(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731443
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】キャップの脱落防止構造
(51)【国際特許分類】
B65D 55/16 20060101AFI20150521BHJP
B65D 51/00 20060101ALI20150521BHJP
B60K 15/05 20060101ALN20150521BHJP
【FI】
B65D55/16
B65D51/00 A
!B60K15/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-129002(P2012-129002)
(22)【出願日】2012年6月6日
(65)【公開番号】特開2013-252877(P2013-252877A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2014年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】熱田 秀光
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 浩一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌也
【審査官】
種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】
仏国特許出願公開第2745558(FR,A1)
【文献】
実開昭63−183062(JP,U)
【文献】
特開2006−044524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 55/16
B65D 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の開口部に着脱自在に装着され当該開口部を開閉するキャップ(1)と、このキャップ(1)に連結され前記容器内に進入するホルダ部材(2)と、を具備したキャップの脱落防止構造であって、
前記キャップ(1)は、
その裏面側に突設された筒状部(1b)と、
この筒状部(1b)の周方向に沿って複数が離間して設けられ、当該筒状部(1b)の内外を連通する貫通孔(1d)と、を備え、
前記ホルダ部材(2)は、弾性変形可能な材質より成形され、
キャップ側の頂部(2d)から前記キャップ(1)の前記貫通孔(1d)に対応して斜め後方に延出する腕部(2e)を複数備えたホルダ本体(2a)と、
前記容器の前記開口部の開口径よりも大きい形状の抜止部(2b)と、
この抜止部(2b)と前記ホルダ本体(2a)の前記頂部(2d)とを連結する連結部(2c)と、備え、
前記ホルダ本体(2a)は、前記キャップ(1)の裏面側の前記筒状部(1b)内に進入し、前記ホルダ本体(2a)の前記各腕部(2e)の先端部(2f)が、前記キャップ(1)の前記筒状部(1b)の前記各貫通孔(1d)にそれぞれ内側から進入し係止される係止部とされていることを特徴とするキャップの脱落防止構造。
【請求項2】
前記ホルダ本体(2a)は、くの字状に構成され、くの字の股部分が前記頂部(2d)とされていることを特徴とする請求項1記載のキャップの脱落防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャップの脱落防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、容器の開口部に着脱自在に装着され当該開口部を開閉するキャップの脱落を防止する脱落防止構造(紛失防止構造)として、容器内にホルダ部材を配置し、ホルダ部材の先端側をキャップに係止すると共に、ホルダ部材の後端側を容器の開口部の開口径よりも大きい形状の抜止部とすることで、容器から取り外されたキャップが当該容器から脱落(離脱:紛失)するのを防止する構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このキャップの脱落防止構造にあっては、キャップの裏面に筒状部を成形すると共に、当該筒状部の内周面又は外周面に環状凸部を成形し、ホルダ部材の先端部に成形した係止部を、環状凸部を乗り越えるように圧入する(環状凸部を変形させながら押し込む)ことで、キャップにホルダ部材を係止させるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−156653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記キャップの脱落防止構造では、ホルダ部材の係止部が圧入されるキャップの環状凸部、すなわち金型成形による所謂アンダーカット部において、係止部がアンダーカット部から簡単に抜けないようにする所要の抜け難さを、安定して得るのが難しいという問題がある。