特許第5731471号(P5731471)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5731471ポリシラザンをベースとするカプセル化層を備えた太陽電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731471
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ポリシラザンをベースとするカプセル化層を備えた太陽電池
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/18 20060101AFI20150521BHJP
   H01L 31/0216 20140101ALI20150521BHJP
【FI】
   H01L31/04 460
   H01L31/04 240
【請求項の数】20
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-500136(P2012-500136)
(86)(22)【出願日】2010年3月16日
(65)【公表番号】特表2012-521080(P2012-521080A)
(43)【公表日】2012年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2010001636
(87)【国際公開番号】WO2010105796
(87)【国際公開日】20100923
【審査請求日】2012年10月30日
(31)【優先権主張番号】102009013904.4
(32)【優先日】2009年3月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】511293803
【氏名又は名称】アーゼッド・エレクトロニック・マテリアルズ(ルクセンブルグ)ソシエテ・ア・レスポンサビリテ・リミテ
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ローデ・クラウス
(72)【発明者】
【氏名】ストヤノヴィク・サンドラ
(72)【発明者】
【氏名】シュニープス・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】カウフマン・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ショック・ハンス−ヴェルナー
【審査官】 佐藤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−538450(JP,A)
【文献】 特開2005−033063(JP,A)
【文献】 特開2001−111076(JP,A)
【文献】 特開2007−059131(JP,A)
【文献】 特開2002−222691(JP,A)
【文献】 特開2006−222192(JP,A)
【文献】 特開2003−118030(JP,A)
【文献】 特表2000−501232(JP,A)
【文献】 特開2005−019742(JP,A)
【文献】 特開2006−140414(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/098968(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/04−31/078
B32B 27/00−27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルコパイライト系太陽電池を製造する方法であって、
a)カルコパイライト系をベースとする光起電性層構造を、基板に施与するステップと、
b)前記光起電性層構造を少なくとも1種の一般式(I)のポリシラザンを含有する溶液でコーティングするステップと、
−(SiR’R”−NR’”)n− (I)
[式中、R’、R”、R’”は同じか、または異なり、互いに独立に、水素または非置換もしくは置換されたアルキル−、アリール、ビニルまたは(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、nは整数であり、前記ポリシラザンが150〜150000g/molの数平均分子量を有するように、nが算定されている]
c)蒸発によって溶剤を除去するステップであって、100〜3000nmの厚さを有するポリシラザン層を得るステップと
