下地材に設けられた係止受具を受け入れると共に、前記硬質材の裏面に到達して該硬質材の裏面壁部にて行き止まり端を形成する複数の貫通開口を設け、
前記硬質材に、該硬質材の外表面と一致する外表面を有し、隣接するパネルの端面に突き合わさってその相互間にてフラットな継ぎ目を形成する耳部を設けたことを特徴とする建築構造物の壁材に適した複合パネルであり、また、本発明は、上下に一対の縁部とこれら一対の縁部を両側に挟み込む左右一対の縁部により区画された輪郭形状を有し、その外表面を仕上げ面とする硬質材と、この硬質材の裏面に固定保持される軽量軟質材とを備え、建築構造物の下地材への取り付けによって仕上げ壁を形成する複合パネルであって、
前記軽量軟質材に、前記下地材に設けられた係止受具を受け入れると共に、前記硬質材の裏面に到達して該硬質材の裏面壁部にて行き止まり端を形成する複数の貫通開口を設け、
前記軽量軟質材は、前記貫通開口の少なくとも一つに、該貫通開口の通路内へ張り出し、前記係止受具との連係を可能とする係止片を有する裏張り材を備え、
前記係止片が、コの字状スリットによって輪郭形状が形成された舌状片を、前記貫通開口の通路内に向けて折り返した折り曲げ片からなることを特徴とする建築構造物の壁材に適した複合パネルである。
【0012】
また、前記貫通口を備えた上記の構成からなる複合パネルにおいて、該貫通開口の通路内には、前記硬質材の裏面および前記係止受具にそれぞれ吸着可能なマグネットを配置するのが好ましい。
【0017】
なお、上記の耳部は、軽量軟質部材の縦、横の寸法を、硬質材の寸法よりも小さくして該軽量軟質部材の周りに硬質材の縁部が所定の幅寸法で突出させることによって形成することができる。
【0018】
さらに、本発明は、上記の構成からなる複合パネルを、建築構造物の下地材に取り付ける取り付け施工方法において、前記貫通開口に、前記下地材に設けられた係止受具をそれぞれ連係させて複合パネルを前記下地材に順次に支持するとともに、前記耳部の裏面に、粘着層を有する接合部材を配置することによって、隣接する複合パネル同士を相互に接続することを特徴とする建築構造物の壁材に適した複合パネルの取り付け施工方法である。
【0019】
上記の施工方法においては、接合部材を、軽量軟質材にて構成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
上記の構成からなる本発明によれば、複合パネルを、少なくとも2枚重ねにした板状体にて構成することができるため、形状が簡素化されると共に、効率的な製作が可能となる。
【0021】
また、本発明に係る複合パネルによれば、前記貫通開口に係止受具を連係させるだけの簡単な作業で複合パネルを下地材に取り付けることができる。
【0022】
とくに、上記の構成からなる本発明によれば、前記貫通開口を、現場において形成することが可能(軽量軟質材をせん断加工により切り取る)であり、施工時における自由度が高い。
【0023】
さらに、本発明に係る複合パネルによれば、前記貫通開口の通路内に、マグネットを配置することによって硬質材と係止受具とを相互に吸着させることが可能となり、複合パネルと、係止受具とを簡単に連係させることができる。
【0024】
また、本発明に係る複合パネルによれば、軽量軟質材に硬質の裏張り材を設けることにより、仕上げ面を形成する硬質材とともに軽量軟質材を挟み込むサンドイッチ構造を構成することができ、重量増しを殆ど伴うことなしに複合パネルの剛性、強度が高められる。
【0025】
また、本発明に係る複合パネルによれば、上記の構成と合わせて、裏張り材に係止片を設けることにより、該係止片が係止受具からの外れ止めとして機能させることができ、複合パネルのより安定した支持が可能となる。
【0026】
なお、本発明によれば、上記の係止片を、コの字状スリットによって形成された輪郭形状を有するものとし、これを、貫通開口の通路内に向けて折り返した折り曲げ片にて構成することにより、構成部材の部材点数を増すことなしに係止片そのものの強度を高めることができる。
【0027】
さらに、本発明に係る複合パネルによれば、複数枚のパネルをつなぎ併せる際に、硬質材に設けられた耳部が、隣接配置されるパネル(複合パネル)の端面に突き合わさるため、その相互間にはフラットな継ぎ目が形成される。フラットな継ぎ目を形成することができると、該継ぎ目に跨って文字等が書かれても違和感がなく、筆圧の変化も小さくするのに有利であり、また、映像等を投射した際に該画像等の乱れが抑制される。
【0028】
