(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プロフィールは、ゼロの方に、又は表面から10〜2500nmの距離の範囲の深さからガラスの芯に存在する可能性がある濃度と同一の一定値の方に向かう傾向を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【背景技術】
【0002】
抗菌特性を有する表面を持つガラス支持体には、様々なタイプのものがあり、これらは全て、少なくとも一種のいわゆる「抗菌」剤を有する。抗菌剤は、しばしば、前記物品の表面に位置する。公知の抗菌剤の例は、銀(Ag)、銅(Cu)、又は亜鉛(Zn)である。
【0003】
特に特許出願WO2005/042437A1から公知の、抗菌特性を有するガラス支持体は、抗菌剤(特に、銀(Ag))を、支持体の表面の一方から支持体の本体まで2ミクロンのオーダーの深さにわたって拡散させることによって得られる。
【0004】
抗菌特性を有するガラス支持体の別の公知のタイプは、結合剤によって形成されたコーティングをその表面の一方に含み、抗菌剤は、この結合剤中に分散される。かかるガラス支持体の例は、特許出願WO03/056924A1及びWO2006/064060A1に与えられている。
【0005】
不幸なことに、どのようなタイプの支持体が構想されたとしても、抗菌特性は、400℃以上の温度での処理に対してほとんど抵抗性を有さない。実際、これらの温度でのAg元素の迅速な拡散の結果として、Ag元素は、微生物を中和するのに効果的な表面又は表面近くの領域から、元素Agがその抗菌効果を発揮することがもはやできないガラス支持体の本体の方に向かって漸進的に移行する。従って、ガラスの強化を行うために典型的に必要なかかる温度(〜650−700℃)は、熱処理されるガラスの抗菌特性を大きく低下させる。
【0006】
現在、板ガラス用途は、安全性の理由のために強化されたガラスシートをますます必要としている。なぜなら、かかるガラスは、増大した耐衝撃性を有するからである。
【0007】
抗菌特性を有するガラス支持体の熱処理から生ずる問題に対する一つの解決策は、既に知られている。この解決策は、ガラスの本体における銀の拡散を減少又は低下させるためにいわゆる「拡散バリヤー」層を使用して、最初の抗菌活性を最大限に保存することに関する。従来技術は、ガラスの表面に直接付着されるかかる層の使用を記載しており、この層がガラスと抗菌剤の間に存在することは不可避である。そのとき、支持体は、抗菌剤を単独で又は結合剤と共に含む、バリヤー層上に付着された第二の層を有さなければならない。問題に対するかかる解決策は、特に、国際特許出願WO2006/064060A1に記載されている。
【0008】
しかし、この技術的な解決策は、ある制限を有する。実際、ガラス支持体への一つ以上の層の追加は、支持体の光学及び/又は美的特性の劣化(例えば、光透過率の低下、色の変化、又は光反射率の増大)をしばしば生ずる。
【0009】
さらに、この技術的な解決策は、ガラス支持体上への少なくとも二つの層の連続的な付着を必要とし、これは、製造工程における追加の工程、及び費用の増加を不可避的に生ずる。
【0010】
表面から本体の方へ向う銀の拡散の問題に対する別の技術的な解決策は、最初から高濃度の銀を使用し、抗菌活性に対するこの拡散の悪影響がほんのわずかに又は低くなるようにすることである。それにもかかわらず、この解決策は、明らかな経済上の理由のみならず、美的理由のため、極めて納得できないものである。なぜなら、高すぎる濃度の銀は、ガラスの見苦しい黄色の着色を生ずることが知られているからである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明によるガラス物品は、様々なカテゴリーに属することができる無機ガラスから形成される。従って、無機ガラスは、ソーダ石灰タイプのガラス、ホウ素ガラス、鉛ガラス、ガラスの本体の中に均一に分布された一種以上の添加剤(例えば、少なくとも一種の無機着色剤、酸化化合物、粘度制御剤、及び/又は溶融促進剤)を含むガラスであることができる。本発明によるガラス物品は、ソーダ石灰ガラスであることが好ましく、これは、透明であるか又は一様に着色されることができる。表現「ソーダ石灰ガラス」は、本明細書では、その広義の意味で使用され、以下のベース成分(ガラスの全重量に対する百分率で表わされる)を含むいかなるガラスにも関する:
