特許第5731368号(P5731368)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5731368シード粒子、複合樹脂粒子、それらの製造方法、複合樹脂粒子、発泡性粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731368
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】シード粒子、複合樹脂粒子、それらの製造方法、複合樹脂粒子、発泡性粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/16 20060101AFI20150521BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20150521BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20150521BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   C08J9/16CES
   C08K3/04
   C08L23/10
   C08F2/44 C
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-270375(P2011-270375)
(22)【出願日】2011年12月9日
(65)【公開番号】特開2013-121998(P2013-121998A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2014年6月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【弁理士】
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【弁理士】
【氏名又は名称】稲本 潔
(72)【発明者】
【氏名】小澤 正彦
(72)【発明者】
【氏名】森島 直也
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−090556(JP,A)
【文献】 特開平10−119037(JP,A)
【文献】 特開平03−086504(JP,A)
【文献】 特開2002−166417(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/099833(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00−3/28;99/00
C08J 9/00− 9/42
B29B 9/00− 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を少なくとも含む樹脂組成物を300〜340℃に保持されたダイから押出し、得られた押出物を30〜60℃の水流温度の水流中で切断することによってシード粒子を得ることを特徴とするシード粒子の製造方法。
【請求項2】
前記押出物が、押出孔1つ当たり4〜8kg/mm2・時間の押出速度で押出される請求項1に記載のシード粒子の製造方法。
【請求項3】
前記樹脂組成物が、前記樹脂組成物100質量部に対してカーボンブラックを2〜10質量部の割合で含む請求項1又は2に記載のシード粒子の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の製造方法によって得られたシード粒子。
【請求項5】
請求項4に記載のシード粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させることによって複合樹脂粒子を製造する複合樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載の製造方法によって得られた複合樹脂粒子。
【請求項7】
請求項6に記載の複合樹脂粒子から得られた発泡性粒子。
【請求項8】
請求項7に記載の発泡性粒子から得られた予備発泡粒子。
【請求項9】
請求項8に記載の予備発泡粒子から得られた発泡成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シード粒子、複合樹脂粒子、それらの製造方法、複合樹脂粒子、発泡性粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体に関する。更に詳しくは、本発明は、微粒子と凝集粒子の含有量の少ないシード粒子及び複合樹脂粒子の簡便な製造方法に関する。また、本発明は、前記製造方法によって提供される、シード粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂成分としてポリスチレン系樹脂やオレフィン系樹脂を含む発泡成形体が、成形加工性、断熱性、耐衝撃性及び緩衝性のような優れた物性のために、包装用緩衝材、建築用部材、自動車部材等として幅広く使用されている。
また、前記の物性の均一な発泡成形体を得るためには、発泡成形体の原料として使用する予備発泡粒子やその原料として使用するシード粒子、樹脂粒子等が、その形状、物性等について均一であることが求められる。このため、前記の観点から、特許文献1には、樹脂成分としてスチレン単独重合体とエチレン−酢酸ビニル共重合体とを含み、凝集粒子の含有量の少ない複合樹脂粒子及びその製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−227843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の製造方法を行った場合、凝集粒子の低減の観点からは一定の効果が認められる場合があるものの、十分ではない。微粒子から得られる発泡性樹脂粒子は、加熱時に発泡剤の散逸が激しいため、微粒子を多く含む複合樹脂粒子から得られた発泡成形体は所望の倍数を得ることができない。また、その結果、得られた発泡成形体はその外観が美麗ではなく、発泡成形体毎の重量のばらつきが大きく、製品効率も悪化する。
【0005】
微粒子を複合樹脂粒子から取り除く場合、新たな製造工程を組み込む必要がある。この場合、複合樹脂粒子の生産性が大きく低下することとなり、製造コスト、製造時間等に大きく影響を与える。このため、特許文献1に記載の製造方法は、微粒子と凝集粒子の含有量の少ない複合樹脂粒子の製造方法という観点からは必ずしも満足のいくものではなかった。
従って、このような点に鑑みて、微粒子と凝集粒子の含有量の少ない複合樹脂粒子を得ることができるシード粒子の簡便な製造方法を提供することが課題とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かくして本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂を少なくとも含む樹脂組成物を300〜340℃に保持されたダイから押出し、得られた押出物を30〜60℃の水流温度の水流中で切断することによってシード粒子を得ることを特徴とするシード粒子の製造方法が提供される。
