特許第5731449号(P5731449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731449
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】背負バンドの取付構造
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20150521BHJP
   B05B 9/08 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   A01M7/00 M
   B05B9/08
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-174073(P2012-174073)
(22)【出願日】2012年8月6日
(65)【公開番号】特開2014-30404(P2014-30404A)
(43)【公開日】2014年2月20日
【審査請求日】2014年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141174
【氏名又は名称】株式会社丸山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊英
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭39−14987(JP,Y1)
【文献】 実開昭61−48081(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 − 99/00
B05B 9/08
A45F 3/00 − 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背負式作業機(100)の作業機本体部(1)を作業者が背負うための背負バンド(3)の下端部を前記作業機本体部(1)の下部側に着脱可能とする取付構造において、
前記作業機本体部(1)を背負った場合に、略鉛直方向となる方向に延びるように当該作業機本体部(1)に設けられると共に略水平方向となる方向に貫通した貫通孔(10)を有する第一の支持部(8)と、
前記背負バンド(3)の前記下端部を構成し、バンド部(11)の端部(11a)に連結されると共に前記貫通孔(10)に通されて係合する環状連結部(12)と、を備え、
前記バンド部(11)の端部(11a)は、その幅方向が、前記環状連結部(12)がなす面と略直交する方向を向き、
前記貫通孔(10)が設けられた位置よりも前記略鉛直方向における下方の位置で前記第一の支持部(8)と直交し、且つ前記環状連結部(12)が前記貫通孔(10)に通された状態で前記環状連結部(12)の少なくとも一部が当接する支持面(9a)を有する第二の支持部(9)を備えることを特徴とする背負バンド(3)の取付構造。
【請求項2】
前記環状連結部(12)と前記バンド部(11)の端部(11a)とを連結する環状体(17)を備え、
前記環状体(17)がなす面は、前記環状連結部(12)がなす面と略直交し、
前記環状連結部(12)がなす面と略直交する方向における前記環状体(17)の長さの半分の長さ(c)は、作業機本体部(1)を接地させた場合の接地面から前記第二の支持部(9)の下面(9b)までの高さ(b)よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の背負バンド(3)の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背負式作業機の作業機本体部を作業者が背負うための背負バンドの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体ポンプや液体タンクを含む作業機本体部を作業者が背負って作業を行う背負式作業機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような背負式作業機の作業機本体部には一対の背負バンドが取り付けられ、作業者は各々の背負バンドを両肩にかけるようにして作業機本体部を背負う。背負バンドを作業機本体部に取り付ける一般的構造としては、背負バンドのバンド部の端部に連結された所謂ナスカンのフック部を、作業機本体部に設けられた軸部に係合させる構造が挙げられる(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4286816号公報
【特許文献2】特開2012−5407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2にあっては背負バンドの取付構造が、図6に示されるように、ナスカンのフック部13を、作業者Pの背面に面し水平方向に延びる軸部20に対して鉛直方向から係合させる構造であるため、作業者Pの上体に沿うべき背負バンド3のバンド部11にねじれ部分Tが生じやすく、この場合作業者Pに不快感を与えることになる。また、当該構造では、フック部13の根元部分を成す長辺部分13cが作業機本体部1と軸部20との間の隙間Rに鉛直方向に直立状態で嵌り込んでナスカンの動きが制限される状態となる場合があるため、取扱い性の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、背負バンドのバンド部のねじれに起因する不快感を作業者に与えず、且つ取扱い性に優れる背負バンドの取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による背負バンド(3)の取付構造は、背負式作業機(100)の作業機本体部(1)を作業者が背負うための背負バンド(3)の下端部を作業機本体部(1)の下部側に着脱可能とする取付構造において、作業機本体部(1)を背負った場合に、略鉛直方向となる方向に延びるように当該作業機本体部(1)に設けられると共に略水平方向となる方向に貫通した貫通孔(10)を有する第一の支持部(8)と、背負バンド(3)の下端部を構成し、バンド部(11)の端部(11a)に連結されると共に貫通孔(10)に通されて係合する環状連結部(12)と、を備え、バンド部(11)の端部(11a)は、その幅方向が、環状連結部(12)がなす面と略直交する方向を向き、貫通孔(10)が設けられた位置よりも略鉛直方向における下方の位置で第一の支持部(8)と直交し、且つ環状連結部(12)が貫通孔(10)に通された状態で環状連結部(12)の少なくとも一部が当接する支持面(9a)を有する第二の支持部(9)を備えることを特徴とする。
