特許第5731504号(P5731504)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731504
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】複合成型体およびその製法
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/00 20060101AFI20150521BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20150521BHJP
   C08F 4/40 20060101ALN20150521BHJP
   C08F 299/00 20060101ALN20150521BHJP
【FI】
   C08J5/00CEY
   C08L33/00
   !C08F4/40
   !C08F299/00
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-524444(P2012-524444)
(86)(22)【出願日】2011年7月7日
(86)【国際出願番号】JP2011003909
(87)【国際公開番号】WO2012008127
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年6月19日
(31)【優先権主張番号】特願2010-162124(P2010-162124)
(32)【優先日】2010年7月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 良行
【審査官】 斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−024129(JP,A)
【文献】 特許第4176900(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0237462(US,A1)
【文献】 特許第5438902(JP,B2)
【文献】 特開平07−000205(JP,A)
【文献】 特開2002−275392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02;5/12−5/22
C08L 33/00
C08F 4/40
C08F 299/00
B29C 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型体(A)と、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)との複合成型体であって、
ゴムあるいはゲル状硬化物(B)が活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物(C)を硬化させて得られる硬化物であり、
硬化性組成物(C)が、活性エネルギー線に対し硬化性を有する樹脂成分(D)を含み、
樹脂成分(D)が、重合体の両末端に重合性の炭素−炭素二重結合を有するビニル系重合体および重合体の片末端に重合性の炭素−炭素二重結合を有するビニル系重合体を共に含み、
成型体(A)の空洞部分に硬化性組成物(C)を注入し、その後活性エネルギー線を照射して硬化性組成物(C)を硬化させることを特徴とする複合成型体。
【請求項2】
硬化物(B)の硬度がJIS K6253のタイプEデューロメーター硬さで90未満である、請求項1に記載の複合成型体。
【請求項3】
成型体(A)の耐熱温度が150℃以下である請求項1、2のいずれか1項に記載の複合成型体。
【請求項4】
重合性の炭素−炭素二重結合を分子末端に有するビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である請求項1から3のいずれか1項に記載の複合成型体。
【請求項5】
重合性の炭素−炭素二重結合を分子末端に有するビニル系重合体の分子量分布が1.8未満である請求項1から4のいずれか1項に記載の複合成型体。
【請求項6】
成型体(A)の硬度が硬化物(B)の硬度より高い、請求項1からのいずれか1項に記載の複合成型体。
【請求項7】
成型体(A)の硬度が硬化物(B)の硬度より低い、請求項1からのいずれか1項に記載の複合成型体。
【請求項8】
請求項1からのいずれか1項に記載の複合成型体を用いた衝撃吸収材。
【請求項9】
請求項1からのいずれか1項に記載の複合成型体を用いた圧力分散材。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の複合成型体を用いた防振材。
【請求項11】
請求項1からのいずれか1項に記載の複合成型体を用いた防音材。
【請求項12】
成型体(A)の空洞部分に硬化性組成物(C)を注入し、その後活性エネルギー線を照射して硬化性組成物(C)を硬化させて、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)とする請求項1からのいずれか1項に記載の複合成型体を得る成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成型体およびその複合成型体の製造方法に関する。より詳しくは、成型体(A)と、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)の複合成型体であって、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)が活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物(C)を硬化させて得られる硬化物であることを特徴とする複合成型体に関する。更には、成型体(A)の空洞部分に硬化性組成物(C)を注入し、その後活性エネルギー線を照射して硬化性組成物(C)を硬化させて、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)とする複合成型体を得る成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電気・電子用途、自動車用途、精密機器用途、スポーツ、介護用品、その他工業用品等の様々な用途で、衝撃吸収材、制振材、防振材、防音材、吸音材、圧力分散材などが多く使用されている。
【0003】
それらの材料・部材は、単一の成型体やゲル素材で使用されているものもあれば、2種類以上のものを組合せた複合材料、複合成型体も機能の複合化を目的に使用されている。
【0004】
一方、衝撃吸収材、制振材、防振材、防音材、吸音材、圧力分散材として使用される材料としては、ポリウレタンフォーム、エーテル系、エステル系、各種ゴムスポンジ、ポリエチレンフォーム、サンペルカ、オプセル、ニューベルカ、PVCフォームなどの発泡体や高分子材料を中心としたブチルゴム、EVA、ポリノルボルネン、シリコーンゲル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、各種液状材料、熱可塑性エラストマーがあり、様々な特性に優れた材料が開発されている(非特許文献1)。
【0005】
