(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記針支援式ジェット注入器は、前記メトトレキサートが少なくとも約0.5ml/秒の流量で針支援式ジェット注入されるように、当該メトトレキサートを注入するよう構成されている、請求項1に記載の危険有害薬剤注入システム。
前記針支援式ジェット注入器は、使用者に当該注入器を取り扱わせることができるように構成されている外ハウジング部材を更に備えている、請求項1に記載の危険有害薬剤注入システム。
前記安全部材は、前記ハウジングの前記近位端へ、複数のタブによって、それらタブを前記外ハウジングに形成されている整合用開口部に通して当該安全部材と当該外ハウジングの間に押し嵌めを形成することにより、取り外し可能に取り付けられている、請求項8に記載の危険有害薬剤注入システム。
前記針支援式注入器は、シリンジスリーブであって前記射出機構の動作により引き起こされるシリンジ運動が最小限になるように前記シリンジの壁の外側に当接するよう構成されている口径部分を有するシリンジスリーブを更に備えている、請求項10に記載の危険有害薬剤注入システム。
前記自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、ステロイド耐性多発性筋炎又は皮膚筋炎、ヴェゲナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、及び脈管炎、から成る群より選択される、請求項12に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
[0036]「アシル」はラジカル‐C(O)Rを指し、ここにRは、本明細書に定義されている、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。代表的な例には、限定するわけではないが、ホルミル、アセチル、シクロヘキシルカルボニル、シクロヘキシルメチルカルボニル、ベンゾイル、ベンジルカルボニルなどが含まれる。
【0023】
[0037]「アシルアミノ」(又は「アシルアミド」)は‐NR’C(O)Rを指し、ここにR’及びRは、それぞれ独立に、本明細書に定義されている、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルである。代表的な例には、限定するわけではないが、ホルミルアミノ、アセチルアミノ(即ちアセトアミド)、シクロヘキシルカニボニルアミノ、シクロヘキシルメチル‐カルボニルアミノ、ベンゾイルアミノ(即ちベンザミド)、ベンジルカルボニルアミノなどが含まれる。
【0024】
[0038]「アルコキシ」はラジカル‐ORを指し、ここにRは、本明細書に定義されているアルキル基又はシクロアルキル基を表す。代表的な例には、限定するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシなどが含まれる。
【0025】
[0039]「アルコキシカルボニル」はラジカル‐C(O)‐アルコキシを指し、ここにアルコキシは、本明細書に定義されている通りである。
【0026】
[0040]「アルキル」は、親のアルカン、アルケン、又はアルキンの単一の炭素原子から1個の水素原子を取り除くことによって誘導される、飽和又は不飽和の、分鎖、直鎖、又は環状の一価の炭化水素ラジカルを指す。典型的なアルキル基には、限定するわけではないが、メチル;エタニル、エテニル、エチニルの様なエチル類;プロパン‐1‐イル、プロパン‐2‐イル、シクロプロパン‐1‐イル、プロパ‐1‐エン‐1‐イル、プロパ‐1‐エン‐2‐イル、プロパ‐2‐エン‐1‐イル(アリル)、シクロプロパ‐1‐エン‐1‐イルの様なプロピル類;シクロプロパ‐2‐エン‐1‐イル、プロパ‐1‐エン‐1‐イル、プロパ‐2‐エン‐1‐イル、プロパ‐2‐エン‐1‐イルなど;ブタン‐1‐イル、ブタン‐2‐イル、2‐メチル‐プロパン‐1‐イル、2‐メチル‐プロパン‐2‐イル、シクロブタン‐1‐イル、ブタ‐1‐エン‐1‐イル、ブタ‐1‐エン‐2‐イル、2‐メチル‐プロパ‐1‐エン‐1‐イル、ブタ‐2‐エン‐1‐イル、ブタ‐2‐エン‐2‐イル、ブタ‐1,3‐ジエン‐1‐イル、ブタ‐1,3‐ジエン‐2‐イル、シクロブタ‐1‐エン‐1‐イル、シクロブタ‐1‐エン‐3‐イル、シクロブタ‐1,3‐ジエン‐1‐イル、ブタ‐1‐エン‐1‐イル、ブタ‐1‐エン‐3‐イル、ブタ‐3‐エン‐1‐イルなどの様なブチル類;などが含まれる。
【0027】
[0041]「アルキル」という用語は、厳密には、何らかの飽和度合い又は飽和レベルを有する基であって、即ち、排他的に一重炭素‐炭素結合を有する基、1つ又はそれ以上の二重炭素‐炭素結合を有する基、1つ又はそれ以上の三重炭素‐炭素結合を有する基、及び一重、二重、及び三重の炭素‐炭素結合の混合を有する基、を含むことを意図する。特定の飽和レベルが意図されている場合、「アルカニル」、「アルケニル」、及び「アルキニル」が使用される。幾つかの実施形態では、アルキル基は1個から20個の炭素原子を備え、また幾つかの実施形態では、1個から10個の炭素原子を備えている。
【0028】
[0042]「アルキルアミノ」はラジカル‐NHRを意味し、ここにRは、本明細書に
定義されているアルキル基又はシクロアルキル基を表す。代表的な例には、限定するわけではないが、メチルアミノ、エチルアミノ、1‐メチルエチルアミノ、シクロヘキシルアミノなどが含まれる。
【0029】
[0043]「アルキルスルフィニル」はラジカル‐S(O)Rを指し、ここにRは、本明細書に定義されているアルキル基又はシクロアルキル基である。代表的な例には、限定するわけではないが、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、ブチルスルフィニルなどが含まれる。
【0030】
[0044]「アルキルスルホニル」はラジカル‐S(O)
2Rを指し、ここにRは、本明細書に定義されているアルキル基又はシクロアルキル基である。代表的な例には、限定するわけではないが、メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、ブチルスルホニルなどが含まれる。
【0031】
[0045]「アルキルチオ」はラジカル‐SRを指し、ここにRは、本明細書に定義されているアルキル基又はシクロアルキル基である。代表的な例には、限定するわけではないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、ブチルチオなどが含まれる。
【0032】
[0046]「アミノ」はラジカル‐NH2を指す。
【0033】
