(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の従来のステアリングロック装置として、特許文献1に開示されたものが知られている。
図13は、特許文献1に記載されたステアリングロック装置の構成を示している。このステアリングロック装置101は、ステアリングシャフト(図示せず)の回転を禁止するためのロック部材106と、ロック部材106を作動させる電動モータ104と、ロック部材106と係合するためのロック溝194を備え、ステアリングシャフトと一体となって回転するキーロックカラー193と、ステアリングシャフトに加わる振動を検知する振動センサ111と、警報を発する警報手段(図示せず)とを備え、キーロックカラー193のロック溝194およびロック溝194と係合するロック部材106の端部にテーパーが設けられている。
【0003】
ロック部材106は、ロック溝194と係合し、ステアリングシャフトの回転を禁止するステアリングロック位置と、ロック溝194から離間し、ステアリングシャフトの回転を許可する解錠位置との間を、電動モータ104によって移動する。
【0004】
そして、ロック部材106が、ステアリングロック位置に位置する施錠状態において、振動センサ111によりステアリングシャフトに加わる振動を検知した場合に、電動モータ104が、ロック部材106をキーロックカラー193に押しつける方向に作動するとともに、警報手段が、警報を発するように構成されている。
【0005】
上記構成において、車両駐車中の施錠状態において、タイヤからの反力によって、ステアリングシャフトに回転方向の力が加わった場合には、ロック溝194の側部とロック部材106の側部との間に大きな摩擦力が働き、ロック部材106が抜けにくくなるが、ロック部材106およびロック部材106と係合するキーロックカラー193のロック溝194にテーパー195を設けたことにより、路面からタイヤを介してキーロックカラー193に回転力が加わっている状態で、ステアリングロックを解除する際には、ロック部材106に解錠位置側への分力が発生し、容易にロック部材106を引き抜くことができる。
【0006】
また、施錠状態において、振動センサ111が異常振動を検知すると、電動モータ104がロック部材106をキーロックカラー193のロック溝194に押しつける方向に作動する。これにより、テーパー195によって発生する解錠位置側への分力を相殺し、ロック部材106がキーロックカラー193のロック溝194から抜けることを抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来のステアリングロック装置101では、ハンドルを切った状態で車両を駐車した場合には、タイヤからの反力によって、ステアリングシャフトに回転方向の力が、駐車している間ずっと加わり、ロック部材106に解錠位置側への分力が発生する。このため、発生する分力を相殺するためには、電動モータ104を作動し続けなければならず、バッテリー上がりをもたらすおそれがあるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情を考慮し、バッテリー上がりをもたらすことなく、施錠状態を維持しつつ、解錠動作時には容易にステアリングロックを解除することができるステアリングロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する請求項1の発明は、フレームの正面側と裏面側を貫通するロックガイド孔と、該ロックガイド孔内に設定された施錠位置と解錠位置との間を移動可能に配設され、且つ先端部分が先細のテーパー形状を有するロック本体と、該ロック本体に設けられた係合部と、施錠位置に位置する該係合部よりも解錠位置側に、該ロックガイド孔内へ向かって突出する庇部とを備え、該ロック本体が、施錠位置に位置した状態で該ロックガイド孔内でステアリングシャフトの回転方向に倒れた際に、該係合部が該庇部に係合し、該ロック本体の解錠位置側への移動が規制されることを特徴としている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1記載のステアリングロック装置であって、前記ロック本体に連係し、該ロック本体とともに施錠位置と解錠位置との間を移動自在に配