しかしそれらの材料は、それぞれ硬化や成型に加熱が必要であったり、求める形状を得るために金型などが必要であった。したがって、これらの材料の特徴を複合化するためには、それぞれをある形状に得たものを、別途複合化する必要があった(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。例えば、加熱硬化性のシリコーンゲルをポリウレタンなどの発泡体と複合化する場合、発泡体上で硬化性シリコーン組成物を硬化させるとウレタン系の発泡体の耐熱性が十分でなく、その物性を損ねてしまう課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−290626号公報
【特許文献2】特公平7−17039号公報
【特許文献3】特開2002−78757号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】高分子制振材料・応用製品の新動向(監修;西澤 仁、シーエムシー(株)1997年9月30日発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、複合体の一方の材料を形状、性能劣化させることなく、それぞれの機能を併せ持つ設計自由度の高い複合体を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明者らが鋭意検討した結果、成型体(A)と、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)の複合成型体であって、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)が活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物(C)を硬化させて得られる硬化物であることを特徴とする複合成型体、更には成型体(A)の空洞部分に硬化性組成物(C)を注入し、その後活性エネルギー線を照射して硬化性組成物(C)を硬化させて、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)とする複合成型体を得る成型方法が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を得るに至った。
【0010】
すなわち、成型体(A)と、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)との複合成型体であって、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)が活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物(C)を硬化させて得られる硬化物であることを特徴とする複合成型体である。
【0011】
硬化物(B)の硬度がJIS K6253のタイプEデューロメーター硬さで90未満である、請求項1から3のいずれか1項に記載の複合成型体であることが好ましい。
【0012】
成型体(A)の耐熱温度が150℃以下であることが好ましい。
【0013】
硬化性組成物(C)が、活性エネルギー線に対し硬化性を有する樹脂成分(D)を含む複合成型体であることが好ましい。
【0014】
樹脂成分(D)が、重合性の炭素−炭素二重結合を分子末端に有するビニル系重合体を含む複合成型体であることが好ましい。
【0015】
重合性の炭素−炭素二重結合を分子末端に有するビニル系重合体が、重合体の両末端に重合性の炭素−炭素二重結合を有するビニル系重合体および重合体の片末端に重合性の炭素−炭素二重結合を有するビニル系重合体を共に含む複合成型体であることが好ましい。
【0016】
重合性の炭素−炭素二重結合を分子末端に有するビニル系重合体が(メタ)アクリル系重合体である複合成型体であることが好ましい。
【0017】
重合性の炭素−炭素二重結合を分子末端に有するビニル系重合体の分子量分布が1.8未満である複合成型体であることが好ましい。
【0018】
成型体(A)の空洞部分に硬化性組成物(C)を注入し、その後活性エネルギー線を照射して硬化性組成物(C)を硬化させる複合成型体であることが好ましい。
【0019】
成型体(A)の硬度が硬化物(B)の硬度より高い、複合成型体であることが好ましい。
【0020】
成型体(A)の硬度が硬化物(B)の硬度より低い、複合成型体であることが好ましい。
【0021】
上記の複合成型体を用いた衝撃吸収材、圧力分散材、防振材、防音材に関する。
【0022】
成型体(A)の空洞部分に硬化性組成物(C)を注入し、その後活性エネルギー線を照射して硬化性組成物(C)を硬化させて、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)とする複合成型体を得る成型方法が好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明による複合成型体あるいは複合成型体の成型方法によれば、複合体の一方の材料を形状、性能劣化させることなく、それぞれの機能を併せ持つ設計自由度の高い複合体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施例1に係る、発泡体のみで形成されたシートの図である。
図2】本発明の実施例1に係る、ゲル状硬化物を複合化したシートの図である。
図3】本発明の実施例2に係る、ゲル状硬化物を複合化したシートの図である。
図4】本発明の比較例3に係る、ゲル状硬化物を載せたシートの図である。
図5】本発明の実施例2、3および比較例3,4に係る衝撃試験の結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の複合成型体は、成型体(A)と、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)の複合成型体であって、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)が活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物(C)を硬化させて得られる硬化物であることを特徴とする複合成型体である。
【0026】
成型体(A)と硬化物(B)の硬度を変えることにより、その複合体の特性も大きく変えることが可能である。成型体(A)の硬度が硬化物(B)の硬度より高い場合は、硬化物(B)が衝撃吸収、緩衝材として働き、成型体(A)を損傷しないような複合成型体が得られるため好ましい。例えば樹脂材料のような硬い成型体(A)に対し、ゲル状の硬化物(B)を表面に複合化した場合は、衝撃を硬化物(B)が緩衝し、成型体(A)の損傷を防ぐ。
【0027】
逆に成型体(A)の硬度が硬化物(B)の硬度より低い場合は、複合化することで成型体(A)の必要以上の変形を抑えられるなどの効果が得られるため好ましい。例えば、発泡体のような成型体(A)に対し、貝柱状に硬化物(B)が複合された場合、成型体(A)だけでは衝撃に対し大変形、あるいは衝撃が貫通する場合が有るが、硬化物(B)を複合化することで(B)が衝撃を緩衝し、変形を抑制することができる。
【0028】
以下に、本発明の複合成型体に含有される成分につき詳述する。
【0029】
<成型体(A)について>
本発明に使用される成型体(A)は、特に限定されず使用する用途に適した材料が使用できる。この素材としては、特に限定されないが、例えば、ポリウレタンフォーム、エーテル系、エステル系、各種ゴムスポンジ、ポリエチレンフォーム、サンペルカ、オプセル、ニューベルカ、PVCフォームなどの発泡体や、高分子材料を中心としたブチルゴム、EVA、ポリノルボルネン、シリコーンゲル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、各種液状材料、熱可塑性エラストマーが挙げられる。更には、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの樹脂も用途により使用できる。