SiO
2 60〜75%
Na
2O 10〜20%
CaO 0〜16%
K
2O 0〜10%
MgO 0〜10%
Al
2O
3 0〜5%
BaO 0〜2%
BaO+CaO+MgO 10〜20%
K
2O+Na
2O 10〜20%
【0026】
それはまた、一種以上の添加剤を追加的に含むことができる、上述のベース成分を含むいかなるガラスにも関する。
【0027】
本発明による物品の実施形態によれば、本発明による物品のガラスは、一枚の平板ガラスから形成される。この実施形態によれば、平板ガラスは、例えばフロートガラス、機械引き板ガラス、ロール成形型板ガラスであることができる。
【0028】
また、この実施形態によれば、平板ガラスシートは、単一の面で又は代替的に両面で、本発明による処理に供されることができる。単一の面に型押しされたロール成形型板ガラスシートの単一の面上を処理する場合、本発明による処理は、型押しされていないシートの面に行われることが有利である。
【0029】
本発明による物品のガラスは、ソーダ石灰平板ガラスシートから形成されることが好ましい。
【0030】
ガラス物品は、少なくとも処理されるべき表面で、本発明の処理の前に、いかなる層でのコーティングにも供されていないことが一般的に好ましい。本発明によるガラス物品は、本発明の処理後には、いかなる層でのコーティングにも供されることができ、このコーティングは、本発明によって処理された表面とは反対の表面に対して行われることが好ましい。
【0031】
本発明によるガラス物品は、抗菌特性を有する。これは、ガラス物品と接触するようになる微生物が中和されることを可能にするガラス物品を意味するものとして理解される。「微生物」は、細菌、酵母、微小な藻、真菌、又はウイルスなどの微視的な単細胞生物であるとして理解される。「中和する(neutralise)」は、最小限、微生物の最初の量を維持すること(静菌効果)を意味するものとして理解され、本発明は、この量の増大を除外する。従って、微生物の展開及び増殖は、防止され、そして、ほとんど全ての場合において、たとえ微生物の量が維持されるとしても、微生物の被覆表面は、減少する。本発明によれば、微生物の中和は、それらの部分的な、そして完全な滅亡(殺菌効果)にまで拡張することができる。
【0032】
特に、本発明によるガラス物品は、グラム陽性細菌またはグラム陰性細菌のいずれも含む多数の細菌に対して抗菌(殺菌又は静菌)効果を有し、特に、以下の細菌の少なくとも一種に対して抗菌(殺菌又は静菌)効果を有する:エシェリキア・コリ(Escherichia coli,)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)。有利には、本発明によるガラス物品は、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及び/又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)に対して抗真菌(殺真菌又は静真菌)効果を有する。
【0033】
本発明によるガラス物品は、ガラスの表面の下で拡散された少なくとも一種の抗菌剤を含む。本発明によれば、抗菌剤は、以下の元素:銀(Ag)、銅(Cu)、錫(Sn)、及び亜鉛(Zn)から選択される。
【0034】
本発明によれば、抗菌剤は、金属もしくは酸化物の極めて小さい粒子の形態で、又はガラスのマトリックス中に溶解された形態で存在する。
【0035】
本発明による抗菌剤は、銀(Ag)元素であることが好ましい。この場合、銀は、(動的SIMS法を使用して測定された)表面上での強度の比I(CsAg)/I(CsSi)が0.002より高く、好ましくは0.010以上になるように、表面の下で拡散されることが有利である。かかる比の値I(CsAg)/I(CsSi)は、適切な抗菌効果が達成されることを可能にする。
【0036】
強度の比I(CsAg)/I(CsSi)の測定は、Cameca ims−4f機械で行われた。I(CsAg)は、支持体の表面がCs