[0047]「アリール」は、親芳香族環構造の単一の炭素原子から1個の水素原子を取り除くことによって誘導される一価の芳香族炭化水素基を指す。典型的なアリール基には、限定するわけではないが、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、コロネン、フルオランテン、フルオレン、ヘキサセン、ヘキサフェン、ヘキサレン、as‐インダセン、s‐インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、オクタセン、オクタフェン、オクタレン、オバレン、ペンタ‐2,4‐ジエン、ペンタセン、ペンタレン、ペンタフェン、ペリレン、フェナレン、フェナントレン、ピセン、プレイアデン、ピレン、ピラントレン、ルビセン、トリフェニレン、トリナフタレンなどから誘導される基が含まれる。幾つかの実施形態では、アリール基は6個から20個の炭素原子を備え、また幾つかの実施形態では、6個から12個の炭素原子を備えている。
【0034】
[0048]「アリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端又はsp
3炭素原子、に結合した水素原子の1つがアリール基で置換されている非環式アルキル基を指す。典型的なアリールアルキル基には、限定するわけではないが、ベンジル、2‐フェニルエタン‐1‐イル、2‐フェニルエテン‐1‐イル、ナフチルメチル、2‐ナフチルエタン‐1‐イル、2‐ナフチルエテン‐1‐イル、ナフトベンジル、2‐ナフトフェニルエタン‐1‐イルなどが含まれる。特定のアルキル部分が意図されている場合、学名のアリールアルカニル、アリールアルケニル、及び/又はアリールアルキニルが使用される。幾つかの実施形態では、アリールアルキル基は(C
6‐C
30)アリールアルキルであって、例えば、当該アリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分、又はアルキニル部分が、(C
1‐C
10)で、アリール成分が(C
6‐C
20)であり、また幾つかの実施形態では、アリールアルキル基は(C
6‐C
20)アリールアルキルであって、例えば、当該アリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分、又はアルキニル部分が(C
1‐C
8)で、アリール部分は(C
6‐C
12)がある。
【0035】
[0049]「アリールオキシ」はラジカル‐ORを指し、ここにRは、本明細書に定義されているアリール基を表す。
【0036】
[0050]「AUC」は、本明細書に定義されている危険有害性薬剤の様な化合物又はそれらの代謝産物の患者の血中又は血漿中濃度を、患者への当該化合物の投与後の時間の関数として表した曲線の曲線下面積である。例えば、投与化合物は本明細書に定義されている危険有害性薬剤としてもよい。AUCは、血液中の化合物又はその代謝産物の濃度を、液体クロマトグラフィー−タンデム質量分析(LC/MS/MS)の様な方法を使って様々な時間間隔で測定し、血液又は血漿の濃度対時間曲線の曲線下面積を計算することによって求めることができる。濃度対時間曲線は、薬物動態プロファイルとも呼ばれる。化合物濃度対時間曲線からAUCを計算するのに適した方法は、当技術では知られている。例えば、危険有害性薬剤であるメトトレキサートのAUCは、患者にメトトレキサートを投与した後に患者の血液中のメトトレキサートの濃度を測定することにより求めることができる。AUC
0−24は、投与(時間0)から投与後24時間の曲線下面積である。AUC
SS,24は、或る投薬計画を或る日数期間(定常状態)に亘って投与した後の24時間に亘る曲線下面積である。
【0037】
[0051]「生物学的利用能」は、化合物、例えば危険有害性薬剤の、当該化合物を患者に投与した後に患者の体循環に到達する量を指し、例えば、化合物の血液中又は血漿中の濃度を評価することにより求めることができる。例えば、投与化合物は、本明細書に定義されている危険有害性薬剤としてもよい。
【0038】
[0052]本開示の「化合物」には、構造式(I)の範囲内の化合物が含まれる。化合物は、それらの化学構造及び/又は化学名の何れでも識別され得る。化学構造と化学名が矛盾する場合は、化学構造によって化合物の識別が確定される。ここに記載されている化合物は、1つ又はそれ以上のキラル中心及び/又は二重結合を含んでいてもよく、よって、二重結合異性体(即ち、幾何異性体)、鏡像異性体、又はジアステレオ異性体の様な立体異性体として存在し得る。従って、特段の指定のない限り、示されている明細書の範囲内の化学構造において、その全体又は一部に相対配置を有する化学構造は何れも、説明されている化合物の、立体異性体として純粋な型(例えば、幾何学的に純粋、鏡像異性体として純粋、又はジアステレオ異性体として純粋)及び鏡像異性体混合物及び立体異性体混合物を含め、可能なあらゆる鏡像異性体及び立体異性体を網羅する。鏡像異性体混合物及び立体異性体混合物は、当業者にはよく知られている分離技法又はキラル合成技法を使えば、それらの構成体である鏡像異性体又は立体異性体に分解することができる。例えば鏡像異性体又はジアステレオ異性体の分解は、分解剤の存在下での結晶化又はキラル高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)塔を使用するクロマトグラフィーの様な従来の方法によって達成することができる。
【0039】
[0053]ここに開示されている化合物は、エノール型、ケト型、及びそれらの混合を含め、幾つかの互変異性体型として存在し得る。従って、ここに示されている化学構造は、説明されている化合物の可能なあらゆる互変異性体型を網羅する。本開示の化合物には、更に、1つ又はそれ以上の原子が、従来、自然界に見つけられる原子質量とは異なる原子質量を有している同位体標識化合物が含まれる。本明細書に開示されている化合物に組み入れられ得る同位体の例には、限定するわけではないが、
2H、
3H、
11C、
13C、
14C、
15N、
18O、
17Oなどが含まれる。化合物は、非溶媒和形態並びに水和形態を含む溶媒和形態として、及び酸化物又はN‐オキシドとして存在し得る。一般に、化合物は、遊離酸、水和物、溶媒和物、酸化物、又はN‐オキシドであろう。化合物は、多結晶、共結晶、又は非晶質の形態で存在し得る。化合物は、その薬学的に許容され得る塩、又は上記の何れかの遊離酸の形態並びに上記の何れかの結晶の形態の薬学的に許容され得る溶媒和物を含む。化合物には、溶媒和物も含まれる。
【0040】
[0054]「シクロアルキル」は、飽和又は不飽和の環状アルキルラジカルを指す。特定の飽和レベルが意図されている場合、学名の「シクロアルカニル」又は「シクロアルケニル」が使用される。典型的なシクロアルキル基には、限定するわけではないが、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサンなどから誘導される基が含まれる。幾つかの実施形態では、シクロアルキル基は(C
