【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、本発明における各種特性は、以下の測定方法にしたがった。
【0027】
(1)固有粘度(dl/g)
1,1,2,2−テトラクロロエタンとの混合溶媒(フェノール:1,1,2,2−テトラクロロエタン=40重量%:60重量%)を溶媒に用いて、35℃の恒温下オストワルト型粘度計を用いて測定した。
【0028】
(2)末端カルボキシル基量(COOH量(eq/Ton))
得られたポリエチレンテレフタレート組成物のチップをベンジルアルコール中で加熱溶解し、フェノールレッドおよびNaOH水溶液を滴下した。溶液が黄色から赤色に変色する中間点におけるNaOH水溶液量からカルボキシル基濃度を算出した。測定は室温で行い、1トン当りの当量として、eq/Tで示した。
【0029】
(3)リン元素量の測定
得られたポリエチレンテレフタレート組成物を加熱溶融して、円形ディスクを作成し、リガク製蛍光X線装置3270型を用いて、含有するリン元素量を測定した。
【0030】
(4)ポリエチレンテレフタレート組成物の溶融熱安定性
得られたポリエチレンテレフタレート組成物を一旦ペレット状にし、140℃で6時間乾燥した後、大気圧下にて300℃で30分間、溶融状態で攪拌をつづけた後に、ポリマーを回収し、ただちに氷水中で急冷した。そして、乾燥処理後で溶融処理前のポリエチレンテレフタレート組成物の固有粘度(IV
0)、末端カルボキシル基量(COOH量
0)と、溶融処理後のポリエチレンテレフタレート組成物の固有粘度(IV
1)と末端カルボキシル基量(COOH量
1)を測定した。そして、乾燥処理後で溶融処理前のポリエチレンテレフタレート組成物の固有粘度(IV
0)から溶融処理後のポリエチレンテレフタレート組成物の固有粘度(IV
1)を差し引いたものを固有粘度差(△IV
p)、溶融処理後のポリエチレンテレフタレート組成物の末端カルボキシル基量(COOH量
1)を乾燥処理後で溶融処理前のポリエチレンテレフタレート組成物の末端カルボキシル基量(COOH量
0)から差し引いたものを末端カルボキシル基量差(△COOH量
p)とした。この△IV
pおよび△COOH
pが小さいほど溶融熱安定性に優れるといえる。
【0031】
(5)ポリエチレンテレフタレート組成物の耐加水分解性
得られたポリエチレンテレフタレート組成物を一旦ペレット状にし、140℃で6時間の加熱乾燥した後、プレッシャークッカー[HIRAYAMA産業(株),型番:PC-8011]を用いて加水分解のテストを行なった。テストの条件として、140℃×100%RHの環境下で乾燥処理したチップを12時間保持した。乾燥処理後で加水分解テスト前のポリエチレンテレフタレート組成物の固有粘度(IV
0)、末端カルボキシル基量(COOH量
0)と、加水分解テスト後のポリエチレンテレフタレート組成物の固有粘度(IV
w)と末端カルボキシル基量(COOH量
w)を測定した。そして、加水分解テスト前後のポリエチレンテレフタレート組成物の固有粘度(IV
0:加水分解テスト前)から(IV
w:加水分解テスト後)を差し引いたものを固有粘度差(△IV
d)、同様に末端カルボキシル基量差(△COOH量
d)とした。この△IV
dおよび△COOH
dが小さいほど耐加水分解性に優れるといえる。
【0032】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチルエステル(DMT)とエチレングリコール(EG)とをモル比1:2の割合で、さらに酢酸マンガン四水和物と下記構造式(2−1)で示されるビスフェノール−Aのプロピレングリコール付加物(BPA−P)とを、それぞれDMTに対し、0.025モル%および20mmol%となるようにエステル交換反応槽に仕込み、190℃まで昇温した。その後、240℃に昇温しながらメタノールを除去しエステル交換反応を終了した。
続いて、三酸化二アンチモンとトリエチルホスホノアセテートとを、仕込んだDMT100モルに対し、それぞれアンチモン元素およびリン元素量で0.01モルおよび0.080モルとなるように仕込んだ。なお、トリエチルホスホノアセテートは、10重量%エチレングリコール溶液の状態で添加した。このようにして得られた反応生成物を重合反応槽へと移行した。重縮合反応槽内では昇温しつつ、圧力をゆっくりと減圧し、最終的に重縮合温度290℃、50Paの真空下で重合反応を行なった。所定の攪拌電力に到達してから、重合装置下部のバルブを開いて重合装置内部を窒素ガスで加圧し、重合の完了したポリエチレンテレフタレートをストランド状にして水中に吐出し、吐出されたストランドをカッターによって切断し、チップ化した。このようにして固有粘度が0.61dl/g、カルボン酸末端基数が23.8eq/tであるPETを得た。このPETを160℃で4時間予備乾燥した後、回転式タンブラー型固相重合反応装置に仕込み、225℃、67Pa以下の真空度で14時間固相重合を実施して、固有粘度が0.766dl/g、カルボン酸末端基数が11.5eq/tであるPETを得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0033】
