特許第5731774号(P5731774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5731774自己着火式オットーエンジンの運転のための方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731774
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】自己着火式オットーエンジンの運転のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 13/02 20060101AFI20150521BHJP
   F02D 41/02 20060101ALI20150521BHJP
   F02B 1/12 20060101ALI20150521BHJP
   F02B 11/00 20060101ALI20150521BHJP
   F02B 23/10 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   F02D13/02 Z
   F02D41/02 355
   F02B1/12
   F02B11/00 A
   F02B11/00 B
   F02B23/10 320
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-198488(P2010-198488)
(22)【出願日】2010年9月6日
(65)【公開番号】特開2011-58491(P2011-58491A)
(43)【公開日】2011年3月24日
【審査請求日】2013年9月6日
(31)【優先権主張番号】10 2009 029 383.3
(32)【優先日】2009年9月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・エフ・カサル・クルツァー
(72)【発明者】
【氏名】ローランド・カレルマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーナ・ザウアー
【審査官】 立花 啓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−168029(JP,A)
【文献】 特開2007−177654(JP,A)
【文献】 特開2001−020765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 1/00 −23/10
F02D 9/00 −11/00
F02D 13/00 −28/00
F02D 29/00 −29/06
F02D 41/00 −41/40
F02D 43/00 −45/00
F02P 5/145− 5/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの吸気弁(14)と、一つ又は複数の可変制御排気弁(15)と、オットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)の連続把捉のためのセンサ(21)と、オットーエンジン(OM)の回転数(n)の把捉のためのセンサ(22)とを備え、燃料が少なくとも一つの燃焼室(10)の中へ直接噴射され、オットーエンジン(OM)が望ましい燃焼重心(MFB50%)に調節されるように運転される、自己着火式オットーエンジン(OM)の運転のための方法において、
燃焼重心(MFB50%)のための見積り値(MFB50%λ)がオットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)とオットーエンジン(OM)の回転数(n)とに応じて求められ
少なくとも一つの排気弁(15)の弁アクチュエータ(19)が、オットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)に応じて制御され、
ピストン運動に係わっている、排気弁(15)が閉じられる時点がオットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)に応じて制御され、
制御の枠組みの中で前もって定められている空気燃料比(λ)の迅速な調節のためにプレ制御器(26)が用いられることを特徴とする方法。
【請求項2】
燃焼重心のための見積り値(MFB50%λ)の把捉のために特性マップ(32)が用いられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
