【文献】
鮮度保つ「窒素氷」製造装置開発 食の安全 尽きぬ探究心,北海道新聞 朝刊 全道遅版,2008年 1月11日,経済 p.11
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理水と前記窒素ガスは流体混合手段により混合液となすとともに、流体混合手段は、中央部側の流入口から流入した流体を周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路と、周縁部側から流入した流体を中央部側の流出口に向けて半径方向に流動させて集合させる集合流路とを有する混合ユニットを、ケーシング体内に同心円的に配設するとともに、ケーシング体の内周面に沿わせて拡散・混合流路の終端部と集合流路の始端部を連通させ、
混合ユニットは、中央部に流体の流入口を形成した円板状の第1拡散エレメントに、円板状の第2拡散エレメントを対面させて配置して、両拡散エレメントの間に拡散・混合流路を形成する一方、第2拡散エレメントの背面側に、中央部に流体の流出口を形成した円板状の集合エレメントを対面させて配置して、集合エレメントに集合流路を形成して構成し、
集合流路は、周縁部から中央部の流出口に向けて直状かつ同一幅に形成していることを特徴とする請求項1又は2記載の生ウニの再加工処理法。
前記集合エレメントは、上流側半部を下流側半部よりも小径の円板状に形成して、上流側半部の外周部に拡散・混合流路と連通する円形リング状の連通用凹部を形成し、上流側半部には周縁部から中央部の流出口に向けて直状かつ同一幅の流路形成用凹部を形成して、流路形成用凹部の開口面を第2拡散エレメントの背面により閉塞することで、連通用凹部と連通する集合流路を形成していることを特徴とする請求項3記載の生ウニの再加工処理法。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。すなわち、本発明に係る生ウニの再加工処理法は、
図1に示すように、前段としての前加工処理工程Aと、後段としての後加工処理工程(再加工処理工程)Bとを有している。
【0022】
そして、前加工処理工程Aは、殻から取り出した生ウニ(生殖巣部)Uをミョウバン(硫酸アルミニウムカリウム)が付加された冷却殺菌海水で処理して所定の生ウニ容器Cに詰める工程である。ここで、ミョウバンは生ウニUが形崩れするのを防止するため(保形用)に使用されている。
【0023】
また、後加工処理工程(再加工処理工程)Bは、混合液容器Dに混合液K(一定の塩分濃度を有する処理水と超微細な気泡を有する気泡群となした純窒素ガスとを混合してなるもの)を収容する混合液収容処理と、混合液Kが収容された混合液容器Dに、前加工処理工程Aで加工処理されて生ウニ容器Cに詰め込まれた生ウニUを、生ウニ容器Cごと一定時間(例えば、20分間〜40分間)浸漬する浸漬処理と、一定時間後に混合液Kから生ウニ容器Cごと生ウニUを取り出すとともに、傾斜した水切り台E上に一定時間(例えば、20分間)載置して水切りする水切り処理と、水切り処理した生ウニUを生ウニ容器Cごと一定時間(例えば、2時間〜3時間)だけ一定温度(例えば、3℃)で冷やし込む冷やし込み処理を順次行う工程である。そして、かかる後加工処理工程(再加工処理工程)Bにおいて、冷やし込み処理した生ウニUは、さらに、一定期間(例えば、8日間)は一定温度(例えば、1℃〜3℃)で冷蔵処理する工程と、一定温度(例えば、−18度〜−25度)に急速で凍結させるとともに長期間(例えば、1年)にわたって凍結状態を保持させて凍結処理する工程のいずれかを選択することができる。
【0024】
ここで、混合液Kは、後述する流体混合手段としての静止型流体混合装置10により、処理水に純窒素ガス(例えば、99.99%濃度以上の高純度窒素ガス)を溶解させて低濃度酸素処理水(高濃度窒素処理水)となした溶媒である。処理水としては、水道水、海水、塩水等を使用することができる。塩水は、水道水にかん水を適量だけ付加して、又は、にがりに塩を付加して塩分濃度を2.1%〜3.0%となしたものである。また、超微細な気泡を有する気泡群となした窒素ガスは窒素ナノバブル(ナノバブル化した窒素ガス)である。処理水には一定濃度(例えば、0.5ppm)の次亜塩素酸を一定量(例えば、0.3ミリリットル)添加している。
【0025】
このように構成して、混合液Kに、ミョウバンにより加工処理された生ウニUを一定時間(例えば、20分間〜40分間)浸漬して再加工処理することで、ミョウバンが有する渋味や苦味を解消して、生ウニU本来の食味を発現させることができる。この際、混合液Kは一定の塩分濃度を有する処理水と超微細な気泡を有する気泡群となした窒素ガスとを混合してなるものである。
【0026】
一般に、ナノバブルは生体に対して細胞レベルで何らかの影響を与える可能性がある。このため,窒素ナノバブルは生鮮食品、例えば、魚介類の表面にとどまらず、体内まで効果が及ぶので、体内の好気性が低下する。したがって、少なくとも体内の好気的バクテリアの増殖が抑制されるものと期待される。窒素ナノバブル含有窒素処理水は、生ウニU等の魚介類に対してその表面だけでなく、体内に生息する好気性バクテリアの増殖を著しく抑制して、魚介類の鮮度を保つ(魚介類の鮮度の指標値であるK値を低く保つ)ことが期待できる。ここで、K値とは、ATP関連化合物全体に占めるイノシン(HxR)とヒポキサンチン(Hx)の割合である。魚肉のATPは、死後ATP→ADP→AMP→IMP→HxR→Hxの経路で分解するので、HxRやHxの割合が低い程鮮度が良いとされる。刺身用に適当とされているK値は20%以下である。
【0027】
また、混合液Kから取り出した生ウニUを冷蔵処理することで、一定期間(例えば、8日間)は生ウニUの鮮度を保持させることができるため、遠方へ搬送するための時間を確保することができる。そして、急速凍結処理することで、長期間(例えば、1年)にわたって生ウニUの鮮度を保持させることができる。そのため、生ウニUの収穫量が少ない時期に凍結保存している生ウニUを解凍させることで、生ウニUを安定供給することができる。つまり、鮮度が保持された生ウニUの供給時期を自由にコントロールすることができるため、需要者が所望する時期に安定して生ウニUを提供することができる。
