(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
吸着パッド式の搬送ユニットは上述した利点はあるものの、切込ユニットから分断ユニットの上方に搬送レールを設ける必要があり、切込ユニットに板ガラスを搬入する際にこの搬送レールが障害になる場合があった。さらに、切込ユニットと搬送ユニットが緩衝しないように、また、分断ユニットと搬送ユニットが緩衝しないように、本来の切込分断作業とは関係のない副次的な動作が必要となる場合があった。これらの理由から、従来の構成では作業効率の向上には限界があった。
【0006】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、切込作業から分断作業までを効率良く行うことができる板ガラスの切込分断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記のような課題を解決するためになされたものであって、本発明に係る板ガラスの切込分断装置は、板ガラスに切込線を形成する切込ユニットと、前記切込線を形成する際に前記板ガラスを載せるための切込定盤と、前記切込線に沿って前記板ガラスを分断する分断ユニットと、前記切込定盤よりも下流側に位置し、分断の際に前記板ガラスを載せるための分断台と、を備え、前記切込ユニットは、前記切込定盤と前記分断台の間を移動する切込移動枠と、前記切込移動枠に設けられた縦断カッターと、前記切込移動枠に設けられ前記板ガラスを保持する切込保持部と、を有し、前記切込移動枠が前記切込定盤の下流側から上流方向へ移動することにより、前記縦断カッターが前記切込定盤上の板ガラスを縦断して当該板ガラスに縦方向に延びる切込線を形成し、その後、前記切込移動枠が下流方向に向かって戻る際、前記板ガラスを前記切込保持部によって保持して前記切込定盤から前記分断台まで前記板ガラスを搬送できるように構成されている。
【0008】
かかる構成によれば、切込ユニットが下流方向に向かって切込線を形成する前の位置に戻る際、切込定盤から分断台まで板ガラスを搬送できるため、切込ユニットは切込線を形成する前の位置に戻るときにも実質的な作業を行うこととなる。つまり、従来、実質的な作業を行っていなかった切込ユニットの所定位置に戻るという動作を実質的な作業とすることができる。また、板ガラスを保持する構成要素(切込保持部)が切込ユニットに設けられているため、切込ユニットの上方の空間に搬送レールを設ける必要がない。
【0009】
また、上記の切込分断装置において、前記切込定盤は前記板ガラスに対向する面に空気孔が形成されており、前記切込定盤は前記空気孔から前記板ガラスを吸引してその表面に前記板ガラスが固定されるように構成してもよい。
【0010】
かかる構成によれば、いわば空気によって(空気の圧力差を利用して)板ガラスを固定するため、例えば板ガラスを固定するための固定具によって板ガラスに傷が付くといったようなことを防止することができる。
【0011】
また、上記の切込分断装置において、前記切込保持部は複数の
吸着パッドを有し、前記複数の
吸着パッドは、前記板ガラスに形成された縦方向の切込線よりも外側の部分を吸着するように構成してもよい。
【0012】
かかる構成によれば、切込保持部はいわゆる耳部を保持することになる。耳部は最終的には分断されて破棄される部分であるため、仮に耳部を保持する際に耳部に傷が付いたとしても大きな問題は生じない。
【0013】
また、上記の切込分断装置において、前記分断ユニットは、前記分断台上を移動する分断移動枠と、前記分断移動枠に設けられ前記板ガラスに力を加えて前記板ガラスを分断する一又は複数の分断バーと、前記移動枠に設けられ前記板ガラスを保持する分断保持部と、を有し、前記分断バーにより前記板ガラスを分断した後、前記分断保持部によって前記板ガラスを保持するとともに前記分断移動枠が下流方向に向かって移動することで、前記板ガラスを下流方向に向かって搬送できるように構成してもよい。
【0014】
かかる構成によれば、板ガラスは切込ユニットによって搬送された後、さらに分断ユニットにより搬送されるため、切込分断装置において搬送のみをおこなう搬送ユニットを別個に設ける必要がなく、切込分断装置全体を簡素化することができる。
【0015】