【0007】
また、本発明によれば、上記製造方法によって得られたシード粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記シード粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させることによって複合樹脂粒子を製造する複合樹脂粒子の製造方法が提供される。
また、本発明によれば、上記複合樹脂粒子の製造方法によって得られた複合樹脂粒子が提供される。
【0008】
更に、本発明によれば、上記複合樹脂粒子から得られた発泡性粒子が提供される。
また、本発明によれば、上記発泡性粒子から得られた予備発泡粒子が提供される。
更に、本発明によれば、上記予備発泡粒子から得られた発泡成形体が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシード粒子の製造方法によれば、樹脂組成物を低温の媒体中に押出した場合と比較して、微粒子を多量に発生させることなく、シード粒子を製造できる。加えて、シード粒子が長時間に亘って高温にさらされないため、シード粒子同士の凝集体(凝集粒子)を低減できる。
また、本発明のシード粒子に単量体成分を含浸、重合させて得られた複合樹脂粒子は、シード粒子と同様に、微粒子と凝集粒子の含有量を低減できる。
更に、本発明の複合樹脂粒子、発泡性粒子及び予備発泡粒子を使用することによって、製品効率のよい発泡成形体を得ることができる発泡性粒子を提供できる。
【0010】
また、本発明によれば、押出物が押出孔1つ当たり4〜8kg/mm2・時間の押出速度で押出される場合、水流温度の管理がより容易となるため、微粒子と凝集粒子の含有量の更により少ないシード粒子を得ることができる。
更に、本発明によれば、樹脂組成物が、樹脂組成物100質量部に対してカーボンブラックを2〜10質量部の割合で含む場合、シード粒子が着色性に優れたカーボンブラックを好適な割合で含むため、更により意匠性に優れた発泡成形体を製造でき、かつ、微粒子と凝集粒子の含有量の少ないシード粒子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のシード粒子、複合樹脂粒子、それらの製造方法、発泡性粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体について詳説する。
尚、本発明において、原料単量体、原料樹脂、その他の成分等の使用原料間の質量比と、シード粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子、予備発泡粒子及び発泡成形体における樹脂成分、その他の成分等の質量比とは略同一である。
【0012】
<シード粒子の製造方法>
本発明では、
(i)ポリプロピレン系樹脂を少なくとも含む樹脂組成物を300〜340℃に保持されたダイから押出し(押出工程)、
(ii)得られた押出物を30〜60℃の水流温度の水流中で切断する(切断工程)
ことによってシード粒子を製造できる。
本発明において、シード粒子とは、シード重合法で使用される単量体成分を含浸させる樹脂粒子を意味する。
【0013】
(1)ポリプロピレン系樹脂
シード粒子はポリプロピレン系樹脂を少なくとも含む。ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単独重合体、又はプロピレン単量体を主成分とし、プロピレン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を意味する。ここで、主成分とは、プロピレン単量体が全単量体100質量部中に75質量部以上を占めることを意味する。更に、プロピレン単量体は、全単量体100質量部中に90質量部以上を占めることが好ましい。
【0014】
他の単量体としては、エチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3,4−ジメチル−1−ブテン、1−ヘプテン、3−メチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどの炭素数4〜12のα−オレフィン;
シクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロ[6,2,11,8,13,6]−4−ドデセンなどの環状オレフィン;
5−メチレン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、メチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのジエン;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどのビニル単量体などが挙げられる。
これら他の単量体は1種又は2種以上使用できる。
【0015】
プロピレン系樹脂の具体例としては、プロピレン単量体を主成分とする、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−アクリル酸共重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体、プロピレン−メチルメタクリレート共重合体等を挙げることができる。
ポリプロピレン系樹脂として共重合体を使用する場合、共重合体はランダム共重合体であってよく、ブロック共重合体であってもよい。
尚、所望の物性に影響を与えない限り、ポリプロピレン系樹脂を1種のみ使用しても、2種以上併用してもよい。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂は、発泡性確保の観点から、好ましくは50×103〜150×103、より好ましくは60×103〜100×103、更に好ましくは60×103〜140×103の数平均分子量を有する。尚、本発明において、数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)で測定される数平均分子量を意味する。
【0017】
同様の観点から、ポリプロピレン系樹脂はシード粒子100質量部中に好ましくは70〜100質量部、より好ましくは80〜100質量部含まれる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、発泡成形体の耐熱性確保の観点から、好ましくは125〜145℃、より好ましくは140〜145℃の融点を有する。
更に、ポリプロピレン系樹脂は、押出機での流動性確保の観点から、230℃、2.16kgの荷重下で測定したときに、好ましくは2〜10g/10分、より好ましくは3〜8g/10分のメルトフローレートを有する。
【0018】
(2)他の添加剤
意匠性に優れた発泡成形体を得るために、シード粒子は着色剤を含むことが好ましい。また、これらの着色剤はシード粒子の製造工程のみならず、その他の製造工程において適宜加えられてもよい。