【0028】
流体混合手段としての静止型流体混合装置10により生成される混合液Kは、生ウニUを処理する処理水に窒素ガスを通気して、窒素ガスを超微細な気泡(ナノバブル)を有する気泡群となしたものである。そして、混合液Kは、処理水中に溶解している酸素を微細な気泡(ナノバブルよりも大径)となした窒素ガスに放散させ、酸素が放散した微細な窒素ガスを処理水中にて浮上させて、処理水から脱出させる(脱酸素)とともに、超微細な気泡(ナノバブル)となした窒素ガスを処理水中に混入(含有)させることで、窒素処理水として生成している。この際、静止型流体混合装置10によれば、処理水中の溶存酸素量の低減化効率を大幅に向上させる(例えば、800リットルの処理水中の溶存酸素量(DO値)を25分間に1.0(mg/L)未満に激減させる)ことができるとともに、窒素ナノバブルを含有して溶存酸素量が低減された窒素処理水を生成することができる。そして、かかる窒素処理水は窒素ナノバブルを含有しているため、窒素ナノバブルが生鮮食品、例えば、魚介類の表面にとどまらず、体内まで効果を及ぼして、体内の好気性を低下させることができる。その結果、混合液Kである窒素ナノバブル含有窒素処理水は、魚介類に対してその表面だけでなく、体内に生息する好気性バクテリアの増殖を著しく抑制して、魚介類の臭みを抑制するとともに鮮度を保つ(魚介類の鮮度の指標値であるK値を低く保つ)ことが期待できる。窒素ナノバブルはその粒径があまりにも小さいために長時間にわたって窒素処理水中に混入(含有)されることになり、経時的に窒素ナノバブル中の窒素が窒素処理水中に溶存されて、窒素処理水中の窒素溶存量を過飽和状態となすことができる。この際、窒素気泡(バブル)に加わる圧力は窒素気泡の大きさに反比例するため、窒素気泡が超微細(ナノ)になるにしたがって窒素気泡内の圧力は大きくなる。そのため、加圧作用によって窒素ナノバブル内部の気体である窒素は、処理水中に効率的に溶解する。
【0029】
[第1実施形態としての混合液生成装置の説明]
混合液Kを生成する混合液生成装置80を
図2に示す。混合液生成装置80は、後述する第1実施形態としての静止型流体混合装置10を具備して構成している。すなわち、混合液生成装置80は、静止型流体混合装置10の導入口17に上流側連通連結体19を介して流体Rを導入する導入管90を接続する一方、導出口18に流体Rを導出する導出管91を接続している。導入管90には導入用ポンプP1を設けて、導入用ポンプP1により導入口17を通して流体Rを静止型流体混合装置10に圧送するようにしている。そして、導入用ポンプP1により導入管90を通して異なる複数種類の流体R(本実施形態では処理水と純窒素ガス)を静止型流体混合装置10に圧送して導入し、静止型流体混合装置10により流体Rを混合処理して、混合処理が施された流体Rを混合液Kとなして導出管91を通して導出可能としている。また、導入管90に吸気管81を連通連結し、吸気管81から気体である純窒素ガスをエジェクタ効果(導入管90中の圧力と吸気管中の圧力との圧力差を利用した吸引効果)等により供給可能としている。82は吸気管81の中途部に取り付けた流量調整弁である。
【0030】
導出管91の中途部と、導入管90の導入用ポンプP1よりも下流側に位置する中途部との間には、導出側三方弁92と導入側三方弁93とを介して流体戻し管94を介設している。流体戻し管94の中途部には戻し用ポンプP2を設けている。各ポンプP1,P2としては、気液混合移送が可能なポンプ、すなわち、混合液Kを圧送する際にも、安定した吐出圧力及び吐出流量を確保することができるポンプ(例えば、株式会社ニクニ製の「気液移送ポンプ」)を使用することができる。
【0031】
このように構成して、混合液生成装置80では、導出側三方弁92と導入側三方弁93を適宜切り替えて、流体Rを導入管90→静止型流体混合装置10→導出管91→導出側三方弁92→流体戻し管94→導入側三方弁93→導入管90を通して循環させることで所望のDO値を有する混合液Kを生成することができる循環回路を形成している。この際、循環回数ないしは循環時間を所望に設定することで、混合液Kの流体成分を超微細化(ナノレベルから数μmレベルまで)することができるとともに、均一な大きさに微細化することができる。
【0032】
[第1実施形態としての静止型流体混合装置の説明]
次に、
図3〜
図7を参照しながら、第1実施形態としての静止型流体混合装置10について説明する。
図3に示す10は本発明に係る静止型流体混合装置であり、静止型流体混合装置10は、一方向(本実施形態では左右方向)に伸延する円筒状に形成したケーシング体11内に、一組ないしは複数組(本実施形態では五組)の混合ユニット12を同心円的に配設している。ケーシング体11の両端部には左・右側壁体13,14を配設して、各側壁体13,14の外側周縁部に左・右接続体15,16の基端部15a,16aを係止するとともに、左・右接続体15,16の先端部15b,16bをケーシング体11の外周面に螺着して、隣接する各混合ユニット12の流出口62と流入口32を連通させた状態にて、両側壁体13,14間にケーシング体11内にて同軸的に配列した混合ユニット12を挟持している。上流側の側壁体13の中央部には導入口17を形成して、導入口17には近接する混合ユニット12の流入口32を整合させて連通させる一方、下流側の側壁体14の中央部には導出口18を形成して、導出口18には近接する混合ユニット12の流出口62を整合させて連通させている。
【0033】
左・右側壁体13,14は、ケーシング体11の内径よりもやや大径の円板状に形成し、内側半部にケーシング体11への内嵌部13a,14aを形成する一方、外側半部の周縁部に左・右接続体15,16の基端部15a,16aを係止する段付き凹条の係止用凹部13b,14bを形成している。上流側の側壁体13の中央部に形成した導入口17には上流側連通連結体19を連通連結する一方、下流側の側壁体14の中央部に形成した導出口18には下流側連通連結体20を連通連結している。
【0034】
