特許第5731711号(P5731711)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731711
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】レーザ熱転写法用ドナーフィルム
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/382 20060101AFI20150521BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20150521BHJP
   B41M 5/46 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   B41M5/26 F
   B41M5/26 Q
【請求項の数】18
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-514821(P2014-514821)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-516840(P2014-516840A)
(43)【公表日】2014年7月17日
(86)【国際出願番号】KR2012004685
(87)【国際公開番号】WO2012173397
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2013年12月6日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0057721
(32)【優先日】2011年6月15日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2011-0140060
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2012-0063381
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】314003797
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】キム チョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ベク サン−ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】キム シ ミン
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−033780(JP,A)
【文献】 特開2003−077653(JP,A)
【文献】 特表2003−508282(JP,A)
【文献】 特表2009−512143(JP,A)
【文献】 特開2005−079087(JP,A)
【文献】 特開2002−248874(JP,A)
【文献】 特開2000−108526(JP,A)
【文献】 特開2005−103893(JP,A)
【文献】 特開2013−140800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/26 − 5/52
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、プライマー層と、光−熱変換層と、中間層と、転写層と、を含み、
前記光−熱変換層は、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物および光−熱変換物質を含有し、
前記中間層は、UV硬化性樹脂を含有し、表面エネルギーが35mN/m以下であり、
前記光−熱変換層は、乾燥後の塗工量が1〜3.5g/mであり、前記光−熱変換物質の含量が20〜40重量%であり、表面粗さ(Ra)が20nm以下であり、
前記光−熱変換層及び前記中間層は、硬化されたものである、熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項2】
前記中間層の表面エネルギーは18mN/m〜35mN/mである、請求項1に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項3】
前記中間層の表面エネルギーは18mN/m〜25mN/mである、請求項2に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項4】
前記光−熱変換層において、熱硬化性樹脂はポリウレタン系樹脂であり、光−熱変換物質はカーボンブラックである、請求項1に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項5】
前記ポリウレタン系樹脂は、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタンから選択される、請求項に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項6】
前記光−熱変換物質は、ポリビニルクロライド、ポリビニルクロライドポリビニルアセテート共重合体、熱硬化性ポリウレタンから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の樹脂および溶剤に分散したものを使用する、請求項1に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項7】
前記光−熱変換層は、全樹脂組成物に対して50重量%未満の熱可塑性樹脂をさらに含有する、請求項1に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項8】
前記中間層は、厚さが1.0〜3.5μmである、請求項1に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項9】
前記中間層においてUV硬化性樹脂は、フッ素置換されたUV硬化性樹脂である、請求項1に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項10】
前記中間層は、シリコン系樹脂またはフッ素系樹脂をさらに含有する、請求項1に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項11】
前記中間層は、JIS K5400に準じて測定された鉛筆硬度がH以下である、請求項1に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項12】
基材フィルムと、プライマー層と、光−熱変換層と、中間層と、転写層と、を含む熱転写法用ドナーフィルムであって、
前記光−熱変換層は、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物および光−熱変換物質を含有し、
前記中間層は、JIS K5400に準じて測定された鉛筆硬度がH以下であり、
前記光−熱変換層は、乾燥後の塗工量が1〜3.5g/mであり、前記光−熱変換物質の含量が20〜40重量%であり、表面粗さ(Ra)が20nm以下であり、
前記光−熱変換層及び前記中間層は、硬化されたものである、熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項13】
前記中間層は、UV硬化性樹脂組成物をコーティングして硬化させたものである、請求項12に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項14】
前記中間層は、表面エネルギーが35mN/m以下である、請求項12に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項15】
前記UV硬化性樹脂組成物は、
ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、シリコンアクリレートから選択されるいずれか一つ以上のUV硬化性樹脂と、
開始剤と、を含有する、請求項13に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項16】
前記UV硬化性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂、アクリレート系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタンアクリレート共重合体から選択されるいずれか一つ以上の熱可塑性樹脂をさらに含有する、請求項15に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項17】
前記UV硬化性樹脂組成物は、フッ素系添加剤またはシリコン系添加剤をさらに含有する、請求項15に記載の熱転写法用ドナーフィルム。
【請求項18】
基材フィルムと、プライマー層と、光−熱変換層と、中間層と、転写層と、を含み、
前記光−熱変換層は、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物および光−熱変換物質を含有し、