e)80〜200℃の範囲の温度で、1分から60分間にわたって加熱し、水蒸気含有空気または窒素からなる雰囲気中で行うことによって、前記ポリシラザン層を硬化させるステップと、
f)60〜130℃の温度で、60〜90%の相対湿度を有する空気中で、30分から1時間にわたって、前記ポリシラザン層を後硬化させるステップとを含む方法。
【請求項2】
前記ポリシラザン溶液が、R’、R”、R’”=Hである少なくとも1種のペルヒドロポリシラザンを含有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ポリシラザン溶液が、触媒を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記カルコパイライト系太陽電池が、柔軟なウェブ状基板上にロールツーロール法で製造されることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
e)において、100〜180℃の範囲の温度で、30分から60分間にわたって加熱することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
a)の後b)の前にCdS緩衝層の堆積を、湿式化学的に行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載の方法で製造された太陽電池(10)であって、基板(1)、光起電性層構造(4)、および、ポリシラザンをベースとするカプセル化層(5)とを含むカルコパイライト系太陽電池(10)であって、前記カプセル化層(5)が、300〜2000nmの厚さを有することを特徴とする太陽電池(10)。
【請求項8】
薄層太陽電池として構成されており、硫化銅インジウム(CIS)またはセレン化銅インジウムガリウム(CIGSe)タイプの光起電性層構造(4)を有することを特徴とする、請求項7に記載の太陽電池(10)。
【請求項9】
前記光起電性層構造(4)が、モリブデンからなる背面接点(41)と、組成CuInSe、CuInS、CuGaSe、CuIn1−xGaSe(式中、0<x≦0.5)またはCu(InGa)(Se1−y(式中、0<y≦1)の吸収材(42)と、CdSからなる緩衝材(43)と、ZnOまたはZnO:Alからなる窓層(44)と、Alまたは銀からなる前面接点(45)とを含むことを特徴とする、請求項7または8に記載の太陽電池(10)。
【請求項10】
前記基板(1)が、金属、金属合金、ガラス、セラミックまたはプラスチックを含有する材料からなることを特徴とする、請求項7、8または9に記載の太陽電池(10)。
【請求項11】
前記基板(1)がフィルムとして、スチールフィルムまたはチタンフィルムとして形成されていることを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一つに記載の太陽電池(10)。
【請求項12】
前記基板(1)が導電性材料からなり、前記光起電性層構造(4)を構成する1つまたは複数の層がガルバニック堆積されていることを特徴とする、請求項7〜11のいずれか一つに記載の太陽電池(10)。
【請求項13】
前記基板(1)と前記光起電性層構造(4)との間に配置されている、ポリシラザンをベースとするバリア層(2)を含むことを特徴とする、請求項7〜12のいずれか一つに記載の太陽電池(10)。
【請求項14】
前記バリア層(2)がナトリウムを含有するか、またはナトリウム含有前駆体層(21)を含むことを特徴とする、請求項13に記載の太陽電池(10)。
【請求項15】
前記カプセル化層(5)、および、前記バリア層(2)が、好ましくはジブチルエーテルである溶剤中のポリシラザンおよび添加剤の硬化溶液からなることを特徴とする、請求項7〜14のいずれか一つに記載の太陽電池(10)。
【請求項16】
300〜900nmの波長範囲の光において、カプセル化層(5)を施与する前の太陽電池(10)の反射率に対して97%未満の平均相対反射率を有することを特徴とする、請求項7〜15のいずれか一つに記載の太陽電池(10)。
【請求項17】
1100〜1500nmの波長範囲の光において、カプセル化層(5)を施与する前の太陽電池(10)の反射率に対して120%を超える平均相対反射率を有することを特徴とする、請求項7〜16のいずれか一つに記載の太陽電池(10)。
【請求項18】
DIN EN61646に従った促進老化試験において、800時間後に、出発値に対して70%を超える効率を有することを特徴とする、請求項7〜17のいずれか一つに記載の太陽電池(10)。