左・右接続体15,16は相互に左右対称に形成している。すなわち、左・右接続体15,16はリング板状に形成した基端部15a,16aと、基端部15a,16aの外周縁部に連設した円筒状の先端部15b,16bとから一体成形して、先端部15b,16bの内周面に雌ネジ部15c,16cを形成している。ケーシング体11の左右側端部には段付き凹部11a,11bを形成するとともに、段付き凹部11a,11bの外周面に雌ネジ部15c,16cを螺着する雄ネジ部11c,11dを形成している。
【0035】
混合ユニット12は、中央部に処理対象である流体R(
図3において矢印で示す)の流入口32を形成した円板状の第1拡散エレメント30に、円板状の第2拡散エレメント40を対面させて配置して、両拡散エレメント30,40の間に拡散・混合流路60を形成する一方、第2拡散エレメント40の背面側に、中央部に流体Rの流出口62を形成した円板状の集合エレメント50を対面させて配置して、集合エレメント50に集合流路70を形成して構成している。
【0036】
すなわち、混合ユニット12は、中央部側の流入口32から流入した流体Rを周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路60と、周縁部側から流入した流体Rを中央部側の流出口62に向けて半径方向に流動させて集合させる集合流路70とを備えており、ケーシング体11の内周面に沿わせて拡散・混合流路60の終端部と集合流路70の始端部を連通させている。
【0037】
集合エレメント50は、
図4及び
図5に示すように、上流側半部52を下流側半部53よりも小径の円板状に形成して、上流側半部52の外周部に拡散・混合流路60と連通する円形リング状の連通用凹部54を形成し、上流側半部52には周縁部から中央部の流出口62に向けて直状かつ同一幅の流路形成用凹部55を形成して、流路形成用凹部55の開口面を第2拡散エレメント40の背面により閉塞することで、連通用凹部54と連通する集合流路70を形成している。流路形成用凹部55は、上流側半部52に側面視で十字状に配置している。つまり、円周方向に90度の間隔をあけて形成している。その結果、本実施形態では、流路形成用凹部55の開口面が第2拡散エレメント40の背面により閉塞されて形成される集合流路70は、周縁部から中央部の流出口62に向けて直状かつ同一幅の流路が十字状に形成されている。ここで、集合エレメント50の半径方向と直交する流路形成用凹部55の流路幅Wは、流出口62の半径rと下記の関係を有している。
【0038】
【数1】
このような関係を保つことにより、集合流路70の流路幅Wを可及的に広く形成するとともに、隣接する集合流路70を流動する流体Rが相互に干渉することなく流出口62に速やかに流入するようにしている。
【0039】
79はOリングであり、Oリング79はケーシング体11内において、左側壁体13と混合ユニット12との間、混合ユニット12,12同士の間、混合ユニット12と右側壁体14との間にそれぞれ配設してシール部を形成している。
【0040】
このように構成して、静止型流体混合装置10では、集合流路70を集合エレメント50の周縁部から中央部の流出口62に向けて直状かつ同一幅に形成しているため、拡散・混合流路60を流動した流体Rを、集合流路70を通して流出口62に向けて直状に速やかに流動させることができる。そのため、集合流路70においては流体Rの流線が大きく乱れことがなくなり、流体Rの圧力にばらつきが発生しにくくなる。その結果、流体圧力が均一化されて流路抵抗が低下する。流路抵抗が低下すると圧力損失が低減されて(圧力損失低減効果が得られて)、供給する流体の圧力を高圧にしなくても処理量を増大させることができる。圧力損失が低減されると、低圧で流体混合処理を行なうことができるようになって、シール部材としてのOリング79を配設したシール部における流体漏れ防止を図るためのOリング79の使用が大幅に低減される。その結果、シール部材の交換などの作業が不要、ないしは大幅に削減されるため、静止型流体混合装置自体のメンテナンス作業の簡易化と迅速化を図ることができて、作業効率を向上させることができる。
【0041】
拡散・混合流路60と連通する円形リング状の連通用凹部54に集合流路70を連通させて形成しているため、拡散・混合流路60から集合流路70への流体Rの流動が円滑になされる。そして、流路形成用凹部55を上流側半部52に十字状に配置して形成することで、集合流路70を集合エレメント50の円周廻りに均等に配置することができ、連通用凹部54から最寄りの集合流路70を通して流出口62に流体Rを流出させることができる。
【0042】
ケーシング体11の両端部に形成した段付き凹部11a,11bの外周面には雄ネジ部11c,11dを形成し、左・右接続体15,16の先端部15b,16bの内周面には雌ネジ部15c,16cを形成して、雄ネジ部11c,11dに雌ネジ部15c,16cを螺着した左・右接続体15,16は、工具なしに螺脱して取り外すことにより、ケーシング体11内に配設した混合ユニット12の挟持を簡単に解除することができる。そのため、混合ユニット12をケーシング体11から容易に取り出すことができて、混合ユニット12のメンテナンス作業を楽に行うことができる。また、反対の手順を辿ることで静止型流体混合装置10を工具なしに簡単に組み立てることができる。
【0043】
次に、静止型流体混合装置10の構成をより具体的に説明する。静止型流体混合装置10は、
図3に示すように、ケーシング体11内に五組の混合ユニット12を同軸的にかつ直列的に配列させて収容して、各混合ユニット12の周縁部間にOリング79を介設している。この際、ケーシング体11の内周面と各混合ユニット12の外周面とは、隙間のない密着状態となしている。このように構成して、ケーシング体11内に配設した混合ユニット12内を流体Rが上流側である左側の導入口17側から下流側である右側の導出口18に蛇行しながら流動するようにしている。
【0044】
拡散・混合流路60は、
図4〜
図6に示すように、第1・第2拡散エレメント30,40の対向面にそれぞれ同形・同大の多数の凹部35,45を配列して形成して、各拡散エレメント30,40の凹部35,45の開口面を突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように位置を違えて配置している。流体Rの流入口32を中心とする同一円周上に配置した各拡散エレメント30,40の凹部35,45の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させて、流動方向である半径方向に分流数(分散数)を増大させている。
