特許第5731789号(P5731789)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5731789
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】電圧検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/36 20060101AFI20150521BHJP
   G01R 19/00 20060101ALI20150521BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20150521BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   G01R31/36 A
   G01R19/00 B
   H01M10/48 P
   H01M2/10 E
   H01M2/10 S
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-232327(P2010-232327)
(22)【出願日】2010年10月15日
(65)【公開番号】特開2012-88059(P2012-88059A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年9月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】石川 聡
(72)【発明者】
【氏名】関▲崎▼ 将士
【審査官】 三田村 陽平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−156633(JP,A)
【文献】 特表2002−521792(JP,A)
【文献】 特開2010−200601(JP,A)
【文献】 特開2010−066039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 19/00−19/32
G01R 31/36
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の単位セルを直列に接続した複数組電池の電圧を検出する電圧検出装置であって、
前記複数組電池に接続された高電圧領域に設置され、前記複数の単位セルを複数のブロックに分割し、前記ブロックの電圧を検出するために各ブロック毎に設置された複数の電圧検出手段と、
前記高電圧領域から絶縁された低電圧領域に設置され、前記電圧検出手段の割り込み動作を制御する割込制御手段とを備え、
前記割込制御手段は前記電圧検出手段のすべてにトリガー信号を送信して前記電圧検出手段のすべてを、低消費電流モードのリセット状態にすると、割り込み動作を実行させる特定の前記電圧検出手段のアドレスが指定された制御信号を送信し、
前記複数の電圧検出手段のそれぞれは、予め設定された指定時間内に前記制御信号を受信して自らのアドレスが指定されていたときには割り込み動作を実行し、指定されていなかったときには前記リセット状態を継続することを特徴とする電圧検出装置。
【請求項2】
前記電圧検出手段のそれぞれはデイジーチェーン接続され、特定の1つの電圧検出手段が前記割込制御手段と接続されていることを特徴とする請求項1に記載の電圧検出装置。
【請求項3】
前記トリガー信号を1つの絶縁デバイスを介して前記割込制御手段から前記高電圧領域へ伝送し、前記高電圧領域で前記電圧検出手段のすべてに前記トリガー信号を分配して伝送するトリガー信号線をさらに備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電圧検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位セルを直列に接続した複数組電池の電圧を検出する電圧検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばハイブリッド車両では、モータの駆動電源として高電圧バッテリを備えていた。高電圧バッテリは、例えばニッケル−水素電池やリチウム電池などの二次電池(蓄電式電池)の単位セルを複数個直列に接続して高電圧を得ている。
【0003】
また、二次電池が過放電状態、或いは過充電状態とならないように、各単位セル毎の充電状態を確認する必要があり、従来から複数個(例えば55個)の単位セルを、例えば5個のブロックに分割し(即ち、11個の単位セルで1ブロック)、各ブロックの電圧を各ブロック毎に設けられた電圧検出用ICによってリアルタイムで電圧を測定していた。
【0004】
この際、各電圧検出用ICは1ブロックの電圧を測定すると、低電圧領域に設けられたメインマイコンに絶縁デバイスを介してデータを送信していた(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ここで、従来の電圧検出用ICとメインマイコンとの間の回路構成を、図3を参照して説明する。図3に示すように、従来では高電圧領域に設けられた電圧検出用ICのそれぞれが、絶縁デバイスを介して低電圧領域に設けられたメインマイコンに接続されていた。
【0006】
特に、電圧検出用ICでは、チップセレクト、リセット、割り込みの3つの機能毎にそれぞれ制御信号を入力するための端子が設けられ、それぞれにON/OFF信号を伝達するための回路を設ける必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−17657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した図3に示す従来の回路構成では、電圧検出用ICのそれぞれにチップセレクト、リセット、割り込みの3つの信号を伝達するための回路が必要になるので、電圧検出用ICがN個あった場合には3N個の回路が必要になり、コストが増大してしまうという問題点があった。特に、比較的高価な絶縁デバイスも3N個必要になるので、コストアップは顕著であった。
【0009】
