(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カソードの中のカソード活性材料の量に対する前記アノードの中のアノード活性材料の量の比は、モル単位で1.5:1未満である、請求項1に記載の電気化学電池。
前記アノード活性表面と異方性力とは、前記異方性力が、充電および放電を通して、該アノード活性表面の表面形態に影響を及ぼし、アノード活性表面積の増大を抑制するように一緒に選択され、該異方性力の非存在下にあるが、それ以外は本質的に同一である条件下においては、該アノード活性表面積は、充電および放電サイクルを通して、大幅に増大させられる、請求項21に記載の方法。
前記電池を代替的に放電および充電することによって、該電池を少なくとも3回サイクルすることをさらに含み、3回目のサイクルの終了時に、該電池は、該電池の初期容量の少なくとも80%を呈する、請求項21に記載の方法。
前記電池を代替的に放電および充電することによって、該電池を少なくとも10回サイクルすることをさらに含み、10回目のサイクルの終了時に、該電池は、該電池の初期容量の少なくとも80%を呈する、請求項21に記載の方法。
前記電池を代替的に放電および充電することによって、該電池を少なくとも25回サイクルすることをさらに含み、25回目のサイクルの終了時に、該電池は、該電池の初期容量の少なくとも80%を呈する、請求項21に記載の方法。
前記異方性力の非存在下での表面積の増加に対して、前記アノードの前記活性表面の表面積の増加を抑制することに有効な程度まで、前記電池の充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、該アノード活性表面に垂直な成分を伴う異方性力を印加することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
前記第1の電気化学電池は、第1の電解質を含み、前記第2の電気化学電池は、第2の電解質を含み、該第1および第2の電解質のうちの少なくとも1つは、非固体電解質を含む、請求項44に記載の電気化学デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、電気化学電池の性能を高める力の印加に関する。本出願で説明されるように電気化学電池の部分に印加される単一または複数の力は、電池の電極表面の不規則性または粗化を低減することができ、性能を向上させる。
【0016】
力は、いくつかの事例において、電気化学電池のアノードの活性表面に垂直な成分を伴う異方性力を含んでもよい。本明細書で説明される実施形態において、電気化学電池(例えば、充電式バッテリ)は、充電時にアノードの表面上の金属(例えば、リチウム金属または以下に説明する他の活性材料)の析出、およびアノード表面上の金属の反応を伴う、充電/放電サイクルを受けてもよく、金属は、放電時に、アノード表面から拡散する。金属がアノード上に析出される一様性は、電池性能に影響を及ぼし得る。例えば、リチウム金属は、アノードから除去される、および/またはその上に再析出する時に、いくつかの場合において、不均一な表面をもたらし得、例えば、再析出時に、不均一に析出して粗面を形成し得る。粗面は、不要な化学反応に利用可能であるリチウム金属の量を増大させ得、それは減少したサイクル寿命および/または不十分な電池性能をもたらし得る。電気化学電池への力の印加は、本発明によれば、そのような挙動を低減すること、ならびにおよび電池のサイクル寿命および/もしくは性能を向上させることが分かっている。
【0017】
本発明は、様々な電気化学デバイスにおける用途を見出すことができるが、そのようなデバイスの一実施例を、例示目的だけのために
図1に提供する。
図1において、電気化学電池の全般的な一実施形態は、カソードと、アノードと、カソードおよびアノードと電気化学的に連絡する電解質層とを含むことができる。いくつかの場合において、電池はまた、格納構造を備えてもよい。構成要素は、いくつかの場合において、電解質が、積層構成でカソードとアノードとの間に配置されるように組み立てられてもよい。
図1は、本発明の電気化学電池を示す。示される実施形態において、電池10は、基板20の実質的に平面の表面上に形成することができる、カソード30を含む。
図1のカソードおよび基板は、平面構成を有するように示されているが、他の実施形態は、以下により詳細に説明するように、非平面構成を含み得る。カソードは、様々なカソード活性材料を含んでもよい。本明細書で使用する場合、「カソード活性材料」という用語は、カソードと関連するあらゆる電気化学的活性種を指す。例えば、カソードは、硫黄含有材料を含んでもよく、硫黄は、カソード活性材料である。カソード活性材料の他の実施例は、以下により十分に説明する。いくつかの実施形態において、カソード30は、少なくとも1つの活性表面(例えば、表面32)を備える。本明細書で使用する場合、「活性表面」という用語は、電解質と物理的接触した状態にあり、そこで電気化学反応が起こり得る、電極の表面を説明するために使用される。電解質40(例えば、多孔質セパレータ材料を含む)は、カソード30に隣接して形成することができる。
【0018】
いくつかの実施形態において、電解質40は、非固体電解質を含んでもよく、多孔質セパレータとともに組み込まれてもよい。本明細書で使用する場合、「非固体」という用語は、静的剪断応力に耐えることができない材料を指すために使用され、非固体は、剪断応力が印加された時に、連続的かつ永続的な歪曲を受ける。非固体の実施例には、例えば、液体、変形可能なゲル等が挙げられる。アノード層50は、電解質40に隣接して形成することができ、また、電極30と電気連絡し得る。随意に、電池はまた、いくつかの実施形態において、格納構造56を含みんでもよい。
【0019】
アノードは、様々なアノード活性材料を含んでもよい。本明細書で使用する場合、「アノード活性材料」という用語は、アノードと関連するあらゆる電気化学的活性種を指す。例えば、アノードは、リチウム含有材料を含んでもよく、リチウムは、アノード活性材料である。アノード活性材料の他の実施例は、以下により十分に説明する。いくつかの実施形態において、アノード50は、少なくとも1つの活性表面(例えば、表面52)を備える。アノード50はまた、電解質40を介してカソード30上に配置される電解質層上に形成されてもよい。当然、構成要素の配向は、変動させることができ、また、例えばアノード層または電解質層が基板上に最初に形成されるように層の配向が変動する、他の実施形態が存在することを理解されたい。随意に、電気活性材料(例えば、電極)を電解質から保護する多層構造等の、付加層(図示せず)が存在してもよく、Affinito他への、2006年4月6日に出願の米国特許出願第11/400,781号、名称「Rechargeable Lithium/Water,Lithium/Air Batteries」でより詳細に説明されており、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。加えて、非平面配設、示されるものとは異なる材料の割合を伴う配設、および他の代替配設は、本発明と関連して有用である。典型的な電気化学電池はまた、当然、電流コレクタ、外部回路、筐体構造等を含む。当業者は、図に示され、本明細書で説明されるように、一般的な配設で利用することができる、多数の配設を十分認識している。
【0020】
図1は、積層した形態で配設された電解電池を示すが、本発明の原理を採用して、あらゆる構成で、あらゆる電気化学電池の配設を構築できることを理解されたい。例えば、
図2は、円筒として配設された電気化学電池の断面図を示す。
図2に示される実施形態において、電池100は、電極130と、電解質140と、電極150とを含む。いくつかの実施形態において、電極130は、アノードを備えてもよく、一方で、電極150は、カソードを備え得るが、他の実施形態では、それらの順序は逆になってもよい。随意に、電池は、コア170を含有してもよく、それは、中実、中空、または単一もしくは複数のチャネルを含有してもよい。電池100はまた、活性表面132および152を含む。随意に、電池はまた、いくつかの実施形態において、格納構造156を含んでもよい。
図2に示されるように、電極130は、コア170上に形成され、電解質140は、電極130上に形成され、電極150は、電解質140上に形成される。しかしながら、いくつかの実施形態において、電極130は、コア170に隣接してもよく、電解質140は、電極130に隣接してもよく、および/または電極150は、電解質140に隣接してもよく、随意に、構成要素間に、材料の1つ以上の介在区間を含む。一組の実施形態において、電極130は、コア170を少なくとも部分的に包囲してもよく、電解質140は、電極130を少なくとも部分的に包囲してもよく、および/または電極150は、電解質140を少なくとも部分的に包囲してもよい。本明細書で使用する場合、第1のエンティティは、第2のエンティティだけを通して第1のエンティティの周囲に閉ループを描くことができる場合に、第2のエンティティによって「少なくとも部分的に包囲され」、第1のエンティティが、第2のエンティティによって必ずしも完全にカプセル化されることを意味しない。
【0021】
図3に示される別の一組の実施形態において、電気化学電池は、折り畳み積層物の形状である。