また、上記の縦断カッターとともに、又はこれに代えて横断カッターを備えるようにしてもよい。つまり、本発明に係る板ガラスの切込分断装置は、板ガラスに切込線を形成する切込ユニットと、前記切込線を形成する際に前記板ガラスを載せるための切込定盤と、前記切込線に沿って前記板ガラスを分断する分断ユニットと、前記切込定盤よりも下流側に位置し、分断の際に前記板ガラスを載せるための分断台と、を備え、前記切込ユニットは、前記切込定盤と前記分断台の間を移動する切込移動枠と、前記切込移動枠に設けられて前記切込移動枠とともに縦方向に移動し、かつ、前記切込移動枠に対して横方向に移動する横断カッターと、前記切込移動枠に設けられ前記板ガラスを保持する切込保持部と、を有し、前記横断カッターは、前記切込定盤上の第1の縦方向位置において前記切込定盤上の前記板ガラスを横断して当該板ガラスに横方向に延びる前切込線を形成した後、前記切込移動枠によって前記切込定盤上の前記第1の縦方向位置よりも上流側の第2の縦方向位置に移動し、その第2の縦方向位置において前記切込定盤上の前記板ガラスを横断して当該板ガラスに横方向に延びる後切込線を形成し、その後、前記切込移動枠が下流方向に向かって戻る際、前記板ガラスを前記切込保持部によって保持して前記切込定盤から前記分断台まで前記板ガラスを搬送できるように構成されていてもよい。
【0016】
また、上記の切込分断装置において、前記分断台は、第1分断台と、前記第1分断台の下流側に位置する中間分断台と、前記中間分断台のさらに下流側に位置する第2分断台とを有し、前記第1分断台と前記中間分断台の間には横方向に延びる第1分断溝が形成されており、前記第2分断台と前記中間分断台の間には横方向に延びる第2分断溝が形成されており、前記切込ユニットは、前記前切込線が前記第1分断台の下流側端縁に位置するように、かつ、前記前切込線よりも外側の部分が前記第1分断溝に位置するように前記板ガラスを前記第1分断台に配置し、前記分断ユニットは、いずれかの前記分断バーによって前記第1横切込線よりも外側の部分を上面側から押えて、当該部分を分断した後、前記板ガラスを前記分断保持部によって保持するとともに前記分断移動枠が移動して前記板ガラスを下流側に搬送し、前記後切込線が前記第2分断台の上流側端縁に位置するように、かつ、前記後切込線よりも外側の部分が前記第2分断溝に位置するように前記板ガラスを前記第2分断台に配置し、いずれかの前記分断バーによって前記第2横切込線よりも外側の部分を上面側から押えて、当該部分を分断するように構成してもよい。
【0017】
かかる構成によれば、板ガラスの下流側の部分を分断した後に、上流側の部分を分断するという順序で、板ガラスの各部分を分断することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る板ガラスの切込分断装置によれば、切込作業から分断作業までを効率良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る板ガラスの切込分断装置の実施形態について図を参照しながら説明する。以下では、全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同じ符号を付して、重複する説明は省略する。
【0021】
まず、
図1を参照しながら、本発明の実施形態に係る切込分断装置100の構造について説明する。本実施形態に係る切込分断装置100は、搬入された長方形の板ガラス90の四辺を分断(トリミング)して所定の大きさに形成した後、下流側の装置へ搬出する装置である。
図1に示すように、本実施形態に係る切込分断装置100は、架台10と、切込ユニット20と、切込定盤40と、分断ユニット50と、分断台70とを備えている。以下、これらの各構成要素について順に説明する。なお、以下において、「後」というときは上流側を、「前」というときは下流側を、「右側」というときは上流側から下流側をみて右側を、「左側」というときは上流側から下流側をみて左側をそれぞれ意味するものとする。また、「縦方向」というときは前後の方向を、「横方向」というときは左右の方向を意味するものとする。
【0022】
[架台]
架台10は、切込ユニット20、切込定盤40、分断ユニット50、及び分断台70の各構成要素を支持する台である。ここで、板ガラスは、
図1の紙面左手前側から搬入され、紙面右奥側へと搬出される。つまり、切込ユニット20と分断ユニット50に着目すれば、切込ユニット20が上流側であり分断ユニット50が下流側となる。架台10の右側端部及び左側端部の上面には、それぞれ縦方向に延びる搬送レール11、12が設けられている。また、右側の搬送レール11の下方には、歯形が形成された直線状のラック13が設けられている。このラック13は、架台10の全長にわたって搬送レール11に並行に設けられている。
【0023】
[切込ユニット]
切込ユニット20は、板ガラス90の所定位置に切込線を形成するユニットであり、切込分断装置100のうち上流側に位置している。
