(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ストッパ機構は、一端が前記第1の主桁に接続されて他端が前記第2の主桁に前記所定距離の間隙を空けて対向する第2のリブ部材を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鋼製セグメント。
前記リブ構造部は、一端が前記第1の主桁に接続されて他端が前記第2の主桁に間隙を空けて対向する第3のリブ部材と、一端が前記第2の主桁に接続されて他端が前記第1の主桁に間隙を空けて対向する第4のリブ部材と、前記第3及び第4のリブ部材を互いに締結固定する締結部材と、を備えることを特徴とする請求項1記載の鋼製セグメント。
前記スキンプレートは、トンネル軸方向に直列に配置される複数のスキンプレート部材により構成され、隣接するスキンプレート部材間に間隙を有することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載の鋼製セグメント。
前記継手板は、トンネル軸方向に直列に配置される複数の継手板部材により構成され、隣接する継手板部材間に間隙を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の鋼製セグメント。
【背景技術】
【0002】
上下水道、共同溝、道路、鉄道等の管路として用いられるシールドトンネルは、シールド工法により形成される。
シールド工法では、例えば、地山に発進立坑と到達立坑とを構築し、発進立坑から到達立坑へ向けてシールド掘進機で地山を掘削しながら、シールド掘進機の後部で次々にセグメントを組み立てて、推進方向に連結することでシールドトンネルを形成する。この工法では、シールド掘進機は、その後方の既設セグメントをジャッキで後方へ押圧し、その反力として発生する推力によって、地山を掘削しながら前進する。
【0003】
また、シールドトンネルでは、地震や地盤の不等沈下等による変位や応力を吸収するために、その途中部に可撓セグメントが設置され得る。この可撓セグメントの一例としては、特許文献1に記載の可撓セグメントを挙げることができる。
特許文献1に記載の可撓セグメントは、一対の環状体と一次止水部材と二次止水ゴムとを備えている。環状体は、円弧状の板状部材である主桁と、主桁に接続されて可撓セグメントの外周面をなすスキンプレートと、により構成されている。一対の環状体は、互いに所定間隔離して対向させた状態で配置されている。一次止水部材は、一対の環状体における一対のスキンプレート間に介装されている。二次止水ゴムは可撓性を有し、一対のスキンプレート間に張設されている。
【0004】
また、シールドトンネルでは、地震等による変位や応力を吸収するために、その途中部に、特許文献2に記載の鋼製セグメントが設置され得る。
特許文献2に記載の鋼製セグメントは、トンネル軸方向に互いに離間して平行に配置される一対の主桁と、トンネル周方向に互いに離間して配置されて一対の主桁の端部同士を連結する一対の継手板と、一対の主桁及び一対の継手板の地山側を塞ぐように配置されるスキンプレートと、一対の継手板間にて一対の主桁同士を連結する縦リブと、を備えている。また、主桁を除く、縦リブ、継手板、及びスキンプレートは、それぞれ、低降伏点鋼又は極低降伏点鋼で構成されている。そして、例えば地震発生時に、鋼製セグメントに対して、それを変形させるような応力が作用すると、縦リブ、継手板、及びスキンプレートが降伏し、塑性変形することで、鋼製セグメント全体で応力を吸収する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態における鋼製セグメントの概略構成を示す図である。
図3、
図4、
図5は、本実施形態における鋼製セグメントを構成する継手板、縦リブ、ストッパ機構の概略構成を示す図である。
【0014】