図3に示される電池200は、アノード230およびカソード250を分離する電解質240を備える。
図3の電気化学電池は、矢印260に平行な3つの折り畳み面を含む、電解質を含む。他の実施形態において、電気化学電池は、矢印260に平行な任意の数の折り畳み面を含む、電解質を含んでもよい。随意に、電池はまた、いくつかの実施形態において、格納構造256を含んでもよい。
図1〜3に示される形状に加えて、本明細書で説明される電気化学電池は、角柱(例えば、三角柱、四角柱等)、「スイスロール」、非平面積層物等を含む、任意の他の形状であり得るが、これに限定されない。付加的な構成は、Affinito他への、2006年4月6日に出願の米国特許出願番号第11/400,025号、名称「Electrode Protection in both Aqueous and Non−Aqueous Electrochemical Cells,including Rechargeable Lithium Batteries」で説明されており、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【0022】
上述のように、いくつかの実施形態において、本発明は、デバイスの性能を高めるように力の印加が使用される、電気化学デバイスに関する。いくつかの実施形態において、力は、アノードの活性表面に垂直な成分を伴う異方性力を含む。平面表面の場合、力は、力が印加される点において、表面に垂直な成分を伴う異方性力を含んでもよい。例えば、
図1を参照すると、力は、矢印60の方向に印加され得る。矢印62は、アノード50の活性表面52に垂直である力の成分を示す。例えば凹状表面または凸状表面といった湾曲表面の場合、力は、力が印加される点で湾曲表面に正接する平面に垂直な成分を伴う異方性力を含み得る。
図2に示される円筒形電池を参照すると、力は、例えば矢印180の方向に、電池の外表面に印加され得る。いくつかの実施形態において、力は、円筒形の電池の内側から、例えば矢印182の方向に印加されてもよい。いくつかの実施形態において、アノードの活性表面に垂直な成分を伴う異方性力は、電気化学電池の充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に印加される。いくつかの実施形態において、力は、ある期間にわたって、または持続時間および/もしくは周波数が変動し得る複数の期間にわたって、連続的に印加されてもよい。異方性力は、いくつかの場合において、1つ以上の所定の場所で印加され得、随意に、アノードの活性表面の上に分配される。いくつかの実施形態において、異方性力は、アノードの活性表面の上に一様に印加される。
【0023】
「異方性力」とは、従来技術においてその通常の意味が与えられ、全方向において等しくない力を意味する。全方向において等しい力とは、例えば、物体の内部のガス圧力等の、流体または材料内の流体または材料の内部圧力である。全方向において等しくない力の例には、重力を介してテーブル上の物体によって印加される、テーブル上の力等の、特定の方向に方向付けられる力が挙げられる。異方性力の別の例には、物体の外辺部の周りに配設されるバンドによって印加される力が挙げられる。例えば、ゴムバンドまたはターンバックルは、それが巻き付けられる物体の外辺部の周りに力を印加することができる。しかしながら、バンドは、バンドと接触しない物体の外面の任意の部分上に、任意の直接力を印加し得ない。加えて、バンドが、第1の軸に沿って、第2の軸よりも大きな程度まで膨張した時に、バンドは、第2の軸に平行に印加される力よりも大きい力を、第1の軸に平行な方向に印加することができる。
【0024】
例えばアノードの活性表面といった表面に「垂直な成分」を伴う力は、当業者によって理解される通常の意味が与えられ、例えば、少なくとも部分的にそれ自体が、表面に実質的に垂直な方向に及ぼす力を含む。例えば、テーブル上に静置した物体を伴い、かつ重力による影響だけを受ける水平テーブルの場合、物体は、テーブルの表面に本質的に完全に垂直な力を及ぼす。物体が、水平テーブル表面を横切って側方に付勢された場合も、物体は、水平表面に完全に垂直ではないが、テーブル表面に垂直な成分を含む力をテーブルに及ぼす。当業者は、特にこの文書の説明の範囲内で適用されるような、これらの用語の他の例を理解することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、異方性力は、電気化学電池の断面を画定する面内の全方向での力の大きさは実質的に等しいが、面外の方向での力の大きさが面内の力の大きさとは実質的に異なるように印加することができる。例えば、
図2を参照すると、円筒形のバンドは、電池の中央軸(点190によって示され、概略断面図の中に、およびそこから外に延在する)に向かって配向された電池に、力(例えば、力180)が印加されるように、電池100の外側周辺に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、電池の中心軸に向かって配向される力の大きさは、面方向から外に印加される力(例えば、中央軸190に平行)の大きさとは異なる(例えば、それよりも大きい)。
【0026】
一組の実施形態において、本発明の電池は、電池の充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、アノードの活性表面に垂直な成分を伴う異方性力を印加するように構築および配設される。当業者は、この意味を理解するであろう。そのような構成において、電池は、電池の組立中もしくはその後に印加される、または、電池自体の1つ以上の部分の膨張および/もしくは収縮の結果として、電池の使用中に印加される「負荷」による力等を印加する、容器の一部として形成されてもよい。
【0027】
印加された力の大きさは、いくつかの実施形態において、電解電池の性能を高めるのに十分大きい。アノード活性表面および異方性力は、いくつかの事例において、異方性力が、充電および放電を通して、アノード活性表面の表面形態に影響を及ぼし、アノード活性表面積の増大を抑制するように、一緒に選択されてもよく、異方性力の非存在下にあるが、それ以外は本質的に同一である条件下で、アノード活性表面積は、充電および放電サイクルを通して、大幅に増大させられる。この文脈の中の「本質的に同一の条件」とは、力の印加および/または大きさ以外の、類似した、または同一である条件を意味する。例えば、他の同一の条件とは、同一であるが、(例えば、ブラケットまたは他の接続によって)対象の電池に異方性力を印加するように構築されていない電池を意味し得る。
【0028】
アノード活性表面および異方性力は、本明細書で説明される結果を達成するように、当業者によって容易に一緒に選択されることができる。例えば、アノード活性表面が比較的に軟質である場合、アノード活性表面に垂直な力の成分は、より低く選択され得る。アノード活性表面がより硬質である場合、活性表面に垂直な力の成分は、より大きくなり得る。当業者は、公知の、もしくは予測可能な特性で、またはそのような表面の硬度または軟度を試験することで、アノード材料、合金、混合物などを容易に選択することができ、また、本明細書で説明されることを達成するよう適切な力を提供するように、電池の構築技術および配設を容易に選択することができる。単純な試験は、例えば、(電池サイクル中の選択された組み合わせの予測のために)電池サイクルを伴わずに、または選択に関連する結果の観察を伴う電池サイクルを伴う、表面に関する力の形態的な影響を判定するように、一連の活性材料を配設し、それぞれが活性表面に垂直に印加される(または、垂直な成分を伴う)力を伴うことによって行うことができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、異方性力が存在しない表面積の増加に対して、アノード活性表面の表面積の増加を抑制するのに有効な程度まで、電池の充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、アノードの活性表面に垂直な成分を伴う異方性力が印加される。アノード活性表面に垂直な異方性力の成分は、例えば、少なくとも約4.9、少なくとも約9.8、少なくとも約24.5、少なくとも約49、少なくとも約98、少なくとも約117.6、または少なくとも約147ニュートン/cm
2の圧力を画定してもよい。いくつかの実施形態において、アノード活性表面に垂直な異方性力の成分は、例えば、約196未満、約147未満、約117.6未満、約98未満、約49未満、約24.5未満、または約9.8ニュートン/cm
2未満の圧力を画定してもよい。いくつかの場合において、アノード活性表面に垂直な異方性力の成分は、約4.9から約147ニュートン/cm
2の間、約49から約117.6ニュートン/cm
2の間、または約68.6から約98ニュートン/cm
2の間の圧力を画定してもよい。力および圧力は、概して、本明細書で、それぞれニュートンおよび単位面積当たりのニュートンの単位で表されるが、力および圧力は、それぞれ重量キログラムおよび単位面積当たりの重量キログラムの単位で表すこともできる。当業者は、重量キログラムに基づく単位を理解するであろうし、また1重量キログラムが約9.8ニュートンに相当することを理解されるであろう。
【0030】