また、このようなアンダーカット部による抜け難さの品質管理も難しい。また、キャップのアンダーカット部を変形させながら、ホルダ部材の係止部を圧入したり金型を離型(無理抜き)したりするため、キャップの材質は例えば樹脂等の弾性変形可能な材質に限定されるという問題がある。さらに、上記特許文献1の構造にあっては、第1図〜第4図に示すように、ホルダ部材が2部品、すなわち、球体、紐体、係止体を有する部材と、当該部材に係止される蓋部との2部品から構成されているため、部品点数が多いと共に組立に時間を要し、製造コストが高くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、容易に組み立てることができ、且つ、所要の抜け難さを安定して得ることができると共に、抜ける方向の力に比例して外れ難くされ、且つ、品質管理が容易であり、しかも、キャップの材質選択の幅を広げることができ、加えて、部品点数及び組立工数を低減できるキャップの脱落防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるキャップの脱落防止構造は、容器の開口部に着脱自在に装着され当該開口部を開閉するキャップ(1)と、このキャップ(1)に連結され容器内に進入するホルダ部材(2)と、を具備したキャップの脱落防止構造であって、キャップ(1)は、その裏面側に突設された筒状部(1b)と、この筒状部(1b)の周方向に沿って複数が離間して設けられ、当該筒状部(1b)の内外を連通する貫通孔(1d)と、を備え、ホルダ部材(2)は、弾性変形可能な材質より成形され、キャップ側の頂部(2d)からキャップ(1)の貫通孔(1d)に対応して斜め後方に延出する腕部(2e)を複数備えたホルダ本体(2a)と、容器の開口部の開口径よりも大きい形状の抜止部(2b)と、この抜止部(2b)とホルダ本体(2a)の頂部(2d)とを連結する連結部(2c)と、備え、ホルダ本体(2a)は、キャップ(1)の裏面側の筒状部(1b)内に進入し、ホルダ本体(2a)の各腕部(2e)の先端部(2f)が、キャップ(1)の筒状部(1b)の各貫通孔(1d)にそれぞれ内側から進入し係止される係止部とされていることを特徴としている。
【0008】
このようなキャップの脱落防止構造によれば、ホルダ部材(2)は弾性変形可能な材質より成形され、そのホルダ本体(2a)の腕部(2e)の開き角度(θ)を、腕部(2e)の弾性力に抗して狭めながら、当該ホルダ本体(2a)をキャップ(1)の裏面側の筒状部(1b)内に進入させ、腕部(2e)の先端部(2f)がキャップ(1)の筒状部(1b)の貫通孔(1d)に達することで、当該各先端部(2f)が各貫通孔(1d)にそれぞれ内側から進入して弾性的に開き、キャップ(1)にホルダ部材(2)が係止される。このため、容易に組み立てることができる。また、キャップのアンダーカット部にホルダ部材を圧入して係止するのではなく、キャップ(1)の貫通孔(1d)にホルダ本体(2a)の腕部(2e)の先端部(2f)を進入させて係止する構成のため、ホルダ本体(2a)の腕部(2e)の弾性力(剛性力)及び開き角度(θ)を選定することで、所要の抜け難さを安定して得ることができると共に、キャップ(1)からホルダ部材(2)が離脱するような外力が作用した場合、すなわち、抜ける方向の力が作用した場合、ホルダ本体(2a)の腕部(2e)の開き角度(θ)が広がりつつ当該腕部(2e)の先端部(2f)がキャップ(1)の貫通孔(1d)の奥にさらに進入し、キャップ(1)からホルダ部材(2)が外れ難く、このように引張力に比例してホルダ部材(2)が外れ難い構造となっている。また、このように、所要の抜け難さを安定して得ることができるため、品質管理が容易である。また、キャップのアンダーカット部を変形させながら、ホルダ部材(2)を圧入したり金型を離型したりする構成ではないため、キャップ(1)の材質を例えば樹脂等の弾性変形可能な材質以外の例えばアルミ等の金属材とすることができ、キャップ(1)の材質選択の幅を広げることができる。また、ホルダ部材(2)の部品点数を従来の2部品から1部品に低減できると共に、この低減により組立工数を低減できる。