前記中間層は、UV硬化性樹脂を含有し、表面エネルギーが35mN/m以下であり、JIS K5400に準じて測定された鉛筆硬度がH以下であり、
前記光−熱変換層は、乾燥後の塗工量が1〜3.5g/mであり、前記光−熱変換物質の含量が20〜40重量%であり、表面粗さ(Ra)が20nm以下であり、
前記光−熱変換層及び前記中間層は、硬化されたものである、熱転写法用ドナーフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写用ドナーフィルムに関し、レーザ熱転写法(Light Induced Thermal Imaging)またはこれと類似の工程に使用するための熱転写イメージ形成要素を有する熱転写用ドナーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ装置は、少ないエネルギーで優れた視認性を有する技術を開発する方向へ発展している。そのため、既存の発光方式に比べてエネルギー消費が少ないと知られている有機発光表示装置(OLED)を用いるディスプレイ装置の開発が競争的に行われている。
【0003】
このようなOLEDを用いるディスプレイ装置のフルカラー(full color)を実現するためには、発光素子にカラーをパターニング(Patterning)する方法が非常に重要であり、結果的には、発光素子の色を決定する有機発光表示装置の有機膜層を形成する方法に応じて実現効果の差が生じる。OLEDに有機膜層を形成する方法としては、蒸着法、インクジェット法、レーザ熱転写法(LITI)などが挙げられる。このうち、通常、LITIと称されるレーザ熱転写法は、レーザからの光を熱エネルギーに変換し、変換した熱エネルギーによって転写層をOLEDの基板に転写することで、OLEDに有機膜層を形成する方法である。このような転写方法については、韓国登録特許公報10−0700828号などに開示されている。LITI法は、高解像度のパターン形成、フィルム厚さの均一性、多重層の実現能力、大型マザーガラスへの拡張性などの利点を有している。
【0004】
このようなLITI法において、光を熱エネルギーに変換して発光素子の基板にパターンを形成する決定的な媒介体は、赤色画素領域(R)、緑色画素領域(G)、青色画素領域(B)を有する転写層を含むLITIドナーフィルムである。LITIドナーフィルムは、基材層(Base film)、光−熱変換層(Light−to−Heat conversional layer)、転写層(Pattern−directing layer)が順に積層された構造を有する。このようなLITIドナーフィルムは、光−熱変換層に含有された物質が転写層に転移することを防止するために、光−熱変換層と転写層との間に遮断層(Interlayer)を選択的に含む。
【0005】
LITI工程では、LITIドナーフィルムにレーザを照射すると、光−熱変換層でレーザの光エネルギーが熱エネルギーに変換し、熱エネルギーによって光−熱変換層および遮断層の体積膨張が発生し、体積膨張によって転写層がOLED基板に転写する過程が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国登録特許第10−0700828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、転写パターンをより好ましく実現するために、光−熱変換層の体積膨張が均一に行われるようにすることで、転写層から転写される表面が滑らかで均一に形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、LITI法で転写層を転写する際に、転写層から転写される表面が滑らかで均一に形成されるようにすることを目的とする。
【0008】
また、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、中間層の鉛筆硬度を最適化することで、アクセプタが三次元形状を有する場合、折れ曲がった部分にも転写層が均一に形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、形状追従性に優れた中間層を形成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明は、基材フィルムと、プライマー層と、光−熱変換層と、中間層と、転写層と、からなるレーザ熱転写法用ドナーフィルムに関し、前記光−熱変換層および中間層の組成および厚さに特徴がある。
【0010】
特に、本発明者らは、前記光−熱変換層においてUV硬化性樹脂を使用する場合、過度の硬化によって発泡が生じないか、発泡によって、転写後に転写された転写面にエッジオープン(edge open)現象、すなわち、図1に示されたように、転写層が転写される際に折れ曲がったか角を有する角部に転写が施されない現象が生じる問題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、UV硬化性樹脂の代わりに熱硬化性樹脂を用いることでエッジオープン現象が改善することを見出した。図1は、転写後、転写された転写面におけるエッジオープン(edge open)現象を示す断面図であり、アクセプタ200、転写層300およびエッジオープン100を示している。
【0011】
しかし、熱硬化性樹脂を用いて光−熱変換層を形成する場合、光−熱変換物質が均一に分布されず部分的に凝集した場合、レーザ照射の際に凝集した部分で過度の熱が発生して燃焼が起こるか、中間層のコーティング後に変換層の表面形状がそのまま中間層に示されるテレグラフィック現象が生じる。
【0012】
また、光−熱変換層に画素を形成する層をコーティングしてから転写させると、転写された転写層の表面が滑らかにならない問題が発生するため、これを改善するために研究を行った。結果、光−熱変換層の乾燥後、塗工量を1〜3.5g/mに調節し、中間層の厚さを1.0〜3.5μmに調節した範囲で、前記光−熱変換層に用いられた光−熱変換物質の含量を20〜40重量%に調節することで、このような問題を解決できることを見出した
【0013】
また、光−熱変換物質が凝集によって部分的に過度の熱を発生することを防止するために、一次にニーディング若しくはミキシング、二次にミリング、三次にフィルタリング工程を行うことで凝集の問題を解決できることを確認した。また、ミリング効果を極大化するために、酸化処理されたカーボンブラックを使用するかアルミニウム系分散剤などの添加剤を活用することができる。カーボンブラックの凝集問題を解決することで転写層の表面が著しく滑らかになり、エッジオープン現象が生じず、転写が非常に良好に行われることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
転写された転写層の表面が滑らかであることと、エッジオープン現象が生じないことが、解像度の高いディスプレイを形成するために非常に重要であり、本発明では、前記のように、光−熱変換層の乾燥後に塗工量を1〜3.5g/mに調節し、中間層の厚さを1.0〜3.5μmに調節した範囲で、前記光−熱変換層に用いられた表面が改質された光−熱変換物質の含量を20〜40重量%に調節する場合、前記光−熱変換層の表面エネルギーが35mN/m以下となり、表面粗さが20nm以下に形成されることが分かった。前記光−熱変換層の表面粗さが前記範囲を満たす範囲で転写された転写層の表面は滑らかで均一に形成される。
【0015】
また、前記目的を達成するための本発明は、基材フィルムと、プライマー層と、光−熱変換層と、中間層と、転写層と、からなるレーザ熱転写法用ドナーフィルムに関し、前記中間層の硬度に特徴がある。
【0016】
特に、本発明者らは、中間層の硬度が高い場合、形状追従性が低下して折れ曲がったアクセプタの部分に転写が施されないエッジオープン現象が生じるか、転写が施されても折れ曲がった部分に沿って転写が均一に施されない現象が生じて、ディスプレイの解像度が低下する問題点があることを見出した。
【0017】
このような問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、中間層の表面硬度が大きい影響を及ぼすことを確認した。そのため、中間層の鉛筆硬度がHを超える場合には形状追従性が低下してエッジオープン現象が生じやすく、エッジオープンが発生しなくても折れ曲がったアクセプタの折り曲げ面を均一に満たすことができず、最終的にディスプレイの解像度が低下する問題が発生することを見出した。したがって、前記問題を解決するためには、中間層の鉛筆硬度がH以下であることが好ましく、鉛筆硬度がHB以下であることがより好ましい。
【0018】
具体的に、本発明の第1様態は、基材フィルムと、プライマー層と、光−熱変換層と、中間層と、転写層と、を含み、前記光−熱変換層は、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物および光−熱変換物質を含有し、前記中間層は、UV硬化性樹脂、およびシリコン系樹脂またはフッ素系樹脂を含有し、表面エネルギーが35mN/m以下である熱転写法用ドナーフィルムに関する。