いくつかの場合において、電池に印加される1つ以上の力は、アノードの活性表面に垂直ではない成分を有する。例えば、
図1において、力60は、アノード活性表面52に垂直ではなく、力60は、アノード活性表面52に実質的に平行である成分64を含む。加えて、いくつかの場合において、アノード活性表面52に実質的に平行である力66を電池に印加することができる。一組の実施形態において、アノード活性表面に垂直な方向に印加された全ての異方性力の成分の合計は、アノード活性表面に垂直ではない方向の成分の合計よりも大きい。いくつかの実施形態において、アノード活性表面に垂直な方向に印加された全ての異方性力の成分の合計は、アノード活性表面に平行である方向のあらゆる成分の合計よりも、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約35%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、少なくとも約99.9%大きい。
【0031】
いくつかの実施形態において、カソードおよびアノードは、降伏応力を有し、カソードおよびアノードは、降伏応力を有し、カソードおよびアノードのうちの一方の有効降伏応力は、他方の降伏応力よりも大きいため、アノードの活性表面およびカソードの活性表面のうちの1つの表面に垂直に印加される異方性力は、カソードおよびアノードのうちの1つの表面形態に影響を及ぼさせる。いくつかの実施形態において、アノード活性表面に垂直な異方性力の成分は、アノード材料の降伏応力の約20%から約200%の間、アノード材料の降伏応力の約50%から約120%の間、またはアノード材料の降伏応力の約80%から約100%の間である。
【0032】
本明細書で説明される異方性力は、当技術分野において公知のあらゆる方法を使用して印加されてもよい。いくつかの実施形態において、力は、圧縮ばねを使用して印加され得る。例えば、
図1を参照すると、電解電池10は、矢印62の方向の成分を伴う力を生成するように、表面54と格納構造の隣接する壁との間に位置する1つ以上の圧縮ばねを伴う、密閉した格納構造56の中に位置してもよい。いくつかの実施形態において、力は、格納構造の外側に1つ以上の圧縮ばねを位置させることによって印加されてもよいため、ばねは、格納構造の外表面58と、別の表面(例えば、テーブルトップ、別の格納構造の内表面、隣接する電池等)との間に位置している。力は、とりわけベルビルワッシャ、機械ネジ、空気圧式デバイス、および/または重錘を含む、他の要素(格納構造の内側または外側のいずれか)を使用して印加されてもよいが、これらに限定されない。例えば、一組の実施形態において、1つ以上の電池(例えば、電池の積層物)は、2つの板(例えば、金属板)の間に配設される。デバイス(例えば、機械ネジ、ばね等)は、板を介して電池または積層物の端部に圧力を印加するように用いられてもよい。機械ネジの場合、例えば、電池は、ネジを回転させた時点で板の間で圧縮され得る。別の実施例として、いくつかの実施形態において、1つ以上の楔は、電池の表面(または電池を包囲する格納構造)と、固定表面(例えば、テーブルトップ、別の格納構造の内表面、隣接する電池等)との間を変位させられてもよい。異方性力は、(例えば、機械ネジを回転させることによる)楔への力の印加を通して、電池と隣接する固定表面との間に楔を送り込むことによって印加されてもよい。
【0033】
いくつかの場合において、電池は、それらが格納構造の中に挿入される前に予め圧縮されてもよく、そして、格納構造に挿入されている時点で、それらが膨張して電池への正味の力を生成してもよい。例えば、
図2の円筒形電池は、予め圧縮して、格納構造156内に挿入することができる。格納構造は、次いで、電池の膨張時に、円筒形電池の外表面に力を提供することができる。このような配向は、例えば、円筒形電池が、比較的に高い圧力の変動に耐えることができる場合に有利であり得る。そのような実施形態において、格納構造は、比較的に高い強度(例えば、少なくとも約100MPa、少なくとも約200MPa、少なくとも約500MPa、または少なくとも約1GPa)を備えてもよい。加えて、格納構造は、比較的に高い弾性係数(例えば、少なくとも約10GPa、少なくとも約25GPa、少なくとも約50GPa、または少なくとも約100GPa)を備えてもよい。格納構造は、例えば、アルミニウム、チタニウム、または任意の他の好適な材料を含んでもよい。
【0034】
いくつかの場合において、本明細書で説明される力のうちのいずれかは、積層物の中の複数の電気化学電池に印加されてもよい。本明細書で使用する場合、電気化学電池の「積層物」は、複数の電池が、例えば相互の上に配置される、本質的に電池繰り返しパターンで配設される構成を指すために使用される。いくつかの場合において、電池は、例えば、ある電池のある特定の構成要素(例えば、アノード)が、他の全ての電池の同じ構成要素の同じ表面に実質的に平行である場合といった、積層物の各電池のうちの少なくとも1つの表面が、積層物の中の他の全ての電池の少なくとも1つの表面に実質的に平行であるように配置されてもよい。例えば、
図8は、電気化学電池10の積層物の概略図を含む。いくつかの実施形態において、電池は、直接的に相互に接触した状態であり得、一方で、いくつかの事例において、1つ以上のスペーサが、積層物の中の電池の間に配置されてもよい。電気化学電池の積層物は、任意の数の電池(例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも25個、少なくとも100個、またはそれ以上の電池)を備えてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、収縮要素は、電池または電池の積層物の少なくとも一部分を包囲してもよい。収縮要素は、いくつかの場合において、少なくとも約4.9、少なくとも約9.8、少なくとも約24.5、少なくとも約49、少なくとも約98、少なくとも約117.6、少なくとも約147、約196未満、約147未満、約117.6未満、約98未満、約49未満、約24.5未満、約9.8未満、約4.9から約147の間、約49から約117.6の間、または約68.6から98ニュートン/cm
2の間の圧力を画定する、電池または電池の積層物内の少なくとも1つのアノード活性表面に垂直な成分を伴う異方性力を印加するように構成および配設されてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、収縮要素は、バンド(例えば、ゴムバンド、ターンバックルバンド等)を備えてもよい。収縮要素を採用した例示的な一実施形態を
図8に示す。この一組の実施形態において、収縮要素320は、電池10の積層物を包囲する。いくつかの実施形態において、バンドは、例えば接着剤、留め金、締め具、ターンバックル、または任意の他の好適な方法によって、電池または電池の積層物に固定することができる。いくつかの場合において、バンドは、ターンバックルバンド(例えば、ケブラーターンバックルバンド)を備え、バンドを締め付けてターンバックルを固定することによって、力が印加される。いくつかの事例において、バンドは、連続的な弾性バンドである。いくつかの場合において、力は、弾性バンドが延伸されて電池の周囲に配置された後に、バンドの弾性収縮を介して印加されてもよい。特定の一実施例として、電池は、電池または電池の積層物に外嵌するように、バンドをそのマルテンサイト変態温度より低く冷却し、そして、バンドを(例えば、延伸を介して)塑性的に変形させることによって取り付けることができる。動作温度に戻した時点で、バンドは、次いで、予め形成した形状に収縮することができ、それによって、バンドは、力を印加することができる。
【0037】
収縮要素は、所望の力を生成するために必要な弾性量を伴う、あらゆる材料を含んでもよい。弾性材料の中実バンドは、単一または複数の電池の外表面に印加されている時点で所要の外圧を提供し、そして緩和するようにサイズ決定することができる。いくつかの場合において、収縮要素は、ポリマー材料を含んでもよい。収縮要素は、例えば、とりわけDesmopan(登録商標)392(ポリエステルウレタン(Bayer MaterialScience、Leverkusen、Germanyによって製造される)、Estane(登録商標)(Lubrizol Corporation、Wickliffe、Ohioによって製造される工学ポリマー)、Kevlar(登録商標)(DuPont、Wilmington、Delawareによって製造される合成繊維)を含んでもよい。いくつかの実施形態において、収縮要素は、形状記憶合金(例えば、ニチノール(NiTi))を含んでもよく、材料が露出される温度の変動時に膨張および収縮し得る。いくつかの場合において、収縮要素は、例えばポリエステルフィルムおよび/または織物等の、収縮包装用チューブを備えることができる。
【0038】
いくつかの実施形態において、電池または電池の積層物に力を印加するために使用される要素(例えば、収縮要素、膨張要素等)の質量密度は、比較的に低い。比較的に低い質量密度を伴う要素を使用することによって、電池または電池の積層物の比エネルギーは、比較的に高いままになり得る。いくつかの実施形態において、電池または電池の積層物に力を印加するために使用される物品の質量密度は、約10g/cm
3未満、約5g/cm
3未満、約3g/cm
