(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移送管の前記一方の端部、前記移送管の前記他方の端部、及び前記清澄管の前記端部は、いずれもフランジ形状を成している、請求項2に記載のガラス板の製造方法。
前記加熱による熱膨張によって前記隙間がいずれもなくなり、前記移送管の前記一方の端部と前記熔解炉の前記端部が当接され、前記移送管の前記他方の端部と前記清澄管の前記端部が当接される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス板の製造方法。
前記加熱による熱膨張によって前記隙間がいずれもなくなり、前記移送管の前記一方の端部と前記熔解炉の前記端部が当接され、前記移送管の前記他方の端部と前記清澄管の前記端部が当接される、請求項9に記載のガラス板の製造装置。
【背景技術】
【0002】
ガラス板を製造する際、ガラス原料を熔解炉で熔融して熔融ガラスをつくり、この後熔融ガラスを清澄管で清澄し、清澄後の熔融ガラスを、例えば成形体を用いてシートガラスに成形する。熔解炉でつくられた熔融ガラスは移送管を通して清澄管に送られる。
上記移送管および清澄管に関して、白金又は白金合金で構成された移送管及び清澄管が知られている。(特許文献1)。
【0003】
ところで、ガラス板の製造方法では、熔解炉と移送管と清澄管とを接続し、さらに、清澄管以降、熔融ガラスからシートガラスをつくるための成形装置までの熔融ガラスの流路を確保した後、ガラス板の製造が開始される。このとき、白金あるいは白金合金で構成された移送管及び清澄管は千数百度に昇温されるので熱膨張する。また、移送管及び清澄管は、熔解炉と成形装置との間で固定されて組み立てられているので、移送管及び清澄管が熔融ガラスの流れ方向に延びようとする熱膨張は拘束されて、移送管及び清澄管に圧縮応力がかかる。この結果、移送管及び清澄管は、歪み湾曲し、ひいては破損する場合がある。
【0004】
また、近年、環境負荷低減のために、清澄剤として用いられてきた有害なAs
2O
3に代えてSnO
2が清澄剤として用いられる場合が多い。SnO
2は、環境負荷低減の点で有効であるが、清澄機能を有効に発揮させるために、As
2O
3に比べて熔融ガラスの温度を高く設定しなければならない。したがって、熔融ガラスを高温に加熱するために、移送管及び清澄管の加熱温度も高くなり、移送管及び清澄管の熱膨張も従来より大きくなっている。
したがって、製造開始後、移送管と清澄管とが熱膨張により破損することを防止することがますます望まれている。
【0005】
また、白金あるいは白金合金で構成された移送管をガラス板の製造に従来に比べてより高温で使用した場合、移送管に白金あるいは白金合金の結晶粒が生成し、この結晶粒成長が移送管の厚さまで達して粒界浸食されると、移送管の一部分が脱落して熔融ガラスが漏れ出す場合がある。
この白金あるいは白金合金の結晶粒が成長することを抑制するために、アルミナやジルコニア等の金属酸化物粒子を白金あるいは白金合金に分散させた強化白金あるいは強化白金合金が用いられる。しかし、強化白金あるいは強化白金合金は、作用する圧縮応力に対して緩和し難いので、通常の白金あるいは白金合金に比べて熱膨張により破損し易いという問題がある。
【0006】
すなわち、移送管および清澄管に、金属酸化物粒子を白金あるいは白金合金に分散させた強化白金を用いると、通常の白金あるいは白金合金に比べてさらに熱膨張により破損し易いので、製造開始後の熱膨張による破損を防止することが好ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、移送管及び清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができるガラス板の製造方法および製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、ガラス板を製造するガラス板の製造方法である。当該製造方法は、
熔解炉でガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる工程と、
前記熔解炉でつくられた熔融ガラスを、移送管により前記熔解炉から清澄管に移送する工程と、
前記移送管により前記清澄管に供給された熔融ガラスの清澄を行う工程と、
清澄後の熔融ガラスを成形してシートガラスを形成する工程と、を含む。
前記熔融ガラスをつくる工程の前に、白金あるいは白金合金を少なくとも用いて構成される
前記移送管を加熱し、前記移送管を熱膨張させた状態で、前記移送管の一方の端部と前記熔解炉の端部を当接し、前記移送管の他方の端部と前記清澄管との端部を当接する。
前記熔解炉、前記移送管及び前記清澄管のそれぞれの当接する端部は、管外部から冷却されており、前記端部を通過し前記端部の間にある空隙に進入する熔融ガラスを前記端部が冷却固化することにより、前記熔解炉と前記移送管と前記清澄管とを熔融ガラスの流路として形成
し、
前記移送管の加熱の前に、前記移送管の前記一方の端部と前記熔解炉の前記端部との間、及び前記移送管の前記他方の端部と前記清澄管の前記端部との間に隙間が設けられている。