本発明による複合パネルによれば、仕上げ壁を、専用のマーカーで書いて消せるホワイトボード、あるいはプロジェクタスクリーンとしての適用が可能となる。
【0029】
とくに、本発明に係る複合パネルによれば、ホワイトボードやプロジェクタスクリーン等につき、幅、高さともに、生産可能範囲を超えるサイズでの製作、要求がなされても、その製作、要求に容易に対処することができる。
【0030】
さらに、本発明に係る複合パネルの施工保持方法によれば、貫通開口に、下地材に設けられた係止受具をそれぞれ連係させて複合パネルを前記下地材に順次に支持し、硬質材の裏面に、軟質材からなる接合材を配置することで、隣接する複合パネル同士を接続すること可能であり、仕上げ壁を簡便、かつ、迅速に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に従う複合パネルの実施の形態を示した図(正面側の外観斜視図)である。
図2図1に示した複合パネルの裏面側の外観斜視図である。
図3図1に示した複合パネルの分解状態を示した外観斜視図である。
図4図1に示した複合パネルの貫通開口を拡大して示した図である。
図5】係止受具の他の例を示した図である。
図6】複合パネルの端面同士を突き合わせた状態を示した図である。
図7】接合部材の構成例と、接続状況を示した図である。
図8】接合部材の他の構成例を示した図である。
図9】複合パネルの取り付け状況の1例を示した図である。
図10】本発明に従う複合パネルの他の実施の形態を示した図である。
図11】本発明に従う複合パネルの他の実施の形態を示した図である。
図12】本発明に従う複合パネルの他の実施の形態を示した図である。
図13図12に示した複合パネルの取り付け状況を示した図である。
図14図12に示した複合パネルの変形例を示した図である。
図15図12に示した複合パネルのさらに他の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1〜3は、本発明に従う複合パネルの実施の形態を模式的に示した図であり、図1は、正面側の外観斜視図、図2は、裏面側の外観斜視図、そして図3は分解状態の外観斜視図である。
【0033】
ここで、複合パネルとは、表面材または裏面材、あるいはその両方に金属板等の高密度、高強度、高剛性材料を適用し、芯材に低密度材料を適用して、少なくともそれらを2枚重ねにして一体化を図った板状の積層構造体をいうものとする。この積層構造体は、重量増しを最小限に抑えつつ厚さを厚くすることができる利点を有する。
【0034】
図1〜3における符号1は、外表面を仕上げ面とする硬質材である。この硬質材1は、0.3〜0.5mm程度の厚さを有し、一対の短縁1a、1bと、この短縁1a、1bを両側に挟み込む一対の長縁1c、1dとによって区画された輪郭形状(矩形)からなっている。
【0035】
本発明では、硬質材1として、スチール製の塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム亜鉛合金めっき鋼板、アルミニウム板、ステンレス鋼板、銅板等を適用することができる。
【0036】
上掲図1〜3では、硬質材1の形状を、矩形状をなす縦長の板状部材を例として示したが、該硬質部材1は、横長、円、楕円、多角形等多種多様の形状を適用することが可能であり、図示の形状には限定されない。
【0037】
また、図1〜3における符号2は、硬質材1の裏面に接着剤等(機械的な接合でもよい)を介して貼着された、芯材としての軽量軟質材である。この軽量軟質材2も、硬質材1と同様、ここでは、縦長の板状部材からなるものを例として示してあり、発泡ポリエチレン、樹脂、木質材料等が適用される。
【0038】
また、図中、3は、軽量軟質材2に設けられた貫通開口である(図2図3参照)。貫通開口3は、下地材に設けられた係止受具4(図4図5参照)を受け入れて複合パネルを該下地材に取付けるためのものであって、該貫通開口3には、硬質材1の裏面に到達して該硬質材1の裏面壁部を行き止まり端とする通路3aが形成されている。
【0039】
図示した複合パネルは、軽量軟質材2の幅方向(w)に2個、長手方向(L)に3個、都合、6個の貫通開口3を設けた、四角形状(正方形)のものを例として示したが、貫通開口3の形状や個数については、とくに限定はされない。
【0040】
上記の貫通開口3は、その要部を拡大して図4に示すように、係止受具4の受け幅Pよりも広い開口幅P+tを有している。
【0041】
