(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1のアクチュエータ又は前記第2のアクチュエータの一方を活性化して前記チャネルを通る方向性のある流体の流れを生じさせるための単一活性化モジュールを更に含む、請求項1又は2に記載の流体吐出デバイス。
前記圧縮流体変位を生じさせることは、前記チャネル内の体積が低減されるように前記第1のアクチュエータを前記チャネル内へと撓めることを含む、請求項7に記載の方法。
前記膨張流体変位を生じさせることは、チャネル内の体積を増大させるように前記チャネルの外へ前記第1のアクチュエータを撓めることを含む、請求項7に記載の方法。
前記異なる持続時間の圧縮および膨張の流体変位を生じさせることが、コントローラに前記第1のアクチュエータの活性化を駆動する波形を制御させる機械可読ソフトウェアモジュールを実行することを含む、請求項7に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1】一実施形態による、本明細書で開示されたような流体吐出デバイスを組み込み且つ流体吐出デバイス中で流体を循環させる方法を実現するのに適したインクジェット印刷システムを示す図である。
【
図2】一実施形態による、例示的な流体吐出デバイスの部分側断面図である。
【
図3a】一実施形態による、通常の小滴吐出モードの流体吐出デバイスを示す図である。
【
図3b】一実施形態による、通常の流体補充モードの流体吐出デバイスを示す図である。
【
図3c】一実施形態による、小滴吐出および対応する流体補充を引き起こすアクチュエータの撓み(X)を達成するためにアクチュエータに印加される例示的な電圧波形(V)のグラフである。
【
図4a】一実施形態による、チャネル内で圧縮流体変位を引き起こす順方向ポンピング行程において、アクチュエータが流体チャネルへと撓んでいる状態の通常の小滴吐出モードの流体吐出デバイスを示す図である。
【
図4b】一実施形態による、アクチュエータが初期状態または静止状態に戻った状態の通常の流体補充モードの流体吐出デバイスを示す図である。
【
図4c】一実施形態による、小滴吐出および対応する流体補充を引き起こすアクチュエータの撓み(X)を達成するためにアクチュエータに印加される例示的な電圧波形(V)のグラフである。
【
図5a】一実施形態による、単一アクチュエータポンピングモードにおいて動作する流体変位アクチュエータを備える流体吐出デバイスの断面図、及びアクチュエータに印加される例示的な電圧波形(V)のグラフである。
【
図5b】一実施形態による、単一アクチュエータポンピングモードにおいて動作する流体変位アクチュエータを備える流体吐出デバイスの断面図、及びアクチュエータに印加される例示的な電圧波形(V)のグラフである。
【
図6】一実施形態による、交互するマルチパルス活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータを備える流体吐出デバイスの断面図である。
【
図7】一実施形態による、交互するマルチパルス活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータを備える流体吐出デバイスの断面図である。
【
図8】一実施形態による、同時マルチパルス活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータを備える流体吐出デバイスの断面図である。
【
図9】一実施形態による、同時マルチパルス活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータを備える流体吐出デバイスの断面図である。
【
図10】一実施形態による、同時同相活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータを備える流体吐出デバイスの断面図である。
【
図11】一実施形態による、流体吐出デバイスの流体を循環させる例示的な方法の流れ図である。
【
図12】一実施形態による、流体吐出デバイスの流体を循環させる例示的な方法の流れ図である。
【0005】
詳細な説明
問題点および解決策の概要
上述したように、インクジェット印刷システムの開発において、様々な問題が依然として克服されている。例えば、そのようなシステムで使用されるインクジェットプリントヘッドは時として、インクの閉塞および/または目詰まりに関連する問題を有する。インク閉塞の1つの原因は、プリントヘッドの中で気泡として蓄積する過剰の空気である。インクがインクリザーバに貯蔵されている間のように、インクが空気にさらされる場合、追加の空気がインクに溶解する。プリントヘッドの発射チャンバからインク滴を吐出する後続の動作は、インクから過剰な空気を解放し、次いでそれは気泡として蓄積する。当該気泡は、発射チャンバからプリントヘッドの他の領域へ移動し、この場合、当該気泡はプリントヘッドへの及びプリントヘッド内のインクの流れを阻止する可能性がある。チャンバ内の気泡は、圧力を吸収し、ノズルを通って押し出される流体に対する力を低減し、それにより小滴の速度が低減される又は吐出が妨げられる。
【0006】
また、顔料系インクは、プリントヘッドにおけるインクの閉塞または目詰まりの原因となる可能性もある。インクジェット印刷システムは、顔料系インク及び染料インクを使用するが、インクの双方のタイプには利点および欠点が存在し、顔料系インクが一般に好ましい。染料インクにおいて、染料粒子は液体に溶解され、そのためインクが用紙内へより深く染み込む傾向がある。これは、染料インクの効率を悪くし、インクがイメージのエッジにおいて、にじむので印字品質を低減する可能性がある。一方、顔料系インクは、インクビヒクル、及びインクビヒクルに顔料粒子を懸濁した状態を維持することを可能にする分散剤でコーティングされた高濃度の不溶性顔料粒子からなる。これは、顔料インクが、用紙へ染み込むのではなくて用紙の表面にいっそう多くとどまることに役立つ。従って、顔料インクは、印刷されるイメージにおいて同じ色強度を生成するのに必要とされるインクがより少ないので、染料インクよりも効率的である。また、顔料インクは、染料インクよりも耐久性があり永久的である傾向もあり、そのため顔料インクは、水に接触した場合に染料インクよりも汚くならない。
【0007】
しかしながら、顔料系インクに関する1つの欠点は、インクジェットペンの常識破りの貧弱な性能という結果になる可能性がある、長期の保管および他の環境的危機のような要因に起因したインクの閉塞がインクジェットプリントヘッドに生じる可能がある点である。インクジェットペンは、インク供給部に内部で結合された一端部に固定されたプリントヘッドを有する。インク供給部は、プリントヘッドアセンブリ内に内蔵され得るか、又はペンの外側のプリンタに設けられ、プリントヘッドアセンブリを介してプリントヘッドに結合され得る。保管の長期にわたって、大きな顔料粒子に対する重力の影響、ランダムな変動、及び/又は分散剤の劣化により、顔料の凝集、沈殿、又は析出を生じる可能性がある。1つの場所での顔料粒子の蓄積は、プリントヘッドの発射チャンバ及びノズルへのインクの流れを妨げる又は完全に阻止する可能性があり、プリントヘッドによる常識破りの貧弱な性能およびプリンタからの印字品質の低下という結果になる。また、インクからの水および溶剤の蒸発のような他の要因も、PIVS、及び/又はインク粘性の増加および粘性のあるプラグ(詰め物)の形成に寄与する可能性があり、それはデキャップの性能を低減し、不使用の期間後の即時の印刷を妨げる可能性がある。
