(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記オキシスチレン系単量体をリビングカチオン重合させてジブロックアームを形成させる際に、ルイス酸を追加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項記載のビニルエーテル系星型ポリマーの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明方法は、少なくとも開始種、溶媒及びジビニル化合物を含む反応溶液中に、ルイス酸を添加して側鎖にビニル基を有するビニルエーテルポリマーを合成し、当該ビニル基側鎖の分子間架橋により核を生成させた後、ビニルエーテル系単量体とオキシスチレン系単量体を添加してビニルエーテル系単量体、オキシスチレン系単量体の順にリビングカチオン重合させ、ジブロックアームを形成させることを特徴とするビニルエーテル系星型ポリマーの製造方法を提供するものである。
【0016】
本発明方法を実施するには、まず、反応容器に開始種、溶媒、ジビニル化合物を順次投入し、その後にこの反応に適切なルイス酸を添加する(以下、この工程を「核形成工程」という)。この工程で始めにスターポリマーの核が合成される。
【0017】
この工程に用いられるジビニル化合物としては、次の一般式(1)
【化1】
(式中、R
1及びR
3は、それぞれ水素原子またはメチル基を示し、R
2は、二価の有機基を示す)
で表されるジビニル化合物を挙げることができる。
【0018】
上記一般式(1)中、二価の有機基R
2としては、下記式で示される基が含まれる。
【化2】
(式中、n、l及びpはそれぞれ1以上の整数を、R
7は−O−、−O−Ph−O−あるいは−O−Ph−C(CH
3)
2−Ph−O−または炭素数3以上のシクロアルキル基を示す。式中、Phはフェニレン基を示す)
【0019】
前記式(1)で表されるジビニル化合物の具体例としては、エチレングリコールジビニルエーテル、ビスフェノールAビス(ビニルオキシエチレン)エーテル、ビス(ビニルオキシエチレン)エーテル、ヒドロキノンビス(ビニルオキシエチレン)エーテル、1,4− ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0020】
また、本発明方法において使用し得る開始種には、水、アルコール、プロトン酸などのプロトンを生成する化合物、またはハロゲン化アルキルなどのカルボカチオンを生成する化合物が含まれる。また、前記ビニルエーテルとプロトンを生成する化合物との付加物などのカチオン供給化合物であってもよい。このようなカルボカチオンを生成する化合物としては、例えば、1−イソブトキシエチルアセテートなどの1−アルコキシエチルアセテートなどが挙げられる。
【0021】
更に、核形成工程のリビングカチオン重合反応において使用されるルイス酸(以下、「ルイス酸(I)」という)としては、一般にビニルエーテル系単量体のカチオン重合に用いられるルイス酸を使用することができる。
【0022】
好ましいルイス酸(I)としては、一般式(4)
【化3】
(式中、R
8は一価の有機基を、Yはハロゲン原子を示し、q及びrはq+r=3でかつ0≦q<3、0<r≦3の数を示す)
で表される有機ハロゲン化アルミニウム化合物またはハロゲン化アルミニウム化合物が挙げられる。
【0023】
一般式(4)のR
8の定義において、一価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルコキシ基が挙げられるが、とくに制限されるものではない。また、Yのハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、q及びrは、qが1〜2の範囲であり、rが1〜2の範囲であることが好ましい。
【0024】
上記の一般式(4)で表される有機ハロゲン化アルミニウム化合物またはハロゲン化アルミニウム化合物の例としては、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミド、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジフルオライド、イソブチルアルミニウムジクロリド、オクチルアルミニウムジクロリド、エトキシアルミニウムジクロリド、フェニルアルミニウムジクロリド等が挙げられる。
【0025】
更にまた、本発明方法で用いる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、デカン、ヘキサデカン、イソペンタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;塩化メチレン、塩化エチレン、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル系溶媒が挙げられる。これらの溶媒の中でも、トルエン、塩化メチレン、ヘキサンが好適に使用される。これらの溶媒は、単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせても良い。
【0026】
