特許第5731424号(P5731424)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5731424地下を走る電車内において停車駅を判定する携帯装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731424
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】地下を走る電車内において停車駅を判定する携帯装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20150521BHJP
   H04M 1/00 20060101ALI20150521BHJP
   G01C 5/06 20060101ALN20150521BHJP
【FI】
   G01C21/26 P
   H04M1/00 R
   !G01C5/06
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-35458(P2012-35458)
(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公開番号】特開2013-170944(P2013-170944A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2014年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 孝文
(72)【発明者】
【氏名】村松 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】横山 浩之
【審査官】 根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−167506(JP,A)
【文献】 特開2011−229091(JP,A)
【文献】 特開2009−150663(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/26
H04M 1/00
G01C 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、
気圧を測定する気圧センサと、
第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅から前記第2駅に走行している間の車内の気圧値の時間列を含む当該駅の組に対応する基準気圧データを、各駅の組について保持する気圧データベースと、
前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、
停車状態になると、当該停車状態になるまでの走行状態の間に前記気圧センサが測定した複数の気圧値の時間列である測定気圧データと、前記気圧データベースの各基準気圧データとの相関を実行して、前記測定気圧データに対する各基準気圧データの類似度を算出する第1類似度算出手段と、
前記第1類似度算出手段が算出した類似度のうち、最も類似度が高い基準気圧データに対応する駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、
を備えている携帯装置。
【請求項2】
前記第1類似度算出手段は、測定気圧データの時間的に隣接する2つの気圧値の差分列と、基準気圧データの時間的に隣接する2つの気圧値の差分列の相関を実行して類似度を算出する、
請求項1に記載の携帯装置。
【請求項3】
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、
気圧を測定する気圧センサと、
第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅から前記第2駅に走行している間の車内の気圧値の時間列の、隣接する2つの気圧値の差分列を含む当該駅の組に対応する基準気圧データを、各駅の組について保持する気圧データベースと、
前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、
停車状態になると、当該停車状態になるまでの走行状態の間に前記気圧センサが測定した複数の気圧値の時間列の、隣接する2つの気圧値の差分列である測定気圧データと、前記気圧データベースの各基準気圧データとの相関を実行して、前記測定気圧データに対する各基準気圧データの類似度を算出する第1類似度算出手段と、
前記第1類似度算出手段が算出した類似度のうち、最も類似度が高い基準気圧データに対応する駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、
を備えている携帯装置。
【請求項4】
前記第1類似度算出手段は、所定数の連続する駅の組において走行状態の間に前記気圧センサが測定した各測定気圧データと、前記所定数の連続する駅の組に対応する各基準気圧データとの相関を実行して類似度を求める、
請求項1から3のいずれか1項に記載の携帯装置。
【請求項5】
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、
気圧を測定する気圧センサと、
第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅に停車しているときと前記第2駅に停車しているときの車内の気圧の差である、当該駅の組に対応する基準気圧差を、各駅の組について保持する気圧データベースと、
前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、