【0045】
また、集合流路70は、
図4,
図5及び
図7に示すように、円板状の第2拡散エレメント40に、中央部に流体Rの流出口62を形成した円板状の集合エレメント50を対向させて配置するとともに、両エレメント40,50の間に周縁部側から流入した流体Rを中央部側に向けて半径方向に流動させて集合させるように形成している。最右側に配置した集合エレメント50の中央部に形成した流出口62は、右側壁体14の中央部に形成した導出口18に整合させて連通している。
【0046】
このように構成して、混合ユニット12では、第1・第2拡散エレメント30,40の凹部35,45の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させているため、流体Rが合流する凹部35,45の数は周縁部側ほど増大するとともに、それに比例して数多く分流(分散)される。そのため、拡散・混合流路60においては流体Rにせん断力が作用して微細化される回数が流体Rの流動方向(周縁部側に向かう半径方向)に沿って漸次増大するようにしている。
【0047】
各混合ユニット12は、いずれも同様の構造であり、
図4及び
図5に示すように、対向配置された2枚の板状(略円板形状)の部材、より具体的には円板形状の第1・第2拡散エレメント30,40と、対向配置された板状(略円板形状)の部材、より具体的には円板形状の集合エレメント50とを備えている。
【0048】
各混合ユニット12の上流側半部を形成する2枚の第1・第2拡散エレメント30,40のうち、導入口17側(上流側)に配置される第1拡散エレメント30は、円板状のエレメント本体31の中央部に、流体Rの流入口32が貫通状態で形成されている。
【0049】
図6に示すように、エレメント本体31の下流側面には、開口形状が正六角形の凹部35が隙間のない状態で複数形成されている。いわゆるハニカム状に多数の凹部35が形成されている。34は第1拡散エレメント30のピン挿入用凹部である。36は第1拡散エレメント30の中央部に配設した第1螺着部、37は第1螺着部36を流入口32中の中央に支持する3片の支持片である。
【0050】
図4〜
図6に示すように、2枚の拡散エレメント30,40のうち、導出口18側(下流側)に配置される第2拡散エレメント40は、第1拡散エレメント30よりも小径である。第2拡散エレメント40のエレメント本体41の第1拡散エレメント30との対向面、すなわち導入口17側に向けられる上流側面(第1拡散エレメント30と対向する面)には、第1拡散エレメント30のエレメント本体31と同様に、開口形状が正六角形の凹部45が隙間のない状態で複数形成されている。
【0051】
42は第2拡散エレメント40の中央部に形成した第2螺着部であり、第2螺着部42と第1拡散エレメント30の第1螺着部36とを符合させて、連結ボルト43により第1拡散エレメント30と第2拡散エレメント40とを対面状態に重合させて連結している。46は第2拡散エレメント40に形成したピン挿通孔、47はピン挿通孔46に挿通した位置決めピンであり、位置決めピン47の先端部を第1拡散エレメント30のピン挿入用凹部34に挿入して第1拡散エレメント30と第2拡散エレメント40を位置決めして対面させている。
【0052】
そして、両拡散エレメント30,40は、
図4および
図5に示すような配置で組み付けられる。具体的に説明すると、第1拡散エレメント30と第2拡散エレメント40を対面状態に配置する。このとき、第1拡散エレメント30の下流側面のハニカム状の多数の凹部35の開口面と、第2拡散エレメント40の上流側面のハニカム状の多数の凹部45の開口面とが対面状態に当接するように、第2拡散エレメント40の向きを定める(
図3参照)。この状態で、第1拡散エレメント30のピン挿入用凹部34に、第2拡散エレメント40のピン挿通孔46に挿通した位置決めピン47の先端部を挿入して組み付ける。
【0053】
従って、両拡散エレメント30,40を組み付けると、両拡散エレメント30,40間に形成される拡散・混合流路60の終端部が外周に向けてリング状に開口されている。そして、第1拡散エレメント30の流入口32に供給された流体Rは、拡散・混合流路60(
図3参照)を通過した後、この拡散・混合流路60の終端部から放出される。
【0054】
ここで、位置決めピン47により位置決めされて、各拡散エレメント30,40の当接側の面に形成されるハニカム状の多数の凹部35,45の相互関係について説明する。すなわち、
図6に示すように、両拡散エレメント30,40の凹部35,45は同形・同大に形成して、これらの当接面は、第1拡散エレメント30の凹部35の中心位置に、第2拡散エレメント40の凹部45の角部49が位置する状態で当接している。
【0055】
このような状態で当接させると、第1拡散エレメント30の凹部35と第2拡散エレメント40の凹部45との間で流体Rを流動させることができる。また、角部49は3つの凹部45の角部が集まっている位置である。
【0056】
従って、例えば、第1拡散エレメント30の凹部35側から第2拡散エレメント40の凹部45側に流体Rが流れる場合を考えると、流体Rは、2つの流路に分流(分散)されることになる。
【0057】
つまり、第1拡散エレメント30の凹部35の中央位置に位置された第2拡散エレメント40の角部49は、流体Rを分流する分流部として機能する。逆に、第2拡散エレメント40側から第1拡散エレメント30側に流体Rが流れる場合を考えると、2方から流れてきた流体Rが1つの凹部35に流れ込むことで合流することになる。この場合、第2拡散エレメント40の中央位置に位置された角部49は、合流部として機能する。
【0058】
また、第2拡散エレメント40の凹部45の中心位置にも、第1拡散エレメント30の凹部35の角部39が位置する。この場合は、第1拡散エレメント30の角部39が上述した分流部や合流部として機能する。
【0059】
