【実施例1】
【0010】
(装置の構成)
まず、MRI装置全体の構成について
図1乃至
図4を用いて説明する。MRI装置10
0は、被検体150に対して磁場を形成する静磁場発生部1及び傾斜磁場発生部2と、被
検体150に対してRFパルスの照射及び被検体150から発生する核磁気共鳴信号の受
信を行う送受信部3と、核磁気共鳴信号を再構成処理して被検体の画像データを生成する
画像データ生成部4を備えている。
【0011】
更に、被検体を載置する天板5と、天板5を移動させるための天板移動機構部6と、画
像種及び撮像方法の選択や撮像パラメータの設定等を行う入力部7と、所定の撮像方法や
撮像パラメータによって画像データ生成部が生成した多くの画像種における画像データ群
の中から1つあるいは複数の画像データを選択して表示する表示部8と、前述した各ユニ
ットを統括的に制御する制御部9を備えている。
【0012】
次に、前述した各ユニットに関して詳細な説明を行う。
【0013】
静磁場発生部1は、常伝導磁石あるいは超電導磁石によって構成される主磁石11と、
この主磁石11に電流を供給する静磁場電源12を備え、図示しないガントリ中央部の撮
像領域に配置される被検体150に対し強力な静磁場を形成する。尚、主磁石11は、永
久磁石によって構成されていてもよい。
【0014】
一方、傾斜磁場発生部2は、被検体150の体軸方向(
図1に示したz方向)及びこの
体軸方向に直交するx方向とy方向に対して傾斜磁場を形成する傾斜磁場コイル21と、
傾斜磁場コイル21の各々に対してパルス電流を供給する傾斜磁場電源22を備えている
。
【0015】
傾斜磁場コイル21及び傾斜磁場電源22は、制御部9から供給されるシーケンス制御
信号に基づき被検体150が置かれた撮像領域の磁場に対して位置情報を付加する。即ち
、傾斜磁場電源22は、シーケンス制御信号に基づいてx方向,y方向及びz方向の傾斜
磁場コイル21に供給するパルス電流を制御することにより各々の方向に対して傾斜磁場
を形成する。そして、x方向,y方向及びz方向の傾斜磁場は互いに直交するスライス選
択傾斜磁場、位相エンコード傾斜磁場及び周波数エンコード傾斜磁場(読み出し傾斜磁場
)が所望の方向に形成され、これらの傾斜磁場は、主磁石11によって形成された静磁場
に重畳されて被検体150に対して発生される。
【0016】
次に、送受信部3は、被検体150に対してRFパルスを照射する送信コイル31及び
送信部32と、被検体150にて発生したMR信号を受信する受信コイル33及び受信部
34を有している。送信コイル31の機能と受信コイル33の機能を1つのコイルで兼ね
備えた送受信コイル(大幹用コイルや頭部用コイルなど)を用いてもよい。
【0017】
送信部32は、制御部9が有するシーケンス制御部92から供給されるシーケンス制御
信号に基づき、主磁石11の静磁場強度によって決定される磁気共鳴周波数(ラーモア周
波数)と同じ周波数の搬送波を有し、所定の選択励起波形で変調されたRFパルス電流を
生成する。そして、送信コイル31は、送信部32から供給されたRFパルス電流によっ
て駆動され、被検体150の撮像対象部位に対してRFパルスを照射する。
【0018】
一方、受信コイル33は、例として被検体150が発生したMR信号を高感度で検出す
るために、小口径のコイルエレメントが複数個(N個)配列されたアレイコイルによって
構成されている。受信部34はNチャンネルから構成される図示しない中間周波変換回路
、位相検波回路、低周波増幅回路、フィルタリング回路及びA/D変換器を有し、受信コ
イル33の各コイルエレメントが検出した微小なMR信号に対し中間周波変換、位相検波
、増幅、フィルタリング、A/D変換等の信号処理を行う。
【0019】
そして、主磁石11、傾斜磁場コイル21、送信コイル31及び受信コイル33は、M
RI装置100の図示しないガントリの内部に設けられ、このガントリの中央部にて撮像
領域が形成される。即ち、ガントリの中心には天板5と共に被検体150が挿入される撮
像領域が形成され、この撮像領域の周囲に受信コイル33、送信コイル31、傾斜磁場コ
