特許第5731702号(P5731702)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5731702-移動式水蒸気供給装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5731702
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】移動式水蒸気供給装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20150521BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20150521BHJP
   F22D 11/00 20060101ALI20150521BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   E04D13/00 A
   E04H9/16 P
   F22D11/00 H
   F22B1/18 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-171237(P2014-171237)
(22)【出願日】2014年8月26日
【審査請求日】2014年10月7日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510214676
【氏名又は名称】有限会社森下商会
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】森下 和也
【審査官】 五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】 実用新案登録第2533335(JP,Y2)
【文献】 特開2012−041809(JP,A)
【文献】 特開平05−272703(JP,A)
【文献】 特開2011−045290(JP,A)
【文献】 特開昭63−247140(JP,A)
【文献】 実公昭46−019843(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E04H 9/16
F22B 1/18
F22D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融雪機能付き屋根パネルに水蒸気を供給するための移動式水蒸気供給装置であって、
前記融雪機能付き屋根パネルの往き配管と前記移動式水蒸気供給装置を連結させるための往き配管連結部と、
前記融雪機能付き屋根パネルの戻り配管と前記移動式水蒸気供給装置を連結させるための戻り配管連結部と、
簡易蒸気ボイラーであって、ボイラー燃焼部と、軟水を貯水したドレン回収タンクと、蒸気発生装置とからなり、
前記蒸気発生装置を、前記ドレン回収タンクと前記ボイラー燃焼部の上に積み重ねること無く、しかも、前記ドレン回収タンクと前記ボイラー燃焼部から遮熱板を介在させて分離して、前記ボイラー燃焼部と同じ高さに設置することで低重心である蒸気ボイラーと、
さらに、前記往き配管連結部と、前記戻り配管連結部と、前記蒸気ボイラーを移動させるための移動手段を備えた移動式水蒸気供給装置。
【請求項2】
前記移動手段は、小型トラックであることを特徴とする請求項1に記載の移動式水蒸気供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪機能付き屋根パネルに、水蒸気を供給するための移動式水蒸気供給装置に関する。詳細には、各家屋に敷設した融雪機能付き屋根パネルに、家屋毎に水蒸気を供給するための蒸気ボイラー等の設備を設置することなく、雪下ろし専門業者等が、各家庭を巡回して雪下ろし作業をすることができる移動式水蒸気供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冬場において雪国では、屋根に降り積もった雪の雪下ろし作業に多くの労働力(危険を伴う作業でもある)と手間がかかるという問題があった。雪下ろし作業をしないと、屋根に降り積もった雪の重量により家屋が押し潰される危険が有るだけでなく、屋根の端を巻き込むように堆積した雪が、屋根の軒先部分に、偏った荷重として集中し、屋根材である垂木を破損する虞もある。一方、日本が高齢化社会に向かう事は避けられない事実であり、山間地域においては高齢者単身世帯が多いといった事情や、軒先を連ねる商店街(雪の処理スペースが無い場所)での屋根に降り積った雪降ろし作業に対する不便さが問題となっている。
【0003】
上記問題を解決すべく、出願人らは、屋根内部に水蒸気を通過させることで、水蒸気の熱が屋根自体に伝導することにより、屋根に降り積もった雪を解かすことができる融雪機能付き屋根パネルを開発した(特許文献1)。即ち、蒸気ボイラーで発生した水蒸気を、往き配管により融雪機能付き屋根パネルへ送り、戻り配管をへて、受水槽に戻す。受水槽は、予め、水が一定量保持できる構造(仕組み)とし、融雪屋根パネルから戻った水蒸気を再液化させるものである。再液化した水を再び加圧ポンプにより蒸気ボイラーへ送る。これらの一連のサイクルを繰り返す事により、屋根上の雪を融雪するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−041809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、実際に、融雪機能付き屋根パネルに水蒸気を供給するための蒸気ボイラーは、操作が煩雑であり、(ボイラーは、ボイラー技士の免許を受けた者でないと取り扱うことができないとされている。ただし、簡易ボイラーについては、取扱いの資格は特に規定されていない。)特に、不慣れな高齢者が操作するのは困難であるだけでなく危険でもあるし、さらに、ひと冬に雪下ろしをする回数は多くても20回程度であり、毎日雪下ろし作業をする必要もない。