ここに、貫通開口3の開口幅が係止受具4の受け幅Pよりもt分だけ大きくすることにより、複合パネルと下地材との相互間において温度変化、湿度変化等によって伸縮差が生じたとしても、複合パネルは、tの範囲内でスライドが許容される。
【0042】
このため、伸縮差は吸収され、パネルの継ぎ目における段差の発生、あるいは隙間の発生が抑制される。
【0043】
係止受具4は、図4では、単一のブロックタイプのものを例として示したが、図5に示すように、薄肉のプレートを複数枚重ね合わせブロックタイプのもの、あるいは図示はしないがZ型断面をなす形状を有するもの等が適用可能であり、係止受具4の形状はとくに限定はされない。
【0044】
さらに、図1〜3における符号5は、硬質材1の外周縁に設けられた耳部である(軽量軟質部材2を取り囲むように設けられている)。
【0045】
耳部5は、硬質材1の外表面に一致する外表面を有しており、図6に要部の断面を示すように、隣接して配置される複合パネルの端面に突き合わせた際に、その相互間においてフラットな継ぎ目mを形成する。
【0046】
上記の構成からなる本発明の複合パネルは、硬質材1と、貫通開口3を有する軽量軟質材2とを重ね併せた、簡素化された板状部材からなるものであり、効率的な製作が可能となっている。
【0047】
また、本発明における複合パネルは、貫通開口3の通路3a内に、係止受具4を装入するだけで下地材に支持することが可能であり、係止受具4の設置場所に応じ、下地材の上下、左右方向の任意の位置での取り付けが行える。
【0048】
そして、貫通開口3に係止受具4を装入するに当たり、先行して取り付けられた複合パネルの耳部5と、その次に取り付けられる複合パネルの耳部5とを相互に突き合わせることにより仕上げ壁が形成される。
【0049】
複合パネルの耳部5の突き合わせにおいては、上掲図6に示すように、該耳部5の背面、すなわち、互いに隣り合う軽量軟質材2の相互間に空間6が形成される。このため、本発明においては、その空間6に接合材を配置する。
【0050】
図7は、接合部材の構成例を示したものであり、図中の符号7が接合部材である。この接合部材7は、例えば、鋼板等からなる芯材7aと、芯材7aを前後に挟む厚さ調整材(発泡ポリエチレン等)7bと、両面に接着層を有する接着部材(両面テープ等)7cで構成することができる。
【0051】
また、上記の接合部材7としては、図8に示すように、軽量軟質材2を適用することもできる。この構成の複合パネルは、硬質材1を一部分切り取って軽量軟質材2を突出させるか、あるいは該硬質材1の端部から突出するように軽量軟質材2を余分に設け、突出した軽量軟質材2の外表面に接着剤7c′を塗布して、該接着剤7c′の表面に、隣接配置される複合パネルの耳部5を重ねて接合するものである。
【0052】
複合パネルの取り付けに当たって、空間6に、上記の接合部材7を配置することにより、耳部5における曲げ剛性、曲げ強度を確保しつつ隣接する複合パネルとの確実な接続が可能となり、これにより複合パネルの連続性が保たれる。
【0053】
従って、本発明の複合パネルを用いて仕上げ壁を形成し、この仕上げ壁を、ホワイトボードとして使用する場合においても、複合パネルの継ぎ目に跨って文字等を書いても違和感がなく、筆圧の変動も極めて小さくなる。また、プロジェクタスクリーンとして使用する場合においては画像等が乱れることがない。
【0054】
なお、複合パネルは、横並びにつなげて仕上げ壁を形成する場合のみならず、該複合パネルを上下方向に沿ってつなぎ合わせて仕上げ壁を形成する場合もあり、この場合、上下のつなぎ合わせ部分にも空間6が形成されるため、その部位についても上記の接合部材7を配置する。
【0055】
図9に複合パネルの取り付け状況の1例を示す。
【0056】
図10は、貫通開口3の通路3aに、軽量軟質材2と同等の厚さを有するマグネット8を配置した、本発明に従う複合パネルの他の実施の形態を示した図である。
【0057】
貫通開口3内にマグネット8を配置した構成のものにおいては、係止受具4として磁性材からなる金属製プレート(係止受具)を設け、この係止受具4と硬質材1とをマグネット8に吸着させることで下地材4に保持することが可能(接着剤による接着が不要)となり、複合パネルの、下地材への取り付け、取外しが容易となる。
【0058】
係止受具4は、ねじ、あるいは接着剤を用いて下地材に固定する。
【0059】
マグネット8は、その外表面と軽量軟質部材2との表面を、同等レベル(面一)としておくのがよい。
【0060】
というのは、下地材と複合パネルとの相互間で収縮差により複合パネルがスライドすることがあってもその動きを阻害することがないからである。マグネット8の設置個数やその磁力は、複合パネルの取り付け強度に応じて設定される。
