【実施例】
【0017】
(実施例1)
上記化粧パネルにかかる実施例について、
図1〜
図6を参照して説明する。
図1〜
図3に示すごとく、化粧パネル1は、固定構造部3側に配される取付面21と、取付面21と反対に配される意匠面22と、取付面21と意匠面22とを繋ぐ側面24とを有すると共に、多孔質材料よりなる芯材パネル2と、芯材パネル2を覆うように貼り付けられた樹脂シート27とを有している。樹脂シート27は、少なくとも芯材パネル2の意匠面22の全面を覆うように貼り付けられている。芯材パネル2における少なくとも樹脂シート27が張り付けられる範囲には、疎水性及び親油性を備える撥水層25が形成されている。
【0018】
以下、さらに詳細に説明する。
図5に示すごとく、本例の化粧パネル1は、建物の外構における入口近傍に配される門柱として用いられる外構用支柱100を構成するものである。本例に示す
図1〜
図6において、化粧パネル1及び外構用支柱100における各部の寸法は、実物と異なる寸法によって描かれている。
図1に示すごとく、外構用支柱100は、4つの化粧パネル1と、4つの化粧パネル1が取り付けられる固定構造部3とを備えている。
【0019】
図1及び
図5に示すごとく、固定構造部3は、上下方向に延びるように形成された略四角筒状をなしており、内部にはインターホン33の電気配線331などが配置される空洞31が形成されている。固定構造部3は、例えば、ポリ塩化ビニルを可塑剤とし炭酸カルシウムと、鋼材からなる補強部材とを組み合わせて形成することができる。
固定構造部3の前方面には、貫通孔32が形成されており、貫通孔32の内側には、インターホン33のスイッチボックス(図示略)が固定されている。
【0020】
固定構造部3には、挿入ジョイナー34及び接着ジョイナー35が配されている。挿入ジョイナー34及び接着ジョイナー35は、アルミニウム合金によって形成されており、挿入ジョイナー34は固定構造部3の前方面における側方の両端にそれぞれ1つずつ配されている。また、接着ジョイナー35は、固定構造部3の後方面における側方の両端にそれぞれ配されている。
【0021】
挿入ジョイナー34及び接着ジョイナー35には、軸方向から見たとき、同一方向に向かって形成された一対の板状部材342、352からなる保持用溝341、351が形成されている。
挿入ジョイナー34における保持用溝341の幅は、前方化粧パネル202に配されたパネル側ジョイナー28における前後方向の厚さと対応しており、保持用溝341にパネル側ジョイナー28を挿入可能に構成されている。前方化粧パネル202は、挿入ジョイナー34によって、固定構造部3へと着脱可能に保持される。
【0022】
接着ジョイナー35における保持用溝351の幅は、後方化粧パネル201における前後方向の厚さと対応しており、保持用溝351に後方化粧パネル201を配置可能に構成されている。後方化粧パネル201は、保持用溝351内に配置された状態で、固定構造部3へと接着される。
側方化粧パネル203は、固定構造部3の側面へと直接接着固定されている。
【0023】
図1〜
図3に示すごとく、固定構造部3を覆うように配された4つの化粧パネル1としては、固定構造部3の前方面に配される前方化粧パネル202と、後方面に配される後方化粧パネル201と、側方面にそれぞれ配される側方化粧パネル203がある。
各化粧パネル1は、芯材パネル2と、芯材パネル2を覆うように配された樹脂シート27とを有している。
【0024】
芯材パネル2は、珪酸カルシウムを主成分とした材料を板状に形成してなる。
図2及び
図3に示すごとく、各芯材パネル2は、固定構造部3側に配置された取付面21と、取付面21と反対側に形成された意匠面22と、意匠面22と取付面21とを繋ぐ側面24とを備えている。
【0025】
図1、
図3及び
図5に示すごとく、側方化粧パネル203に用いられる芯材パネル2の外形形状は、固定構造部3を側方から見た際の外形形状と対応して形成されている。
また、前方化粧パネル202及び後方化粧パネル201の外形形状は、固定構造部3に側方化粧パネル203を配した際の前方又は後方から見た外形形状と対応して形成されている。