図1に示すように、切込ユニット20は、切込移動枠21と、縦断カッター22と、横断カッター23と、切込保持部24と、を有している。
【0024】
切込移動枠21は、切込ユニット20の土台となる部分である。切込移動枠21は、右フレーム25と、左フレーム26と、横フレーム27と、駆動部28とが一体となって構成されている。右フレーム25は、切込移動枠21の右側に位置するフレームであって、縦方向に延びており、架台10の右側の搬送レール11上を滑走する。左フレーム26は切込移動枠21の左側に位置するフレームであって、縦方向に延びており、架台の左側の搬送レール12上を滑走する。横フレーム27は切込移動枠21の上流側に位置するフレームであり、横方向に延びており、右フレーム25と左フレーム26をつないでいる。駆動部28は、切込移動枠21を移動させる駆動源となる部分である。駆動部28は、架台10のラック13に噛み合う円形歯車のピニオン29と、このピニオン29を回転させるサーボモータ(図示せず)とから主に構成されている。サーボモータによりピニオン29を回転させることで、切込移動枠21全体(ひいては切込ユニット20全体)を移動させ、切込移動枠21を切込定盤40と分断台70との間の任意の縦方向位置に位置付けすることができる。
【0025】
縦断カッター22は、板ガラス90に縦方向に延びる切込線91、92を形成するカッターである。本実施形態の縦断カッター22は切込ユニット20の右側と左側の2箇所に設けられている。縦断カッター22は、支持部材30の下端で回転可能に支持されている。各縦断カッター22は、横方向に延びる軸を回転軸として回転する。縦断カッター22自体は、円盤状の形状を有しており、その外周部分がカッターの刃として機能している。縦断カッター22を支持する支持部材30は、横フレーム27の外側(上流側)に位置しており、横フレーム27に対して上下方向に移動できるように構成されている。この構成により、縦断カッター22を任意の高さ位置に位置決めすることができる。
【0026】
横断カッター23は、板ガラス90に横方向に延びる切込線93、94を形成するカッターである。本実施形態の横断カッター23は、支持部材31の下端で回転可能に支持されている。そして、横断カッター23は、縦方向に延びる軸を回転軸として回転する。横断カッター23自体は、円盤状の形状を有しており、その外周部分がカッターの刃として機能している。横断カッター23を支持する支持部材31は、横フレーム27の内側(下流側)に位置しており、横フレーム27に対して上下方向に移動できるとともに、横フレーム27に沿って横方向に移動できるように構成されている。この構成により、横断カッター23を任意の高さ位置に位置決めできるとともに、横方向に移動(走行)させることができる。
【0027】
切込保持部24は、板ガラス90を保持する部分である。切込保持部24は切込移動枠21の右フレーム25と左フレーム26に設けられている。切込保持部24は、吸引ポンプ(図示せず)に連結され下方が開口する複数の
吸着パッド33と、各吸着パッド33を連結する連結部材32とから主に構成されている。この
吸着パッド33が板ガラス90の上面を吸着することで切込保持部24は板ガラス90を保持することができる。吸着パッド33は右フレーム25及び左フレーム26に沿うように配置されており、吸着パッド33は板ガラス90の左右の側縁近傍に形成される縦方向に延びる切込線91、92(以下、これらの切込線をそれぞれ「右切込線」及び「左切込線」と呼ぶ。)よりも外側の部分95、96(以下、これら部分をそれぞれ「右耳部」及び「左耳部」と呼ぶ。)を吸着するように構成されている。この右耳部95及び左耳部96は、最終的には分断されて破棄される部分であるため、仮に傷が付いたとしても最終的な製品には影響が無い。また、左右の連結部材32はそれぞれ2つの支持部材34によって支持されている。各支持部材34は右フレーム25又は左フレーム26に対して上下方向に移動できるように構成されている。この構成により、各切込保持部24を任意の高さ位置に位置決めすることができる。
【0028】
[切込定盤]
切込定盤40は、板ガラス90に各切込線91〜94を形成する際に板ガラス90を載せるための部材である。切込定盤40は切込分断装置100のうち上流側に位置しており、切込分断装置100よりも上流側に位置する他の装置から搬入された板ガラス90はこの切込定盤40上に載せられる。切込定盤40は、平面視において四角形の形状を有しており、板ガラス90よりも縦方向寸法及び横方向寸法がやや大きく、その上面は平らに形成されている。また、本実施形態の切込定盤40は、板ガラス90に対向する面(上面)に複数の空気孔41が形成されており、切込定盤40はこれらの空気孔41によって板ガラス90を吸引して上面に板ガラス90を固定できるように構成されている。さらに、切込定盤40の上面と板ガラス90が離れるように、空気孔41から空気を吹き出すこともできる。