置されたハンガーと、該ハンガーと該ロック本体との間に挟持され、該ロック本体を施錠位置側へ付勢する付勢バネとを備え、該ハンガーは、大きい矩形部と小さい矩形部とを組合わせた断面略凸字形状の連係受部を備え、前記庇部は、該連係受部の大きい矩形部と小さい矩形部との段差部分に設定され、該ロック本体の後端部には、先端部分を該連係受部に挿入可能な鉤形状を有する連係部を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項2記載のステアリングロック装置であって、前記フレーム上に保持されつつ、前記ハンガーを押して、該ハンガーを解錠位置から施錠位置へ移動させるカム手段を備えたことを特徴としている。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1または請求項2記載のステアリングロック装置であって、該ロックガイド孔は、正面側開口部の前記ステアリングシャフトの回転方向に沿った方向の寸法が、裏面側開口部の寸法よりも大きく設定された拡大部と、裏面側開口部付近は、該ステアリングシャフトの回転方向に沿った方向の寸法が一定に設定された平行部とを備えたことを特徴としている。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1または請求項2記載のステアリングロック装置であって、前記連係受部の前記小さい矩形部は、前記ステアリングシャフトの回転方向に沿った方向の寸法が、解錠位置側に向かって徐々に小さくなるように設定されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、ロック本体の先端部分が先細のテーパー形状を有していることで、ステアリングシャフトに回転方向の力が加わる状態では、ロック部材に解錠位置側への分力が発生し、容易に解錠することができる。また、ステアリングシャフトに回転方向の力が、車両を駐車している間ずっと加わり、ロック部材に対して解錠位置側への分力が発生するような状態では、ロック本体が、施錠位置に位置しつつ、ロックガイド孔内でステアリングシャフトの回転方向に倒れることで、係合部が庇部に係合し、ロック本体の解錠位置側への移動が規制される。
【0016】
このように電気的な手段を用いない構成によって、バッテリー上がりをもたらすことなく、施錠状態を維持し、解錠動作時には容易にステアリングロックを解錠することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、庇部がハンガーに設けられたことで、ロック本体が庇部に係合したままの状態で、ロック本体ごとハンガーが解錠位置へ移動するので、解錠動作時には容易に解錠することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、ハンガーを押して、ハンガーを解錠位置から施錠位置へ移動させるカム手段を備えたことで、ロック本体に解錠方向への力が加わった際に、ハンガーを介してカム手段が解錠方向への力を受けることになるため、装置全体の構造を複雑にすることなく解錠方向への力を受けることができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、ロックガイド孔は、正面側開口部のステアリングシャフトの回転方向に沿った方向の寸法が、裏面側開口部の寸法よりも大きく設定された拡大部を備えたことによって、施錠状態でロック本体が倒れ易くなる。また、ロックガイド孔の裏面側開口部付近では、ステアリングシャフトの回転方向に沿った方向の寸法が一定に設定された平行部を備えたことで、施錠動作時(解錠状態から施錠状態へ移行する際)、および解錠動作時(施錠状態から解錠状態へ移行する際)にステアリングシャフトに対してロック本体を垂直に移動させ、確実にステアリングロックすることができる。
【0020】
請求項5の発明によれば、連係受部の小さい矩形部について、ステアリングシャフトの回転方向に沿った方向の寸法が、解錠位置側に向かって徐々に小さくなるように設定されたことで、係合部と庇部との係合を解除した状態で、シャフト側突部にロック本体が乗上げた場合に、ロック本体の後端部分が小さい矩形部に入りやすくなり、作動信頼性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態のステアリングロック装置は、電動ステアリングロック装置1として、自動車のステアリングシャフト92を収容するステアリングコラム装置91に取付けられる。電動ステアリングロック装置1は、