【0019】
本発明の第1様態において、前記中間層の表面エネルギーは18mN/m〜35mN/mであることが好ましい。
【0020】
本発明の第1様態において、前記中間層の表面エネルギーは18mN/m〜25mN/mであることが好ましい。
【0021】
本発明の第1様態において、前記光−熱変換層の表面粗さ(Ra)は20nm以下であることが好ましい。
【0022】
本発明の第1様態において、前記光−熱変換層において、熱硬化性樹脂はポリウレタン系樹脂であり、光−熱変換物質はカーボンブラックであることができる。
【0023】
本発明の第1様態において、前記ポリウレタン系樹脂は、ポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタンから選択されることができる。
【0024】
本発明の第1様態において、前記光−熱変換物質は20〜40重量%含有されることが好ましい。
【0025】
本発明の第1様態において、前記光−熱変換物質は、ポリビニルクロライド、ポリビニルクロライドポリビニルアセテート共重合体、熱硬化性ポリウレタンから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の樹脂および溶剤に分散したものを使用することができる。
【0026】
本発明の第1様態において、前記光−熱変換層は、全樹脂組成物に対して50重量%未満の熱可塑性樹脂をさらに含有することができる。
【0027】
本発明の第1様態において、前記光−熱変換層は、乾燥後、塗工量が1〜3.5g/mであることが好ましい。
【0028】
本発明の第1様態において、前記中間層は、厚さが1.0〜3.5μmであることが好ましい。
【0029】
本発明の第2様態は、基材フィルムと、プライマー層と、光−熱変換層と、中間層と、転写層と、からなる熱転写法用ドナーフィルムであって、前記中間層は、硬度がH以下であることを特徴とする熱転写法用ドナーフィルムに関する。
【0030】
本発明の第2様態において、前記中間層は、UV硬化性樹脂組成物をコーティングして硬化させたものを使用することができる。
【0031】
本発明の第2様態において、前記UV硬化性樹脂組成物は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、シリコンアクリレートから選択されるいずれか一つ以上のUV硬化性樹脂と、開始剤と、を含有することができる。
【0032】
本発明の第2様態において、前記UV硬化性樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂、アクリレート系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタンアクリレート共重合体から選択されるいずれか一つ以上の熱可塑性樹脂をさらに含有することができる。
【0033】
本発明の第2様態において、前記UV硬化性樹脂組成物は、フッ素系添加剤またはシリコン系添加剤をさらに含有することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、光−熱変換層の表面粗さによる中間層の最適な厚さを選択することで均一な表面の中間層の形状を確保することができる。これにより、最終の転写層が転写されたときに均一な転写表面を得ることができ、結果、ディスプレイの解像度を最適化することができる。
【0035】
また、本発明によれば、形状追従性に優れたレーザ熱転写用ドナーフィルムを提供することができる。これにより、最終の転写層が転写されたときに形状追従性に優れた転写表面を得ることができ、結果、ディスプレイの鮮明度を最適化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】従来、転写面にエッジオープン(edge open)現象が生じることを説明するための断面図である。
図2】本発明のドナーフィルムの積層構造の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照して本発明の熱転写法用ドナーフィルムについて具体的に説明する。
【0038】
本発明は、図2に示されたように、下部から基材フィルム10、プライマー層20、光−熱変換層30、中間層40および転写層50が順次積層される。
【0039】
本発明の第1様態は、基材フィルム10と、プライマー層20と、光−熱変換層30と、中間層40と、転写層50と、を含み、前記光−熱変換層30は、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物および光−熱変換物質を含有し、前記中間層40は、UV硬化性樹脂、およびシリコン系樹脂またはフッ素系樹脂を含有し、表面エネルギーが35mN/m以下である熱転写法用ドナーフィルムである。
【0040】
本発明の第2様態は、基材フィルム10と、プライマー層20と、光−熱変換層30と、中間層40と、転写層50と、を含み、前記中間層は、硬度がH以下である熱転写法用ドナーフィルムである。
【0041】
以下、本発明の各層の構成についてより具体的に説明する。
【0042】
基材フィルム(base film)
本発明において、基材フィルムは、ガラス、透明フィルムまたは重合体フィルムであってもよい。重合体フィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリビニル樹脂などを使用してもよく、これに制限されない。より具体的に、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートなどを使用することが、加工性、熱安定性および透明性に優れるため好ましい。より好ましくは、LITI法の実行中に照射される光の透過性を高めるために光透過率が90%以上のものを使用することが好適である。
【0043】
前記基材フィルムの表面は、当業者にとって公知の表面処理、例えば、コロナ、プラズマなどの表面処理を施して改質し、後続工程の際に付着性および表面張力などを調節することもできる。
【0044】
また、本基材フィルムは、内部および外部に位置する凝集した粒子およびゲル成分若しくは基材の成分と異なる異種の成分からなる粒子の大きさが1μm以下であることが好ましい。大きさが1μmを超えると、レーザを用いる転写工程において粒子やゲル成分によるレーザの散乱および回折が発生して、所望の部分にレーザのエネルギーが伝達されず、転写が施されない現象が生じうる。
【0045】
前記基材フィルムの厚さは0.025〜0.15mmであることが好ましく、より好ましくは、0.05〜0.1mmであることが好適であり、これに限定されない。
【0046】
プライマー層(primer layer)
本発明において、プライマー層は、基材フィルムに隣接した層間の温度伝達を制御し、基材フィルムに隣接した層との接着性を向上させ、光−熱変換層へのイメージ形成放射線の伝達を制御するためのものであり、プライマー層を形成すると、レーザを用いる転写工程において基材と光−熱変換層が分離する現象を改善することができるため、より好ましい。このようなプライマー層に適合する素材としては、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂から選択されるいずれか一つまたはこれらの混合樹脂を使用することができる。前記プライマー層と基材フィルム、若しくはプライマー層と光−熱変換層との耐熱密着力が不良であると、レーザを用いる転写工程において基材フィルムと光−熱変換層が分離することがある。
【0047】
より具体的に、本発明において、前記プライマー層は、基材フィルムの製造の際にインラインコーティング工程によって基材フィルムの片面または両面に塗布されて形成されることができる。
【0048】
すなわち、本発明において、前記基材フィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、フィルムの延伸段階において水分散性プライマーコーティング液を塗布した後、一軸延伸または二軸延伸を行って形成されてもよい。
【0049】
前記水分散性プライマーコーティング液は、当該分野において用いられるものであれば、制限なく用いられてもよい。より好ましくは、基材フィルムであるポリエチレンテレフタレートフィルムとの屈折率差が少ない樹脂からなることが、光透過率が向上するため好ましく、例えば、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などを含む水分散性プライマーコーティング液が好ましい。
【0050】
前記プライマー層の厚さは0.01〜0.5μmであることが好ましいが、これに制限されない。
【0051】
光−熱変換層(Light−To−Heat Conversion layer;LTHC layer)
本発明の光−熱変換層は、赤外線−可視光線領域の光を吸収して前記光の一部を熱に変換させる層であり、熱硬化性樹脂を含有する樹脂組成物および光−熱変換物質を含有する。
【0052】