【請求項19】
カプセル化層(5)が、組成SiN(式中、x>v;v<1;0<x<1.3;0≦w≦2.5およびy<0.5)の相であることを特徴とする、請求項7〜18のいずれか一つに記載の太陽電池(10)。
【請求項20】
カプセル化層(5)が、組成SiN(式中、v<1.3;x<0.1;0≦w≦2.5およびy<0.2)の相であることを特徴とする、請求項7〜18のいずれか一つに記載の太陽電池(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板および光起電性層構造を含むカルコパイライト系太陽電池に関する。詳細には、硫化銅インジウム(CIS)またはセレン化銅インジウムガリウム(CIGSe)タイプの光起電性層構造を備えた薄層太陽電池に関する。
【0002】
さらに、本発明は、カルコパイライト系をベースとする太陽電池の製法に関する。この方法の枠内で、太陽電池は、20〜1000℃、特に80〜200℃の範囲の温度でポリシラザンおよび添加剤の溶液を硬化させることによって作製されるカプセル化層を備える。
【背景技術】
【0003】
化石資源の欠乏に鑑みて、光電池は、再生可能で環境に優しいエネルギー源として大きな重要性を有するようになっている。太陽電池は、太陽光を電流に変換する。太陽電池では主に、結晶質または非晶質ケイ素が光吸収半導体として使用されている。ケイ素の使用は、高いコストと結びついている。これに対して、硫化銅インジウム(CIS)またはセレン化銅インジウムガリウム(CIGSe)などのカルコパイライト系材料からなる吸収材を備えた薄層太陽電池は、かなり低いコストで製造することができる。
【0004】
非常に一般的なことであるが、光起電性エネルギー生成のコストパフォーマンスを改善することが、光電池の迅速な普及には必要である。そのためには、太陽電池の効率を上げ、その寿命を長くすることが望ましい。太陽電池の効率は、電力、即ち、電圧と光電流の積と、入射する光パワーとの比として定義される。この効率は特に、吸収材層に侵入して、電子−正孔対の発生に寄与し得る光子の数に比例する。太陽電池の表面で反射される光子は、光電流に何ら寄与しない。このことに対応して、太陽電池の表面での光反射を低減することによって、効率を高めることができる。天候による分解プロセスに対する保護を改善することによって、太陽電池の寿命を長くすることができる。侵入してくる水または水蒸気によって、分解プロセスは促進される。したがって、水蒸気に対して太陽電池を保護するために従来技術では、ガラスおよびEVAならびに場合によってPVAおよび他のポリマーフィルムを含む層状複合材料からなるカプセル化材料を使用している。
【0005】
しかしながら、従来技術においてカプセル化のために使用される材料は、欠点を有する。特に、ガラスは、高いモジュール重量をもたらし、このことによって例えば、屋根の構造に対する要求が高くなり、PVAおよびPVBは、痕跡量の水と一緒に光が作用した場合に、太陽電池の機能を損ねる酸を放出する。前面拡散障壁またはカプセル化層の有効性は、DIN EN 61646に従った促進老化試験を用いて人工気候室で試験される。カプセル化ソーラーモジュールは85℃および相対大気湿度85%で1000時間よりも長く貯蔵され、規則的な時間間隔で、その電気的特性が測定されて、分解が決定される。
【0006】
太陽電池の前面カプセル化のために、SiO層を使用することは公知である。そのようなSiO層は気相から、マイクロ波プラズマ支援蒸着(MWPECVD)などのCVD法およびマグネトロンスパッタリングなどのPVD法によって堆積される。これらの真空技術法は、高いコストと結びついており、それに加えて、そうして製造された層は低い付着力および機械的強度を有するという欠点を示す。CVD法はさらに、高可燃性(SiH、CH、H)および毒性(NH)ガスの使用を必要とする。
【0007】
カルコパイライト系太陽電池のための基板材料として、ガラスまたは金属製もしくはポリイミド製のフィルムが使用される。ガラスは、複数の点で有利であることが判明している。これは、電気絶縁性であり、平滑表面を有し、カルコパイライト系吸収材層の製造中にナトリウムを提供し、このナトリウムが、ガラスから吸収材層中に拡散し、ドーピング物質として吸収材層の特性を改善するからである。ガラスの欠点は、その重量が重いこと、柔軟性が無いことである。特に、ガラス基板は、その剛性によって、安価なロールツーロール法で被覆することができない。金属製またはプラスチック製のフィルム状基板は、ガラスよりも軽く柔軟であるので、安価なロールツーロール法によって太陽電池を製造するのに適している。もちろん、金属フィルムまたはプラスチックフィルムは、その性質に応じて、カルコパイライト系層複合材料の特性に不利な影響を及ぼすことがあり、それに加えて、吸収材ドーピングのためにナトリウムデポを利用することができない。太陽電池の製造中に基板が高温(一部では500℃を超える)にさらされるので、好ましくは、スチール製またはチタン製の金属フィルムが使用される。