【0007】
このような背負バンド(3)の取付構造によれば、作業機本体部(1)を背負った場合に略鉛直方向となる方向に延びる第一の支持部(8)の略水平方向に貫通した貫通孔(10)に対して環状連結部(12)を係合させるため、環状連結部(12)に連結されたバンド部(11)の端部(11a)は、その幅方向が略鉛直方向を向くようになる。従って、作業者が作業機本体部(1)を背負った場合に、背負バンド(3)のバンド部(11)にねじれ部分が生じずに作業者の上体に沿うことになるため、背負バンド(3)が作業者に不快感を与えない。また、環状連結部(12)の根元部分を成す長辺部分(13c)が貫通孔(10)に対して鉛直方向に直立状態で嵌り込むことがないため、環状連結部(12)の動きが制限されない。従って、背負バンド(3)の取付構造は取扱い性に優れる。また、第二の支持部(9)により環状連結部(12)の下方への回動が制限されるため、背負式作業機(100)の作業機本体部(1)を接地させる際に、環状連結部(12)やバンド部(11)が作業機本体部(1)の下に入り込みにくくなり、環状連結部(12)の破損、バンド部(11)の汚れ等が防止される。
【0009】
また、環状連結部(12)とバンド部(11)の端部(11a)とを連結する環状体(17)を備え、環状体(17)がなす面は、環状連結部(12)がなす面と略直交し、環状連結部(12)がなす面と略直交する方向における環状体(17)の長さの半分の長さ(c)は、作業機本体部(1)を接地させた場合の接地面から第二の支持部(9)の下面(9b)までの高さ(b)よりも小さいことが好ましい。これによれば、環状連結部(12)やバンド部(11)が作業機本体部(1)の下へ入り込むことや、環状連結部(12)の破損、バンド部(11)の汚れ等がより確実に防止される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、背負バンドのバンド部のねじれに起因する不快感を作業者に与えず、且つ取扱い性に優れる背負バンドの取付構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の背負バンドの取付構造が適用された背負式作業機の前方斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る背負バンドの取付構造を詳細に示す正面図である。
図3】本発明の実施形態に係る背負バンドの取付構造を詳細に示す側方斜視図である。
図4図2の側面図である。
図5】本発明の背負バンドの取付構造が適用された作業機本体部を背負った作業者の側面図である。
図6】従来の背負バンドの取付構造が適用された作業機本体部を背負った作業者の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の背負バンドの取付構造の好適な実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。以下の説明において、上下、前後、左右の語は、背負式作業機を背負った作業者を基準とした方向を表すものとする。
【0013】
図1は、本実施形態の背負バンドの取付構造が適用された背負式作業機の前方斜視図であり、本実施形態では背負式作業機を薬剤等の散布に用いる背負式動力噴霧機として説明する。
【0014】
図1に示されるように、背負式動力噴霧機100は、動力源を含む作業機本体部1と、作業機本体部1の前側(図1の左側:背負面側)を覆い背負時に作業者の背中に当接する背当て部材2と、作業者が作業機本体部1を背負うための一対の背負バンド3,3とを備えている。また、この背負式動力噴霧機100は、作業機本体部1から送り出された薬剤等を作業者の手元まで伝送する噴霧ホースと、噴霧ホースの端部に設けられた噴霧ノズルとを備えている。なお、ここでは噴霧ホース及び噴霧ノズルは取り外されている。
【0015】
作業機本体部1は、液体や粉体からなる薬剤(ここでは薬液)を噴霧するためのポンプ等を搭載した架台4と、この架台4の上部に載置され、噴霧すべき薬剤を収容するタンク5とを備えている。
【0016】
背当て部材2は、スポンジ等のクッション性に優れた材質で形成されており、背負時には架台4及びタンク5と作業者の背中との間に介在し、相互の接触を和らげる。
【0017】
一対の背負バンド3,3の上側の端部は、タンク5の前側の上端部に左右対称に設けられた一対の上側バンド取付部6,6に着脱自在に各々連結され、一対の背負バンド3,3の下側の端部は、架台4の前側の下端部に左右対称に設けられた一対の下側バンド取付部7,7に着脱自在に各々連結されている。そして、一対の背負バンド3,3及び作業機本体部1のなす一対のループに作業者が両肩を通し、作業機本体部1を背負うことが可能となっている。
【0018】
ここで、各々の背負バンド3の取付構造の詳細について、図2図4を参照しながら説明する。図2は、背負バンドの取付構造を詳細に示す正面図、図3は、背負バンドの取付構造を詳細に示す側方斜視図、図4は、図2の側面図である。
【0019】