着色剤としては、所望の物性に影響を与えない限り、公知の有機系染料、有機系顔料、無機系顔料等をいずれも使用できる。
【0019】
有機系染料としては、アゾ系、アントラキノン系、フタロシアニン系、インジゴイド系、キノンイミン系、カルボニウム系、ニトロ系及びニトロソ系の染料が挙げられる。
有機系顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、スレン系、キクナドリン系、ジオキサジン系及びイソインドリン系の顔料が挙げられる。
無機系顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、酸化クロム及びウルトラマリンの顔料が挙げられる。
【0020】
黒色で意匠性に優れた発泡成形体を得るために、着色剤としてカーボンブラックを使用することが好ましい。カーボンブラックとしては公知のものを使用できる。具体的には、ファーネスブラック、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、黒鉛、炭素繊維等の炭素系物質が挙げられる。また、より黒色で意匠性に優れた発泡成形体を得るためには、着色剤はファーネスブラックが好ましい。
【0021】
カーボンブラックは、好ましくは5〜100nm、より好ましくは15〜60nm、更に好ましくは15〜35nmの平均粒子径を有する。この範囲内では、カーボンブラックをポリプロピレン系樹脂中により均一に分散できる。本発明において、平均粒子径とは、カーボンブラックの集合体を構成する小さな略球状(微結晶による輪郭を有し、分離できない)成分を電子顕微鏡写真にて測定、算出される粒子の直径の平均値を意味する。
【0022】
また、カーボンブラックはポリプロピレン系樹脂100質量部に対して好ましくは2〜10質量部、より好ましくは3〜8質量部の割合で含まれる。カーボンブラックが2質量部より少ない場合、カーボンブラックが不足し、美麗な発泡成形体を得ることができないことがある。10質量部より多い場合、カーボンブラックが過剰にポリプロピレン系樹脂中に含まれるため、高倍数の発泡成形体を得ることができないことがある。
また、所望のシード粒子を得ることができる限り、シード粒子は他の添加剤等を含んでいてもよい。添加剤として、具体的には、被覆剤、光安定剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、熱安定剤、滑剤及び帯電防止剤が挙げられる。
【0023】
(3)押出工程
ポリプロピレン系樹脂を少なくとも含む樹脂組成物は、300〜340℃に保持されたダイから押出される。本発明において、ダイの温度は、ダイ自身に設置された熱伝対(熱電対)式温度計で測定した温度を意味する。ダイの温度が300℃未満の場合、微粒子が発生することがある。340℃より高い場合、シード粒子同士の凝集体が増加することがある。より好ましいダイの温度は、310〜340℃である。
【0024】
押出は、4〜8kg/mm2・時の押出孔1つ当たりの押出速度で行うことが好ましい。この範囲内では、切断工程における水流の温度管理等を容易にできる。押出速度が8kg/mm2・時より速い場合、水流温度が過度に上昇することで、温度管理が困難となることがある。4kg/mm2・時より遅い場合、先端に備えた金型温度が大きく低下し、連続運転性が悪化することがある。より好ましい押出速度は5〜7kg/mm2・時である。
【0025】
本発明において、押出孔とは、押出機先端に備えた樹脂成分を吐出させるための孔を意味する。また、押出速度とは、前記押出孔1つ当たりについて吐出される押出物の量(kg)を押出孔の面積(mm2)と時間(時間)とで除算した値を意味する。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂を少なくとも含む樹脂組成物は、混練機中、原料を溶融混練することによって得ることができる。他の添加剤は、混練機への投入前に、ポリプロピレン系樹脂と混合機で乾式混合しておいてもよい。
また、混練機は、公知のものを使用できる。具体的には、ラボブラストミル、1軸又は2軸の押出機、オープンロール方式の混練機が挙げられる。この内、熱履歴による樹脂成分の劣化をより回避できる1軸押出機が好ましい。
【0027】
カーボンブラックは、溶融混練工程時、ポリプロピレン系樹脂に単独で添加してもよく、カーボンブラックを含む樹脂組成物、いわゆる、マスターバッチとして添加してもよい。大量のカーボンブラックをポリプロピレン系樹脂中により均一かつ容易に分散させることを望む場合、カーボンブラックを含むマスターバッチを使用することが好ましい。
【0028】
カーボンブラックは、マスターバッチ100質量部に対して、好ましくは30〜50質量部、より好ましくは35〜45質量部含まれる。マスターバッチに含まれる樹脂成分としては、シード粒子を構成するポリプロピレン系樹脂との相溶性の観点から、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂のようなオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましい。尚、カーボンブラックを均一に分散できるのであれば、他の工程において、カーボンブラックを加えてもよい。
【0029】
また、樹脂組成物は、230〜280℃の溶融混練温度で押出機の先端に備えたダイから押出されることが好ましい。ここで、溶融混練温度とは、押出機ヘッド付近の溶融混練物流路の中心部温度を熱伝対式温度計で測定した押出機内部の溶融混練物の温度を意味する。この温度範囲であれば、微粒子の発生をより抑制できる。溶融混練温度は、好ましくは230〜275℃、より好ましくは230〜270℃である。
【0030】
(4)切断工程
上記押出工程で得られた押出物は、30〜60℃の水流温度の水流中で切断されてシード粒子となる。ここで、水流温度とは、押出物が接触、冷却される水流に接触する設備に備えた温度計の示す値を意味する。この切断方式は、水中カット方式と称される。水流温度が60℃より高い場合、押出物が十分に冷却されず、凝集粒子が多量に発生することがある。30℃より低い場合、先端に備えた金型温度が低下し、微粒子が発生することがある。より好ましい水流温度は、30〜55℃である。
冷却後の押出物は水中に設置されたカッターによって切断され、シード粒子となる。水中のシード粒子は、水中から分離した後、乾燥することで乾燥体としてもよく、分離せず複合樹脂粒子の製造工程に使用してもよい。
【0031】
<シード粒子>
上記製造方法により得られたシード粒子は、樹脂組成物を低温の媒体中へ押出して得られたシード粒子と比較して、水流中で微粒子を多量に発生させることなく得られているため、微粒子の含有量が抑制されている。具体的には、微粒子の量をシード粒子100質量部に対して好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下とできる。尚、本発明において、微粒子とは、0.25mm以下の平均粒子径の粒子を意味する。
【0032】