図1〜
図12に示すように、フレーム2と、フレーム2の正面側を被うカバー3とを有し、カバー3で覆われたフレーム2の収容部21には駆動手段4、ウォームホイール5、およびロック部材6が収容されている。そして、施錠状態では、ロック部材6がフレーム2から突出し、ロック部材6の先端部62aがステアリングシャフト92に設けられたシャフト側突部93と係合し、ステアリングシャフト92の回転を規制する。また、解錠状態では、ロック部材6がフレーム2内に収容され、ステアリングシャフト92からは離間しているので、ステアリングシャフト92の回転を許容する。
【0023】
フレーム2は、収容部21に円弧状のホイール受部22を備えており、ホイール受部22の円弧部分にウォームホイール5が回動可能に配置される。また、ホイール受部22には、ホイール外れ防止手段8が設けられている。フレーム2には、収容部21と裏面側とを貫通するロックガイド孔23が形成され、ロックガイド孔23内にロック部材6が移動自在に挿通される。また、ロックガイド孔23は、正面側開口部23a側に拡大部23cと、裏面側開口部23b側に平行部23dとを備えている。拡大部23cは、正面側開口部23aのステアリングシャフト92の回転方向に沿った方向の寸法が、裏面側開口部23bの寸法よりも大きく設定された漏斗形状に形成され、平行部23dは、裏面側開口部23b付近に、ステアリングシャフト92の回転方向に沿った方向の寸法(対向する孔壁の間隔)が一定、且つ後述するロック本体62との間に僅かな隙間を持って挿通するように設定され、孔壁が平行となっている。また、フレーム2の裏面側には、ステアリングコラム装置を跨ぐように二股状の脚部24が突設されている。
【0024】
カバー3は、一面が開口する箱形状を備え、開口縁31に設けた係止部32と、フレーム2の収容部21周縁に設けられた係止受部26とを係合することで、カバー3がフレーム2に固定される。
【0025】
駆動手段4は、電動モータ41と、電動モータ41の駆動軸42に組付けられたウォームギア43とで構成され、駆動ケース44に収容された状態でフレーム2の収容部21に配設されている。また、駆動ケース44には、ホイール収容部45が設けられており、ウォームホイール5が収容される。
【0026】
ウォームホイール5は、略円柱形状を備え、円周面上の周方向に1周するギア部51が設けられている。このギア部51は、ウォームギア43と噛合可能な歯車となっている。ギア部51の両脇には、断面形状が円形に設定され、ギア部51よりも小径に設定された支承部52が重なるように隣接配置されている。そして、ウォームホイール5は、ギア部51がウォームギア43と噛合しつつ、ホイール収容部45に収容された状態で、駆動ケース44とともにフレーム2に組付けられる。フレーム2に組付けられた状態で、ウォームホイール5は、ホイール収容部45に設けられた円弧状の支承円弧46と、ホイール受部22の円弧部分とで挟持されつつ、円周方向に沿った施錠回転方向R1と、解錠回転方向R2(施錠回転方向R1とは逆方向)に回動自在に支承される。
【0027】
また、カム手段としてウォームホイール5の一側端面には、カム突起53が一体に突設されている。カム突起53は、解錠カム部54と施錠カム部55とで構成され、ウォームホイール5側から解錠カム部54、施錠カム部55の順で、ウォームホイール5の回転面に重ねるように並列配置されている。
【0028】
解錠カム部54のウォームホイール5の回転方向に沿った周面には、解錠カム面54aが設けられ、施錠カム部55のウォームホイール5の回転方向に沿った周面には、施錠カム面55aが設けられている。
【0029】
解錠カム面54aのカムプロフィールは、解錠保持部54bと、施錠補助部54dと、漸変部54cとで構成されている。解錠保持部54bは、ウォームホイール5の回転中心Oからカム面までの距離Kが、一定、且つ解錠位置に移動したロック部材6を解錠位置に保持する寸法に設定されている。施錠補助部54dは、距離Kが一定、且つ施錠位置に到達したロック部材6がさらに施錠方向へ移動しないように後述する解錠腕部61bと当接する寸法に設定されている。