3未満、約1g/cm
3未満、約0.5g/cm
3未満、約0.1g/cm
3未満、約0.1g/cm
3から約10g/cm
3の間、約0.1g/cm
3から約5g/cm
3の間、約0.1g/cm
3から約3g/cm
3の間である。
【0039】
いくつかの実施形態において、電池と別の電池との間、または電池と収縮要素との間に、圧力分配構成要素が含まれてもよい。このような圧力分配構成要素は、電池または電池の積層物の全体を通して一様な力を印加できるようにすることができる。いくつかの場合において、圧力分配構成要素は、端部キャップを備える。端部キャップの形状は、バンドによって印加される直線力を、例えばアノードの活性領域全体の一様な力に変換するように選択することができる。例えば、
図8において、随意のキャップ310は、積層物およびバンドの端部の間に配置されてもよい。
図8に示されるキャップは、丸みを帯びた端部を含み、これは、例えば、角部および縁部での積層物からのバンドの分離を低減し、かつ力の分配の一様性を高めるために使用されてもよい。キャップは、例えば、金属(例えば、アルミニウム)、炭素繊維、プラスチック等を含む、あらゆる好適な材料を含むことができる。いくつかの実施形態において、端部キャップは、複雑な形状に形成または機械加工することが比較的に容易である。
【0040】
いくつかの実施形態において、端部キャップの質量密度は、比較的に低くてもよい。例えば、端部キャップは、約5g/cm
3未満、約3g/cm
3未満、約1g/cm
3未満、約0.5g/cm
3未満、約0.1g/cm
3未満、約0.1g/cm
3から約10g/cm
3の間、約0.1g/cm
3から約5g/cm
3の間、約0.1g/cm
3から約3g/cm
3の間の質量密度を有してもよい。加えて、端部キャップは、あらゆる好適な硬度を備えてもよい。例えば、端部キャップの硬度は、いくつかの実施形態において、50GPaより高くてもよい。
【0041】
圧力分配構成要素の別の実施例は、2つの電池の間に配置される、スペーサを備える。電池間のスペーサは、例えば個々の電池の幾何学的な製造のばらつきによって生じ得る、応力集中を低減するように機能することができる。例えば、電池の平坦さは、電池によって変動し得る。別の実施例として、1つ以上の電池の対向する側部は、いくつかの場合において、完全に平行であり得ない。
図8に示される一組の実施形態では、電池10の間に随意のスペーサ330を挿入した。スペーサは、例えば、金属(例えば、アルミニウム)、金属発泡体、炭素複合材、炭素発泡体、プラスチック等を含む、あらゆる好適な材料を含むことができる。いくつかの実施形態において、スペーサは、複雑な形状に形成または機械加工することが比較的に容易である。
【0042】
スペーサはまた、あらゆる好適な厚さを有することができる。いくつかの場合において、スペーサは、約10mm未満、約5mm未満、約1mm未満、約500ミクロン未満、または約250ミクロン未満の平均厚さを有してもよい。いくつかの実施形態において、スペーサは、約100ミクロンから約10mmの間、約100ミクロンから約1mmの間、約250ミクロンから約10mmの間、約250ミクロンから約1mmの間、または約500ミクロンから約2mmの間とすることができる。
【0043】
スペーサの対向面は、いくつかの実施形態において、高度に平行であってもよい。例えば、いくつかの実施形態において、第1の電池と接触するスペーサの第1の表面と、第2の電池と接触するスペーサの第2の表面との間の距離の変動は、第1の電池の質量中心から第2の電池の質量中心に描画されるベクトル(例えば、
図8の線340)に実質的に平行に測定した時に、スペーサ全体の幅は、約1mm未満、約500ミクロン未満、約100ミクロン未満、約50ミクロン未満、約25ミクロン未満、約10ミクロン未満、約1ミクロン未満である。
【0044】
電池の積層物の質量密度は、いくつかの事例において、比較的に低くなる可能性がある。例えば、スペーサは、約5g/cm
3未満、約2g/cm
3未満、約1g/cm
3、約0.5g/cm
3未満、約0.1g/cm
3未満、約0.1g/cm
3から約10g/cm
3の間、約0.1g/cm
3から約5g/cm
3の間、または約0.1g/cm
3から約2g/cm
3の間の質量密度を有してもよい。加えて、端部キャップは、比較的に高い硬度を備えてもよい。例えば、スペーサの硬度は、いくつかの実施形態において、10GPaより高くてもよい。
【0045】
当業者は、電池または電池の積層物とともに使用する端部キャップまたはスペーサの適切なサイズ、形状、および構築材料を決定するように、実験を行うことができる。例えば、端部キャップまたはスペーサ材料が十分に固い場合、形状の単純な幾何学的最適化は、それらの特性を判定するのに十分なものとなり得る。他の場合において、端部キャップおよび/またはスペーサがそれらの最終的な変形形状に平衡化された後に、圧力分布が実質的に一様であることを確実にするように、より複雑な応力/歪み計算が必要になり得る。
【0046】
収縮要素の使用は、平型電池の幾何学形状に限定されない。いくつかの事例において、収縮要素は、円筒形電気化学電池または角柱状電気化学電池(例えば、三角柱、四角柱等)に力を印加するように使用されてもよい。例えば、
図2の一組の実施形態において、随意の収縮要素181は、電気化学電池の外側の少なくとも一部分を包囲するように、電池の周囲に配置することができる。収縮要素は、電気化学電池の最外表面(例えば、
図2の表面182または表面184)に力を印加するように使用されてもよい。
【0047】
上記に説明された収縮要素のうちのいずれかは、円筒形電池、角柱状電池、または他の当該の電池の中の収縮要素として使用されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、同じまたは異なる巻回材料の1回以上の巻付けは、電池の外表面に配置に配置されてもよい。いくつかの実施形態において、巻回材料は、比較的に高い強度を備える。巻回材料はまた、比較的に高い弾性係数を備えてもよい。いくつかの場合において、ポリエステルフィルムおよび織物等の収縮包装用チューブである。いくつかの場合において、収縮要素は、電池の外面で緩和した後に所要の外圧を提供するように、適切にサイズ決定された弾性材料を備える。
【0048】
いくつかの実施形態において、電池は、当該電池の内部容積(例えば、
図2の中空コア170)内に、膨張要素(例えば、膨張マンドレル)を備えてもよい。膨張要素は、電気化学電池の内部容積から外向きに、例えば
図2の矢印182の方向に放射状に広がる力を印加するように構築および配設することができる。いくつかの実施形態において、膨張要素および収縮要素は、電気化学電池の境界内の力が、電気化学電池の境界内のメジアンの力の約30%未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満だけ外れるように構成および配設することができる。いくつかの実施形態において、このような力の分配は、例えば、実質的に等しい単位面積当たりの内力および外力が電池に印加されるように、収縮および膨張要素を選択することによって達成することができる。
【0049】
いくつかの実施形態において、内部圧力の印加ではなく、外部圧力の印加は、許容可能な境界内にある放射状の圧力分配を達成するように、相補的な(complimentary)巻回機構と組み合わせることができる。例えば、(ニップローラを使用した)適切な表面ニップ巻回は、電池の内径での107.9ニュートン/cm
2から外径での0ニュートン/cm
2まで変動する、放射状の圧力分配を生成することができる。収縮要素は、内径で0ニュートン/cm
2および外径で78.5ニュートン/cm
2の力を生成するように構築および配設されてもよい。これらの2つの分配の重ね合せは、±19.6ニュートン/cm
2のばらつきを伴う、98ニュートン/cm
2の平均圧力印加をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、圧力分配要素(例えば、端部キャップ、スペーサ等)、および電池または電池の積層物に力を印加するために使用される要素(例えば、バンド、マンドレル等)の総容積は、比較的に低くてもよい。低容積を採用することによって、組立体のエネルギー密度は、比較的に高く保たれ得る。いくつかの場合において、圧力分配要素、および電池または電池の積層物に力を印加するために使用される要素の容積の合計は、電池または電池の積層物の容積の約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.1%未満、約0.1%から約10%の間、約0.1%から約5%の間、約0.1%から約2%の間、または約0.1%から約1%の間を備える。
【0050】