【0029】
[分断ユニット]
分断ユニット50は、切込ユニット20によって形成される切込線に沿って板ガラス90を分断するユニットであり、切込分断装置100のうち下流側に位置している。
図1に示すように、分断ユニット50は、分断移動枠51と、複数の分断バー52〜55(
図2以降も参照)と、分断保持部56と、を有している。
【0030】
分断移動枠51は、分断ユニット50の土台となる部分である。分断移動枠51は、右フレーム57と、左フレーム58と、後フレーム59と、前フレーム60と、駆動部61とが一体となって構成されている。右フレーム57は、分断移動枠51の右側に位置するフレームであり、縦方向に延びており、架台10の右側の搬送レール11上を滑走する。左フレーム58は分断移動枠51の左側に位置するフレームであり、縦方向に延びており、架台10の左側の搬送レール12上を滑走する。後フレーム59は分断移動枠51の上流側に位置するフレームであり、横方向に延びて右フレーム57と左フレーム58をつないでいる。前フレーム60は分断移動枠51の下流側に位置するフレームであり、横方向に延びて右フレーム57と左フレーム58をつないでいる。駆動部61は、分断移動枠51を移動させる駆動源となる部分である。駆動部61は、架台10のラック13に噛み合う円形歯車のピニオン62と、このピニオン62を回転させるサーボモータ(図示せず)とから主に構成されている。サーボモータによりピニオン62を回転させることで、分断移動枠51全体(ひいては分断ユニット50全体)を移動させ、分断移動枠51を分断台70上の任意の縦方向位置に位置付けすることができる。
【0031】
分断バー52〜55は、板ガラス90に上方から力を加えて板ガラス90を分断する部材である。本実施形態の分断バーには、前分断バー52(
図2等参照)、後分断バー53(
図2等参照)、右分断バー54、及び左分断バー55が含まれる。前分断バー52、後分断バー53、右分断バー54、及び左分断バー55は、それぞれ後フレーム59の外側(上流側)、後フレーム59の内側(下流側)、右フレーム57の内側、左フレーム58の内側に設けられており、いずれも各フレーム57〜59に沿って延びる板状の形状を有している。そして、各分断バー52〜55は、それぞれ2つの支持部材63によって支持されており、各支持部材63は各フレーム57〜59に対して上下方向に移動できるように構成されている。この構成により、各分断バー52〜55は上下方向に移動することができる。
【0032】
分断保持部56は、板ガラス90を保持する部分である。分断保持部56は、連結部材64を介して右分断バー54及び左分断バー55に設けられている。分断保持部56は、吸引ポンプ(図示せず)に連結された複数の
吸着パッド65を有しており、その
吸着パッド65が板ガラス90の上面を吸着することにより分断保持部56は板ガラス90を保持することができる。また、分断保持部56の
吸着パッド65は、右分断バー54や左分断バー55の外側に位置しており、板ガラス90の右耳部95と左耳部96を吸着するように構成されている。さらに、各吸着パッド65をつなぐ連結部材64は、右分断バー54又は左分断バー55に対して上下方向に移動できるように構成されている。この構成により、分断保持部56を任意の高さ位置に位置決めすることができる。
【0033】
[分断台]
分断台70は、板ガラス90を分断する際に板ガラス90を載せるための台である。本実施形態の分断台70は、第1分断台71と、中間分断台72と、第2分断台73とから主に構成されている。
【0034】
第1分断台71は、各分断台71〜73のうち最も上流側に位置している。第1分断台71は、縦方向に延びる複数の第1板状部材74と、第1板状部材の下流側において横方向に延びる板状の前分断受け85とによって構成されている。各第1板状部材74は、同じ寸法で同じ形状を有しており、横方向に所定の間隔をあけて配列されている。なお、第1分断台71全体の横方向寸法は、切込定盤40の横方向寸法とほぼ同じである。さらに、各第1板状部材74の上面には空気を吹き出す吹き出し孔75が形成されている。また、各第1板状部材74の間のうち下流側の一部には上方に開口する下面吸着パッド76を有する第1下面吸着パッド装置77が設けられている。この第1下面吸着パッド装置77が作動することにより、下面吸着パッド76は板ガラス90の下面を吸着し、板ガラス90は第1分断台71の上面に固定される。また、前分断受け85は、板ガラス90を分断する際の支点となる部材であり、その前縁部分を局所的に見た場合、上面と前面が直角をなすように構成されている。なお、各第1板状部材74及び前分断受け85はそれぞれの上面の高さ位置が一致するように構成されている。