イル21及び主磁石11が、被検体150の体軸(z軸)を共軸として同心円状に配置さ
れている。
【0020】
また、画像データ生成部4は、MR信号記憶部41、再構成処理部42、画像データ記
憶部43、画像データ合成部44及び拡大画像データ生成部45を備え、送受信部3の受
信部34にて中間周波変換、位相検波、A/D変換等の信号処理が施されたMR信号はM
R信号記憶部41に順次保存されてk空間における2次元又は3次元のMR信号が形成さ
れる。
【0021】
一方、再構成処理部42は、MR信号記憶部41に保存されたMR信号を読み出し、制
御部9が有するシーケンス制御部92から供給されるシーケンス制御信号に基づき、前記
MR信号を2次元フーリエ変換して実空間における画像データを生成する。また、画像デ
ータ記憶部43は再構成処理部42において生成される画像データ又は後述する画像デー
タ合成部44において生成される合成画像データを保存する。このとき、画像データ記憶
部に記憶される画像データおよび合成画像データは、ともに圧縮などの処理を施していな
い元データとする。
【0022】
画像データ合成部44は、入力部7の画像データ選択部から入力される画像データ選択
信号に従い、画像データ記憶部43に保存されている画像データの中から被検体に対して
同一断面におけるサジタル画像やコロナル画像であって、複数の画像データ(頭部画像、
胸部画像、腹部画像、下肢部画像など)を選択し、これらの画像データを繋ぎ合わせて合
成画像データを生成する。
【0023】
合成方法の例として、繋ぎ合わせたい2枚の画像を操作者が表示される画像データを目
視で最も適した配置に移動し、重ねあわせる方法や、画像データが持つ位置情報をもとに
重ね合わせる方法が挙げられる。また、2枚の画像が重なる領域については片側の画像デ
ータを優先的に表示するか、2枚の画像データの重なる領域を構成する画素が持つ画素値
を対応する画素同士で平均し、その画素値を表示するようにする。
【0024】
尚、合成画像データの生成の際、用いる画像データは同一断面のものとは限らず、その
近傍断面の画像データを用いることも可能である。
【0025】
一方、拡大画像データ生成部45は、後述の入力部7に設けられるマウス71による表
示画面上の位置の入力に伴って主制御部91が発生する位置信号、および拡大条件設定部
77による拡大条件の設定に伴って主制御部91が発生する拡大条件を示す条件信号に従
い、拡大対象である合成画像データの局所領域における拡大画像データを生成する。表示
画面上の位置の入力はマウスに限定されるものではなく、その他のポインティングデバイ
スを用いても可能である。
【0026】
天板5は、ガントリの近傍に設置された図示しない寝台の上面に、z軸方向にスライド
可能に取り付けられており、天板移動制御部93から供給される制御信号に基づき駆動さ
れる天板移動機構部6を介して天板5に載置された被検体150と共に被検体150の体
軸方向(
図1に示したz軸方向)に移動することにより、その撮像対象部位を撮像領域の
所定位置に配置する。
【0027】
入力部7は
図2に示すように、マウス71とキーボード72を有し、さらに画像データ
の画像種を選択する画像種選択部73、MR信号を収集する際の撮像方法を選択する撮像
方法選択部74、撮像方法の各々に対して撮像パラメータを設定する撮像パラメータ設定
部75、表示したい画像を選択する画像データ選択部76および画像データおよび合成画
像データを詳細に読影する際に用いる拡大画像データを生成するための諸条件を設定する
拡大条件設定部77を設けている。更に、被検体情報の入力、天板移動指示信号の入力、
各種コマンド信号の入力等が上述の入力デバイスを用いて行なわれる。
【0028】
また、本実施例において、マウス71は前述のように、拡大画像データ生成部45が表
示画面上の合成画像データ上の任意の局所領域に関する拡大画像データを生成する際に、
その拡大箇所を位置信号として主制御部91を介して拡大画像データ生成部45に送る機
能を有している。
【0029】
尚、前述した画像種とは、T1強調画像、T2強調画像等を示している。MRI装置で