【0030】
樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、エチレン/スチレン共重合体、エチレン/メチルスチレン共重合体、エチレン/ジビニルベンゼン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン系共重合体;スチレン/ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン/ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン系単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル系共重合体;ポリカーボネート樹脂;ポリエステル樹脂;ポリカーボネート樹脂とポリエステル樹脂の混合物;ポリエーテル樹脂;ポリフェニレンエーテル樹脂;ポリスチレン樹脂とポリフェニレンエーテル樹脂の混合物:シリコーン樹脂;フェノール樹脂;エポキシ樹脂;メラミン樹脂;尿素樹脂;ポリイミド;ポリアミド;ポリアセタール;ポリブチレンテレフタレート(PBT);ポリフェニレンスルファイド(PPS);テフロン(登録商標);ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などが挙げられる。
【0031】
さらに、骨、貝殻、角、牙、爪、歯、毛皮、皮革、羽、鱗などの動物・魚介類の一部または全部;花、実、種、茎、幹、枝、葉、根などの植物の一部または全部;布;紙;糸;繊維;ガラス;金属;宝石;岩石;鉱石;砂なども挙げられる。
【0032】
具体例としては、例えば、シューズ用衝撃吸収材やマットレス用の圧力分散材として本発明を適用する場合は、EVA材料やポリウレタンフォーム等の発泡体が挙げられる。
【0033】
成型体(A)としては、上記素材を1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用して用いてもよい。また成型体(A)は発泡体であってもよいし、非発泡体であってもよい。
【0034】
<ゴムあるいはゲル状硬化物(B)について>
本発明に使用されるゴムあるいはゲル状硬化物(B)は、特に限定されず、活性エネルギー線を照射して、その性状がゴムあるいはゲル状となる硬化物であれば良い。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、電子線、LED光線、放射線等が挙げられる。硬化物(B)は、目的とする用途に応じ、また複合化する成型体(A)との組合せにより、その硬度を調節することができ、成型体(A)より硬くすることや柔らかくすることで、目的の機能を発現できる。
【0035】
硬化物(B)の硬度は特に限定されないが、例えば、本発明により得られる複合成型体が衝撃吸収材、制振材、防振材、防音材、圧力分散材などとして用いられる場合は、JIS K6253のタイプEデューロメーター硬さで90未満であることが好ましく、50未満であることがより好ましく、また柔軟性が求められる場合は30未満であることが好ましく、さらに特に柔軟性が求められる場合は10未満であることが特に好ましいが、本発明により得られる複合成型体の用途や求められる機能に応じて定めることができる。
【0036】
硬化物(B)は、後述する活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物(C)を硬化させて得られる硬化物である。本発明の如く、成型体(A)に対し複合化する硬化物(B)を活性エネルギー線で硬化させることにより、従来の加熱硬化により得られるゴムあるいはゲル状硬化物を、別途必要な機能を発現する形状に加工し、成型体(A)に複合化する場合に比べ、非常に硬化速度が速く生産性が向上する。また2種類以上の成型体を複合化する場合、例えばEVAやポリウレタンフォームなどの発泡体の様に耐熱性が低い成型体(A)に対しては、従来の加熱硬化では硬化時の熱により成型体(A)が変形や劣化をしやすい。一方、本発明の如く活性エネルギー線により硬化させる場合は、成型体(A)の劣化を抑制することが可能である。
【0037】
更に従来の加熱硬化により複合体を得る場合、上記の如く熱劣化しやすい成型体(A)の場合は同時に複合化し難いため、別途限られた形状に加工した硬化物(B)を作成し、その後に成型体(A)に搭載する必要があった。したがって、得られる複合体の機能も制限され、また複合体を設計するユーザーにおける設計自由度が低い。
【0038】
一方、本発明の場合は、例えば成型体(A)上に複雑な形状の型や細い柱上の型を作成し、硬化性組成物(C)を注入し活性エネルギー線を照射することで直接硬化物(B)を複合化することが可能であり、設計自由度が大幅に向上する。
【0039】
硬化物(B)は、本発明により得られる複合成型体の用途や求められる機能や意匠に応じて、染料、顔料などの着色材や金属粉(いわゆるラメ粉)などの意匠付与材や、さらには空隙や気泡を包含していてもよい。
【0040】
<活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物(C)について>
本発明における活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物(C)は、活性エネルギー線を照射することにより反応し、硬化物を与える硬化性組成物であれば良く、特に限定されない。
【0041】
本発明における硬化性組成物(C)は、後述する活性エネルギー線に対し硬化性を有する樹脂成分(D)を含むことを特徴とする。硬化性組成物(C)は、樹脂成分(D)の他、例えば活性エネルギー線に対し硬化性を有する反応性希釈剤、各種モノマー、各種オリゴマー、可塑剤、各種フィラー、開始剤、硬化性向上剤、硬化阻害抑制剤、その他従来公知の添加剤を配合することで各種用途に適した硬化性組成物を得ることが可能である。
【0042】
開始剤としては特に限定されず、樹脂成分(D)の特性や硬化物(B)に求める機能などに応じて決めることができる。活性エネルギー線として紫外線を用いる場合であって、樹脂成分(D)が後述するエポキシ樹脂などのカチオン重合型樹脂の場合は開始剤として光カチオン発生剤(光酸発生剤)を用いることが好ましく、また、樹脂成分(D)が後述するラジカル重合型樹脂の場合は開始剤として光ラジカル発生剤を用いることが好ましい。
【0043】
これらの活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物の調整方法や硬化物物性の調整方法は特に限定されず、例えば、特許第4176900号、特開2008−150502号公報、国際公開WO2007/069600号公報、国際公開WO2007/029733号公報などに記載の従来公知の技術を用いることができる。
【0044】
<活性エネルギー線に対し硬化性を有する樹脂成分(D)について>