核生成工程でのジビニル化合物の使用量は、開始種1当量に対して1〜1000当量が好ましく、より好ましくは1〜100当量である。ジビニル化合物の使用量が上記範囲より少ないと、形成された核中の反応開始点が減少するため十分なアーム導入ができない。また、ジビニル化合物の使用量が上記範囲を超えて多くなると核形成時にゲル化しやすくなる。また、上記開始種の添加量は特に制限はなく、目的とする分子量により適宜決定される。また、核形成工程で添加されるルイス酸の量は、通常ジビニル化合物に対して0.1〜100モル%であり、好ましくは1〜50モル%である。
【0027】
上記核形成工程でのジビニル化合物による核形成の過程では、ジビニル化合物のビニル基が全て消費されるまで反応させることが重要である。ジビニル化合物がガスクロマトグラフィー上で全て消費されていても、架橋反応が不十分でビニル基が未反応の状態で残存している場合、ビニルエーテル系単量体が核内に取り込まれるため、十分にビニルエーテル系アームを伸長させることが困難となる。
【0028】
このため、核を形成するための架橋反応の終点は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)のRIチャートを時分割にモニタリングし、GPCの波形の変化が収束することにより確認することができ、そうすることが好ましい。
【0029】
上記のように、核形成工程により、ジビニル化合物による核が形成された後は、ビニルエーテル系単量体とオキシスチレン系単量体を添加し、順次リビングカチオン重合させジブロックアームを形成する(以下、「アーム形成工程」という)。
【0030】
そして上記の核形成工程と、これから説明するアーム形成工程での各重合反応は、同一の反応容器内で一連の工程として継続して進めることができる。また、オキシスチレン系単量体のリビングカチオン重合の際には、後記するようにこれに適したルイス酸(ルイス酸(II))を加えることにより、オキシスチレン系単量体の重合速度を上げることができる。
【0031】
このアーム形成工程で用いるビニルエーテル系単量体としては、次の一般式(2)
【化4】
〔式中、R
4は炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖アルキル基、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖アルキル基であって全部または一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基、炭素数5〜10のシクロアルキル基、次の基(2a)または次の基(2b)
【化5】
(ここで、mは0、1、2または3であり、Xは未置換のフェニル基、または、一つまたはそれ以上の炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖アルキル基、1〜4の直鎖または分岐鎖アルキル基であって全部または一部の水素がフッ素に置換されたフルオロアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基またはハロゲン原子によって置換されたフェニル基である)で表されるアリール基またはアリールアルキル基、
【化6】
(ここで、Rはメチル基またはエチル基、kは1〜10の整数である)で表されるアルコキシポリオキシアルキル基を表す]
で表されるビニルエーテル系単量体を挙げることができる。
【0032】
一般式(2)のR
4の定義における、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−アミル基、イソアミル基等が挙げられ、炭素数1〜6のフルオロアルキル基としてはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基などが挙げられる。また、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基としてはメトキシメチル基、エトキシメチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロフラニル基等が挙げられ、炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニル基、アダマンチル基などが挙げられる。更に、基(2a)で表わされるアリール基としてはフェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基等が挙げられ、アリールアルキル基としてはベンジル基、メチルベンジル基、エチルベンジル基、メトキシベンジル基、エトキシベンジル基、フルオロベンジル基、トリフルオロメチルベンジル基等が挙げられる。更にまた、基(2b)で表されるアルコキシポリオキシアルキル基としては2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2−(2−エトキシエトキシ)エチル基、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル基、2−(2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ)エチル基、2−(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル基、2−(2−(2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル基等が挙げられる。