【0061】
さらに、上記のマグネット8は、予め下地材に固定し係止受具4として使用してもよい。
【0062】
マグネット8を係止受具4とする場合についても、マグネット8のサイズと複合パネルのスライド分を考慮して貫通開口3の開口幅を設定しておく。
【0063】
図11は、軽量軟質材2の背面に硬質の裏張り材9を設け、硬質材1との間で該軽量軟質材2を挟持(サンドイッチ構造)した、本発明による複合パネルのさらに他の実施の形態を示した図である。
【0064】
係る構成の複合パネルは、上掲図1〜3に示した複合パネルと同様の要領で取り付け施工がなされるものである。
【0065】
裏張り材9を備えた複合パネルは、重量増しを伴うことなしにパネルそのものの剛性、強度を高めることが可能(パネルの腰を確保)であり、施工時における取り扱いを容易にし、パネルの大面積化により一度の作業で広範囲にわたって施工できる等の利点がある。
【0066】
裏張り材9としては、厚さ0.15〜0.30mm程度の板材を適用することができる。具体的には、硬質材1と同等の金属板、あるいはベニア板等を用いることが可能であり、貫通開口3が形成されている部位には、該貫通開口3のサイズに合わせて窓孔9aを設ける。
【0067】
とくに裏張り材9の窓孔9a(上辺)には、その要部を拡大して図12に示す如く、貫通開口3の通路3a内に先端部が張り出した係止片10を設けるのがよい。
【0068】
裏張り材9に係止片10を設けることにより、係止受具4として図13に示すようなZ型断面を有するものを適用した場合に、該係止片10によって該係止受具4の、貫通開口3からの引き抜けを回避することが可能となり、複合パネルの支持がより確実になる。なお、係止片10は、複数設けた貫通開口3のうちの少なくとも1つに設けておけばよい。
【0069】
係止片10に連係する係止受具4についても、貫通開口3の開口幅よりも小さい幅寸法に設定しておき、下地材4と複合パネルとの間に収縮差が生じたとしてもそれを吸収すべく、該複合パネルのスライドを可能にしておく。
【0070】
図14は、係止受具4の変形例を示した図である。係止受具4としては、上掲図13で示したZ型断面を有するものの他に、角部に凹部4aを形成したブロックタイプのものを適用することもできる。
【0071】
係る係止受具4においては、係止片10の先端部(下端部)が係止受具4の凹部4aに入り込むため、複合パネルの支持がより一層確実になる。
【0072】
図15は、裏張り材9に、コの字状(U字状)スリット11によって輪郭形状が形成された舌状片12を設け、該舌状片12を貫通開口3の通路内に向けて180°の角度でもって折り返して折り曲げ片13を形成したものである。
【0073】
上記の折り曲げ片13を備えた複合パネルは、別部材を2枚重ねにして張り合わせる工程を経ることなしにその部位の強度を高めることが可能であり、部品点数の増加を抑制できる利点がある。
【0074】
係止受具4の形状については下地材の状況に応じて適宜変更することができるものであって、図示したものに限定されることはない。
【0075】
なお、本発明の複合パネルは、例えば、図10に示したマグネットタイプと、図13に示した引っ掛けタイプのもの等を、単一の複合パネルにつき、それぞれ組み合わせた連係構造を適用してもよい。
【0076】
本発明による複合パネルは、建築構造物(既存、新築を問わない)の内装仕上げ材として好適であるだけでなく、外壁の外側に配置される化粧板として使用することも可能であり、取り付けられる部位については、とくに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば、形状が簡素化され、効率的な製作が可能であり、かつ、下地材に確実に支持し得る複合パネルが提供できる。また、本発明によれば、効率的な作業のもとで仕上げ壁を形成することが可能な施工方法が提供できる。
【符号の説明】
【0078】
1 硬質材
1a 短縁
1b 短縁
1c 長縁
1d 長縁
2 軽量軟質材
3 貫通開口
3a 通路
4 係止受具
5 耳部
6 空間
7 接合材
7a 芯材
7b 厚さ調整材
7c 接着部材
7c′ 接着剤
8 マグネット
9 裏張り材
9a 窓孔
10 係止片
11 スリット
12 舌片
13 折り曲げ片
w 幅方向
L 長手方向
m 継ぎ目
P 開口幅
t 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15