は、静磁場内に載置された被検体150にRFパルスが照射されると、励起現象が生じ、
共鳴周波数に共鳴する水素原子の原子核スピンの位相がそろうとともに、原子核スピンが
RFパルスのエネルギーを吸収する。この励起状態でRFパルスの照射を止めると、緩和
現象が生じ、原子核スピンの位相が不均一化するとともに、原子核スピンがエネルギーを
放出する。このエネルギーの緩和の時定数がT1、位相の緩和の時定数がT2である。
【0030】
MRI装置では、撮像方法を変えることにより、検査目的に応じた様々な種類の画像デ
ータを得ることが可能である。例えば、上記T1が小さくなるように撮影条件を調整した
ものをT1強調画像、T2が強調されるように撮影条件を調整したものをT2強調画像と
呼び、両者は画像データのコントラストに差がある。主にT1強調画像は被検体の解剖構
造の検出に、T2強調画像は病変部の検出にそれぞれ用いられる。また、画像種は他にも
プロトン密度強調画像や拡散強調画像等が挙げられる。
【0031】
また、画像種としてのT1強調画像、T2強調画像、プロトン密度強調画像、拡散強調
画像等の選択、撮像方法としてのSE(Spin Echo)法、FE(Field Echo)法、3次元
EF(FE3D)法、FSE(Fast Spin Echo)法、FASE(Fast Asymmetric Spin Echo
)法、EPI(Echo Planar Imaging)法、IR(Inversion Recovery)法等の選択、更
には、撮像パラメータとしての繰り返し時間(TR:Repetition Time)、エコー時間(
TE:Echo Time)、反転時間(TI:Inversion time),フリップアングル(FA:Flip A
ngle)、スライス数、スライス幅、撮像領域(FOV:Field of View)、画像マトリッ
クスサイズ、ピクセルサイズ、データ収集帯域、画像信号雑音比(画像SNR)等の設定
が入力部の画像種選択部73、撮像方法選択部74及び撮像パラメータ設定部75にて行
なわれる。
【0032】
表示部8は
図3に示すように、メモリ81を備え、画像データ等を表示画面に表示する
ためのモニタ82と、モニタ82に表示するために画像データを変換する変換部83と、
モニタ82上にマウス71の移動に伴って移動するカーソルを表示するカーソル表示部8
4と、表示するデータを生成する表示データ生成部85を設けている。変換部83は画像
データを構成するそれぞれの画素データを、モニタ82の持つそれぞれの画素に対応づけ
るために画像データの構成画素数を変換する。
【0033】
例えば、画像データが512×512個の画素数で構成されており、その画像データを
256×256個の画素数を持つモニタ82に表示しようとする場合、変換部83におい
て画像データの2×2個、計4つの連なった正方形を形成する画素データを1つに集約し
、画像データをモニタ82に表示可能な状態にする。集約方法としては、4つの画素デー
タの重み付き加算を行う方法、または4つの画素データの中で最高値のものを選択する方
法など、様々な方法が挙げられる。
【0034】
制御部9は、主制御部91及びシーケンス制御部92と天板移動制御部93を備えてい
る。主制御部91は、図示しないCPUとメモリを備え、MRI装置が有する各ユニット
を統括して制御する機能を有しており、その記憶回路には、入力部7にて入力/設定/選
択された被検体情報、画像種、撮像方法、撮像パラメータ等の情報が保存される。また、
主制御部91のCPUは、前記記憶回路に保存された各種情報に基づいて当該被検体15
0の診断対象部位に対するMR信号の収集と画像データの生成を行う。特に、MR信号の
収集に際し、前記CPUは、予め設定された各種撮像方法のシーケンス情報をシーケンス
制御部92に供給する。
【0035】
一方、シーケンス制御部92は、図示しないCPUとメモリを備え、主制御部91から
供給されるシーケンス情報を主制御部91の記憶回路に一旦保存した後、これらのシーケ
ンス情報に基づいてシーケンス制御信号を生成し、傾斜磁場コイル21や送信コイル31