燃料の自己着火点が燃焼重心(MFB50%)のための見積り値(MFB50%λ)に応じた噴射開始の制御を通じて制御されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも一つの吸気弁(14)と、一つ又は複数の可変制御排気弁(15)と、オットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)の連続把捉のためのセンサ(21)と、オットーエンジン(OM)の回転数(n)の把捉のためのセンサ(22)と、少なくとも一つの燃焼室(10)の中へ燃料を直接噴射するためのインジェクタ(18)とを備え、望ましい燃焼重心(MFB50%)に調節されてオットーエンジン(OM)が運転されるように、制御装置(SG)が構成されている、自己着火式オットーエンジン(OM)の運転のための制御装置(SG)において、
制御装置(SG)が、燃焼重心(MFB50%)のための見積り値(MFB50%λ)をオットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)とオットーエンジン(OM)の回転数(n)とに応じて求めるように構成されており、
少なくとも一つの排気弁(15)の弁アクチュエータ(19)が、オットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)に応じて制御され、
ピストン運動に係わっている、排気弁(15)が閉じられる時点がオットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)に応じて制御され、
制御の枠組みの中で前もって定められている空気燃料比(λ)の迅速な調節のためにプレ制御器(26)が用いられることを特徴とする制御装置。
【請求項5】
請求項2または3に記載の方法を制御するように構成されていることを特徴とする、請求項に記載の制御装置(SG)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念に基づく方法並びに請求項7の上位概念に基づく制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
その様な目的は既にドイツ国特許出願公開 10 2006 041467 A1 から知られている。この文書には燃料が直接シリンダの中へ噴射されて空気と化学的に燃焼される内燃機関の運転のための方法が記載されている。燃料の燃焼はオットーエンジンの自己着火法によって行われる。
【0003】
オットーエンジンの自己着火(Controlled Auto Ignition−CAI)は部分負荷領域内では同時に低い有害物質の排出を実現しながら燃料消費の低減のための高いポテンシャルをもたらす。従ってこの燃焼方法は現在集中的に研究されている。オットーエンジンの自己着火の場合には均質な空気=燃料=混合気が圧縮される。この混合気は、燃焼室内で十分に高い温度とそれに対応する圧力が到達されるや否や、自己着火する。
【0004】
その際空気=燃料=混合気の自己着火のために必要な混合気温度はシリンダ内での先行の作動サイクルからの熱い残留ガスの維持によって達成される。その様な排気ガス維持は、シリンダの可変制御可能な排気弁がガス交換=上死点の到達のずっと前に閉じられ且つシリンダ内に残っている熱い残留ガスが圧縮されることによって達成される。吸気弁はシリンダ内で再び吸気管圧力が支配的となった時に初めて、フローロス(流れ損失)を避けるために新気供給のために開かれる。
【0005】
刊行物 102006 041 467 A1 には、空気=燃料=混合気の自己着火が作動サイクルのためにシリンダ内へ噴射される燃料量をプレ噴射とメイン噴射に可変的に分割することによって制御されると云う制御コンセプトが記載されている。プレ噴射はガス交換の上死点の前に行われ、又メイン噴射はその後の吸入段階の間に行われる。更にその後に続く圧縮の終了の際に到達されるシリンダ充填気の温度はDE 10 2006 041 467A1 によればプレ噴射の割合が増えるのに伴って上昇する。プレ噴射の割合を0%と10 %の間で変化させた場合、圧縮終了時温度に約60Kの違いが観察された。
【0006】
燃焼の制御のために DE 10 2006 041 467 A1の制御コンセプトは指示平均圧力のための制御器、ラムダ制御器、及び燃焼状態のための制御器から成る組合せを提案している。
【0007】
指示平均圧力のための制御器は制御値としてメイン噴射時間長さ、従ってメイン噴射によって噴射される燃料量、を出力する。この制御値によって負荷が制御される。換言すれば:望ましいトルクはこの制御値を用いて調節される。
【0008】
ラムダ制御器はラムダゾンデの信号を処理して制御値にし、この制御値を用いて排気カムシャフトの位相位置が又従ってシリンダ内の残留ガス量が調節される。