【0008】
従来の解決策は主として、プリントヘッドを使用する前後にプリントヘッドを保守(サービス)すること、並びにプリントヘッドを介してインクを循環するための様々なタイプの外部ポンプを使用することを含む。例えば、プリントヘッドは一般に、ノズルが乾燥したインクで詰まることを防止するために不使用の間にキャッピングされる(蓋を被される)。また、プリントヘッドを使用する前に、ノズルは、ノズルを通してインクを吐き出すことにより準備され得る、又は外部ポンプを用いてインクの連続した流れでもってプリントヘッドを浄化することもできる。これら解決策の欠点には、保守時間に起因して即座に(即ち、オンデマンドで)印刷することができないこと、及び保守中にインクを消費することに起因した総所有コストの増加が含まれる。プリントヘッドを介してインクを循環するための外部ポンプの使用は一般に、扱いにくくてコストが高くつき、ノズルの入口における背圧を維持するために複雑な圧力調整器を必要とする。従って、デキャップの性能、PIVS、空気および微粒子の蓄積、及びインクジェット印刷システムにおけるインクの閉塞および/または目詰まりの他の原因は、全体的な印字品質を劣化させ、所有コスト、製造コスト又は双方を増加させる可能性がある基本的な問題であり続けている。
【0009】
本開示の実施形態は、一般に流体吐出デバイス(例えば、インクジェットプリントヘッド)の流体チャネル及び/又はチャンバ内に流体の微量循環を提供する圧電流体アクチュエータ及び他のタイプの機械的に制御可能な流体アクチュエータの使用を通じて、インクジェット印刷システムにおけるインク閉塞および/または目詰まりを低減する。流体チャネル内に非対称的に(即ち、中心を外れて又は偏心して)配置された流体アクチュエータ、及びコントローラは、圧縮流体変位(即ち、順方向のポンプ行程)及び膨張または引張り流体変位(即ち、逆方向ポンプ行程)を生じる順方向および逆方向の活性化行程(即ち、ポンプ行程)の持続時間を制御することにより、流体チャネルを通る及び当該流体チャネル内での方向性のある流体の流れを可能にする。
【0010】
一実施形態において、流体吐出デバイスは、入口、出口、及びノズルを有する流体チャネルを含む。第1の流体変位アクチュエータが、入口とノズルとの間でチャネル内に非対称的に配置される。第2の流体変位アクチュエータが、出口とノズルとの間でチャネル内に非対称的に配置される。コントローラは、少なくとも1つのアクチュエータとは異なる持続時間の圧縮および膨張の流体変位を生じさせることにより、チャネルを通る流体の流れを制御する。
【0011】
一実施形態において、流体吐出デバイス中で流体を循環させる方法は、入口とノズルとの間で流体チャネル内に非対称的に配置された第1のアクチュエータから異なる持続時間の圧縮および膨張の流体変位を生じさせる一方で、ノズルと出口との間でチャネル内に非対称的に配置された第2のアクチュエータから流体変位を生じさせないことを含む。一具現化形態において、方法は、第2のアクチュエータから異なる持続時間の圧縮および膨張の流体変位を生じさせる一方で、第1のアクチュエータから流体変位を生じさせないことを含む。別の具現化形態において、方法は、双方のアクチュエータから圧縮および膨張の流体変位を生じるように第1及び第2のアクチュエータの活性化を交互にすることを含む。
【0012】
一実施形態において、流体吐出デバイス中で流体を循環させる方法は、圧縮および膨張の流体変位を生じるために第1及び第2のアクチュエータを同時に活性化することを含み、この場合、第1及び第2のアクチュエータは、圧縮流体変位と膨張流体変位との間で交互になり、そのためそれらは同時に圧縮または膨張の流体変位を生じない。第1のアクチュエータが、入口とノズルとの間で流体チャネル内に非対称的に配置され、第2のアクチュエータが、ノズルと出口との間でチャネル内に非対称的に配置される。ノズル及びチャンバがアクチュエータ間に配置され、アクチュエータの同時活性化は、アクチュエータ間で前後の流体の流れを生じさせる。一具現化形態において、第1及び第2のアクチュエータを同時に活性化することは、ノズルから液滴を吐出してチャネルを通る正味の方向性のある流体の流れを生じさせるものと異なる圧縮変位の大きさを有する同時の圧縮流体変位を生じるように第1及び第2のアクチュエータを活性化することを含む。
【0013】
例示的な実施形態
図1は、本開示の一実施形態による、本明細書で開示されたような流体吐出デバイスを組み込み且つ流体吐出デバイス中で流体を循環させる方法を実現するのに適したインクジェット印刷システム100を示す。この実施形態において、流体吐出デバイス114は、液滴噴射プリントヘッド114として開示される。インクジェット印刷システム100は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102、インク供給アセンブリ104、取り付けアセンブリ106、媒体搬送アセンブリ108、電子コントローラ110、及びインクジェット印刷システム100の様々な電気コンポーネントに電力を供給する少なくとも1つの電源112を含む。インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、印刷媒体118上に印刷するように、複数のオリフィス又はノズル116を通してインク滴を印刷媒体118へ向けて吐出する少なくとも1つのプリントヘッド114を含む。印刷媒体118は、用紙、カードのストック、透明媒体、マイラー(登録商標)、ポリエステル、合板、発泡板、布、キャンバス(生地)などのような、任意のタイプの適切なシート又はロール材料とすることができる。ノズル116は一般に、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102及び印刷媒体118が互いに対して移動する際に、ノズル116からの適切に順序付けられたインクの吐出によって文字、記号、及び/又は他のグラフィックス又はイメージが印刷媒体118上に印刷されるように、1つ又は複数の列またはアレイに配列されている。
【0014】
インク供給アセンブリ104は、供給管のようなインターフェース接続を介してインク貯蔵リザーバ120からプリントヘッドアセンブリ102へ流体インクを供給する。リザーバ120は、取り外され得る、交換され得る、及び/又は補充され得る。一実施形態において、
図1aに示されるように、インク供給アセンブリ104及びインクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、一方向のインク供給システムを形成する。一方向のインク供給システムにおいて、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102に供給されたインクのほぼ全ては、印刷中に消費される。別の実施形態において、