【0030】
漸変部54cは、ウォームホイール5の回転とともに距離Kが徐々に変化するように設定されている。特に、施錠位置に位置するロック部材6がステアリングシャフト92のシャフト側突部93から離間するまでの間は、ウォームホイール5の回転に対する距離Kの変化量が小さく設定されている。つまり、後述するロック本体62の先端部62aが、シャフト側突部93から離間するまでは、引抜きトルクを優先し、先端部62aがシャフト側突部93から離間した後は、移動距離を優先するカムプロフィールに設定されている。
【0031】
漸変部54cを上記のように設定する理由として、施錠中にステアリングシャフト92が回転し、ロック本体62の先端部62aがステアリングシャフト92のシャフト側突部93に噛み込んでしまうことが挙げられる。このような場合、ウォームホイール5の回転に対する距離Kの変化量が一定となるようにカムプロフィールが設定されていると、駆動源である電動モータ41の限られた出力では、ロック本体62を引抜くことができないおそれがある。そこで、できるだけ小さい出力(大きさ)の電動モータ41で、ロック本体62を確実に引抜くために、ウォームホイール5の回転に対する距離Kの変化量を小さくし、引抜きトルクを稼いでいる。
【0032】
施錠カム面55aのカムプロフィールは、施錠保持部55bと、解錠補助部55dと、施錠突部55cとで構成されている。施錠保持部55bは、距離Kが一定、且つ施錠位置に移動したロック部材6を施錠位置に保持する寸法に設定されている。解錠補助部55dは、距離Kが一定、且つ解錠位置に到達したロック部材6がさらに解錠方向へ移動しないように施錠腕部61cと当接する寸法に設定されている。
【0033】
施錠突部55cは、施錠保持部55bの施錠回転方向R1前端に設定された角部である。施錠突部55cは、ウォームホイール5が施錠回転方向R1に回転する際に、後述する施錠腕部61c上を摺接移動しながら、ロック部材6を施錠位置へスライドさせる。そして、ロック部材6が施錠位置へ到達した後は、施錠突部55cが施錠腕部61cから離れて、施錠保持部55bが施錠腕部61c上に位置し、ロック部材6を施錠位置に保持する。
【0034】
ロック部材6は、ハンガー61と、ロック本体62と、退避バネ63とで構成されている。また、ロック部材6は、ロックガイド孔23に設定された施錠位置と解錠位置との間を移動自在に配置されている。
【0035】
ハンガー61は、ロック部材6の後端側を構成し、ロックガイド孔23に沿った方向(スライド方向S1)に沿って形成される基部61aと、基部61aの後端側に、スライド方向S1に対して直交する方向(直交方向S2)に沿って、且つ解錠カム面54a上を摺接可能に延設される解錠腕部61bと、基部61aの先端側に、直交方向S2に沿って、且つ施錠カム面55a上を摺接可能に延設される施錠腕部61cとで、略コ字形状に形成されている。
【0036】
また、ハンガー61の基部61aには、後述するロック本体62の連係部62bと連係する連係受部61dが設けられている。連係受部61dは、先端側に位置する大きい矩形部61eと、後端側に位置する小さい矩形部61fとを組合わせた断面略凸字形状の凹部で構成されている。また、小さい矩形部61fのステアリングシャフト92の回転方向に沿った方向の寸法は、解錠位置側に向かって徐々に小さくなるように設定されており、連係受部61dは先細の凸字形状を有する凹部となっている。そして、連係受部61dの大きい矩形部61eと小さい矩形部61fとの段差部分には、庇部61gが設定されている。また、大きい矩形部61eの先端側角部には、スライド方向S1に対して斜めに設定された傾斜角部61hが設けられている。
【0037】
解錠腕部61bは、ロック部材6が解錠位置への移動が完了した解錠状態において、解錠腕部61bと解錠カム面54aの解錠保持部54bとの接点P1と、ウォームホイール5の回転中心Oとを結ぶ直線L1が、スライド方向S1に対して平行になるよう設定されている。また、施錠腕部61cについても、ロック部材6が施錠位置への移動が完了した施錠状態において、施錠腕部61cと施錠カム面55aの施錠保持部55bとの接点P2と、ウォームホイール5の回転中心Oとを結ぶ直線L2が、スライド方向S1に対して平行になるよう設定されている。