停車状態になると、前記気圧センサが測定した気圧値と前回の停車状態時に前記気圧センサが測定した気圧値との差である測定気圧差と、前記気圧データベースの各基準気圧差との差の絶対値から類似度を算出する第2類似度算出手段と、
前記第2類似度算出手段が算出した類似度のうち、最も類似度が高い基準気圧差に対応する駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、
を備えている携帯装置。
【請求項6】
前記第2類似度算出手段は、所定数の連続する駅の組のそれぞれにおいて、測定気圧差と基準気圧差と差の絶対値を求め、求めた絶対値の和又は積を類似度とする、
請求項5に記載の携帯装置。
【請求項7】
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、
気圧を測定する気圧センサと、
第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅から前記第2駅に走行している間の車内の気圧値の時間列を含む当該駅の組に対応する基準気圧データと、前記第1駅に停車しているときと前記第2駅に停車しているときの車内の気圧の差である、当該駅の組に対応する基準気圧差を、各駅の組について保持する気圧データベースと、
前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、
停車状態になると、当該停車状態になるまでの走行状態の間に前記気圧センサが測定した複数の気圧値の時間列である測定気圧データと、前記気圧データベースの各基準気圧データとの相関を実行して、前記測定気圧データに対する各基準気圧データの第1類似度を算出する第1類似度算出手段と、
停車状態になると、前記気圧センサが測定した気圧値と前回の停車状態時に前記気圧センサが測定した気圧値との差である測定気圧差と、前記気圧データベースの各基準気圧差との差の絶対値から第2類似度を算出する第2類似度算出手段と、
対応する駅の組の第1類似度と第2類似度から当該駅の組に対する合計類似度を算出し、最も合計類似度が高い駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、
を備えている携帯装置。
【請求項8】
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、
気圧を測定する気圧センサと、
第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅から前記第2駅に走行している間の車内の気圧値の時間列の、隣接する2つの気圧値の差分列を含む当該駅の組に対応する基準気圧データと、前記第1駅に停車しているときと前記第2駅に停車しているときの車内の気圧の差である、当該駅の組に対応する基準気圧差を、各駅の組について保持する気圧データベースと、
前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、
停車状態になると、当該停車状態になるまでの走行状態の間に前記気圧センサが測定した複数の気圧値の時間列の、隣接する2つの気圧値の差分列である測定気圧データと、前記気圧データベースの各基準気圧データとの相関を実行して、前記測定気圧データに対する各基準気圧データの第1類似度を算出する第1類似度算出手段と、
停車状態になると、前記気圧センサが測定した気圧値と前回の停車状態時に前記気圧センサが測定した気圧値との差である測定気圧差と、前記気圧データベースの各基準気圧差との差の絶対値から第2類似度を算出する第2類似度算出手段と、
対応する駅の組の第1類似度と第2類似度から当該駅の組に対する合計類似度を算出し、最も合計類似度が高い駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、
を備えている携帯装置。
【請求項9】
前記合計類似度は、前記第1類似度に第1重み係数を乗じた値と、前記第2類似度に第2重み係数を乗じた値の和である、
請求項7又は8に記載の携帯装置。
【請求項10】
前記第1類似度算出手段は、所定数の連続する駅の組において走行状態の間に前記気圧センサが測定した各測定気圧データと、前記所定数の連続する駅の組に対応する各基準気圧データとの相関を実行して第1類似度を求め、
前記第2類似度算出手段は、前記所定数の連続する駅の組のそれぞれにおいて、測定気圧差と基準気圧差と差の絶対値を求め、求めた絶対値の和又は積を第2類似度とする、
請求項7から9のいずれか1項に記載の携帯装置。
【請求項11】
前記状態判定手段は、前記気圧センサが測定する気圧の変化から停車状態であるか、走行状態であるかを判定する、
請求項1から10に記載の携帯装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の携帯装置として、コンピュータを動作させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下を走る電車内において停車駅を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、非特許文献1は、GPS(Global Positioning System)を使用した測位について開示している。しかしながら、GPSは、屋内及び地下では利用できないという問題がある。これに対して、非特許文献2及び3は、屋内や地下で測位を行うための構成を開示している。しかしながら、測位が必要な場所に無線基地局を配置するというものであり、無線基地局の設置及び運用コストが問題となる。また、非特許文献4は、無線基地局といったインフラ設備を必要とすることなく、測位を行う構成を開示している。具体的には、加速度センサ及び地磁気センサを利用して、自律的に測位を行うというものである。なお、非特許文献1は、地磁気センサから得られる情報を基にユーザの場所を推定する構成も開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】B.Hofmann−Wellenhof,et al., "Global Positioning System: Theory and Practice",1997年