に供給するパルス電流の大きさ、供給時間、供給タイミング等を制御する。又、天板移動
制御部93は、入力部7から主制御部91を介して供給される天板移動指示信号に基づい
て制御信号を生成し、天板移動機構部6へ供給する。
【0036】
尚、本実施例は前述のようにハードウェアを用いて本発明を実現しているが、ソフトウ
ェアを用いても、またハードウェアとソフトウェアの組み合わせでも本発明は実現可能で
ある。
【0037】
(作用・動作)
次に以上のように構成されたMRI装置の動作について説明する。
被検体を載せた天板を被検体の体軸方向(
図1に示したz方向)にスライドさせ、被検
体における撮像対象部位を撮像領域の所定位置に配置する。そして、撮像領域内のy−z
断面又はx−z断面(
図1に示す)の複数断面に関して撮像する。取得されたMR信号を
再構成し、画像データを生成する。このような動作を繰り返すことにより複数の撮像位置
において複数断面の画像データが生成され、画像データ記憶部43に保存される。
【0038】
尚、MRI装置の撮像断面は前述のy−z断面、x−z断面に限らず、あらゆる断面に
おける撮像が可能であり、1つの撮像位置(天板位置)における撮像断面数も複数枚に限
らず、1枚でも良い。
【0039】
次に、本実施例のMRI装置が備えた合成画像データの拡大表示の手順に関して
図4の
フローチャートと
図5乃至
図8の拡大画像データの表示例を示す図を用いて説明する。
【0040】
被検体150から収集された複数の画像種(T1強調画像、T2強調画像、プロトン密
度強調画像、拡散強調画像等)において、同一断面で撮像位置の異なる複数の画像データ
(例えば、頭部画像、胸部画像、腹部画像、下肢部画像などのうち少なくとも2画像)が
主制御部91により画像データ記憶部43に保存される。その後画像データ合成部44が
被検体150に対して同一断面、同一画像種で撮像箇所の異なる画像同士(例えば、コロ
ナル画像の場合では同じx−z断面の頭部画像と胸部画像)を、前述した画像データ合成
部44の説明と同様の方法で繋ぎ合わせて合成画像データを生成し、主制御部91によっ
て画像データ記憶部43に保存される。
【0041】
MRI装置100の操作者は、画像データ記憶部43に保存される合成画像データの中
からモニタ83に表示する合成画像データを画像データ選択部76にて入力する(
図4の
ステップ1)。
【0042】
次に入力された選択信号を、制御部9を介して画像データ記憶部43に送り、画像デー
タ記憶部43から、選択された合成画像データを読み込み、表示部8に送る(
図4のステ
ップ2)。
【0043】
続いて、表示部8の変換部83により、送られてきた合成画像データをモニタ83に表
示するための変換が行われる(
図4のステップ3)。
【0044】
その後、表示のために変換された合成画像データは主制御部91により表示データ生成
部85に送られて、カーソルA4、機能ボタンA5などを含む表示画像がつくられ、
図5
の表示画面A2に示されるように、その表示画像がモニタ83に送られて表示画面A2上
に表示される。その際、マウス71から位置信号が主制御部91を介してカーソル表示部
84に送られ、その位置信号に従い、
図5に示されるようなカーソルA4が表示される(
図4のステップ4)。
【0045】
操作者は
図5のように表示画面A2に表示された表示合成画像データA3に関して読影
を行うが、微細な箇所を拡大し、より詳細に読影を行う場合には、操作者は
図6のように
表示合成画像データA3上の拡大したい箇所にマウス71を用いてカーソルA4を移動さ
せる。そして、マウス71に設けられているボタンを押し、表示合成画像データA3上の
拡大箇所を指定する(
図4のステップ5)。拡大箇所の指定はマウス71に設けられるボ
タンに限らず、キーボード72に備わっているボタンなどを利用してもよい。
【0046】
マウス71から主制御部91を介して表示画面A2上の位置信号が拡大画像データ生成
部45に送られ、画像データ記憶部43に保存されている元データである合成画像データ