本発明における活性エネルギー線に対し硬化性を有する樹脂成分(D)としては、一般に活性エネルギー線を照射することで反応、架橋し硬化するものであれば特に限定は無く、例えば紫外線に対する反応性基としてエポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基等を有するカチオン重合型樹脂や、また、紫外線に対する反応性基として(メタ)アクリロイル基、不飽和ポリエステル基等の重合性の炭素−炭素二重結合を有するラジカル重合型樹脂や、さらに紫外線に対する反応性基として加水分解性シリル基を有する樹脂などが挙げられる。
【0045】
重合性の炭素−炭素二重結合を有するラジカル重合型樹脂としては、具体的には、従来公知のウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、アクリルアクリレートオリゴマーや、特許第4176900号に記載の炭素−炭素二重結合を分子末端に有するビニル系重合体などが挙げられる。
【0046】
樹脂成分(D)は活性エネルギー線に対する反応基を有していることが好ましく、さらに、柔軟な硬化物(B)を得るためには活性エネルギー線反応性基を分子末端に有することが好ましい。
【0047】
樹脂成分(D)の主鎖骨格は特に限定されないが、ビニル系重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル、シリコーン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセタール、テフロン(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。この中でも、柔軟性、耐熱性、耐薬品性、耐油性、耐候性、また高温時の圧縮永久歪の点から、ビニル系重合体であることが好ましい。
【0048】
ビニル系重合体の主鎖を構成するモノマーとしては特に限定されず、各種のものを用いることができる。例示するならば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチルパーフルオロブチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2,2−ジパーフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチルパーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル系モノマー;スチレン、ビニルケトン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩等の芳香族ビニル系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニル系モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のアクリロニトリル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは、単独で用いても良いし、複数を共重合させても構わない。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を表す。
【0049】
ビニル系重合体の主鎖は、(メタ)アクリル系モノマー、アクリロニトリル系モノマー、芳香族ビニル系モノマー、フッ素含有ビニル系モノマーおよびケイ素含有ビニル系モノマーからなる群から選ばれる少なくとも1つのモノマーを主として重合して製造されるものであることが好ましく、(メタ)アクリル系モノマーを主として重合して製造される(メタ)アクリル系重合体であることがより好ましい。ここで、「主として」とは、ビニル系重合体を構成するモノマー単位のうち、50モル%以上が上記モノマーであることを意味し、好ましくは70モル%以上である。
【0050】
なかでも、生成物の物性等から、芳香族ビニル系モノマーおよび(メタ)アクリル系モノマーが好ましい。より好ましくは、アクリル酸エステルモノマーおよび/またはメタクリル酸エステルモノマーであり、特に好ましくはアクリル酸エステルモノマーである。特に好ましいアクリル酸エステルモノマーとしては、具体的には、アクリル酸エチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−メトキシブチルである。本発明においては、これらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合、さらにはブロック共重合させても構わなく、その際は、これらの好ましいモノマーが重量比で40重量%以上含まれていることが好ましい。
【0051】
一般建築用等の用途においては、硬化性組成物の低粘度、硬化物の低モジュラス、高伸び、耐候、耐熱性等の物性が要求される点から、アクリル酸ブチル系モノマーが更に好ましい。一方、自動車用途等の耐油性等が要求される用途においては、アクリル酸エチルを主とした共重合体が更に好ましい。このアクリル酸エチルを主とした重合体は耐油性に優れるが低温特性(耐寒性)にやや劣る傾向があるため、その低温特性を向上させるために、アクリル酸エチルの一部をアクリル酸ブチルに置き換えることも可能である。ただし、アクリル酸ブチルの比率を増やすに伴い、その良好な耐油性が損なわれていくので、耐油性が要求される用途には、その比率は低いことが好ましい。また、耐油性を損なわずに低温特性等を改善するために、側鎖のアルキル基に酸素が導入されたアクリル酸2−メトキシエチルやアクリル酸2−エトキシエチル等を用いるのも好ましい。ただし、側鎖にエーテル結合を持つアルコキシ基の導入により、耐熱性が劣る傾向にあるので、耐熱性が要求されるときには、その比率は低いことが好ましい。各種用途や要求される目的に応じて、必要とされる耐油性や耐熱性、低温特性等の物性を考慮し、その比率を変化させ、適した重合体を得ることが可能である。例えば、限定はされないが、耐油性や耐熱性、低温特性等の物性バランスに優れている例としては、アクリル酸エチル/アクリル酸ブチル/アクリル酸2−メトキシエチル(モル比で40〜50%/20〜30%/30〜20%)の共重合体が挙げられる。
【0052】
樹脂成分(D)の分子量分布、すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、樹脂成分(D)や硬化性組成物(C)の取り扱いやすさ、および、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)の物性のコントロールのしやすさから、1.8未満が好ましく、1.7以下がより好ましく、1.6以下がさらに好ましく、1.5以下がなお好ましく、1.4以下が特に好ましく、1.3以下が最も好ましい。
【0053】
樹脂成分(D)の数平均分子量は特に限定されないが、得られるゴムあるいはゲル状硬化物(B)の物性の観点から1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がさらに好ましく、10,000以上が特に好ましい。樹脂成分(D)の数平均分子量が低すぎると、硬化物(B)が脆くなったり伸びが低くなったりする恐れがある。また樹脂成分(D)の数平均分子量は特に限定されないが、樹脂成分(D)や硬化性組成物(C)の取り扱いやすさの観点から1,000,000以下が好ましく、500,000以下がより好ましく、100,000以下がさらに好ましく、50,000以下が特に好ましい。樹脂成分(D)の数平均分子量が高すぎると、粘度が高くて取り扱いが困難になる恐れがある。
【0054】
なお分子量や分子量分布はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により算出することができる。GPC測定においては、通常、移動相としてクロロホルムを用い、測定はポリスチレンゲルカラムにて行ない、数平均分子量等はポリスチレン換算により求めることができる。