【非特許文献2】Bahl, P., et al.,"RADAR: In−Building RF−based User Lo−cation and Tracking System,"Proceedings of the 19th Annual Joint Conference of the IEEE Computer and Communications Societies INFOCOM '00,pp.775−784,2000年
【非特許文献3】Inje Lee, et al.,"WiFi−based Subway Nagigation System,"Proceedings of International Microwave Workshop Series on Intelligent Radio for Future Personal Terminals(IMWS−IRFPT'11),pp.43−46,2011年8月
【非特許文献4】Ulf Blanke, et al.,"South by South−East or sitting at the desk. Can orientation be a place?," Proceedings of The 15th Annual International Symposium on Wearable Computers (ISWC'11), pp.43−46,2011年6月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、海外からの旅行者にとって、慣れない日本の地下鉄に乗車しているときに、現在の停車駅かどこであるかを判断しづらい場合がある。この様な場合において、旅行者が所持している携帯電話やPDAといった携帯装置が、現在の駅を判定して地下鉄路線図と共に表示すれば便利である。また、携帯電話等の所持者の位置をネットワーク側に通知して、その位置を使用して行うサービスを提供するにあたり、地下鉄乗車時においても、例えば、現在の停車駅をネットワーク側に通知することで、継続したサービスの提供が可能になり得る。具体的には、事故や列車の故障等によりダイヤが乱れている場合、現在の停車駅に基づき適切なルート等を携帯装置の所持者に提供することができる。
【0005】
しかしながら、GPSからの信号は地下には届かず、地下鉄乗車時にはGPSによる測位はできない。また、非特許文献2及び3に記載の技術は、無線基地局といったインフラ設備を必要とする。さらに、非特許文献1及び4に記載の技術は、無線基地局といったインフラ設備を必要としないが、地下鉄電車内といった地下においては地磁気の乱れが大きく、非特許文献1及び4に記載の技術を適用することは困難である。
【0006】
本発明は、地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による携帯装置は、
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、気圧を測定する気圧センサと、第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅から前記第2駅に走行している間の車内の気圧値の時間列を含む当該駅の組に対応する基準気圧データを、各駅の組について保持する気圧データベースと、前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、停車状態になると、当該停車状態になるまでの走行状態の間に前記気圧センサが測定した複数の気圧値の時間列である測定気圧データと、前記気圧データベースの各基準気圧データとの相関を実行して、前記測定気圧データに対する各基準気圧データの類似度を算出する第1類似度算出手段と、前記第1類似度算出手段が算出した類似度のうち、最も類似度が高い基準気圧データに対応する駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
本発明による携帯装置は、
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、気圧を測定する気圧センサと、第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅から前記第2駅に走行している間の車内の気圧値の時間列の、隣接する2つの気圧値の差分列を含む当該駅の組に対応する基準気圧データを、各駅の組について保持する気圧データベースと、前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、停車状態になると、当該停車状態になるまでの走行状態の間に前記気圧センサが測定した複数の気圧値の時間列の、隣接する2つの気圧値の差分列である測定気圧データと、前記気圧データベースの各基準気圧データとの相関を実行して、前記測定気圧データに対する各基準気圧データの類似度を算出する第1類似度算出手段と、前記第1類似度算出手段が算出した類似度のうち、最も類似度が高い基準気圧データに対応する駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
本発明による携帯装置は、