【0033】
前記の式(2)で表されるビニルエーテル系単量体としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、sec−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−アミルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類;トリフルオロメチルビニルエーテル、ペンタフルオロエチルビニルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル類;2−メトキシエチルビニルエーテル、2−エトキシエチルビニルエーテル、2−テトラヒドロピラニルビニルエーテル、2−テトラヒドロフラニルビニルエーテル等のアルコキシアルキルビニルエーテル類;シクロペンチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘプチルビニルエーテル、シクロオクチルビニルエーテル、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプチルビニルエーテル、2−ビシクロ[2.2.2]オクチルビニルエーテル、8−トリシクロ[5.2.1.0
2,6]デカニルビニルエーテル、1−アダマンチルビニルエーテル、2−アダマンチルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類;フェニルビニルエーテル、4−メチルフェニルビニルエーテル、4−トリフルオロメチルフェニルビニルエーテル、4−フルオロフェニルビニルエーテル等のアリールビニルエーテル類;ベンジルビニルエーテル、4−フルオロベンジルビニルエーテル等のアリールアルキルビニルエーテル類;2−(2−メトキシエトキシ)エチルビニルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エチルビニルエーテル、2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチルビニルエーテル、2−(2−(2−エトキシエトキシ)エトキシ)エチルビニルエーテル等のアルコキシポリオキシアルキルビニルエーテル類等が挙げられる。
【0034】
これらのビニルエーテル系単量体は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0035】
一方、このアーム形成工程で使用されるオキシスチレン系単量体としては、次の一般式(3)
【化7】
(式中、R
5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、R
6は水素原子、炭素数1〜
6のアルキル基、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基またはアルキルシリル基を示す)
で表されるオキシスチレン系単量体を挙げることができる。
【0036】
一般式(3)のR
5の定義において、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0037】
一般式(3)のR
6の定義において、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−アミル基、イソアミル基等が挙げられ、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基としてはメトキシメチル基、エトキシメチル基、1−メトキシエチル基、1−エトキシエチル基、1−メトキシプロピル基、2−テトラヒドロピラニル基、2−テトラヒドロフラニル基等が挙げられ、炭素数2〜6のアシル基としてはアセチル基、プロピオニル基、tert−ブチルカルボニル基などが挙げられ、炭素数2〜6のアルコキシカルボニル基としてはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基などが挙げられ、炭素数2〜6のアルコキシカルボニルアルキル基としてはtert−ブトキシカルボニルメチル基などが挙げられ、炭素数2〜6のアルキルシリル基としてはトリメチルシリル基、tert−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
【0038】