【0009】
ここで、ホルダ本体(2a)は、くの字状に構成され、くの字の股部分が頂部(2d)とされていると、簡易にホルダ部材を構成することができる。
【発明の効果】
【0010】
このように本発明によれば、容易に組み立てることができ、且つ、所要の抜け難さを安定して得ることができると共に、抜ける方向の力に比例して外れ難くされ、且つ、品質管理が容易であり、しかも、キャップの材質選択の幅を広げることができ、加えて、部品点数及び組立工数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るキャップの脱落防止構造を示す縦断面図である。
【
図4】ホルダ部材をキャップに装着している状態を示す縦断面図である。
【
図5】キャップからホルダ部材を引き抜こうとする力が作用したときの状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るキャップの脱落防止構造の好適な実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るキャップの脱落防止構造を示す縦断面図、
図2は、キャップを示す縦断面図、
図3は、ホルダ部材を示す縦断面図、
図4は、ホルダ部材をキャップに装着している状態を示す縦断面図、
図5は、キャップからホルダ部材を引き抜こうとする力が作用したときの状態を示す縦断面図であり、本実施形態のキャップの脱落防止構造は、例えば、刈払機、チェンソー、ブロワ等の手持ち式作業機の燃料タンクのキャップに好適に適用されるものである。
【0013】
図1〜
図3に示すように、本実施形態のキャップの脱落防止構造は、容器の開口部に着脱自在に装着され当該開口部を開閉するキャップ1と、このキャップ1に連結され容器内に進入するホルダ部材2と、を具備して成る。
【0014】
キャップ1は、例えば樹脂や例えばアルミ等の金属材より一体成形されたものであり、
図1及び
図2に示すように、円板状の頭部1aと、この頭部1aの裏面側に突設された筒状部1bと、を備える。この筒状部1bは円筒状を成し、その外周面には、容器の開口部の内周面に設けられた雌螺子に螺合する雄螺子1cが形成されている。
【0015】
また、筒状部1bの上記雄螺子1cより下方の位置には、180°周方向に離間した位置、すなわち正対する位置に、内外を連通する貫通孔1dがそれぞれ設けられている。この貫通孔1dは、ホルダ部材2を係止するためのものである。
【0016】
ホルダ部材2は、例えば樹脂等の弾性変形可能な材質より一体成形されたものであり、
図1及び
図3に示すように、ホルダ本体2aと、抜止部2bと、連結部2cと、を備える。
【0017】
ホルダ本体2aは、くの字状を呈し、くの字の股部分の頂部2dがキャップ1の頭部1a側を向くと共に、キャップ1の貫通孔1d,1dに対応して頂部2dから腕部2e,2eが斜め後方(頭部1a側とは反対側)に延出するように構成される。この腕部2eの先端部2fは、キャップ1の貫通孔1dに係止される係止部であり、水平方向に短尺に延びる構成とされている。
【0018】
抜止部2bは、容器の開口部の開口径よりも大きい形状のものであり、ここでは、蓮根を輪切りにしたような形状を呈し多数の孔を有する構成とされている。
【0019】
連通部2cは、ホルダ本体2aと抜止部2bとを連結するためのものであり、具体的には、ホルダ本体2aの頂部2dの裏側に連結され所定の長さを有するように延在する。
【0020】
このようなホルダ部材2をキャップ1に装着する場合には、
図4に示すように、ホルダ本体2aの腕部2eの開き角度θを、腕部2eの弾性力に抗して狭めながら、すなわち、くの字を閉じる方向に変形させながら、当該ホルダ本体2aをキャップ1の筒状部1b内に進入させ、腕部2eの先端部(係止部)2fがキャップ1の貫通孔1dに達するように進入させる。すると、ホルダ本体2aの各先端部2fがキャップ1の各貫通孔1dにそれぞれ内側から進入して弾性的に開き、
図1に示すように、キャップ1に対してホルダ部材2が係止される。
【0021】