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、気圧を測定する気圧センサと、第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅に停車しているときと前記第2駅に停車しているときの車内の気圧の差である、当該駅の組に対応する基準気圧差を、各駅の組について保持する気圧データベースと、前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、停車状態になると、前記気圧センサが測定した気圧値と前回の停車状態時に前記気圧センサが測定した気圧値との差である測定気圧差と、前記気圧データベースの各基準気圧差との差の絶対値から類似度を算出する第2類似度算出手段と、前記第2類似度算出手段が算出した類似度のうち、最も類似度が高い基準気圧差に対応する駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明による携帯装置は、
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、気圧を測定する気圧センサと、第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅から前記第2駅に走行している間の車内の気圧値の時間列を含む当該駅の組に対応する基準気圧データと、前記第1駅に停車しているときと前記第2駅に停車しているときの車内の気圧の差である、当該駅の組に対応する基準気圧差を、各駅の組について保持する気圧データベースと、前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、停車状態になると、当該停車状態になるまでの走行状態の間に前記気圧センサが測定した複数の気圧値の時間列である測定気圧データと、前記気圧データベースの各基準気圧データとの相関を実行して、前記測定気圧データに対する各基準気圧データの第1類似度を算出する第1類似度算出手段と、停車状態になると、前記気圧センサが測定した気圧値と前回の停車状態時に前記気圧センサが測定した気圧値との差である測定気圧差と、前記気圧データベースの各基準気圧差との差の絶対値から第2類似度を算出する第2類似度算出手段と、対応する駅の組の第1類似度と第2類似度から当該駅の組に対する合計類似度を算出し、最も合計類似度が高い駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
本発明による携帯装置は、
地下を走る電車内において停車している駅を判定する携帯装置であって、気圧を測定する気圧センサと、第1駅と該第1駅の隣の第2駅の駅の組について、前記第1駅から前記第2駅に走行している間の車内の気圧値の時間列の、隣接する2つの気圧値の差分列を含む当該駅の組に対応する基準気圧データと、前記第1駅に停車しているときと前記第2駅に停車しているときの車内の気圧の差である、当該駅の組に対応する基準気圧差を、各駅の組について保持する気圧データベースと、前記電車が停車状態であるか、走行状態であるかを判定する状態判定手段と、停車状態になると、当該停車状態になるまでの走行状態の間に前記気圧センサが測定した複数の気圧値の時間列の、隣接する2つの気圧値の差分列である測定気圧データと、前記気圧データベースの各基準気圧データとの相関を実行して、前記測定気圧データに対する各基準気圧データの第1類似度を算出する第1類似度算出手段と、停車状態になると、前記気圧センサが測定した気圧値と前回の停車状態時に前記気圧センサが測定した気圧値との差である測定気圧差と、前記気圧データベースの各基準気圧差との差の絶対値から第2類似度を算出する第2類似度算出手段と、対応する駅の組の第1類似度と第2類似度から当該駅の組に対する合計類似度を算出し、最も合計類似度が高い駅の組から、停車している駅を判定する駅判定手段と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
基地局といった設備を使用することなく、地下を走る路線内において停車している駅を判定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態による携帯装置の構成図。
図2】地下鉄路線における気圧の時間変化を示す図。
図3】地下鉄の1駅間における気圧の時間変化を示す図。
図4】駅間の気圧の差を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の例示的な一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明に使用する各図において、発明の理解に必要ではない構成要素については省略している。
【0015】
図2は、地下鉄丸ノ内線で荻窪駅から池袋駅まで乗車したときの、時間に対する気圧変化と、地下鉄浅草線で西馬込駅から押上駅まで乗車したときの、時間に対する気圧変化の実測値である。なお、時間は距離と関係するので、図2は、起点からの距離に対する気圧変化の実測値でもある。図2の例に示す様に、路線の高さの変化等は路線により異なるため、時間(距離)に対する気圧の変化は路線により異なることになる。図3は、隣接するA駅からB駅まで乗車したときと、隣接するC駅からD駅まで乗車したときの、時間(距離)に対する気圧変化の実測値である。図3に示す様に、隣接する駅間における気圧変化も、各隣接駅間で異なることになる。
【0016】