いくつかの場合において、本明細書で説明される電池は、充電および放電中にサイズが変化し(例えば、膨潤し)てもよい。異方性力を印加する方法を選択する時には、いくつかの実施形態において、充電および放電中に電池の形状および/またはサイズが変化するにつれて、比較的に一定の力を生成する方法を選択することが望ましくなり得る。いくつかの事例において、この選択は、低効率のばね乗数を伴う系(例えば「軟質」ばねを選択することに類似してもよい。例えば、異方性力を印加するために圧縮ばねを使用する時に、比較的に低いばね定数を伴うばねは、電池のサイクル中に、比較的に高いばね定数を伴うばねによって生成される力よりも一定である、異方性力を生成し得る。弾性バンドが使用される事例において、比較的に高い弾性を伴うバンドは、電池のサイクル中に、比較的に低い弾性を伴うバンドによって生成される力よりも一定である、異方性力を生成し得る。機械ネジを使用して力が印加されるいくつかの実施形態では、軟質ネジ(例えば、黄銅、ポリマー等)の使用が有利になり得る。いくつかの応用において、例えば、機械ネジは、所望の圧縮範囲を対象とするが、ネジ自体は軟質であってもよいように選択されてもよい。
【0051】
いくつかの実施形態において、本発明の電解電池は、格納構造の中に配置され、アノードの活性表面に垂直な成分を伴う異方性力の少なくとも一部分は、格納構造に対する電解電池の膨張により生成される。いくつかの場合において、格納構造は、電解電池の展開中に変形せず、電池に印加される力をもたらすように、十分に剛体である。電解電池は、様々な現象の結果として膨潤させてもよい。例えば、いくつかの場合において、電解電池は、熱膨張を受けてもよい。いくつかの実施形態において、電解電池は、電池の充電および/または放電により膨潤されてもよい。例えば、いくつかの場合において、部分的に放電した電池は、格納構造の中に配置されてもよい。部分的に放電された電池を充電する時点で、電池を膨潤させてもよい。この膨張は、格納構造の寸法によって制限されてもよく、異方性力の印加をもたらす。
【0052】
いくつかの場合において、電池は、電解電池の多孔質構成要素の中への液体の吸着により膨潤されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、乾燥多孔質電解電池は、格納構造内に配置されてもよい。乾燥多孔質電解電池は、次いで(例えば、液体電解質に)浸漬されてもよい。いくつかの場合において、電解質の特性(例えば、表面張力)および電解電池の特性(例えば、多孔質空洞のサイズ)は、電解セルが電解質によって湿潤された時に、望ましいレベルの毛細管圧力が生成されるように選択されてもよい。湿潤されると、電極積層物は、膨潤し、したがって、異方性力を生成する。平衡時に、電解電池上の格納構造によって及ぼされる異方性力は、毛細管圧力から生じる力に等しい。
【0053】
本明細書で説明される格納構造は、円筒、角柱(例えば、三角柱、四角柱等)、立方体、または任意の他の形状を含む、様々な形状を備え得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、格納構造の形状は、格納構造の壁が電解電池の外面に平行であるように選択される。例えば、いくつかの場合において、格納構造は、例えば円筒形の電解電池を包囲して含有するように使用することができる、円筒を備え得る。他の事例において、格納構造は、類似した形状の角柱状電解電池を包囲する、角柱を備えてもよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書で説明される力の印加が、力が印加されない本質的に同一の電池で使用される量に対する、電気化学電池内のアノード活性材料(例えば、リチウム)および/または電極のより少ない量の使用を可能にし得る、という発見に関する。本明細書で説明される印加された力が不足している電池において、アノード活性材料(例えば、リチウム金属)は、いくつかの場合において、電池の充電−放電サイクル中に、アノード上に不均一に再析出され得、粗面を形成する。いくつかの場合において、これは、アノード金属が関与する1つ以上の不要な反応の割合の増加を導き得る。これらの不要な反応は、多数の充電−放電サイクルの後に、安定し得、および/または自己抑制し始め得るため、実質的にいかなる付加的なアノード活性材料も枯渇した状態にならず、かつ電池が、残りの活性材料で機能し得る。本明細書で説明される印加された力が不足している電池について、この「安定化」は、しばしば、相当量のアノード活性材料が消費されて、電池性能が低下した後にだけしか到達しない。したがって、本明細書で説明される力が印加されなかったいくつかの場合において、電池性能を保つために、活性材料の消費中の材料の損失に適応するように、しばしば、比較的に大量のアノード活性材料および/または電解質が、電池内に組み込まれてきた。
【0055】
したがって、本明細書で説明される力の印加は、活性材料の枯渇を低減および/または防止し得るため、大量のアノード活性材料および/または電解質の電気化学電池内への包含が不要になり得る。例えば、力は、電池の使用前、または電池の寿命の初期段階(例えば、5回未満の充電−放電サイクル)に印加されてもよいため、電池の充電または放電時に、ほとんど、または実質的に全く活性材料の枯渇が生じ得ない。電池の充電−放電中の活性材料の損失に適応する必要性を低減および/または排除することによって、本明細書で説明されるように、比較的に少量のアノード活性材料が、電池およびデバイスを製造するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本発明は、その寿命の中で5回未満充電および放電された電気化学電池を備えるデバイスに関し、電池は、アノードと、カソードと、電解質とを備え、アノードは、1回の電池の完全放電サイクル中にイオン化することができるアノード活性材料の5倍を超えない材料を含む。いくつかの場合において、アノードは、ある電池の完全放電サイクル中にイオン化することができる、4、3、2、または1.5倍を超えないリチウムの量を備える。
【0056】
いくつかの場合において、本発明は、電気化学電池を備えるデバイスに関し、電池は、アノード活性材料と、カソード活性材料と、電解質とを含み、カソードの中のカソード活性材料の量に対する、アノードの中のアノード活性材料の量の比は、モル単位で、約5:1未満、約3:1未満、約2:1未満、または1.5:1未満である。例えば、電池は、アノード活性材料としてのリチウムと、カソード活性材料としての硫黄とを含んでもよく、モル比Li:Sは、約5:1未満である。いくつかの場合において、硫黄に対するリチウムのモル比Li:Sは、約3:1未満、約2:1未満、または約1.5:1未満である。いくつかの実施形態において、カソード活性材料に対するアノード活性材料(例えば、リチウム)の重量による比は、2:1未満、約1.5:1未満、約1.25:1未満、または約1.1:1未満であり得る。例えば、電池は、アノード活性材料としてのリチウムと、カソード活性材料としての硫黄とを含んでもよく、重量による比Li:Sは、約2:1未満、約1.5:1未満、約1.25:1未満、または約1.1:1未満であってもよい。
【0057】
より小量のアノード活性材料および/または電解質材料の使用は、有利に、電気化学電池またはその一部分が、減少した厚さを有することができるようにする。いくつかの実施形態において、アノード層および電解質層は、互いに500ミクロンの最大厚さを有する。いくつかの場合において、アノード層および電解質層は、互いに400ミクロン、300ミクロン、200ミクロン、またはいくつかの場合において、100ミクロンの最大厚さを有する。
【0058】
いくつかの実施形態において、力の印加は、本明細書で説明されるように、電気化学電池を繰り返しサイクルした後に、向上した容量をもたらしてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、3回、電池を代替的に放電および受電した後、電池は、3回目のサイクルの終了時に、電池の初期容量の少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を呈する。いくつかの場合において、10回、電池を代替的に放電および受電した後、電池は、10回目のサイクルの終了時に、電池の初期容量の少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を呈する。さらなる場合において、25回、電池を代替的に放電および受電した後、電池は、25回目のサイクルの終了時に、電池の初期容量の少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%を呈する。
【0059】
本発明の電気化学電池のカソードの中のカソード活性材料として使用するための好適な電気活性材料には、電気活性遷移金属カルコゲナイド、電気活性導電性ポリマー、硫黄、炭素、および/またはそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用する場合、「カルコゲン化物」という用語は、酸素、硫黄、およびセレニウム元素のうちの1つ以上を含む化合物に関する。好適な遷移金属カルコゲナイドの例には、電気活性酸化物、硫化物、ならびにMn、V、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、およびIrから成る群より選択される、遷移金属のセレン化物が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、遷移金属カルコゲナイドは、ニッケル、マンガン、コバルト、およびバナジウムの電気活性酸化物、ならびに鉄の電気活性硫化物から成る群より選択される。一実施形態では、カソードは、以下の材料のうちの1つ以上を含む。二酸化マンガン、ヨウ素、クロム酸銀、酸化銀および五酸化バナジウム、酸化銅、オキシリン酸銅、硫化鉛、硫化銅、硫化鉄、ビスマス酸鉛、三酸化ビスマス、二酸化コバルト、塩化銅、二酸化マンガン、および炭素。別の実施形態では、カソード活性層は、電気活性導電性ポリマーを含む。好適な電気活性導電性ポリマーの例には、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンから成る群より選択される、電気活性および電子的に導電性のポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。導電性ポリマーの例には、ポリピロール、ポリアニリン、およびポリアセチレンが挙げられる。