図1bに示されるように、インク供給アセンブリ104及びインクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、再循環インク供給システムを形成する、再循環インク供給システムにおいて、プリントヘッドアセンブリ102に供給されるインクの一部のみが印刷中に消費される。印刷中に消費されなかったインクは、インク供給アセンブリ104に戻される。
【0015】
一実施形態において、インク供給アセンブリ104は、ポンプ及び圧力調整器(特に図示せず)を含み、それによりインク供給アセンブリ104が、圧力をかけてプリントヘッドアセンブリ102にインクを供給することを可能にする。一実施形態において、インクは、インク調整アセンブリ105を介してプリントヘッドアセンブリ102に供給される。インク調整アセンブリ105における調整には、フィルタリング、予熱、サージ圧力吸収、及びガス抜き(脱ガス)が含まれ得る。印刷システム100の通常動作中、インクが負圧下でプリントヘッドアセンブリ102からインク供給アセンブリ104に吸い出される。プリントヘッドアセンブリ102に対する入口と出口との間の圧力差は、ノズル116で適切な背圧を提供し、その背圧は通常、およそ水(H
2O)の−2.54cm(1インチ)から−25.4cm(10インチ)である。
【0016】
取り付けアセンブリ106は、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102を媒体搬送アセンブリ108に対して位置決めし、媒体搬送アセンブリ108は印刷媒体118をインクジェットプリントヘッドアセンブリ102に対して位置決めする。従って、印刷区域122が、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102と印刷媒体118との間の領域においてノズル116に隣接して画定される。一実施形態において、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、走査型プリントヘッドアセンブリである。そういうものだから、取り付けアセンブリ106は、印刷媒体118を走査するために媒体搬送アセンブリ108に対してインクジェットプリントヘッドアセンブリ102を移動させるためのキャリッジを含む。別の実施形態において、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、非走査型プリントヘッドアセンブリである。そういうものだから、取り付けアセンブリ106は、媒体搬送アセンブリ108に対して所定位置にインクジェットプリントヘッドアセンブリ102を固定する一方で、媒体搬送アセンブリ108はインクジェットプリントヘッドアセンブリ102に対して印刷媒体118を位置決めする。
【0017】
電子プリンタコントローラ110は一般に、プロセッサ、ファームウェア、ソフトウェア、揮発性および不揮発性メモリ構成要素を含む1つ又は複数のメモリ構成要素、並びにインクジェットプリントヘッドアセンブリ102、取り付けアセンブリ106及び媒体搬送アセンブリ108と通信し且つそれらアセンブリを制御するための他のプリンタ電子回路を含む。電子コントローラ110は、コンピュータのようなホストシステムからデータ124を受け取り、データ124を一時的にメモリに格納する。一般に、データ124は、電子、赤外線、光または他の情報伝達経路に沿ってインクジェット印刷システム100に送られる。例えば、データ124は、印刷されるべき文章および/またはファイルを表す。そういうものだから、データ124は、インクジェット印刷システム100の印刷ジョブを形成し、1つ又は複数の印刷ジョブコマンド及び/又はコマンドパラメータを含む。
【0018】
一実施形態において、電子プリンタコントローラ110は、ノズル116からのインク滴の吐出のためにインクジェットプリントヘッドアセンブリ102を制御する。従って、電子コントローラ110は、印刷媒体118に文字、記号、及び/又は他のグラフィックス又はイメージを形成する、吐出されたインク滴のパターンを定義する。吐出されたインク滴のパターンは、印刷ジョブコマンド及び/又はコマンドパラメータにより決定される。一実施形態において、電子コントローラ110は、流体吐出デバイス114内に組み込まれた1つ又は複数の流体変位アクチュエータの動作を制御するために、メモリに格納されてコントローラ110(即ち、コントローラ110のプロセッサ)で実行可能なソフトウェア命令モジュールを含む。ソフトウェア命令モジュールは、単一活性化モジュール126、マルチパルス活性化モジュール128、チャンバ内循環モジュール130、及び小滴吐出循環モジュール132を含む。一般に、モジュール126、128、130及び132は、流体吐出デバイス114の流体変位アクチュエータにより生じる圧縮および膨張の流体変位(即ち、それぞれ順方向および逆方向のポンピング行程)のタイミング、持続時間および振幅を制御するためにコントローラ110で実行する。コントローラ110でのモジュール126、128、130及び132の実行は、流体吐出デバイス114内での流体の流れの方向、速度およびタイミングを制御する。
【0019】
説明された実施形態において、インクジェット印刷システム100は、ドロップオンデマンドの圧電インクジェット印刷システムであり、この場合、流体吐出デバイス114は圧電インクジェット(PIJ)プリントヘッド114を含む。PIJプリントヘッド114は、制御回路および駆動回路と共に薄膜圧電流体変位アクチュエータを含む多層のMEMSダイスタックを含む。アクチュエータは、流体チャネル及び/又はチャンバ内で流体変位を生じるように制御される。流体変位は、ノズル116を通してチャンバから液滴を押し出す、並びにチャネルを通る正味の方向性のある流体の流れ及び/又はチャンバ内での後退したり前進したりする流体の移動を引き起こすことができる。一具現化形態において、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、単一のPIJプリントヘッド114を含む。別の具現化形態において、インクジェットプリントヘッドアセンブリ102は、幅広いアレイのPIJプリントヘッド114を含む。
【0020】
本明細書において流体吐出デバイス114が圧電流体変位アクチュエータを備えるPIJプリントヘッド114として説明されるが、流体吐出デバイス114は、この特定の具現化形態に限定されない。様々な他のタイプの流体変位アクチュエータを実現する他のタイプの流体吐出デバイス114が企図される。例えば、流体吐出デバイス114は、静電(MEMS)アクチュエータ、機械/衝撃駆動型アクチュエータ、音声コイルアクチュエータ、磁気歪み駆動型アクチュエータなどを実装することができる。
【0021】
図2は、本開示の一実施形態による、例示的な流体吐出デバイス114の部分側断面図を示す。
図3〜
図10に関連して後述される、流体吐出デバイス114aの引き伸ばした簡易化部分は、