上記の一般式(3)で表されるオキシスチレン系単量体としては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、m−イソプロペニルフェノール、o−イソプロペニルフェノール等のヒドロキシスチレン類;p−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、m−エトキシスチレン、p−プロポキシスチレン、m−プロポキシスチレン、p−イソプロポキシスチレン、m−イソプロポキシスチレン、p−n−ブトキシスチレン、m−n−ブトキシスチレン、p−イソブトキシスチレン、m−イソブトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン等のアルコキシスチレン類;p−メトキシメトキシスチレン、m−メトキシメトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン、m−(1−エトキシエトキシ)スチレン、p−(2−テトラヒドロピラニル)オキシスチレン、m−(2−テトラヒドロピラニル)オキシスチレン等のアルコキシアルキルオキシスチレン類;p−アセトキシスチレン、m−アセトキシスチレン、p−tert−ブチルカルボニルオキシスチレン、m−tert−ブチルカルボニルオキシスチレン等のアルカノイルオキシスチレン類;p−メトキシカルボニルオキシスチレン、m−メトキシカルボニルオキシスチレン、p−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレン、m−tert−ブトキシカルボニルオキシスチレン等のアルコキシカルボニルオキシスチレン類;p−tert−ブトキシカルボニルメチルオキシスチレン、m−tert−ブトキシカルボニル
メチルオキシスチレン等のアルコキシカルボニルアルキルオキシスチレン類;p−トリメチルシリルオキシスチレン、m−トリメチルシリルオキシスチレン、p−tert−ブチルジメチルシリルオキシスチレン、m−tert−ブチルジメチルシリルオキシスチレン等のアルキルシリルオキシスチレン類等が挙げられる。なかでも、p−ヒドロキシスチレン、p−イソプロペニルフェノール、p−tert−ブトキシスチレン、p−アセトキシスチレン等が好ましく用いられる。
【0039】
これらのオキシスチレン系単量体は、1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0040】
上記ビニルエーテル系単量体とオキシスチレン系単量体を、順にリビングカチオン重合させジブロックアームを形成する方法としては、ビニルエーテル系単量体を反応系内に添加してリビングカチオン重合させ、次いで、オキシスチレン系単量体を反応系内に添加してリビングカチオン重合させる方法(A法)や、ビニルエーテル系単量体とオキシスチレン系単量体の混合物を反応系内に添加し、オキシスチレン系単量体の反応速度定数k
OSとビニルエーテル系単量体の反応速度定数k
VEとの反応速度定数比がk
VE/k
OS≧1650となる条件下でリビングカチオン重合させる方法(B法)を挙げることができる。
【0041】
A法によるアーム形成において、ビニルエーテル系単量体のリビングカチオン重合は反応系にビニルエーテル系単量体を添加することにより進行する。このとき、更にビニルエーテル系単量体のリビングカチオン重合に好適なルイス酸(I)を添加しても良い。ルイス酸(I)を追加する場合は、核形成工程で用いたルイス酸と同じルイス酸を追加しても良いし、異なるルイス酸を追加しても良い。ビニルエーテル系単量体の重合が完了した後に、オキシスチレン系単量体を加えて重合させ、ビニルエーテル系ポリマーであるアーム部に結合させる。この際、ビニルエーテル系単量体とオキシスチレン系単量体とでは、カチオン重合における反応性が大きく異なるため、ビニルエーテル系単量体の重合において使用されるルイス酸(I)とは異なる、オキシスチレン系単量体のリビングカチオン重合に好適なルイス酸(以下、「ルイス酸(II)」という)を用いることが必要である。
【0042】
前記のルイス酸(II)としては、Al以外の元素からなる金属ハロゲン化合物または有機金属ハロゲン化合物が挙げられ、これらの化合物としては、TiCl
4、TiBr
4、BCl
3、BF
3、BF
3・OEt
2、SnCl
2、SnCl
4、SbCl
5、SbF
5、WCl
6、TaCl
5、VCl
5、FeCl
3、ZnBr
2、ZrCl
4などが挙げられる。なかでも、ルイス酸(II)として、SnCl
4、FeCl
3などが好ましく用いられる。
【0043】
例えば、核形成工程及びビニルエーテル系単量体重合時にはEt
1.5AlCl
1.5をルイス酸として用い、次いでオキシスチレン系単量体重合時にはSnCl
4を追加して用いてオキシスチレン系単量体の重合速度を加速することで、ビニルエーテル系重合体とオキシスチレン系重合体の共重合体をアームに有する星型ポリマーを製造することができる。
【0044】
一方、B法によるアーム形成においては、ビニルエーテル系単量体とオキシスチレン系単量体の混合物を反応系内に添加する。このとき、更にビニルエーテル系単量体のリビングカチオン重合に好適なルイス酸(I)を添加しても良い。ルイス酸(I)を追加する場合は、核形成工程で用いたルイス酸と同じルイス酸を追加しても良いし、異なるルイス酸を追加しても良い。また、B法においても、オキシスチレン系単量体の重合の際には、オキシスチレン系単量体のリビングカチオン重合に好適なルイス酸(II)を用いる必要がある。ルイス酸(II)は、ビニルエーテル系単量体とオキシスチレン系単量体の混合物を反応系内に添加する際に追加しても良いし、ビニルエーテル系単量体の反応が終了した時点で追加しても良い。