(第一実施形態)本実施形態は、停車駅の判定に、走行中に所定の間隔で測定した気圧を利用する。このため、地下鉄路線の隣接する2つの駅間において所定の時間間隔で測定した気圧を気圧データベースとしてデータベース化して携帯装置に保存しておく。より具体的には、第1の駅を出発してから次の第2の駅に到着するまでに所定の時間間隔で測定した複数の気圧値の時間列を含む気圧データを、第1の駅から第2の駅に至る駅の組に対応させて保存する。なお、第1の駅から第2の駅に至る駅の組と、第2の駅から第1の駅に至る駅の組は異なる駅の組である。また、同じ第1の駅から第2の駅に至る組であっても、路線が異なれば異なる組である。つまり、気圧データベースは、路線及び隣接する2つの方向を考慮した各駅の組について、複数の気圧値の時間列を含む気圧データを有するデータベースである。以後、駅の組の内の前記第2の駅を到着駅と呼び、気圧データベースが有する各駅の組に対する気圧データを基準気圧データと呼ぶものとする。
【0017】
携帯装置は、地下鉄乗車時に、基準気圧データと同じ時間間隔で気圧を測定し、停車時に、その前の駅から測定した気圧データに最も近い基準気圧データを判定する。そして、携帯装置は、判定した最も近い基準気圧データに対応する駅の組の到着駅を、現在、停車している駅と決定する。以下、詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態による携帯装置10の機能構成図である。なお、以下に説明する停車駅の判定処理は、例えば、携帯装置10のユーザからの判定処理の開始を示す入力により開始される。気圧データベース1は、上述した様に、地下の路線における各駅の組に対する基準気圧データを有するデータベースである。なお、基準気圧データの各気圧値を取得した時間間隔を、以後、データ周期と呼ぶものとする。例えば、データ周期が2秒である場合、ある駅間の走行時間が1分であるとすると、この駅間においては30個の気圧値が基準気圧データに含まれることになる。なお、各基準気圧データの各気圧値は、その時間順に並べられたベクトル・データである。
【0019】
気圧センサ2は、図示しない制御部が指定するサンプリング周期毎に気圧を測定する。なお、気圧センサ2のサンプリング周期は、データ周期以上、例えば、データ周期の整数倍とすることが好ましい。状態判定部3は、気圧センサ2が測定する気圧値の変化から、現在、停車中であるか走行中であるかを判定する。具体的には、例えば、気圧センサ2がサンプリングした過去k個の気圧値の平均と、最新の気圧の値との差が閾値を超えることが、一定回数以上続けば走行状態と判定し、それ以外であれば停車状態であると判定する。また、逆に、気圧センサ2がサンプリングした過去k個の気圧値の平均と、最新の気圧の値との差が閾値以内であることが、一定回数以上続けば停止状態と判定し、それ以外であれば走行状態であると判定することもできる。また、停止状態から走行状態への遷移の判定基準と、走行状態から停止状態への判定基準を異なるものとすることもできる。さらに、停車状態及び走行状態の判定は、加速度計等の他の測定方法を代わりに使用し、あるは、併用することもできる。
【0020】
第1類似度算出部4は、停車状態になると、前回の停車状態から今回の停車状態になるまでの走行状態の間に気圧センサ2がサンプリングした気圧データと、気圧データベース1の各基準気圧データとの相関を実行して類似度を算出する。駅判定部6は、第1類似度算出部4が算出した類似度の内の最も類似度の高い基準気圧データから現在の停車駅を判定する。具体的には、最も類似度の高い基準気圧データに対応する駅の組の到着駅を現在停車している駅と判定する。表示部7は、駅判定部6が判定した駅を、例えば、路線図と共に表示する。なお、第2類似度算出部5は本実施形態においては使用しない。
【0021】
続いて、第1類似度算出部4における類似度の算出について説明する。第1類似度算出部4は、状態判定部3が出力する状態が、停車状態から走行状態に状態が変化してから、その後、再度、停車状態に状態が変化するまでに、気圧センサ2から気圧値を取得する。なお、気圧センサ2のサンプリング周期がデータ周期より速い場合には、気圧センサ2から取得する気圧値からデータ周期に合致する気圧値のみを選択、或いは、補間によりデータ周期に合致する気圧値を求める。例えば、データ周期が2秒であり、サンプリング周期が1秒であるとすると、第1類似度算出部4は、走行状態に以降後に気圧センサ2が出力する気圧値の内の偶数番目の気圧値を取得する。以後、第1類似度算出部4がある駅間を走行中に気圧センサ2から選択又は補間により取得した、データ周期毎の複数の気圧値の時間列を含むデータを、測定気圧データと呼ぶものとする。
【0022】
続いて、第1類似度算出部4は、測定気圧データと、気圧データベース1の各基準気圧データの相関を求める。具体的には、測定気圧データと基準気圧データの対応する気圧値の差の絶対値の合計を求める。ここで、対応する気圧値とは、時間列において同じ位置のデータである。例えば、測定気圧データの気圧値の時間列が、(x、x、・・・、x)であり、ある基準気圧データの気圧値の時間例が、(y、y、・・・、y)であるとする。この場合、第1類似度算出部4は、
|x−y|+|x−y|+・・・+|x−y
を類似度とする。
【0023】
なお、基準気圧データの気圧値の時間例が、(y、y、・・・、y)であり、n<mとすると、第1類似度算出部4は、xn+1からxの値を0として類似度を算出する。つまり、
|x−y|+・・・+|x−y|+|0−yn+1|+・・・+|0−y
を類似度とする。同様に、第1類似度算出部4は、n>mであれば、ym+1からyの値を0として類似度を算出する。この様に、本実施形態においては、類似度の値が低いほど、類似度が高くなる。なお、類似度の算出は、差分の絶対値に限定されず、差分の2乗の合計であっても良い。さらに、横軸に時間をとり、縦軸に気圧を取ったグラフを描くときに、気圧センサ2が測定した気圧値のグラフと、気圧データベース1に保存されている気圧値のグラフとの差が少ないほど類似度が高くなる任意の方法を類似度の算出に使用することができる。また、例えば、機械学習を利用した学習推定のアルゴリズムを利用することができる。いずれにしても、第1類似度算出部4は、各駅間における基準気圧データと測定気圧データとの相関から、類似度を算出して、駅判定部6は、類似度から現在の停車駅を判定する。