図2において点線で区別される。一般に、流体吐出デバイス114は、それぞれが異なる機能を有するダイの複数の層を備えるダイスタック200を含む。ダイスタック200の層は、第1の(即ち、下側)基板ダイ202、第2の回路ダイ204(又はASICダイ)、第3のアクチュエータ/チャンバダイ206、第4のキャップダイ208、及び第5のノズル層210(又はノズルプレート)を含む。幾つかの実施形態において、キャップダイ208及びノズル層210は、単一の層として一体化される。また、通常、ノズル116の周囲にインクのたまりができるのを防止するのに役立つ疎水性コーティングを含む乾燥層(図示せず)が、ノズル層210の上に存在する。ダイスタック200の各層は一般に、乾燥層および場合によってはノズル層210を除いて、シリコンから形成される。幾つかの実施形態において、ノズル層210は、ステンレス鋼、或いはポリイミド又はSU8のような耐久性のある化学的に不活性のポリマーから形成され得る。層は、エポキシ樹脂(図示せず)のような化学的に不活性の接着剤で互いに結合される。例示された実施形態において、ダイの層は、圧力チャンバ212への及び圧力チャンバ212からのインクを伝えるためのスロット、チャネル又は穴のような流体通路を有する。各圧力チャンバ212は、チャンバの床218(即ち、チャンバのノズル側の反対側に位置する)に位置し、インク分配マニホルドと流体連絡する第1の流体供給穴214及び第2の流体供給穴216を含み、インク分配マニホルドは、第1の流体マニホルド220及び第2の流体マニホルド222を含む。圧力チャンバ212の床218は、回路層204の表面により形成される。第1の流体供給穴214及び第2の流体供給穴216は、チャンバ212の床218の両側にあり、この場合、それらは回路層204のダイを貫通し、インクがチャンバ212中を循環されることを可能にする。流体変位アクチュエータ224(即ち、圧電アクチュエータ)は、チャンバ212に対する屋根としての機能を果たすフレキシブルな膜上にあり、チャンバの床218に向かい合って位置する。従って、流体変位アクチュエータ224は、チャンバ212の、ノズル116と同じ側(即ち、チャンバの屋根または上面)に位置する。
【0022】
下側基板ダイ202は、流体が第1の流体マニホルド220及び第2の流体マニホルド222を通って圧力チャンバ212に対して流入および流出することができる流体通路226を含む。基板ダイ202は、例えば、始動の過渡事象および隣接ノズルの流体吐出に起因した流体分配マニホルドを通る脈動する(パルス状)流体の流れからの圧力サージを緩和するように構成された薄いコンプライアンス薄膜228を支持する。コンプライアンス薄膜228は、マニホルドの流体圧力サージに応答してそれが自由に膨張することを可能にするためにコンプライアンス薄膜の裏面にキャビティ又は空間230を形成する、基板ダイ202のギャップにまたがる。
【0023】
回路ダイ204は、ダイスタック200の第2のダイであり、基板ダイ202の上に位置する。回路ダイ204は、第1及び第2の流体マニホルド220及び222を含む流体分配マニホルドを含む。第1の流体マニホルド220は、第1の流体供給穴214を通るチャンバ212への及びチャンバ212からの流体の流れを提供するが、第2の流体供給穴216は、流体が第2の流体マニホルド222へとチャンバ212を出ることを可能にする。また、回路ダイ204は流体バイパスチャネル232も含み、その流体バイパスチャネル232は、第1の流体マニホルド220へ入る流体の一部が圧力チャンバ212をバイパスして、流体バイパスチャネル232を通って第2の流体マニホルド222へと直接的に流れることを可能にする。回路ダイ204は、ASIC234において実現され且つアクチュエータ/チャンバダイ206に隣接するその上面に製造されたCMOS電気回路234を含む。ASIC234は、流体変位アクチュエータ224(即ち、圧電アクチュエータ)の圧力の脈動を制御する吐出制御回路を含む。また、回路ダイ204は、ボンディングワイヤ238の外側のダイ204のエッジに製造された圧電アクチュエータ駆動回路/トランジスタ236(例えば、FET)も含む。駆動トランジスタ236は、ASIC234の制御回路により制御(即ち、ターンオン及びターンオフ)される。
【0024】
回路ダイ204の上に位置するダイスタック200の次の層は、アクチュエータ/チャンバダイ206(以降、「アクチュエータダイ206」)である。アクチュエータダイ206は、回路ダイ204に付着され、隣接する回路ダイ204を含むチャンバの床218を有する圧力チャンバ212を含む。上述したように、チャンバの床218は更に、チャンバの床218を形成する回路ダイ204上に製造されたASIC234のような制御回路を含む。アクチュエータダイ206は更に、チャンバの屋根としての機能を果たす、チャンバの床218の反対側に位置する二酸化ケイ素のような薄膜のフレキシブルな膜240を含む。流体変位アクチュエータ224が、フレキシブルな膜240の上に且つ当該膜240に付着される。本実施形態において、流体変位アクチュエータ224は、印加された電圧に応答して機械的に応力を加える圧電セラミック材料のような薄膜の圧電材料を含む。付勢される場合、圧電アクチュエータ224は物理的に膨張または収縮し、それにより圧電セラミックの積層板および膜240が撓む。この撓みは、チャンバ212内の流体を変位させ、ノズル116を通して液滴を吐出する及び/又はチャンバ212内で及びチャンバ212と第1及び第2の流体供給穴214及び216とを通じて流体を循環させる圧力波を圧力チャンバ212内に生成する。フレキシブルな膜240及び流体変位アクチュエータ224(圧電アクチュエータ224)は、圧力チャンバ212とノズル116との間に広がる下垂部242により分割される。従って、流体変位アクチュエータ224は、流体変位アクチュエータ224を有する分割アクチュエータ224、又はチャンバ212のそれぞれの側にある流体変位アクチュエータ224のセグメントである。
【0025】
キャップダイ208は、アクチュエータダイ206の上に付着され、流体変位アクチュエータ224を封じ込めて保護する封止キャップキャビティ244を圧電アクチュエータ224の上に形成する。キャップダイ208は、上述した下垂部242を含み、下垂部242は、圧力チャンバ212とノズル116との間に広がり、且つ流体変位アクチュエータ224からの圧力波により生じる小滴吐出事象の間に流体がチャンバ212からノズル116の外へ移動することを可能にするキャップダイ208のチャネルである。ノズル層210又はノズルプレートは、キャップダイ208の上に付着され、内部に形成されたノズル116を有する。
【0026】
図3aは、本開示の一実施形態による、通常の小滴吐出モードにおいて、