本例において、後方化粧パネル201及び側方化粧パネル203における意匠面22は、平坦な平面によって形成されている。
【0026】
図1、
図2及び
図6に示すごとく、前方化粧パネル202に用いられる芯材パネル2は、意匠面22に凹凸形状を形成した凹凸意匠面221を有している。本例においては、意匠面22の全面に凹凸形状を形成してあるが、凹凸意匠面221の端部の挿入ジョイナー34が配設される部位は、凹凸形状を形成せず平面によって構成してもよい。また、前方化粧パネル202に用いられる芯材パネル2には、意匠面22の法線方向に貫通した四角形状の板側貫通孔23が形成されている。
【0027】
図2〜
図4に示すごとく、側方化粧パネル203及び後方化粧パネル201には、その外周面の全面に撥水層25が形成されている。また、前方化粧パネル202には、意匠面22の全面、板側貫通孔23の内周全面に撥水層25が形成されている。
撥水層25は、粒子状のシリコーン樹脂を有機溶剤中に混合したシリコーン系撥水剤を各芯材パネル2の表面26に塗布して形成されている。このシリコーン系撥水剤は、芯材パネル2を形成する多孔性材料の気孔を通じて、芯材パネル2内部に浸透し、芯材パネル2の表面26から厚さtの範囲に撥水層25を形成している。
【0028】
図2に示すごとく、前方化粧パネル202に用いられる芯材パネル2には、撥水層25が形成された意匠面22の全面、板側貫通孔23の内周全面を覆うように1枚の樹脂シート27が貼り付けられている。
また、
図3に示すごとく、後方化粧パネル201及び側方化粧パネル203に用いられる芯材パネル2には、意匠面22の全面、側面24の全面及び取付面21の外周縁部近傍を覆うように1枚の樹脂シート27が貼り付けられている。
【0029】
芯材パネル2に貼り付けられた樹脂シート27は、塩化ビニル系樹脂からなり、表面にはデザインを施してある。尚、樹脂シート27は、単色、複数色、木目調、メタリック調等、種々のデザインのものを用いることができる。また、皮膜シートの表面にフッ素樹脂皮膜や、アクリル樹脂皮膜を形成しても良い。また、樹脂シート27の裏面には、アクリル系材料からなり、疎水性及び親油性を有する接着層が形成されている。このように、接着層が疎水性及び親油性を備えることにより、樹脂シート27と芯材パネル2との間の接着性能を維持しながら、水分の浸入をより効果的に抑制することができる。
【0030】
本例においては、図示しない真空成型機を用いて芯材パネル2への樹脂シート27の貼付けを行った。まず、上記真空成型機が有するチャンバーボックス内に配されたテーブル上に芯材パネル2を配置する。このとき、芯材パネル2は、その外周端部を浮かせた状態で配置する。上記チャンバーボックス内において、芯材パネル2の上方に樹脂シート27を配すると共に、樹脂シート27によりチャンバーボックス内の空間を上下に2分割し、上下の空間をそれぞれ密封状態とする。
【0031】
樹脂シート27をヒータにより加熱し、引き延ばしやすくした後、芯材パネル2を配した下方の空間を真空とすることにより、樹脂シート27が芯材パネル2に密着し貼り付けられる。このとき、芯材パネル2の角部及び凹凸形状においても、形状に沿うように樹脂シート27が引き延ばされながら貼付けが行われるため、しわ等が生じない。また、芯材パネル2の端部を浮かせた状態で配置することにより、芯材パネル2の取付面21まで、樹脂シート27を貼付けすることができる。
【0032】
図1に示すごとく、前方化粧パネル202における側方両端には、パネル側ジョイナー28が配されている。パネル側ジョイナー28は、アルミニウム合金によって形成されており、前方化粧パネル202の側面24に当接する側方部と、側面24の前後端から前方化粧パネル202の意匠面22及び取付面21とそれぞれ対向して配される前後壁部とを有している。
【0033】
パネル側ジョイナー28は、前方化粧パネル202における一対の端辺部の全長にわたって配置されている。パネル側ジョイナー28を前方化粧パネル202に配し、前後壁部によって意匠面22を押さえることにより、意匠面22に貼り付けられた樹脂シート27の剥がれを防止することができる。尚、前方化粧パネル202とパネル側ジョイナー28とは、接着材によって互いに固定されている。