このように、前記熔解炉と前記移送管と前記清澄管は、熔融ガラスが漏出しない流路を形成するとき、熱膨張した状態で前記移送管が前記熔解炉と前記清澄管とに当接されて接続されるので、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。また、前記熔解炉と前記移送管と前記清澄管を、熔接を用いずに接続するので、装置の組み立てを簡略化することができる。
【0010】
その際、前記移送管及び前記清澄管の周りには、断熱部材が設けられ、前記移送管の前記一方の端部、前記移送管の前記他方の端部、及び前記清澄管の前記端部は、前記断熱部材の外に突出して管外部から冷却されており、前記熔解炉から前記移送管及び前記清澄管に熔融ガラスが流れたときに、前記空隙に進入する熔融ガラスを冷却固化することが好ましい。
このため、溶接を用いずに、前記熔解炉から前記移送管、さらには前記清澄管に到るまで、熔融ガラスが漏出しない流路が容易に形成され得る。
【0011】
また、前記移送管の前記一方の端部、前記移送管の前記他方の端部、及び前記清澄管の前記端部は、いずれもフランジ形状を成している、ことが好ましい。
前記移送管の両端部及び前記清澄管の端部は、いずれもフランジ形状を成しているので、当接する端部間に存在する空隙周囲の温度は熔融ガラスを冷却固化する程度に十分低くなっている。このため、当接する端部間に存在する空隙に進入する熔融ガラスは確実に冷却固化され得る。
【0012】
また、前記移送管の白金あるいは白金合金には、金属酸化物粒子が分散させることができる。すなわち、前記移送管には、白金あるいは白金合金に金属酸化物粒子が分散した強化白金あるいは強化白金合金を用いることができる。一般に、強化白金あるいは強化白金合金は応力を緩和し難い特性を有している。しかし、前記製造方法では、熱膨張した状態で前記移送管が前記熔解炉と前記清澄管とに当接されて接続されるので、熱膨張に起因して強化白金あるいは強化白金合金に作用する熱応力は極めて小さい。このため、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。
【0013】
前記熔融ガラスは、SnO
2を清澄剤として含む、ことが好ましい。SnO
2は、As
2O
3に対して環境負荷低減の点で有利である。SnO
2は、従来から清澄剤として用いられるAs
2O
3に比べて清澄効果は劣るので、清澄効果を効果的に発揮させるためには、As
2O
3を使用した場合と比較して、熔融ガラスの温度をより高温にする必要がある。例えば1650℃以上の高温に加熱しなければならい。このため、前記移送管及び前記清澄管の加熱温度は高くなる。しかし、上記態様の製造方法では、前記移送管及び前記清澄管の熱膨張を考慮して装置が組み立てられているので、長期間使用しても、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。
【0014】
また、前記加熱による熱膨張によって前記隙間がいずれもなくなり、前記移送管の前記一方の端部と前記熔解炉の前記端部が当接され、前記移送管の前記他方の端部と前記清澄管の前記端部が当接される、ことが好ましい。このため、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。また、この端部の当接方法は、溶接を用いないので、装置の組み立てを簡略化することができる。
【0015】
あるいは、前記隙間は、前記移送管及び前記清澄管の加熱の後に残存してもよい。この場合、前記加熱によって熱膨張した前記移送管を前記熔解炉に向けて移動することにより、及び前記清澄管を前記移送管に向けて移動することにより、前記移送管の前記一方の端部と前記熔解炉の前記端部が当接され、前記移送管の前記他方の端部と前記清澄管の前記端部が当接される。
このため、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。特に、前記移送管は、十分に熱膨張した状態で、前記熔解炉及び前記清澄管に当接されるので、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を大きく抑制することができる。
また、この端部の当接方法では、前記移送管及び前記清澄管の熱膨張を考慮して前記隙間を設ける必要がなく、極めて容易に装置の組み立てを行うことができる。
【0016】
さらに、本発明の他の一態様は、ガラス板を製造するガラス板の製造方法である。当該方法では、上述の態様と同様に、
熔解炉でガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる工程と、
前記熔解炉でつくられた熔融ガラスを、移送管により熔解炉から清澄管に移送する工程と、
前記移送管により前記清澄管に供給された熔融ガラスの清澄を行う工程と、
清澄後の熔融ガラスを成形してシートガラスを形成する工程と、を含む。
このとき、前記熔融ガラスをつくる工程の前に、白金あるいは白金合金を少なくとも用いて構成される清澄管と、白金あるいは白金合金を少なくとも用いて構成される
前記移送管とをそれぞれ加熱し、前記移送管及び前記清澄管を熱膨張させた状態で、前記移送管の一方の端部と前記熔解炉に接続された処理槽の端部を当接し、前記移送管の他方の端部と前記清澄管の端部を当接する。