【0035】
中間分断台72は、第1分断台71と第2分断台73の間に位置している。中間分断台72は、複数の中間板状部材78によって構成されている。各中間板状部材78は同じ寸法で同じ形状を有しており、その横方向の寸法は第1板状部材74の横方向の寸法と同じである。各中間板状部材78は、各第1板状部材74に対応するようにして配置されている。つまり、各中間板状部材78は各第1板状部材74の延長線上に配置されている。また、第1分断台71と中間分断台72の間には横方向に延びる第1分断溝79が形成されている。同様に、第2分断台73と中間分断台72の間には横方向に延びる第2分断溝80が形成されている。後述するように、第1分断溝79においては板ガラス90の下流側部分が分断され、第2分断溝80においては板ガラス90の上流側部分が分断される。なお、中間分断台72は、第1分断溝79と第2分断溝80の間を塞いでそれらの間を板ガラス90が滑らかに渡れるよう、移動可能に構成されている。
【0036】
第2分断台73は、各分断台71〜73のうち最も下流側に位置している。第2分断台73は、複数の第2板状部材81と、第2板状部材の上流側において横方向に延びる板状の後分断受け86と、右側部に位置して縦方向に延びる板状の右分断受け87と、左側部に位置して縦方向に延びる板状の左分断受け88とによって構成されている。各第2板状部材81は、それぞれ同じ寸法で同じ形状を有しているが、第1板状部材74の場合とは異なる間隔で横方向に配列されている。さらに、各第2板状部材81の上面には空気を吹き出す吹き出し孔82が形成されている。また、各第2板状部材81の間のうち上流側の一部には上方に開口する下面吸着パッド83を有する第2下面吸着パッド装置84が設けられている。この第2下面吸着パッド装置84が作動することにより下面吸着パッド83は板ガラス90の下面を吸着し、板ガラス90は第2分断台73の上面に固定されることになる。
【0037】
また、後分断受け86、右分断受け87、及び左分断受け88は、いずれも板ガラス90を分断する際の支点となる部材である。右分断受け87の右面と左分断受け88の左面の間隔は、切込移動枠21の左右に設けられた縦断カッター22の間隔に一致する。すなわち、第2分断台73全体の横方向寸法は、右切込線91と左切込線92の間隔に一致する。さらに、後分断受け86については後縁部分を局所的に見た場合、上面と後面が直角をなすように構成されており、右分断受け87については右縁部分を局所的に見た場合、上面と右面が直角をなすように構成されており、左分断受け88については左縁部分を局所的に見た場合、上面と左面が直角をなすように構成されている。なお、各第2板状部材81、後分断受け86、右分断受け87、及び左分断受け88は、それぞれの上面の高さ位置が一致するように構成されている。
【0038】
なお、上述した分断台70の構成において、第1下面
吸着パッド装置77及び第2下面吸着パッド装置84を設けずに、第1分断台71に設けられた吹き出し孔75及び第2分断台73に形成された吹き出し孔82によって板ガラス90を吸着して、第1分断台71又は第2分断台73に板ガラス90を固定するように構成しても良い。
【0039】
以上が、本実施形態に係る切込分断装置100の構造である。
図1からも理解できるように、本実施形態に係る切込分断装置100は、吸着パッドを利用して板ガラス90を搬送するものの、板ガラス90を上方から保持して移動させるような搬送ユニット等を有していないため、切込分断装置100の上方の空間には障害物はほとんど無く、切込分断装置100よりも上流側に位置する装置から切込分断装置100に板ガラス90を搬入する際、容易に作業を行うことができる。
【0040】
次に、
図2乃至
図6を参照して、本実施形態に係る切込分断装置100の動作について説明する。切込分断装置100により行われる作業には、板ガラス90に切込線を形成する切込作業と、切込線が形成された板ガラス90を搬送する切込後搬送作業と、板ガラス90の前方部分を分断する前分断作業と、前方部分が分断された後に板ガラス90を搬送する分断中搬送作業と、板ガラス90の後方部分及び左右部分を分断する後左右分断作業が含まれる。以下、これらの各作業について、順に説明する。なお、
図2乃至
図6では、理解しやすいように板ガラスに斜線を施したのとともに、本来は上方から見ることができない縦断カッター22、横断カッター23、吸着パッド33、及び