このように、相互に対向状態に対面配置された両拡散エレメント30,40の間には、中央の流入口32から両拡散エレメント30,40(ケーシング体11)の軸線方向に供給された流体Rが、分流と合流(分散と混合)を繰り返しながら両拡散エレメント30,40の放射線方向(軸線方向と直交する半径方向)に蛇行状態にて流動する拡散・混合流路60(
図3参照)が形成されている。
【0060】
この拡散・混合流路60を流体Rが流動する過程で、流体Rに混合処理が施される。そして、拡散・混合流路60を通過した流体Rは、その後、連通用凹部54を通して集合エレメント50の集合流路70に流入される。各混合ユニット12の下流側を形成する集合エレメント50には、円板状の中央部に流体Rの流出口62が貫通状態で形成されている。
【0061】
図3に示すように、左・右側壁体13,14の内周縁部と、第1拡散エレメント30の上流側(左側)の外周縁部と、第1拡散エレメント30と同径状に形成した集合エレメント50の下流側(右側)の外周縁部には、それぞれテーパー面部13c,14c,38,48を形成して、隣接して対向するテーパー面部とケーシング体11の内周面とによりOリング79を配置するためのOリング配置空間78を形成している。
【0062】
(流体混合システム)
流体Rとしての液体と液体、液体と気体、ないしは粉体と液体の混合体は、上流側の側壁体13の中央部に形成した導入口17から導入させて、混合ユニット12の拡散・混合流路60と集合流路70を通して流動させた後に、下流側の側壁体14の中央部に形成した導出口18から導出させるようにしている。
【0063】
このように構成して、液体と液体、液体と気体、ないしは粉体と液体の混合体を、流体Rとして上流側の側壁体13の導入口17から導入させて、混合ユニット12の拡散・混合流路60と集合流路70を通して流動させた後に、下流側の側壁体14の導出口18から導出させることで、超微細化かつ均一化して混合することができる。その結果、混合液Kを生成することができる。
【0064】
[第2実施形態としての混合液生成装置の説明]
混合液Kを生成する第2実施形態としての混合液生成装置80を
図8に示す。混合液生成装置80は、後述する第2実施形態としての静止型流体混合装置10を具備して構成している。すなわち、混合液生成装置80は、上面を開口させた容器191内に液体としての処理水Wsを収容し、処理水Ws中に静止型流体混合装置10を配置して、静止型流体混合装置10の一側端開口部に連結体150を介して吐出側パイプ192の先端部を連通連結している。吐出側パイプ192は圧送ポンプPの吐出口Ptに基端部を接続している。圧送ポンプPの吸入口Pkには吸入側パイプ193の先端部を連通連結し、吸入側パイプ193の基端部を処理水Ws中に配置している。
【0065】
そして、圧送ポンプPの吐出口Ptに近接する吐出側パイプ192の部分には気体供給パイプ194を介して気体供給部195を接続している。本実施形態では、気体として純窒素ガスを供給するようにしている。196は気体供給パイプ194の中途部に設けた気体供給量調整弁である。なお、気体供給部95は圧送ポンプPの吸入口Pkに近接する吸入側パイプ193の部分に接続することもできる。
【0066】
このように構成して、混合液生成装置80では、圧送ポンプPを作動させることにより、吸入側パイプ193を通して処理水Wsを吸入するとともに、吐出側パイプ192を通して処理水Wsと純窒素ガスを静止型流体混合装置10の支持ケース本体111内に圧送する。支持ケース本体111内に圧送された処理水Wsと純窒素ガスは、各導出口112から支持ボス部113を通して混合ユニット120の中央部に形成した流入口132に流入されて、拡散・混合流路180を通して周縁部側に向けて半径方向に流動されることで、超微細化かつ均一化されて混合された後に、混合ユニット120の周縁部の流出口164から外方へ流出される。
【0067】
かかる作業を一定時間行うことにより、容器191内に収容している処理水Wsの酸素を放出させるとともに、純窒素ガスを処理水Ws中に溶解させて処理水Wsを窒素水となすことができる。静止型流体混合装置10によれば、例えば、1tの混合液KのDO値(溶存酸素量)を1分以内に1以下となすことができる。
【0068】
[第2実施形態としての静止型流体混合装置の説明]
次に、
図9〜
図14を参照しながら、第2実施形態としての静止型流体混合装置10について説明する。
図9に示す10は、本実施形態に係る静止型流体混合装置であり、静止型流体混合装置10は、
図9〜
図14に示すように、混合処理対象である複数の異なる流体Rを圧送する圧送ポンプPの吐出口Pt(これらは
図8参照)に連通連結可能とした中空のユニット支持ケース110と、ユニット支持ケース110に連通連結した混合ユニット120とを具備している。混合ユニット120は、中央部に形成した流体Rの流入口132を介してユニット支持ケース110に連通連結した板状の第1エレメント130に、板状の第2エレメント140を対面させて配置している。両エレメント130,140の間には、流入口132から流入した流体Rを周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路180を形成し、拡散・混合流路180の終端部である両エレメント130,140の周縁部に混合流体を外方へ流出させる流出口164を形成している。
【0069】
ユニット支持ケース110は、直状に伸延させて円筒状に形成した支持ケース本体111の周面に複数の導出口112を形成し、導出口112の周囲に短軸長の円筒状に形成した支持ボス部113を突設して、導出口112と流入口132を連通させた状態にて支持ボス部113に混合ユニット120を取り付けている。支持ボス部113の内径は、混合ユニット120の第1エレメント130よりも小径に形成して、支持ボス部113の端面開口部が混合ユニット120により閉塞された状態となるようにしている。
【0070】
導出口112は、円筒状のユニット支持ケース110の周壁に軸線方向と円周方向に間隔をあけて複数(本実施形態では軸線方向に5個、円周方向に4個)形成しており、各導出口112は4個の導出孔112aを同一円周上に配置して形成している。そして、各導出口112の周囲には支持ボス部113を支持ケース本体111の外周面から外方(支持ケース本体111の半径方向)へ突設している。