さらに、前記熔解炉から前記移送管及び前記清澄管に熔融ガラスが流れるときに、前記熔解炉に接続された前記処理槽、前記移送管及び前記清澄管のそれぞれの端部が管外部から冷却されており、当接する前記端部の間にある空隙に進入する熔融ガラスを前記端部が冷却固化することにより、前記処理槽と移送管と前記清澄管とを熔融ガラスの流路として形成
し、
前記移送管の加熱の前に、前記移送管の前記一方の端部と前記処理槽の前記端部との間、及び前記移送管の前記他方の端部と前記清澄管の前記端部との間に隙間が設けられている。
この態様においても、前記処理槽と前記移送管と前記清澄管は、熔融ガラスが漏出しない流路を形成するとき、熱膨張した状態で前記移送管が前記処理槽と前記清澄管とに当接されて接続されるので、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。また、前記処理槽と前記移送管と前記清澄管を、熔接を用いずに接続するので、装置の組み立てを簡略化することができる。
【0017】
さらに、本発明の他の一態様は、ガラス板を製造するガラス板の製造装置である。当該製造装置では、
ガラス原料を熔解して熔融ガラスをつくる熔解炉と、
前記熔解炉でつくられた熔融ガラスを前記熔解炉から移送する、白金あるいは白金合金を少なくとも用いて構成された移送管と、
前記移送管により供給された熔融ガラスの清澄を行う清澄管と、を含む。
前記移送管は
、予め加熱される前に、前記移送管の前記一方の端部と前記熔解炉の前記端部との間、及び前記移送管の前記他方の端部と前記清澄管の前記端部との間に隙間が設けられ、予め加熱されて熱膨張した状態で、前記移送管の一方の端部と前記熔解炉の端部が当接され、前記移送管の他方の端部と前記清澄管との端部が当接される。
前記熔解炉、前記移送管及び前記清澄管のそれぞれの当接する端部は、管外部から冷却されており、前記端部を通過し前記端部の間にある空隙に進入する熔融ガラスを前記端部が冷却固化することにより、前記熔解炉と前記移送管と前記清澄管とが熔融ガラスの流路として形成されている。
このように、前記熔解炉と前記移送管と前記清澄管は、熔融ガラスが漏出しない流路を形成するとき、熱膨張した状態で前記移送管が前記熔解炉と前記清澄管とに当接されて接続されるので、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。また、前記熔解炉と前記移送管と前記清澄管を、熔接を用いずに接続するので、工期を短縮して製造装置を組み立てることができる。
【0018】
また、前記加熱による熱膨張によって前記隙間がいずれもなくなり、前記移送管の前記一方の端部と前記熔解炉の前記端部が当接され、前記移送管の前記他方の端部と前記清澄管の前記端部が当接されることが好ましい。このため、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。また、製造装置は、組み立てにおいて、溶接を用いないので、装置の組み立てを簡略化することができる。
【0019】
また、前記隙間は、前記移送管及び前記清澄管の加熱の後に残存し、前記加熱によって熱膨張した前記移送管を前記熔解炉に向けて移動することにより、及び前記清澄管を前記移送管に向けて移動することにより、前記移送管の前記一方の端部と前記熔解炉の前記端部が当接され、前記移送管の前記他方の端部と前記清澄管の前記端部が当接される、ことが好ましい。
このため、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。特に、前記移送管は、十分に熱膨張した状態で、前記熔解炉及び前記清澄管に当接されるので、前記移送管及び前記清澄管の歪み、湾曲、破損等を大きく抑制することができる。
また、この製造装置では、前記移送管及び前記清澄管の熱膨張を考慮して前記隙間を設ける必要がなく、極めて容易に装置の組み立てを行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
上記態様の製造方法および製造装置によれば、移送管及び清澄管の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。さらに、熔接等を用いず工事を簡略化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のガラス板の製造方法および製造装置について詳細に説明する。
図1は、本実施形態のガラス基板の製造方法の工程の一例を示す図である。
【0023】
(ガラス基板の製造方法の全体概要)
ガラス基板の製造方法は、熔解工程(ST1)と、清澄工程(ST2)と、均質化工程(ST3)と、供給工程(ST4)と、成形工程(ST5)と、徐冷工程(ST6)と、切断工程(ST7)と、を主に有する。この他に、研削工程、研磨工程、洗浄工程、検査工程、梱包工程等を有し、梱包工程で積層された複数のガラス基板は、納入先の業者に搬送される。
【0024】
熔解工程(ST1)は熔解炉で行われる。熔解炉では、ガラス原料を、熔解炉に蓄えられた熔融ガラスの液面に投入し、加熱することにより熔融ガラスを作る。さらに、熔解炉の内側側壁の1つの底部に設けられた流出口101aから下流工程に向けて熔融ガラスを流す。
熔解炉の熔融ガラスの加熱は、熔融ガラス自身に電気が流れて自ら発熱して加熱する方法に加えて、バーナーによる火焔を補助的に与えてガラス原料を熔解することもできる。なお、ガラス原料には清澄剤が添加される。清澄剤として、SnO