燃焼状態のための制御器は入力値として加熱過程の50%=変換ポイントを用いて作動する。50%=変換ポイントが遅過ぎる位置にある場合にはプレ噴射時間長さが延長されるのに対して、早過ぎる場合にはプレ噴射時間長さが短縮される。50%=変換ポイントはシリンダ毎のシリンダ圧力センサ或いはイオン流センサによって生み出されるシリンダ毎の燃焼情報から導き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開10 2006 041 467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上の様な技術水準から出発して我々の発明は、出来る限り簡単且つ経済的なやり方で、出来る限り希薄な混合気組成によって、オットーエンジンの効率的に最適化された運転を調節し、その際には自己着火温度が生み出され又燃焼状態が最適化されなければならない、と云うことを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題はそれぞれ独立の請求項のメルクマールによって解決される。
ここで、燃焼重心(Verbrennungsschwerpunkt)MFB50%とは、燃料の50%が燃焼されている点であると理解される。燃焼重心 MFB50%の見積り値 MFB50%λはオットーエンジンの空気=燃料=比λとオットーエンジンの回転数nとに依存して求められるから、DE 10 2006 041467 A1 の目的の場合には必要となるシリンダ毎の圧力=及び/又はイオン流=センサは無しで済ますことが出来る。空気=燃料=比λはオットーエンジンの排気ガスから既に存在しているラムダゾンデを用いて求められる。オットーエンジンの回転数nも通常は又既に存在している回転数センサを用いて確定することが出来る。従って実際の燃焼重心はラムダゾンデ或いは回転数センサの何れにせよ求められる測定値を用いて確定することが出来、又そのために何らの追加のセンサも必要ではない。かくして本発明は燃焼重心 MFB50%の確定のために何れにせよ存在しているセンサ装置の多重利用を可能にする。
【0012】
燃焼重心 MFB50%を求めるために特性マップが使用されると有利である。
本発明の一つの有利な実施態様によれば、燃料の自己着火時点は噴射開始の制御を通じて燃焼重心 MFB50%の見積り値 MFB50%λによって制御される。
【0013】
少なくとも一つの排気弁の弁アクチュエータがオットーエンジンの空気=燃料=比λによって制御されると有利である。
ピストンの運動に係わっている、排気弁の閉じられる時点がオットーエンジンの空気=燃料=比λに応じて制御されると有利である。
【0014】
かくしてこの制御は、それぞれのシリンダの排気弁の閉弁過程の開始及び/又は終了を、開弁過程は同じに保ちながら事前設定することによって、望ましい空気=燃料=比をオットーエンジンの一つのシリンダの中で調節することを可能にする。その際排気弁の閉弁過程はピストンが上死点に到達する前に終了されている様に制御される。これによって熱い排気ガスの一部がシリンダ内に残され且つ追加的に圧縮され、又これによって、開かれた吸入弁を通したその後の新気の供給と燃料噴射によって形成される混合気の温度が高められる。
【0015】
制御の枠組みの中で事前設定された空気=燃料=比λをより迅速に調節するためにプレ制御器が用いられると有利である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明に基づく方法で用いられるアクチュエータ及びセンサの略図を示す。
図2図2は マイナスのバルブオーバーラップを持つ自己着火式オットーエンジンの一つのシリンダの中の圧力変化のグラフを示す。
図3図3は燃焼重心の調節のための本発明に基づく制御コンセプトによるブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一つの好ましい実施例が以下に図面に基づいて詳しく説明される。
図1は本発明に基づく方法の枠組みの中で自己着火式オットーエンジンOMの中で用いられる諸構成要素、並びにそれに付随しているデータの流れを示している。シリンダ10のピストン11はコンロッド12を介してオットーエンジンOMのクランクシャフト13を駆動する。給気路16を通して新気がシリンダ10内へ吸入され、その際新気は、制御時間が吸気弁アクチュエータ17によって事前設定されている吸気弁14を通して送り込まれる。インジェクタ18は制御装置SGのコマンドINに基づいて燃料をシリンダ10の中へ噴射し、それによってそこに空気=燃料=混合気が形成され、次いでこの混合気が燃焼され、その際にピストン11を駆動する。その際に発生した排気ガスは排気ガス路20を通してシリンダ10の外へ押し出される。この排気ガスの押し出しは排気弁アクチュエータ19によって操作される排気弁15を通じて制御される。