図2のような流体吐出デバイス114aの断面図の引き伸ばした簡易化部分を示す。この実施形態において、双方の流体変位アクチュエータ224は、圧力チャンバ212からノズル116を通して所望の速度と体積の液滴を吐出するために十分に外側へ(即ち、凸状)の撓み及び変位と共に同時に動作する。双方の流体変位アクチュエータ224は、圧力チャンバ212内および周囲の体積を一時的に低減する順方向ポンピング行程において外に向かって湾曲し、圧縮流体変位を生じる。双方のアクチュエータ224の同時の圧縮流体変位からの圧力波により、流体がノズル116から吐出し、並びにそれぞれ第1及び第2の流体供給穴214及び216を通るマニホルド220及び222への流体の流れが生じる(流体の流れの矢印により示されるように)。
【0027】
図3bは、本開示の一実施形態による、通常の流体充填モードにおいて、流体吐出デバイス114aの断面図の引き伸ばした簡易化部分を示す。この実施形態において、アクチュエータ242の平らな状態または中立状態へ戻るアクチュエータ224の逆の又は内向きの同時の撓みは、圧力チャンバ212へと流体を引き戻し、次の小滴吐出に備えてチャンバを補充する。幾つかの具現化形態において、アクチュエータ224の逆の又は内向きの撓みは、アクチュエータの平らな状態または中立状態を過ぎてキャップキャビティ244へと凹形の歪曲に撓む。
図3bに示されているように、双方の流体変位アクチュエータ224は、それらの最初の平らな状態または中立状態(即ち、静止状態)へ戻るように撓んでいる。最初の状態に戻る撓みは、チャンバ領域の体積を増加させて膨張流体変位を生じる逆方向ポンピング行程において、圧力チャンバ212内およびその周囲の空間からアクチュエータ224を引き戻す。膨張流体変位は、それぞれマニホルド220及び222から第1及び第2の流体供給穴214を通ってチャンバ212へと戻る流体の流れ(流体の流れの矢印により示されるように)を生じ、次の小滴吐出事象に備えてチャンバ212を流体で補充する。
図3a及び
図3bに示されるように通常の小滴吐出および流体補充の間に、圧力チャンバ212を補充するための流体の移動以外に、流体の微量の循環は生じない。
【0028】
図3cは、本開示の実施形態による、小滴吐出および対応する流体補充を生じる
図3a及び
図3bに示されたアクチュエータの撓み(X)を達成するためにアクチュエータ224に印加される例示的な電圧波形(V)のグラフ302を示す。印加された電圧が増大する場合、アクチュエータ224は、圧縮流体変位(即ち、チャンバ212内およびその周囲の領域内で流体が圧縮される際に流体が変位する)を生じる外向き(即ち、凸状)の撓みにおいて撓む。印加された電圧が減少する場合、アクチュエータ224は、その最初の平らな状態または中立状態(即ち、静止状態)へ戻るように撓み、それにより膨張流体変位(即ち、チャンバ212内およびその周囲の体積を増加させるように引き戻される際に流体が変位する)を生じる。
図3cの点線の電圧波形は、交番する電圧駆動波形を表し、その負電圧の振れは、アクチュエータ224をその通常の静止状態を過ぎてキャップダイ208のキャップキャビティ244(
図2を参照)へと内向き(即ち、凹形)に撓ませ、一時的にチャンバ212内およびその周囲の体積を更に増大させ、より大きな膨張流体変位を生じさせる。従って、点線の電圧波形は、チャネル500へと外へ撓むようにアクチュエータ224を駆動して圧縮流体変位を生じ、次いでアクチュエータ224をキャップキャビティ244へと達する逆方向においてその通常の静止位置を過ぎて戻り、より大きな膨張流体変位を生じる。
図3cの電圧波形により示されていないが、圧電アクチュエータが平らな位置または中立位置より上に撓む(即ち、凸形)ときはいつも、電圧は実際には、アクチュエータのチャンバへの撓みに対するものよりもかなり低い(ポンピング又は再循環に関わらず)。これは、圧電セラミックの分極に対抗して作用する電場が後続の撓みを減少させる可能性がある分極(脱分極)を劣化させること、印刷およびポンピング性能を劣化させることを防止するためである。
【0029】
流体変位アクチュエータ224がチャンバ212のノズル側に(即ち、チャンバ212の、ノズル116と同じ側のキャップダイ層208に)位置しているように全体にわたって説明されたが、
図4に示された別の実施形態において、アクチュエータ224は、ノズルの側とは反対側である回路ダイ層204(
図2を参照)上に位置することができる。更に別の実施形態(図示せず)において、流体変位アクチュエータ224は、チャンバ212のノズル側およびノズル116の反対側の双方に位置することができる。
図4は、本開示の一実施形態による、ノズル116の反対側にある回路ダイ層204に位置する流体変位アクチュエータ224を備える流体吐出デバイス114aの簡易化断面図を示す。
【0030】
図4aにおいて、流体吐出デバイス114aは、
図3aに関して説明されたものと類似する通常の小滴吐出モードで示され、この場合、アクチュエータ224は、本開示の一実施形態による、圧縮流体変位を生じる外向き(即ち、凸状)の撓み又は順方向ポンピング行程において撓む。
図4bにおいて、流体吐出デバイス114aは、
図3bに関して説明されたものと類似する通常の流体補充モードで示され、この場合、アクチュエータ224は、本開示の一実施形態による、最初の平らな状態または中立状態(即ち、静止状態)に戻るように撓む。アクチュエータは、膨張流体変位を生じる逆方向ポンピング行程において引き戻されて、チャンバ212を流体で補充する。
【0031】
図4cは、本開示の一実施形態による、小滴吐出および対応する流体補充を生じる
図4a及び
図4bに示されたアクチュエータの撓み(X)を達成するためにアクチュエータ224に印加される例示的な電圧波形(V)のグラフ400を示す。印加された電圧が増大する場合、それは、圧縮流体変位を生じるアクチュエータ224の外向き(即ち、凸状)の撓みを生じ、印加された電圧が減少する場合、それは、アクチュエータ224の最初の平らな状態または中立状態へ戻るアクチュエータ224の内向き(即ち、凹状)の撓みを生じて、膨張流体変位を生じる。
図4cの点線の電圧波形は、交番する電圧駆動波形を表し、その負電圧の振れは、アクチュエータ224をその通常の静止状態を過ぎて回路層204のキャビティ(図示せず)内へと撓ませ、一時的にチャンバ212内およびその周囲の体積を増大させ、膨張流体変位を生じさせる。従って、点線の電圧波形は、外へ撓むようにアクチュエータ224を駆動して圧縮流体変位を生じさせ、次いでアクチュエータ224を回路層204へと達する逆方向においてその通常の静止位置を過ぎて戻り、膨張流体変位を生じさせる。
図3a及び
図3bに関連して上述されたように、
図4a及び
図4bに示されるように通常の小滴吐出および流体補充の間に、圧力チャンバ212を補充するための流体の移動以外に、流体の微量の循環は生じない。
【0032】
図5〜
図10は、流体吐出デバイス114(例えば、インクジェットプリントヘッド)の流体チャネル及び/又はチャンバ内で流体の微量の循環を行う流体変位アクチュエータ224の動作モードを示す。一般に、流体アクチュエータ224は、流体チャネル内に非対称的に(即ち、中心を外れて又は偏心して)配置され、持続時間が非対称である圧縮流体変位および膨張流体変位を生じるように(例えば、コントローラ110)により制御され、ノズル116を通して液滴を吐出するための液滴吐出装置として機能し、且つ流体チャネル中で及び流体チャネル内で流体を循環させるための流体循環要素(即ち、ポンプ)として機能する。従って、この説明を容易にするために、流体チャネル500が、