図2図4に示されるように、下側バンド取付部7は、第一の支持部8と第二の支持部9とを備えている。第一の支持部8は、架台4の背負面側の下部に略鉛直方向(上下方向)に延びるように設けられた凹部4aから前方に向けて突出し略鉛直方向に延びる板状体である。この第一の支持部8は、凹部4aから前方に突出する下部に、略水平方向に貫通した貫通孔10を有している。第二の支持部9は、第一の支持部8における貫通孔10が設けられた位置よりも略鉛直方向における下方の位置、すなわち第一の支持部8の下端面の位置に凹部4aから前方に向けて突出する板状体であり、第一の支持部8と直交し、第一の支持部8と共に正面視逆T字を成すように設けられている(図2)。また、第二の支持部9は、後述するフック部13が貫通孔10に通された状態にあってフック部13の少なくとも一部が当接する支持面9aを上面として有しており、当該支持面9aの左右方向の幅は、フック部13の湾曲した部分の外径よりも大きくされている。
【0020】
背負バンド3は、作業者の肩に掛かる長尺のバンド部11(図1)を有し、このバンド部11の下側の端部11aに、背負バンド3の下端部としてのナスカン(環状連結部)12が環状体17を介して連結されている。ナスカン12は、第一の支持部8が有する貫通孔10に通されて係合するフック部13と、このフック部13の基端部13aに連設され、フック部13の先端部13bと基端部13aとの間に形成された開口を開閉自在に閉塞してフック部13と共に環形状をなす閉塞体14とを備えている。
【0021】
閉塞体14は、フック部13の基端部13aを支点として上記環形状の内側から外側へ向かう付勢力を有する板ばね体であり、その先端部は、フック部13の先端部13bに対し上記環形状の内側から当接している。
【0022】
また、フック部13の基端部13aには上記環状体17を連結するための連結孔15が、ナスカン12がなす面と直交する方向に貫通して形成されている。そして、バンド部11の下側の端部11aは、幅方向に直交する方向に折り返されて、幅方向に延びる筒孔を有する筒部16が形成されており、環状体17を構成する一方の棒状部を上記連結孔15に、他方の棒状部を筒部16にそれぞれ挿通させることでナスカン12とバンド部11とが連結されている。ここで、バンド部11の下側の端部11aは、図4に示されるように、その幅方向が、ナスカン12の環形状がなす面と略直交する方向を向いており、また、当該端部11aの幅の半分の長さaは、作業機本体部1の接地面から第二の支持部9の下面9bまでの高さbよりも小さい。また、環状体17は、略鉛直方向が長径とされると共に水平方向が短径とされており、長径(外径)の半分の長さcは、接地面から第二の支持部9の下面9bまでの高さbよりも小さい。すなわち、これら三者の長さの関係は、b>c>aとなっている。
【0023】
このようにバンド部11の下側の端部11aに連結したナスカン12は、閉塞体14を上記環形状の内側に押し込むことでフック部13の先端部13bと基端部13aとの間を開口させ、フック部13を貫通孔10に通すことで上記下側バンド取付部7に装着される。この装着状態にあっては、図2〜4に示されるように、フック部13が第一の支持部8に引っ掛けられて係合し、フック部13の先端部13bと基端部13aとの間が閉塞体14により閉塞されて係合解除が防止される。
【0024】
以上のように構成された背負バンド3の取付構造によれば、略鉛直方向に延びる第一の支持部8の略水平方向に貫通した貫通孔10に対してナスカン12の一部であるフック部13を係合させるため、フック部13に連結されたバンド部11の端部11aは、その幅方向が略鉛直方向を向くようになる。従って、図5に示されるように、作業者Pが作業機本体部1を背負った場合に、背負バンド3のバンド部11にねじれ部分が生じずに作業者Pの上体に沿うことになるため、背負バンド3が作業者Pに不快感を与えない。また、フック部13の根元部分を成す長辺部分13cが貫通孔10に対して鉛直方向に直立状態で嵌り込むことがないため、フック部13の動きが制限されない。従って、背負バンド3の取付構造は取扱い性に優れる。
【0025】
また、ナスカン12は、フック部13と、フック部13の開口を形成する端部同士の間を開閉自在に閉塞し、フック部13と共に環形状をなす閉塞体14とを有する構成とされているため、作業機本体部1への背負バンド3の着脱操作が容易であると共に、作業者が意図しない係合解除が防止される。
【0026】
更に、背負バンド3の取付構造は、貫通孔10が設けられた位置よりも略鉛直方向における下方の位置で第一の支持部8と直交し、且つフック部13が貫通孔10に通された状態でフック部13の少なくとも一部が当接する支持面9aを有する第二の支持部9を備えているため、貫通孔10を支点としたフック部13の下方への回動が制限されることとなり、作業機本体部1を接地させる際に、フック部13やバンド部11が作業機本体部1の下に入り込みにくくなり、フック部13の破損、バンド部11の汚れ等が防止される。特に本実施形態では、バンド部11の下側の端部11aの幅の半分の長さaが、作業機本体部1の接地面から第二の支持部9の下面9bまでの高さbよりも小さく、更には環状体17の略鉛直方向の長さの半分の長さcが、接地面から第二の支持部9の下面9bまでの高さbよりも小さいため、バンド部11のなかでも下側の端部11aが特に接地しにくく汚れ等が防止されるようになっている。
【0027】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では背負式作業機を背負式動力噴霧機100として説明したが、本発明は背負式動力散布機や背負式ブロワ等にも応用可能であり、更には手動の背負式作業機にも適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1…作業機本体部、3…背負バンド、8…第一の支持部、9…第二の支持部、9a…支持面、9b…下面、10…貫通孔、11…バンド部、11a…端部、12…ナスカン(環状連結部)、13…フック部、17…環状体、100…背負式動力噴霧機(背負式作業機)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6