【0045】
アーム形成工程において追加されるルイス酸の量は、特に限定されないが、使用するビニルエーテル系単量体とオキシスチレン系単量体の重合特性あるいは重合濃度を考慮して設定することができる。通常は各種単量体に対して0.1〜100モル%で使用することができ、好ましくは1〜50モル%の範囲で使用することができる。
【0046】
各重合条件は、使用するルイス酸、開始種、単量体及び溶媒等の種類により異なるが、重合温度としては、通常−80℃〜150℃の範囲が好ましく、−78℃〜80℃の範囲内がより好ましい。また重合時間は、通常10時間〜250時間の範囲である。
【0047】
B法によるアーム形成においては、上記条件に加え、オキシスチレン系単量体の反応速度定数k
OSとビニルエーテル系単量体の反応速度定数k
VEとの反応速度定数比がk
VE/k
OS≧1650となるような条件で反応させることで、オキシスチレン系単量体とビニルエーテル系単量体が共存する条件下にもかかわらず、はじめにビニルエーテル系単量体のみが重合し、ビニルエーテル系単量体がすべて消費された後でオキシスチレン系単量体の重合がおこるため、一段階反応が可能となる。
【0048】
オキシスチレン系単量体の反応速度定数k
OSとビニルエーテル系単量体の反応速度定数k
VEは、オキシスチレン系単量体とビニルエーテル系単量体が共存する重合条件において各単量体の転化率をモニターすることにより求められるものであり、単量体のほか、重合温度、開始剤、ルイス酸、溶媒の種類などさまざまな要因で変動するので、適宜これらの要因を調整すればよい。
【0049】
B法の実施において、k
VE/k
OS≧1650となるような条件が発現可能であれば、単量体、重合温度、開始剤、ルイス酸、溶媒の組み合わせは特に限定されないが、単量体としては、より反応速度定数の大きなビニルエーテル系単量体とより反応速度の小さなオキシスチレン系単量体を組み合わせたほうが、反応速度定数比が大きくなるため好ましい。好適な単量体の組み合わせとしては、例えば、エチルビニルエーテルとp−tert−ブトキシスチレンの組み合わせなどが挙げられる。当該単量体の組み合わせの場合、−30℃以下、好ましくは−40℃以下でリビングカチオン重合を行うことによりk
VE/k
OS≧1650を満足することができ、定量的にジブロックアームを形成することができる。
【0050】
目的とする星型ポリマーは、所望の重合度で反応停止剤を添加して重合反応を停止し、必要に応じて金属化合物等の触媒残渣を除去した後、(1)ポリマー溶液から揮発分を留去する方法、または(2)大量の貧溶媒を添加し、ポリマーを沈殿させ分離する方法等により単離することができる。
【0051】
反応停止剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;ジメチルアミン、ジエチルアミン等のアミン;水、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液等のように、末端停止剤として作用する化合物及び/またはルイス酸の活性を失活させる働きを有する化合物が用いられる。
【0052】
また、ルイス酸である金属化合物を除去する方法としては、水または塩酸、硝酸、硫酸等の酸を含む水溶液で処理する方法;シリカゲル、アルミナ、シリカ−アルミナ等の無機酸化物で処理する方法;イオン交換樹脂で処理する方法等が挙げられる。金属化合物等の除去効率やコストを考慮するとイオン交換樹脂を用いて処理する方法が最も好ましい。
【0053】
金属イオンの除去には、陽イオン交換樹脂が有効である。また、陽イオン交換樹脂の酸性度が高く、得られた星型ポリマーが加水分解及び/または架橋反応を起こして低分子量化または高分子量化する恐れがある場合は、イオン効果樹脂として陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂の混合品(混床イオン交換樹脂)を用いてもよい。
【0054】
陽イオン交換樹脂としては、例えば、オルガノ(株)製アンバーリスト15DRY(商品名)、三菱化学(株)製ダイヤイオンSK1BH、SK104H、PK208H、PK216H、PK228H(商品名)等の強酸性陽イオン交換樹脂などが挙げられる。混床イオン交換樹脂としては、オルガノ(株)製アンバーリストMSPS2−1・DRY(商品名)等の強酸性陽イオン交換樹脂と弱塩基性陰イオン交換樹脂の混合品などが挙げられる。
【0055】
なお、オキシスチレン系単量体(3)の置換基R
5や、置換基R
6には、酸やアルカリにより容易に脱離して水酸基を与えるものがあり、そのような置換基を有するオキシスチレン系単量体を利用して得られた星型ポリマーを脱保護し、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位をアームに持つ星型ポリマーを得ることもできる。
【0056】