図示の鋼製セグメント1は、シールド工法によって形成されるシールドトンネル(図示せず)に設置されるものである。
シールド工法では、シールド掘進機(図示せず)の掘進に伴って、円弧状のセグメント(図示せず)をトンネル周方向及びトンネル軸方向に相互に連結することにより、筒状のシールドトンネルを形成する。このシールドトンネルを構成するセグメントは、主にコンクリートからなるRCセグメント、主に鋼材からなる鋼製セグメント、主にコンクリートと鋼材とからなる合成セグメントであり得る。
【0015】
このシールドトンネルの圧縮力集中箇所に上述のRCセグメント等を設置すると、当該セグメントの変形時にそのコンクリートが脆性破壊を起こす可能性があり、ひいてはトンネルが崩壊する危険性がある。このような破壊を抑制するために、圧縮力集中箇所では、上述のRCセグメント等の代わりとして、図示の鋼製セグメント1が設置される。詳しくは、圧縮力集中箇所に、鋼製セグメント1をトンネル周方向に相互に連結させることにより、耐震用の鋼製セグメントリングが形成される。ここで、圧縮力集中箇所とは、例えば、地震発生時の地盤の応答変位が比較的大きな箇所、あるいは、セグメント構造の変化箇所(例えば、主にコンクリートからなるRCセグメントリングと、主に鋼材からなる鋼製セグメントリングとの接続箇所等の、剛性の差が比較的大きな箇所、又は、桁高の差が比較的大きな箇所)である。
【0016】
図1及び
図2に示すように、鋼製セグメント1は、一対の主桁2a,2bと、一対の継手板3,3と、スキンプレート4と、複数(図では12本)の縦リブ5と、複数(図では6つ)のストッパ機構6と、を備える。尚、縦リブ5の本数及びストッパ機構6の個数はこれに限らない。
【0017】
主桁2a,2bは、それぞれ、トンネル周方向に延在する円弧状の板状部材であり、鋼材(例えば、SS材、SM材等の圧延鋼材)により構成される。主桁2a,2bは、トンネル軸方向に互いに離間して平行に配置されている。ここで、切羽側の主桁2aが、本発明における第1の主桁に対応する一方、坑口側の主桁2bが、本発明における第2の主桁に対応する。主桁2a,2bには、それぞれ、トンネル軸方向に貫通する複数の貫通孔(
図4(A)に示す貫通孔21)が形成されている。貫通孔21は、トンネル軸方向に隣接するセグメントリング同士をボルト接合するためのボルト挿入孔である。尚、貫通孔21は、トンネル軸方向で見て、主桁2a,2bのうちストッパ機構6に対してトンネル周方向にずれた位置に形成されている。換言すれば、貫通孔21は、主桁2a,2bのうちストッパ機構6が作用しない箇所(
図4(A)に示す箇所)に形成されているが、ストッパ機構6が作用する箇所(
図5(B)に示す箇所)には形成されていない。
【0018】
図1に戻り、継手板3,3は、トンネル周方向に互いに離間して配置されており、主桁2a,2bの端部同士を連結している。
【0019】
ここで、本実施形態での継手板3の概略構成を、
図3を用いて説明する。
図3(A)は、
図1のC−C矢視図である。
図3(B)は、
図1の部分Dの部分底面図である。
継手板3は、トンネル軸方向に直列に配置される切羽側の継手板部材31及び坑口側の継手板部材32と、これら継手板部材31,32間の間隙に装着される継手連結板33と、に分割されている。継手板部材31,32及び継手連結板33は、鋼材(例えば、SS材、SM材等の圧延鋼材)により構成される。
【0020】
継手板部材31は、その切羽側端部が主桁2aに接続している一方、坑口側端部が、所定距離Lの間隙を空けて、継手板部材32の切羽側端部に対向している。そして、継手板部材32の坑口側端部が、主桁2bに接続している。ここで、所定距離Lとは、例えば、レベル2の地震動に比べて更に大きな地震動の発生時に当該地震動によって鋼製セグメント1のトンネル軸方向長さが短縮される場合の当該短縮の許容範囲を表す境界値(最大値)であり、トンネル軸方向の耐震解析(縦断耐震解析)の結果等に基づいて設定され得る。