【0006】
かかる現状に鑑み、出願人らは、操作が煩雑で(しかも高価な)蒸気ボイラーを、各家庭で所有する必要が無く、雪下ろし作業が必要な時に、雪下ろし専用業者等が各家庭に出向いて雪下ろし作業をすることができる移動式水蒸気供給装置を発明するに至った。
【0007】
本発明の目的は、操作が煩雑で(しかも高価な)蒸気ボイラーを、各家庭で所有する必要が無く、雪下ろし作業が必要な時に、雪下ろし専用業者等が、各家庭に出向いて雪下ろし作業をすることができる、移動式水蒸気供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載した発明は、融雪機能付き屋根パネルに水蒸気を供給するための移動式水蒸気供給装置であって、融雪機能付き屋根パネルに水蒸気を供給するための移動式水蒸気供給装置であって、前記融雪機能付き屋根パネルの往き配管と前記移動式水蒸気供給装置を連結させるための往き配管連結部と、前記融雪機能付き屋根パネルの戻り配管と前記移動式水蒸気供給装置を連結させるための戻り配管連結部と、簡易蒸気ボイラーであって、ボイラー燃焼部と、軟水を貯水したドレン回収タンクと、蒸気発生装置とからなり、前記蒸気発生装置を、前記ドレン回収タンクと前記ボイラー燃焼部の上に積み重ねること無く、しかも、前記ドレン回収タンクと前記ボイラー燃焼部から遮熱板を介在させて分離して、前記ボイラー燃焼部と同じ高さに設置することで低重心である蒸気ボイラーと、さらに、前記往き配管連結部と、前記戻り配管連結部と、前記蒸気ボイラーを移動させるための移動手段を備えた移動式水蒸気供給装置であることを特徴とするものである。尚、本明細書において、往き配管連結部とは、図3に記載したように、移動式水蒸気供給装置から各家庭の屋根パネルに、水蒸気を供給するための配管のことを言い、戻り配管連結部とは、各家庭の屋根パネルから、水蒸気を含んだ水を移動式水蒸気供給装置に戻すための配管のことを言う。また、労働安全衛生法においては、ボイラーの規模等(伝熱面積、圧力など)の違いにより、蒸気ボイラー、小型蒸気ボイラーに区別されており、小型蒸気ボイラーよりも、さらに規模が小さいボイラーを簡易蒸気ボイラーとしている。
【0009】
本願請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記移動手段は、小型トラックである移動式水蒸気供給装置であることを特徴とするものである。尚、本明細書において、小型トラックとは、車両総重量が5トン未満、かつ最大積載量が3トン未満の貨物自動車のことを言う。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る移動式水蒸気供給装置によれば、水蒸気供給装置(往き配管連結部と、戻り配管連結部と、蒸気ボイラー)を収納し、さらに、水蒸気供給装置を移動するための移動手段を備えていることにより、操作が煩雑で(しかも高価な)蒸気ボイラー等を、各家庭で所有する必要が無く、雪下ろし作業が必要な時に、雪下ろし専用業者等が、各家庭に出向いて雪下ろし作業をすることができるようになった。さらに、蒸気ボイラー自体が低重心であるため、移動する際にも安定性があって都合が良い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】移動式水蒸気供給装置の全体図である。
図2】移動式水蒸気供給装置の仕組みを説明するための図である。
図3】移動式水蒸気供給装置の使用方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<移動式水蒸気供給装置の構造>
以下、本発明に係る移動式水蒸気供給装置10について、図1図3を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明に係る移動式水蒸気供給装置10の全体図である。本発明に係る移動式水蒸気供給装置10は、往き配管連結部20と、戻り配管連結部30と、蒸気ボイラー40を備えた水蒸気供給装置を備えており、水蒸気供給装置を纏めて移動させるための移動手段50(小型トラック90)備えている。さらに、蒸気ボイラー40は、ボイラー燃焼部60と、ドレン回収タンク70と、蒸気発生装置80とからなり、図1に記載したように、ボイラー燃焼部60とドレン回収タンク70から、蒸気発生装置80を分離させて、積み重ねることなく低位置に設置している。
【0014】
往き配管連結部20は、移動式水蒸気供給装置10の蒸気発生装置80から、図3に記載したように、融雪機能付き屋根パネルに水蒸気を供給するために、融雪機能付き屋根パネルの往き配管と、蒸気ボイラー40の蒸気発生装置80を連結させるための部材(いわゆる配管)である。また、戻り配管連結部30は、図3に記載したように、融雪機能付き屋根パネルの戻り配管から移動式水蒸気供給装置10に戻ってくる水蒸気(一部は水)を蒸気ボイラー40のドレン回収タンク70に戻すために、融雪機能付き屋根パネルの戻り配管とドレン回収タンク70を連結させるための部材(いわゆる配管)である。