+イオンのビームによって衝撃を与えられ、これによりサンプルの表面が漸進的にエッチングされた後に、イオンCsAg
+について得られたピーク強度であり、I(CsSi)は、支持体の表面がCs
+イオンのビームによって衝撃を与えられ、これによりサンプルの表面が漸進的にエッチングされた後に、イオンCsSi
+について得られたピーク強度である。支持体に到達したCs
+イオンのビームのエネルギーは、5.5keVである。ビームの入射角度は、支持体の法線に対して42°である。表面値は、得られた値が有意であるとすぐに、最低の可能な深さについての値がとられるということを意味する。使用された浸食の割合に応じて、第一有意値は、約1〜5nmの最大深さに相当しうる。この場合、表面値は、最大2nmの深さに相当する。得られた値が有意であることを確実にするために、アイソトープの強度の比I(Ag107)/I(Ag109)は、特に理論値(1.0722)に近くなければならず、特に1.01〜1.13の範囲になければならない。
【0037】
本発明の特定の実施形態によれば、抗菌剤の濃度は、従来の拡散プロフィール(即ち、ガラスの表面から、連続的に減少して、所定の深さでのゼロに向かう傾向のあるプロフィール)に従ってガラスの深さで分布される。
【0038】
本発明の別の特定の実施形態によれば、抗菌剤の濃度は、最小値を有するプロフィールに従ってガラスの深さで分布される。最小値は、10〜4000nmの表面からの距離に位置されることが好ましい。
【0039】
本発明によるガラス物品は、物品の表面の近くのガラスの本体の中に存在する少なくとも一種の無機化合物を含む。温度の影響下での抗菌剤の拡散を減少又は低下させるいかなる化合物も好適でありうる。
【0040】
本発明によれば、無機化合物は、物品のガラスの本体の組成に対して完全に外来のものであることができる。変形例において、無機化合物は、物品のガラスの本体の組成中に既に存在していることができる。
【0041】
ガラス物品中で無機化合物は、金属、酸化物、窒化物、又は炭化物の形態で存在することが一般的に好ましい。
【0042】
無機化合物は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ケイ素、及びゲルマニウムから選択されることが好ましい。
【0043】
有利には、抗菌特性の温度に対する抵抗性は、無機化合物がアルミニウムである場合に特に良好であることを、本発明者らは示している。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記無機化合物の濃度は、ガラスの表面から連続的に減少し、ゼロの方に、又は10nm以上の、好ましくは50nm以上の表面からの距離における深さから物品の芯に存在する可能性がある濃度と同一の一定値の方に向かう傾向を有するプロフィールに従って、ガラスの深さにおいて分布される。さらに、前記深さは、2500nm以下、好ましくは1000nm以下、より好ましくは500nm以下の表面からの距離にある。
【0045】
本発明によれば、及び一般的に、無機化合物は、ガラスの本体の中に溶解される。しかし、本発明の特定の実施形態によれば、無機化合物は、極めて小さい粒子の形態で、特に微粒子又はナノ粒子の形態で、完全に又は部分的にガラスの本体の中に存在することができる。
【0046】
本発明によるガラス物品は、熱処理されることができ、特に、強化操作のための準備において熱処理されることができる。本発明は、熱処理されていないガラス物品、及び熱処理されたガラス物品の両方をカバーする。本発明の特定の実施形態によれば、ガラス物品は、抗菌特性並びに強化ガラスの特性を有する。強化ガラスの特性を有するガラスは、同一厚さ及び同一組成の従来の非強化ガラスと比較して増大された機械的強度を有するガラスを意味するものとして理解される。
【0047】
本発明によるガラス物品は、以下の二つの主要な工程を含む方法を使用して得られることができる:
(a)ガラスの表面の近くのガラスの本体の中への無機化合物の付着及び拡散;及び
(b)ガラスの表面の下での抗菌剤の付着及び拡散。
【0048】