【0021】
継手板部材31の坑口側端部と継手板部材32の切羽側端部とは、互いの間隙が鋼製セグメント1の外側から内側に向けて拡張されるように、テーパ状に形成されている。このテーパ状の間隙に、継手連結板33が装着されている。尚、本実施形態では、継手板部材31の坑口側端部と継手板部材32の切羽側端部と間にテーパ状の間隙が形成されているが、当該間隙の形状はこれに限らない。
【0022】
継手連結板33は、その厚さが、継手板部材31,32の厚さに比べて薄い板状部材である。継手連結板33は、鋼製セグメント1の外表面にて、継手板部材31,32と面一になるように、継手板31,32間に介装されている。
継手連結板33は、継手板部材31の坑口側端部と、継手板部材32の切羽側端部とに溶接固定されている。従って、地震等の影響が無い通常時には、継手板3は、溶接固定された継手板部材31,32及び継手連結板33により、主桁2a,2bの端部同士を連結する。
【0023】
継手板3(継手板部材31,32及び継手連結板33)の外表面には、切羽側端部から坑口側端部まで平行に延びる2本の溝部34が凹設されている。この溝部34には止水ゴム(図示せず)が装着される。ここで、継手連結板33は、継手板部材31,32間にて、止水ゴムのいわゆる後ろ支えとして機能している。
継手板部材31,32には、それぞれ、溝部34,34間にてトンネル周方向に貫通する複数(図では4つ)の貫通孔35が形成されている。これら貫通孔35は、トンネル周方向に隣接する鋼製セグメント1同士をボルト接合するためのボルト挿入孔である。
【0024】
図1〜
図3に示すように、スキンプレート4は、主桁2a,2b及び継手板3,3の地山側を塞ぐものであり、トンネル軸方向に直列に配置される切羽側のスキンプレート部材41及び坑口側のスキンプレート部材42と、これらスキンプレート部材41,42間の間隙を地山側で塞ぐように配置されるカバープレート43と、に分割されている。スキンプレート部材41,42及びカバープレート43は、鋼材(例えば、SS材、SM材等の圧延鋼材)により構成される。
【0025】
スキンプレート部材41は、主桁2a及び継手板部材31の地山側を塞ぐように、主桁2a及び継手板部材31に取り付けられている。
同様に、スキンプレート部材42は、主桁2b及び継手板部材32の地山側を塞ぐように、主桁2b及び継手板部材32に取り付けられている。
スキンプレート部材41,42間には、上述の所定距離Lの間隙が空いている。この間隙は、上述の継手板部材31,32間の間隙と連続して、帯状の間隙を構成している。
【0026】
カバープレート43は、その厚さが、スキンプレート部材41,42の厚さに比べて薄い。
カバープレート43は、その切羽側端部がスキンプレート部材41の外表面に止水溶接されている。一方、カバープレート43の坑口側端部は、スキンプレート部材42の外表面に、止水溶接よりも強固に溶接固定されている。このため、カバープレート43とスキンプレート部材41との固定強度に比べて、カバープレート43とスキンプレート部材42との固定強度が高くなっている。
【0027】
このようにして、スキンプレート4は、スキンプレート部材41,42及びカバープレート43により、主桁2a,2b及び継手板3の地山側を塞いでいる。従って、地震等の影響が無い通常時には、スキンプレート4は、地山からの外荷重を支持して、トンネル内部への土砂の流入を防止する。
【0028】
次に、縦リブ5の概略構成を、
図4を用いて説明する。
図4(A)は、
図1のE−E断面図である。
図4(B)は、
図4(A)のF−F断面に対応する部分断面図である。
本実施形態では、12本の縦リブ5が、継手板3,3間にてトンネル周方向に互いに離間して平行に配置されている。ここで、縦リブ5は、本発明における第1のリブ部材及びリブ構造部に対応する。