そこで、本発明は、上述した実情に鑑みて提案されたものであり、電圧検出用ICとメインマイコンとの間の回路を減少させてコストダウンを実現することのできる電圧検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本願の請求項1に係る発明は、複数の単位セルを直列に接続した複数組電池の電圧を検出する電圧検出装置であって、前記複数組電池に接続された高電圧領域に設置され、前記複数の単位セルを複数のブロックに分割し、前記ブロックの電圧を検出するために各ブロック毎に設置された複数の電圧検出手段と、前記高電圧領域から絶縁された低電圧領域に設置され、前記電圧検出手段の割り込み動作を制御する割込制御手段とを備え、前記割込制御手段は前記電圧検出手段のすべてにトリガー信号を送信して前記電圧検出手段のすべてを、低消費電流モードのリセット状態にすると、割り込み動作を実行させる特定の前記電圧検出手段のアドレスが指定された制御信号を送信し、前記複数の電圧検出手段のそれぞれは、予め設定された指定時間内に前記制御信号を受信して自らのアドレスが指定されていたときには割り込み動作を実行し、指定されていなかったときには前記リセット状態を継続することを特徴とする。
【0011】
本願の請求項2に係る発明は、前記電圧検出手段のそれぞれがデイジーチェーン接続され、特定の1つの電圧検出手段が前記割込制御手段と接続されていることを特徴とする。
【0012】
本願の請求項3に係る発明は、前記トリガー信号を1つの絶縁デバイスを介して前記割込制御手段から前記高電圧領域へ伝送し、前記高電圧領域で前記電圧検出手段のすべてに前記トリガー信号を分配して伝送するトリガー信号線をさらに備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願の請求項1に係る発明では、トリガー信号によってすべての電圧検出手段をリセットし、割り込み動作を実行させる電圧検出手段のアドレスが指定された制御信号によって電圧検出手段に割り込み動作を実行させるので、従来ではチップセレクト、リセット、割り込みの3つの信号を伝達するための回路が必要であったものをトリガー信号線のみに減らすことができ、これによって回路だけではなく絶縁デバイスを減らすことができるので、大幅なコストダウンを実現することができる。
【0014】
本願の請求項2に係る発明では、電圧検出手段のそれぞれをデイジーチェーン接続して特定の1つの電圧検出手段のみが割込制御手段と接続されるようにしたので、データ通信線を1つに減らすことができ、これによって回路だけではなく絶縁デバイスを減らすことができるので、大幅なコストダウンを実現することができる。
【0015】
本願の請求項3に係る発明では、トリガー信号を1つの絶縁デバイスを介して高電圧領域へ伝送し、高電圧領域で電圧検出手段のすべてにトリガー信号を分配するようにしたので、トリガー信号線を最小限に減らすことができ、これによって回路だけではなく絶縁デバイスを減らすことができるので、大幅なコストダウンを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明を適用した一実施形態に係る電圧検出装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明を適用した一実施形態に係る電圧検出装置による割り込み制御処理の処理手順を示すフローチャートである。
図3】従来の電圧検出装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
[電圧検出装置の構成]
図1は本実施形態に係る電圧検出装置の構成を示すブロック図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係る電圧検出装置1は、複数の単位セルBT1〜BT55からなる二次電池(複数組電池)10と、複数の単位セルBT1〜BT55を複数のブロックB1〜B5に分割した各ブロックの電圧を検出する電圧検出用IC(電圧検出手段)21〜25と、デイジーチェーン接続によって各電圧検出用IC21〜25を接続するIC間通信線31と、トリガー信号が伝送されるトリガー信号線32と、トリガー信号線32の低電圧領域と高電圧領域とを接続する絶縁デバイス33と、制御信号やデータが伝送されるデータ通信線34と、データ通信線34の低電圧領域と高電圧領域とを接続する絶縁デバイス35と、電圧検出用IC21〜25による電圧検出を制御するメインマイコン40と、メインマイコン40内に設置されて電圧検出用IC21〜25の割り込み動作を制御する割込制御部41とを備えている。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る電圧検出装置1は、二次電池10に接続された高電圧領域11と、高電圧領域11から絶縁された低電圧領域12とに分離されており、高電圧領域11には電圧検出用IC21〜25が設置され、低電圧領域12にはメインマイコン40が設置されている。
【0021】
二次電池10は、図1では一例として55個の単位セルBT1〜BT55を直列に接続した複数組電池として記載されており、11個の単位セルを1つのブロックとして5つのブロックB1〜B5に分割されている。
【0022】
電圧検出用IC21〜25は、各ブロックB1〜B5の電圧を検出するために各ブロックB1〜B5のそれぞれに設置されている。各電圧検出用IC21〜25の間はIC間通信線31によってデイジーチェーン接続され、特定の1つの電圧検出用IC(図1では電圧検出用IC21)がデータ通信線34によってメインマイコン40と接続されている。ただし、各電圧検出用IC21〜25の間は必ずしもデイジーチェーン接続する必要はなく、各電圧検出用IC21〜25のそれぞれをデータ通信線でメインマイコン40と接続してもよい。
【0023】
トリガー信号線32は、トリガー信号を1つの絶縁デバイス33を介して割込制御部41から高電圧領域11へ伝送し、高電圧領域11で電圧検出用IC21〜25のすべてにトリガー信号を分配して伝送している。
【0024】