吸着パッド65は、その位置を図示した。
【0041】
[切込作業]
切込作業は、主に切込ユニット20によって行われる。まず、切込ユニット20は切込定盤40よりも下流側の切込ユニット待機位置で待機する。このときの切込ユニット20の位置を図示したのが
図2である。切込ユニット20が待機している間に、切込分断装置100よりも上流側に位置する他の装置によって切込定盤40上に板ガラス90が搬入される。切込定盤40上に搬入された板ガラス90は、切込定盤40の空気孔41によって吸着され、切込定盤40の上面に固定される。
【0042】
その後、切込ユニット20はわずかに上流側に移動し、横断カッター23を第1の縦方向位置に位置させる。この第1の縦方向位置は、板ガラス90の前縁近傍で前縁よりも内側の位置である。そして、横断カッター23を板ガラス90に接触するまで下降させ、続いて板ガラス90上を横断するように移動させる。これにより、板ガラス90の前縁近傍において横方向に延びる切込線93(以下、この切込線を「前切込線」と呼ぶ。)が形成される。前切込線93を形成した後は、横断カッター23を再度上昇させてもとの高さ位置に戻す。
【0043】
その後、切込ユニット20はわずかに下流側に移動し、今度は左右の縦断カッター22を板ガラス90に接触するまで下降させる。このとき、各縦断カッター22は、それぞれ板ガラス90の左右の側縁近傍に位置している。そして、切込ユニット20は切込定盤40の下流側から上流方向に向かって移動する。これにより、各縦断カッター22が板ガラス90を縦断し、板ガラス90には右切込線91及び左切込線92が形成される。右切込線91及び左切込線92の形成後における切込ユニット20の位置を図示したのが
図3である。右切込線91及び左切込線92の形成後は、各縦断カッター22を再度上昇してもとの高さ位置に戻す。
【0044】
その後、切込ユニット20はわずかに上流側に移動し、横断カッター23を第2の縦方向位置に位置させる。この第2の縦方向位置は、板ガラス90の後縁近傍で後縁よりも内側の位置である。そして、横断カッター23を板ガラス90に接触するまで下降させ、続いて板ガラス90上を横断するように走行させる。これにより、板ガラス90の後縁近傍において横方向に延びる切込線94(以下、この切込線を「後切込線」と呼ぶ。)が形成される。後切込線94の形成後は、横断カッター23を再度上昇させてもとの高さ位置に戻す。以上で切込作業は終了する。
【0045】
[切込後搬送作業]
切込後搬送作業は、主に切込ユニット20によって行われる。切込作業後、切込ユニット20は、切込保持部24を下降して吸着パッド33を板ガラス90の上面に吸着させ、板ガラス90を保持する。なお、この動作は、上述の後切込線94を形成する動作と同時に行えば、全体の作業として作業時間を短縮することができる。
【0046】
その後、切込定盤40は、上面に形成された空気孔41から空気を吹き出す。これと同時に、切込ユニット20は、切込保持部24を上昇させ、板ガラス90を持上げる。板ガラス90の持上げ高さは特に限定されないが、本実施形態では、板ガラス90を持上げる高さは1mm程度である。切込定盤40の空気孔41から空気が吹き出しているため、その空気によって板ガラス90は支えられ、板ガラス90の持上げ高さがわずか1mm程度であっても、板ガラス90が切込定盤40に接して傷つくようなことはない。
【0047】
その後、切込ユニット20は、板ガラス90を保持したまま切込定盤40から第1分断台71へと下流方向に向かって移動する。このとき、第1分断台71は、上面に形成された吹き出し孔75から空気を吹き出す。切込定盤40の場合と同様に、第1分断台71の吹き出し孔75から吹き出された空気によって板ガラス90は支えられるため、板ガラス90が第1分断台71に接して傷つくようなことはない。
【0048】
その後、切込ユニット20が所定の縦方向位置に達すると、切込保持部24を下降して板ガラス90を第1分断台71に載せ、板ガラス90の保持を解除する。このときの切込ユニット20の位置を図示したのが
図4である。なお、ここでいう所定の縦方向位置とは、保持する板ガラス90の前切込線93が第1分断台71(前分断受け85)の前縁に一致し、かつ、前切込線93よりも外側の部分97(以下、この部分を「前耳部」と呼ぶ。)が第1分断溝79に位置するような縦方向位置である。そして、板ガラス90を第1分断台71に載せるのと同時に、第1分断台71は吹き出し孔75からの空気の吹き出しを停止し、第1下面吸着パッド装置77は下面吸着パッド76により板ガラス90の下面を吸着して板ガラス90を第1分断台71上に固定する。
【0049】