3‐C
10)シクロアルキルであり、また幾つかの実施形態では(C
3‐C
7)シクロアルキルである。
【0041】
[0055]「シクロヘテロアルキル」は、1つ又はそれ以上の炭素原子(及び結び付けられた水素原子)が、独立に、同じか又は異なるヘテロ原子で置換されている飽和又は不飽和の環状アルキルラジカルを指す。(単数又は複数の)炭素原子を置換する典型的なヘテロ原子には、限定するわけではないが、N、P、O、S、Siなどが含まれる。特定の飽和レベルが意図されている場合、学名の「シクロヘテロアルカニル」又は「シクロヘテロアクケニル」が使用される。典型的なシクロヘテロアルキル基には、限定するわけではないが、エポキシド、イミダゾリジン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ピラゾリジン、ピロリジン、キヌクリジン、などから誘導される基が含まれる。
【0042】
[0056]「ジアルキルアミノ」はラジカル‐NRR’を意味し、ここにR及びR’は、独立に、本明細書に定義されているアルキル基又はシクロアルキル基を表す。代表的な例には、限定するわけではないが、ジメチルアミノ、メチルエチルアミノ、ジ‐(1‐メチルエチル)アミノ、(シクロヘキシル)(メチル)アミノ、(シクロヘキシル)(エチル)アミノ、(シクロヘキシル)(プロピル)アミノなどが含まれる。
【0043】
[0057]「構造式(I)」には、メトトレキサート誘導体(I)、その薬学的に許容され得る塩、上記の何れかの薬学的に許容され得る溶媒和物、上記の何れかの薬学的に許容され得る水和物、上記の何れかの薬学的に許容され得る酸化物、及び上記の何れかの結晶質形態が含まれる。構造式(I)は、構造式(I)の化合物と同義的に使用される。一部の特定の実施形態では、構造式(1)の化合物が遊離酸のこともある。一部の特定の実施形態では、構造式(1)の化合物が薬学的に許容され得る塩のこともある。
【0044】
[0058]「ハロ」はフルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを意味する。
【0045】
[0059](単数又は複数の)危険有害性薬剤は、中毒性薬剤、細胞毒性薬剤、及び/又は対象物に触れると深刻な影響を生じさせ得る他の薬剤はもとより、高効能薬剤、低用量で強い生理的効果を有する薬剤、鎮痛剤、免疫調整剤、IL−1受容体拮抗剤、IL−2アルファ受容体拮抗剤、拒絶反応防止化合物、ホルモン剤、プロスタグランジン類、鎮静剤、抗コリン剤、パーキンソン病薬、高額薬剤、神経弛緩剤、組織壊死因子(TNF)遮断剤、及び他の危険な薬剤とされる、何れかの1つ又はそれ以上の治療薬を意味する。この開示では、(単数又は複数の)「危険有害性薬剤」は、「薬剤」及び「医薬」と同義に使用される。危険有害性薬剤には、限定するわけではないが、抗腫瘍細胞毒性治療薬、麻酔剤、抗ウイルス剤、高効能ペプチド化合物、中毒性薬剤、細胞毒性薬剤、高効能薬剤、低用量で強い生理的効果を有する薬剤、鎮痛剤、免疫調整剤、IL−1受容体拮抗剤、IL−2アルファ受容体拮抗剤、拒絶反応防止化合物、ホルモン剤、プロスタグランジン類、鎮静剤、抗コリン剤、パーキンソン病薬、高額薬剤、神経弛緩剤、組織壊死因子(TNF)遮断剤、及び他の危険な薬剤が含まれる。中毒性薬剤、細胞毒性薬剤、高効能薬剤、低用量で強い生理的効果を有する薬剤、及び他の危険な薬剤。
【0046】
[0060]高効能薬剤の例には、限定するわけではないが、デキサメタゾン、プロゲステロン、ソマトスタチン、及びそれらの類縁体の様なステロイド類:テリパラチドの様な生物活性ペプチド類;及びスコポラミンの様な抗コリン薬が含まれる。低用量で強い生理学的効果を有する薬剤の例には、限定するわけではないが、抗高血圧薬及び/又は血圧降下調整薬が含まれる。鎮痛剤の例には、限定するわけではないが、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、モルヒネ、メペリジン、及び他のオピオイド類が含まれる。免疫調整剤の例には、限定するわけではないが、アダリムマブ(抗組織壊死因子モノクローナル抗体又は抗TNF)が含まれる。IL−1受容体拮抗剤の例には、限定するわけではないが、アナキンラが含まれる。IL−2アルファ受容体拮抗剤の例には、限定するわけではないが、ダクリズマブとバシリキシマブが含まれる。拒絶反応防止化合物の例には、限定するわけではないが、アザチオプリン、シクロスポリン、及びタクロリムスが含まれる。ホルモン剤の例には、限定するわけではないが、テストステロン、エストロゲン、成長ホルモン、インスリン、甲状腺ホルモン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、エピネフリン/アドレナリン、プロゲステロン、副甲状腺ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GHRH)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、反対の性別の人が接触すると副作用を引き起こしかねないホルモンの様な他のホルモン類、及びそれらの誘導体が含まれる。プロスタグランジン類の例には、限定するわけではないが、ガンマ‐リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、及びエイコサペンタエン酸が含まれる。鎮静剤の例には、限定するわけではないが、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、及びフェノバルビタールの様なバルビツール酸系;クロナゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、トリアゾラム、テマゼパム、クロルジアゼポキシド、及びアルプラゾラムの様なベンゾジアゼピン系;アシュワガンダ、ピチュリ(duboisia hopwoodii)、キャットニップ、カバ(カワカワ)、マンドレイク、カノコソウ、及びマリファナの様なハーブ系鎮静剤;エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロンの様な非ベンゾジアゼピン系鎮静剤(別名「Z薬」);ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、ドキシラミン、及びプロメタジンの様な抗ヒスタミン薬;抱水クロラールの様な他の鎮静剤が含まれる。抗コリン剤の例には、限定するわけではないが、ジシクロミン、アトロピン、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、及びチオトロピウムが含まれる。