【0008】
チタンフィルムまたはスチールフィルム上に太陽電池をモノリシックに相互接続するためには、光起電性層構造または背面接点を基板フィルムから電気絶縁する必要がある。このために、金属製基板フィルム上に、電気絶縁材料からなる層が施与される。加えて、この電気絶縁層は、拡散障壁としても作用して、吸収材層に害を及ぼし得る金属イオンの拡散を妨げるはずである。例えば、鉄原子は、カルコパイライト系吸収材層中の電荷担体(電子および正孔)の再結合率を高め、それによって、光電流を減少させる。絶縁および拡散阻止バリア層のための材料として、酸化ケイ素(SiO)が適している。
【0009】
従来技術において、主にSiOまたはSiNからなる保護層またはカプセル化層を、ケイ素または他の半導体をベースとする電子部品および太陽電池のために使用することは公知である。
【0010】
米国特許第7,067,069号(特許文献1)は、ケイ素をベースとする太陽電池のためのSiOからなる絶縁性カプセル化層を開示しており、その際、ポリシランを施与し、続いて、100〜800℃、好ましくは300〜500℃の温度で硬化させることによって、SiO層が作製されている。
【0011】
米国特許第6,501,014B1号(特許文献2)は、ケイ酸塩様材料からなる透明で耐熱性および耐候性の保護層を備えた非晶質ケイ素をベースとする物品、特に太陽電池に関する。保護層は簡単な方法で、ポリシラザン溶液を使用して作製される。ポリシラザンをベースとする保護層と、光起電性層系との間に、柔軟なゴム状接着層または緩衝層が配置されている。
【0012】
米国特許第7,396,563号(特許文献3)は、PA−CVDによる誘電性および不活性化ポリシラザン層の堆積を示唆しており、その際、ポリシランが、CVD前駆体として使用される。
【0013】
米国特許第4,751,191号(特許文献4)は、PA−CVDによる太陽電池のためのポリシラザン層の堆積を開示している。得られたポリシラザン層は、フォトリソグラフィーにより構造化され、金属接点のマスキング用に、かつ反射防止層として役立つ。
【0014】
SiOまたはSiNからなるカプセル化層を備えた従来技術に記載されている太陽電池は、その製造にコストがかかり、カプセル化層の他に、担体フィルム、緩衝層、付着仲介層および/または反射材層を含む2層以上の複合層の使用を必要とする。その光起電性吸収材がケイ素をベースとしていない太陽電池では特に、カプセル化層に対する熱的不整合を補償する緩衝層が必要である。熱的不整合、即ち、隣接する層同士の熱膨張係数の差違は、しばしば亀裂形成および剥離をもたらす機械的応力を誘発する。この問題は特に、カプセル化層を低温で太陽電池上に堆積することによっても対処されている。しかし、低温で作製されたそのようなカプセル化層は多くの場合に、水蒸気および酸素に対して有するバリア作用は不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7,067,069号
【特許文献2】米国特許第6,501,014B1号
【特許文献3】米国特許第7,396,563号
【特許文献4】米国特許第4,751,191号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来技術を鑑みて、本発明は、高い効率および高い老化耐性を有するカルコパイライト系太陽電池ならびに安価なその製法を提供するという課題を有する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この課題は、基板、光起電性層構造、および、ポリシラザンをベースとするカプセル化層を含むカルコパイライト系太陽電池により解決される。
【0018】
以下、本発明を図を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】太陽電池の透視断面図である。