を構成する画素データの中で、送られた位置信号に対応する画素データが認識される(図
4のステップ6)。
【0047】
そして、認識された画素データを中心とし、入力部7の拡大条件設定部77で操作者に
より設定された矩形の拡大領域を決める。その拡大領域内に含まれる画素データの拡大処
理を拡大画像データ生成部45が行い、拡大画像データを生成する(
図4のステップ7)
。
【0048】
例えば、1つの画素データを表示画面A2上において上下左右に隣り合う4つの画像デ
ータを対応させると、生の合成画像データにおいて指定された拡大領域に対して拡大率が
縦横それぞれ2倍の拡大画像データが生成される。また、拡大処理を行わずに、画像デー
タ1点と画素データ1点を対応させることで、拡大率1倍の拡大画像データが生成される
。
【0049】
生成された拡大画像データは主制御部91により表示データ生成部85に送られ、そこ
で
図5の表示画面A2に示される表示画像に拡大画像データを加えた表示画像データを生
成し、その表示画像データがモニタ82に送られる。そこで表示画面A2に
図7に示す表
示拡大画像データA6を表示する(
図4のステップ9)。
【0050】
その際、合成画像データA3上の拡大領域は
図7に示すように拡大領域枠A7を用いて
明確にする。また、表示拡大画像データA6と拡大領域枠A7は
図7のように、互いが重
なることのないように表示データ生成部によりそれぞれを適切に配置するようにさせる。
尚、拡大率や表示合成画像データA3の拡大領域位置などにより拡大画像データA6およ
び拡大領域枠A7の配置場所は変わるので、この実施例に示された配置に限られるもので
はない。
【0051】
さらに、他の合成画像データ(サジタル画像ではy−z断面においてx座標の異なる断
面の画像データ、コロナル画像ではx−z断面においてy座標の異なる断面の画像データ
)に関して読影を行うのであれば
図4のステップ1に戻り、その新たな合成画像データを
選択し、
図4のステップ2以降の操作を行い読影する。また、同一の拡大画像データに関
して別の箇所の拡大画像データを表示するときは、
図4のステップ5に戻り、マウスを用
いてカーソルA4をその箇所に合わせてマウスに具備されたボタンを押して指定すること
によって新たな箇所の拡大画像データが
図8に示すように表示画面A2に表示される。そ
の際、前の拡大画像を表示させておくか、それとも非表示にするかは操作者が選択可能で
ある。
【0052】
拡大条件の設定に関しては、表示拡大画像データA6を表示後、その表示拡大画像デー
タA6の読影に困難を来たす場合には、その拡大・縮小率の変更、画素値の調整などを行
い、操作者が読影しやすい状態に表示拡大画像データA6を調節する必要がある。
【0053】
このような場合、表示画面A2上の機能ボタンA7を用いて表示拡大画像データA6の
拡大条件を変更する。この機能により、関心部位の詳細な読影の度に行う画像の拡大・縮
小の作業の手間を省くことができるとともに、操作者が合成画像データA3の拡大箇所の
位置を把握しながら表示拡大画像データA6を用いての詳細な読影を行うことが可能とな
る。
【0054】
また、この拡大画像表示機能は表示拡大画像データA6を表示画面A2上で被検体15
0の実寸大に表示する機能を有している。即ち、その方法としては例えば以下のように実
現できる。まず、表示画面A2上に表示拡大画像データA6を表示させる。そのとき、表
示拡大画像データA6上に、その画像データにおいて所定の長さを表す線を表示する。そ
の線の表示画面A2上での長さを操作者が計測し、その長さを拡大画像データ生成部45
が認識する。
【0055】
画像データにおける所定の長さが、表示画面A2上でどの程度の長さなのかを認識する
ことで実寸大の大きさに近い拡大画像データを表示するための拡大率を拡大画像データ生
成部45が算出し、拡大処理を行い、実寸大の表示拡大画像データA6を表示する。これ
により、操作者は病変の大きさがどの程度なのかを視覚的に理解することができる。
【0056】
また、表示拡大画像データA6を表示する際、その対象となる表示合成画像データA3