また、水中で、シード粒子が長時間に亘って高温にさらされないため、複数のシード粒子間で起こる凝集を低減できる。このため、上記製造方法により得られたシード粒子は、樹脂組成物を高温の媒体中へ押出して得たシード粒子と比較して、軟化状態にあるシード粒子同士が複数凝集した凝集粒子の含有量が抑制されている。具体的には、凝集粒子の量をシード粒子100質量部に対して好ましくは4質量部以下、より好ましくは2質量部以下とできる。尚、本発明において、凝集粒子とは、2以上の粒子同士が凝集した集合体を意味する。
【0033】
シード粒子は、美麗な発泡成形体を得るため、好ましくは0.5〜1.4mm、より好ましくは0.5〜1.18mm、更により好ましくは0.5〜1.00mmの平均粒子径を有する。また、シード粒子の形状は、例えば、真球状、楕円球状(卵状)、円柱状、角柱状、ペレット状又はグラニュラー状である。シード粒子の形状は、流動性確保の観点から、球状〜略球状であることが好ましい。
【0034】
<複合樹脂粒子>
本発明の複合樹脂粒子は、樹脂成分としてポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂とを含む粒子を意味する。複合樹脂粒子はポリプロピレン系樹脂の優れた剛性(高強度、耐熱性)とポリスチレン系樹脂の優れた発泡性を共に有する。複合樹脂粒子は、上記シード粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させることによって製造できる。
【0035】
本発明において、ポリスチレン系樹脂とは、スチレン単独重合体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体を意味する。スチレン単独重合体とは、スチレン単量体が全単量体成分100質量部中に70質量部以上を占めることを意味する。更に、スチレン単量体は、全単量体成分100質量部中に90質量部以上を占めることが好ましい。
【0036】
ポリスチレン系樹脂は複合樹脂粒子中に、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して100〜400質量部含有されることが好ましい。ポリスチレン系樹脂の含有量が400質量部より多いと、耐熱性が劣ることがある。一方、100質量部より少ないと、発泡性が低下することがある。より好ましい含有量は、125〜240質量部である。
【0037】
また、ポリスチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂の合計量は、複合樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは70〜100質量部、より好ましくは80〜98.5質量部である。この範囲であれば、両者の有する物性を好適に発泡成形体に導入できる。
【0038】
複合樹脂粒子の平均粒子径は、1.0〜2.0mmであることが好ましく、1.0〜1.5mmであることがより好ましい。この範囲であれば、より美麗な発泡成形体を得ることができる。同様に、複合樹脂粒子の形状は、球状〜略球状であることが好ましい。尚、複合樹脂粒子における微粒子とは、0.5mm以下の平均粒子径を有する粒子を意味する。
【0039】
また、微粒子量を複合樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.8質量部以下とできる。このことは本発明の複合樹脂粒子が、極めて少ない微粒子含有量であることを示している。
更に、凝集粒子量を複合樹脂粒子100質量部に対して、好ましくは5質量部以下、より好ましくは4質量部以下とできる。このことは本発明の複合樹脂粒子が、極めて少ない凝集粒子含有量であることを示している。
【0040】
複合樹脂粒子はポリプロピレン系樹脂を含むシード粒子にスチレン系単量体を含浸、重合させるシード重合法によって得られる。
スチレン系単量体とは、スチレン単量体、又はスチレン単量体を主成分とし、スチレン単量体と共重合可能な他の単量体との混合物を意味する。主成分とは、スチレン単量体が全単量体100質量部に対して70質量部以上を占めることを意味する。スチレン単量体は、全単量体成分100質量部中に90質量部以上を占めることが好ましい。
【0041】
他の単量体として、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が例示される。アルキルは、炭素数1〜20のアルキルが挙げられる。
【0042】
シード重合法としては、所望の物性を有する複合樹脂粒子を得ることができる限り、公知のシード重合法のいずれも用いることができる。
以下に一例を挙げて本発明の複合樹脂粒子の製造方法を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
例えば、本発明の複合樹脂粒子は、
(A)分散剤を含む水性懸濁液中に、界面活性剤の存在下、シード粒子と、第1のスチレン系単量体と、第1の重合開始剤とを分散させる工程と、
(B)得られた分散液を第1のスチレン系単量体が実質的に重合しない温度に加熱して第1のスチレン系単量体をシード粒子に含浸させる工程と、
(C)ポリプロピレン系樹脂の融点をT℃としたとき、(T−10)℃〜(T+20)℃の温度で、第1のスチレン系単量体の第1の重合を行って第1の粒子を得る工程と、
(D)第2のスチレン系単量体と第2の重合開始剤とを更に加え、かつ、(T−25)℃〜(T+10)℃の温度とすることにより、第1の粒子への第2のスチレン系単量体の含浸及び第2の重合を行って複合樹脂粒子を得る工程と
を経るシード重合法により得ることができる。
第1のスチレン系単量体と第2のスチレン系単量体との合計量は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、好ましくは100〜400質量部、より好ましくは125〜240質量部である。
【0044】
工程A〜Dのそれぞれは、例えば、懸濁重合法、シード重合法等の周知の重合方法を実施する際に使用するオートクレーブ重合装置を用いて実施できるが、使用される製造装置はこれに限定されない。
【0045】
(工程A)
水性懸濁液を得るために使用する分散剤として、例えば、部分けん化ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の有機系分散剤;
ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム等の無機系分散剤を挙げることができる。この内、より安定な水性懸濁液を得ることができる、無機系分散剤が好ましく、ピロリン酸マグネシウムがより好ましい。
【0046】
また、分散剤は、水性媒体100質量部に対して、好ましくは0.1〜5質量部、より好ましくは1〜4質量部の割合で使用される。この範囲であれば、略球状の複合樹脂粒子をより容易に得ることができる。水性懸濁液を構成する水性媒体として、水、水と水溶性溶媒(例えば、メタノール、エタノール等の低級アルコール)との混合物等を挙げることができる。更に、所望の物性に影響を与えない限り、水性媒体は電解質等の添加剤を含んでいてもよい。