ガラスの表面に近いガラスの本体の中に無機化合物を拡散させるために、様々な公知の方法が好適である。特に、方法の例は、(a)ガラスの表面上への無機化合物の(例えば、層の形態での)付着、及び(b)無機化合物がガラス中に拡散されるような態様での、エネルギーの供給を含む。
【0049】
ガラスの表面上への無機化合物の付着は、以下のような公知の方法によって行われることができる。
・ 化学蒸着(又はCVD):改変された化学蒸着方法(又はMCVD)が本発明で使用されることができる。この改変された方法は、前駆体がガラスの表面上ではなく気相中で反応する点において、従来の方法とは異なる;
・ ゾル−ゲル付着などの湿潤付着、又は
・ 液体、気体、もしくは固体状前駆体から開始する火炎噴霧(これらの前駆体は、エーロゾル中の微粒化に供され、このエーロゾルが火炎中に移送されて、そこで燃焼が生じる)。
【0050】
ガラスの本体の中への無機化合物の拡散のために必要なエネルギーは、例えば、ガラス又はその表面を好適な温度に加熱することによって供給されることができる。ガラスの本体の中への無機化合物の拡散のために必要なエネルギーは、無機化合物の付着の時に、又はその後で供給されることができる。この場合、火炎噴霧は特に有利である。なぜなら、ガラスの本体の中への無機化合物の拡散のために必要なエネルギーは、火炎自体の熱によって無機化合物の付着時に供給されるからである。有利には、本発明による無機化合物の拡散は、かかる方法を使用して達成される。
【0051】
ガラス物品の表面の下に抗菌剤を得るために、様々な公知の方法が好適である。特に、熱分解噴霧によって、又は陰極スパッタリング及びそれに続く表面下での抗菌剤のわずかな制御された拡散(例えば、250℃の温度で30分間)によって、層の形態で抗菌剤を付着させることができる。抗菌剤を付着させてこれを表面の下に拡散させる工程は、もしガラス物品又はその表面が最初に加熱されるのなら、実質的には同時に行われることができる。
【0052】
有利には、本発明によるガラス物品は、無機化合物の塩又は抗菌剤の塩の溶液から開始する火炎噴霧技術を使用して単一の主要な工程において得られることができる。
【0053】
本発明によるガラス物品は、抗菌特性を有し、しかも前記特性を変化させることなしに熱的に強化されることができるため、多数の用途を有する。例えば、本発明によるガラス物品は、食品の容器として、又は浴室、台所、もしくは研究所用の要素(鏡、仕切り、床、作業表面、扉)として使用されることができる。また、本発明によるガラス物品は、冷蔵庫の棚やオーブンの扉のような電気器具中の要素として使用されることができる。また、本発明によるガラス物品は、病院における多数の用途を有する。
【実施例】
【0054】
以下の実施例は、本発明の範囲をいかなる方法でも制限する意図なしに本発明を説明する。
【0055】
実施例1(比較例)
厚さ4mmで20cm×20cmの寸法の透明ソーダ石灰フロートガラスの三枚のシートは、流水、脱イオン水、及びイソプロピルアルコール中で連続的に洗浄され、次に乾燥された。それらは次に、アルゴン雰囲気中の金属銀ターゲットを使用して、公知の態様で、陰極マグネトロンスパッタリングとも称される真空蒸着法を使用して、銀の薄層をそれぞれ被覆された。付着された銀の量は、処理されるべき表面積1m
2当たり40mgである。銀を表面の下に拡散させるために、三枚のシートは次に、以下の条件(維持時間及び温度)での熱処理に供された:
・ シート1:250℃で30分間
・ シート2:400℃で30分間
・ シート3:650℃で30分間
【0056】
処理されたシートは次に、酸(HNO
3とFe(NO
3)
3の溶液)中で清浄され、熱処理中に拡散しなかった、表面上に残っている過剰の銀が除去された。
【0057】
上述のように処理されたガラスシートは、二次イオン質量分光測定によって分析された。
【0058】
図1は、各熱処理(a),(b)及び(c)について支持体中の深さ(d)の関数として、ガラスの表面の下の拡散した銀の量(強度の比I(CsAg)/I(CsSi))を示す。さらに、表面(d=0)での銀の量は、動的SIMSによって得られた強度の比I(CsAg)/I(CsSi)に基づいて推定された。I(CsAg)は、支持体の表面が「Cameca ims−4f」機械(ビーム5.5keV及び支持体の法線に対する入射角度42°)を使用したCs