2,As
2O
3,Sb
2O
3等が知られているが、特に制限されない。しかし、環境負荷低減の点から、清澄剤としてSnO
2(酸化錫)を用いることが好ましい。
【0025】
清澄工程(ST2)は、少なくとも清澄管において行われる。清澄工程では、清澄管内の熔融ガラスが昇温されることにより、熔融ガラス中に含まれるO
2、CO
2あるいはSO
2を含んだ泡が、清澄剤の還元反応により生じたO
2を吸収して成長し、熔融ガラスの液面に泡は浮上して放出される。さらに、清澄工程では、熔融ガラスの温度を低下させることにより、清澄剤の還元反応により得られた還元物質が酸化反応をする。これにより、熔融ガラスに残存する泡中のO
2等のガス成分が熔融ガラス中に再吸収されて、泡が消滅する。清澄剤による酸化反応及び還元反応は、熔融ガラスの温度を制御することにより行われる。なお、清澄工程は、減圧雰囲気の空間を清澄管につくり、熔融ガラスに存在する泡を減圧雰囲気で成長させて脱泡させる減圧脱泡方式を用いることもできる。この場合、清澄剤を用いない点で有効である。なお、清澄工程では、酸化錫を清澄剤として用いた清澄方法を用いる。
【0026】
均質化工程(ST3)では、清澄管から延びる配管を通って供給された攪拌槽内の熔融ガラスを、スターラを用いて攪拌することにより、ガラス成分の均質化を行う。これにより、脈理等の原因であるガラスの組成ムラを低減することができる。
供給工程(ST4)では、攪拌槽から延びる配管を通して熔融ガラスが成形装置に供給される。
【0027】
成形装置では、成形工程(ST5)及び徐冷工程(ST6)が行われる。
成形工程(ST5)では、熔融ガラスをシートガラスに成形し、シートガラスの流れを作る。成形は、オーバーフローダウンドロー法が用いられる。
徐冷工程(ST6)では、成形されて流れるシートガラスが所望の厚さになり、内部歪が生じないように、さらに、反りが生じないように冷却される。
切断工程(ST7)では、切断装置において、成形装置から供給されたシートガラスを所定の長さに切断することで、板状のガラス板を得る。切断されたガラス板はさらに、所定のサイズに切断され、目標サイズのガラス基板が作られる。この後、ガラス基板の端面の研削、研磨が行われ、ガラス基板の洗浄が行われ、さらに、気泡等の異常欠陥の有無が検査された後、検査合格品のガラス板が最終製品として梱包される。
【0028】
図2は、本実施形態における熔解工程(ST1)〜切断工程(ST7)を行うガラス板製造装置の一例を模式的に示す図である。当該装置は、
図2に示すように、主に熔解装置100と、成形装置200と、切断装置300と、を有する。熔解装置100は、熔解炉101と、清澄管102と、攪拌槽103と、ガラス供給管104,105,106と、を有する。
図2に示す熔解装置101では、ガラス原料の投入がバケット101dを用いて行われる。清澄管102では、熔融ガラスMGの温度を調整して、清澄剤の酸化還元反応を利用して熔融ガラスMGの清澄が行われる。さらに、攪拌槽103では、スターラ103aによって熔融ガラスMGが攪拌されて均質化される。成形装置200では、成形体210を用いたオーバーフローダウンドロー法により、熔融ガラスMGからシートガラスSGが成形される。
なお、
図2では、ガラス供給管104は熔解炉101と清澄管102とを接続する移送管であるが、ガラス供給管104は、熔解炉101に接続された処理槽と清澄管102を接続する移送管であってもよい。処理槽として、例えば、酸素ガスを熔融ガラスに供給するとともに、熔融ガラスMGの温度を低下させて清澄剤に上記酸素ガスの一部を吸収させる処理槽が挙げられる。
【0029】
(第1実施形態のガラス板製造装置の組み立て)
以下、ガラス板製造装置の組み立て、特に、熔解炉101あるいは上述した熔解炉101に接続された処理槽と、ガラス供給管104と、清澄管102との組み立てについて説明する。
図3は、本実施形態の熔解炉101あるいは熔解炉101に接続された処理槽110に対する、ガラス供給管104及び清澄管102の組み立てを説明する図である。
以下、熔解炉101に対してガラス供給管104及び清澄管102を組み立てる例を説明するが、処理槽110に対してガラス供給管104及び清澄管102を組み立てる場合も同様な処理が行われるので、その説明は省略する。
【0030】
熔解炉101は、耐火物レンガ等の耐火物材で熔融ガラスMGが貯留でき、熔融ガラスを通電加熱する電極が設けられた下槽と、バーナー等で気相を加熱し高温の雰囲気を作る上槽とを有するように、製造現場において築炉される。
これに対して、ガラス供給管104は、工場等で作製されて製造現場に搬入される。同様に、清澄管102は、工場等で作製されて製造現場に搬入される。このとき、ガラス供給管104及び清澄管102の配置は、所定の温度(例えば1000℃以上)にガラス供給管104、さらには清澄管102を加熱して組み立てることを考慮して、すなわち、ガラス供給管104、さらには清澄管102の熱膨張を考慮して、
図3に示すように、熔解炉101の端部、ガラス供給管104の両端部、清澄管102の端部は、予め当接しないように配置される。本実施形態では、ガラス供給管104及び清澄管102の加熱の際に同時に熔解炉101の加熱も行われる。
