【実施例】
【0029】
(フェノール樹脂の製造)
[実施例1]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール300.8g、カルダノール60.2g、群栄化学工業製異性化糖HF95(フルクトース源含有率95質量%、固形分75質量%水溶液)192g(固形分144g)、硫酸2.5gを仕込んだ。その際、硫酸の添加量はフェノールと糖質類の固形分の合計量の0.5質量%とした。
次に、昇温途中で生成する水を取り除きながら155℃まで加熱し、155℃を保持したまま1時間撹拌した後、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム1.9gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール175gを留去して、266gのフェノール樹脂(F−1)を得た。
【0030】
[実施例2]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール300.8g、カルダノール60.2g、群栄化学工業製異性化糖HF95(フルクトース源含有率95質量%、固形分75質量%水溶液)96g(固形分72g)、群栄化学工業製異性化糖HF55(フルクトース源含有率55質量%、固形分75質量%水溶液)96g(固形分72g)、硫酸2.5gを仕込んだ。その際、硫酸の添加量はフェノールとカルダノールと糖質類の固形分の合計量の0.5質量%とした。
次に、昇温途中で生成する水を取り除きながら155℃まで加熱し、155℃を保持したまま1時間撹拌した後、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム1.9gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール164gを留去して、278gのフェノール樹脂(F−2)を得た。
【0031】
[実施例3]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール300.8g、カルダノール60.2g、群栄化学工業製異性化糖HF55(フルクトース源含有率55質量%、固形分75質量%水溶液)192g(固形分144g)、硫酸2.5gを仕込んだ。その際、硫酸の添加量はフェノールとカルダノールと糖質類の固形分の合計量の0.5質量%とした。
次に、昇温途中で生成する水を取り除きながら155℃まで加熱し、155℃を保持したまま1時間撹拌したあと、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム1.9gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール155gを留去して、289gのフェノール樹脂(F−3)を得た。
【0032】
[実施例4]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール300.8g、カルダノール105.3g、群栄化学工業製異性化糖HF55(フルクトース含有源率55質量%、固形分75質量%水溶液)192g(固形分144g)、硫酸2.8gを仕込んだ。その際、硫酸の添加量はフェノールとカルダノールと糖質類の固形分の合計量の0.5質量%とした。
次に、昇温途中で生成する水を取り除きながら155℃まで加熱し、155℃を保持したまま1時間撹拌したあと、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム2.1gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール153gを留去して、312gのフェノール樹脂(F−4)を得た。
【0033】
[比較例1]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール300.8g、カルダノール60.2g、タピオカ澱粉(フルクトース源含有率0質量%、固形分88質量%)78.7g(固形分69.2g)、砂糖(フルクトース源含有率50質量%)74.8g、硫酸2.5gを仕込んだ。その際、硫酸の添加量はフェノールとカルダノールと糖質類の固形分の合計量の0.5質量%とした。
次に、昇温途中の生成する水を取り除きながら155℃まで加熱し、155℃を保持したまま1時間撹拌したあと、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム1.9gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール131gを留去し、315gのフェノール樹脂(F−5)を得た。
【0034】
[比較例2]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール300.8g、カルダノール60.2g、タピオカ澱粉(フルクトース源含有率0質量%、固形分88質量%)128.8g(固形分113.3g)、砂糖(フルクトース源含有率50質量%)30.6g、硫酸2.5gを仕込んだ。なお、硫酸の添加量はフェノールとカルダノールと糖質の固形分の合計量の0.5質量%とした。
次に、昇温途中の生成する水を取り除きながら155℃まで加熱し、155℃を保持したまま1時間撹拌したあと、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム1.9gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール122gを留去し、316gのフェノール樹脂(F−6)を得た。
【0035】
[比較例3]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール300.8g、カルダノール105.3g、タピオカ澱粉(フルクトース源含有率0質量%、固形分88質量%)128.8g(固形分113.3g)、砂糖(フルクトース源含有率50質量%)30.6g、硫酸2.8gを仕込んだ。なお、硫酸の添加量はフェノールとカルダノール糖質の固形分の合計量の0.5質量%とした。
次に、昇温途中の生成する水を取り除きながら155℃まで加熱し、155℃を保持したまま1時間撹拌したあと、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム2.1gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール114gを留去し、359gのフェノール樹脂(F−7)を得た。
【0036】