+イオンのビームによって衝撃を与えられた後に、イオンCsAg
+について得られたピーク強度であり、I(CsSi)は、支持体の表面が「Cameca ims−4f」機械(ビーム5.5keV及び支持体の法線に対する入射角度42°)を使用したCs
+イオンのビームによって衝撃を与えられた後に、イオンCsSi
+について得られたピーク強度である。これらの分析は、同じ処理持続時間を有するガラスの表面上に存在する銀の量に対する温度の大きな影響を示す。表面(d=0)での決定された強度の比I(CsAg)/I(CsSi)は、実際、以下のようであった。
・ シート1:0.037
・ シート2:0.011
・ シート3:0
【0059】
400〜650℃の温度での処理は、約1ミクロンを中心とする最大値で、ガラスの表面からガラスの本体の方への銀の極めて有意な移行を生ずる。表面からこの距離に位置する銀は、もはやその抗菌の役割を果たすことができず、従って、抗菌特性を喪失する。650℃での処理の影響は、極めて否定的であるため、ガラスの表面に存在する銀の量は、実質的にゼロである。
【0060】
実施例2(比較例)
厚さ4mmで20cm×20cmの寸法の透明ソーダ石灰フロートガラスの一枚のシートは、流水、脱イオン水、及びイソプロピルアルコール中で連続的に洗浄され、次に乾燥された。
【0061】
水素及び酸素は、スポットバーナーに供給されて、前記バーナーの出口で火炎を生成した。水に溶解された硝酸銀AgNO
3を含む溶液(銀/水の重量希釈比=1/1442、溶液流量=4.7ml/分)は、火炎に供給された。洗浄されたガラスシートは、最初に、炉中で600℃の温度に加熱され、その表面の一方は、130mmの距離で火炎の端に近いバーナーの下に配置された。ガラスシートの全表面を被覆するため、スポットバーナーは、前記シートの平面内で両方の空間方向に移動可能である。バーナーのヘッドは、3メートル/分の固定速度で二つの方向のうちの一つに連続的に移動され、第一の方向に対して垂直な他の方向に2cmのジャンプで移動された。この処理の後、ガラスシートは、制御された態様で冷却された。
【0062】
上述のように処理されたガラスシートは、二次イオン質量分光測定によって分析された。
【0063】
図2は、処理表面から開始してガラスシート中の深さ(d)の関数として、拡散した銀の量(対数スケールでの強度の比I(CsAg)/I(CsSi))を示す。それは、ガラスの表面の下の銀の拡散を示す。銀の濃度は、約150nmの表面からの深さの最小値を有するプロフィールに従って、1ミクロンより大きい深さにわたって分布している。さらに、表面での強度の比I(CsAg)/I(CsSi)は0.0004である。
【0064】
実施例3(本発明例)
厚さ4mmで20cm×20cmの寸法の透明ソーダ石灰フロートガラスの一枚のシートは、流水、脱イオン水、及びイソプロピルアルコール中で連続的に洗浄され、次に乾燥された。
【0065】
水素及び酸素は、線状バーナーに供給されて、前記バーナーの出口で火炎を生成した。使用されたバーナーは、20cmの幅、及び前駆体溶液の供給のための二つのノズルを有していた。洗浄されたガラスシートは、最初に、炉中で600℃の温度に加熱され、次にこの温度で、ガラスシートの上方90mmの距離に位置されたバーナーの下を約8m/分の速度で通過させられた。ノズルによって火炎中に供給された溶液は、水に溶解された硝酸銀AgNO
3(銀/水の重量希釈比=1/3500)、及びメタノールに溶解された非水和硝酸アルミニウムAl(NO
3)
3・9H
2O(アルミニウム/メタノールの重量希釈比=1/20)を含んでいた。溶液の全流量は、360ml/分であった。この処理の後、ガラスシートは、制御された態様で冷却された。
【0066】
上述のように処理されたガラスシートは、二次イオン質量分光測定によって分析された。
【0067】
図3は、処理表面から開始してガラスシート中の深さ(d)の関数として、Al/Siの原子比を示す。それは、アルミニウムの濃度が拡散プロフィールに従って分布していることを示す。これは、ガラスの表面から前記ガラスの本体の方に向かって連続的に減少し、約200nmの深さから一定値(ガラスの芯での値)の方に向かう傾向を有する。