【0071】
支持ボス部113の中心部(軸芯部)に位置する支持ケース本体111の部分には取付部としての雌ネジ部114を設けて、雌ネジ部114に取付具としてのボルト等の雄ネジ部115を螺着可能としている。混合ユニット120の第1エレメント130と第2エレメント140の各中央部には、雄ネジ部115を挿通するための第1挿通孔133と第2挿通孔143を軸線方向に貫通させて形成している。
【0072】
支持ボス部113の端面113aにはその周縁に沿わせて凹条溝116を形成し、凹条溝116内には弾性素材からなる封止体(ガスケット)としてのOリング117を収容している。そして、支持ボス部113の端面113aにOリング117を介して混合ユニット120の第2エレメント140を面接触させ、第2エレメント140に第1エレメント130を重合状態に対面させて、第1挿通孔133と第2挿通孔143を符合させ、両第1・第2挿通孔133,143に雄ネジ部115を挿通して、雌ネジ部114に雄ネジ部115の先端部を螺着することにより、支持ボス部113に混合ユニット120を組み付けて取り付けている。
【0073】
支持ケース本体111は、一側端開口部に連結体150を着脱自在に連通連結するとともに、他側端開口部に閉塞体160を着脱自在に連結して、他側端開口部を閉塞している。連結体150と閉塞体160との間には、支持ケース本体111の外周を囲繞して保護する保護体170を介設している。
【0074】
支持ケース本体111は、一側端部(本実施形態では
図9において上端部)の外周面に一側端雄ネジ部118を形成するとともに、他側端部(本実施形態では
図9において下端部)の外周面に他側端雄ネジ部119を形成している。
【0075】
連結体150は円筒状に形成して、一側端部に連結片151を形成するとともに、他側端部の内周面に段付き凹部152を形成して、段付き凹部152の内周面に連結体雌ネジ部153を形成している。連結片151は、圧送ポンプPの吐出口Ptに直接着脱自在に連通連結することも、また、圧送ポンプPの吐出口Ptに基端部を連結した吐出側パイプ192(
図8参照)の先端部を着脱自在に連通連結することもできるように形成している。
【0076】
閉塞体160は、円筒状の周壁161と周壁161の他側端縁部に閉塞状に端壁162を連設したキャップ状に形成し、周壁161の内周面に閉塞体雌ネジ部163を形成している。
【0077】
そして、一側端雄ネジ部118には連結体150の連結体雌ネジ部153を着脱自在に螺着して連結している。また、他側端雄ネジ部119にはキャップ状に形成した閉塞体160の閉塞体雌ネジ部163を着脱自在に螺着して連結している。
【0078】
保護体170は、
図9及び
図10に示すように、円形リング板状の一対の一側壁体171及び他側壁体172と、両側壁体171,172の周縁部間に介設した網体173とから構成している。
【0079】
両側壁体171,172は線対称に形成して、支持ケース本体111の軸線方向で対向させて配置している。各側壁体171,172は、それぞれ外部側壁片174,175と内部側壁片176,177とを重合させて形成している。外部側壁片174,175は、内径が支持ケース本体111の外径と略同形でかつ一定の半径幅を有する円形リング板状に形成した外部側壁本片174a,175aと、外部側壁本片174a,175aの内周縁部と外周縁部とから相互に対向方向に伸延させて形成した内・外周フランジ片174b,174c,175b,175cとから構成している。内部側壁片176,177は、円形リング状に形成した内部側壁本片176a,177aと、内部側壁本片176a,177aの外周縁部から相互に対向方向に伸延させて形成した外周フランジ片176c,177cとから構成している。
【0080】
外部側壁本片174aの内周フランジ片174bは、連結体150の他側端面と支持ケース本体111の一側端部に設けた4個の支持ボス部113の外周面との間で挟持している。外部側壁本片175aの内周フランジ片175bは、閉塞体160の一側端面と支持ケース本体111の他側端部に設けた4個の支持ボス部113の外周面との間で挟持している。
【0081】
網体173は支持ケース本体111の外周にその外周面から一定幅離隔させるとともに、その外周面に沿わせて伸延する円筒状に形成している。そして、網体173の両端縁部は、外部側壁片174,175の外周フランジ片174c,175cの内周面と、内部側壁片176,177の外周フランジ片176c,177cの外周面との間で挟持している。
【0082】
このように構成した保護体170は、支持ケース本体111から連結体150ないしは閉塞体160を取り外すことにより、支持ケース本体111から取り外すことができる。
【0083】
本実施形態に係る静止型流体混合装置10は、上記のように構成しているものであり、かかる静止型流体混合装置10によれば、下記のような作用効果が生起される。すなわち、混合処理対象である複数の異なる流体を圧送する圧送ポンプPの吐出口Ptにユニット支持ケース110を連通連結して、圧送ポンプPの吐出口Ptから複数の異なる流体Rを吐出させると、複数の異なる流体Rはユニット支持ケース110を通して混合ユニット120内に圧送される。そして、混合ユニット120は対向させて配置した第1・第2エレメント130,140の間に拡散・混合流路180を形成しており、拡散・混合流路180は流入口132から流入した流体Rを周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合し、その結果、混合流体が生成される。また、生成された混合流体は拡散・混合流路の終端部である両エレメント130,140の周縁部に形成した流出口164から外方へ流出される。この際、複数の異なる流体は拡散・混合流路180を通過した後に流出口164から外方へ流出されるため、圧力損失を低減させることができる。そのため、静止型流体混合装置10に流体を加圧して供給する圧送ポンプPの電力消費量の低減を図ることができるとともに、混合処理済み流体の流出量の増大化(効率化)を図ることができることができる。
【0084】