[比較例4]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール300g、50質量%ホルマリン156g、シュウ酸2.1gを仕込んだ。なお、フェノールに対するホルマリンのモル比率は0.815、シュウ酸の添加量はフェノールの0.7質量%とした。
次に、61kPaの減圧下95℃まで加熱し減圧、温度を保持したまま2時間撹拌した後、11kPaに減圧し反応で生じた水を除去した。さらに常圧下、生成する水を取り除きながら180℃まで加熱し、180℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール36gおよび水を留去し、312gのフェノール樹脂(F−8)を得た。
【0037】
[比較例5]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール270g、群栄化学工業製異性化糖HF55(フルクトース源含有率55質量%、固形分75質量%水溶液)144g(固形分108g)、硫酸1.9gを仕込んだ。なお、硫酸の添加量はフェノールと糖質の固形分の合計量の0.5質量%とした。
次に、昇温途中の生成する水を取り除きながら155℃まで加熱し、155℃を保持したまま1時間撹拌したあと、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム1.4gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール109gを留去し、201gのフェノール樹脂(F−9)を得た。
【0038】
[比較例6]
温度計、撹拌装置、冷却管を備えた500mlの三口フラスコに、フェノール338.4g、群栄化学工業製異性化糖HF55(フルクトース源含有率55質量%、固形分75質量%水溶液)144g(固形分108g)、硫酸2.2gを仕込んだ。硫酸の添加量はフェノールと糖質の固形分の合計量の0.5質量%とした。
次に、昇温途中の生成する水を取り除きながら155℃まで加熱し、155℃を保持したまま1時間撹拌したあと、少量の水に懸濁させた水酸化カルシウム1.7gを添加して中和した。その後、200℃、11kPaの減圧下で未反応のフェノール162gを留去し、223gのフェノール樹脂(F−10)を得た。
【0039】
(評価)
得られたフェノール樹脂について、軟化点、流動性、植物由来率、カルダノール変性率を以下の方法で測定した。測定結果を表1に示す。
[軟化点]JIS K6910に従って測定した。
[流動性]JIS K6910に従って測定した。
[植物由来率]植物由来率=100−{[(フェノール仕込み質量)−(留去した未反応フェノール質量)+(中和塩の質量(理論値))]/(樹脂収量質量)}×100
[カルダノール変性率]カルダノール変性率=[(カルダノール仕込み質量)/(樹脂収量質量)]×100
【0040】
【表1】
【0041】
カルダノールを含むフェノール類と異性化糖(フルクトース源含有率が50質量%を超える)とを反応させて得た実施例1〜4のフェノール樹脂は軟化点が低く、流動性に優れ、さらに植物由来率が高かった。
糖質類として澱粉・砂糖(フルクトース源含有率が50質量%以下)を用いて得た比較例1〜3のフェノール樹脂は軟化点が高く、流動性が低かった。
ホルマリンを用いた一般的なフェノール樹脂である比較例4のフェノール樹脂は植物由来率が低かった。
フェノールと異性化糖(フルクトース源含有率が50質量%を超える)とを反応させて得た比較例5,6のフェノール樹脂は、植物由来率が低い上に、軟化点が高く、流動性が低かった。
【0042】
(熱硬化性材料の製造)
[実施例5]
フェノール樹脂(F−1)100g、木粉98g、硬化剤としてヘキサメチレンテトラミン20g、硬化助剤として水酸化カルシウム7g、滑剤としてステアリン酸亜鉛3g、着色剤としてカーボンブラック1.5gを混合混練して、成形材料を作製した。
[実施例6〜8、比較例7〜12]
フェノール樹脂(F−1)を表2に示すフェノール樹脂に変更した以外は実施例5と同様にして、成形材料を作製した。
【0043】
[成形加工性]
各実施例および各比較例の成形材料を、射出成形機(日精樹脂工業社製PNX−40)を用いて170℃にて2分間の成形条件で射出成形すると共に硬化させて成形物を得た。その際の生産性、得られた成形物の品質を、以下の基準で評価した。評価結果を表2に示す。
◎:流動性が高いため成形しやすく、成形物外観にも問題なし。
○:成形できるが、流動性がやや低く、射出時ショートショットになりやすい。
△:流動性が高いため成形しやすいが、硬化が遅いため、成形物にふくれが生じる。
▲:流動性が低いため成形しにくく、硬化が遅いため成形物にふくれが生じる。
×:射出時の樹脂粘度が高く、射出することができない。
【0044】
[曲げ強度、ヤング率および曲げたわみ量の測定]
各実施例および各比較例の成形材料を、射出成形機(日精樹脂工業社製PNX−40)により射出成形すると共に硬化させて成形物を得た。得られた成形物を用いて、JIS K6911に従って、曲げ強度、ヤング率(曲げ弾性率)を25℃にて測定した。また、曲げ試験において成形物が破断までにたわんだ変位量を曲げたわみ量として測定した。測定結果を表2に示す。曲げ強度が高い程、ヤング率が低い程、曲げたわみ量が小さい程、機械的物性が良好となる。
なお、比較例7,8,11については、成形不能であったので、曲げ強度、ヤング率および曲げたわみ量を測定しなかった。
【0045】
【表2】
【0046】
実施例1〜4の各フェノール樹脂を含有する実施例5〜8の成形材料は、成形加工性に優れる上に、得られた成形物の曲げ強度が高く、ヤング率が小さかった。特に、実施例5,6,7は、一般的なフェノール樹脂(比較例10)を用いた場合と同程度の曲げ強度を持ちながらも、ヤング率が低かった。
比較例3の、澱粉・砂糖の糖質類を用いて得たフェノール樹脂を含有する比較例9の成形材料は、成形加工性が低く、得られた曲げ強度が低かった。
比較例4の、フェノール樹脂としてホルマリンを用いて得たものを用いた比較例10の成形材料は、植物由来率が低かった。また、得られた成形物のヤング率が高く、曲げたわみ量が小さかった。
比較例6の、フェノールと澱粉・砂糖とを反応させて得たフェノール樹脂を含有する比較例12の成形材料では、得られた成形物の曲げ強度が低く、ヤング率が高く、曲げたわみ量が小さかった。
比較例1のフェノール樹脂を含有する比較例7の成形材料、比較例2のフェノール樹脂を含有する比較例8の成形材料、比較例5のフェノール樹脂を含有する比較例11の成形材料は、使用したフェノール樹脂の軟化点が高く流動性が低いため、射出成形時の樹脂粘度が高く、射出成形できなかった。