【実施例1】
【0014】
図1〜6は本発明による外壁板取付金具の実施例1、
図9および10は該実施例1の取付金具を用いた外壁板の取付構造の一例を示している。
【0015】
外壁板取付金具1は、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム合金板等からなる1枚の金属板をプレス加工により成形してなり、主部2、1対の裏面当接部支持部3、1対の外壁板裏面当接部4、係合部支持部5および外壁板係合部6等を一体的に有している。前記主部2は、プレス絞り加工により形成されており、取付金具1が建物躯体7(
図9〜11参照)に直接、または下地材もしくは断熱材等の介装材8を介して取り付けられた際、建物躯体7側となる方向に凹陥している。
図2は、本実施例における主部2(プレス絞り加工部分)の範囲を明確にするため、取付金具1の斜視図において、主部に網線を施した図である。この主部2は、該主部2のうちの建物躯体7側に最も落ち込んでいる部分である平面状の基板部2aと、
図1〜4および6上、基板部2aの下端部から建物躯体7と反対方向斜め下方に突出する斜面部2bと、基板部2aおよび斜面部2bの左右両端部から建物躯体7と反対方向に突出する2つの平面状の側面部2cとを一体的に有している。前記斜面部2bおよび2つの側面部2cは主部2の周壁部を構成している。前記主部2は、完全な容器状とはなっておらず、
図1〜4および6上の上方(後で詳しく説明する外壁板係合部6と反対側の端部)は周壁部が存在せず、開放されている。
【0016】
前記基板部2aは、建物躯体7自体または胴縁あるいは間柱等の下地材もしくは断熱材等の介装材8に沿わされた状態で建物躯体7に直接または介装材8を介して取り付けられるようになっている。前記基板部2aには、取付金具1を介装材8を介してまたは直接建物躯体7に取り付けるためのビス穴9が設けられている。前記斜面部2bの一部は、プレス切り起こし加工を施されることにより、基板部2aから
図1〜4および6上の下方(後で詳しく説明する外壁板係合部6側)に延びる転倒防止部10を構成しており、この転倒防止部10は、基板部2aと同一平面上に位置している。
【0017】
前記1対の裏面当接部支持部3は、主部2外かつ主部2の両側に設けられており、主部2の縁部から建物躯体7と反対側に突出している。各裏面当接部支持部3は各側面部2cと同一平面上にあり、主部2の側面部2cに連続している。前記1対の外壁板裏面当接部4は、プレス折り曲げ加工により各裏面当接部支持部3から直角外側に折り曲げられることにより、各裏面当接部支持部3の建物躯体7と反対側の先端部に設けられている。
【0018】
前記係合部支持部5は、主部2外かつ斜面部2bの
図1〜4および6上の下方に設けられており、この係合部支持部5はプレス折り曲げ加工により斜面部2bから
図1〜4および6上の下方側に基板部2aと平行方向に折り曲げられている。
【0019】
前記外壁板係合部6は、係合部支持部5の
図1〜4および6上の下端部に設けられている。この外壁板係合部6は、第一の外壁板係合部6aと第二の外壁板係合部6bとを有している。前記第一の外壁板係合部6aは、係合部支持部5からプレス折り曲げ加工により建物躯体7と反対側に突出するように折り曲げられた前方突出部11と、この前方突出部11の先端部中央側部分からプレス折り曲げ加工により
図1〜4および6上で斜め上方に折り曲げられた第一の折り曲げ片12とを有してなる。前記第二の外壁板係合部6bは、第一の外壁板係合部6aと共通の前方突出部11と、この前方突出部11の先端部の両端側部分からプレス折り曲げ加工により
図1〜4および6上で斜め下方に折り曲げられた1対の第二の折り曲げ片13とを有してなる。
【0020】
なお、前記裏面当接部支持部3、係合部支持部5および外壁板係合部6は、プレス絞り加工されていないので、各裏面当接部支持部3と係合部支持部5の両側端部および前方突出部11の両側端部とは互いに連続していない。
【0021】
次に、この取付金具1による外壁板14の取付例を
図7〜10を用いて説明する。外壁板14を建物躯体7に取り付ける際には、一般に、
図7のように外壁板14を横長とし、各外壁板14の上端部と下端部とを突き合わせて、順次下段側から上段側へと外壁板14を取り付けて行く場合(所謂横貼り)と、