【0055】
(主鎖の合成法)
樹脂成分(D)の製造方法は特に限定されないが、樹脂成分(D)がビニル系重合体の場合は制御ラジカル重合を用いることが好ましい。制御ラジカル重合は、限定はされないが、リビングラジカル重合が好ましく、原子移動ラジカル重合がより好ましい。
【0056】
(制御ラジカル重合)
ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを用いて、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」に対し、「制御ラジカル重合法」は末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能である。
【0057】
「制御ラジカル重合法」は、更に、特定の官能基を有する連鎖移動剤を用いて重合を行なうことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することにより、ほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
【0058】
「リビングラジカル重合法」は、重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御が難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い(Mw/Mnが1.1〜1.5程度)重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
【0059】
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、上記特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましいものである。
【0060】
なお、リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続けて分子鎖が生長していく重合のことをいうが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にありながら生長していく擬リビング重合も含まれる。本発明における定義も後者である。
【0061】
リビングラジカル重合法を実現するために各種の方法が提案されており、いずれも重合体成長末端から可逆的にラジカル活性種が発生する機構が提唱されているが、本発明で用いられる樹脂成分(D)の製造方法としては特に限定されず公知の方法を用いることができる。これらリビングラジカル重合法のうち、有機ハロゲン化物を開始剤として用いる方法が、重合体末端が各種官能基に変換しやすい有機ハロゲン化物構造となるために好ましい。また、有機ハロゲン化物を開始剤として用いる方法は、開始剤として入手容易な化合物を用いることができるため、リビングラジカル重合を実現するための特殊な試材を重合体成長末端と等量(等モル)必要とする方法に比べると好ましい。有機ハロゲン化物を開始剤として用いる場合、これと組み合わせて用いる触媒は特に限定されないが、有機ハロゲン化物がラジカル活性種との平衡状態となるためには触媒は可逆的に酸化還元されるものが好ましい。
【0062】
すなわち本発明で用いられる樹脂成分(D)の製造方法としては、特に限定されないが、触媒の可逆的酸化還元を伴いながら有機ハロゲン化物がラジカル活性種との平衡状態になって重合が進行していくものが好ましく、この中でも原子移動ラジカル重合法が特に好ましい。
【0063】
(活性エネルギー線反応性基の位置)
本発明の硬化性組成物(C)を硬化させてなる硬化物(B)にゴム的な性質が特に要求される場合には、ゴム弾性に大きな影響を与える架橋点間分子量が大きくとれるため、樹脂成分(D)の活性エネルギー線反応性基の少なくとも1個は分子鎖の末端にあることが好ましく、全ての活性エネルギー線反応性基が分子鎖末端にあることがより好ましい。
【0064】
(活性エネルギー線反応性基の種類)
活性エネルギー線反応性基としては、特に限定されないが、エポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基、加水分解性シリル基、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基などが挙げられる。重合性の炭素−炭素二重結合を有する基としては、後述する一般式(1)で表される基や、不飽和ポリエステル基などが挙げられる。
【0065】
重合性の炭素−炭素二重結合を有する基としては、好ましくは、一般式(1);
−OC(O)C(R1)=CH2 (1)
(式中、R1は水素、または、炭素数1〜20の一価の有機基を表す。)
で表される基である。
【0066】
一般式(1)において、R1の具体例としては特に限定されず、たとえば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C65、−CH2OH、−CN等が挙げられるが、好ましくは−H、−CH3である。すなわち重合性の炭素−炭素二重結合を有する基としては(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0067】
本発明におけるゴムあるいはゲル状硬化物(B)を得るためには、例えば重合体の両末端に重合性の炭素−炭素二重結合を有するビニル系重合体と重合体の片末端に重合性の炭素−炭素二重結合を有するビニル系重合体を併用し、活性エネルギー線で硬化させることで、その硬度、物性をコントロールすることが可能である。
【0068】
これらの活性エネルギー線に対し硬化性を有する炭素−炭素二重結合を分子末端に有するビニル系重合体、特に(メタ)アクリロイル基を分子末端に有する(メタ)アクリル系重合体、およびそれら重合体を用いた硬化性組成物、更には硬化物の硬度の調整方法に関しては、例えば、特許第4176900号、特開2008−150502号公報、国際公開WO2007/069600号公報に開示されている。
【0069】
<複合成型体の複合化方法について>
本発明の成型体(A)と、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)の複合成型体は、成型体(A)の例えば空洞部分に硬化性組成物(C)を注入し、その後活性エネルギー線を照射して硬化性組成物(C)を硬化させることで硬化物(B)を得、複合成型体を得ることが好ましい。
【0070】
ここでの空洞部分とは、特に限定された形状は無く、例えば各用途において好ましい機能が発現する形状を型取り、その中に硬化性組成物(C)を注入すればよい。硬化性組成物(C)を成型体(A)の微細な空隙に含浸・浸透させてから硬化させる形態も本発明に含まれる。
【0071】
活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、LED光線、電子線、放射線等が挙げられる。このうち、出力装置の汎用性や取り扱いのしやすさ、得られる硬化物の物性などの観点から、紫外線が好ましい。
【0072】
また必ずしも活性エネルギー線が硬化性組成物(C)に対し直接照射される必要は無く、例えば活性エネルギー線を透過する成型体(A)を使用した場合などは、それらを透過した活性エネルギー線で硬化性組成物(C)を硬化させ、複合化してもよい。すなわち、例えば成型体(A)の上方に開口部があって、そこから硬化性組成物(C)を注入した場合であっても、活性エネルギー線は上方からだけでなく、側面や底面から照射してもよい。