【0038】
ロック本体62は、ロック部材6の先端側を構成し、先端側にステアリングシャフト92のシャフト側突部93と係合する先端部62aと、後端側に鉤形状を備え、ハンガー61の連係受部61dと連係する連係部62bが設けられている。そして、先端部62aは、先細のテーパー形状を備え、連係部62bは、ハンガー61の連係受部61dを構成する大きい矩形部61eと小さい矩形部61fをスライド方向S1に沿って移動可能な寸法に設定されている。また、ロック本体62後端の角部(連係部62b後端側の角部)には、庇部61gと係合可能な係合部62dが設けられている。さらに、連係部62b先端側の角部には、スライド方向S1に対して斜めに設定された復帰角部62eが設けられている。
【0039】
退避バネ63は、ハンガー61の連係受部61dと、連係受部61d内に挿入されたロック本体62の連係部62bとの間に圧縮挟持され、圧縮反力によってロック本体62を先端側へ付勢保持している。そして、退避バネ63の圧縮反力によって、ロック本体62が先端側へ付勢保持されていることにより、ロック本体62の係合部62dよりも解錠位置側に、ハンガー61の庇部61gが位置する。
【0040】
ホイール外れ防止手段8は、
図9〜
図12に示すように、収容部21の底面からウォームホイール5の回転中心に向かって立設し、先端が鉤状に屈曲した外れ防止突起81と、ウォームホイール5の他端側端面に回転面に沿って形成される外れ防止溝82とで構成されている。外れ防止溝82は、ウォームホイール5の径方向に延設される着脱部82aと、着脱部82aに連通しつつ、回転中心Oからの距離が一定に設定された円弧状の外れ防止部82bとで構成され、着脱部82aと外れ防止部82bの溝内を外れ防止突起81の先端部分が移動するように各寸法が設定されている。また、着脱部82aは、ウォームホイール5を解錠状態の向きで収容部21の正面側から組付ける際に、外れ防止部82bと対向する位置に形成されている。
【0041】
このような構成とすることで、解錠状態では、外れ防止突起81が着脱部82a内を移動可能なため、ウォームホイール5をホイール受部22に着脱することが可能となり、施錠状態では、外れ防止突起81が外れ防止溝82内に位置するため、ウォームホイール5がホイール受部22から取外されることを防止する。
【0042】
次に、上記電動ステアリングロック装置1の組立手順を説明する。まず、退避バネ63を挟持しつつ、ハンガー61にロック本体62を組付けてロック部材6を組立てる。次に、駆動手段4を駆動ケース44に組込みつつ、ウォームホイール5を解錠状態の向きに配置した状態で、ホイール収容部45に収容する。そして、ホイール収容部45に収容されたウォームホイール5のカム突起53に組上がったロック部材6を連係させつつ、駆動ケース44をフレーム2の正面側から収容部21に設置する。ここで、駆動ケース44を設置する際に、ウォームホイール5の着脱部82aに外れ防止突起81の先端部分81aを挿入する。そして、フレーム2の正面側から収容部21を覆うようにカバー3をフレーム2に組付ける。
【0043】
次に、上記電動ステアリングロック装置1の動作を説明する。まず、施錠状態では、
図3に示すように、施錠カム面55aの施錠保持部55bが施錠腕部61c上に当接しつつ、解錠カム面54aの施錠補助部54dが解錠腕部61b上に当接している。また、施錠状態では、施錠腕部61cと施錠保持部55bとの接点P2と、ウォームホイール5の回転中心Oとを結ぶ直線L2が、スライド方向S1に対して平行になっている。なお、施錠状態では、ロック本体62の先端部62aが脚部24の間からフレーム2の裏面側に突出して、ステアリングシャフト92のシャフト側突部93と係合し、ステアリングシャフト92の回転を規制することで、ステアリングロックする。
【0044】
また、施錠状態でステアリングシャフト92に回転方向の力が加わった場合には、
図4、
図5に示すように、シャフト側突部93がロック本体62の先端部62aを押すことで、平行部23dを中心にロック本体62が倒れる。また、シャフト側突部93が、テーパー状の先端部62aを押すことで、ロック本体62には解錠方向の分力が加わり、ロック本体62が解錠位置側へ移動し、係合部62dが庇部61gに係合する。係合部62dが庇部61gに係合することで、ロック本体62の先端部62aに加わる解錠方向の分力は、ハンガー61を介して、ウォームホイール5に掛かり、ウォームホイール5をフレーム2上に保持する駆動ケース44と、ホイール外れ防止手段8に分散される。このような構成により、施錠状態でステアリングシャフト92に回転方向の力が加わった場合であっても、ロック本体62の解錠位置側への移動が規制される。