本発明において、前記樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の単独または熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合樹脂からなってもよい。熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂を混合して使用する場合、熱硬化性樹脂は、硬化剤を含み、全体樹脂成分に対して50重量%以上含有することが好ましい。前記熱硬化性樹脂の含量が50重量%未満である場合には、耐溶剤性が低下して中間層のコーティングの際に中間層の溶剤が光−熱変換層に浸透することがあり、また、光−熱変換物質分散工程において分散がスムーズに行われず、コーティングの際にピンホールが発生する問題が生じうる。
【0053】
前記樹脂組成物中に熱硬化性樹脂としてポリウレタン系熱硬化性樹脂を含有することが好ましく、具体的に、例えば、熱硬化性ポリウレタンは、ポリカーボネートポリウレタン、ポリエステルポリウレタン、ポリウレタンなどを含む。前記ポリウレタン樹脂は、ガラス転移温度(T)が10℃以上のものを使用することが好ましく、より具体的には、ガラス転移温度が10〜50℃のものを使用することが好ましい。ガラス転移温度が前記範囲未満の場合には、光−熱変換層のコーティング後、エージング工程においてコーティング層が反対面に一部転写される現象が生じることがあり、前記範囲を超える場合には、レーザの照射の際に体積膨張が減少して所望の形状の転写が困難になりうる。
【0054】
前記硬化剤としては、イソシアネート系硬化剤、過酸化物、エポキシ系架橋剤、金属キレート系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属塩などが挙げられる。これらの架橋剤は、1種を単独で、または2種以上を併用してもよい。また、本組成に熱可塑性樹脂を添加してもよい。
【0055】
前記熱可塑性樹脂は、固形分含量を基準に、熱硬化性樹脂と架橋剤固形分の合計より小さい量を使用する。具体的には、樹脂組成物の全含量に対して50重量%未満を使用する。前記熱可塑性樹脂としては、ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体、ポリビニルクロライドホモポリマー、ポリメチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート−ブチルアクリレート共重合体などを使用してもよく、ガラス転移温度が40℃以上のものを使用することが好ましい。ガラス転移温度が40℃未満である場合にはブロッキング現象が生じうる。
【0056】
前記光−熱変換物質は、入射されるレーザ光を吸収して熱に変換する物質を意味し、可視光線染料、紫外線染料、赤外線染料、蛍光染料および放射線偏光染料などの染料、顔料、金属、金属化合物、金属フィルム、カーボンブラック、金属酸化物、金属硫化物などを使用してもよく、本発明においてより好ましくはカーボンブラックを使用する。
【0057】
また、必要に応じて、前記カーボンブラック以外に、可視光線染料、紫外線染料、赤外線染料、蛍光染料、放射線−偏光染料などの染料、顔料、有機顔料、無機顔料、金属、金属化合物、金属フィルム、シアン化鉄顔料、フタロシアニン顔料、フタロシアニン染料、シアニン顔料、シアニン染料、金属ジチオレン顔料、金属ジチオレン染料および他の吸収材料などがさらに添加されてもよい。
【0058】
前記カーボンブラックは、平均粒径が10〜30nmであるものを使用することが、平坦な表面が得られるため好ましい。また、必要に応じて、前記カーボンブラックは、ポリビニルクロライド、ポリビニルクロライド−ポリビニルアセテート共重合体、熱硬化性ポリウレタンから選択されるいずれか一つまたは二つ以上の樹脂で一次分散を行って表面処理を施すことで、樹脂内の分散性をさらに向上させることができる。
【0059】
前記一次分散を行う方法としては、ポリビニルクロライドなどの樹脂にカーボンブラックを添加してニーディングまたはミキシングなどの方法により一次分散を行うことができる。ニーディングは、溶剤を含み、固形分含量が30〜70重量%である準備液を製造した後、ニーディング機を用いて行うことができ、固形分含量が30重量%未満である場合には、粘度が低くてカーボンの分散度が低下することがあり、固形分含量が70重量%を超える場合には、非常に過度のトルクがかかって分散が困難になる。ニーディングが行われた粗液は、分散度を最適化するために追加のミリングおよびフィルタリング工程を追加してもよい。前記ニーディングに用いられる溶剤は、用いられる樹脂の種類に応じて樹脂を溶解できる溶剤を選択して使用することが好ましく、より具体的に、例えば、トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノンを1〜5:1〜5:1〜5の重量比で混合した混合溶剤を使用してもよい。
【0060】
本発明において、前記光−熱変換物質の含量は20〜40重量%が好ましく、光−熱変換物質の含量が20重量%未満の場合には、レーザを用いる転写工程において光−熱変換層の膨張に限界があるため、所望のパターンが均一に転写されないことがあり、40重量%を超える場合には、レーザ転写工程において過量の熱が発生して光−熱変換層が燃焼し、転写が行われないことがある。
【0061】
本発明において、前記光熱変換層は、ニーディング、ミリング、フィルタリングおよびコーティング工程により形成されてもよく、ミリング、フィルタリングおよびコーティング工程により形成されてもよい。ニーディングおよびミリングは、粒子の分散を最適化するために行われ、ミリング方法は、リングミル、サンドミルなど様々な方法を活用してもよい。
【0062】
ミリングは、様々な方法を使用してもよく、例えば、リングミルを使用する場合、一次にニーディングが行われた粗液に全体液の固形分が10重量%〜20重量%になるように残余の樹脂および溶剤を添加した粗液若しくは樹脂/カーボンブラック/溶剤の混合液(固形分10重量%〜20重量%)をミリング機の主容器に注入し、リング部に0.5〜2.0mmのジルコニウム粒子を50〜80体積%充填した後、攪拌を行う。攪拌は二重に行う。一方は、主なミリング容器の内部液が循環しながらリング部の内部に投入するために行い、他方は、リング部の内部で粒子を分散するために行う。リング部に充填される粒子は、ジルコニウム以外の他のミリング用粒子を使用してもよい。必要に応じて、ミリングは多くの段階に分けて行ってもよい。一次に、2.0mmのジルコニウム粒子を充填して一次ミリングを行った後、二次に、1.5mmの粒子を充填してミリングを行い、三次に、0.5mmの粒子を充填してミリングを行うと、カーボンブラック粒子をより均一に分散することができる。
【0063】
若しくは、各大きさ別の粒子が順次充填されたミリング機を用いてミリングを順に行ってもよい。
【0064】
ミリングは、固形分含量が10重量%〜20重量%の範囲で行うことが好ましい。樹脂の組成比に応じて相違するが、10重量%未満の場合には粒子分散効率が低下し、20重量%を超える場合にはミリングされた溶液の溶液安定性が低下する問題が生じうる。
【0065】
フィルタリング工程は、粒径が2.5μm以上の大きい粒子を除去することを目的とする。コーティング工程は、バーコーティング方式、ダイコーティング方式およびロールコーティング方式を使用してもよく、必要に応じて様々なコーティング方法を適用してもよい。コーティング工程の後、別の追加の架橋が必要な場合には別のエージングにより架橋度を調節してもよい。
【0066】
前記光−熱変換層は、プライマー層を含む基材上に塗布および乾燥して製造する。本層が熱硬化性であるため、適宜加熱処理を施して架橋処理を行う必要がある。架橋処理は、乾燥工程の温度で乾燥工程と併せて行ってもよく、乾燥工程後に架橋処理工程を別に行ってもよい。
【0067】
前記光熱変換層は、乾燥塗工量が1〜3.5g/mであることが好ましい。光−熱変換層の乾燥後、塗工量が1g/m未満の場合には、転写工程において光−熱変換層が燃焼する現象が生じ、3.5g/mを超える場合には、熱伝逹が適宜に行われず、転写が満足に行われない問題が生じうる。
【0068】
また、前記光熱変換層は、表面粗さ(Ra)が20nm以下であることが好ましく、より具体的には、10〜20nmであることが好ましい。前記表面粗さが20nmを超える場合には、転写層の表面が滑らかで均一に形成されないこともある。
【0069】
中間層(interlayer)
本発明において、中間層は、光−熱変換層から発生する熱によって転写層が転写される際に、光−熱変換層の内部に存在する光−熱変換物質がともに転写されることを防止し、且つ光−熱変換層から発生した熱が転写層に伝達されて、熱によって燃焼が起こることを防止するために形成されるものである。
【0070】
本発明において、前記中間層は、UV硬化性樹脂を使用することが好ましく、形状追従性を改善するために、常温で粘着性(tack)のない熱可塑性樹脂を混合して使用してもよい。
【0071】