本実施形態では、ガラス供給管104、さらには清澄管102及び熔解炉101を加熱して組み立てるが、ガラス供給管104を単独で加熱して、あるいは、ガラス供給管104及び清澄管102を加熱して、熱膨張したガラス供給管104の両端部を、熔解炉101の端部及び清澄管102の端部と当接させて組み立てることもできる。
【0031】
図3には、熔解炉101の底部と側壁の一部が示されている。
この熔解炉101の流出口の端部、具体的には、側壁の熔融ガラスMGの流出口101aの端部101bに対して、ガラス供給管104の端部104aが当接しないように離間している。ガラス供給管104は、白金あるいは白金合金で構成されている。ガラス供給管104は、白金あるいは白金合金の代えて、強化白金あるいは強化白金合金で構成されてもよい。強化白金あるいは強化白金合金は、白金あるいは白金合金に、Al
2O
3,ZrO
2あるいはY
2O
3等の金属酸化物粒子が分散した材料であり、白金等の結晶粒の成長を抑制し、ガラス供給管104の一部が結晶粒の成長と粒界浸食によって脱落して熔融ガラスMGが漏れ出すといった白金や白金合金の問題を解決することができる。
【0032】
ガラス供給管104は、アルミナセメント114aで被覆され、その外側には、耐火物レンガ等の断熱部材114bが積み重ねられて移送管ユニット114が形成されている。すなわち、ガラス供給管104の周りには、断熱部材114bが設けられている。
また、ガラス供給管104の両端部104a,104bは、フランジ形状を成し、断熱部材114bの外に突出している。本実施形態の両端部104a,104bはフランジ形状を成しているが、両端部104a,104bが管外部から冷却される限りにおいて、フランジ形状でなくてもよい。
【0033】
清澄管102は、白金あるいは白金合金で構成されている。ガラス供給管104は、白金あるいは白金合金の代えて、強化白金あるいは強化白金合金で構成されてもよい。
強化白金あるいは強化白金合金は、白金等の結晶粒の成長を抑制し、ガラス供給管104が部分的に脱落して熔融ガラスが漏れ出すといった白金や白金合金の問題を解決することができる。清澄管102は、図示されないが、清澄管102内部空間中の気相と管外部を連通する開口が設けられている。
強化白金あるいは強化白金合金は、白金等の結晶粒の成長を抑制し、ガラス供給管104が部分的に脱落して熔融ガラスが漏れ出すといった問題を発生させない点で、ガラス供給管104及び清澄管102に強化白金あるいは強化白金合金を用いることが好ましい。
【0034】
清澄管102は、アルミナセメント112aで被覆され、その外側には、耐火物レンガ等の断熱部材112bが積み重ねられて清澄管ユニット112が形成されている。すなわち、清澄管102の周りには、断熱部材112bが設けられている。
また、清澄管102の端部102aは、フランジ形状を成し、断熱部材112bの外に突出している。
清澄管102の端部102aと反対側の図示されない端部は、端部102aと同様の構成で、本実施形態と同様の方法で接続されてもよいし、従来のように溶接あるいは特殊な溶接を用いてガラス供給管105(
図2参照)と接続されてもよい。
【0035】
このような移送管ユニット114及び清澄管ユニット112は、上述したように、所定の温度の加熱による熱膨張によってはじめて熔解炉101、ガラス供給管104、及び清澄管102の端部同士が当接するように、製造現場に配置されている。すなわち、熔解炉101の熔融ガラスMGの流出口101aの端部101bと、ガラス供給管104の端部104aとの間、及びガラス供給管104の端部104bと清澄管102の端部102aとの間に、隙間が設けられるように配置されている。
【0036】
この状態で、熔解炉101、移送管ユニット114及び清澄管ユニット112は、外部から図示されない加熱装置やガラス供給管104及び清澄管102の周りに設けられた図示されないヒータ電極を通電することにより、熔解炉102、ガラス供給管104、さらには清澄管102が所定の温度に加熱される。このとき、ガラス供給管104、さらには清澄管102に生じる熱膨張(
図3中の横方向の矢印)により、端部101b及び端部104aとの間の隙間及び端部104bと端部102aとの間の隙間がいずれもなくなり、端部101bと端部104aが当接され、端部104bと端部102aが当接される。勿論、上記加熱は、上述したようにガラス供給管104を含む移送管ユニット114を単独で加熱するものであってもよく、あるいは、ガラス供給管104を含む移送管ユニット114及び清澄管102を含む清澄管ユニット112を加熱するものであってもよい。
【0037】
こうして熔解炉101、ガラス供給管104及び清澄管102の各端部同士が当接した後、熔解炉101、移送管ユニット114及び清澄管ユニット112の高温状態が保持された状態で、熔解炉101にガラス原料が投入され、図示されないバーナー及び電極によってガラス原料が熔解されて熔融ガラスMGがつくられる。
図4は、ガラス供給管104及び清澄管102の組み立ての加熱後の状態を説明する図であり、加熱による熱膨張によって各端部同士が当接している。