図5〜
図10のそれぞれの流体吐出デバイス114a内に定義されて示される。流体チャネル500は、第1の流体供給穴214における第1の流体マニホルド220からおおよそ第2の流体供給穴216における第2の流体マニホルド222まで広がる流体体積(容積)を流体吐出デバイス114a内に含む。チャンバ212は流体チャネル500の一部であり、流体チャネル500はチャンバ212を通過する。従って、本明細書における流体チャネル500に対する参照は、チャネル500の一部および一区分としてチャンバ212も含む。2つの流体変位アクチュエータ224のそれぞれは、チャネル500の長さに対して非対称的に(即ち、中心を外れて又は偏心して)流体チャネル500内に配置される。チャンバ212は、2つのアクチュエータ224間に位置する。
【0033】
図5は、本開示の一実施形態による、単一アクチュエータポンピングモードで動作する流体変位アクチュエータ224を備える流体吐出デバイス114aの簡易化断面図を示す。
図5a及び
図5bにおいて、図面の右側にある単一のアクチュエータ224は、チャネル500を通る正味の流体の流れを達成するための流体ポンプとしてアクチュエータが動作するように任意に示されて説明される。逆の流れの効果は、図面の左側にある単一のアクチュエータ224が流体ポンプとして動作する場合に達成される。コントローラ110は、単一活性化モジュール126のソフトウェア命令を実行することにより、
図5のアクチュエータ224の単一アクチュエータポンピングモード動作を制御する。従って、モジュール126の実行を介したコントローラ110は、単一アクチュエータ流体ポンピング効果を提供するためにいつでも、どのアクチュエータ224(左側または右側)を動作させるかを決定する。また、
図5a及び
図5bは、ポンピング効果を引き起こし、流体の流れ方向の矢印により示されたチャネル500を通る結果としての正味の流体の流れを生じる例示されたアクチュエータの撓み(X)を達成するためにアクチュエータ224に印加される例示的な電圧波形(V)のグラフも示す。ノズル116の上部にある大きな×は、ノズル116を通る流体の流れが存在しないことを示すことが意図されている。
【0034】
一般に、慣性ポンピングメカニズムは、2つの要因に基づいて流体チャネル500の流体変位アクチュエータ224からのポンピング効果を可能にする。これらの要因は、チャネルの長さに対する、チャネル500のアクチュエータ224の非対称的(即ち、中心を外れて又は偏心して)配置、及びアクチュエータ224の非対称的動作である。
図5に示されるように、2つの流体変位アクチュエータ224のそれぞれは、チャネルの長さに対してチャネル500において非対称的(即ち、中心を外れて又は偏心して)配置される。アクチュエータ224の非対称的動作(即ち、流体変位のタイミング、持続時間および振幅の制御)と共に、この非対称的なアクチュエータの配置により、アクチュエータ224の慣性ポンピングメカニズムを可能にする。
【0035】
図5a及び
図5bを全般的に参照すると、流体チャネル500におけるアクチュエータ224の非対称的位置は、第1の流体供給穴214からアクチュエータ224まで延びるチャネル500の短い方、及びアクチュエータ224から第2の流体供給穴216まで延びるチャネル500の長い方を生じる。チャネル500内でのアクチュエータ224の非対称的位置は、チャネル500内で流体ダイオード特性(即ち、流体の一方方向への流れ)(正味の流体の流れ)を駆動する慣性メカニズムを生じさせる。アクチュエータ224からの流体変位は、2つの相対する方向に流体を押し動かす、チャネル500内で伝播する波動を生成する。チャネル500の長い方に収容されている流体の極めて大量の部分は、順方向流体アクチュエータポンプ行程(即ち、アクチュエータ224のチャネル500への撓みが圧縮流体変位を生じる)の終端において、より大きな力学的慣性を有する。従って、このより大きな流体の固まりは、チャネル500の短い方の流体に比べてゆっくり方向を逆転する。チャネル500の短い方の流体は、逆方向流体アクチュエータポンプ行程(即ち、アクチュエータ224の最初の静止状態またはそれ以上まで戻るアクチュエータ224の撓みが、膨張流体変位を生じる)の間に力学的運動量を獲得するためのより多くの時間がある。従って、逆方向行程の終端において、チャネル500の短い方の流体は、チャネル500の長い方の流体よりも大きな力学的運動量を有する。この結果、正味の流体の流れは、
図5a及び
図5bの黒い方向矢印により示されるように、チャネル500の短い方からチャネル500の長い方への方向に移動する。正味の流体の流れは、2つの流体要素(即ち、チャネル500の短い方と長い方)の等しくない慣性特性の結果である。
【0036】
チャネル500内のアクチュエータ224の非対称的動作は、流体変位アクチュエータ224の慣性ポンピングメカニズムを可能にする第2の要因である。
図5aにおける流体吐出デバイス114aの右側のアクチュエータ224の動作は、アクチュエータ224のより短い圧縮変位(即ち、変位は、より少ない持続時間を有し、チャネル500内へのアクチュエータ224の撓みがより多い)、及びより長い膨張変位(即ち、変位は、持続時間がより長く、チャネル500の外へのアクチュエータ224の撓みがより少ない)を示す。一実施形態において、アクチュエータ224の非対称的動作は、グラフ502の共役したランプ電圧波形を通じてコントローラ110により制御される。類似の共役したランプ電圧波形がアクチュエータ224の非対称的な動作を制御するように全体にわたって説明されるが、アクチュエータ224の動作を非対称に制御することは、他のタイプの駆動波形を用いて達成され得る。アクチュエータ224とグラフ502の共役したランプ電圧波形との間の
図5aにおける点線の矢印は、より強い圧縮変位が時間的に短くより急峻な傾斜の電圧変化に関連付けられ、より小さい膨張変位が時間的により長くなだらかな傾斜の電圧変化に関連付けられることを示す。波形の持続時間および振幅は、アクチュエータ224による変位の持続時間および大きさを制御する。従って、コントローラ110により制御される非対称の持続時間および振幅を有する電圧駆動波形は、アクチュエータ224の非対称動作を駆動する。非対称動作のアクチュエータ224のこの態様を用いて、チャネル500を通る正味の流体の流れの方向は、第1の流体供給穴214における短い方から第2の流体供給穴216における長い方へ向かう。留意すべきは、非対称動作のこの同じ態様が
図5aの左側のアクチュエータ224に関して実現される場合、チャネル500を通る正味の流体の流れの方向は逆転される。
【0037】
流体吐出デバイス114aの右側の、
図5bのアクチュエータ224が、
図5aに示されたものと比べて逆に動作するように示される。即ち、