【0029】
縦リブ5は、
図4(B)に示すように、長辺がトンネル径方向に沿う矩形断面を有するリブウェブ51と、長辺がトンネル周方向に沿う矩形断面を有するリブフランジ52とからなり、縦リブ5全体での断面は、略L字形の非対称形状を有する。換言すれば、縦リブ5全体の断面中心が、リブウェブ51の断面中心よりトンネル周方向にずれている。縦リブ5は、鋼材(例えば、SS材、SM材等の圧延鋼材)により構成されている。
縦リブ5(リブウェブ51及びリブフランジ52)は、その両端が、それぞれ、主桁2a,2bに接続している。
このようにして、縦リブ5は、継手板3,3間にて主桁2a,2b同士を連結している。
また、縦リブ5は、スキンプレート部材41,42に固定され得る。
【0030】
次に、ストッパ機構6の概略構成を、
図5を用いて説明する。
図5(A)は、
図2(A)の部分Gの部分拡大図である。
図5(B)は、
図1のH−H断面図である。
図5(C)は、
図5(B)のK−K断面に対応する部分断面図である。
本実施形態では、6つのストッパ機構6が、平行配置された12本の縦リブ5の間に一つ置きに配置されている。
【0031】
ストッパ機構6は、トンネル周方向に離間して対向配置される一対の軸力伝達部材61,61と、軸力伝達部材61,61の中央部同士を連結するビーム部材62と、軸力伝達部材61,61の坑口側端部同士を連結する端板63と、を備える。
軸力伝達部材61は、本発明における第2のリブ部材に対応するものであり、その切羽側端部が主桁2aに接続する一方、坑口側端部が主桁2bに上述の所定距離Lの間隙を空けて対向する。
【0032】
軸力伝達部材61は、
図5(C)に示すように、長辺がトンネル径方向に沿う矩形断面を有する。軸力伝達部材61は、鋼材(例えば、SS材、SM材等の圧延鋼材)により構成されており、その厚さt1が、縦リブ5のリブウェブ51の厚さt2に比べて同等かそれ以上である(
図5(A)参照)。
端板63は、鋼材(例えば、SS材、SM材等の圧延鋼材)により構成されている。
【0033】
次に、本実施形態の作用の一例について説明する。
レベル2の地震動に比べて更に大きな地震動の発生時に、鋼製セグメント1に作用するトンネル軸方向の圧縮力が所定値以上になると、鋼製セグメント1では、主に縦リブ5の塑性座屈によって当該圧縮力を吸収する。ここで、所定値とは、鋼製セグメント1のトンネル軸方向長さが短縮し得る圧縮力の最小値であり、縦断耐震解析の結果等に基づいて設定され得る。
【0034】
この圧縮力吸収時に、継手板3では、継手板部材31,32と継手連結板33との接続部(溶接箇所の近傍)にて応力集中が発生し、この結果、当該接続部にて破断する。そして、継手板部材31,32からの圧縮力が上記テーパ状の端部を介して継手連結板33に作用して、継手連結板33が、鋼製セグメント1の外側から内側へと押し出される。この後に鋼製セグメント1に作用するトンネル軸方向の圧縮力により、継手板部材31,32間の間隙が所定距離Lより小さくなり、やがて、継手板部材31,32が互いに接触する。このように、継手板3に比較的大きな圧縮荷重が作用する場合には、継手板部材31,32間の間隙が継手板3の変形を誘発することにより、継手板3の変形箇所が、主として継手板部材31,32間に限定されるので、継手板3の大変形を抑制することができる。
【0035】