このような保護基を脱保護して得られる、ヒドロキシスチレン系重合体をアームに持つ星型ポリマーを得る場合には、例えば溶媒中、塩酸、硫酸などの酸触媒下や水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ条件下で、反応温度50〜150℃、反応時間1〜30時間反応を行い、保護基を脱離させればよい。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例において得られた星型ポリマーの物性評価は以下の方法より行った。
【0058】
(1)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により標準ポリスチレン検量線から求めた〔RI検出器;カラムは
昭和電工(株)製ShodexLF804×3本;溶離液はテトラヒドロフラン〕。
(2)絶対分子量(Mwabsolute):
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)−粘度法により絶対分子量を求めた。〔RI検出器;粘度計;カラムは
昭和電工(株)製ShodexKF−800D+KF−805L×2本;溶離液はテトラヒドロフラン〕。
(3)枝数(f):
枝数(f)は、次式に従って算出した。
f=A×B/C
A:アーム形成モノマーの重量画分
B:Mwabsolute(星)
C:Mw(枝)
(4)粒径:
粒径は、動的光散乱(DLS)(大塚電子(株)製)により解析した〔溶離液はテトラヒドロフラン〕
【0059】
実 施 例 1
核−エチルビニルエーテル−p−tert−ブトキシスチレン共重合 系星型ポリマーの製造(A法によるアーム形成):
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、アルゴン置換後、アルゴン雰囲気下で加熱してガラス容器内の吸着水を除いた。容器内に1−イソブトキシエチルアセテート(以下、「IBEA」)14.8ミリモーラー(以下、「mM」と略記する)、1,4−ビス(ビニルオキシメチル)シクロヘキサン(以下、「CHDVE」と記載する)29.5mM、酢酸エチル3.7モーラー(以下、「M」と略記する)およびトルエン185mlを入れ、冷却した。
【0060】
系内温度が−10℃に達したところでEt
1.5AlCl
1.5のトルエン溶液(11.4mM)を加えて重合を開始した。CHDVEのビニル基の転換を時分割にゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する)を用いてモニタリングし、GPCの波形が一定になるまで反応を行った。
【0061】
GPCの波形が一定になった時点で反応溶液を少量採取し、ナトリウムメトキシドを含むメタノールで反応を停止させ、GPCにより分析したところ、得られたCHDVEの核ポリマーは、Mw=18,000、Mw/Mn=1.71であった。
【0062】
次いで、エチルビニルエーテル(以下、「EVE」と記載する)0.16Mを反応溶液に添加し、Et
1.5AlCl
1.5のトルエン溶液(23mM)を加え、更に反応温度−10℃で反応を続けた。EVEの転換が終了した時点で反応溶液を少量採取し、ナトリウムメトキシドを含むメタノールで反応を停止させた。
【0063】
GPCにより分析したところ、得られた核−EVE系星型ポリマーは、Mw=35,400、Mw/Mn=1.55の単分散ポリマーであった。
【0064】
次に、p−tert−ブトキシスチレン(以下、「PTBOS」と記載する)0.16Mを反応溶液に添加し、SnCl
4のトルエン溶液(186mM)を加え、更に反応温度−10℃で反応を続けた。PTBOSの転換が終了した時点で、重合系内にメタノールを加えて反応を停止した。得られた核−EVE−PTOBS系星型ポリマーは、Mw=60,300、Mw/Mn=1.54であった。
【0065】
更に反応溶液にアンバーリストMSPS2−1・DRY〔商品名、オルガノ(株)製〕を25wt%添加し、室温で2時間攪拌した後、1μmのフィルタに通液させた。この液をエバポレータで減圧濃縮し、核−EVE−PTBOS系星型ポリマーを得た。
【0066】
ここで得られたポリマーは、Mw=73,900、Mw/Mn=1.44であった。また、得られたポリマーの絶対分子量をGPC−
粘度法により測定したところ、Mwabsoluteは220,000となり、それに基づいて求めた枝の数は69本であり、粒径は46nmであった。通常の重量平均分子量がGPC−
粘度法による絶対分子量に比べて小さいことから得られたポリマーは分岐の多いコンパクトな構造を持つことが明らかである。したがって、得られたポリマーは星型ポリマーである。
【0067】
実 施 例 2
核−エチルビニルエーテル−p−tert−ブトキシスチレン共重合 系星型ポリマーの製造(B法によるアーム形成):
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、アルゴン置換後、アルゴン雰囲気下で加熱してガラス容器内の吸着水を除いた。容器内にIBEA14.8mM、CHDVE29.5mM、酢酸エチル3.7M、トルエン185mlを入れ、冷却した。
【0068】
系内温度が−10℃に達したところでEt
1.5AlCl
1.5のトルエン溶液(12.5mM)を加えて重合を開始した。CHDVEのビニル基の転換を時分割にGPCを用いてモニタリングし、GPCの波形が一定になるまで反応を行った。