パーキンソン病薬の例には、限定するわけではないが、レボドパ、ドーパミン、カルビドパ、ベンセラジド、コ‐セラルドパ、コ‐ベネルドパ、トルカポン、エンタカポン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、及びリスリドが含まれる。高額薬剤の例には、限定するわけではないが、ヒト成長ホルモン及びエリスロポエチンが含まれる。神経弛緩剤の例には、限定するわけではないが、抗精神病薬;ハロペリドール及びドロペリドールの様なブチロフェノン類;クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、及びピモジドの様なフェノチアジン類;クロルプロチキセン、クロペンチキソール、フルペンチキソール、チオチキセン、及びズクロペンチキソールの様なチオキサンテン類;クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、イロペリドン、ゾテピン、及びセルチンドールの様な非定型抗精神病薬;アリピプラゾール、及びビフェプルノックスの様な第三世代の抗精神病薬が含まれる。TNF遮断剤の例には、限定するわけではないが、エタネルセプトが含まれる。
【0047】
[0061]危険有害性薬剤には、薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、水和物、酸化物、又はN‐オキシドが含まれる。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤は、細胞毒性化合物、又はその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、水和物、酸化物、又はNオキシドである。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤は、構造式(I):
【0049】
の化合物であるか、
[0062]又はその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、水和物、酸化物、又はN‐オキシドである。幾つかの実施形態では、当該医薬は、メトトレキサートである。
【0050】
[0063]幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤は、ボツリヌス毒素、注入できる金、6‐メルカプトプリン、6‐チオイノシン酸、アザチオプリン、クロラムブシル、シクロホスファミド、サイトホスファン、シタラビン、フルオロウラシル、メルファラン、メトトレキサート、ウラムスチン、抗サイトカイン生物製剤、細胞受容体拮抗剤、細胞受容体類縁体、デキサメタゾン、プロゲステロン、ソマトスタチン、デキサメタゾンの類縁体、プロゲステロンの類縁体、ソマトスタチンの類縁体、テリパラチド、スコポラミン、抗高血圧薬、血圧降下調整薬、フェンタニル、クエン酸フェンタニル、モルヒネ、メペリジン、他のオピオイド類、アダリムマブ(抗組織壊死因子モノクローナル抗体又は抗TNF)、アナキンラ、ダクリズマブ、バシリキシマブ、アザチオプリン、シクロスポリン、タクロリムス、テストステロン、エストロゲン、成長ホルモン、インスリン、甲状腺ホルモン、卵胞刺激ホルモン(FSH)、エピネフリン/アドレナリン、ガンマ‐リノレン酸、ドコサヘキサエン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、アモバルビタール、ペントバルビタール、セコバルビタール、フェノバルビタール、クロナゼパム、ジアゼパム、エスタゾラム、フルニトラゼパム、ロラゼパム、ミダゾラム、ニトラゼパム、オキサゼパム、トリアゾラム、テマゼパム、クロルジアゼポキシド、アルプラゾラム、アシュワガンダ、ピチュリ、キャットニップ、カバ(カワカワ)、マンドレイク、カノコソウ、マリファナ、エスゾピクロン、ザレプロン、ゾルピデム、ゾピクロン、ジフェンヒドラミン、ジメンヒドリナート、ドキシラミン、プロメタジン、抱水クロラール、ジシクロミン、アトロピン、臭化イプラトロピウム、臭化オキシトロピウム、チオトロピウム、レボドパ、ドーパミン、カルビドパ、ベンセラジド、コ‐セラルドパ、コ‐ベレルドパ、トルカポン、エンタカポン、ブロモクリプチン、ペルゴリド、プラミペキソール、ロピニロール、ピリベジル、カベルゴリン、アポモルフィン、リスリド、ヒト成長ホルモン、エリスロポエチン、ハロペリドール、ドロペリドール、クロルプロマジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、チオリダジン、トリフルオペラジン、メソリダジン、ペリシアジン、プロマジン、トリフルプロマジン、レボメプロマジン、プロメタジン、ピモジド、クロルプロチキセン、クロペンチキソール、フルペンチキソール、チオチキセン、ズクロペンチキソール、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、ジプラシドン、アミスルプリド、アセナピン、パリペリドン、イロペリドン、ゾテピン、セルチンドール、アリピプラゾール、ビフェプルノックス、エタネルセプト、上記のうちの何れかの誘導体、及び上記のうちの何れかの組合せから選択することができる。
【0051】
[0064]危険有害性薬剤は、死亡、及び/又は癌、感染症、臓器毒性、妊孕障害、遺伝子損傷、及び出生異常を含む重篤な影響を引き起こしかねない。危険有害性薬剤は、更に、急性的な重篤度はそれほどでないにしても、なお潜在的に、免疫系の抑制の様な、患者にとって有害性の作用機序を有し得る。抑制は、免疫応答に加わっている特定の細胞の数又は活動の下方調整によって起こるもので、感染への感受性を高める。しかしながら、免疫系の抑制が潜在的に有害であるとしても、それには被投与者の炎症を低減する働きもあるので、それによって自己免疫疾患の患者には恩恵をもたらすことができる。
【0052】
[0065]「ヘテロアルキルオキシ」は、‐O‐ヘテロアルキル基を意味し、ここにヘテロアルキルは本明細書に定義されている通りである。
【0053】
[0066]「ヘテロアルキル」は、炭素原子(及び結びついている水素原子)のうち1つ又はそれ以上が、それぞれ独立に、同じか又は異なるヘテロ原子基で置換されている、アルキルラジカル、アルカニルラジカル、アルケニルラジカル、及びアルキニルラジカルを指す。典型的なヘテロ原子基には、限定するわけではないが、‐0‐、‐S‐、‐0‐0‐、‐S‐S‐、‐0‐S‐、‐NR’‐、=N‐N=、‐N=N‐、‐N=N‐NR’‐、‐PH‐、‐P(O)
2‐、‐O‐P(O)
2‐、‐S(O)‐、‐S(O)
2‐、‐SnH
2‐などが含まれ、ここにR’は、水素、アルキル、シクロアルキル、又はアリールである。
【0054】