また、前記中間層は、転写層が分離されるようにする離型機能を同時に行わなければならず、表面エネルギーが低いフッ素系またはシリコン系樹脂を添加して、表面エネルギーが35mN/m以下、より具体的に18mN/m〜35mN/m、より好ましくは18mN/m〜25mN/mになるように調節することが好ましい。表面エネルギーが35mN/mを超える場合には、転写工程において中間層が離型機能を果たすことができず、転写層が分離されないため、転写が行われない現象が生じうる。したがって、中間層の表面エネルギーが低いほど転写層との接着力が低くなって転写工程において転写がスムーズに行われ、中間層の表面エネルギーが高いほど転写層との接着力が高くなって転写工程において転写がスムーズに行われることが困難である。離型機能を果たす際、好ましくは18mN/m〜35mN/m、より好ましくは18mN/m〜25mN/mの範囲で転写がスムーズに行われることができる。
【0072】
また、本発明において、前記中間層は、レーザを用いて所定の転写層を転写する際に優れた形状追従性を有していなければならない。このような特性を発現するために、本中間層は、鉛筆硬度がH以下であることを特徴とする。
【0073】
また、中間層は、乾燥後のコーティングの厚さが1.0〜3.5μmになることが好ましく、1.0μm未満の場合には、熱遮断効果が低下して転写層が燃焼することがあり、また、均一な表面形状が得られず、転写層が転写された表面が不均一になってディスプレイの解像度が低下しうる。3.5μmを超える場合には、熱を遮断しすぎて転写層が転写されない現象が生じうる。
【0074】
より具体的に、前記中間層の厚さは、光−熱変換層の表面粗さが増加すると平坦な表面形状を確保するために増加しなければならない。中間層の厚さは、光−熱変換層の表面粗さ(Ra)の値が10nm〜20nmの場合には2.5〜3.5μmの範囲を有し、光−熱変換層の表面粗さの値が5〜10nmの場合には2〜3.5μmの範囲を有し、光−熱変換層の表面粗さの値が5nm以下の場合には1〜3μmの範囲を有することが好ましい。
【0075】
前記中間層に使用可能なUV硬化性樹脂は、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、シリコンアクリレートなどが挙げられ、表面張力を35mN/m以下に調節するために、前記UV硬化性樹脂の骨格(backbone)にフッ素を含む置換基をグラフト(grafting)するか、添加剤として反応性または非反応性のフッ素系およびシリコン系添加剤を使用してもよい。また、前記中間層には、静電気除去のための様々な添加剤を添加してもよい。
【0076】
また、UV硬化性樹脂の硬度を下げて形状追従性を改善するために、熱可塑性樹脂を混合して使用してもよく、例えば、ポリウレタン樹脂、アクリレート系樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタンアクリレート共重合体などの樹脂を使用してもよい。前記熱可塑性樹脂は、UV硬化性樹脂との相溶性を有する必要があり、ガラス転移温度が50〜110℃の範囲であることが好ましい。前記UV硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との混合割合は、70:30〜99:1の重量比で混合して使用することが好ましい。熱可塑性樹脂の含量が30重量%を超える場合には、かえって塗膜の軟性が増加して強度が低下するため、LITI工程の際に転写層がともに転写される問題が生じうる。
【0077】
また、必要に応じて、UV硬化性樹脂の表面エネルギーを低下させるために、フッ素系添加剤またはシリコン系添加剤をさらに使用してもよい。
【0078】
前記フッ素系添加剤としては、具体的に、例えば、ビニル反応基を有するフッ素系化合物および非反応性のフッ素系添加剤などを使用してもよい。前記シリコン系添加剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン共重合体、ジメチルポリシロキサン系および変性ジメチルポリシロキサン系、メチルアルキルシロキサン系および反応性を有するシリコンアクリレート添加剤などを使用してもよく、商品名としては、BYK社製のBYK−300、BYK−301、BYK−302、AMTE社製のTeramer USO−100などが挙げられ、これに制限されない。前記添加剤の含量は、UV硬化性樹脂100重量部に対して、1〜10重量部を使用することが好ましい。
【0079】
また、前記UV硬化性樹脂100重量部に対して、開始剤を0.1〜10重量部使用してもよく、開始剤としては光重合開始剤であれば制限されず、具体的に、例えば、IRGACURE 184などを使用してもよい。
【0080】
前記中間層は、バーコーティング、ロールコーティング、ダイコーティングなどの方法で形成されてもよい。
【0081】
また、中間層は、必要に応じて、2層構造に形成してもよく、前記の中間層の上部にアルミニウム蒸着層をさらに形成してもよい。
【0082】
転写層(transfer layer)
転写層は、蒸発、スパッタリング、溶液コーティングなどの方法で均一にコーティングして中間層の上部に形成する。転写層は、典型的にレセプタに転写するための一つ以上の層を含む。例えば、電界発光材料または電気的活性の材料を含む有機、無機、有機金属性および他の材料を用いて形成されてもよい。
【0083】
より具体的に、例えば、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリ−パラ−フェニレン、ポリフルオレン、ポリジアルキルフルオレン、ポリチオフェン、ポリ(9−ビニルカルバゾール)、ポリ(N−ビニルカルバゾール−ビニルアルコール)共重合体、トリアリールアミン、ポリノルボルネン、ポリアニリン、ポリアリールポリアミン、トリフェニルアミン−ポリエーテルケトンなどが用いられてもよく、これらに制限されない。
【0084】
前記転写層は、製造しようとする有機発光素子の特性に適合するように、公知の発光物質、ホール伝達性有機物質、電子伝達性有機物質から選択される1以上の物質をさらに含んでもよく、非発光低分子物質、非発光電荷伝達高分子物質および硬化可能有機バインダー物質の少なくとも一つを含む化合物をさらに含んでもよい。
【0085】
このような転写層の構成について本発明では具体的に限定せず、通常、当該分野において用いられる構成であれば制限なく使用してもよい。
【0086】
また、前記転写層は、離型性を改善するためにアルミニウム蒸着層を含む2層構造に形成してもよい。
【0087】
以下、本発明について具体的に説明するために一例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例に限定されず、同一または同等な範囲の物質範囲内で変更可能なことは自明である。
【実施例】
【0088】
以下、物性は、次の測定方法で測定した。
【0089】
1)表面粗さ
二次元表面粗さ測定器(小坂研究所製、Surfcorder SE−3300)を用いて触針半径1μm、荷重0.7mNおよびカットオフ値80μmの条件下で測定し、フィルム断面の曲線からその中心線方向に基準長さ1.5mmの部分を選択して計5回の測定を行った後、その平均値を算出し、中心線をx軸、垂直方向をy軸とし、粗さ曲線をy=f(x)と示したとき、下記の式で計算した。
【0090】
表面粗さ(Ra)=(1/L)∫f(x)dx
【0091】
2)表面エネルギー
接触角測定器を用いて表面エネルギーを測定し、純粋およびジヨードメタンを用いて接触角を測定した後、オーエンス−ウェンツ(Owens−Wendt)法で表面エネルギーを求める。値は、10回測定した後、平均値を取る。
【0092】
3)転写性
中間層上に転写層としてトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)を500Åコーティングした後、1064nm波長のNd YAGレーザを用いて100〜130Wのエネルギー範囲で転写を行った。
【0093】
転写後、転写された外観がレーザを照射した部分と一致する場合:○
転写後、転写された外観がレーザを照射した部分と一部一致する場合:△
レーザを照射した部分で転写が行われなかった場合:×
【0094】
4)ブロッキング性
製造された10個のサンプルを重ねて200gf/cmの荷重を印加した後、40℃のオーブンで3日間放置してブロッキングが発生したか否かを判断する。
【0095】
−ブロッキングが発生した場合:×
−ブロッキングが一部発生した場合:△
−発生しなかった場合:○
【0096】
5)形状追従性
中間層上に転写層としてトリス(8−ヒドロキシキノリナト)アルミニウム(Alq3)を500Åコーティングした後、1064nm波長のNd YAGレーザを用いて100〜130Wのエネルギー範囲で転写を行った。転写幅は10μmであり、アクセプタの深さは0.2μmである。
【0097】
転写後、転写された形状でアクセプタの形状がはっきりと現れた場合:○
転写後、転写された形状でアクセプタの形状が現れなかった場合:×
【0098】
6)鉛筆硬度測定
PET100μmの基材上に乾燥およびUV硬化を行った後、コーティングの厚さが5μmになるようにコーティング層を形成する。これを用いて、JIS K5400方法に準じて鉛筆硬度を測定する。
【0099】
[実施例1]
光熱変換層製造用組成物(A−1)の製造
ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体(ダウケミカル社製、VMCH grade)18wt%、ポリウレタン樹脂(ルーブリゾール社製、ESTANE 5715 grade)43wt%、ポリイソシアネート(愛敬化学社製、AK 75 grade)9wt%、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX L6 grade)30wt%をトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒に固形分含量が15重量%になるように添加して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0100】
この際、粗液は、次のようにニーディングおよびミリングフィルタリング工程を経て製造した。
【0101】
まず、トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒にポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体を50℃で加温溶解して13重量%のポリビニルクロライドビニルアセテート溶液を製造した。ニーディング機に所定量のカーボンブラックを投入した後、ニーディング機を稼働させてポリビニルクロライドビニルアセテート溶液を少量ずつ投入して、1時間ニーディングを行った。
【0102】
ニーディングが終了した後、ニーディングされた溶液を1.2mmのジルコニウム粒子が80%充填されたリングミルの主なミリング容器に投入し、予め準備したトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒を用いて50℃で加温溶解した20重量%のポリウレタン樹脂および混合溶剤(トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1重量比)を添加して固形分の割合が15重量%である溶液を製造した。製造された溶液を投入した後、ミリング機内の二つの攪拌機を作動させてミリングを行った。コーティング液を混合してミリング機の内部に投入するために用いられる攪拌機は1000rpmに調整し、粒子分散作用のためにリング部に設けられた攪拌機は2000rpmに調整して6時間攪拌を行った。
【0103】
ミリングされた溶液は、2.5μm以上の粒子を濾過できるフィルタを用いてフィルタリングを行った。フィルタリングした溶液をメーヤバー#8番を用いてコーティングしてから、120℃で30秒間乾燥させた後、表面状態を顕微鏡で確認して2.5μm以上の粒子が存在しないことが確認されるとフィルタリングを終了した。フィルタリング後、硬化剤であるポリイソシアネートを投入し、1時間攪拌して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0104】
中間層製造用組成物(B−1)の製造
UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(東洋インキ社製、Lioduras LCH)にシリコン系添加剤(BYK社製、BYK−302)を全配合液に対して0.2wt%添加して中間層製造用組成物を製造した。
【0105】
LITIドナーフィルムの製造
両面にアクリルプライマー処理が施されたPETフィルム(コーロンインダストリー(株)社製、H11F)を基材フィルムとして準備した。
【0106】
準備した基材フィルムのアクリルプライマー層の上部に光熱変換層製造用組成物(A−1)をマイクログラビアコーティング方式でコーティングした後、乾燥して光熱変換層を形成した。この際、乾燥後、塗工量が1.5g/mになるようにした。さらに、50℃で3日間エージングを行った。
【0107】
前記光熱変換層の上部に準備した中間層製造用組成物(B−1)をマイクログラビアコータを用いてコーティングした後、乾燥して中間層を形成した。この際、コーティングの厚さが2.0μmになるように調整した。
【0108】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0109】
[実施例2]
中間層の厚さを3.0μmに調節したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0110】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0111】
[実施例3]
光−熱変換層の乾燥後、塗工量を2.5g/mに調節したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0112】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0113】
[実施例4]
【0114】
光−熱変換層の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0115】
光熱変換層製造用組成物(A−2)の製造
ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体(ダウケミカル社製、VMCH grade)16wt%、ポリウレタン樹脂(ルーブリゾール社製、ESTANE 5715 grade)37wt%、ポリイソシアネート(愛敬化学社製、AK 75 grade)7wt%、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX L6 grade)40wt%をトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒に固形分含量が15重量%になるように添加して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0116】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0117】
[実施例5]
光−熱変換層の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0118】
光熱変換層製造用組成物(A−3)の製造
ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体(ダウケミカル社製、VMCH grade)20wt%、ポリウレタン樹脂(ルーブリゾール社製、ESTANE 5715 grade)46wt%、ポリイソシアネート(愛敬化学社製、AK 75 grade)9wt%、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX L6 grade)25wt%をトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒に固形分含量が15重量%になるように添加して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0119】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0120】
[実施例6]
中間層の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0121】
中間層製造用組成物(B−2)の製造
フッ素置換されたUV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(根上社製、KY11M−45CF)の固形分100重量部に対して、開始剤(チバ社製、IRGACURE 184)を3重量部添加して中間層製造用組成物を製造した。
【0122】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0123】
[実施例7]
中間層の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0124】
中間層製造用組成物(B−3)の製造
UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(根上社製、KY11M−45C)の固形分100重量部に対して、光開始剤(チバ社製、IRGACURE 184)を3重量部添加し、シリコン系添加剤(AMTE社製、USO−100)を3重量部添加して中間層製造用組成物を製造した。
【0125】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0126】
[実施例8]
中間層の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0127】
中間層製造用組成物(B−4)の製造
フッ素置換されたUV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(根上社製、KY11M−45CF)の固形分100重量部に対して、光開始剤(チバ社製、IRGACURE 184)を3重量部添加し、シリコン系添加剤(AMTE社製、USO−100)を3重量部添加して中間層製造用組成物を製造した。
【0128】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0129】