また、連続相としての流体である液体と、分散相として流体である液体を混合流体となす場合には、圧送ポンプPの吸入口Pk(
図8参照)から生成された混合流体を吸入させて、再度、混合ユニット120の拡散・混合流路180中を流動させる循環流動を所要回数行うことで、分散相の液体を微細(マイクロレベルないしはナノレベル)な液滴となすことができる。
【0085】
導出口112の周囲に突設した支持ボス部113には混合ユニット120を取り付けているため、圧送ポンプPによりユニット支持ケース110内に圧送された複数の異なる流体を、導出口112→流入口132→拡散・混合流路180→流出口164を通して外方へ流出させることができて、圧力損失の低減化を堅実に図ることができる。この際、拡散・混合流路180内で流体Rが拡散されながら混合されるため、分散相としての液体は微細かつ均一な液滴となる。
【0086】
ユニット支持ケース110には多数の混合ユニット120を取り付けることができるため、各混合ユニット120により同時に混合流体を生成することができる。そのため、混合処理済み流体の流出量の増大化(効率化)を堅実に図ることができることができる。
【0087】
ユニット支持ケース110の雌ネジ部114には雄ネジ部115を介して混合ユニット120を取り付けているいため、メンテナンス作業時には取付具を介して取付部から混合ユニットを簡単に取り外すことができて、メンテナンス作業性を良好に確保することができる。
【0088】
支持ボス部113の端面に形成した凹条溝116内にはOリング117を収容して、Oリング117を介して支持ボス部113に混合ユニット120を取り付けているため、簡単の構造で支持ボス部113と混合ユニット120との封止性を良好に確保することができる。そのため、圧力損失を低減させることができるとともに、堅実に混合流体を生成することができて、混合流体の生成効率を向上させることができる。
【0089】
(混合ユニット120の構成のより具体的な説明)
次に、混合ユニット120の構成をより具体的に説明する。すなわち、混合ユニット120は、中央部に処理対象である流体R(
図6において矢印で示す)の流入口132を形成した円板状の第1エレメント130に、円板状の第2エレメント140を対面させて配置して、両エレメント130,140の間に中央部側の流入口132から流入した流体Rを周縁部側に向けて半径方向に流動させて拡散・混合する拡散・混合流路180を形成して構成している。
【0090】
拡散・混合流路180は、
図14に示すように、第1・第2エレメント130,140の対向面にそれぞれ同形・同大の多数の凹部135,145を配列して形成している。各エレメント130,140の凹部135,145の開口面は突き合わせ状に面接触させるとともに、相互に連通するように位置を違えて配置している。流体Rの流入口132を中心とする同一円周上に配置した各エレメント130,140の凹部135,145の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させて、流動方向である半径方向に分流数(分散数)を増大させている。両エレメント130,140の間に周縁部側に流出口164を形成している。
【0091】
このように構成して、混合ユニット120では、第1・第2エレメント130,140の凹部135,145の数は、中心部側から周縁部側に向けて漸次増大させているため、流体Rが合流する凹部135,145の数は周縁部側ほど増大するとともに、それに比例して数多く分流(分散)される。そのため、拡散・混合流路180においては流体Rにせん断力が作用して微細化される回数が流体Rの流動方向(周縁部側に向かう半径方向)に沿って漸次増大するようにしている。
【0092】
各混合ユニット120は、いずれも同様の構造であり、
図11及び
図13に示すように、対向配置された2枚の板状(略円板形状)の部材、より具体的には円板形状の第1・第2エレメント130,140を備えている。
【0093】
各混合ユニット120を形成する2枚の第1・第2エレメント130,140のうち、導出口112側に配置される第1エレメント130は、円板状のエレメント本体131の中央部に、流体Rの流入口132が貫通状態で形成されている。
【0094】
図13に示すように、エレメント本体131の下流側面には、開口形状が正六角形の凹部135が隙間のない状態で複数形成されている。いわゆるハニカム状に多数の凹部135が形成されている。134は第1エレメント130のピン挿入用凹部である。136は第1エレメント130の中央部に配設した第1挿通部であり、第1挿通部136に第1挿通孔133を形成している。137は第1挿通部136を流入口132中の中央に支持する3片の支持片である。
【0095】
図10〜
図12に示すように、第2エレメント140は、第1エレメント130とほぼ同径に形成している。第2エレメント140のエレメント本体141の第1エレメント130との対向面には、第1エレメント130のエレメント本体131と同様に、開口形状が正六角形の凹部145が隙間のない状態で複数形成されている。146は第2エレメント140に形成したピン挿通孔、147はピン挿通孔146に挿通した位置決めピンであり、位置決めピン147の先端部を第1エレメント130のピン挿入用凹部134に挿入して第1エレメント130と第2エレメント140を位置決めして対面させている。
【0096】
そして、両エレメント130,140は、
図14に示すような配置で組み付けられる。具体的に説明すると、第1エレメント130と第2エレメント140を対面状態に配置する。このとき、第1エレメント130の下流側面のハニカム状の多数の凹部135の開口面と、第2エレメント140の上流側面のハニカム状の多数の凹部145の開口面とが対面状態に当接するように、第2エレメント140の向きを定める(
図11参照)。この状態で、第1エレメント130のピン挿入用凹部134に、第2エレメント140のピン挿通孔146に挿通した位置決めピン147の先端部を挿入して組み付ける。
【0097】
従って、両エレメント130,140を組み付けると、両エレメント130,140間に形成される拡散・混合流路180の終端部が外周に向けてリング状に開口されている。そして、第1エレメント130の流入口132に供給された流体Rは、拡散・混合流路180(