【0015】
図2は、移動式水蒸気供給装置10の仕組みを説明するための図である。ドレン回収タンク70には、予め、ボイラー燃焼部60に供給された後、加熱加圧され水蒸気に変わる軟水が充填されている。融雪作業中に、ドレン回収タンク70内の軟水が不足した場合には、軟水予備タンクから軟水を補充できるようになっている。ボイラー燃焼部60にて、ドレン回収タンク70内から供給された軟水を、軟水加圧ポンプにて加圧させつつ、プロパンガスを燃焼させることによって加熱し、高圧水蒸気に変える。発生した高圧水蒸気は、ボイラー燃焼部60から蒸気発生装置80に送られ、減圧弁にて圧力を自動調整されつつ、往き配管連結部20を経由して、融雪機能付き屋根パネルに供給される。そして、融雪機能付き屋根パネルの戻り配管から、戻り配管連結部30を経由して、移動式水蒸気供給装置10に戻ってくる水蒸気(一部は水となる)は蒸気ボイラー40のドレン回収タンク70に戻ってくる。
【0016】
<移動式水蒸気供給装置の使用方法>
図3は、本発明に係る移動式水蒸気供給装置10の使用状態の説明図である。図3に記載したように、本発明に係る移動式水蒸気供給装置10は、水蒸気供給装置(往き配管連結部20と、戻り配管連結部30と、蒸気ボイラー40を備えている)を、小型トラック90や、軽貨物自動車(いわゆる軽トラック)の荷台等に乗せ、各家庭を移動して、雪下ろし作業をする。
【0017】
本発明に係る移動式水蒸気供給装置10は、水蒸気供給装置を小型トラック90や、軽貨物自動車(いわゆる軽トラック)の荷台等に乗せ、各家庭を移動して、雪下ろし作業をするものである。融雪時には、まず、ドレン回収タンク70に貯水してある軟水を、蒸気ボイラー40(ドレン回収タンク70からボイラー燃焼部60に供給される)にて加熱加圧し、水蒸気に変える。次に、移動式水蒸気供給装置10から、蒸気ボイラー40の蒸気発生装置80より発生した水蒸気を、往き配管連結部20を通して、融雪機能付き屋根パネルへ送り、戻り配管連結部30を経由して、移動式水蒸気供給装置10に戻す。即ち、再液化された水蒸気を、再び蒸気ボイラー40(ドレン回収タンク70)へ送る。これらの一連のサイクルを繰り返す事により、屋根上の雪を融雪する。
【0018】
<移動することができる簡易蒸気ボイラー>
一般的な定義では、ボイラーとは、密閉した容器内に水又は熱媒(特殊な油など)を入れ、これを火気、燃焼ガスその他の高温ガス(廃ガス、高炉ガス等)又は電気によって加熱し、圧力のある「蒸気」又は「温水」を作り、これを他に供給する装置のことである。本発明に係る移動式水蒸気供給装置10に使用するための蒸気ボイラー40として必要な特性として、移動させることを考慮して、コンパクトな設計であるとともに、低重心であることが必要である。さらに、取扱が容易である必要がある。本発明に係る移動式水蒸気供給装置10に使用する蒸気ボイラー40は、蒸気発生装置80をボイラー燃焼部60から分離させているため、低重心化を図ることが可能であり、かつ、法的には簡易ボイラーに該当しており、基準監督署への設置届、及び法的な定期性能検査の実施の必要はない。
【0019】
<移動式水蒸気供給装置の効果>
本発明に係る移動式水蒸気供給装置10によれば、水蒸気供給装置(往き配管連結部20と、戻り配管連結部30と、蒸気ボイラー40)を収納し、さらに、水蒸気供給装置を移動するための移動手段50を備えていることにより、操作が煩雑で(しかも高価な)蒸気ボイラー40を、各家庭で所有する必要が無く、雪下ろし作業が必要な時に、雪下ろし専用業者等が各家庭に出向いて雪下ろし作業をすることができるようになった。さらに、蒸気ボイラー40自体が低重心であるため、移動式水蒸気供給装置10を使用して、各家庭を巡回して融雪するために移動する際にも安定性があって良好である。
【0020】
<移動式水蒸気供給装置の変更例>
本発明に係る移動式水蒸気供給装置10の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、往き配管連結部20、戻り配管連結部30、蒸気ボイラー40、移動手段50、ボイラー燃焼部60、ドレン回収タンク70、蒸気発生装置80、小型トラック90等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明に係る移動式水蒸気供給装置、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、積雪地域において使用する融雪屋根パネルに関する分野で好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0022】
10・・移動式水蒸気供給装置
20・・往き配管連結部
30・・戻り配管連結部
40・・蒸気ボイラー
50・・移動手段
60・・ボイラー燃焼部
70・・ドレン回収タンク
80・・蒸気発生装置
90・・小型トラック
【要約】      (修正有)
【課題】操作が煩雑で(しかも高価な)蒸気ボイラーを、各家庭で所有する必要が無く、雪下ろし作業が必要な時に、雪下ろし業者等が各家庭に出向いて雪下ろし作業をすることができる移動式水蒸気供給装置を提供する。
【解決手段】融雪機能付き屋根パネルに水蒸気を供給するための移動式水蒸気供給装置10であって、往き配管連結部20と、戻り配管連結部30と、蒸気ボイラーと、を備えた水蒸気供給装置を収納し、さらに、水蒸気供給装置を移動するための移動手段50を備えた移動式水蒸気供給装置10とした。
【選択図】図1
図1
図2
図3