【0045】
施錠状態から解錠状態へ移行する際には、電動モータ41によって、ウォームホイール5が解錠回転方向R2に回転し、解錠カム面54aの漸変部54cが解錠腕部61b上を摺接したまま、施錠カム面55aが施錠腕部61cから離間する。さらにウォームホイール5が解錠回転方向R2に回転すると、
図6に示すように、漸変部54cの距離Kが徐々に大きくなり、解錠カム面54aがロック部材6を解錠方向へスライドさせ、解錠状態に移行する。この時、ロック本体62は倒れたまま、つまり係合部62dと庇部61gとが係合したままの状態で、ハンガー61とともにロック本体62は解錠位置へ移動するが、移動する際に、倒れたままのロック本体62は、ロックガイド孔23の平行部23dに引っ掛かるため、係合部62dと庇部61gの係合が解除され、ロック本体62がステアリングシャフト92に対して垂直な状態に戻される。さらに、解錠動作によって、ロック本体62の先端部62aがシャフト側突部93から離れると、ステアリングシャフト92からのロック本体62を倒そうとする力がなくなり、退避バネ63の圧縮反力によってロック本体62が施錠位置方向へ移動する。この移動によって、係合部62dと庇部61gの係合が解除されるとともに、連係部62bの復帰角部62eが連係受部61dの傾斜角部61hの斜面上を移動し、ロック本体62がステアリングシャフト92に対して垂直な状態に戻される。
【0046】
また、解錠動作時に係合部62dと庇部61gとの係合が解除されなかったとしても、施錠動作時にロック本体62が平行部23dを挿通する際に解除され、ロック本体62がステアリングシャフト92に対して垂直な状態に戻される。つまり、庇部61gと係合部62dとの掛かり代は、ロック本体62に掛る解錠位置側への分力に対して十分な抗力を備えつつ、ロック部材6がスライド方向S1に沿ってスライドする際に、庇部61gと係合部62dとの係合が解除されるように設定されている。
【0047】
解錠状態では、
図7に示すように、解錠カム面54aの解錠保持部54bが解錠腕部61b上に当接しつつ、施錠カム面55aの解錠補助部55dが施錠腕部61c上に当接している。また、解錠状態では、解錠腕部61bと解錠保持部54bとの接点P1と、ウォームホイール5の回転中心Oとを結ぶ直線L1が、スライド方向S1に対して平行になっている。なお、解錠状態では、ロック部材6がロックガイド孔23内に収容され、先端部62aがステアリングシャフト92から離間するため、ステアリングシャフト92の回転が許容される解錠状態となる。
【0048】
解錠状態から施錠状態へ移行する際には、電動モータ41によって、ウォームホイール5が施錠回転方向R1に回転し、解錠カム面54aが解錠腕部61bから離間する。さらにウォームホイール5が施錠回転方向R1に回転すると、施錠カム面55aの施錠突部55cが施錠腕部61c上を摺接しながら、ロック部材6を施錠方向へスライドさせる。そして、ロック部材6が施錠位置へ到達した後は、施錠突部55cが施錠腕部61cから離れて、施錠保持部55bが施錠腕部61c上に位置しつつ、解錠カム面54aが解錠腕部61b上に位置し、施錠状態に移行する。
【0049】
また、解錠位置から施錠位置へ移動する途中で、ロック本体62の先端部62aが、ステアリングシャフト92のシャフト側突部93に乗上げてしまった場合には、
図8に示すように、ハンガー61が施錠位置側へ移動を続けつつ、退避バネ63が圧縮されて、ロック本体62の後端部分(連係部62b)が、連係受部61dの大きい矩形部61eから小さい矩形部61fへ移動し、ロック部材6が収縮する。そして、ステアリングシャフト92が回転し、シャフト側突部93が移動したところで、退避バネ63が伸張して、ロック本体62が施錠位置へ移動しつつ、先端部62aがシャフト側突部93と係合し、ステアリングシャフト92の回転を規制する(
図3参照)。
【0050】