[実施例9]
光熱変換層の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0130】
光熱変換層製造用組成物(A−4)の製造
ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体(ダウケミカル社製、VMCH grade)18wt%、ポリウレタン樹脂(ルーブリゾール社製、ESTANE 5715 grade)43wt%、ポリイソシアネート(愛敬化学社製、AK 75 grade)9wt%、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX L6 grade)30wt%をトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒に固形分含量が15重量%になるように添加して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0131】
この際、粗液は、次のようにニーディングおよびミリングフィルタリング工程を経て製造した。
【0132】
まず、トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒にポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体を50℃で加温溶解して13重量%のポリビニルクロライドビニルアセテート溶液を製造した。ニーディング機に所定量のカーボンブラックを投入した後、ニーディング機を稼働させてポリビニルクロライドビニルアセテート溶液を少量ずつ投入して、1時間ニーディングを行った。
【0133】
ニーディングが終了した後、ニーディングされた溶液を1.2mmのジルコニウム粒子が80%充填されたリングミルの主なミリング容器に投入し、予め準備したトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒を用いて50℃で加温溶解した20重量%のポリウレタン樹脂および混合溶剤(トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1重量比)を添加して固形分の割合が15重量%である溶液を製造した。製造された溶液を投入した後、ミリング機内の二つの攪拌機を作動させてミリングを行った。コーティング液を混合してミリング機の内部に投入するために用いられる攪拌機は1000rpmに調整し、粒子分散作用のためにリング部に設けられた攪拌機は2000rpmに調整して6時間攪拌を行った。
【0134】
ミリングされた溶液は3.0μm以上の粒子を濾過できるフィルタを用いてフィルタリングを行った。フィルタリングした溶液をメーヤバー#8番を用いてコーティングしてから、120℃で30秒間乾燥させた後、表面状態を顕微鏡で確認して3.0μm以上の粒子が存在しないことが確認されるとフィルタリングを終了した。フィルタリング後、硬化剤であるポリイソシアネートを投入し、1時間攪拌して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0135】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0136】
[実施例10]
光−熱変換層の乾燥後、塗工量を3.5g/mに調節したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0137】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0138】
[実施例11]
中間層の厚さを3.5μmに調節したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0139】
[実施例12]
中間層の厚さを4.0μmに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0140】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0141】
[実施例13]
中間層の厚さを0.5μmに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0142】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0143】
[実施例14]
光−熱変換層の乾燥後、塗工量を4.0g/mに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0144】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0145】
[実施例15]
光−熱変換層の乾燥後、塗工量を0.5g/mに変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0146】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0147】
[実施例16]
光−熱変換層の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0148】
光熱変換層製造用組成物(A−5)の製造
ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体(ダウケミカル社製、VMCH grade)43wt%、ポリウレタン樹脂(ルーブリゾール社製、ESTANE 5715 grade)18wt%、ポリイソシアネート(愛敬化学社製、AK 75 grade)9wt%、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX L6 grade)30wt%をトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒に固形分含量が15重量%になるように添加して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0149】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0150】
[実施例17]
光−熱変換層の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0151】
光熱変換層製造用組成物(A−6)の製造
ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体(ダウケミカル社製、VMCH grade)12wt%、ポリウレタン樹脂(ルーブリゾール社製、ESTANE 5715 grade)30wt%、ポリイソシアネート(愛敬化学社製、AK 75 grade)8wt%、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX L6 grade)50wt%をトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒に固形分含量が15重量%になるように添加して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0152】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0153】
[比較例1]
プライマー処理が施されていないPETフィルムを使用したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0154】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0155】
[比較例2]
中間層および光−熱変化層の組成を変更したこと以外は、実施例1と同様な方法で製造した。
【0156】
光熱変換層製造用組成物(A−7)の製造
ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体(ダウケミカル社製、VMCH grade)12wt%、ポリウレタン樹脂(ルーブリゾール社製、ESTANE 5715 grade)30wt%、ポリイソシアネート(愛敬化学社製、AK 75 grade)8wt%、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX L6 grade)80wt%をトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒に固形分含量が15重量%になるように添加して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0157】
中間層製造用組成物(B−5)の製造
UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(東洋インキ社製、Lioduras LCH series)を使用した。コーティングの際にメチルエチルケトン溶剤で希釈して固形分含量20重量%の溶液を製造した後、コーティングを行った。