【0069】
GPCの波形が一定になった時点で反応溶液を少量採取し、ナトリウムメトキシドを含むメタノールで反応を停止させ、GPCにより分析したところ、得られたCHDVEの核ポリマーは、Mw=15,600、Mw/Mn=1.64であった。
【0070】
次いで、Et
1.5AlCl
1.5のトルエン溶液(23mM)を添加し、SnCl
4のトルエン溶液(186mM)を加えて、反応温度が−40℃まで冷却した後、EVE0.16MとPTBOS0.16Mの混合物を加えて更に−40℃で反応を続けた。
【0071】
EVEとPTBOSの転換が終了した時点で、重合系内にメタノールを加えて反応を停止した。ここでPTBOSの反応速度定数k
TBOSとEVEの反応速度定数k
EVEの比であるk
EVE/k
TBOSは1830と算出された。また得られた核−EVE−PTBOS系星型ポリマーは、Mw=59,700、Mw/Mn=1.45であった。
【0072】
実 施 例 3
核−エチルビニルエーテル−p−イソプロペニルフェノール共重合系 星型ポリマーの製造(A法によるアーム形成):
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、アルゴン置換後、アルゴン雰囲気下で加熱してガラス容器内の吸着水を除いた。容器内にIBEA14.8mM、CHDVE29.5mM、酢酸エチル3.7M、トルエン185mlを入れ、冷却した。
【0073】
系内温度が−10℃に達したところでEt
1.5AlCl
1.5のトルエン溶液(12.5mM)を加えて重合を開始した。CHDVEのビニル基の転換を時分割にGPCを用いてモニタリングし、GPCの波形が一定になるまで反応を行った。
【0074】
GPCの波形が一定になった時点で反応溶液を少量採取し、ナトリウムメトキシドを含むメタノールで反応を停止させ、GPCにより分析したところ、得られたCHDVEの核ポリマーは、Mw=18900、Mw/Mn=1.81であった。
【0075】
次いで、EVE0.18Mを反応溶液に添加し、Et
1.5AlCl
1.5のトルエン溶液(28mM)を加えて更に反応温度−10℃で反応を続けた。
【0076】
EVEの転換が終了した時点で反応溶液を少量採取し、ナトリウムメトキシドを含むメタノールで反応を停止させ、GPCにより分析したところ、得られた核−EVE系星型ポリマーは、Mw=37200、Mw/Mn=1.46の単分散ポリマーであった。
【0077】
次に、p−イソプロペニルフェノール(以下、「PIPP」と記載する)の酢酸エチル溶液(0.032M)を反応溶液に添加し、SnCl
4のトルエン溶液(204mM)を加えて更に反応温度−10℃で反応を続けた。
【0078】
PIPPの転換が終了した時点で、重合系内にメタノールを加えて反応を停止した。得られた核−EVE−PIPP系星型ポリマーは、Mw=43900、Mw/Mn=1.59であった。
【0079】
比 較 例 1
核−p−tert−ブトキシスチレン−エチルビニルエーテル共重合 系星型ポリマーの製造(オキシスチレン系単量体、ビニルエーテル系 単量体の順に反応させた場合):
三方活栓をつけたガラス容器を準備し、アルゴン置換後、アルゴン雰囲気下で加熱してガラス容器内の吸着水を除いた。容器内にIBEA14.8mM、CHDVE29.5mM、酢酸エチルM、トルエン185mlを入れ、冷却した。
【0080】
系内温度が−10℃に達したところでEt
1.5AlCl
1.5のトルエン溶液(11.4mM)を加えて重合を開始した。CHDVEのビニル基の転換を時分割にGPCを用いてモニタリングし、GPCの波形が一定になるまで反応を行った。
【0081】
GPCの波形が一定になった時点で反応溶液を少量採取し、ナトリウムメトキシドを含むメタノールで反応を停止させ、GPCにより分析したところ、得られたCHDVEの核ポリマーは、Mw=18000、Mw/Mn=1.71であった。
【0082】
次いで、PTBOS0.16Mを反応溶液に添加し、SnCl
4のトルエン溶液(186mM)を加えて更に反応温度−10℃で反応を続けた。
【0083】
PTBOSの転換が終了した時点で、反応溶液を少量採取し、ナトリウムメトキシドを含むメタノールで反応を停止させ、GPCにより分析したところ、得られた核−PTOBS系星型ポリマーは、Mw=102600、Mw/Mn=1.51であった。
【0084】
次に、EVE0.16Mを反応溶液に添加し反応温度−10℃で反応を続けたところ、GPCの波形は2峰性ピークとなり、目的とするスターポリマーを得ることはできない結果となった。
【0085】
比 較 例 2
核−エチルビニルエーテル−p−tert−ブトキシスチレン共重合 系星型ポリマーの製造(k
VE/k
OS<1650の場合):
EVE及びPTBOSの反応温度を−20℃とした以外は実施例2と同様にして反応を行った。
【0086】
各単量体の消費量をGCでモニタリングした結果、PTBOSの反応速度定数k
TBOSとEVEの反応速度定数k
EVEの比であるk
EVE/k
TBOSは1600と算出された。またEVEの転化率が100%となる前に、PTBOSの反応が起きていることが確認され、目的とするスターポリマーを得ることはできない結果となった。