【0068】
図4は、処理表面から開始してガラスシート中の深さ(d)の関数として、拡散した銀の量(対数スケールでの強度の比I(CsAg)/I(CsSi))を示す。それは、ガラスの表面の下の銀の拡散を示す。銀の濃度は、表面で最大値を有し、約200nmを中心とする最小値に漸進的に減少し、次にわずかに増大し、約0.8ミクロンから水平になることによって終了するプロフィールに従ってガラスの深さにおいて分布している。さらに、表面での強度の比I(CsAg)/I(CsSi)(プロフィールの最大値)は0.008であり、これは、銀を拡散させるための同じ方法から開始して、無機化合物の存在は、ガラスの表面でずっと高い銀濃度が得られることを可能にすることを示し、これは、抗菌活性に有利である。
【0069】
実施例4(本発明例)
本発明による物品は、ソーダ石灰平板ガラスの連続生産のために意図された設備中で得られた。この設備は、溶融炉、錫浴、及び冷却ステーションを含む。溶融状態のガラスは、溶融炉から錫浴中へ、リボン形状で注入された。ガラスリボンは、8mmの平均厚さを有していた。次に、ガラスリボンは、615℃の温度及び約7.75m/分の一定速度で幅20cmの線状バーナーを通過させられた。バーナーは、水素及び酸素を供給されて、前記バーナーの出口で火炎を生成した。これは、145mmの距離でガラスシートの上に配置された。メタノールに溶解された硝酸銀AgNO
3(銀/メタノールの重量希釈比=1/3500)、及びメタノール中に溶解された非水和硝酸アルミニウムAl(NO
3)
3・9H
2O(アルミニウム/メタノールの重量希釈比=1/20)を含む溶液が、火炎中に供給された。溶液の全流量は、343ml/分であった。続いて、ガラスシートは、冷却ステーションを通過させられ、そこでガラスシートは、フロート平板ガラスについて通常使用される条件で、制御された態様で冷却された。
【0070】
上述のように処理されたガラスシートは、二次イオン質量分光測定によって分析された。
【0071】
図5は、処理表面から開始してガラスシート中の深さ(d)の関数として、Al/Siの原子比を示す。それは、アルミニウムの濃度が拡散プロフィールに従って分布していることを示す。これは、ガラスの表面から前記ガラスの本体の方に向かって連続的に減少し、約50nmの深さから一定値(ガラスの芯での値)の方に向かう傾向を有する。
【0072】
図6は、処理表面から開始してガラスシート中の深さ(d)の関数として、拡散した銀の量(対数スケールでの強度の比I(CsAg)/I(CsSi))を示す。それは、ガラスの表面の下の銀の拡散を示す。銀の濃度は、表面で最大値を有し、約250nmを中心とする最小値に漸進的に減少し、次にわずかに増大し、約0.6ミクロンから水平になることによって終了するプロフィールに従ってガラスの深さにおいて分布している。実施例4についての表面での強度の比I(CsAg)/I(CsSi)(プロフィールの最大値)は0.003であり、これは、アルミニウムの存在は、ガラスの表面でずっと高い銀濃度が得られることを可能にすることを再び示す。
【0073】
実施例5(本発明例)
実施例4のシートは、公知の態様で強化された。即ち、シートは、670℃に3分間加熱され、次に、周囲温度への極めて迅速な冷却に供された。
【0074】
強化されたガラスシートは、実施例4と同じ技術を使用して分析された。
【0075】
図7は、処理表面から開始してガラスシート中の深さ(d)の関数として、対数スケールでの強度の比I(CsAg)/I(CsSi)を示す。それは、たとえ強化前に表面の近くのガラスの本体の中に位置された銀の一部が、強化の結果として予めガラスの深さ中に移行したとしても、表面(d=0)での銀の量が維持されることを示す。表面での強度の比I(CsAg)/I(CsSi)(プロフィールの最大値)は0.0045である。従って、これらの結果は、アルミニウムの存在は、(アルミニウムなしの実施例1のサンプル(実施例1では、同様の熱処理後の表面での銀の濃度はゼロである)として比較して)強化後ですら、特定濃度の銀が表面に維持されることを可能にすることも示す。