[0067]「ヘテロアリール」は、親芳香族環構造の単一の炭素原子から1個の水素原子を取り除くことによって誘導される一価の芳香族ラジカルを指す。典型的なヘテロアリール基には、限定するわけではないが、アクリジン、アルシンドール、カルバゾール、P‐カルボリン、クロマン、クロメン、シンノリン、フラン、イミダゾール、インダゾール、インドール、インドリン、インドリジン、イソベンゾフラン、イソクロメン、イソインドール、イソインドリン、イソキノリン、イソチアゾール、イソオキサゾール、ナフチリジン、オキサジアゾール、オキサゾール、ペリミジン、フェナントリジン、フェナントロリン、フェナジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、ピロリジン、キナゾリン、キノリン、キノリジン、キノキサリン、テトラゾール、チアジアゾール、チアゾール、チオフェン、トリアゾール、キサンテンなどから誘導される基が含まれる。幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は、5−20員のヘテロアリールで構成され、幾つかの実施形態では、5−10員のヘテルアリールである。幾つかの実施形態では、ヘテロアリール基は、チオフェン、ピロール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、インドール、ピリジン、キノリン、イミダゾール、オキサゾール、及びピラジンから誘導されるものである場合もある。
【0055】
[0068]「ヘテロアリールアルキル」は、炭素原子、典型的には末端又はsp
3炭素原子、に結合した水素原子の1つがヘテロアリール基で置換されている非環式アルキル基を指す。特定のアルキル部分が意図されている場合、学名のヘテロアリールアルカニル、ヘテロアリールアルケニル、及び/又はヘテロアリールアルキニルが使用される。幾つかの実施形態では、ヘテロアリールアルキル基は6−30員のヘテロアリールアルキルであって、例えば、当該ヘテロアリールアルキルのアルカニル部分、アルケニル部分、又はアルキニル部分が1−10員で、ヘテロアリール部分が5−20員のヘテロアリールであり、幾つかの実施形態では、6−20員のヘテロアリールアルキルであって、例えば、当該ヘテロアリールアルキル基のアルカニル部分、アルケニル部分、又はアルキニル部分が1−8員で、ヘテロアリール部分が5−12員のヘテロアリールである。
【0056】
[0069]「ヘテロアリールオキシ」は‐O‐ヘテロアリール基を指し、ここにヘテロアリールは、本明細書に定義されている通りである。
【0057】
[0070]「N‐オキシド」(「アミンオキシド」及び「アミン‐N‐オキシド」として知られている)は、官能基R
3N
+‐O
−を含んでいる化学的化合物を意味し、ここにRは水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、又は、ヘテロアリールアルキルである。
【0058】
[0071]「酸化物」は、少なくとも1つの酸素原子の他に少なくとも1つの他の元素を含んでいる化学合成物を指す。
【0059】
[0072]「患者」と「被投与者」は、どちらも、独立に、例えばヒトの様な哺乳動物を含む。
【0060】
[0073]「薬学的に許容され得る」は、ヒトを含む哺乳動物での使用について、連邦又は州政府の規制当局によって承認済み又は承認見込であるか、米国薬局方のリストに掲載されているか、又は他の公認の薬局方のリストに掲載されていることを指す。
【0061】
[0074]「薬学的に許容され得る塩」は、危険有害性薬剤の塩の様な化合物の塩であって、薬学的に許容され得るもので、親化合物の所望の薬理活性を有する化合物の塩を指す。その様な塩には、(1)酸付加塩であって、塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの様な無機酸と共に形成されるか、又は酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3‐(4‐ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、2‐ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4‐クロロベンゼンスルホン酸、2‐ナフタレンスルホン酸、4‐トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4‐メチルビシクロ[2.2.2]‐オクト‐2‐エン‐カルボン酸、グルコヘプトン酸、3‐フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、第三級ブチル酢酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸などの様な有機酸と共に形成される、酸付加塩、及び(2)塩であって、親化合物に存在する酸性陽子を、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はアルミニウムイオン、で置換するか、又はエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N‐メチルグルカミンなどの様な有機塩基と共に配位させるか、の何れかの場合に形成される塩、が含まれる。一部の特定の実施形態では、危険有害性薬剤の塩は、塩酸塩であり、また一部の特定の実施形態では、ナトリウム塩である。
【0062】
[0075]「薬学的に許容され得る搬送媒介物」又は「薬学的に許容され得る賦形剤」は、例えば危険有害性薬剤の様な化合物と一体に患者に投与することができて、化合物の薬理活性を損なわず、化合物の治療有効量を提供するのに十分な用量を投与しても無害である、薬学的に許容され得る希釈剤、薬学的に許容され得る補助剤、薬学的に許容され得る賦形剤、薬学的に許容され得る担体、又は上記の何れかの組合せを指す。
【0063】
[0076]「薬物動態」は、投与された治療薬の体内での動態の評定を指す。薬物動態を特徴付けるのに有用なパラメータには、曲線下面積(AUC)とピーク濃度までの時間(T
max)と最大化合物濃度C
maxとを含む血中濃度対時間曲線が含まれ、ここにC
maxは、化合物の或る用量を患者に投与した後の患者の血漿中の化合物の最大濃度であり、T
maxは、化合物の或る用量を患者に投与した後の患者の血液中又は血漿中の化合物の最大濃度(C
max)までの時間である。
【0064】
[0077]「動力駆動式注入器」は、注入器を射出する機構へ動力供給するエネルギー源を有する注入装置である。本開示の動力駆動式注入器は、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤を被投与者の中へ約5秒未満で送達又は注入するように構成されている。
【0065】