は頭部画像、胸部画像など、同一断面におけるサジタル画像やコロナル画像を繋ぎ合わせ
た画像となるので、その繋ぎ目の部分に関して読影する操作者は認識しておく必要がある
。そのため、繋ぎ目の部分を示す機能を拡大画像表示機能は有しており、これを
図9を用
いて説明する。
【0057】
例えば、表示合成画像データA3が頭部画像、胸部画像、腹部画像、下肢部画像の4つ
の画像データを繋ぎ合わせて生成されたものである場合であり、さらにそれぞれの画像が
重なり合う領域を構成する画素が持つ画素値を対応する画素同士で平均し、その画素値で
重なり合う領域を表示している場合では、その構成を
図9に示す画像合成領域表示枠B8
を表示し、また、重なり合う2つの画像データの領域において片方の画像データが優先的
に表示されている場合には、2つの画像データの境界線を表示拡大画像データA6上に表
示する。また、合成画像データA3には、どの部分が合成されているのかを視覚的に認識
できる機能を設ける。
【0058】
尚、本実施例ではマウスのボタンを押した後に、カーソルA4が指す点を中心とする拡
大領域内に関する拡大画像データの生成を開始しているが、拡大画像データの生成のタイ
ミングはこれに限定されるものではない。
【0059】
例えば、マウス71で表示画面A2上のカーソルA4を移動させる度に、カーソルA4
が指す表示合成画像データA3上の点を中心とする拡大領域内の画素データの拡大処理を
行ない、拡大画像データを生成する。生成された拡大画像データは一旦画像データ記憶部
43に保存され、カーソルA4が移動する度に保存される拡大画像データは更新されてい
く。
【0060】
そして、マウス71のボタンを押すと、主制御部91が画像データ記憶部43からその
時点でカーソルA4が指す拡大領域に関する拡大画像データを読み込み、表示部8に送り
、表示拡大画像データA6がモニタ83に表示される。
【0061】
(効果)
以上のような機能をMRI装置に持たせることで、操作者は表示合成画像データA3の
読影の際に、あらゆる箇所の拡大画像データを容易に表示することが可能となり、拡大の
際に要する細かい調整の手間を省くことができる。また、画像データ上での拡大位置を常
に把握することができ、更には拡大画像データにおける合成部分も視覚的に認識すること
ができる。よって、読影時に操作者にかかる負担が軽減され、作業の効率化を図ることが
できる。
【実施例3】
【0068】
次に、本発明の実施例3に関して、
図12乃至
図14,また
図15,16を用いて説明
する。尚、実施例3におけるMRI装置全体の構成を示す
図15が実施例1における
図1
と異なる点は、病変検索部10が付加されたことである。そして
図1と同一部分には同一
符号を付しその説明を省略する。また、実施例3におけるMRI装置が備える入力部7の
機能ブロックを示す
図16が実施例1における
図2と異なる点は、病変検索条件設定部7
8が付加されたことである。そして、
図2と同一部分には同一符号を付し、その説明を省
略する。
【0069】
(装置の構成)
前述したように、実施例3における
図15に示すMRI装置には、合成画像データの中
で病変の可能性の高い病変候補箇所を検索する病変検索部10が、表示部8との間で情報
交換するように設けられている。病変検索部10は表示画面D2上に表示される表示合成
画像データD3の元データである合成画像データを画像データ記憶部43から読み込み、
その合成画像データを構成する各画素の持つ画素値を用いて、病変候補箇所を判断するよ
うに構成されている。
【0070】
即ち、病変検索部10は合成画像データを構成する各画素の持つ画素値が規定値を超え
るとき、その画素は合成画像データにおいて病変候補箇所を表示している画素であると認
識する。しかし、例えば水がT1強調画像で黒く表示され、T2強調画像では白く表示さ
れるように、画像種が異なれば同一部位の画像データでも、そのコントラストが違うので
、それぞれの画像種に対応した規定値が
図16に示す病変検索条件設定部78により入力
するか、もしくはその規定値を病変検索部10に設けられる記憶回路に保存しておく。