【0034】
本例においては、前方化粧パネル202の意匠面22のみに樹脂シート27を貼り付けてあるが、側面24及び裏面側まで貼り付けてあってもよい。また、板側貫通孔23の内周面全面に樹脂シート27を貼り付けてあるが、これに限るものではなく、樹脂シート27は、板側貫通孔23における内周面の一部を覆うように貼り付けてもよいし、裏面側まで達していてもよい。尚、いずれの場合にも、芯材パネル2における少なくとも樹脂シート27が張り付けられる範囲には撥水層25が形成される。
【0035】
次に、本例の作用効果について説明する。
化粧パネル1においては、撥水層25を備えることにより、樹脂シート27の浮きや剥がれの発生を抑制することができる。
すなわち、撥水層25は、疎水性を有しているため、撥水層25の表面と、この表面に付着した水分との間における界面張力が大きい。これにより、撥水層25の表面に付着した水分の接触角が大きくなり、樹脂シート27と撥水層25との間に浸入しにくい。それゆえ、水分が浸入することで生じる樹脂シート27の浮きや剥がれが生じにくい。
【0036】
また、芯材パネル2は、多孔質材料からなるため、撥水層25が形成されていない部分において吸水し、芯材パネル2の内部の水分が樹脂シート27の裏面に到達することが考えられる。しかし、撥水層25を形成することにより、芯材パネル2の内部から、樹脂シート27と芯材パネルとの間に水分が浸入するのを効果的に抑制することができる。
【0037】
また、撥水層25は、疎水性に加えて親油性を備えている。そのため、撥水層25においては、樹脂シート27の浮きや剥がれの問題となる水分の浸入を抑制しながら、樹脂シート27を芯材パネル2に貼り付けるために必要な接着性能を確保することができる。
【0038】
このように、撥水層25を形成することにより、樹脂シート27における浮きや剥がれを効果的に抑制することが可能となる。これにより、芯材パネル2を、安価であるものの、吸水性が高く表面性状が比較的粗い多孔質材料によって形成することができる。
【0039】
また、撥水層25は、芯材パネル2を形成する多孔質材料の表面から内側に浸透して形成されている。そのため、芯材パネル2の内部からの水分の浸入をより効果的に抑制することができる。また、撥水層25を厚く形成することにより、芯材パネル2を樹脂シート27によって被覆する前の段階において、擦過などによる撥水層25の剥離を抑制することができる。
【0040】
また、撥水層25は、シリコーン樹脂の基材を主成分とするシリコーン系撥水剤を芯材パネル2に塗布して形成されている。そのため、撥水層25を容易かつ確実に形成することができる。
【0041】
また、樹脂シート27は、1枚のものを引き延ばして貼り付けられていることが好ましい。この場合には、樹脂シート27に折り目を形成することなく、芯材パネル2に貼り付けることができる。また、樹脂シート27が引き延ばされた状態で芯材パネル2の気泡を覆うことにより、平滑で美しい表面性状を得ることができる。
【0042】
また、芯材パネル2の意匠面22は、凹凸形状を呈した凹凸意匠面221である。そのため、意匠面22におけるデザインの自由度を向上することができる。したがって、化粧パネル1の意匠性を向上することができる。
【0043】
以上のごとく、本例の化粧パネル1によれば、安価でかつ樹脂シート27の浮きや剥がれを効果的に抑制することができる。
【0044】
(浸漬試験)
本試験は、被水時における樹脂シートの剥がれにくさを確認するための浸漬試験である。
浸漬試験においては、確認例1〜3と比較例1、2とを比較した。
確認例1〜3及び比較例1、2の芯材パネル2は、多孔質材料としてのケイ酸カルシウムからなり、厚さ8mmで、かつ100mm×100mmの正方形の平板状をなしている。
また、樹脂シート27は、塩化ビニル系樹脂からなり、片面にはアクリル系材料からなる接着層が形成されている。樹脂シート27は、芯材パネル2における、正方形をなす2面のうちの1面に設定された貼付け面上に貼り付けられる。
【0045】