【0047】
本発明においては、シード粒子は、水性媒体100質量部に対して、好ましくは10〜80質量部、より好ましくは20〜50質量部の割合で使用される。この範囲であれば、より安定にシード重合を行うことができる。
水性懸濁液を得るのに使用する界面活性剤としては、所望の物性に影響を与えない限り、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤のいずれも使用できる。
【0048】
具体的には、オレイン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤;
ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル等のノニオン性界面活性剤;
ラウリルジメチルアミンオキサイドのような両性界面活性剤;ならびに
脂肪族第四級アンモニウム塩のようなカチオン性界面活性剤
等を挙げることができる。
【0049】
界面活性剤は、所望の複合樹脂粒子をより安定に得るため、アニオン性界面活性剤が好ましく、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ(ナトリウム)がより好ましい。また、第1の重合時に使用する界面活性剤は、水性媒体100質量部に対して、好ましくは0.001〜0.05質量部、より好ましくは0.005〜0.03質量部の割合で使用される。
【0050】
第1の重合開始剤及び第2の重合開始剤として使用する重合開始剤としては、スチレン系単量体の重合に汎用されている公知の重合開始剤を使用できる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−アミルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−アミルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシビバレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイドロテレフタレート、2,2−ジ−t−ブチルパーオキシブタン、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物が挙げられる。
【0051】
重合開始剤は、所望の物性に影響を与えない限り、1種のみ使用してもよく、2種以上を併用してもよい。また、その他の重合開始剤を併用してもよい。
重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体の合計100質量部に対して、0.3〜1.5質量部であることが好ましい。また、第1の重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体の合計量100質量部に対して、0.1〜0.5質量部であることが好ましい。更に、第2の重合開始剤の使用量は、スチレン系単量体の合計量100質量部に対して、0.2〜1.0質量部であることが好ましい。
スチレン系単量体をシード粒子に含浸させるために、水性媒体に連続的にあるいは断続的に添加できる。スチレン系単量体は水性媒体中に徐々に添加していくことが好ましい。
【0052】
(工程B)
第1のスチレン系単量体が実質的に重合しない温度とは、使用する重合開始剤種にもよるが、使用する重合開始剤の10時間半減期温度以下の温度を意味する。具体的には、前記の温度は50〜80℃の範囲であることが好ましい。この範囲内では、第1のスチレン系単量体を十分にシード粒子中に吸収、含浸できる。加熱温度が50℃未満であると、第1のスチレン系単量体の含浸が不十分となり、ポリスチレン系樹脂の微粒子が発生することがある。一方、加熱温度が80℃を超えると、スチレン系単量体がシード粒子に十分含浸される前に重合してしまうことがある。より好ましい前記の温度は55〜70℃の範囲である。
【0053】
(工程C及びD)
工程C及び工程Dにおいて、特定の温度範囲で重合を行うことにより、中心部はポリスチレン系樹脂の存在量が多く、表層はポリプロピレン系樹脂の存在量が多いという両樹脂が偏在した複合樹脂粒子を得ることができる。偏在する結果として、ポリプロピレン系樹脂とポリスチレン系樹脂のそれぞれの長所が生かされ、剛性、発泡成形性及び耐薬品性を良好に保持された発泡成形体を提供できる。
【0054】
重合温度が特定の温度範囲の下限温度より低くなると、中心部のポリスチレン系樹脂の存在量が少なく、良好な物性を示す発泡成形体を得ることができないことがある。また、重合温度が特定の温度範囲の上限温度より高くなると、スチレン系単量体がシード粒子及び第1の粒子に十分含浸される前に重合が開始してしまうことがあり、良好な物性を示す発泡成形体が得ることができない場合がある。また、高くなると、耐熱性に優れた高価格の重合設備が必要になる。
【0055】
また、スチレン系単量体の重合を、工程Cと工程Dの二段階に分ける理由は、一度に多くのスチレン系単量体をシード粒子に含浸させようとすると、スチレン系単量体がポリプロピレン系樹脂に十分に含浸されず、ポリプロピレン系樹脂の表面に残る場合があるためである。重合工程を二段階に分ければ、工程Cにおいてスチレン系単量体が確実にシード粒子の中心部に含浸され、工程Dにおいてもスチレン系単量体が第1の粒子の中心部に向かって含浸されるためである。
尚、含浸を望むスチレン系単量体の量が少ない場合は、工程Dを行わず、工程Cのみ行って複合樹脂粒子を得てもよい。また、工程Dを複数回繰り返せば、更に多くのスチレン系単量体を含浸できる。
【0056】
第1のスチレン系単量体と第2のスチレン系単量体との合計量は、好ましくはポリプロピレン系樹脂100質量部に対して100〜400質量部、より好ましくは125〜240質量部である。この範囲であれば、含浸をより効率的に行うことができる。同様に、第1のスチレン系単量体の使用量は、シード粒子100質量部に対して、好ましくは10〜100質量部、より好ましくは30〜70質量部である。
複合樹脂粒子が難燃剤を含む場合、第2の重合中の第1の粒子又は複合樹脂粒子に難燃剤を含浸できる。更に、工程Dの後、反応槽を冷却し、複合樹脂粒子を水性媒体と分離することで、複合樹脂粒子を単離できる。
【0057】
<発泡性粒子>
本発明において、発泡性粒子とは、複合樹脂粒子に所定の割合で発泡剤を含浸させた加熱発泡性能を有する樹脂粒子を意味する。
発泡剤としては、公知の種々の発泡剤を使用できる。例えば、プロパン、n−ブタン(ノルマルブタン)、i−ブタン(イソブタン)、n−ペンタン(ノルマルペンタン)、i−イソペンタン(イソペンタン)の単独又はそれらの混合物を挙げることができる。これらの内、より大きな発泡性能を発泡性粒子に導入できる、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタンのいずれかが好ましい。発泡剤は単独で用いてもよく2種以上を用いてもよい。
【0058】