図5bの右側のアクチュエータ224の動作は、アクチュエータ224のより長い圧縮変位(即ち、変位は、より長い持続時間を有し、チャネル500内へのアクチュエータ224の撓みがより少ない)、及びより短い膨張変位(即ち、変位は、持続時間がより短く、チャネル500の外へのアクチュエータ224の撓みがより多い)を示す。グラフ502の共役したランプ電圧波形および点線の矢印は、より長い/より弱い圧縮変位が時間的により長くなだらかな傾斜の電圧変化に関連付けられ、より小さい膨張変位が時間的に短くより急峻な傾斜の電圧変化に関連付けられていることを示す。非対称動作のアクチュエータ224のこの態様を用いて、チャネル500を通る正味の流体の流れの方向は、
図5aに示されたものから逆転する。チャネル500を通る正味の流体の流れの方向は、第2の流体供給穴216における長い方から第1の流体供給穴214における短い方へ向かう。留意すべきは、非対称動作のこの同じ態様が
図5aの左側のアクチュエータ224に関して実現される場合、チャネル500を通る正味の流体の流れの方向は逆転される。
【0038】
図6は、本開示の一実施形態による、交互するマルチパルス活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータ224を備える流体吐出デバイス114aの簡易化断面図を示す。コントローラ110で実行するマルチパルス活性化モジュール128は、異なる圧縮および膨張流体変位の組み合わせでアクチュエータを活性化するためにマルチパルス活性化でアクチュエータ224を制御する。マルチパルス活性化は、チャネル500を通るより強い正味の方向性のある流体の流れという結果になる、対になっているポンピング動作を提供する。
【0039】
図6に示されるように、マルチパルス活性化モジュール128は、右側および左側のアクチュエータ224を制御し、それらが交互するように活性化されるようになっている。例えば、最初に左側のアクチュエータが圧縮流体変位および膨張流体変位を生じさせる。左側アクチュエータのより強い圧縮変位およびより大きな撓みは、時間的に短くより急峻な傾斜である、グラフ600の共役したランプ電圧波形における電圧変化に関連付けられ(点線の矢印により)、左側アクチュエータの膨張変位およびより少ない撓みは、時間的により長くてよりなだらかな傾斜の電圧変化に関連付けられる。
図5の説明において上述されたように、左側アクチュエータのこの動作は、第2の流体供給穴216におけるチャネル500の短い方(左側アクチュエータに関して)から第1の流体供給穴214における長い方に向かう方向で、チャネル500を通る正味の流体の流れという結果になる。
【0040】
左側アクチュエータが活性化されている間の時間遅延後、マルチパルス活性化モジュール128は、右側アクチュエータを活性化して圧縮流体変位および膨張流体変位を生じさせる。当該時間遅延は、左側アクチュエータの活性化を包含するのに少なくとも十分な長さの持続時間であるが、幾つかの実施形態において右側アクチュエータの活性化が左側アクチュエータの活性化直後に始まらないように、より長い持続時間とすることができる。グラフ600は、右側アクチュエータのより強い膨張変位が、時間的により長くてよりなだらかな傾斜の電圧変化に関連付けられた圧縮変位に比べて、時間的に短くより急峻な傾斜である電圧変化に関連付けられる(点線の矢印により)ことを示す。
図5の説明において上述されたように、右側アクチュエータのこの動作は、第2の流体供給穴216におけるチャネル500の長い方(右側アクチュエータに関して)から第1の流体供給穴214における短い方に向かう方向で、チャネル500を通る正味の流体の流れという結果になる。グラフ600及び以下の式により定義された位相で左側および右側アクチュエータからの対になっているポンピング動作は、1つのアクチュエータのみがポンプとして動作する場合に得られるものに比べて、チャネル500を通るより強い正味の流体の流れという結果になる。即ち、
時間遅延:t=d/v
(v:循環の流量/速度、d:左側アクチュエータと右側アクチュエータとの間の平均距離)
位相遅延:Φ=2πt/T
(T:活性化期間=1/(活性化の頻度))。
【0041】
マルチパルス活性化モジュール128は、右側および左側アクチュエータ224及び活性化状態(例えば、持続時間、振幅、頻度(周波数))を制御して、チャネル500、並びに第1及び第2の流体供給穴214及び216を通る流体の流れを何れの方向にも制御する。一例のみが説明されたが、このマルチパルスモードに関する多数の異なる動作の組み合わせが利用可能である。
【0042】
図7は、本開示の一実施形態による、交互するマルチパルス活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータ224を備える流体吐出デバイス114aの簡易化断面図を示す。この実施形態において、コントローラ110で実行するマルチパルス活性化モジュール128は、
図6に関連して説明されたものとは反対である流体変位を有する交互する態様で左側および右側アクチュエータを活性化するマルチパルス活性化でアクチュエータ224を制御する。従って、マルチパルス活性化は、
図6の実施形態とは反対の方向にチャネル500を通る強い正味の方向性のある流体の流れという結果になる、対になっているポンピング動作を提供する。
【0043】
図7のグラフ700に示されるように、マルチパルス活性化モジュール128は、右側および左側のアクチュエータ224を制御し、それらが交互するように活性化されるようになっている。しかしながら、
図7の実施形態において、膨張および圧縮の流体変位は逆転している。
図7は、時間的により短くより急峻な傾斜である電圧変化に(点線の矢印により)関連付けられた左側アクチュエータのより強い膨張変位およびより大きな撓みを示す。
図7は、時間的により長くてなだらかな傾斜である電圧変化に(点線の矢印により)関連付けられた左側アクチュエータの弱い圧縮変位およびより少ない撓みを示す。左側アクチュエータのこの動作は、第1の流体供給穴214におけるチャネル500の長い方(左側アクチュエータに関して)から第2の流体供給穴216における短い方に向かう方向で、チャネル500を通る正味の流体の流れという結果になる。グラフ700及び上述した時間および位相遅延の式により定義された位相で左側および右側アクチュエータからの対になっているポンピング動作は、1つのアクチュエータのみがポンプとして動作する場合に得られるものに比べて、チャネル500を通るより強い正味の流体の流れという結果になる。
【0044】
図8は、本開示の一実施形態による、同時マルチパルス活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータ224を備える流体吐出デバイス114aの簡易化断面図を示す。この実施形態において、マルチパルス活性化モジュール128は、右側および左側のアクチュエータ224を制御し、それらが同時に(即ち、時間遅延なしに)活性化されるが、互いに反対である変位を有するようになっている。即ち、右側アクチュエータはより大きな撓みと共に短い膨張流体変位を有するが、左側アクチュエータはより大きな撓みと共に短い圧縮流体変位を有する。同様に、右側アクチュエータはより少ない撓みと共に長い膨張流体変位を有するが、左側アクチュエータはより少ない撓みと共に長い圧縮流体変位を有する。上述したように、これら流体変位は、第1の流体供給穴214から第2の流体供給穴216までのチャネル500を通る正味の方向性のある流体の流れを生じさせる。