【0158】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表1に示した。
【0159】
【表1】
【0160】
前記表を参照すると、表面エネルギーが35mN/m以下であり、中間層の厚さが3.5μm以下であり、光−熱変換層の乾燥後、塗工量が3.5g/m以下であり、カーボン含量が40重量%以下である実施例1〜11において、最も優れた形状追従性、鉛筆硬度、転写性およびブロッキング性を図ることができることが分かった。
【0161】
また、プライマー層を形成していない比較例1は、形状追従性および転写性が不良であり、比較例2は、カーボン含量が高く、表面エネルギーが調節されず、形状追従性および転写性が不良であり、ブロッキング性に劣ることが分かった。
【0162】
[実施例18]
光熱変換層製造用組成物(A−8)の製造
ポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体(ダウケミカル社製、VMCH grade)18wt%、ポリウレタン樹脂(ルーブリゾール社製、ESTANE 5715 grade)43wt%、ポリイソシアネート(愛敬化学社製、AK 75 grade)9wt%、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX L6 grade)30wt%をトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒に固形分含量が15重量%になるように添加して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0163】
この際、粗液は、次のようにニーディングおよびミリングフィルタリング工程を経て製造した。
【0164】
まず、トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒にポリビニルクロライドビニルアセテート共重合体を50℃で加温溶解して13重量%のポリビニルクロライドビニルアセテート溶液を製造した。ニーディング機に所定量のカーボンブラックを投入した後、ニーディング機を稼働させてポリビニルクロライドビニルアセテート溶液を少量ずつ投入して、1時間ニーディングを行った。
【0165】
ニーディングが終了した後、ニーディングされた溶液を1.2mmのジルコニウム粒子が80%充填されたリングミルの主なミリング容器に投入し、予め準備したトルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1の重量比で混合した混合溶媒を用いて50℃で加温溶解した20重量%のポリウレタン樹脂および混合溶剤(トルエン:メチルエチルケトン:シクロヘキサノン=1:1:1重量比)を添加して固形分の割合が15重量%である溶液を製造した。製造された溶液を投入した後、ミリング機内の二つの攪拌機を作動させてミリングを行った。コーティング液を混合してミリング機の内部に投入するために用いられる攪拌機は1000rpmに調整し、粒子分散作用のためにリング部に設けられた攪拌機は2000rpmに調整して6時間攪拌を行った。
【0166】
ミリングされた溶液は2.5μm以上の粒子を濾過できるフィルタを用いてフィルタリングを行った。フィルタリングした溶液をメーヤバー#8番を用いてコーティングしてから、120℃で30秒間乾燥させた後、表面状態を顕微鏡で確認して2.5μm以上の粒子が存在しないことが確認されるとフィルタリングを終了した。フィルタリング後、硬化剤であるポリイソシアネートを投入し、1時間攪拌して光熱変換層製造用組成物を製造した。
【0167】
中間層製造用組成物(B−6)の製造
UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(根上社製、KY−11)に開始剤(BASF社製、IRGACURE 184)をウレタンアクリレート固形分100重量部に対して3重量部添加し、反応性シリコンアクリレート系添加剤(AMTE社製、Teramer USO−100、固形分100%溶液)を全体のウレタンアクリレート固形分に対して3重量部添加して中間層製造用組成物を製造した。
【0168】
LITIドナーフィルムの製造
両面にアクリルプライマー処理が施されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(コーロンインダストリー(株)社製、H11F)を基材フィルムとして準備した。
【0169】
準備した基材フィルムのアクリルプライマー層の上部に光熱変換層製造用組成物(A−8)をマイクログラビアコーティング方式でコーティングした後、乾燥して光熱変換層を形成した。この際、乾燥後、コーティングの厚さが2.5μmになるようにした。さらに、50℃で3日間エージングを行った。
【0170】
前記光熱変換層の上部に準備した中間層製造用組成物(B−6)をマイクログラビアコータを用いてコーティングした後、乾燥して中間層を形成した。この際、コーティングの厚さが2.5μmになるように調整した。
【0171】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0172】
[実施例19]
中間層の組成が異なること以外は、実施例18と同様な方法で製造した。
【0173】
中間層製造用組成物(B−7)の製造
熱可塑性ウレタンアクリレート樹脂(大成社製、8UA−146)とUV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(根上社製、KY−11)の固形分の割合が30:70になるように配合した。これに、開始剤(BASF社製、IRGACURE 184)をウレタンアクリレート固形分100重量部に対して3重量部添加し、反応性シリコンアクリレート系添加剤(AMTE社製、Teramer USO−100、固形分100%溶液)を全体のウレタンアクリレート固形分に対して3重量部添加して中間層製造用組成物を製造した。
【0174】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0175】
[実施例20]
中間層の組成が異なること以外は、実施例18と同様な方法で製造した。
【0176】
中間層製造用組成物(B−8)の製造
UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(根上社製、KY11)に開始剤(BASF社製、IRGACURE 184)をウレタンアクリレート固形分100重量部に対して3重量部添加し、反応性シリコンアクリレート系添加剤(AMTE社製、Teramer USO−100、固形分100%溶液)を全体のウレタンアクリレート固形分に対して3重量部添加して中間層製造用組成物を製造した。
【0177】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0178】
[比較例3]
中間層の組成が異なること以外は、実施例18と同様な方法で製造した。
【0179】
中間層製造用組成物(B−9)の製造
UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(根上社製、UN−906)に開始剤(BASF社製、IRGACURE 184)をウレタンアクリレート固形分に対して3重量部添加し、反応性シリコンアクリレート系添加剤(AMTE社製、Teramer USO−100、固形分100%溶液)を全体のウレタンアクリレート固形分に対して3重量部添加して中間層製造用組成物を製造した。
【0180】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0181】
[比較例4]
中間層の組成が異なること以外は、実施例18と同様な方法で製造した。
【0182】
中間層製造用組成物(B−10)の製造
UV硬化性ウレタンアクリレート樹脂(根上社製、UN908)に開始剤(BASF社製、IRGACURE 184)をウレタンアクリレート固形分に対して3重量部添加し、反応性シリコンアクリレート系添加剤(AMTE社製、Teramer USO−100、固形分100%溶液)を全体のウレタンアクリレート固形分に対して3重量部添加して中間層製造用組成物を製造した。
【0183】
製造したフィルムの物性を測定して、下記表2に示した。
【0184】
【表2】
【0185】
前記表を参照すると、本発明に係るフィルムは、中間層の鉛筆硬度がH以下であり、これにより、本発明のドナーフィルムをレーザ転写に適用すると、コーティング外観に優れ、転写性に優れることが分かった。
【0186】
しかし、中間層の鉛筆硬度が高い比較例3および比較例4は、形状追従性が不良であることが分かった。
【0187】
したがって、中間層の鉛筆硬度が形状追従性に影響を及ぼすことが分かり、好ましくは、1H以下の範囲で優れた形状追従性を発現することが分かった。
【符号の説明】
【0188】
10 基材フィルム
20 プライマー層
30 光−熱変換層
40 中間層
50 転写層
100 エッジオープン
200 アクセプタ
300 転写層
図1
図2