【0060】
いくつかの実施形態において、本明細書で説明される電気化学電池のカソード活性材料として使用するための電気活性材料は、電気活性硫黄含有材料を含む。「電気活性硫黄含有材料」は、本明細書で使用する場合、あらゆる形態で硫黄元素を含むカソード活性材料に関し、電気化学活性は、硫黄原子または部分の酸化または還元を伴う。本発明の実行に有用な電気活性硫黄含有材料の性質は、従来技術で知られているように、幅広く変動する。例えば、一実施形態において、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素を含む。別の実施形態において、電気活性硫黄含有材料は、硫黄元素および硫黄含有ポリマーの混合物を含む。したがって、好適な電気活性硫黄含有材料には、硫黄原子および炭素原子を含む硫黄元素および有機材料が挙げられ、ポリマーである場合もあるが、これに限定されない。好適な有機材料には、ヘテロ原子、導電性ポリマーセグメント、複合材、および導電性ポリマーをさらに含むものが挙げられる。
【0061】
いくつかの実施形態において、カソードは、1つ以上の結合剤材料(例えば、ポリマー、多孔質シリカゾルゲル等)を含んでもよい。
【0062】
硫黄含有ポリマーの実施例には、Skotheim他への米国特許第5,601,947号および第5,690,702号、Skotheim他への米国特許第5,529,860号および第6,117,590号、共通の譲受人のGorkovenko他への2001年3月13日に発行された米国特許第6,201,100号、およびPCT公開第WO 99/33130号に説明されているものが挙げられる。ポリスルフィド結合を含む他の好適な電気活性硫黄含有材料には、Skotheim他への米国特許第5,441,831号、Perichaud他への米国特許第4,664,991号、およびNaoi他への米国特許第5,723,230号、第5,783,330号、第5,792,575号、および第5,882,819号に説明されている。電気活性硫黄含有材料のさらなる例には、例えば、Armand他への米国特許第4,739,018号、どちらもDe Jonghe他への米国特許第4,833,048号および第4,917,974号、どちらもVisco他への米国特許第5,162,175号および第5,516,598号、ならびにOyama他への米国特許第5,324,599号に説明されているような、ジスルフィド基を含むものが挙げられる。
【0063】
一実施形態では、カソード活性層の電気活性硫黄含有材料は、50重量%を超える硫黄を含む。別の実施形態において、電気活性硫黄含有材料は、75重量%を超える硫黄を含む。さらに別の実施形態において、電気活性硫黄含有材料は、90重量%超える硫黄を含む。
【0064】
本発明のカソード活性層は、(例えば、適切な量の溶媒が、アノード活性材料から除去された後に、および/または層が適切に硬化した後に測定した時に)約20〜100重量%の電気活性カソード材料を含んでもよい。一実施形態では、カソード活性層の中の電気活性硫黄含有材料の量は、カソード活性層の5〜30重量%の範囲である。別の実施形態において、カソード活性層の電気活性硫黄含有材料の量は、カソード活性層の20%〜90重量%の範囲である。
【0065】
カソード(ならびに本明細書で説明される電池の他の成分)の調製に好適な液体媒体(例えば、溶媒)の限定的でない例には、水性液体、非水性液体、およびそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトン、トルエン、キシレン、アセトニトリル、シクロヘキサン、およびそれらの混合物等の液体を使用することができる。当然、必要に応じて、他の好適な溶媒も使用することができる。
【0066】
正電極層は、当技術分野において公知の方法によって調製されてもよい。例えば、1つの好適な方法は、次のステップを備える。(a)本明細書で説明されるように、電気活性硫黄含有材料を液体媒体の中に分散または懸濁するステップ、(b)随意に、導電性充填剤および/または結合剤をステップ(a)の混合物に加えるステップ、(c)電気活性硫黄含有材料を分散させるように、ステップ(b)の結果として生じた組成物を混合するステップ、(d)ステップ(c)の結果として生じた組成物を好適な基板上へ流し込むステップ、および(e)カソード活性層を提供するように、ステップ(d)の結果として生じた組成物から、液体の一部または全てを除去するステップ。
【0067】
いくつかの実施形態において、圧縮に耐性のあるカソードの使用は、カソードがかなり圧縮可能である電池に対して、電池の性能を高めることができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、弾性があり、比較的に高度に圧縮可能であるカソードの使用は、異方性力の印加中に、液体電解質の排出をもたらし得る。カソードからの液体電解質の排出は、電解電池の動作中の減少した電力出力をもたらし得る。例えば、いくつかの場合において、電解電池からの電力出力の減少は、異方性力が比較的に小さい(例えば、約68.6ニュートン/cm
2の圧力を画定する、アノードの活性表面に垂直な成分を伴う異方性力)時であっても、または例えば、アノード活性表面に垂直な異方性力の成分の限度および範囲に関して上述したように、異方性力が別の大きさである時に観察され得る。圧縮性の程度は、間隙率の変化、すなわち、圧縮力の印加中のカソードの空洞容積の変化に相関させることができる。いくつかの実施形態において、電池の動作中にカソードの間隙率の変化を制限することが望ましくなり得る。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、カソードの間隙率は、電池の動作中に、10%未満、6%未満、4%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、またはそれ以下だけ減少してもよい。すなわち、カソードが、好適な抵抗を圧縮に提供するように製造された場合、電池の使用中にカソードが経験する圧縮力は、上記のパーセンテージだけ、総空洞容積、あるいは電解質が利用可能な総容積が減少し得る。
【0068】
カソードの硬度(圧縮性に対する抵抗)は、様々な方法を使用して高められてもよい。いくつかの実施形態において、電解質の種類およびカソードの細孔のサイズは、電解質およびカソード細孔の相互作用によって生成された結果の毛細管力が、カソードの変形に抵抗するように、一緒に選択されてもよい。この効果は、例えば、小型電解電池に特に有用であり得る。別の実施例として、カソードの硬度は、強化繊維をカソードに組み込む(例えば、炭素粒子をカソードに接続する)ことによって高められてもよい。いくつかの場合において、剛性を提供するように、結合剤がカソードに組み込まれてもよい。他の実施形態において、本質的に剛体であるカソードは、活性材料(例えば、網状Ni発泡体)を薄くて軽量の超構造の中に注入することによって生成されてもよい。
【0069】
本明細書で説明される電気化学電池のアノードにおけるアノード活性材料として使用するための好適な電気活性材料には、導電性基板上に蒸着させたリチウム箔およびリチウム、ならびにリチウム合金(例えば、リチウム−アルミニウム合金およびリチウム−スズ合金)等のリチウム金属が挙げられるが、これらに限定されない。これらは好ましい負極材料であるが、電流コレクタも、他の電池化学で使用されてもよい。いくつかの実施形態において、アノードは、1つ以上の結合剤材料(例えば、ポリマー等)を含んでもよい。
【0070】
負電極材料(例えば、リチウム等のアルカリ金属アノード)を基板上に蒸着させるための方法には、熱蒸着、スパッタリング、ジェット気相蒸着、およびレーザアブレーション等の方法が挙げられる。代替的に、アノードがリチウム箔、またはリチウム箔と基板とを備える場合、これらは、アノードを形成するように、従来技術で公知の積層プロセスによって一緒に積層することができる。
【0071】
一実施形態において、アノード活性層の電気活性リチウム含有材料は、50重量%を超えるリチウムを含む。別の実施形態において、アノード活性層の電気活性リチウム含有材料は、75重量%を超えるリチウムを含む。さらに別の実施形態において、アノード活性層の電気活性リチウム含有材料は、90重量%を超えるリチウムを含む。
【0072】
正および/または負電極は、Mikhaylik他によって2006年12月4日に出願された米国仮出願第60/872,939号、名称「Separation of Electrolytes」に説明されているもの等のように、随意に、好適な電解質と好適に相互作用する1つ以上の層を含み得、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0073】