このために排気弁アクチュエータ19は制御装置SGからとりわけ閉弁信号EVC(Exhaust Valve Closing)を受け取り、これによって、前もって上に持ち上げられていた排気弁が閉じられる。ラムダゾンデ21は押し出された排気ガス中の混合気の空気=燃料=比λを求め、これに対応する測定値λactualを制御装置SGへ送り込む。制御装置SGは更に、回転数センサ22によって把捉されるオットーエンジンOMの実際の回転数nを受け取る。ところで制御装置(SG)はここに提示されている方法及び/又はその実施例の一つの流れを制御する様に仕立てられ、又とりわけその様にプログラムされている。自己着火燃焼法の枠組みの中における個々の構成要素の連係動作を以下に図2に基づいて詳しく説明する。
【0018】
図2は4=サイクル=オットーエンジンOMの自己着火燃焼プロセスの枠組みの中におけるシリンダ圧力の変化1をカムシャフト角度φ(水平軸)に対するグラフとして示している。図2更に吸気弁14の弁ストローク5と排気弁15の弁ストローク3を、共に同じくクランクシャフト角度φに対するグラフとして示している。垂直軸の上には圧力p並びに弁ストロークhが定性的に取られている。
【0019】
図2に示されている排気ガス留保式の自己着火燃焼プロセスはそれぞれ異なる角度位置に割当てることの出来る四つの行程、即ち吸気行程(0°−180°)、圧縮行程(180°−360°)、作動行程(360°−540°)、及び排気行程(180°−0°)、を含んでいる。吸気工程の初めに参照記号9で示されているカムシャフト角度の下でシリンダ10の中の圧縮された熱い残留ガスの中への燃料の噴射が行われる。シリンダ10の中で吸気管圧力が支配的であると、新気を吸入するために吸気弁14が開かれる。それに続く圧縮工程の枠組みの中で先ずシリンダ10の吸気弁14が閉じられ、次いでシリンダ10の中にある空気=燃料=残留ガス混合気が圧縮される。この圧縮プロセスによって混合気温度が、圧縮工程の終わりに着火温度が到達されるまで、上昇する。混合気はほぼ同時に燃焼室10全体で着火し始め、これによって混合気を通して走る火炎フロントが回避される。熱の解放が高い局部温度無しに行われるので、熱による酸化窒素の形成は劇的に低減される。シリンダ10のピストン11がφ=360°の上死点を通過した後も、燃焼プロセスはシリンダ圧力を更に上昇させるので、最大圧力はクランクシャフト角度φが360°を幾らか越えた時の作動工程の開始の少し後にピストン11の上に現れる。作動工程の終了の少し前に540°よりもわずかに少ないクランクシャフト角度φの下で排気弁15が開かれ、続く排気行程で熱い排気ガスの大部分が排気弁15を通してシリンダ10の外へ押し出される。排気弁15は排気行程の間のおよそ−90°のクランクシャフト角度φの時に再び閉じられる。この閉弁は従って、ピストン11がφ=0の上死点の到達する時点よりも明らかに前に行われる。従って加熱された排気ガスの一部がシリンダ10の中に残留ガスとして残される。
【0020】
上述の排気ガス留保方法の場合に決定的なのは、シリンダ10内での排気ガス保持によって後続の混合気の温度レベルが引き上げられ、それによって圧縮工程の終わりにはシリンダ10内で従来のガソリン燃料の自己着火のために必要なおよそ1,000ケルビンの温度が到達されると云うことである。
【0021】
本発明は上に説明された自己着火式燃焼方法の燃焼状態の最適化のための制御を提示している(図2)。その際この制御は次の二つの機能を満たしている:一つにはこの制御は要求される空気=燃料=比λを調節し、その際この制御は−排気弁15の開弁の開始を同じに保ちながら−排気弁(15)が閉じられる、ピストンの運動と関係づけられた時点を制御する。もう一つにはこの制御は噴射時点を又それによって燃焼の開始(自己着火時点)並びに、自己着火時点と同時に現れる燃焼重心MFB50%の位置を制御する。この制御は好ましくは制御装置SGの中で実現される。
【0022】
図3は本発明に基づく制御をブロック図として示している。制御の入力値は基準値事前設定装置40によって形成される、事前設定された空気=燃料=比λsetである。燃焼プロセスの最高の効率を達成するために、出来るだけ希薄な混合気組成、即ちλ>1、が目指される。そのためには次の様な幾つかのやり方がある:空気=燃料=比λに対しては一つには排気弁15の制御時点を通じて、又もう一つには燃料の噴射量を通じて、制御されることが出来る。本発明に基づく制御はトルクの基準値をベースとしているが、トルクを生み出すためには所定の燃料量が必要である。従って望ましい空気(新気)=燃料=比λsetは燃焼室充填気の燃料成分の変化を通じてではなく、新気成分の変化を通じて調節される。その際新気成分は残留ガス成分の調節の結果として、それ故、排気弁15の閉弁時点の制御を通じて制御される、先行する作動工程からの留保された排気ガスの量を通じて、生み出される。