発泡剤の含有量は、発泡性粒子100質量部に対して、8〜13質量部であることが好ましい。発泡剤の含有量が8質量部未満であると、発泡性粒子の発泡性が低下することがある。発泡性が低下すると、嵩倍数の高い低嵩密度の予備発泡粒子が得られ難くなることがある。一方、13質量部を超えると、予備発泡粒子中の気泡サイズが過大となり易く、成形性の低下や、得られる発泡成形体の圧縮、曲げ等の強度特性の低下が発生することがある。より好ましい発泡剤の含有量は、8〜11質量部の範囲である。
【0059】
また、更に均一に発泡性粒子を予備発泡させ得る発泡助剤を用いてもよい。発泡助剤として、例えば、シクロヘキサン及びd−リモネンのような溶剤、ジイソブチルアジペート、グリセリン、ジアセチル化モノラウレート及びやし油のような可塑剤(高沸点溶剤)を挙げることができる。
発泡性粒子は、好ましくは1.0〜2.0mm、より好ましくは1.0〜1.5mmの平均粒子径を有する。この範囲であれば、より美麗な発泡成形体を得ることができる。同様に、発泡性粒子の形状は球状〜略球状であることが好ましい。
【0060】
発泡性粒子の製造方法は特に限定されず、公知の方法をいずれも用いることができる。
例えば、V型、C型あるいはDC型等の回転混合機であって、密閉耐圧の容器に複合樹脂粒子を入れて流動させ、次いで発泡剤を導入することで複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法、及び
攪拌機付密閉耐圧容器内で複合樹脂粒子を水性媒体に懸濁させ、次いで発泡剤を導入し、複合樹脂粒子に発泡剤を含浸させる方法を挙げることができる。
また、発泡剤の含浸は50〜80℃、1.0〜4.0時間行うことが好ましい。更に、前記含浸は所望の発泡成形体等を得ることができる限り、加圧条件下で行ってもよい。
【0061】
<予備発泡粒子>
予備発泡粒子は公知の予備発泡方法を用いて製造できる。例えば、水蒸気等の加熱媒体を用いて発泡性粒子を加熱し、所定の嵩倍数に予備発泡させることで、予備発泡粒子を得ることができる。
加熱媒体として水蒸気を使用する場合、その温度は95〜125℃であることが好ましい。この温度範囲であれば、より容易に予備発泡を行うことができる。
【0062】
予備発泡粒子は、好ましくは20〜60倍、より好ましくは30〜50倍の嵩倍数を有する。嵩倍数が60倍より大きいと、得られる発泡成形体の強度及び耐熱性が低下することがある。一方、20倍より小さいと、得られる発泡成形体の重量が増加することがある。
予備発泡粒子は、好ましくは2.2〜6.4mm、より好ましくは2.6〜4.7mmの平均粒子径を有する。この範囲であれば、より美麗な発泡成形体を得ることができる。同様に、予備発泡粒子の形状は球状〜略球状であることが好ましい。
【0063】
<発泡成形体>
発泡成形体は公知の発泡成形方法を用いて製造できる。一例を挙げると、金型内に予備発泡粒子を充填し、再度加熱することで予備発泡粒子を型内発泡させて粒子同士を熱融着させ、冷却を行うことによって発泡成形体を得ることができる。加熱用の媒体は、ゲージ圧力0.2〜0.35MPaの水蒸気が好適に使用され、水蒸気を導入する時間は20〜90秒が好ましい。
発泡成形体は好ましくは20〜60倍、より好ましくは30〜50倍の倍数を有する。この範囲であれば、断熱性、成形性等の所望の物性を確保できる。
【0064】
また、本発明の発泡成形体は、微粒子と凝集粒子の含有量の少ない複合樹脂粒子から得られる。そのため、微粒子による重量ばらつきが小さく、凝集粒子による型内への予備発泡粒子の充填性低下が抑制されている。従って、高い製品効率で、美麗な表面の発泡成形体を提供できる。
具体的には、発泡成形体の製品効率を好ましくは95%以上、より好ましくは96%以上とできる。
尚、各製造工程における工程温度、工程圧力、工程時間等の製造条件は、使用する製造設備、原料等に従って適宜設定される。
【0065】
本発明の発泡成形体は好適な倍数を有し、優れた表面性を有する。このため、本発明の発泡成形体は、包装用緩衝材、建築用部材、自動車部材等として幅広く使用でき、特にバンパー用芯材、嵩上げ材、ティビアパッド及びツールボックスのような自動車分野での構造部材として使用できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて更に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。実施例に記載した各種測定法及び製造条件を以下で説明する。
【0067】
<ポリプロピレン系樹脂の数平均分子量(Mn)>
測定に使用したGPC装置は、東ソー社製HLC−8121GPC/HTであり、カラムとして東ソー社製TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼンを用いる。測定試料は、1.0mg/mLの濃度に調整し、GPC装置への注入量を0.3mLとする。各分子量の検量線は、分子量既知のポリエチレン試料を用いて校正する。数平均分子量(Mn)は、直鎖状ポリエチレン換算値として求める。
【0068】
<ポリプロピレン系樹脂の融点>
JIS K7122:1987「プラスチックの転移熱測定方法」記載の方法により測定する。即ち、示差走査熱量計装置DSC220型(セイコー電子工業社製)を用い、測定容器に試料を7mg充填して、窒素ガス流量30mL/分のもと、室温から220℃の間で10℃/分の昇・降温スピードにより昇温、降温、昇温を繰り返し、2回目の昇温時のDSC曲線の融解ピーク温度を融点とする。また、融解ピークが2つ以上ある場合は、低い側のピーク温度を融点とする。
【0069】
<ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)>
MFRは、JIS K7210:1999に準拠して、230℃、2.16kg荷重で測定する。測定装置及び測定条件を下記する。
測定装置:東洋精機製作所製 メルトインデクサー
測定温度:230℃
測定荷重:2.16kg
オリフィス径:2.09mm
ポリプロピレン系樹脂5gを予め230℃に予熱したメルトインデクサー内に入れ、4分間放置する。次に2.16kgの重りをピストンに載せ、オリフィス径2.09mmよりポリプロピレン系樹脂を押出し測定する。
【0070】
<シード粒子、複合樹脂粒子、発泡性粒子及び予備発泡粒子の平均粒子径>
試料の平均粒子径は、これら粒子の粒子径の平均をとることにより算出する。即ち、本発明において、平均粒子径とは、体積平均粒子径を意味する。尚、試料の平均粒子径は、べックマンコールター社から製品名「コールターマルチサイザーII」として市販されている測定装置を用いて測定する。
【0071】
<シード粒子の凝集粒子量>
シード粒子の凝集粒子量を、シード粒子1gから2個以上のシード粒子が付着した重合した凝集粒子を取り出し凝集粒子の重量を計量し、シード粒子100質量部に対する質量部として求める。
本発明においては、
(1)凝集粒子量がシード粒子100質量部に対して4質量部以下の場合・・・合格(○)
(2)凝集粒子量がシード粒子100質量部に対して4質量部より多い場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0072】