電気化学またはバッテリ電池で使用される電解質は、イオンの貯蔵および輸送用の媒体として機能することができ、固体電解質およびゲル電解質の特別な事例において、これらの材料は、加えて、アノードとカソードとの間のセパレータとして機能してもよい。材料がアノードとカソードとの間でイオン(例えば、リチウムイオン)の輸送を促進するのであれば、イオンを貯蔵および輸送することが可能なあらゆる液体、固体、ゲル材料を使用してもよい。電解質は、アノードとカソードとの間の短絡を防止するように、電子的に非導電性である。いくつかの実施形態において、電解質は、非固体電解質を含んでもよい。
【0074】
電解質は、イオン導電性および1つ以上の液体電解質溶媒、ゲルポリマー材料、またはポリマー材料を提供するように、1つ以上のイオン性電解質塩を含むことができる。好適な非水電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体ポリマー電解質から成る群より選択される1つ以上の材料を含む、有機電解質を含んでもよい。リチウムバッテリ用の非水電解質の例は、Lithium Batteries、New Materials、Developments and Perspectives、Chapter 4、pp.137−165、Elsevier、Amsterdam(1994)にDornineyによって説明されている。ゲルポリマー電解質および固体ポリマー電解質の例は、Lithium Batteries、New Materials、Developments and Perspectives、Chapter 3、pp.93−136、Elsevier、Amsterdam(1994)にAlamgir他によって説明されている。本明細書で説明されるバッテリで使用することができる異質の電解質組成物は、2006年12月4日に出願された米国仮出願第60/872,939号に説明されている。
【0075】
有用な非水性液体電解質溶媒の例には、例えば、N−メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、亜硫酸塩、スルホラン、脂肪族エーテル、環状エーテル、グリム、ポリエーテル、リン酸エステル、シロキサン、ジオキソラン、N−アルキルピロリドン、上述の置換形態、およびそれらの混合物等の、非水性有機溶媒が挙げられるが、これに限定されない。上述のフッ素化誘導体はまた、液体電解質溶媒としても有用である。
【0076】
いくつかの場合において、水性溶媒を、リチウム電池用の電解質として使用することができる。水性溶媒は、水を含むことができ、イオン性塩等の他の成分を含有することができる。上述のように、いくつかの実施形態において、電解質は、電解質の中の水素イオンの濃度を低減するように、水酸化リチウム等の種、または電解質を塩基にする他の種を含むことができる。
【0077】
液体電解質溶媒はまた、ゲルポリマー電解質、すなわち、半固体ネットワークを形成する1つ以上のポリマーを含む電解質のための可塑剤としても有用であり得る。有用なゲルポリマー電解質の例には、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリエーテル、スルホン化ポリイミド、ペルフルオロ化された膜(NAFION樹脂)、ポリジビニルポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、上述の誘導体、上述のコポリマー、上述の架橋およびネットワーク構造、ならびに上述の混合物から成る群より選択される1つ以上のポリマーを含むもの、および随意に、1つ以上の可塑剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、ゲルポリマー電解質は、10から20容積%の間、20から40容積%の間、60から70容積%の間、70から80容積%の間、80から90容積%の間、または90から95容積%の間の異質電解質を含む。
【0078】
いくつかの実施形態において、電解質を形成するように、1つ以上の固体ポリマーを使用することができる。有用な固体ポリマー電解質の例には、ポリエーテル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリシロキサン、上述の誘導体、上述のコポリマー、上述の架橋およびネットワーク構造、ならびに上述の混合物から成る群より選択される1つ以上のポリマーを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
電解質を形成するための当技術分野において公知の電解質溶媒、ゲル化剤、およびポリマーに加えて、電解質はさらに、イオン導電性を増大するように、同じく従来技術で公知の1つ以上のイオン性電解質塩を含んでもよい。
【0080】
本発明の電解質で使用するためのイオン性電解質塩の例には、LiSCN、LiBr、LiI、LiClO
4、LiAsF
6、LiSO
3CF
3、LiSO
3CH
3、LiBF
4、LiB(Ph)
4、LiPF
6、LiC(SO
2CF
3)
3、およびLiN(SO
2CF
3)
2が挙げられるが、これらに限定されない。有用であり得る他の電解質塩には、リチウムポリスルフィド(Li
2S
x)、および有機イオン性ポリスルフィド(LiS
xR)
nのリチウム塩であり、ここで、xは、1から20までの整数であり、nは、1から3までの整数であり、Rは、有機基であるもの、およびLee他への米国特許第5,538,812号で開示されているものが挙げられる。
【0081】
いくつかの実施形態において、電気化学電池はさらに、カソードとアノードとの間に挿入されるセパレータを備えてもよい。セパレータは、アノードおよびカソードを互いから分離または絶縁して、短絡を防止し、およびアノードとカソードとの間のイオンの輸送を可能にする、固体非導電性または絶縁性材料であってもよい。いくつかの実施形態において、多孔質セパレータは、電解質に透過性(perrmeable)であってもよい。
【0082】
セパレータの細孔は、電解質で部分的に、または実質的に充填されてもよい。セパレータは、電池の製造中に、アノードおよびカソードで交互配置される、多孔質自立型フィルムとして供給されてもよい。代替的に、例えば、Carlson他へのPCT公開第WO 99/33125号、およびBagley他への米国特許第5,194,341号に説明されているように、多孔質セパレータ層が、電極のうちの1つの表面に直接的に適用されてもよい。
【0083】
様々なセパレータ材料が、当技術分野において公知である。好適な固体多孔質セパレータ材料の例には、例えば、ポリエチレン(例えば、Tonen Chemical Corpによって作製されるSETELA(商標))およびポリプロピレン等のポリオレフィン、ガラス繊維濾紙、ならびにセラミック材料が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、いくつかの実施形態において、セパレータは、微孔質ポリエチレンフィルムを備える。本発明での使用に好適であるセパレータおよびセパレータ材料のさらなる例は、例えば、微孔質擬ベーマイト層といった、微孔質キセロゲル層を含むものであるが、これは、共通の譲受人のCarlsonによって米国特許第6,153,337号および第6,306,545号で説明されているように、自立型フィルム、または電極のうちの1つへの直接的な被覆の印加のいずれかとして提供されてもよい。固体電解質およびゲル電解質はまた、それらの電解質機能に加えて、セパレータとしても機能し得る。
【0084】
以下の出願は、参照することによりその全体が本願明細書にそれぞれ組み込まれる。Scordilis−Kelley他による、2008年8月5日に出願された米国暫定特許出願第61/086,329号、名称「Application of Force in Electrochemical Cells」。
【0085】
以下の実施例は、本発明のある実施形態を例示することを意図したものであるが、本発明の全範囲を例証するものではない。
【実施例】
【0086】
(実施例1)
この実施例において、アノードの活性表面に垂直な成分を伴う異方性力は、電池の充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、電気化学電池に印加される。アノード活性表面および異方性力は、異方性力が、充電および放電を通して、アノード活性表面の表面形態に影響を及ぼし、アノード活性表面積の増大を抑制するように、一緒に選択した。実施例2に示されるように、異方性力の非存在下にあるが、それ以外は本質的に同一である条件下で、前記アノード活性表面積は、充電および放電サイクルを通して、大幅に増大させられる。
【0087】