図14参照)を通過した後、この拡散・混合流路180の終端部から放出される。
【0098】
ここで、位置決めピン147により位置決めされて、各エレメント130,140の当接側の面に形成されるハニカム状の多数の凹部135,145の相互関係について説明する。すなわち、
図12に示すように、両エレメント130,140の凹部135,145は同形・同大に形成して、これらの当接面は、第1エレメント130の凹部135の中心位置に、第2エレメント140の凹部145の角部149が位置する状態で当接している。
【0099】
このような状態で第1エレメント130と第2エレメント140を当接させると、第1エレメント130の凹部135と第2エレメント140の凹部145との間で流体Rを流動させることができる。また、角部149は3つの凹部145の角部が集まっている位置である。
【0100】
したがって、例えば、第1エレメント130の凹部135側から第2エレメント140の凹部145側に流体Rが流れる場合を考えると、流体Rは、2つの流路に分流(分散)されることになる。
【0101】
つまり、第1エレメント130の凹部135の中央位置に位置された第2エレメント140の角部149は、流体Rを分流する分流部として機能する。逆に、第2エレメント140側から第1エレメント130側に流体Rが流れる場合を考えると、2方から流れてきた流体Rが1つの凹部135に流れ込むことで合流することになる。この場合、第2エレメント140の中央位置に位置された角部149は、合流部として機能する。
【0102】
また、第2エレメント140の凹部145の中心位置にも、第1エレメント130の凹部135の角部139が位置する。この場合は、第1エレメント130の角部139が上述した分流部や合流部として機能する。
【0103】
このように、相互に対向状態に対面配置された両エレメント130,140の間には、中央の流入口132から両エレメント130,140の軸線方向に供給された流体Rが、分流と合流(分散と混合)を繰り返しながら両エレメント130,140の放射線方向(軸線方向と直交する半径方向)に蛇行状態にて流動する拡散・混合流路180(
図14参照)が形成されている。この拡散・混合流路180を流体Rが流動する過程で、流体Rに混合処理が施される。
【0104】
(流体混合システム)
流体混合システムは、流体Rとしての液体と液体、液体と気体、ないしは粉体と液体の混合体(本実施形態では処理水と純窒素ガスとの混合液K)を、他側端開口部が閉塞された支持ケース本体11内にその一側端開口部から圧送するように構成している。そして、混合体は、各導出口112から支持ボス部113を通して混合ユニット120の中央部に形成した流入口132に流入されて、拡散・混合流路180を通して周縁部側に向けて半径方向に流動された後に、混合ユニット120の周縁部の流出口164から外方へ流出されるようにしている。
【0105】
このように構成して、流体Rとしての液体と液体、液体と気体、ないしは粉体と液体の混合体を、複数の混合ユニット120の拡散・混合流路180を通して流動・通過させるとともに、流出口164から外方へ流出させることにより、超微細化(ナノレベルから数μmレベルまで)かつ均一化して混合することができる。なお、ナノレベルとは、1μm未満のレベルをいう。サブミクロンレベルとは、0.1μm〜1μmのレベルをいう。
【実施例】
【0106】
次に、第1実施形態としての静止型流体混合装置10により生成した混合液Kを使用して、生ウニUを再加工処理した実施例について説明する。
【0107】
静止型流体混合装置10により、0.5ppm濃度の次亜塩素酸を0.3ミリリットル添加した処理水としての水道水80リットルに、99.99%濃度の純窒素ガスを50分間混合させて、DO値が0.68の低濃度酸素処理水(高濃度窒素処理水)となした。続いて、高濃度窒素処理水2リットル当たり、にがりを15ミリリットル添加するとともに、塩を付加して、塩分濃度が2.1%の混合液Kとなした。
【0108】
次に、混合液Kを2℃まで冷却して、その冷却した混合液K中に、生ウニ容器C中に収容されて前加工処理された生ウニUを生ウニ容器Cのまま20分間浸漬した。その後、混合液Kから生ウニUを収容した生ウニ容器Cを取り出して、傾斜した水切り台E上に生ウニUを収容した生ウニ容器Cを20分間載置することで生ウニUを水切りした。水切りした生ウニUを生ウニ容器Cのまま冷蔵庫に2時間入れて冷やし込み処理した(実施例1)。また、冷やし込み処理した生ウニUを生ウニ容器Cのまま冷蔵庫に4日間入れて冷蔵処理した(実施例2)。また、冷やし込み処理した生ウニUを生ウニ容器Cのまま急速凍結させて、14日後に自然解凍させた(実施例3)。前加工処理しただけの生ウニUを生ウニ容器Cのまま冷蔵庫に2日間入れて冷蔵処理した(比較例1)。また、前加工処理しただけの生ウニUを生ウニ容器Cのまま冷蔵庫に4日間入れて冷蔵処理した(比較例2)。また、前加工処理しただけの生ウニUを生ウニ容器Cのまま冷蔵庫に6日間入れて冷蔵処理した(比較例3)。そして、比較例1〜3と実施例1〜3を10人の検査員が比較して評価した。その結果を表1に示す。
【0109】
【表1】
ここで、保形性の評価は、基本的に身崩れの状態を見て評価した。そして、身崩れの状態は、生ウニの表面の湿り具合や溶解状態を見て、次に、生ウニを切断して内部の状態(軟弱化しているか否か)を見て、最後に、箸で生ウニをつまみ上げた際の状態(生ウニが身崩れすることなく持ち上がるか否か)を見た。評価は、次の四段階評価とした。「◎」;処理直後の形状が保持されている。「○」;やや身崩れが生じている。「×」;身崩れが生じている。
【0110】
味嗅覚性の評価は、生ウニの臭いをかぎ、そして、生ウニを食して評価した。評価は、「◎」;渋みや苦みがなく、生ウニ本来の味がでている。臭みがない。「○」;やや渋みや苦みを生じている。やや臭みがある。「×」;著しく渋みや苦みを生じている。著しく臭みがある。
【0111】
このように、実施例1〜3の生ウニは、渋みや苦みがなく、生ウニ本来の味がでており、需要者に嫌悪感を与えるような臭みもないことから、本来の味を保持した生ウニを長期間にわたって安定供給可能であることが分かった。