その後、切込ユニット20は、切込保持部24を上昇させてもとの高さ位置に戻し、上述した切込ユニット待機位置に戻る(
図2参照)。以上で切込後搬送作業は終了する。このように、切込ユニット20は切込作業後に切込ユニット待機位置へと戻る動作に伴って板ガラス90を搬送するため、切込ユニット20の無駄な動きを減らし、切込作業から切込後搬送作業にかけての作業を効率よく行うことができる。さらに、上述のように、本実施形態によれば板ガラス90の持上げ高さはわずかであるため、板ガラス90を持上げる時間も短縮でき、搬送作業をより効率的に行うことができる。
【0050】
[前分断作業]
前分断作業は、主に分断ユニット50によって行われる。上述のように、切込後搬送作業により板ガラス90が第1分断台71に搬送されるが、その際、分断ユニット50は第1分断台71よりも下流側の分断ユニット待機位置で待機する。この状態を図示しているのが、上述した
図4である。
【0051】
その後、分断ユニット50は、上流方向に向かって所定の縦方向位置まで移動する。ここでいう所定の縦方向位置とは、前分断バー52が第1分断溝79の鉛直上方、すなわち板ガラス90の前耳部97の鉛直上方に位置するような縦方向位置である。続いて、分断ユニット50は、前分断バー52を下降させ、前耳部97を上方から押えて力を加える。これにより、板ガラス90の前耳部97は分断される。前耳部97を分断した後は、前分断バー52を再度上昇してもとの高さ位置に戻す。なお、分断された前耳部97は、第1分断溝79に落下して、その下方に設けられた回収箱又はシュート(図示せず)に落とされて回収される。以上で前分断作業は終了する。
【0052】
[分断中搬送作業]
分断中搬送作業は、主に分断ユニット50によって行われる。前分断作業後、分断ユニット50は上流方向に向かって所定の縦方向位置まで移動する。このときの分断ユニット50の位置を図示したのが
図5である。ここでいう所定位置とは、板ガラス90の後切込線94よりも外側の部分98(以下、この部分を「後耳部」と呼ぶ。)の鉛直上方に後分断バー53が位置するような縦方向位置である。分断ユニット50がこのような縦方向位置に移動するのは、後述する後左右分断作業を円滑に行うためである。そして、分断ユニット50は、分断保持部56を下降させて分断保持部56の吸着パッド65を板ガラス90の上面に吸着させて板ガラス90を保持する。
【0053】
その後、分断ユニット50は、分断保持部56を上昇させて板ガラス90を持上げる。このとき、第1下面吸着パッド装置77は下面吸着パッド76の吸着を止めるとともに、第1分断台71は上面の吹き出し孔75から空気を吹き出す。ここでも、板ガラス90の持上げ高さは、切込後搬送作業の場合と同様に1mm程度であるが、第1分断台71の吹き出し孔75から空気が吹き出しているため、板ガラス90は第1分断台71に接触して傷つくようなことはない。
【0054】
その後、分断ユニット50は、板ガラス90を保持したまま第1分断台71から中間分断台72を経由して、第2分断台73へと下流方向に向かって移動する。このとき、第2分断台73は、上面に形成された吹き出し孔82から空気を吹き出す。第1分断台71の吹き出し孔75の場合と同様に、吹き出し孔82から吹き出された空気によって、板ガラス90が第2分断台73に接して傷つくようなことはない。
【0055】
その後、分断ユニット50は、所定の縦方向位置に達すると、分断保持部56を下降させて板ガラス90を第2分断台73に載せ、板ガラス90の保持を解除する。このときの分断ユニット50の位置を図示したのが
図6である。ここでいう所定の縦方向位置とは、保持された板ガラス90の後切込線94が第2分断台73(後分断受け86)の後縁に一致し、かつ、後耳部98が第2分断溝80に位置するような縦方向位置である。なお、第2分断台73は、その上面に板ガラス90が載せられたとき、板ガラス90の右切込線91及び左切込線92が第2分断台73の右側縁及び左側縁(右分断受け87の右側縁及び左分断受け88の側縁)とそれぞれ一致するように構成されている。また、分断ユニット50が板ガラス90を第2分断台73に載せるのと同時に、第2分断台73は吹き出し孔82からの空気の吹き出しを停止し、第2下面吸着パッド装置84は下面吸着パッド83により板ガラス90の下面を吸着して板ガラス90を第2分断台73上に固定する。
【0056】
その後、分断ユニット50は分断保持部56を上昇させてもとの高さ位置に戻す。以上で切込後搬送作業は終了する。このように、分断ユニット50は単に板ガラス90を分断するだけでなく、切込ユニット20の場合と同様に、板ガラス90を搬送することができる。そのため、切込分断装置100における板ガラス90の搬送は、全て切込ユニット20又は分断ユニット50によって行うことができるため、切込分断装置100に別個の搬送ユニット等を設ける必要がない。