また、圧縮力吸収時に、スキンプレート4では、スキンプレート部材41とカバープレート43との接続部(止水溶接箇所の近傍)にて応力集中が発生し、この結果、当該接続部にて破断する。そして、鋼製セグメント1に作用するトンネル軸方向の圧縮力により、スキンプレート部材41の外表面上をカバープレート43がスライドしつつ、スキンプレート部材41,42間の間隙が所定距離Lより小さくなり、やがて、スキンプレート部材41,42が互いに接触する。このように、スキンプレート4に比較的大きな圧縮荷重が作用する場合には、スキンプレート部材41とカバープレート43との接続部、及び、スキンプレート部材41,42間の間隙がスキンプレート4の変形を誘発することにより、スキンプレート4の変形箇所が、主としてスキンプレート部材41,42間に限定されるので、スキンプレート4の大変形を抑制することができる。また、スキンプレート部材41,42間の間隙が狭まるに従い、カバープレート43が、当該間隙を覆いつつ、スキンプレート部材41の外表面上をスライドするので、鋼製セグメント1の変形時においても、トンネル内部への土砂の流入を抑制することができる。
【0036】
また、圧縮力吸収時に、縦リブ5は、そのトンネル軸方向長さを不可逆的に短縮させることにより、トンネル軸方向の圧縮力を吸収する。詳しくは、縦リブ5は、主桁2a,2bからの圧縮力により塑性変形して座屈することで(すなわち、塑性座屈することで)トンネル軸方向の圧縮力を吸収し、この際に、縦リブ5のトンネル軸方向長さが不可逆的に短縮される。
【0037】
縦リブ5のトンネル軸方向長さの短縮は、ストッパ機構6によって制限される。
縦リブ5の塑性座屈が進行してストッパ機構6と主桁2bとの間の間隙が無くなると(すなわち、縦リブ5のトンネル軸方向長さの短縮によりストッパ機構6と主桁2bとの間の間隙が無くなると)、ストッパ機構6は、主桁2bに接触しつつ、トンネル軸方向の圧縮力を支持する。このときに、ストッパ機構6は、その軸力伝達部材61及び端板63を介して主桁2bに面接触するので、ストッパ機構6と主桁2bとの接触部での応力集中を抑制することができる。
また、トンネル軸方向で見て、主桁2a,2bのうちストッパ機構6に対してトンネル周方向にずれた位置に貫通孔21が形成されている。これにより、貫通孔21に挿入されたボルト(図示せず)が縦リブ5の座屈時にストッパ機構6に接触することを抑制できるので、当該ボルトがストッパ機構6と主桁2bとの面接触を阻害する可能性を低くすることができる。
【0038】
ここで、縦リブ5の座屈方向について、
図5(A)を用いて説明する。
本発明者は、縦リブ5全体の断面中心を、リブウェブ51の断面中心よりトンネル周方向にずらした場合に、このずらした方向に縦リブ5が座屈しやすいという性質を見出した。この性質に基づいて、本実施形態では、縦リブ5と、それに隣り合うストッパ機構6とに関して、リブフランジ52の断面中心とストッパ機構6との間の距離を、リブウェブ51の断面中心とストッパ機構6との間の距離よりも長くすることによって、縦リブ5全体の断面中心を、ストッパ機構6より離間する側にずらしている。これにより、縦リブ5は、ストッパ機構6に隣り合う側とは反対の側に座屈しやすくなるので、縦リブ5の座屈時における縦リブ5とストッパ機構6との衝突を抑制することができる。
【0039】
本実施形態によれば、継手板3,3間にて主桁2a,2b同士を連結する縦リブ5(リブ構造部を構成する第1のリブ部材)が、そのトンネル軸方向長さを不可逆的に短縮させることにより(具体的には、塑性座屈することにより)、トンネル軸方向の圧縮力を吸収する。これにより、特許文献1に記載の止水ゴム等を用いることなく、比較的簡易な構成で、トンネル軸方向の圧縮力を吸収することができる。
【0040】
また本実施形態によれば、トンネル軸方向の圧縮力が所定値以上である場合に、まず、縦リブ5(リブ構造部を構成する第1のリブ部材)にてそのトンネル軸方向長さを不可逆的に短縮させてトンネル軸方向の圧縮力を吸収し、この後に、ストッパ機構6にてトンネル軸方向の圧縮力を支持する。これにより、縦リブ5での圧縮力吸収時には鋼製セグメント1が変形する一方、ストッパ機構6での圧縮力支持時には鋼製セグメント1の変形が大幅に抑制されるので、鋼製セグメント1の大変形を防ぐことができ、ひいては、シールドトンネルの破壊を抑制することができる。