【0023】
出来る限り希薄な混合気組成、それ故高い空気成分割合を持つ混合気、を獲得するために、先ずλ=制御器24が基準値λsetと実際値λactualとの間の制御偏差eに応じて最初の制御介入を行う。この最初の制御介入はλ=制御器24によって、制御偏差eが最小となる様に行われる。この最初の制御介入はプレ制御器26がλsetに応じて求めた最初のベース値を用いて結節点30によって行われる。このベース値は例えば基準値λsetの事前に与えられ且つ制御装置SGの中に格納されている依存関係から生み出される。最初の制御介入と結び付けられているこのベース値は制御値EVCを形成し、この制御値EVCはオットーエンジンOMの排気弁アクチュエータ19に送られて排気弁15の閉弁をもたらす。λ=制御器24は排気弁15の閉弁プロセスを、オットーエンジンOMのシリンダの中に閉じ込められている空気=燃料=混合気の空気過剰率が基準値に接近する様に最適化する。基準値は好ましくは、その調節が自己着火温度の確実な到達を保証する様に、事前決定されている。それ故シリンダ10内には熱い残留ガスの定められた最少量が残されていなければならないが、この残留ガスは先行する作動行程の理論空燃比を越える燃焼室充填気(λ>1)に由来しており、未だ酸素を含んでいる。λ=制御器24はそのために、対応する制御値EVCを求める。この制御の枠組みの中では又ラムダゾンデ21によって実際の空気過剰率λactualもオットーエンジンOMから排出される排気ガスを用いて求められる。λactualのこの値は結節点28を通るフィードバック=ループを通して基準=空気過剰率λsetから差し引かれ、その差が制御偏差eとして制御器λ=制御器24へ送り込まれる。
【0024】
一定に保持された混合気の燃料成分割合に対して空気成分割合を線化させることによって行われる空気=燃料=比λの変化によれば、加熱された残留ガス成分割合と共にガス混合気温度も変化する。これによって、圧縮段階で自己着火温度が達成又/或いはオーバーされる時点も変化する。この時点はシリンダ充填気の燃焼開始を示している。燃焼開始に応じて燃焼状態が変化して燃焼重心 MFB50%が移動する。燃焼重心 MFB50%が前もって定められている燃焼重心 MFB50%setと(最早)一致しなくなると燃焼状態の修正が行われなければならない。この目的のために実際の燃焼重心が求められなければならない。
【0025】
これは追加の補助手段無しに間接的に実際の空気=燃料=比λactualとオットーエンジンOMの実=回転数nに応じて見積もられる。或る実施例ではこの見積りは値MFB50%λが格納されており且つ実際の空気=燃料=比λactualと実回転数nとを用いてアドレスされる特性マップ32にアクセスすることによって行われる。次いでこの見積もられたMFB50%λ値に応じて、噴射時点の変化を通じて燃焼状態の修正が行われる。
【0026】
この目的のために制御器MFB50%=制御器34が入力信号として制御偏差kを受取るが、この制御偏差kは結節点36を通じて見積り値MFB50%λと、基準値事前設定装置46から与えられる基準=燃焼重心MFB50%setとの間で形成される。見積り値MFB50%λはこの制御のためには実際値を表している。MFB50%=制御器34は制御偏差kから噴射時点の調節のために第二の制御介入値を生み出すが、この第二の制御介入値は制御偏差kが最小化される様に作られる。第二の制御介入値は結節点38で第二のベース値と結合される;この第二のベース値はプレ制御器42によって燃焼重心の前もって定められている基準値MFB50%setに応じて生み出される。第二の制御介入値と結合される第二のベース値はアクチュエータ44のための制御値SOI(start of injection 噴射開始)を生み出し、このアクチュエータ44はこの制御値SOIに応じてインジェクタ18を通じて噴射を行わせる。
【0027】
燃焼重心MFB50%のダイナミックな調節のために重要な前提条件となるのは実際の燃焼重心の見積りの助けとなる実際の空気=燃料=比λactualを迅速に把捉することである。或る実施態様では、残留ガスが排気行程の終わりの中間圧縮によって着火され、それによってその後に調節される混合気温度が影響を受けることが無い様にするために、噴射は吸気行程の中及び/又は圧縮行程の中で初めて行われる。
【0028】
別の実施態様では、全体として噴射される燃料量を増やすために、一回又は二回の噴射を充填気交換行程(Ladungswechseltakt)の中で又/或いは圧縮行程の中で行わせることが考えられている。その際充填気交換行程と云うのは弁14及び15が閉じられている時の中間圧縮段階であると理解されている。更には、制御値EVC及びSOIを対応する亜口に対して直接送り込むのではなく、アクチュエータを制御する中央制御装置を通じて送り込むと云うことも考えられる。