【0045】
図9は、本開示の一実施形態による、同時マルチパルス活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータ224を備える流体吐出デバイス114aの簡易化断面図を示す。この実施形態において、チャンバ内循環モジュール130は、右側および左側のアクチュエータ224を制御し、それらが同時に及び異なる変位の段階(phase:位相、相)で活性化されるようになっている。従って、
図9に示されるように、左側アクチュエータは、長い持続時間の圧縮流体変位が後続する短い持続時間の膨張流体変位を有するが、右側アクチュエータはそれぞれ、短い持続時間の
圧縮変位が後続する長い持続時間の
膨張変位を有する。時間遅延後、アクチュエータの動作は、グラフ900で示されるように圧縮および膨張流体変位を逆転して続ける。このようにアクチュエータの動作は、圧縮および膨張の流体変位を繰り返し交互に行い、左側アクチュエータと右側アクチュエータとの間で流体を前後にバッシャバッシャ動かすチャネル500(より具体的には、チャネル500のチャンバ212の部分)内の流体の移動を引き起こし、チャンバ212内で局所的な流体循環ループ902を形成する。
【0046】
図10は、本開示の一実施形態による、同時同相活性化モードにおいて動作する流体変位アクチュエータ224を備える流体吐出デバイス114aの簡易化断面図を示す。この実施形態において、小滴吐出循環モジュール132は、右側および左側のアクチュエータ224を制御し、それらが同時に及び同じ圧縮変位の段階(位相)で活性化されるようになっている。
図3aに関連して上述されたように、このタイプの、左側および右側アクチュエータ224の同時で同じ段階(同相)の圧縮変位駆動は一般に、小滴吐出という結果になる。また、これは、
図10の本実施形態の場合である。しかしながら、
図10の実施形態において、左側および右側アクチュエータ224を駆動する電圧波形の振幅は、グラフ1000で示されるように異なる。従って、左側アクチュエータよりも右側アクチュエータにより生じる流体変位は大きい。小滴吐出循環モジュール132は、右側および左側アクチュエータ224を制御して、ノズル116を通して液滴を吐出するのに十分なエネルギーを有する同時の圧縮流体変位を引き起こす。更に、右側アクチュエータからの余分な圧縮流体変位は、第1の流体供給穴214から第2の流体供給穴216へ向かう正味の方向性のある流体の流れをチャネル500内に生じさせる。別の実施形態(図示せず)において、左側アクチュエータは右側アクチュエータよりも大きな電圧波形で駆動されることができ、第2の流体供給穴216から第1の流体供給穴214へ向かうチャネル500における正味の方向性のある流体の流れを生じさせる左側アクチュエータからの追加の圧縮流体変位を生じさせる。
【0047】
図11は、本開示の一実施形態による、流体吐出デバイス114(例えば、プリントヘッド)の中で流体を循環させる例示的な方法1100の流れ図を示す。方法1100は、
図1〜
図10に関連して本明細書で説明された実施形態に関連する。方法1100は、第1のアクチュエータ224からの異なる持続時間の圧縮および膨張の流体変位を生じる一方で、第2のアクチュエータ224からの流体変位を生じないブロック1102から始まる。第1のアクチュエータは、第1の流体供給穴214とノズル116との間で流体チャネル500内に非対称的に配置され、第2のアクチュエータはノズルと第2の流体供給穴216との間でチャネル内に非対称的に配置される。
【0048】
一具現化形態において、圧縮および膨張の流体変位を生じることは、第1の持続時間の圧縮流体変位、及び第1の持続時間とは異なる第2の持続時間の膨張流体変位を生じることを含む。一具現化形態において、第1の持続時間は、第2の持続時間よりも短く、流体変位により、流体が第1の方向にチャネルを流れる。一具現化形態において、第1の持続時間は、第2の持続時間よりも長く、流体変位により、流体が第2の方向にチャネルを流れる。一具現化形態において、異なる持続時間の圧縮および膨張の流体変位を生じることは、第1のアクチュエータの活性化を駆動する電圧波形をコントローラに制御させる機械可読ソフトウェアモジュールを実行することを含む。
【0049】
一具現化形態において、圧縮流体変位を生じることは、チャネル内の領域を低減するように第1のアクチュエータをチャネル内へと撓める(曲げる)ことを含む。一具現化形態において、膨張流体変位を生じることは、チャネル内の領域を増大させるようにチャネルの外へ第1のアクチュエータを撓めることを含む。
【0050】
方法1100は、第2のアクチュエータからの異なる持続時間の圧縮および膨張の流体変位を生じる一方で、第1のアクチュエータからの流体変位を生じないブロック1104で継続する。
【0051】
方法1100のブロック1106では、双方のアクチュエータからの圧縮および膨張の流体変位を生じるために第1及び第2のアクチュエータの交互する活性化である。一具現化形態において、交互する活性化は、第1のアクチュエータを活性化する一方で、第2のアクチュエータを活性化しないことを含む。具現化形態は、第1のアクチュエータを活性化する間に時間遅延を実行することを含み、この場合、時間遅延は、少なくとも第1のアクチュエータを活性化する間に続く。時間遅延が終了した後、方法は、第2のアクチュエータを活性化することを含む。一具現化形態において、第2のアクチュエータの活性化の間、第1のアクチュエータの活性化は、時間遅延により遅延する。第2のアクチュエータの活性化後、第1のアクチュエータが活性化される。
【0052】
図12は、本開示の一実施形態による、流体吐出デバイス114(例えば、プリントヘッド)の中で流体を循環させる別の例示的な方法1200の流れ図を示す。方法1200は、
図1〜
図10に関連して本明細書で説明された実施形態に関連する。方法1200は、圧縮および膨張の流体変位を生じるために第1及び第2のアクチュエータの同時活性化を生じるブロック1202から始まり、この場合、第1及び第2のアクチュエータは、圧縮流体変位と膨張流体変位との間で交互になり、そのためそれらは同時に圧縮または膨張の流体変位を生じない。
【0053】
一具現化形態において、第1のアクチュエータは、第1の流体供給穴214とノズル116との間で流体チャネル500内に非対称的に配置され、第2のアクチュエータはノズル116と第2の流体供給穴216との間でチャネル内に非対称的に配置される。一具現化形態において、ノズル116とチャンバ212は、アクチュエータ間に位置し、同時の活性化は、アクチュエータ間で前後の流体の流れを生じさせる。
【0054】
方法1200のブロック1204において、第1及び第2のアクチュエータは、ノズルから液滴を吐出してチャネルを通る正味の方向性のある流体の流れを生じさせるものと異なる圧縮変位の大きさを有する同時の圧縮流体変位を生じるように活性化される。