<シード粒子の微粒子量>
シード粒子の微粒子量を、シード粒子25gを計量し、JIS Z 8801篩網を順番に並べ、サンプルを入れ、篩網を篩網振騰機にセットし、8分間振騰させ、篩網の目開きで0.25mm以下のシード粒子の質量を計量し、シード粒子100質量部に対する質量部として求める。
本発明においては、
(1)微粒子量がシード粒子100質量部に対して1質量部以下の場合・・・合格(○)
(2)微粒子量がシード粒子100質量部に対して1質量部より多い場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0073】
<複合樹脂粒子の凝集粒子量>
複合樹脂粒子の凝集粒子量を、複合樹脂粒子1gから2個以上の複合樹脂粒子が付着した重合した凝集粒子を取り出し凝集粒子の重量を計量し、複合樹脂粒子100質量部に対する質量部として求める。
本発明においては、
(1)凝集粒子量が複合樹脂粒子100質量部に対して5質量部以下の場合・・・合格(○)
(2)凝集粒子量が複合樹脂粒子100質量部に対して5質量部より多い場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0074】
<複合樹脂粒子の微粒子量>
複合樹脂粒子の微粒子量を、複合樹脂粒子25gを計量し、JIS Z 8801篩網を順番に並べ、サンプルを入れ、篩網を篩網振騰機にセットし、8分間振騰させ、篩網の目開きで0.5mm以下の複合樹脂粒子の質量を計量し、複合樹脂粒子100質量部に対する質量部として求める。
本発明においては、
(1)微粒子量が複合樹脂粒子100質量部に対して1質量部以下の場合・・・合格(○)
(2)微粒子量が複合樹脂粒子100質量部に対して1質量部より多い場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0075】
<発泡性粒子の発泡剤含有量>
発泡性粒子を5〜20mg精秤し、測定試料とする。この測定試料を180〜200℃に保持された熱分解炉(島津製作所社製:PYR−1A)にセットし、測定試料を密閉後、120秒間に亘って加熱して発泡剤成分を放出させる。この放出された発泡剤成分をガスクロマトグラフ(島津製作所社製:GC−14B、検出器:FID)を用いて下記条件にて発泡剤成分のチャートを得る。予め測定しておいた発泡剤成分の検量線に基づいて、得られたチャートから発泡性粒子中の発泡剤含有量(質量部)を算出する。
ガスクロマトグラフの測定条件
カラム:信和化工社製「Shimalite 60/80 NAW」(φ3mm×3m)カラム温度:70℃
検出器温度:110℃
注入口温度:110℃
キャリアーガス:窒素
キャリアーガス流量:60mL/分
【0076】
<予備発泡粒子の嵩倍数>
予め水を使用して内容積AmLを実測した約5000mLのポリ容器を準備する。小数以下2位まで秤量できる電子天秤にてポリ容器を載せてゼロ点補正する。ポリ容器に予備発泡粒子を充填し丸棒等で擦切る。発泡粒子を充填したポリ容器の底から丸棒等で20秒振動させる。振動により沈んだポリ容器の上部空間に予備発泡粒子を充填し、再度擦切る。再度、電子天秤にポリ容器を載せて発泡粒子の重量Bを測定する。内容積AmLと重量Bgとから次式により倍数を求める。
倍数(倍)=AmL/Bg
【0077】
<発泡成形体の倍数>
発泡成形体(成形後、50℃で4時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×35mm)の重量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm3)を求める。尚、倍数は密度の逆数、すなわち式(b)/(a)とする。
【0078】
<発泡成形体の製品効率>
嵩倍数が40±1.2倍の予備発泡粒子を用いて、100×50×20mmの発泡成形体を型内成形する。その発泡成形体を50℃×4時間、乾燥させて、発泡成形体の重量を100個測定する。
製品効率は、下記の式より計算する。
製品効率(%)=(発泡成形体の倍数が40±2.4倍の製品個数)/100個×100
本発明においては、
(1)製品効率が95%以上の場合・・・合格(○)
(2)製品効率が95%未満の場合・・・不合格(×)
と判定する。
【0079】
<総合判定>
総合判定は、シード粒子及び複合樹脂粒子の凝集粒子量、シード粒子及び複合樹脂粒子の微粒子量、発泡成形品の製品効率のそれぞれの測定結果から以下のように行う。
(1)微粒子量がシード粒子100質量部に対して1質量部以下かつ、凝集粒子量がシード粒子100質量部に対して4質量部以下かつ、微粒子量が複合樹脂粒子100質量部に対して1質量部以下かつ、凝集粒子量が複合樹脂粒子100質量部に対して5質量部以下かつ、発泡成形品の製品効率が95%以上の場合・・・合格(○)
(2)微粒子量がシード粒子100質量部に対して1質量部より多いもしくは、凝集粒子量がシード粒子100質量部に対して4質量部より多いもしくは、微粒子量が複合樹脂粒子100質量部に対して1質量部より多いもしくは、凝集粒子量が複合樹脂粒子100質量部に対して5質量部より多いもしくは、発泡成形品の製品効率が95%未満の場合・・・不合格(×)
【0080】
実施例1
ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、製品名「F−744NP」、融点:140℃、数平均分子量:69×103、プロピレン単位:94質量%)を押出機(TUNG TAI MACHINE WORKS社製、製品名「SEG−09030」に供給して、ダイ温度:320℃、水流温度:40℃、押出孔1つ当たりの押出速度:5kg/mm2・時で溶融混練して水中カットにより造粒ペレット化して、ポリプロピレン系樹脂粒子(シード粒子)を得た。
【0081】
次に、攪拌機付100Lオートクレーブに、シード粒子16kgを入れ、水性媒体として純水40kg、分散剤としてピロリン酸マグネシウム0.4kg、分散剤と併用する界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ10gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
この懸濁液中に、重合開始剤であるジクミルパーオキサイド14gを溶解させたスチレン単量体6.8kgを30分で滴下した。滴下後30分保持し、シード粒子にスチレン単量体を吸収させた。
反応系の温度をポリプロピレン系樹脂の融点よりも5℃低い135℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をシード粒子中で重合(第1重合段階)させて第1の粒子を得た。
【0082】
第1重合段階の反応液をポリプロピレン系樹脂の融点より15℃低い125℃にして、この懸濁液中に、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ60gを加えた。この後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製)72gを溶解したスチレン単量体17.2kgを4.25時間かけて滴下し、第1の粒子に吸収させながら重合を行った。そして、この滴下終了後、125℃で1時間保持した後に140℃に昇温し、3時間保持して重合を完結し(第2重合段階)、複合樹脂粒子を得た。