図2】カプセル化層を備えていない太陽電池および備えている太陽電池の反射曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、基板1、オプションのバリア層2、光起電性層構造4、および、カプセル化層5を備えた、本発明による太陽電池10の断面を透視図で示している。太陽電池10は好ましくは、薄層太陽電池として構成されており、硫化銅インジウム(CIS)またはセレン化銅インジウムガリウム(CIGSe)タイプの光起電性層構造4を有する。
【0021】
本発明によるカプセル化層5は、互いに対向する第1および第2の表面を有する。好ましい一実施形態では、カプセル化層の第1の表面は、光起電性層構造4と直接接しており、カプセル化層の第2の表面は、太陽電池の外側を形成している。本発明による太陽電池10の変形形態は、以下のことを特徴とする。
−薄層太陽電池として構成されていて、硫化銅インジウム(CIS)またはセレン化銅インジウムガリウム(CIGSe)タイプの光起電性層構造4を有する。
−光起電性層構造4が、モリブデンからなる背面接点41と、組成CuInSe、CuInS、CuGaSe、CuIn1−xGaSe(ただし、0<x≦0.5)またはCu(InGa)(Se1−y(ただし、0<y≦1)の吸収材42と、CdSからなる緩衝材43と、ZnOまたはZnO:Alからなる窓層44と、Alまたは銀からなる前面接点45とを含む。
−基板1が、金属、金属合金、ガラス、セラミックまたはプラスチックを含有する材料からなる。
−基板1が、フィルムとして、特に、スチールフィルムまたはチタンフィルムとして形成されている。
−カプセル化層5が、100〜3000nm、好ましくは200〜2500nm、特に300〜2000nmの厚さを有する。
−基板1が、導電性材料からなり、光起電性層構造4を構成する1つまたは複数の層がガルバニック堆積されている。
−太陽電池10が、基板1と光起電性層構造4との間に配置されているポリシラザンをベースとするバリア層2を含む。
−バリア層2、がナトリウムを含有するか、またはナトリウム含有前駆体層21を含む。
−カプセル化層5、および場合によっては、バリア層2が、好ましくはジブチルエーテルである溶剤中のポリシラザンおよび添加剤の硬化溶液からなる。
−ポリシラザンが、一般構造式(I)を有する。
−(SiR’R”−NR’”)n− (I)
[式中、R’、R”、R’”は同じか、または異なり、互いに独立に、水素または場合によっては置換されたアルキル−、アリール、ビニルまたは(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、nは整数であり、nは、ポリシラザンが150〜150000g/mol、好ましくは50000〜150000g/mol、特に100000〜150000g/molの数平均分子量を有するように算定されている]
−少なくとも1種のポリシラザンが、R’、R”およびR’”=Hであるペルヒドロポリシラザンの群から選択されている。
−太陽電池10が、300〜900nmの波長範囲の光において、カプセル化層5を施与する前の太陽電池10の反射率に対して97%未満、好ましくは96%未満、特に95%未満の平均相対反射率を有する。
−太陽電池10が、1100〜1500nmの波長範囲の光において、カプセル化層5を施与する前の太陽電池10の反射率に対して120%を超える、好ましくは150%を超える、特に200%を超える平均相対反射率を有する。
【0022】
図2は、ポリシラザンをベースとする本発明によるカプセル化層を備えているカルコパイライト系太陽電池および備えていないカルコパイライト系太陽電池(図2では、実線「SiOあり」および破線「SiOなし」で示されている)のスペクトル反射率の測定結果を示している。スペクトル反射率は、DIN EN ISO8980−4に従って、カプセル化層を備えた本発明による太陽電池およびカプセル化層を備えていない参照太陽電池で測定する。本発明による太陽電池および参照太陽電池は、カプセル化層を除いて、同じ構造を有し、同じ製造プロセスを経ている。平均相対反射率を決定するために、得られたスペクトル反射曲線を重ね合わせ、300〜900nmおよび1100〜1500nmの2つの波長範囲で数値的に評価する。その際に、上記波長範囲のそれぞれにおいて、その間隔を互いに1〜20nmの範囲で選択してよい等距離の分点(Stuetzstelle)において、本発明による太陽電池と参照太陽電池との反射値の商を算出し、その間隔内に含まれる全ての分点における商の平均値を出す。
【0023】