【0057】
[後左右分断作業]
後左右分断作業は、主に分断ユニット50によって行われる。分断中搬送作業後、分断ユニット50は、後分断バー53を下降させて板ガラス90の後耳部98に上方から力を加える。なお、上述したように、分断中搬送作業において、事前に後分断バー53を後耳部98の鉛直上方に位置させているため、特別な位置合わせをすることなく単に後分断バー53を下降させれば後耳部98に力を加えることができる。これにより、板ガラス90の後耳部98は分断される。
【0058】
その後、分断ユニット50は、後分断バー53を上昇させてもとの高さ位置に戻し、わずかに上流側に移動する。このように分断ユニット50がわずかに上流側に移動するのは、右分断バー54及び左分断バー55がそれぞれ右耳部95及び左耳部96の全体をカバーできるようにするためである。なお、ここでの分断ユニット50の移動後の位置は、前分断作業で説明した分断ユニット待機位置である。
【0059】
その後、分断ユニット50は、右分断バー54及び左分断バー55を同時に下降させ、右耳部95及び左耳部96に上方から力を加え、それぞれを板ガラス90から分断する。右耳部95及び左耳部96の分断後は、右分断バー54及び左分断バー55を上昇させてもとの高さ位置に戻す。
【0060】
最後に、第2下面吸着パッド装置84は下面吸着パット83による板ガラス90の吸着を止め、第2分断台73は上面の吹き出し孔82からの空気の吹き出しを再開し、板ガラス90を切込分断装置100から搬出する。板ガラス90を搬出する方法としては種々考えられる。例えば、各第2板状部材81の間にベルトコンベアを配置し、ベルトコンベアに板ガラス90を載せることにより板ガラス90を搬出してもよい。また、第2分断台73の吹き出し孔82の空気の吹き出しによって板ガラス90を浮いた状態とし、下流方向に向かって滑らせることにより板ガラス90を搬出してもよい。また、分断ユニット50によって板ガラス90を保持して下流方向に向かって移動することによって板ガラス90を搬出してもよい。
【0061】
以上で、切込作業、切込後搬送作業、前分断作業、分断中搬送作業、及び後左右分断作業の1つのサイクルが終了する。これらの各作業を経ることで、各耳部95〜98が分断されて所定の寸法に形成された板ガラス90が次の工程(装置)へと搬出される。なお、本実施形態では、理解しやすいように切込ユニット20が作動している間は分断ユニット50が作動しないかのように説明したが、切込分断装置100は、分断ユニット50により前分断作業以降の作業を行うのと同時に、切込ユニット20により次のサイクルの切込作業以降の作業を行うように構成されている。このように各作業を並行に進めることで、効率のよい切込分断作業を行うことができる。
【0062】
以上が本実施形態に係る切込分断装置100の動作についての説明である。なお、以上では、分断された前耳部97が、第1分断溝79に落ちて回収箱又はシュート(図示せず)によって回収される場合について説明したが、第1分断溝79の下方にフィルム剥離装置を設けて、このフィルム剥離装置によって前耳部97を回収するようにしてもよい。より詳しくは、板ガラスの下面に保護用のフィルムが貼り付けられている場合、分断された耳部は落ちずにフィルムにぶら下がった状態となる。フィルム剥離装置は、この分断された耳部がフィルムにぶら下がることを利用してフィルムを剥がすのである。つまり、ここでいうフィルム剥離装置は、分断されてフィルムにぶら下がった耳部(本実施形態の前耳部97に相当する耳部)をつかみ、板ガラスが下流方向に向かって搬送されるタイミングでその耳部とフィルムを引っ張ることで、板ガラスのフィルム全体を剥がすものである。このようなフィルム剥離装置を機能させるには、分断される各耳部のうち前方の耳部を他の耳部よりも先に分断する必要があり、本実施形態に係る切込分断装置はこの条件を満たすように構成されている。換言すれば、本実施形態に係る切込分断装置100によれば、上述のフィルム剥離装置を設置することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について図を参照して説明したが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、実施形態では、前耳部を前分断バーにより分断し、後耳部を後分断バーにより分断していたが、1つの分断バーにより前耳部及び後耳部の両方を分断するように構成しても本発明に含まれる。