[0078]「溶媒和物」は、化学量論的又は非化学量論的な量での、化合物と1つ又は複数の溶媒分子との分子錯化合物を指す。その様な溶媒分子は、薬学技術で一般に使用されているものであって、患者に無害であることが知られているもの、例えば、水、エタノールなどである。化合物又は化合物部分と溶媒との分子錯化合物は、例えば静電気力、ファン・デル・ワールス力、又は水素結合の様な、非共有分子内力によって安定化させることができる。「水和物」という用語は、1つ又はそれ以上の溶媒分子が水である溶媒和物を指す。
【0066】
[0079]「治療有効量」は、危険有害性薬剤の量であって、疾患や障害又は疾患や障害の臨床的症状の少なくとも1つを治療するために被投与者に投与されたときに、その様な疾患や障害又は症状の治療に影響を与えるに十分な量を指す。治療有効量は、例えば、化合物、疾患や障害及び/又は疾患の症状、疾患や障害及び/又は疾患や障害の症状の重篤度、治療を受ける患者の年齢や体重及び/又は健康、及び処方する医師の判断、によって変わり得る。治療有効量は、当業者によって確定されてもよいし、通常の実験によって判断することもできる。
【0067】
[0080]疾患を「治療する」又は疾患の「治療」は、疾患や障害又は疾患や障害の臨床的症状の少なくとも1つを停止させるか又は改善すること、疾患や障害又は疾患や障害の臨床的症状の少なくとも1つがもたらされる危険性を低減すること、疾患や障害又は疾患や障害の臨床的症状の少なくとも1つの発症を低減すること、又は疾患や障害又は疾患や障害の臨床的症状の少なくとも1つが発症する危険性を低減することを指す。「治療する」又は「治療」は、更に、疾患や障害を身体的に(例えば、認識できる症状の安定化)か又は生理学的に(例えば、身体的パラメータの安定化)かの何れか又は両方によって阻害すること、及び患者が認識できる場合もあれば認識できない場合もある少なくとも1つの身体的パラメータを阻害することを指す。一部の特定の実施形態では、「治療する」又は「治療」は、疾患又は障害に曝されているか又は被り易い患者の、疾患又はその少なくとも1つ又はそれ以上の症状について、たとえ患者が当該疾患の症状を体験したり露呈したりしていなくても、その様な疾患又は症状の開始を遅らせることを指す。
【0068】
[0081]本開示の一部の特定の実施形態において、限定するわけではないが、危険有害性薬剤、注入器、及び方法を含む実施形態をこれより詳細に参照してゆく。開示されている実施形態は、特許請求の範囲に制限を課すことを意図しているわけではない。そうではなくて、特許請求の範囲は、あらゆる代替、修正、及び等価物を対象として包含することを意図している。
【0069】
危険有害性薬剤の注入
[0082]様々な態様では、本開示は、危険有害性薬剤の注入に関する。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤は、細胞毒性薬剤である。本開示に従って使用してもよいとされる細胞毒性薬剤の例には、限定するわけではないが、6‐メルカプトプリン、6‐チオイノシン酸、アザチオプリン、クロラムブシル、シクロホスファミド、サイトホスファン、シタラビン、メルファラン、メトトレキサート、ウラムスチン、抗組織壊死因子生物製剤、抗サイトカイン生物製剤、細胞受容体拮抗剤、細胞受容体類縁体、及び上記のそれぞれの誘導体が含まれる。これらの薬剤の幾つかは、直接的に細胞を殺すか又は細胞の代謝を妨げることによって作用するので、「細胞毒性」という呼ばれ方をしている。このように作用する細胞毒性薬剤は、その最大効果を急速に分裂してゆく細胞に対して発現させる。急速に分裂している腫瘍細胞の場合、細胞毒性薬剤は、これらの細胞を殺すよう作用するので、特に有効である。この活動は過活動免疫応答に関与する細胞を抑制することもでき、その結果、疾患活動が低下することで、細胞毒性薬剤は、関節リウマチ(及び他の自己免疫疾患)、狼瘡、脈管炎、及び関係する病態の様な疾患を治療することができる。基本的な作用機序は、過活動免疫応答の抑制であり、それにより抗炎症効果がもたらされる。例えば、その様な疾患を治療するのに低用量で使用される場合、細胞毒性メトトレキサートの作用方式は、抗炎症であり、細胞毒性ではない。
【0070】
[0083]幾つかの実施形態では、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤及び/又はその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、水和物、酸化物、及びN‐オキシドは、動力駆動式注入器の使用により、約5秒未満で注入することができる。幾つかの実施形態では、本開示は、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤と1つ又はそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤の注入に関する。幾つかの実施形態では、本開示は、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤の薬学的に許容され得る塩の注入に関する。
【0071】
メトトレキサート及びその誘導体の注入
[0084]幾つかの実施形態では、注入される危険有害性薬剤は、メトトレキサート及び/又は以下に更に説明されている構造式(I)によって与えられるメトトレキサートの1つ又はそれ以上の誘導体である。1つの態様では、本開示は、メトトレキサート及び/又はメトトレキサートの誘導体を動力駆動式注入器により約5秒未満で注入することに関する。幾つかの実施形態では、メトトレキサート及び/又はメトトレキサートの誘導体及び/又はその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、水和物、酸化物、及びN‐オキシドが注入される。幾つかの実施形態では、本開示は、メトトレキサート及び/又はメトトレキサートの誘導体と1つ又はそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤の注入に関する。幾つかの実施形態では、本開示は、メトトレキサート及び/又はメトトレキサートの誘導体の薬学的に許容され得る塩の注入に関する。幾つかの実施形態では、本開示は、メトトレキサートと薬学的に許容され得る賦形剤を備える薬学的組成物の注入に関する。
【0072】
危険有害性薬剤のジェット注入