300〜900nmの波長範囲では、本発明による太陽電池は、97%未満から95%未満の平均相対反射率を有する。反射率は、外部量子効率(EQE)および太陽電池の効率における係数として理解される。これに対応して、本発明によるカプセル化層は、太陽電池の外部量子効率を参照太陽電池に対して平均で3%超〜5%超高める。従来技術で公知のカプセル化層は、平均反射率を参照に対して最大2%上昇させる。したがって、本発明によるカプセル化層によって、従来のカルコパイライト系太陽電池の効率を、1.01〜1.03倍高めることができる。例えば効率15%の場合、これは、0.15%〜0.45%の改良に対応する。
【0024】
カルコパイライト系太陽電池の効率は、温度の上昇と共に低下する。赤外線に対する反射率が高くなったため、本発明によるカプセル化層は、日射による太陽電池の加熱を低減し、したがって、これによっても、効率の改良に寄与する。1100〜1500nmの波長範囲では、本発明による太陽電池は、120%超〜200%超の平均相対反射率を有する。DIN EN61646に従った促進老化試験(温度85℃および相対大気湿度85%での耐湿試験)において、本発明による太陽電池は800時間後に、出発値に対して、即ち老化試験の開始前に対して、70%を超える、好ましくは75%を超える、特に80%を超える効率を示す。
【0025】
本発明による太陽電池の製造方法は、以下のステップa)からf)を含む。
a)カルコパイライト系をベースとする光起電性層構造を、場合によってはバリア層を備えている基板に施与するステップ、
b)光起電性層構造を少なくとも1種の一般式(I)のポリシラザンを含有する溶液でコーティングするステップ、
−(SiR’R”−NR’”)n− (I)
[式中、R’、R”、R’”は同じか、または異なり、互いに独立に、水素または場合によっては置換されたアルキル−、アリール、ビニルまたは(トリアルコキシシリル)アルキル基を表し、nは整数であり、ポリシラザンが150〜150000g/mol、好ましくは50000〜150000g/mol、特に100000〜150000g/molの数平均分子量を有するように、nが算定されている]
c)蒸発によって溶剤を除去するステップであって、100〜3000nm、好ましくは200〜2500nm、特に300〜2000nmの厚さを有するポリシラザン層を得るステップ、
d)場合によっては、ステップb)およびc)を1回または複数回繰り返すステップ、
e)i)20〜1000℃、特に80〜200℃の範囲の温度に加熱し、かつ/またはii)180〜230nmの範囲の波長成分のUV光を照射し、この加熱および/または照射を1分から14時間、好ましくは1分から60分間、特に1分から30分間にわたって、好ましくは水蒸気含有空気または窒素からなる雰囲気中で行うことによって、ポリシラザン層を硬化させるステップ、
f)場合によっては、20〜1000℃、好ましくは60〜130℃の温度で、60〜90%の相対湿度を有する空気中で、1分から2時間、好ましくは30分から1時間の期間にわたって、ポリシラザン層を後硬化させるステップ。
【0026】
本発明による方法の有利な形態は、コーティングのために使用されるポリシラザン溶液が、以下に挙げる成分のうちの1種または複数を含有することを特徴とする。
−R’、R”、R’”=Hである少なくとも1種のペルヒドロポリシラザン;ならびに
−触媒および場合によってはさらなる添加剤。
【0027】
好ましくは、カルコパイライト系太陽電池を柔軟なウェブ状基板上に、ロールツーロール法で製造する。
【0028】
本発明によるカプセル化層を製造するために使用されるポリシラザン溶液において、ポリシラザンの割合は、溶液の全重量に対して、1〜80重量%、好ましくは2〜50重量%、特に5〜20重量%である。
【0029】
溶剤としては、水を含有せず、ヒドロキシル基またはアミノ基などの反応性基を含有せず、ポリシラザンに対して不活性な、特には有機の、好ましくは非プロトン性の溶剤が適している。
【0030】
その例は、芳香族または脂肪族炭化水素およびその混合物である。例えば、脂肪族もしくは芳香族炭化水素、ハロ炭化水素、酢酸エチルもしくは酢酸ブチルなどのエステル、アセトンもしくはメチルエチルケトンなどのケトン、テトラヒドロフランもしくはジブチルエーテルなどのエーテル、ならびにモノ−およびポリアルキレングリコールジアルキルエーテル(グリム)またはこれらの溶剤の混合物が該当する。
【0031】