確認例1〜3及び比較例1、2の芯材パネル2における樹脂シート27を貼り付ける貼付面には、撥水層25又は撥水撥油層が形成されている。
確認例1〜3における撥水層25は、シリコーン系撥水剤A、B、Cを塗布して形成されている。確認例1の撥水層25は、シラン(水素化ケイ素)を含有するシリコーン系撥水剤Aからなる。また、確認例2の撥水層25は、シリコーンを含有するシリコーン系撥水剤Bからなる。また、確認例3の撥水層25は、アクリル及びシランを含有するシリコーン系撥水剤Cからなる。尚、シランは、塗布時に水分と結合することによりシリコーンとなる。撥水層25は、貼付面の表面から、厚さ方向において約1.0mmの範囲まで浸透して形成されており、疎水性及び親油性を備えている。
【0046】
比較例1における撥水撥油層は、溶剤系のフッ素系撥水剤Dを塗布して形成されている。また、比較例2における撥水撥油層は、水性系のフッ素系撥水剤Eを塗布して形成されている。撥水撥油層は、貼付面の表面において浸透することなく数十μm以下の厚さで形成されており、疎水性及び疎油性を備えている。
【0047】
各芯材パネル2に撥水層25または撥水撥油層を形成し、十分に乾燥させた後、樹脂シート27を貼り付ける。尚、貼付け時には1kg/cm
2で1分間加圧した。
尚、確認例1〜3及び比較例1、2において、上述以外の構造は、実施例1と同様である。
【0048】
上述のごとく形成された確認例1〜3及び比較例1、2の化粧パネルを水中に浸漬させ、樹脂シート27の状態を確認した。
浸積試験の結果、確認例1〜3は、30日間経過後も樹脂シート27の浮き及び剥がれは発生しなかった。また、比較例1においては、7日経過後に樹脂シート27の浮きが発生した。また、比較例2においては、1日経過後に樹脂シート27の浮きが発生した。
これにより、疎水性及び親油性を有する撥水層25を形成することにより、水分の浸入を効果的に抑制し、樹脂シート27の浮き及び剥がれを防止できることが確認された。
【0049】
(接着性試験)
本試験は、撥水層を形成することによる樹脂シートの接着性能への影響を確認するための接着性試験である。
接着性試験においては、確認例1〜3と比較例1、2との2種類の化粧パネル1の試験片を比較した。尚、各化粧パネルにおける芯材パネル2、樹脂シート27及び撥水層25、撥水撥油層を形成する材料は、浸漬試験と同様である。
【0050】
確認例1〜3及び比較例1、2の芯材パネル2は、厚さ8mmで、かつ100mm×100mmの長方形の板状をなしている。
樹脂シート27は、芯材パネル2における厚さ方向に形成された2面のうちの1面に設定された貼付面上に貼り付けられる。
その他の構成は、浸漬試験に用いた確認例1〜3及び比較例1、2と同様である。
【0051】
貼付面上に貼り付けられた樹脂シート27は、貼付面上における芯材パネル2の一辺と直交する方向における幅寸法が25mmとなるように切り込みを形成し、この部位の外側の樹脂シート27は除去する。そして、芯材パネル2上に残った樹脂シート27における長手方向の一端側から80mmまでの間の樹脂シート27を剥がすと共に、剥がした部分の樹脂シート27を長手方向の他端側へと折り返す。そして、樹脂シート27の剥がした側の端部を他端側へと100mm/分の速度で引っ張り、このときの引っ張り荷重を計測する。計測は5回行い、その平均値にて比較した。尚、樹脂シート27の接着力として、必要とされる引っ張り荷重は、幅25mmあたり10Nである。
【0052】
接着性試験の結果、確認例1〜3における引っ張り荷重の平均値は、それぞれ、14.18N、11.06N、19.28Nであった。また、比較例1、2における引っ張り荷重の平均値は、それぞれ、6.47N、9.24Nであった。これにより、確認例1〜3においては、必要とされる接着性能を備えていることが確認された。
【0053】
このように、確認例1〜3は、浸漬試験及び接着性試験のいずれにおいても、比較例1、2に比べて良好な結果となった。したがって、化粧パネル2の表面に疎水性及び親油性を備えた撥水層25を形成することにより、樹脂シート27が必要とする接着性能を維持しながら、樹脂シート27の浮き及び剥がれを効果的に抑制できることが確認された。