[0085]幾つかの実施形態では、本開示は、ジェット注入器による危険有害性薬剤の注入に関する。幾つかの実施形態では、ジェット注入器は、針支援式ジェット注入器である。幾つかの実施形態では、ジェット注入器は、針なしジェット注入器である。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤、及び/又はその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、水和物、酸化物、及びN‐オキシドが注入される。幾つかの実施形態では、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤と1つ又はそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤を備える薬学的組成物が注入される。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤の薬学的に許容され得る塩が注入される。幾つかの実施形態では、本開示は、メトトレキサートと薬学的に許容され得る賦形剤を備える薬学的組成物の注入に関する。
【0073】
化合物
[0086]様々な態様では、本開示は、危険有害性薬剤に関する。様々な実施形態では、本開示は、構造式(I):
【0075】
の化合物及びその薬学的に許容され得る塩、溶媒和物、水和物、酸化物、及びN−オキシドに関する。
【0076】
[0087]様々な態様では、R
1、R
2、及びR
3は、独立に、基である水素、アルキル、アルコキシ、アシル、アシルアミノ、アルキルアミノ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルチオ、アルコキシカルボニル、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、ジアルキルアミノ、ハロ、ヘテロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアルキルオキシ、及びヘテロアリールオキシから選択される。
【0077】
[0088]一部の特定の実施形態では、構造式(I)の化合物は、細胞毒性薬剤のメトトレキサートであり、ここにR
1はメチルであり、R
2とR
3は共に水素である。化学的には、メトトレキサートは、L‐(+)‐N‐[P‐[[(2,4‐ジアミノ‐6‐プテリジニル)メチル]メチルアミノ]‐ベンゾイル]グルタミン酸として、又は、その体系的(IUPAC命名法による)名称(2S)‐2‐[(4‐{[(2,4‐ジアミノ‐7,8‐ジヒドロプテリジン‐6‐イル)メチル](メチル)アミノ}フェニル)ホルムアミド]ペンタン二酸で知られている。
【0078】
[0089]一部の特定の実施形態では、構造式(I)の化合物は、Singhらへの米国特許第4,374,987号及び/又はEllardへの米国特許第4,080,325号に記載されている方法を使って調製されていてもよい。
【0079】
[0090]本開示の危険有害性薬剤は、ここに開示されている1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤であって、幾つかの実施形態では純粋な形態である危険有害性薬剤の治療有効量を、患者による適切な自己投与のための剤形が提供されるように薬学的に許容され得る搬送媒介物の適量と一体に備えることができる。幾つかの実施形態では、患者により自己投与される場合、本開示の危険有害性薬剤と薬学的に許容され得る搬送媒介物は無菌である。幾つかの実施形態では、本開示の危険有害性薬剤を自己注入する場合は、搬送媒介物として水を使用することができる。また、幾つかの実施形態では、生理食塩水、デキストロース水溶液、及びグリセロール水溶液も、注入溶液のための液体搬送媒介物として採用することができる。適切な薬学的搬送媒介物には、更に、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム三水和物、クエン酸、氷酢酸、マンニトール、ポリソルベート80、L‐アルギニン塩酸塩、メタクレゾール、フェノール、酸化亜鉛、及び水、の様な賦形剤を含めることができる。幾つかの実施形態において、本開示の危険有害性薬剤は、更に、微量の湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝剤、及び/又は補助剤、安定剤、増粘剤、潤滑剤、及び/又は、着色剤を含むことができる。
【0080】
[0091]幾つかの実施形態では、本開示により提供されている薬学的組成物は、ここに開示されている危険有害性薬剤を、1つ又はそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤と一体に備えている。
【0081】
[0092]薬学的組成物中の1つ又はそれ以上の薬学的に許容され得る賦形剤の量は、例えば、約0.005%w/vから約10%w/v、及び約2%w/vから約6%w/vとすることができ、ここに、%w/vは、単位体積当たりの賦形剤の全重量に基づく。
【0082】
[0093]幾つかの実施形態では、本開示により提供される薬学的組成物は、本明細書に開示されている危険有害性薬剤の薬学的に許容され得る塩を備えている。
【0083】
薬物動態
[0094]典型的に、危険有害性薬剤の生物学的利用能は、危険有害性薬剤が経静脈的に注入又は投与された場合には消化管の中で崩壊して被投与者の身体から消えてしまうことがないため、或いは危険有害性薬剤が組織内へ注入されたなら全身に回る前に横切らなくてはならない組織構造又は構成要素がないので、100%に近くなる。危険有害性薬剤の薬物動態及び/又は生物学的利用能を患者、用量、又は他の危険有害性薬剤特性に適した特定の様式で維持するためには、危険有害性薬剤を投与するやり方を変えれば、当該危険有害性薬剤の薬物動態もまた改変され得る。
【0084】
[0095]幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤の生物学的利用能は、動力駆動式注入器の構成における1つ又はそれ以上の因子そして幾つかの実施形態ではジェット注入器の構成における1つ又はそれ以上の因子を選択することにより、危険有害性薬剤の生物学的等価性を維持できる既知又は所望のレベルに維持するか又は近付けることができる。生物学的等価性は、危険有害性薬剤の吸収の速度と範囲を確定するには血漿レベルを測定する当技術で既知の手段を使用することによって、及び吸収の範囲を確定するには当該危険有害性薬剤のAUCを求めることによって、測定することができる。危険有害性薬剤の吸収速度を確定するにはC
max濃度を使用することもできる。生物学的等価性は、本開示の注入器により注入される危険有害性薬剤が、当該薬剤を他の既知の投与経路を介して被投与者に導入された場合と同様の時間で吸収部位に到達し、同じ範囲まで吸収されたなら、確立される。典型的には、測定される薬物動態パラメータの1つ又はそれ以上の信頼区間が危険有害性薬剤の既知又は所望レベルの約80%から約125%の間に入れば、危険有害性薬剤の生物学的等価性は到達される(参照:Approved Compound Products With Therapeutic Equivalence Evaluations, US Food and Compound Administration Electronic Orange Book, 27th ed. Washington, DC: US Department of Health & Human Services (2007);及び 21 C.F.R. § 320.33 (April 1, 2005))。