【0073】
更には、硬化前の液状の硬化性組成物(C)の中に成型体(A)を位置し、それに活性エネルギー線を照射して、目的の成型体(A)と、ゴムあるいはゲル状硬化物(B)の複合成型体を得ることもできる。
【0074】
従来のゲル材料としては、例えばウレタンゲルやシリコーンゲルが知られているが、いずれも、液状原料から硬化物を得る際に100℃以上の温度で1時間以上の加熱行程が必要なことが多く、さらに高温または長時間の2次硬化工程が必要となる場合がある。
【0075】
本発明の成型方法は、成型体(A)の耐熱性が低い場合にも用いることができる。例えば耐熱温度が150℃以下の成型体(A)と組み合わせる場合、従来公知の加熱による成型・加工方法には制限があったが、本発明の成型方法は活性エネルギー線で硬化性組成物(C)を硬化させるため、成型体(A)を変形・劣化させることなく成型・加工することが可能である。さらに、成型体(A)の耐熱温度が130℃以下の場合や、特に100℃以下の場合であっても本発明の成型方法は好適に用いることができる。
【0076】
このような方法で複合化した複合成型体は、成型体(A)の機能を損なわず、また加熱硬化等により得られる硬化物(B)を複合化するよりも設計自由度が高いため、機能性の高い複合成型体が得られる。例えば、シート状の発泡成型体(A)に貝柱状に型(空洞)を取り、そこに硬化性組成物(C)を注入し、活性エネルギー線を用い硬化物(B)を得ることができる。
【0077】
また所望の空洞部分を有する成型体(A)を用い、複合成型体を得た後に成型体(A)からゴムあるいはゲル状硬化物(B)を取り出すことにより所望の形状を有するゴムあるいはゲル状硬化物(B)を容易に得ることができる。
【0078】
本発明で使用する活性エネルギー線は一般に使用されるものでよく、例えば紫外線光、可視光線、UV−LED光、電子線、放射線などが挙げられる。
【0079】
活性エネルギー線の照射量は、照射エネルギー強度、積算エネルギー量などで調整することができ、熱に弱い成型体(A)を用いる場合は例えば照射エネルギー強度を低くすると共に照射時間および/または照射回数を増やすなどして積算エネルギー量を調整できる。
【0080】
活性エネルギー線が紫外線の場合、照射エネルギー強度は一般に放射照度またはピーク照度、あるいは単に照度(Irradiance)と呼ばれる。これは、単位面積に対して単位時間当たりに流れる放射エネルギーであり、 W/m2やmW/cm2などの単位で規定される。硬化性組成物(C)を硬化させる際の照度は、特に限定されないが、照度が高いほど短時間で硬化できるため、50mW/cm2以上が好ましく、100mW/cm2以上がより好ましく、200mW/cm2以上がさらに好ましく、400mW/cm2以上が好ましいが、光源から発生する熱または熱線で成型体(A)の劣化が起こる場合などは適宜調整して決めることができる。
【0081】
活性エネルギー線が紫外線の場合、積算エネルギー量は一般に積算光量(Enegy Density)と呼ばれ、ある強さの光をどれだけの時間照射されたかを表す。積算光量は照度の時間積分値を示し、J/m2、mJ/cm2などの単位で規定される。なお、積算光量は照射対象物が単位面積当たりに受けたエネルギー量に相当する。硬化性組成物(C)を硬化させる際の積算光量は、特に限定されないが、積算光量が多いほど深部まで硬化できるため、500mJ/cm2以上が好ましく、1000mJ/cm2以上がより好ましく、2000mJ/cm2以上がさらに好ましく、3000mJ/cm2以上が好ましいが、硬化性組成物(C)の紫外線透過性が低い場合、深部硬化性は照度にも依存することがあるため、この限りではなく、成型体(A)や硬化物(B)の性状や硬化性組成物(C)の紫外線に対する活性などに応じて適宜調整して決めることができる。
【0082】
なお本発明における照度や積算光量は、特に断りがない限り、波長365nmにおける値とする。
【0083】
活性エネルギー線が紫外線の場合であって硬化性組成物(C)がラジカル重合性の場合、空気中などの酸素存在下で硬化させると表面の硬化性が悪くなることがあるが、このような場合は不活性ガス、例えば窒素雰囲気下で硬化性組成物(C)を硬化させることで、硬化物表面の硬化性不良あるいはタック感を低減することが可能である。また硬化性組成物(C)の表面にフィルムなどを貼ったり液体を塗布してから硬化させた後にこれらを除去することでも、表面の硬化性を改善することができる。
【0084】
<用途>
本発明の複合成型体は、その設計自由度の高さより様々な用途へ使用可能である。例えば、衝撃吸収材、衝撃緩和材、振動吸収材、振動絶縁材、振動伝達材、変位吸収材、変位伝達材、応力吸収材、応力緩和材、応力伝達材、圧力分散材、防振材、制振材、梱包材、防音材、吸音材、遮音材、絶縁材、防湿材、防食材、防錆材などが挙げられる。これら材料が用いられる用途としては、例えば、シューズ、プロテクターなどのスポーツ用品;寝具、枕、クッション、マットレス、けが防止用パッドなどの健康医療介護用品;時計、携帯電話、カメラ、スキャナ、パソコン、プリンタ、情報記憶素子(メモリ)、ゲーム機器、電子辞書、音楽再生器、テレビ、ビデオ、DVDプレイヤー/レコーダー、ブルーレイディスクプレイヤー/レコーダー、プロジェクター、映像再生器、ステッピングモーター、磁気ディスク、ハードディスク、マイク、録音機、電話機、冷蔵庫、炊飯器、オーブン、電子レンジ、電磁調理器、食器洗浄機、エアコン、扇風機、空気清浄機、加湿器、除湿機、掃除機、乾燥機、洗濯機、アイロン、ファンヒーター、ミシン、温水洗浄便座、照明装置、体重計、血圧計、体温計、歩数計、補聴器、理美容家電、自動販売機、スピーカフレーム、BSアンテナ、VTR等の電気・電子機器用途;ルーフ、フロア、シャッタ、カーテンレール、床、配管ダクト、デッキプレート、カーテンウォール、階段、ドア、免振アイソレーター、構造材等の建築用途;エンジンルーム、計測ルーム等の船舶用途;エンジン(オイルパン、フロントカバー、ロッカーカバー)、車体(ダッシュ、フロア、ドア、ルーフ、パネル、ホイルハウス)、トランスミッション、パーキングブレーキカバー、シートバック、シーリング材、車載電子部品、カーテレビ、カーオーディオ、カーナビゲーション等の自動車用途;TVカメラ、複写機、電算機、プリンタ、レジスタ、キャビネット等のカメラ・事務機器用途;電動工具、シュータ、エレベータ、エスカレータ、コンベア、トラクタ、ブルドーザ、発電機、コンプレッサ、コンテナ、ホッパ、防音ボックス、草刈り機のモータカバー等の産業機械関係用途;鉄道車両ルーフ、側板、ドア、アンダーフロア、各種補機カバー、橋梁等の鉄道用途;半導体用途等の精密除振装置;可聴域しきい値近傍の低周波音及び高周波音に対応する等の防音材がある。
【実施例】
【0085】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。
【0086】
なお、以下の実施例において、紫外線照射装置はFusion UV system Japan社製ライトハンマー6およびHバルブを使用した。ピーク照度および積算光量の測定には、ウシオ電機製紫外線積算光量計UIT−150−A(感度波長域310〜390nm、校正波長365nm)を使用した。硬度の測定にはJIS K6253のタイプEデューロメーターを使用した。
【0087】
(シート状発泡樹脂成形体の作成)