【0029】
本発明はかくして、何れにせよ制御装置SGに対して送り込まれる空気=燃料=比の実際の値λactualとエンジン回転数nを再度利用し、その際噴射時点の調節によって燃焼状態を最適化することにより、出来るだけ希薄な混合気組成の下でオットーエンジンOMの効率的に最適な運転を可能にする。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
[形態1]
少なくとも一つの吸気弁(14)と、一つ又は複数の可変制御排気弁(15)と、オットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)の連続把捉のためのセンサ(21)と、オットーエンジン(OM)の回転数(n)の把捉のためのセンサ(22)とを備え、燃料が少なくとも一つの燃焼室(10)の中へ直接噴射され、オットーエンジン(OM)が望ましい燃焼重心(MFB50%)に調節されるように運転される、自己着火式オットーエンジン(OM)の運転のための方法において、
燃焼重心(MFB50%)のための見積り値(MFB50%λ)がオットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)とオットーエンジン(OM)の回転数(n)とに応じて求められることを特徴とする方法。
[形態2]
燃焼重心のための見積り値(MFB50%λ)の把捉のために特性マップ(32)が用いられることを特徴とする、形態1に記載の方法。
[形態3]
燃料の自己着火点が燃焼重心(MFB50%)のための見積り値(MFB50%λ)に応じた噴射開始の制御を通じて制御されることを特徴とする、形態1または2に記載の方法。
[形態4]
少なくとも一つの排気弁(15)の弁アクチュエータ(19)が、オットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)に応じて制御されることを特徴とする、形態1から3のいずれかに記載の方法。
[形態5]
ピストン運動に係わっている、排気弁(15)が閉じられる時点がオットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)に応じて制御されることを特徴とする、形態4に記載の方法。
[形態6]
制御の枠組みの中で前もって定められている空気燃料比(λ)の迅速な調節のためにプレ制御器(26)が用いられることを特徴とする、形態5に記載の方法。
[形態7]
少なくとも一つの吸気弁(14)と、一つ又は複数の可変制御排気弁(15)と、オットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)の連続把捉のためのセンサ(21)と、オットーエンジン(OM)の回転数(n)の把捉のためのセンサ(22)と、少なくとも一つの燃焼室(10)の中へ燃料を直接噴射するためのインジェクタ(18)とを備え、望ましい燃焼重心(MFB50%)に調節されてオットーエンジン(OM)が運転されるように、制御装置(SG)が構成されている、自己着火式オットーエンジン(OM)の運転のための制御装置(SG)において、
制御装置(SG)が、燃焼重心(MFB50%)のための見積り値(MFB50%λ)をオットーエンジン(OM)の空気燃料比(λ)とオットーエンジン(OM)の回転数(n)とに応じて求めるように構成されていることを特徴とする制御装置。
[形態8]
形態2から6までのいずれかに記載の方法を制御するように構成されていることを特徴とする、形態7に記載の制御装置(SG)。
【符号の説明】
【0030】
1 シリンダ圧力変化
3 排気弁の弁ストローク
5 吸気弁の弁ストローク
9 クランクシャフト角度値
10 シリンダ
11 ピストン
12 コンロッド
13 クランクシャフト
14 吸気弁
15 排気弁
16 給気路
17 吸気弁アクチュエータ
18 インジェクタ
19 排気弁アクチュエータ
20 排気ガス路
21 ラムダゾンデ
22 回転数センサ
24 λ=制御器
26 プレ制御器
28 結節点
30 結節点
32 特性マップ
34 MFB50%=制御器
36 結節点
38 結節点
40 基準値事前設定装置
42 プレ制御器
44 アクチュエータ
46 基準値事前設定装置
e 制御偏差
EVC 排気弁閉弁(Exhaust Valve Closing)信号
h 弁ストローク
IN コマンド
k 制御偏差
λactual実際の空気=燃料=比
λset 基準=空気=燃料=比
MFB50%λ燃焼重心 の見積り値
MFB50%set 燃焼重心の基準値
n エンジン回転数
OM オットーエンジン
p 圧力
SG 制御装置
SOI 制御値(Start Of Injection 噴射開始)
φ クランクシャフト角度値
図1
図2
図3