【0024】
なお、上記実施形態においては、気圧の測定値を使用して類似度を算出していたが、隣接する時間の気圧値の差分を利用することもできる。つまり、測定気圧データが、(x、x、・・・、x)であり、気圧データベース1のある駅間の基準気圧データが、(y、y、・・・、y)であるとする。この場合、(x−x、x−x、・・・、x−xn−1)と(y−y、y−y、・・・、y−yn−1)との相関値を類似度とする。気圧の絶対値は時間により変動するが、時間的に隣接する気圧値の差分は、気圧の絶対値が相殺されて、高低差を表すものとなるため、この値は時間により変動しない。よって、現在の停車駅をより正確に判定することが可能になる。なお、差分により求める場合において、測定気圧データの気圧値の数と、基準気圧データの気圧値の数が異なる場合は、数が少ない方の足らない気圧値については、上記と同じ様に値が0であるものとする。また、差分により求める場合には、気圧データベース1の各基準気圧データを、予め、駅間の気圧値の時間列の差分列としておく形態であっても良い。
【0025】
さらに、上記実施形態においては、1駅間の測定気圧データから停車駅を判定していたが、連続する複数の駅の組における測定気圧データを使用することができる。例えば、過去3駅間の測定気圧データから停車駅を判定するものとする。この場合、ある路線においては、駅Yi−3、Yi−2、Yi−1、Yの順に停車し、3つ前から2つ前の駅間での測定気圧データと、駅Yi−3からYi−2への駅間での基準気圧データとの相関をCi―2とし、2つ前から1つ前の駅間での測定気圧データと、駅Yi−2からYi−1への駅間での基準気圧データとの相関をCi―1とし、1つ前から現在の停車駅間での測定気圧データと、駅Yi−1からYへの駅間での基準気圧データとの相関をCとすると、類似度をCi―2×Ci―1×Cで求めることができる。なお、単に、3つ前の停車駅から現在の停車駅までの走行状態における気圧データと、駅Yi−3からYまでの基準気圧データとの差分の絶対値の合計により、つまり、Ci―2+Ci―1+Cで求めても良い。複数の駅間のデータを使用することで、隣接する駅間毎に独立して判定することと比較して、判定の精度を高くすることができる。
【0026】
(第二実施形態)続いて、第二実施形態について、第一実施形態との相違点を中心に説明する。図4に示す様に、駅の高度は一定ではないため、隣接する2つの駅の各駅で停車時に測定した気圧の差は、当該隣接する駅の高度差を反映したものとなる。本実施形態は、停車時において測定した気圧の差から現在の停車駅を判定するものである。本実施形態における携帯装置の構成は図1に示す通りであるが、本実施形態においては第1類似度算出部4を使用せず、代わりに、第2類似度算出部5を使用する。なお、本実施形態において、気圧データベース1は、第1の駅において停車時に測定した気圧値を、第1の駅の次の第2の駅において停車時に測定した気圧値から減じた値を、第1の駅と第2の駅の組に対応させて保存している。なお、以後、前記第2の駅を到着駅と呼び、気圧データベースが有する各駅の組に対する気圧差を基準気圧差と呼ぶものとする。
【0027】
第2類似度算出部5は、停車状態になると、気圧センサ2がサンプリングした気圧データを取得して、取得した値から前回の停車状態時に気圧センサ2が取得した気圧値を減算して測定気圧差を求める。なお、測定気圧差は、前回の停車状態時に気圧センサ2が取得した気圧値から、今回取得した値を減算する構成であっても良い。その後、第2類似度算出部5は、気圧データベース1が有する各基準気圧差と測定気圧差との差の絶対値を求めて類似度とする。よって、類似度の値が低いほど、類似度が高いことになる。駅判定部6は、第2類似度算出部5が算出した類似度の内の最も高い類似度を示す基準気圧差に対応する駅の組の到着駅を現在の停車駅と判定し、表示部7は、駅判定部6が判定した駅を、例えば、路線図と共に表示する。
【0028】
なお、本実施形態においても、過去の複数の駅間のデータを使用することができる。例えば、ある路線において、駅Yi−3、Yi−2、Yi−1、Yの順に停車し、3つ前と2つ前の停車駅での測定気圧差と、駅Yi−3とYi−2の組に対する基準気圧差との差の絶対値をDi―2とし、2つ前と1つ前の停車駅での測定気圧差と、駅Yi−2とYi−1の組に対する基準気圧差との差の絶対値をDi―1とし、1つ前と現在の停車駅での測定気圧差と、駅Yi−1とYの組に対する基準気圧差との差の絶対値をDとすると、類似度は、Di―2×Di―1×D又はDi―2+Di―1+Dで求めることができる。
【0029】
(第三実施形態)続いて、第三実施形態について説明する。本実施形態は、第一実施形態と第二実施形態を組み合わせたものである。つまり、第1類似度算出部4が算出したある駅の組に対する類似度をCとし、第2類似度算出部4が算出した同じ駅の組に対する類似度をDとすると合計類似度を、
合計類似度=αC+βD
により求めるものである。なお、α及びβは、走行状態における測定値から求めた類似度と、停車状態における測定値から求めた類似度の重み付けの係数であり、その値は任意の方法で決定できる。
【0030】
なお、本発明による携帯装置は、コンピュータを上記携帯装置として動作させるプログラムにより実現することができる。これらコンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
図1
図2
図3
図4