以上のことから、ロック本体62の先端部分が先細のテーパー形状を有していることで、ステアリングシャフト92に回転方向の力が加わる状態では、ロック部材6に解錠位置側への分力が発生し、容易に解錠することができる。
【0051】
また、ステアリングシャフト92に回転方向の力が、車両を駐車している間ずっと加わり、ロック部材6に対して解錠位置側への分力が発生するような状態では、ロック本体62が、施錠位置に位置しつつ、ロックガイド孔23内でステアリングシャフト92の回転方向に倒れることで、係合部62dが庇部61gに係合し、ロック本体62の解錠位置側への移動が規制される。
【0052】
このような電気的な手段を用いない構成によって、バッテリー上がりをもたらすことなく、施錠状態を維持し、解錠動作時には容易に解錠することができる。
【0053】
庇部61gがハンガー61に設けられたことで、ロック本体62が庇部61gに係合したままの状態で、ロック本体ごとハンガー61が解錠位置へ移動するので、解錠動作時には容易に解錠することができる。
【0054】
ハンガー61を押して、ハンガー61を解錠位置から施錠位置へ移動させる施錠カム部55をウォームホイール5に備えたことで、ロック本体62に解錠方向への力が加わった際に、ハンガー61と施錠カム部55を介してウォームホイール5が解錠方向への力を受けることになるため、装置全体の構造を複雑にすることなく解錠方向への力を受けることができる。
【0055】
ロックガイド孔23は、正面側開口部23aのステアリングシャフト92の回転方向に沿った方向の寸法が、裏面側開口部23bの寸法よりも大きく設定された拡大部23cを備えたことによって、施錠状態でロック本体62が倒れ易くなる。また、ロックガイド孔23の裏面側開口部23b付近では、ステアリングシャフト92の回転方向に沿った方向の寸法が一定に設定された平行部23dを備えたことで、施錠動作時(解錠状態から施錠状態へ移行する際)、および解錠動作時(施錠状態から解錠状態へ移行する際)にステアリングシャフト92に対してロック本体62を垂直に移動させ、確実にステアリングロックすることができる。
【0056】
連係受部61dの小さい矩形部61fは、ステアリングシャフト92の回転方向に沿った方向の寸法が、解錠位置側に向かって徐々に小さくなるように設定されたことで、係合部62dと庇部61gとの係合を解除した状態で、シャフト側突部93にロック本体62が乗上げた場合に、ロック本体62の連係部62bが小さい矩形部61fに入りやすくなり、作動信頼性が向上する。
【0057】
また、センサ等の部品を必要としないため、製造コストを増大させることなく、ロック本体62の解錠位置側への移動を規制することができる。
【0058】
なお、本実施形態では、裏面側開口部23b付近に、平行部23dが設定されているが、倒れたロック本体62がスライドすることで、ステアリングシャフト92に対して垂直な状態(スライド方向S1に平行な状態)に戻されるのであれば、平行部23dのスライド方向S1に沿った寸法は、極端に短くても良く、絞り部のような形状であっても良い。また、スライド方向S1に離間して配置される複数の突起で平行部を構成しても良い。
【0059】
また、本実施形態では、施錠動作時には、施錠カム部55が施錠腕部61cを押すことで、ロック部材6を施錠位置に移動させ、解錠動作時には、解錠カム部54が解錠腕部61bを押すことで、ロック部材6を解錠位置に移動させる構成となっているが、施錠動作時には、カムがハンガーを押して、ロック部材を施錠位置に移動させ、解錠動作時には、付勢手段の付勢力によってハンガーをカムに押し付けることで解錠位置に移動させる構成であっても良い。このような場合にも、ロック本体に解錠方向の分力が加わった際に、解錠方向の分力がカムを介してフレームに分散させることができる。
【0060】
また、カム手段は、本実施形態のように回転するウォームホイール5だけでなく、直線的にスライドするものであっても良く、スライドするカム手段であっても、施錠動作時にカム手段がハンガー61を押して、施錠位置に移動させる構成であれば、同様の作用効果が得られる。
【0061】
さらに、庇部61gをハンガー61ではなく、フレーム2のロックガイド孔23に設け、ハンガー61が解錠位置方向へ移動する際に、係合部62dと庇部61gとの係合を解除する構成としても、同様の作用効果が得られる。