この状態で、流出口101aが開放されて、熔解炉101に貯留された熔融ガラスMGは流出口101aからガラス供給管104さらには、清澄管102に流れ始める。このとき、熔融ガラスMGは、ガラス供給管104及び清澄管102に設けられた図示されない加熱ヒータによって例えば1500〜1700℃に昇温されている。なお、熔解炉101の端部101bとガラス供給管104の端部104aは互いに当接した状態であり、ガラス供給管104の端部104bと清澄管102の端部102aはお互いに当接した状態である。このため、当接した端部同士間には小さな空隙が存在する。しかし、熔融ガラスMGが当接した端部を通過するとき、熔融ガラスMGは上記空隙に進入する。一方、当接した端部には、断熱材114b,112bが設けられておらず、しかも、端部104a,104b,102aはフランジ形状になっているので、管の他の部分に比べて管外部から冷却され易くなっている。このため、上記空隙に進入する熔融ガラスMGは容易に冷却固化されて上記空隙を穴埋めする。こうして、熔解炉101からガラス供給管104、さらには清澄管102に到る流路、すなわち熔融ガラスMGの漏出がない流路が形成される。
【0038】
以上のように本実施形態では、ガラス板の製造のために熔融ガラスMGをつくる工程の前に、少なくともガラス供給管104を加熱し、ガラス供給管104を熱膨張させた状態で各端部を当接する。さらに、熔解炉101からガラス供給管104及び清澄管102に熔融ガラスMGが流れたときに、各端部が管外部から冷却されているので、各端部を通過し端部間に存在する空隙に進入する熔融ガラスMGは冷却固化される。これにより、熔解炉101とガラス供給管104と清澄管102は、熔融ガラスMGが漏出しない流路を形成する。このため、流路を形成するガラス供給管104及び清澄管102の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。
従来、ガラス供給管及び清澄管は、工場等の別の場所で作製された後、ガラス板製造装置を設置する現場に搬入されて、この現場で熔接を行うことにより、熔解炉と移送管と清澄管を組み立てて接続されていた。しかし、ガラス板製造装置の現場では、熔接環境が厳しく、工場等で熔接を行う場合に比べて時間がかかり、現場設置の簡略化が難しかった。この点で、本実施形態の装置は熔接を用いないので、製造装置の組み立てを簡略化することができる。
【0039】
また、本実施形態では、ガラス供給管104及び清澄管102の周りに、断熱部材112b,114bが設けられ、各端部は、断熱部材112b、114bの外に突出している。各端部の突出により各端部は管外部から冷却されており、当接する端部間に存在する空隙に進入する熔融ガラスMGは冷却固化される。このため、従来のように溶接を用いずに、熔解炉101からガラス供給管104、さらには清澄管102に到るまで、熔融ガラスMGが漏出しない流路が容易に形成され得る。
【0040】
また、本実施形態では、ガラス供給管104の両端部104a,104b及び清澄管102の端部102aは、いずれもフランジ形状を成しているので、空隙周囲の温度は熔融ガラスMGを冷却固化する程度に十分低くなっている。このため、当接する端部間に存在する空隙に進入する熔融ガラスMGは確実に冷却固化され得る。
【0041】
さらに、上述したように、本実施形態のガラス供給管104及び清澄管102の接続には溶接を用いないので、白金あるいは白金合金には、金属酸化物粒子が分散した強化白金あるいは強化白金合金を用いることができる。強化白金あるいは強化白金合金は、白金等の結晶粒の成長を抑制し、ガラス供給管104が部分的に脱落して熔融ガラスが漏れ出す問題を解決するので、ガラス供給管104及び清澄管102を長期間使用することができる。しかも、熱膨張した状態でガラス供給管104が熔解炉101と清澄管102とに当接されて接続されるので、強化白金あるいは強化白金合金が熱膨張に起因して生じる熱応力を緩和し難い特性を有していても、ガラス供給管104及び清澄管102の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。さらに、従来のように溶接を行って装置を組み立てることはないので、従来溶接によって失われていた、強化白金あるいは強化白金合金の結晶粒の成長の抑制を保つことができる。
【0042】
(第2実施形態のガラス板製造装置の組み立て)
図5は、第1実施形態のガラスの板製造装置の組み立てと異なる組み立てを行う第2実施形態の組み立てを説明する図である。
図5には、熔解炉101、移送管ユニット114、及び清澄管ユニット112が示されている。
図5に示す熔解炉101、移送管ユニット114、及び清澄管ユニット112の構成は第1実施形態における構成と同じであり、この第2実施形態の構成の中の第1実施形態の各部分に対応する部分には
図5中では同じ符号を付している。したがって、これらの部分についての説明は省略する。
【0043】
第2実施形態の組み立ては、第1実施形態の組み立ての場合と比べて、移送管ユニット114及び清澄管ユニット112の配置位置が異なる。
また、移送管ユニット114及び清澄管ユニット112は、熔解炉101に対して移動可能な構成を備えている。具体的には、移送管ユニット114及び清澄管ユニット112のそれぞれの底部には、製造現場の床を移動できるローラ114c及びローラ114cが設けられている。