アリル基末端ポリプロピレンオキシド重合体の合成
分子量約10,000のポリオキシプロピレンジオールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、数平均分子量約28,500(送液システムとして東ソー製HLC−8120GPCを用い、カラムは東ソー製TSK−GEL Hタイプを用い、溶媒はTHFを用いて測定したポリスチレン換算分子量)のポリプロピレンオキシドを得た。
【0088】
続いて、この水酸基末端ポリプロピレンオキシドの水酸基に対して1.2倍当量のNaOMeのメタノール溶液を添加してメタノールを留去し、更に塩化アリルを添加して末端の水酸基をアリル基に変換した。
【0089】
得られた未精製のアリル末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、n−ヘキサン300重量部と、水300重量部を混合攪拌した後、遠心分離により水を除去し、得られたヘキサン溶液に更に水300重量部を混合攪拌し、再度遠心分離により水を除去した後、ヘキサンを減圧脱揮により除去した。以上により、末端がアリル基である数平均分子量約28,500の2官能ポリプロピレンオキシドを得た。
【0090】
ポリオキシプロピレンオキサイド系発泡体の作成
前記で得たアリル基末端ポリプロピレンオキシド重合体100重量部に対して、発泡剤としてエタノールを7.7重量部、触媒として白金ビニルシロキサン錯体の白金含量3wt%のイソプロパノール溶液を0.03225重量部加えて十分に混合した。さらに硬化剤としてメチルハイドロジェンシリコーンオイル(KF−99:信越化学工業(株)製)を12重量部添加してすばやく混合した。
【0091】
この混合物を厚み1cmの型に注入し、40℃に設定したオーブンで60分加熱硬化し、ポリオキシプロピレンオキサイド重合体を基材樹脂とするシート状の発泡樹脂成形体を得た。この発泡樹脂成型体の硬度は0であった。
【0092】
(活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物の調整)
下記製造例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。また、本実施例において「トリアミン」とは、ペンタメチルジエチレントリアミンをいう。
【0093】
下記実施例中、「重量平均分子量」および「分子量分布(重量平均分子量と数平均分子量の比)」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。ただし、GPCカラムとしてポリスチレン架橋ゲルを充填したもの(shodex GPC K−804、K−802.5;昭和電工製)、GPC溶媒としてクロロホルムを用いた。また重合体1分子当たりに導入された官能基数は、1H−NMRによる濃度分析、及びGPCにより求まる数平均分子量を基に算出した。ただしNMRはBruker社製ASX−400を使用し、溶媒として重クロロホルムを用いて23℃にて測定した。
【0094】
(製造例1)
両末端にアクリロイル基を有するポリアクリル酸n−ブチルの製造方法
アクリル酸n−ブチル100部を脱酸素した。反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅0.42部、脱酸素したアクリル酸n−ブチルのうち20部、アセトニトリル4.4部、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.8部を添加して80℃で混合し、ペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)0.018部を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸n−ブチル80部を逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加して重合速度を調整し、内温を約80℃〜約90℃に調整しながら重合を進行させた。モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入し、内温を約80℃〜約90℃に保ちながら加熱攪拌した。揮発分を減圧除去して濃縮した。これを酢酸ブチルで希釈し、ろ過助剤を加えてろ過した。ろ液に対して吸着剤(協和化学工業製キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加して加熱撹拌後、濾過してろ液を濃縮した。これをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、アクリル酸カリウム(末端Br基に対して約2モル当量)、熱安定剤(H−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−n−オキシル)、吸着剤(キョーワード700SEN)、を添加し、約70℃で加熱攪拌した。揮発分を減圧留去してから酢酸ブチルで希釈し、ろ過助剤を添加してろ過した。ろ液を濃縮し、両末端に紫外線架橋基としてアクリロイル基を有する重合体[P1]を得た。重合体[P1]の数平均分子量は22500、分子量分布は1.25、重合体1分子当たりに導入された平均のアクリロイル基数は1.9であった。
【0095】
(製造例2)
片末端にアクリロイル基を有するポリアクリル酸n−ブチルの製造方法
アクリル酸n−ブチル100部を脱酸素した。反応容器の内部を脱酸素し、臭化第一銅0.42部、脱酸素したアクリル酸n−ブチルのうち20部、アセトニトリル4.4部、α−ブロモ酪酸エチル1.9部を添加して80℃で混合し、ペンタメチルジエチレントリアミン(以下、トリアミンと略す)0.018部を添加し、重合反応を開始した。残りのアクリル酸n−ブチル80部を逐次添加し、重合反応を進めた。重合途中、適宜トリアミンを追加して重合速度を調整し、内温を約80℃〜約90℃に調整しながら重合を進行させた。モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上の時点で反応容器気相部に酸素‐窒素混合ガスを導入し、内温を約80℃〜約90℃に保ちながら加熱攪拌した。揮発分を減圧除去して濃縮した。これを酢酸ブチルで希釈し、ろ過助剤を加えてろ過した。ろ液に対して吸着剤(協和化学工業製キョーワード700SEN、キョーワード500SH)を添加して加熱撹拌後、濾過してろ液を濃縮した。これをN,N−ジメチルアセトアミドに溶解させ、アクリル酸カリウム(末端Br基に対して約2モル当量)、熱安定剤(H−TEMPO:4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−n−オキシル)、吸着剤(キョーワード700SEN)、を添加し、約70℃で加熱攪拌した。揮発分を減圧留去してから酢酸ブチルで希釈し、ろ過助剤を添加してろ過した。ろ液を濃縮し、片末端に紫外線架橋基としてアクリロイル基を有する重合体[P2]を得た。得られた重合体[P2]の重量平均分子量Mwは12760、分子量分布は1.10、重合体1分子当たりに導入された平均のアクリロイル基数は1.0個であった。
【0096】
(配合例)