【0083】
次に、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を100Lオートクレーブから取り出し、複合樹脂粒子の凝集粒子量及び微粒子量を測定した。
複合樹脂粒子15kgを内容積50Lの耐圧回転混合機に投入し、回転させ、発泡剤としてブタン2.4kgを耐圧回転混合機に注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。
その後、常温まで冷却して50L耐圧回転混合機から取り出し、発泡性粒子を得た。
次に、得られた発泡性粒子を嵩倍数40±1.2倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。
【0084】
次に、得られた予備発泡粒子を24時間、常温、常圧下で放置した後、100mm×50mm×20mmの大きさのキャビティを有する成形型の該キャビティ内に充填した。充填後、0.25MPaの水蒸気で40秒間加熱し成形を行い、発泡成形体の最高面圧がゲージ圧力0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を100個得た(倍数:40±2.4倍)。
得られた結果を表1に示す。
【0085】
実施例2
実施例1より、ダイ温度を320℃から340℃に変更した。また、ファーネスブラック(カーボンブラック)を5質量%含有するポリプロピレン系樹脂粒子を次のようにして作製した。ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、製品名「F−744NP」、融点:140℃、数平均分子量:69×103、プロピレン単位:94質量%)26.7kgと、ファーネスブラック45質量%含有マスターバッチ(大日精化工業社製、製品名「PP−RM10H381」)3.34kgとを混合し、この混合物を押出機に供給してダイ温度:340℃、水流温度:40℃、押出孔1つ当たりの押出速度:6kg/mm2・時で溶融混練して水中カットにより造粒ペレット化して、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
それ以外は、実施例1と同様にした。
【0086】
実施例3
実施例2より、ダイ温度を320℃から310℃に、水流温度を40℃から50℃に変更した。
それ以外は、実施例2と同様にした。
【0087】
実施例4
実施例1より、水流温度を40℃から30℃に変更した。また、ファーネスブラック(カーボンブラック)を5質量%含有するポリプロピレン系樹脂粒子を次のようにして作製した。ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、製品名「F−744NP」、融点:140℃、数平均分子量:69×103、プロピレン単位:94質量%)26.7kgと、ファーネスブラック45質量%含有マスターバッチ(大日精化工業社製、製品名「PP−RM10H381」)3.34kgとを混合し、この混合物を押出機に供給してダイ温度:320℃、水流温度:30℃、押出孔1つ当たりの押出速度:5kg/mm2・時で溶融混練して水中カットにより造粒ペレット化して、カーボンブラック含有ポリプロピレン系樹脂粒子を得た。
【0088】
次に、攪拌機付100Lオートクレーブに、シード粒子12kgを入れ、水性媒体として純水40kg、分散剤としてピロリン酸マグネシウム0.4kg、分散剤と併用する界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ10gを加え、攪拌して水性媒体中に懸濁させ、10分間保持し、その後60℃に昇温して水系懸濁液とした。
この懸濁液中に、重合開始剤であるジクミルパーオキサイド10.2gを溶解させたスチレン単量体5.1kgを30分で滴下した。滴下後30分保持し、ポリプロピレン系樹脂粒子にスチレン単量体を吸収させた。
反応系の温度をポリプロピレン系樹脂粒子の融点よりも5℃低い135℃に昇温して2時間保持し、スチレン単量体をポリプロピレン系樹脂粒子中で重合(第1重合段階)させた。
【0089】
第1重合段階の反応液をポリプロピレン系樹脂粒子の融点より15℃低い125℃にして、この懸濁液中に、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ69gを加えた後、重合開始剤としてジクミルパーオキサイド(日本油脂社製)84gを溶解したスチレン単量体22.9kgを5.75時間かけて滴下し、ポリプロピレン系樹脂粒子に吸収させながら重合を行った。そして、この滴下終了後、125℃で1時間保持した後に140℃に昇温し、3時間保持して重合を完結し(第2重合段階)、複合樹脂粒子を得た。
【0090】
次に、常温まで冷却し、複合樹脂粒子を100Lオートクレーブから取り出し、複合樹脂粒子の凝集粒子量および微粒子量の測定を行った。
取り出し後の複合樹脂粒子15kgを内容積50Lの耐圧回転混合機に投入し、回転させ、発泡剤としてブタン2.4kgを耐圧回転混合機に注入した。注入後、70℃に昇温し、4時間攪拌を続けた。
その後、常温まで冷却して50L耐圧回転混合機から取り出し、発泡性複合樹脂粒子を得た。
次に、得られた発泡性複合樹脂粒子を嵩倍数40±1.2倍に予備発泡させ、予備発泡粒子を得た。
【0091】
次に、得られた予備発泡粒子を24時間、常温、常圧下で放置した後、100mm×50mm×20mmの大きさのキャビティを有する成形型の該キャビティ内に充填し、0.25MPaの水蒸気で40秒間導入して加熱し成形を行い、発泡成形体の最高面圧がゲージ圧力0.001MPaに低下するまで冷却して、発泡成形体を100個得た(倍数:40±2.4倍)。
【0092】
比較例1
ダイ温度を310℃に、水流温度を80℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にした。凝集粒子が多かったため、微粒子については評価を中止した。
比較例2
ダイ温度を280℃に、水流温度を40℃に変更したこと以外は、実施例1と同様にした。この条件では、所望のポリプロピレン系樹脂が得られなかった。
表1において、実施例及び比較例の原料種、評価結果を詳説する。
【0093】
【表1】
【0094】
表1より、実施例については凝集粒子量、微粒子量及び製品効率が良好な結果を示した。比較例についてはこれらが良好な結果を示さない場合があった。
このことは、本発明の発泡成形体は微粒子と凝集粒子の含有量の少ない複合樹脂粒子から得られているため、その表面が美麗である。このため、本発明の発泡成形体は、包装用緩衝材、建築用部材、自動車部材等として幅広く使用でき、特にバンパー用芯材、嵩上げ材、ティビアパッド及びツールボックスのような自動車分野での構造部材として使用できることが分かる。