図8のように外壁板14を縦長とし、各外壁板14の左端部と右端部とを突き合わせて、順次左から右または右から左側に外壁板14を取り付けて行く場合(所謂縦貼り)とがある。
図9および10は、
図7のように所謂横貼りを行う場合の取り付け方法を示している。また、この例では、胴縁または間柱等の下地材である介装材8を介して建物躯体7に取付金具1を取り付けることとしている。各外壁板14の上端部には、その外面側を切り欠くことにより第一の実部15が形成されている一方、外壁板14の下端部(
図10参照)には、その内面側を切り欠くことにより第二の実部16が形成されている。また、各外壁板14の下端部には、第二の実部16の内面に接するようにして係合溝17が形成されている。
【0022】
この場合、まず
図9に示されるように、取付金具1の外壁板裏面当接部4と前方突出部11と第二の折り曲げ片13との間に下段側の外壁板14の第一の実部15が挿入されるようにして、下段側の外壁板14の上端部に取付金具1の第二の外壁板係合部6bおよび外壁板裏面当接部4を係合する。なお、このとき、取付金具1は、前方突出部11が水平方向となる向きとするとともに、基板部2aが介装材8に沿わされた状態となるようにする。
【0023】
次に、ビス穴9を用いてビス18により、
図10に示されるように取付金具1を介装材8にビス留めし、取付金具1を介装材8を介して建物躯体7に取り付ける。これにより、基板部2aが介装材8に沿わされた状態で、取付金具1が介装材8に固定され、ひいてはこの取付金具1を介して下段側の外壁板14の上端部が建物躯体7に取り付けられる。続いて、上段側の外壁板14の下端部の係合溝17内に取付金具1の第一の折り曲げ片12が侵入係合し、上段側の外壁板14の下端部が前方突出部11上に載置されるようにして、上段側の外壁板14の下端部に取付金具1の第一の外壁板係合部6aおよび外壁板裏面当接部4を係合するとともに、上段側の外壁板14の下端部を下段側の外壁板14の上端部に突き合わせる。
【0024】
以後、同様にして順次下段側から上段側へと外壁板14を取り付けて行くことにより、外壁板14を相じゃくり方式で互いに上下に突き合わせた状態で建物躯体7に取り付けて行くことができる(互いに突き合わされ外壁板14の上下端部間には取付金具1の前方突出部11が挟まれた状態となる)。
【0025】
このような取付状態において、前方突出部11は、外壁板14の上下端部に対向ないしは当接され、上下方向の移動を防止する。また、外壁板裏面当接部4は外壁板14の裏面に当接され、外壁板14の建物躯体7側への移動を防止するとともに、外壁板14の裏面と介装材8ひいては建物躯体7との間に一定の間隙を確保する。
【0026】
なお、ここでは、
図7のように所謂横貼りを行う場合について説明したが、
図8のように所謂縦貼りを行う場合には、
図9および10と比較し取付金具1を90度回転した向き、すなわち前方突出部11が鉛直方向となる向きにして、
図9および10の場合と同様に取付金具1を使用して外壁板14を介装材8を介して建物躯体7に取り付けることができる。
【0027】
この外壁板取付金具1においては、裏面当接部支持部3がプレス絞り加工された主部2の縁部から建物躯体7と反対側に突出するように主部2外に設けられており、この裏面当接部支持部3の先端部に外壁板裏面当接部4が設けられているので、外壁板取付金具1が外壁板14を柔軟に支持する。このため、強風等により外壁板に大きな力が作用しても、外壁板が割れてしまうことがなく、また大きな地震や子供等が外壁板にぶつかる等により大きな衝撃が作用しても、その衝撃を吸収することができる。
【0028】
また、本実施例では、外壁板係合部6も、プレス絞り加工された主部2外に設けられているので、取付金具1が外壁板14をより一層柔軟に支持するようにすることができる。
【0029】
そして、建物躯体7に直接または介装材8を介して取り付けられる主部2はプレス絞り加工により形成されているので、取付金具1のうちの大きな強度および剛性が必要とされる部分には、要求される通りに大きな強度および剛性を付与することができる。
【0030】
また、本実施例では、基板部2aと同一平面上に位置する転倒防止部10が設けられているので、外壁板取付金具1が建物躯体7または介装材8上で
図11において矢印A方向に転倒してしまうのを防止することができる。