そして、ホルダ部材2を有するキャップ1を容器の開口部に装着する場合には、先ず、抜止部2bを弾性的に小さくした状態で(例えば潰した状態で)容器の開口部を通して容器内に進入させる。すると、抜止部2bは、容器内で、開口部の開口径よりも大きい形状に弾性復帰し抜け止めとなる。次いで、キャップ1の雄螺子1cを容器の開口部の雌螺子に螺合し締め付けることで、キャップ1が容器の開口部に装着される。
【0022】
ここで、上記螺子の螺合を解除する方向にキャップ1が回転されキャップ1が容器の開口部から取り外されると、キャップ1に係止されたホルダ部材2の抜止部2bが容器内に位置しているため、キャップ1の容器からの脱落(離脱:紛失)が防止される。
【0023】
また、キャップ1が容器の開口部から取り外され、キャップ1からホルダ部材2が離脱するような外力が作用し、すなわち、抜ける方向の力が作用し、ホルダ部材2の抜止部2bが容器の開口部に突き当たり(引っ掛かり)、さらにこれ以上の力が作用すると、
図5に示すように、ホルダ本体2aの腕部2eの開き角度θ(
図4参照)が広がりつつ当該腕部2eの先端部2fが矢印で示すようにキャップ1の貫通孔1dの奥にさらに進入する。従って、キャップ1からホルダ部材2が外れ難く、キャップ1の容器からの脱落が一層防止されている。
【0024】
このように、本実施形態のキャップの脱落防止構造によれば、ホルダ部材2が弾性変形可能な材質より成形され、そのホルダ本体2aの腕部2eの開き角度θを、腕部2eの弾性力に抗して狭めながら、当該ホルダ本体2aをキャップ1の筒状部1b内に進入させ、腕部2の先端部2fがキャップ1の貫通孔1dに達することで、当該各先端部2fが各貫通孔1dにそれぞれ内側から進入して弾性的に開き、このようにしてキャップ1にホルダ部材2を係止するようにしているため、容易に組み立てることができる。
【0025】
また、キャップのアンダーカット部にホルダ部材を圧入して係止するのではなく、キャップ1の貫通孔1dにホルダ本体2aの腕部2eの先端部2fを進入させて係止する構成のため、ホルダ本体2aの腕部2eの弾性力(剛性力)及び開き角度θを選定することで、所要の抜け難さを安定して得ることができると共に、キャップ1からホルダ部材2が離脱するような外力が作用した場合、すなわち、抜ける方向の力が作用した場合、ホルダ本体2aの腕部2eの開き角度θが広がりつつ当該腕部2eの先端部2fがキャップ1の貫通孔1dの奥にさらに進入し、キャップ1からホルダ部材2が外れ難く、このように引張力に比例してホルダ部材2が外れ難い構造となっている。
【0026】
また、このように、所要の抜け難さを安定して得ることができるため、品質管理が容易である。
【0027】
また、従来のようにキャップのアンダーカット部を変形させながら、ホルダ部材を圧入したり金型を離型したりする構成ではないため、キャップ1の材質を例えば樹脂等の弾性変形可能な材質以外の例えばアルミ等の金属材とすることができ、キャップ1の材質選択の幅を広げることができる。
【0028】
また、ホルダ部材2の部品点数を従来の2部品から1部品に低減できると共に、この低減により組立工数を低減できる。
【0029】
さらに、ホルダ本体2aは、くの字状に構成され、くの字の股部分が頂部2dとされているため、簡易にホルダ部材2を構成することができる。
【0030】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、上記実施形態においては、特に好ましいとして、キャップ1の筒状部1bの貫通孔1dを、180°周方向に離間して2個設けると共に、これに対応してホルダ部材2の腕部2eを2本としているが、キャップ1の筒状部1bの貫通孔1dを3個以上とし、これに対応してホルダ部材2の腕部2eを3本以上とすることも可能である。
【0031】
また、上記実施形態においては、特に好適であるとして、刈払機、チェンソー、ブロワ等の手持ち式作業機の燃料タンクのキャップに対する適用を述べているが、手持ち式作業機以外の燃料タンクのキャップに対しても適用可能であり、さらには、燃料タンク以外のキャップに対しても適用可能であり、要は、容器の開口部に着脱自在に装着され当該開口部を開閉するキャップに対して適用可能である。
【符号の説明】
【0032】
1…キャップ、1b…筒状部、1d…貫通孔、2…ホルダ部材、2a…ホルダ本体、2b…抜止部、2c…連結部、2d…頂部、2e…腕部、2f…先端部(係止部)。