【化2】
【0034】
[実施例2、3、比較例1および2]
BPA−Pの添加量を、表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0035】
[実施例4]
BPA−Pを、下記式(2−2)で示す2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)に変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0036】
【化3】
【0037】
[実施例5〜8、比較例3〜6]
BPAの添加量を、表1に示すように変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。また実施例8では溶融重合のみで重合反応を終わらせた。比較例5,6では溶融重合にて得られるPETの固有粘度がそれぞれ0.597dl/g、 0.55dl/gとなるように攪拌電力を調節して溶融重合品を得た。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0038】
[比較例7および8]
BPA−Pを、下記式(2−3)で示す2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)のエチレングリコール付加物(BPA−E)に変更し、表1に示す添加量に変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0039】
【化4】
【0040】
[比較例9および10]
BPA−Pを下記式(2−4)で示す2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)のジエチレングリコール付加物(BPA−D)に変更し、表1に示す添加量に変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0041】
【化5】
【0042】
[実施例9〜11、比較例11および12]
BPA−Pを下記式(1−1)で示す2,3−ブタンジオール(2,3−BG)に変更し、表1に示す添加量に変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0043】
【化6】
【0044】
[実施例12〜14、比較例13および14]
BPA−Pを下記式(1−2)で示す2,4−ペンタンジオール(2,4−PG)に変更し、表1に示す添加量に変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0045】
【化7】
【0046】
[実施例15]
トリエチルホスホノアセテートの添加量を、0.080モルから0.038モルに変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0047】
[実施例16]
トリエチルホスホノアセテートの添加量を、0.080モルから0.100モルに変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0048】
[実施例17]
トリエチルホスホノアセテートの添加量を、0.080モルから0.020モルに変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0049】
[実施例18]
トリエチルホスホノアセテートの添加量を、0.080モルから0.150モルに変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0050】
[比較例15および16]
BPA−Pを下記式(1−3)で示す1,2−プロパンジオール(1,2−PG)に変更し、表1に示す添加量に変更する以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0051】
【化8】
【0052】
[比較例17]
BPA−Pを添加しなかった以外は、実施例1と同様な操作を繰り返した。得られたポリエチレンテレフタレート組成物の特性を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
表1中の、BPA−Pは前記式(2−1)で示されるビスフェノールAのプロピレングリコール付加物、BPAは前記式(2−2)で示されるビスフェノールA、BPA−Eは前記式(2−3)で示されるビスフェノールAのエチレングリコール付加物、BPA−Dは前記式(2−4)で示されるビスフェノールAのジエチレングリコール付加物、2,3−BGは前記式(1−1)で示される2,3−ブタンジオール、2,4−PGは前記式(1−2)で示される2,4−ペンタンジオール、1,2−PGは前記式(1−2)で示される1,2−プロパンジオールを示す。また、P量は、ポリエチレンテレフタレート組成物の質量を基準としたときの、リン元素量[ppm]を意味する。また、IVは固有粘度[dl/g]を示し、COOH量は末端カルボキシル基量[eq/T]を意味する。