【0071】
そして、病変検索の対象となる合成画像データの規定値を表示合成画像データD3の元
データである合成画像データを構成する各画素の画素値と照らし合わせて、規定値を超え
ている画素は病変候補箇所を表示している画素であると病変検索部10は認識する。その
病変検索機能と、実施例1で説明した拡大画像データの表示機能を組み合わせる。
【0072】
尚、前述の方法に限らず、規定値を超え、単独で存在する画素を認識せず、規定値を超
える複数の画素の集合が所定の領域の大きさを超える場合に、その複数の画素の集合を病
変候補箇所として認識させる方法も可能である。
【0073】
(作用・動作)
次に、具体的な操作手順の例を
図12乃至
図14、
図15、16を用いて説明する。ま
ず
図12で、表示画面D2に表示される機能ボタンD5を用いて操作者が病変検索モード
に切り替える。切り替えの手段としては他にも入力部7に設けられるキーボード72に具
備されるボタンを用いてもよい。その後、
図15に示される病変検索部10において、表
示している表示合成画像データD3を構成する各画素の画素値と、病変検索の対象となる
合成画像データの規定値を比較し、規定値を超える画素に関しては病変候補箇所を表示し
ている画素であると病変検索部10が認識し、
図12に示す病変候補領域D6の部分を色
を変えて表示する。画素が表示する色を変える際には、表示部8に設けられる表示データ
生成部85に病変検索部10が色を変える画素の位置を伝え、その位置に応じて表示デー
タ生成部85が病変候補箇所を表示している各画素の画素値を変えて、表示合成画像デー
タD3上での位置を表示画面D2上で示すようにすることができる。
【0074】
尚、病変検索部の対象となる合成画像データの規定値は
図16に示された病変検索条件
設定部78において操作者が入力するが、前もって病変検索部10の記憶回路に保存され
た規定値を画素値との比較に用いることも可能である。
【0075】
次に表示画面D2に設けられる機能ボタンD5を用いて病変候補部拡大モードに切り替
える。病変検索モードと同様に、切り替え手段は機能ボタンD5に限定されるものではな
い。そして、先ほど病変検索部10において検索された病変候補領域D6を構成する画素
の、表示画面D2上での位置を拡大画像データ生成部45に送る。その際、単体で表示合
成画像データD3上に分布している画素に関してはその画素の位置を送るが、病変候補領
域D6を構成する画素が連続して分布している場合は、それらの画素群の重心を病変検索
部10において算出し、その位置を送る。
【0076】
送られた位置信号に従い、
図4のステップ6からステップ9の工程即ち、画像データの
表示からステップ8の拡大画像データを表示用に変換操作を経て、実施例1と同様の手順
で表示拡大画像データD7を表示画面D2上に表示する。その際には、
図13に示すよう
に、拡大領域枠D8を合成画像データD3の拡大対象領域に配置する。さらに、表示拡大
画像データD7の読影が完了し、他の病変候補領域D6の表示拡大画像データD7を表示
するために、マウス71に具備されたボタンを押すことで、
図14に示すように新たな病
変候補領域D6を中心とする表示拡大画像データD7が表示される。
【0077】
拡大表示する病変候補領域D6の順序は、病変候補領域D6を構成する画素数の多い順
や、表示画面において画面上側に位置する病変候補領域D6から順番に拡大表示するなど
の設定に関して、
図16に示される病変検索条件設定部78において操作者が設定を行う
。
【0078】
また、
図12に示すように、画面上に病変候補領域D6を表示している状態で、通常の
画像拡大モードに切り替えて、操作者が病変候補領域D6を選択し、その表示拡大画像デ
ータD7を表示することも可能である。
【0079】
(効果)
以上のような機能をMRI装置に持たせることで、操作者は表示合成画像データD3の
読影の際に画面上に示される病変候補領域D6を重点的に調査することができるので、よ
り正確な読影が可能になるとともに、読影時に操作者にかかる負担を軽減し、作業の効率
化を図ることができる。