この実施例において、リチウム金属(Chemetall−Foote Corp.、Kings Mountain、NCから入手可能な、Li99.9%超で、厚さ2milの箔)が、アノードとして使用された。電解質は、13.2部のリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、(3M Corporation、St.Paul、MNから入手可能なリチウムイミド)、1,3−ジオキソランの中の1.1部の硝酸リチウム(Aldrich Chemical Company、Milwaukee、WIから入手可能)、50ppm未満の含水量を伴う、を含んでいた。使用した多孔質セパレータは、16μmのSETELA(Tonen Chemical Corporation、Tokyo、Japanから入手可能なポリオレフィンセパレータの商標であり、またExxon Mobil Chemical Company、Films Division、Pittsford、NYからも入手可能である)であった。
【0088】
上述の構成要素は、約16cm
2の電極面積を伴う角柱状電池を形成するように、セパレータの空洞領域を満たす液体電解質を伴って、アノード/セパレータ/アノードの層構造に積層した。アルミめっきを施した可撓性包装材(Sumitomo製)で封止した後、電池は、24時間貯蔵して、圧縮ばねで鋼板との間に配置した。電池は、電池の充電および/または放電中の少なくとも1つの期間中に、アノードの活性表面に垂直な成分を伴う異方性力を印加するように構築および配設した。この実施例では、異方性力は、98ニュートン/cm
2の圧力を画定した。
【0089】
これらの電池に関する放電−充電サイクルは、4時間にわたって、18mAで、放電および充電の両方を30回行った(41.5%のLi DODに等しい、一定容量のサイクル)。次いで、電池を分解して、走査型電子顕微鏡によって電極の形態を評価し、示差走査熱量測定によって残留金属リチウムを測定した。
図4は、30サイクルにわたる98ニュートン/cm
2の印加後の、リチウムアノードのSEM顕微鏡写真を含む。結果として生じるアノードは、小型であり、それらの元々の厚さを保持し、また、主としてリチウム金属で構成されていた。
【0090】
(実施例2)
この実施例において、実施例1で採用された電池と同一の電気化学電池を、充電および放電した。この実施例において、電気化学電池は、異方性力の非存在下で充電および放電した。加えて、電池を動作させる条件は、実施例1に概説したものと本質的に同一であった。
【0091】
実施例1と同じ分析を使用することで、異方性力の非存在下にあるが、それ以外は本質的に同一である条件下で、アノード活性表面積は、充電および放電サイクルを通して、大幅に増大させられることが分かった。
図5は、等方性力の非存在下での充電および放電後のリチウムアノードのSEM顕微鏡写真を含む。結果として生じたアノードは、厚さが2倍を超え、金属リチウムではなく、主に分解生成物で構成されていた。
【0092】
(実施例3)
図6A〜Dは、30回の充電/放電サイクル後の、種々の析出したリチウム金属アノードのSEM顕微鏡写真を含む。
図6Aのアノードは、異方性力の非存在下でサイクルし、一方で、
図6B、C、およびDのアノードは、それぞれ、49、73.5、および98ニュートン/cm
2の圧力を画定する力を印加してサイクルした。顕微鏡写真から、印加された力が増大するにつれて、結果として生じるリチウム金属アノードが薄くなり、かつ多孔質でなくなった。
【0093】
図7A〜Dは、30回の充電/放電サイクル後の、種々の剥離したリチウム金属アノードのSEM顕微鏡写真を含む。
図7Aのアノードは、異方性力の非存在下でサイクルし、一方で、
図7B、C、およびDのアノードは、それぞれ、49、73.5、および98ニュートン/cm2の力を印加してサイクルした。ここでも、印加された力が増大するにつれて、結果として生じるリチウム金属アノードは、より薄くなり、かつ多孔質でなくなった。
【0094】
本明細書において本発明の複数の実施形態を図とともに説明したが、当業者は、機能を実行するための機構、および/または本明細書に記述された結果および/または1つ以上の利点を得るための様々な他の手段を容易に想定されるであろう。また、そのような変形および/改良のそれぞれは、本発明の範囲内にあるものとみなされる。さらに一般的に言えば、当業者は、本明細書に記述される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的なものであり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明の教示を用いる単一または複数の特定のアプリケーションに依存するものであると容易に理解されるであろう。当業者は、ルーチン実験以上のものを用いなくても、本明細書に記載されている本発明の特定の実施形態には多くの同等物があることを認識するであろうし、または確認することが可能であろう。したがって、上述の実施形態は、一例として示されたものに過ぎず、添付の特許請求の範囲およびその同等物の範囲で、本発明が特に記述および主張されたものとは異なって実行される場合もあると理解されたい。本発明は、本明細書に記載される個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に関する。加えて、このような機能、システム、物品、材料、キット、および/または方法が互いに矛盾していなければ、2つ以上のこのような機能、システム、物品、材料、キット、および/または方法のあらゆる組み合わせが、本発明の範囲内に含まれる。
【0095】
本明細書および請求項に使用される単数形(不定冠詞:「a」および「an」)は、特に明示されている場合を除き、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されたい。
【0096】
本明細書および請求項で使用する場合、「および/または」という成句は、そのように結合した要素の「一方または両方」、すなわち、ある場合では結合的に存在し、他の場合では分離的に存在することを意味するものと理解されたい。特に明確にそれとは反対に示されていない限り、特に定義された要素に関係するかしないかに関わらず、「および/または」の節によって特に識別された要素以外に、随意に他の要素が存在する場合がある。したがって、非現実的な一実施例として、「Aおよび/またはB」という記述は、「〜を備える(含む)」等のオープンエンドな言語とともに使用される時には、1つの実施形態では、Bを伴わないA(随意に、B以外の要素を含む)を指す、別の実施形態では、Aを伴わないB(随意に、A以外の要素を含む)を指す、さらに別の実施形態では、AおよびBの両方(随意に、他の要素を含む)を指す、等の可能性がある。
【0097】
明細書および請求項で使用する場合、「または」は、上記で定義した「および/または」と同じ意味を有するものと理解されたい。例えば、アイテムを一覧に分類した時に、「または」または「および/または」は、包括的である、すなわち、複数の要素またはリスト内の要素のうちの少なくとも1つを含むだけでなく、2つ以上を含み、随意に、列記されていないアイテムも含むものと解釈されたい。「〜のうちの1つ」または「〜のうちの1つだけ」、あるいは請求項で使用される時には「〜から成る」等の、明確に指示される用語だけが、複数の要素または要素の一覧のうちの1つだけを包含することを指すことになる。一般的に、本明細書で使用される場合、「または」という用語は、「いずれか」、「〜のうちの1つ」、「〜のうちの1つのみ」、「〜のうちの1つだけ」等の排他的な用語が後にある時には、単に排他的な選択肢(すなわち、「両方ではなくどちらか一方」)を示すものであると解釈されたい。請求項で使用される時には、「〜のみから実質的に成る」は、特許法の分野において使用されるような一般的な意味を有するものとする。
【0098】
明細書および請求項で使用する場合、1つ以上の要素の一覧を参照した時の「少なくとも1つの」という成句は、要素の一覧内のいずれか1つ以上から選択した少なくとも1つの要素を意味するが、必ずしも要素の一覧内に具体的に列記されるあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、また、要素の一覧内の要素のあらゆる組み合わせを除外しないものと理解されたい。本定義は、特に定義された要素に関係するかしないかに関わらず、「少なくとも1つの」という成句が参照する要素リスト内に特に識別された要素以外の要素が、随意に存在する場合があることも許容する。したがって、非限定的な一実施例として、「AおよびBのうちの少なくとも1つ」(または同等に「AまたはBのうちの少なくとも1つ」、あるいは同等に「Aおよび/またはBのうちの少なくとも1つ」)は、1つの実施形態では、少なくとも1つ、随意に1つ以上を含む、A、Bが存在しない(および随意にB以外の要素を含む)ことを指す、別の実施形態では、少なくとも1つ、随意に1つ以上を含む、B、Aが存在しない(および随意にA以外の要素を含む)ことを指す、さらに別の実施形態では、少なくとも1つ、随意に1つ以上を含む、A、および少なくとも1つ、随意に1つ以上を含む、B(および随意に、他の要素を含む)こと指す、等の可能性がある。
【0099】
上述の請求項および明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「包含する」、「伴う」、「保持する」等のような全ての移行句は、オープンエンドである、すなわちそれらを含むがそれらに限定されないことを意味するものと理解されたい。米国特許事務所の米国特許審査手続便覧のセクション2111.03に記載されているように、「〜から成る」、「〜から実質的に成る」という移行句のみ、それぞれクローズドまたはセミクローズド移行句とする。