メインマイコン40は、通常動作時にはデータ通信線34を介して電圧検出用IC21〜25に制御信号を送信して電圧検出を制御しており、電圧検出用IC21〜25で検出された電圧値や異常フラグなどのデータを受信している。そして、電圧検出用IC21〜25のいずれかに割り込み動作を実行させる場合には、割込制御部41によって割り込み制御を実行させる。
【0025】
割込制御部41は、電圧検出用IC21〜25のいずれかに割り込み動作を実行させる場合にトリガー信号線32を介して電圧検出用IC21〜25のすべてにトリガー信号を送信して電圧検出用IC21〜25をいったんすべてリセットする。その後、割り込み動作を実行させる電圧検出用ICのアドレスが指定された制御信号を送信することによって、指定した電圧検出用ICに割り込み動作を実行させ、指定しなかった電圧検出用ICはリセットを継続させる。
【0026】
[割込制御処理の手順]
次に、本実施形態に係る電圧検出装置1による割込制御処理の手順を図2のフローチャートを参照して説明する。
【0027】
図2に示すように、ステップS101においてメインマイコン40は電圧検出などの通常動作を行っている。そして、ステップS102において割り込み動作が発生したか否かを判定し、割り込み動作が発生していない場合にはステップS101に戻って通常動作を継続する。
【0028】
一方、ステップS102において割り込み動作が発生した場合には、ステップS103へ移行して割込制御部41はトリガー信号を送信する。このトリガー信号は絶縁デバイス33を介して高電圧領域11に伝達されてトランジスタをオンし、トランジスタに接続されているすべての電圧検出用IC21〜25にトリガー信号が伝達される。
【0029】
トリガー信号を受信した電圧検出用IC21〜25は、ステップS104において動作を停止してリセットされる。すなわち、この時点ではすべての電圧検出用IC21〜25がリセットされた状態になっている。ただし、リセット状態とは動作を停止して低消費電流モードに移行した状態のことをいうものとする。
【0030】
こうしてすべての電圧検出用IC21〜25がリセットされると、割込制御部41はステップS105においてデータ通信線34を介して制御信号を送信する。制御信号は、絶縁デバイス35を介して高電圧領域11に伝達されて電圧検出用IC21に送信され、その後はIC間通信線31によって電圧検出用IC22から電圧検出用IC25まで順次送信されていく。このとき制御信号には割り込み動作を実行させる電圧検出用ICのアドレスが指定されているので、各電圧検出用IC21〜25はステップS106において予め設定された指定時間内に自らのアドレスが指定された制御信号を受信したか否かを判定する。そして、自らのアドレスが指定されていなかった電圧検出用ICはステップS107においてリセット状態を継続し、自らのアドレスが指定されていた電圧検出用ICはステップS108において割り込み動作を開始する。
【0031】
ここで、すべての電圧検出用IC21〜25をリセットする場合にはアドレスが指定されていない制御信号を送信してもよいし、制御信号自体を送信しなくてもよい。
【0032】
こうして電圧検出用IC21〜25が割り込み動作あるいはリセット状態になると、割込制御部41はステップS109において通常動作に復帰させるか否かを判定し、リセット状態あるいは割り込み動作を継続させる場合にはステップS107、S108へ戻ってリセット状態あるいは割り込み動作を継続する。一方、割り込み動作の終了などによって通常動作へ復帰させる場合にはステップS110へ移行して電圧検出用IC21〜25を通常動作に復帰させて、本実施形態に係る電圧検出装置1による割り込み制御処理は終了する。
【0033】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本発明を適用した一実施形態に係る電圧検出装置によれば、トリガー信号によってすべての電圧検出用IC21〜25をリセットし、割り込み動作を実行させる電圧検出用ICのアドレスが指定された制御信号によって割り込み動作を実行させるので、従来ではチップセレクト、リセット、割り込みの3つの信号を伝達するための回路が必要であったのに対して本実施形態に係る電圧検出装置ではトリガー信号線のみに減らすことができ、これによって回路だけではなく絶縁デバイスを減らすことができるので、大幅なコストダウンを実現することができる。
【0034】
また、本実施形態に係る電圧検出装置によれば、電圧検出用IC21〜25のそれぞれをデイジーチェーン接続し、特定の1つの電圧検出用IC21のみをメインマイコン40と接続したので、データ通信線34を1つに減らすことができ、これによって回路だけではなく絶縁デバイスを減らすことができるので、大幅なコストダウンを実現することができる。
【0035】
さらに、本実施形態に係る電圧検出装置によれば、トリガー信号を1つの絶縁デバイスを介して高電圧領域へ伝送し、高電圧領域で電圧検出用IC21〜25のすべてにトリガー信号を分配するようにしたので、トリガー信号線32を最小限に減らすことができ、これによって回路だけではなく絶縁デバイスを減らすことができるので、大幅なコストダウンを実現することができる。
【0036】
なお、上述の実施の形態は本発明の一例である。このため、本発明は、上述の実施の形態に限定されることはなく、この実施の形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計などに応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ハイブリッド車両等に搭載される二次電池の電圧検出に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 電圧検出装置
10 二次電池(複数組電池)
21〜25 電圧検出用IC(電圧検出手段)
31 IC間通信線
32 トリガー信号線
33 絶縁デバイス
34 データ通信線
35 絶縁デバイス
40 メインマイコン
41 割込制御部
BT1〜BT55 単位セル
B1〜B5 ブロック
図1
図2
図3