具体的には、熔解炉101、ガラス供給管104及び清澄管102の加熱の前に、ガラス供給管104の一方の端部104aと熔解炉101の端部101bとの間、及びガラス供給管104の他方の端部104bと清澄管102の端部102aとの間に隙間が設けられる。
【0044】
この状態において、熔解炉101、移送管ユニット114及び清澄管ユニット112は、外部から図示されない加熱装置やガラス供給管104及び清澄管102の周りに設けられた図示されないヒータ電極を通電することにより、ガラス供給管104及び清澄管102は所定の温度(例えば1000℃以上)に加熱される。しかし、加熱前の上記隙間は、ガラス供給管104及び清澄管102の加熱の後に残存する程度に広い。
図6は、第2実施形態のガラス供給管104及び清澄管102の加熱後の状態を説明する図である。
図6では、隙間Z
1,Z
2が残存している。
加熱によって熱膨張したガラス供給管104を含む移送管ユニット114は、図示されない駆動機構を用いてローラ114cを転がらして熔解炉101に向けて移動することにより、ガラス供給管104の端部104aと熔解炉101の端部101bが当接される。さらに、清澄管101を含む清澄管ユニット112は、図示されない駆動機構を介してローラ112cを転がしてガラス供給管104に向けて移動することにより、ガラス供給管104の端部104bと清澄管102の端部102aとが当接される。
勿論、上記加熱は、上述したようにガラス供給管104を含む移送管ユニット114を単独で加熱するものであってもよく、あるいは、ガラス供給管104を含む移送管ユニット114及び清澄管102を含む清澄管ユニット112を加熱するものであってもよい。
【0045】
こうして、熔解炉101、ガラス供給管104及び清澄管102の各端部同士が当接した後、熔解炉101、移送管ユニット114及び清澄管ユニット112の高温状態が保持された状態で、熔解炉101にガラス原料が投入され、図示されないバーナー及び電極によってガラス原料が熔解されて熔融ガラスMGがつくられる。
この状態で、流出口101aが開放されて、熔解炉101中の熔融ガラスMGを流出口101aから流出させ、熔融ガラスMGが、ガラス供給管104及び清澄管102を流れ始める。このとき、熔融ガラスMGが1500〜1700℃になるように、ガラス供給管104及び清澄管102に設けられた加熱ヒータを用いて熔融ガラスMGを加熱する。熔融ガラスMGが熔解炉101、移送管ユニット114及び清澄管ユニット112の当接した端部を通過するとき、熔融ガラスMGは、当接した端部間に存在する空隙に進入する。一方、当接した端部104a,104b,102aは、断熱材114b、112bが設けられておらず、しかも、端部104a,104b,102aはフランジ形状になっているので、管の他の部分に比べて管外部から冷却されている。このため、上記空隙に進入する熔融ガラスMGは容易に冷却固化されて上記空隙を穴埋めする。こうして、熔解炉101からガラス供給管104、さらには清澄管102に到る、熔融ガラスMGが漏出しない流路が形成される。
【0046】
したがって、第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、当接した端部間に存在する空隙を冷却固化したガラスが穴埋めするので、熔解炉101とガラス供給管104と清澄管102とは、熔融ガラスMGが漏出しない流路を形成する。このため、ガラス供給管104及び清澄管102の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。しかも、装置製造を、熔接を用いないので、製造装置の組み立てを簡略化することができる。特に、第2実施形態では、ガラス供給管104及び清澄管102の熱膨張を考慮して、熔解炉102、ガラス供給管104及び清澄管102の端部間に隙間を設ける必要がないので、装置の組み立てがより簡単にできる。また、第2実施形態では、少なくともガラス供給管104は加熱により十分に熱膨張した状態で端部同士が当接されるので、ガラス板の製造中、ガラス供給管104及び清澄管102の歪み、湾曲、破損等を第1実施形態に比べてより効果的に抑制することができる。
【0047】
また、第2実施形態においても、ガラス供給管104及び清澄管102の周りには、断熱部材112b,114bが設けられ、各端部は、断熱部材112b、114bの外に突出している。この各端部の突出により各端部は管外部よって冷却されており、当接する各端部に存在する空隙に進入する熔融ガラスMGは冷却固化される。このため、溶接を用いずに、熔解炉101からガラス供給管104、さらには清澄管102に到る熔融ガラスMGが漏出しない流路が容易に形成され得る。
【0048】
また、第2実施形態においても、ガラス供給管104の両端部104a,104b及び清澄管102の端部102aは、いずれもフランジ形状を成しているので、空隙周囲の温度は熔融ガラスMGを冷却固化する程度に十分低くなっている。このため、端部は、当接する端部に存在する空隙に進入する熔融ガラスMGを確実に冷却固化することができる。
【0049】
さらに、第2実施形態においても、ガラス供給管104及び清澄管102の接続には溶接を用いないので、白金あるいは白金合金には、金属酸化物粒子が分散した強化白金あるいは強化白金合金を用いることができる。強化白金あるいは強化白金合金は、白金等の結晶粒の成長を抑制し、ガラス供給管104が部分的に脱落して熔融ガラスが漏れ出す問題を解決するので、ガラス供給管104及び清澄管102を長期間使用することができる。