【0041】
また本実施形態によれば、ストッパ機構6は、一端が主桁2aに接続されて他端が主桁2bに所定距離Lの間隙を空けて対向する軸力伝達部材61(第2のリブ部材)を備える。これにより、比較的簡素にストッパ機構6を構成することができるので、鋼製セグメント1の大変形の抑制を比較的低コストで実現することができる。
【0042】
また本実施形態によれば、スキンプレート4は、トンネル軸方向に直列に配置されるスキンプレート部材41,42により構成され、隣接するスキンプレート部材間に所定距離Lの間隙を有する。これにより、スキンプレート4に比較的大きな圧縮荷重が作用する場合には、スキンプレート部材41,42間の間隙がスキンプレート4の変形を誘発することにより、スキンプレート4の変形箇所が、主としてスキンプレート部材41,42間に限定されるので、スキンプレート4の大変形を抑制することができる。
【0043】
また本実施形態によれば、継手板3は、トンネル軸方向に直列に配置される継手板部材31,32により構成され、隣接する継手板部材間に所定距離Lの間隙を有する。これにより、継手板3に比較的大きな圧縮荷重が作用する場合には、継手板部材31,32間の間隙が継手板3の変形を誘発することにより、継手板3の変形箇所が、主として継手板部材31,32間に限定されるので、継手板3の大変形を抑制することができる。
【0044】
尚、本実施形態では、ストッパ機構6は、その一端が主桁2bに所定距離Lの間隙を空けて対向し、他端が主桁2aに接続されているが、ストッパ機構6の配置はこれに限らず、例えば、ストッパ機構6は、その一端が主桁2aに所定距離Lの間隙を空けて対向し、他端が主桁2bに接続されてもよい。
【0045】
図6は、本発明の第2実施形態における鋼製セグメントの概略構成を示す。
図6(A)は、本実施形態における鋼製セグメントの断面図である。
図6(B)は、
図6(A)のP−P断面図である。
図6(C)は、
図6(A)の部分Qの部分底面図である。
【0046】
図1〜
図5に示した第1実施形態と異なる点について説明する。
本実施形態では、第1実施形態における縦リブ5及びストッパ機構6の代わりとして、複数(図では5つ)の縦リブ構造部7が、継手板3,3間にてトンネル周方向に互いに離間して平行に配置されている。尚、縦リブ構造部7の個数はこれに限らない。ここで、縦リブ構造部7は、本発明におけるリブ構造部に対応する。
【0047】
縦リブ構造部7は、リブ部材71と、リブ部材71の一部を挟むように対向配置される一対のリブ部材72,72と、これらリブ部材をボルト締結する締結部材としてのボルト73及びナット74と、を備える。ここで、リブ部材71,72は、鋼材(例えば、SS材、SM材等の圧延鋼材)により構成されている。
【0048】
リブ部材71は、本発明における第4のリブ部材に対応するものであり、その一端が主桁2bに接続され、他端が主桁2aに上記所定距離Lの間隙を空けて対向している。
リブ部材71には、その切羽側端部から中央部までの範囲内に、トンネル周方向に貫通する複数(図では15個)のボルト挿入孔(図示せず)が形成されている。
【0049】
リブ部材72は、本発明における第3のリブ部材に対応するものであり、その一端が主桁2aに接続され、他端が主桁2bに上記所定距離Lの間隙を空けて対向している。
リブ部材72には、その中央部から坑口側端部までの範囲内に、トンネル周方向に貫通する複数(図では15個)のボルト挿入孔(図示せず)が形成されている。
リブ部材71とリブ部材72,72とは、各々のボルト挿入孔を介して、ボルト73及びナット74によって互いにボルト締結されている。
【0050】
次に、本実施形態の作用の一例について説明する。
レベル2の地震動に比べて更に大きな地震動の発生時に、鋼製セグメント1に作用するトンネル軸方向の圧縮力が所定値以上になると、鋼製セグメント1では、主にボルト73の破壊(破断)によって当該圧縮力を吸収する。