製造例1で得られた重合体[P1]30部および製造例2で得られた重合体[P2]70部に酸化防止剤IRGANOX1010を1部、光ラジカル開始剤として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(DAROCURE1173;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.2部、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE819;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.1部を加え、十分に溶解・混合後、60℃で1時間加熱脱泡を行ない、活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物[C−1]を得た。
【0097】
(実施例1)
前記で得られた厚み1cmのポリオキシプロピレンオキサイド系発泡体シートを6cm平方に切り取った(図1)ものを、図2のようにφ10mmの貝柱状に空洞を切り抜いた。
【0098】
その貝柱状の空洞に上記硬化性組成物[C−1]を注入し、紫外線を照射することにより、図2の空洞中にゲル状硬化物を複合化した。このときの紫外線のピーク照度は1300mW/cm2、積算光量は3000mJ/cm2であった。ゲル状硬化物の硬度は7であった。
【0099】
複合化の際に、発泡体の形状に変化は観察されず、また時間にして1分程度の短時間で目的の複合体を得ることができた。
【0100】
(実施例2)
図2の代わりに図3のようなφ15mmの貝柱状の空洞に硬化性組成物[C−1]を注入した点以外は実施例と同様にして、図3の空洞中にゲル状硬化物を複合化した。
【0101】
[C−1]の注入重量は実施例1と同量となるように貝柱の本数を調整した。
【0102】
実施例1と同様、複合化の際に、発泡体の形状に変化は観察されず、また時間にして1分程度の短時間で目的の複合体を得ることができた。
【0103】
(比較例1)
図1の発泡体シートを、既存の加熱硬化性ゲルの硬化条件で使用されうる140℃1時間の環境下に放置した。その結果、発泡体シートの形状は保持されず、大きく変形した。
このことから、発泡体と加熱硬化性ゲルを同時に複合化することが困難であった。
【0104】
(衝撃試験)
落下高さ100mmより錘(平板)8Kgを落下させ、各複合体への衝突時の最大加速度を測定した。測定は5回実施し、その平均値を取った。
【0105】
(実施例3)
実施例1で得た複合体の衝撃試験を実施した。最大加速度の値の結果を、図5に示す。
【0106】
(実施例4)
実施例2で得た複合体の衝撃試験を実施した。最大加速度の値の結果を、図5に示す。
【0107】
(比較例2)
図1の発泡体だけで衝撃試験を実施した。最大加速度の値の結果を、図5に示す。
【0108】
(比較例3)
前記硬化性組成物[C−1]を厚み2.8mmのシート状に硬化させた。このシートを実施例1および2の貝柱状のゲル硬化物を同重量となるように大きさを調整し、図1の発泡体の表面に別途、図4のように設置した。
【0109】
この複合体で衝撃試験を実施した。最大加速度の値の結果を、図5に示す。
【0110】
実施例1、2および比較例1より、加熱硬化により熱劣化するような発泡体に対しても活性エネルギー線硬化では、基材の発泡体を変形、劣化させることなくゲル状の硬化物を複合化することが可能であった。また貝柱状という、別途加熱硬化させたゲル状硬化物を、発泡体の穴に挿入するのは困難と考えられるが、実施例1および2のように活性エネルギー線硬化性組成物を穴に注入し硬化させることで、容易に複合体を得ることができた。更に実施例1および2のように、その太さなど形状の変更も容易であった。
【0111】
また、比較例2の発泡体だけでは衝撃試験において非常に大きな衝撃がかかるのに対し、ゲル状硬化物を配した実施例3および4では衝撃を大きく緩和する効果が確認された。
【0112】
更に同重量のゲル状硬化物をシート状に配した比較例3に対しても、貝柱状にゲル状硬化物を配した実施例3および4の方が衝撃度は緩和され、更に貝柱の直径を大きくした実施例4の方が小さいものに加え、その効果が大きいことが確認された。
【0113】
上記のように活性エネルギー線硬化性ゲルなどを使用すると、例えば衝撃に対しても形状の設計自由度が高められることが期待できる。
【0114】
(実施例5)
市販の発泡EVA製板(硬度50;10cm×10cm×1cm)にφ10mm×深さ5mmの空洞を形成させ、硬化性組成物[C−1]を注入して紫外線照射させることにより、発泡EVAとゲル状硬化物との複合成型体を得た。このときの紫外線のピーク照度は400mW/cm2、積算光量は3000mJ/cm2であり、紫外線硬化過程で発泡EVAの変色・変形などは起こらなかった。
【0115】
(比較例4)
実施例5で用いた発泡EVA板を90℃1時間の環境下に放置したところ、発泡EVA板の形状は保持されず、大きく変形した。このことから、発泡EVA板と加熱硬化性ゲルを同時に複合化することが困難であった。
【0116】
(実施例6)
市販の円筒形ポリスチレン製容器(硬度100;φ4cm×深さ2cm)に硬化性組成物[C−1]を注入して紫外線照射することにより、ポリスチレンとゲル状硬化物との複合成型体を得た。このときの紫外線のピーク照度は400mW/cm2、積算光量は3000mJ/cm2であり、紫外線硬化過程でポリスチレン容器の変色・変形などは起こらなかった。
【0117】
(比較例5)
実施例6で用いたポリスチレン製容器を80℃1時間の環境下に放置したところ、ポリスチレン容器は変形した。このことから、ポリスチレン容器と加熱硬化性ゲルを同時に複合化することが困難であった。
【0118】
(実施例7)
市販のポリメタクリル酸メチル(PMMA)製フィルム(10cm×10cm×100μm)上に硬化性組成物[C−1]を厚みが約800μmとなるように塗布し、これを紫外線照射することにより、PMMAフィルムとゲル状硬化物との複合成型体(積層体)を得た。このときの紫外線のピーク照度は120mW/cm2、積算光量は900mJ/cm2であり、紫外線硬化過程でPMMAフィルムの変色・変形などは起こらなかった。
【0119】
(比較例6)
実施例7で用いたPMMAフィルムを100℃1時間の環境下に放置したところ、PMMAフィルムは変形した。このことから、PMMAフィルムと加熱硬化性ゲルを同時に複合化することが困難であった。
【0120】
(実施例8)
市販のポリエチレン製袋(20cm×14cm×厚み40μm)の中に硬化性組成物[C−1]250gを注入して封をした。紫外線を袋の上方から(すなわち硬化性組成物に対してはポリエチレンを透過させる形式で)照射した。照射した紫外線はピーク照度が265mW/cm2、積算光量が275mJ/cm2であったが、袋内部のうち下方が一部未硬化であったため、袋を天地反転させ、ピーク照度265mW/cm2、積算光量275mJ/cm2の紫外線をさらに照射したところ、袋内部は完全に硬化した。このとき紫外線硬化過程でポリエチレン袋の変色・変形などは起こらなかった。
【0121】
(比較例7)
実施例8で用いたポリエチレン製袋を80℃1時間の環境下に放置したところ、ポリエチレン製袋は変形した。このことから、ポリエチレン製袋と加熱硬化性ゲルを同時に複合化することが困難であった。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明は、本実施例の発泡体への衝撃吸収性改善効果だけでなく、各用途における基材との複合化が可能で、衝撃緩和性、制振性などを高い自由度で設計することが期待され、衝撃吸収材、圧力分散材、制振材、防振材、梱包材、防音材、吸音材、遮音材などに好適に用いることが出来る。
図1
図2
図3
図4
図5