【0050】
(ガラスの適用)
第1実施形態及び第2実施形態では、ガラス供給管104及び清澄管102けいが熱膨張した状態でガラス板製造装置が組み立てられるので、粘性の高いガラスを用いることができる。すなわち、粘性の高いガラスについて、熔融ガラス中の清澄(脱泡)を行うことができる程度の高い温度に加熱しても、ガラス供給管104及び清澄管102の歪み、湾曲、破損等が発生することなく長期間使用することができる。粘性の高いガラスとは、例えば、熔融ガラスの10
2.5 poiseにおける温度が1500℃以上(例えば、1500℃以上1650℃以下)、より好ましくは、1550℃以上(例えば、1550℃以上1650℃以下)、さらにより好ましくは、1600℃以上(例えば、1600℃以上1650℃以下)である。
第1実施形態及び第2実施形態は、TFT(Thin Film Transistor)をガラス板上に形成するフラットパネルディスプレイ用ガラス板を製造するのに好適である。フラットパネルディスプレイ用ガラス板では、ガラス板状にTFTが形成されるので無アルカリガラスあるいはアルカリ微量含有ガラスが用いられる。無アルカリガラス及びアルカリ微量含有ガラスについては後述する。この無アルカリガラスあるいはアルカリ微量含有ガラスでは、アルカリ金属成分を全く含まないか、あるいは微量にしか含まないので、粘性の高い熔融ガラスとなる。このため、粘性の高い熔融ガラスに好適な第1実施形態及び第2実施形態は、フラットパネルディスプレイ用ガラス板の製造に好適である。
【0051】
第1実施形態及び第2実施形態を液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用ガラス板に適用する場合、以下のガラス組成を有するようにガラス原料を混合するものが例示される。以下の%は質量%表示を意味する。
SiO
2:50〜70%、
Al
2O
3:0〜25%、
B
2O
3:1〜15%、
MgO:0〜10%、
CaO:0〜20%、
SrO:0〜20%、
BaO:0〜10%、
RO:5〜30%(ただし、RはMg、Ca、Sr及びBaの合量)、
を含有する無アルカリガラス。
なお、本実施形態では無アルカリガラスとしたが、ガラス基板はアルカリ金属を微量含んだアルカリ微量含有ガラスであってもよい。アルカリ金属を含有させる場合、R’
2Oの合計が0.10%以上0.5%以下、好ましくは0.20%以上0.5%以下(ただし、R’はLi、Na及びKから選ばれる少なくとも1種であり、ガラス基板が含有するものである)含むことが好ましい。勿論、R’
2Oの合計が0.10%より低くてもよい。
また、本発明のガラス基板の製造方法を適用する場合は、ガラス組成物が、上記各成分に加えて、SnO
2:0.01〜1%(好ましくは0.01〜0.5%)、Fe
2O
3:0〜0.2%(好ましくは0.01〜0.08%)を含有し、環境負荷を考慮して、As
2O
3、Sb
2O
3及びPbOを実質的に含有しないようにガラス原料を調製しても良い。
また、上記ROの供給源には、硝酸塩や炭酸塩を用いることができる。なお、溶融ガラスの酸化性を高めるには、ROの供給源として硝酸塩を工程に適した割合で用いることがより望ましい。
【0052】
さらに、上述した成分に加え、本実施形態のガラス板に用いるガラスは、ガラスの様々な物理的、溶融、清澄、および、成形の特性を調節するために、様々な他の酸化物を含有しても差し支えない。そのような他の酸化物の例としては、以下に限られないが、SnO
2、TiO
2、MnO、ZnO、Nb
2O
5、MoO
3、Ta
2O
5、WO
3、Y
2O
3、および、La
2O
3が挙げられる。ここで、第1実施形態及び第2実施形態では、熔融ガラスMG中に清澄剤としてSnO
2を含むことが好ましい。SnO
2は、上述したように毒性の強いAs
2O
3に対して環境負荷低減の点で有利である。また、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレイ用ガラス板は、ガラス板中の泡に対する要求が特に厳しいので、上記酸化物の中では清澄効果が大きいSnO
2を少なくとも含有することが好ましい。
SnO
2は、従来から清澄剤として用いられるAs
2O
3に比べて清澄効果は劣るので、SnO
2の清澄効果を効果的に発揮させるために、熔融ガラスMGの温度を例えば1650℃以上の高温に加熱しなければならない。これに伴ってガラス供給管104及び清澄管102も高温に加熱しなければならない。しかし、第1実施形態及び第2実施形態では、ガラス供給管104及び清澄管102の熱膨張を考慮してガラス板製造装置が組み立てられているので、高温で長期間使用しても、ガラス供給管104及び清澄管102の歪み、湾曲、破損等を抑制することができる。すなわち、第1実施形態及び第2実施形態は、SnO
2を清澄剤として用いる場合、好適に用いることができる。
【0053】
以上、本発明ガラス板の製造方法および製造装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。