【0051】
この圧縮力吸収時に、縦リブ構造部7では、ボルト73にて応力集中が発生し、この結果、ボルト73が破断する。すなわち、縦リブ構造部7は、主桁2a,2bからの圧縮力によりボルト73が破断することでトンネル軸方向の圧縮力を吸収し、更にこの圧縮力によってリブ部材71がリブ部材72に対して切羽方向にスライドすることにより、縦リブ構造部7のトンネル軸方向長さが不可逆的に短縮される。換言すれば、縦リブ構造部7は、そのボルト73を破断させつつ、縦リブ構造部7のトンネル軸方向長さを不可逆的に短縮させて、トンネル軸方向の圧縮力を吸収する。
【0052】
縦リブ構造部7のトンネル軸方向長さの短縮は、リブ部材71,72によって制限される。
ボルト73が破断してリブ部材71の切羽方向へのスライドが進行し、リブ部材71と主桁2aとの間の間隙、及び、リブ部材72と主桁2bとの間の間隙が無くなると(すなわち、縦リブ構造部7のトンネル軸方向長さの短縮により、リブ部材71と主桁2aとの間の間隙、及び、リブ部材72と主桁2bとの間の間隙が無くなると)、リブ部材71が主桁2aに接触すると共に、リブ部材72が主桁2bに接触して、トンネル軸方向の圧縮力を支持する。すなわち、主桁2a,2bが、本発明におけるストッパ機構として機能して、トンネル軸方向の圧縮力を支持する。
【0053】
特に本実施形態によれば、縦リブ構造部7のトンネル軸方向長さの短縮によって、リブ部材71と主桁2aとの間の間隙、及び、リブ部材72と主桁2bとの間の間隙が無くなると、リブ部材71,72が本発明におけるストッパ機構として機能して、トンネル軸方向の圧縮力を支持するので、本発明におけるリブ構造部としての機能とストッパ機構としての機能とを、比較的簡易な構成の縦リブ構造部7により実現することができる。
【0054】
尚、本実施形態では、リブ部材71の他端が主桁2aに上記所定距離Lの間隙を空けて対向しているが、リブ部材72と主桁2bとの間の間隙が所定距離Lであれば、リブ部材71と主桁2aとの間の間隙は、所定距離Lより長くてもよい。この場合には、縦リブ構造部7のトンネル軸方向長さの短縮によってリブ部材72と主桁2bとの間の間隙が無くなると、リブ部材72が本発明におけるストッパ機構として機能して、主桁2bに接触して、トンネル軸方向の圧縮力を支持することができる。
【0055】
また、本実施形態では、リブ部材72の他端が主桁2bに上記所定距離Lの間隙を空けて対向しているが、リブ部材71と主桁2aとの間の間隙が所定距離Lであれば、リブ部材72と主桁2bとの間の間隙は、所定距離Lより長くてもよい。この場合には、縦リブ構造部7のトンネル軸方向長さの短縮によって、リブ部材71と主桁2aとの間の間隙が無くなると、リブ部材71が本発明におけるストッパ機構として機能して、主桁2aに接触して、トンネル軸方向の圧縮力を支持することができる。尚、この場合には、主桁2aが、本発明における第2の主桁に対応する一方、主桁2bが、本発明における第1の主桁に対応する。また、リブ部材72が、本発明における第4のリブ部材に対応する一方、リブ部材71が、本発明における第3のリブ部材に対応することになるので、リブ部材71が本発明におけるストッパ機構として機能することになる。
【0056】
また、本実施形態では、ボルト73の破断によりトンネル軸方向の圧縮力を吸収しているが、当該圧縮力の吸収手法はこれに限らず、例えば、リブ部材71のボルト挿入孔を、トンネル軸方向に延びる長穴形状で予め形成しておき、ボルト73及びナット74の締め付け力によりリブ部材71,72同士を密着させた上で、当該圧縮力が所定値以上になった場合に、リブ部材71の上記長穴形状のボルト挿入孔内でボルト73をスライドさせつつリブ部材71に対してリブ部材72をスライドさせて互いの接触面で摩擦熱を発生させることにより、当該圧縮力を吸収するようにしてもよい。