ポリシラザン溶液の追加成分は、層形成プロセスを促進する、例えば有機アミン、酸および金属もしくは金属塩またはこれらの化合物の混合物などの触媒であってよい。アミン触媒として、特にN,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミンおよび3−モルホリノプロピルアミンが適している。触媒を好ましくは、ポリシラザンの重量に対して0.001〜10重量%、特に0.01〜6重量%、特に好ましくは0.1〜5重量%の量で使用する。
【0032】
さらなる成分は、基板の濡れおよび塗膜形成のための添加剤、ならびにSiO、TiO、ZnO、ZrOまたはAlなどの酸化物からなる無機ナノ粒子であってよい。
【0033】
本発明による太陽電池を製造するために、スチールフィルムなどの基板上に、カルコパイライト系をベースとする光起電性層構造を公知の方法に従って作製する。好ましくは、光起電性層構造を施与する前に、スチールフィルムに、電気絶縁層、特にポリシラザンをベースとするSiOバリア層を付与する。続いて、背面接点として、約1μm厚のモリブデン層をDCマグネトロンスパッタリングによって堆積させ、好ましくは、モノリシック相互接続のために構造化する(P1パターニング)。このために必要なモリブデン層のストリップへの分割は、レーザーパターニング装置で行う。
【0034】
カルコパイライト系吸収材層の調製は、好ましくは、約3・10−6mbarの圧力での3段階PVDプロセスで行う。PVDプロセスの全期間は、約1.5時間である。この場合、基板が400℃以下の最大温度になるようにプロセスを実施することが有利である。
【0035】
その後のCdS緩衝層の堆積は、湿式化学的に約60℃の温度で行う。i−ZnOとアルミニウムドーピングされたZnOとからなる窓層を、DCマグネトロンスパッタリングによって堆積させる。
【0036】
本発明によるカプセル化層を製造するために、既に記載した組成のポリシラザン溶液を従来のコーティング法で、例えば、噴霧ノズルまたは浸漬浴によって基板上に、好ましくはスチールフィルム上に施与し、場合によっては、光起電性層構造上での均一な厚さ分布または材料被覆を確保するために、弾性ドクターナイフで平滑にする。ロールツーロールコーティングに適した金属製またはプラスチック製フィルムなどの柔軟な基板の場合には、スリットノズルも、非常に薄くて均一な層を達成するための施与システムとして使用することができる。続いて、溶剤を蒸発させる。これは、室温で、または高温、好ましくは40〜60℃で適切な乾燥機を使用して、ロールツーロール法で>1m/分の速度で行うことができる。
【0037】
ポリシラザン溶液をコーティングし、続いて溶剤を蒸発させるステップシークエンスを場合によっては、1回、2回またはそれ以上の回数繰り返して、100〜3000nmの全厚を有する乾燥しているが未硬化(「未処理」)のポリシラザン層を得る。コーティングおよび乾燥からなるステップシークエンスを複数回経ることによって、未処理ポリシラザン層中の溶剤含有量が著しく低減されるか、または除去される。この処置によって、カルコパイライト系層構造に対する硬化ポリシラザンフィルムの付着力を改善することができる。複数回のコーティングおよび乾燥のさらなる利点は、単一層中に場合によっては存在する穴または亀裂が十分に覆われ閉じられて、水蒸気透過性がさらに低下することにある。
【0038】
乾燥された未処理のポリシラザン層を100〜180℃の範囲の温度で0.5〜1時間にわたって硬化させることによって、透明なセラミック相に変える。濾過し水蒸気で加湿した空気を用いて、または窒素を用いて運転される熱対流炉で、硬化を行う。温度、期間および炉の雰囲気(水蒸気含有空気または窒素)に応じて、セラミック相は異なる組成を有する。硬化を例えば水蒸気含有空気中で行うと、組成SiN(式中、x>v;v<1;0<x<1.3;0≦w≦2.5およびy<0.5)の相が得られる。これに対して、窒素雰囲気中で硬化させると、組成SiN(式中、v<1.3;x<0.1;0≦w≦2.5およびy<0.2)の相が生じる。
【0039】
さらに、ポリシラザン層をもう1回硬化させることによって、水蒸気透過性を低下させることができる。この「後硬化」は、特に約85℃の温度で、相対湿度85%の空気中で1時間にわたって行う。分光分析によって、後硬化はポリシラザン層の窒素含有量をかなり低下させることが示されている。
【0040】
前記の記載、特許請求の範囲、および図面中に開示されている本発明の特徴は、個別でも、それぞれ任意の組み合わせでも、その様々な実施形態で本発明を実現するために重要であり得る。
図1
図2