【0085】
[0096]注入速度、又は危険有害性薬剤が被投与者に送達される速さは、使用される注入器の幾つかの特徴の関数であり、それらには、限定するわけではないが、注入器が注入を行うのに利用する圧力、及び/又は注入器の注入出口部材、例えば使用される針又は針なしノズルなど、の注入出口の構成と寸法を含めることができる。幾つかの実施形態では、注入器の注入の速さは、危険有害性薬剤をジェット注入するのに注入器で使用される圧力を改変することによって、危険有害性薬剤の薬物動態及び/又は生物学的利用能が、限定するわけではないが従来型の皮下シリンジ注入を含めた他の非経口送達法の場合と同様のレベルに維持されるように、選択することができる。
【0086】
[0097]危険有害性薬剤は、ひとたび本開示の注入器から噴出されたら、その相互反応は被投与者間で広範にばらつくため、注入器の構成における1つ又はそれ以上の因子の変更は必要であろう。注入の結果生じる危険有害性薬剤の沈着パターンは、動力駆動式注入器によれば手動シリンジによるボーラス沈着に比較して分散が向上することで危険有害性薬剤の細胞との相互作用に影響を与え、危険有害性薬剤の全身循環への移動を亢進させるか又は阻害するかの何れかを成し得ることから、注目に値するものと考えている。例えば、危険有害性薬剤のメトトレキサートでは、還元型葉酸担体と葉酸受容体と呼ばれる膜輸送タンパクを含む細胞輸送機序が存在しており、それがメトトレキサートを細胞に取り込ませる。これらの機序は、作用の速度が可変で、発現の程度も可変である(Kremer, J. M., Toward a better understanding of methotrexate, Arthritis and Rheumatism 2004; 50: 1370-1382参照)。メトトレキサートは、注入後、但し全身循環に達する以前に、その様な細胞に遭遇するものと思われることから、注入によってもたらされるメトトレキサートの薬物動態及び/又は生物学的利用能は、個体間で大きくばらつく可能性があり、従ってメトトレキサートを投与する様式を被投与者間で変える必要がある。注入器の構成における1つ又はそれ以上の因子に対する変更量は、従って、少なくとも一部は、疾患の性質、治療される被投与者、及び処方する医師の裁量に依存することになり、当技術で既知の標準的な技法によって求めることができる。
【0087】
[0098]本開示の動力駆動式注入器を使用することにより、危険有害性薬剤は、手動シリンジによって注入された場合より更に正確且つ完全に約5秒未満で被投与者の中へ注入することができる。或るジェット注入器の実施形態では、ジェット注入器の構成及び注入に影響を与える因子は、危険有害性薬剤のC
maxにおいて、限定するわけではないが典型的な手動駆動式皮下シリンジを含め、他の非経口送達方法を用いた場合に見られるのと同じか又は実質的に同じC
maxが得られるように選択することができる。別のジェット注入器の実施形態では、注入器の構成及び注入に影響を与える因子は、危険有害性薬剤のT
maxにおいて、限定するわけではないが典型的な手動駆動式皮下シリンジを含め、他の非経口送達方法を用いた場合に見られるのと同じか又は実質的に同じT
maxが得られるように選択することができる。更に別のジェット注入器の実施形態では、ジェット注入器の構成及び注入に影響を与える因子は、危険有害性薬剤のC
max及びT
maxの両方のおいて、限定するわけではないが典型的な手動駆動式皮下シリンジを含め、他の非経口送達方法を用いた場合に見られるのと同じか又は実質的に同じC
max及びT
maxが得られるように選択することができる。
【0088】
[0099]開示されている危険有害性薬剤の薬物動態の或る具体例として、細胞毒性薬剤のメトトレキサートの薬物動態をこれより説明してゆく。
【0089】
[0100]注入されるメトトレキサートの薬物動態は概ね知られている(例えば、Aquerreta, I., et al., Ped. Blood & Cancer (2003); 42(1), 52-58;及び、Seideman, P., et al., Br. J. Clin. Pharmacol. (1993) April; 35(4): 409-412参照)。メトトレキサートは、約4.8から約5.5の酸解離定数を有する弱いジカルボン酸であり、従って、殆どは生理的pHのイオン化した状態で存在している。静脈内投与後、メトトレキサートの初期平均分布容積は、典型的には、約0.18L/kg(又は被投与者の体重の約18%)であり、平均定常状態分布容積は、典型的には、約0.4L/kgから約0.8L/kg(又は被投与者の体重の約40%から約80%)である。メトトレキサートは、非経口的注入経路によれば概ね完全に吸収される。メトトレキサートの筋肉内注入後、ピーク血清濃度(C
max)は、殆どの患者で、約30分から約60分(T
max)のうちに起こる。しかしながら、注入されたメトトレキサートの個々の血漿濃度は、被投与者個体間で広範囲にばらつくことが報告されている。例えば、若年性関節リウマチの小児患者では、メトトレキサートの平均血清濃度の平均は、約1時間では約0.59μM(約0.03μMから約1.40μMの範囲を平均)であり、約2時間では約0.44μM(約0.01μMから約1.00μMの範囲を平均)であり、約3時間では約0.29μM(約0.06μMから約0.58μMの範囲を平均)であった。メトトレキサートの注入を受けている小児患者で、急性リンパ性白血病のための注入(用量約6.3mg/m
2から約30mg/m
2)又は若年性関節リウマチでのための注入(用量約3.75mg/m
2から約26.2mg/m
2)では、メトトレキサートのターミナル半減期は、それぞれ、約0.7時間から約5.8時間の範囲、約0.9時間から約2.3時間の範囲であることが報告されている。
【0090】
[0101]
高用量での細胞毒性
[0102]幾つかの先行研究により示されている様に、メトトレキサートの正規用量を増やせば化合物の有効性の増加をもたらすかどうかは今のところ不明である。しかし、明らかなことは、メトトレキサートの用量が増加するにつれ、細胞毒性と関連する副作用も増加することである。例えば、Furstらは、46人の患者でメトトレキサートの経口投与量を週当たり5mg/m
2(7.5mgから10mg)から週当たり10mg/m
2(15mgから22mg)に増やした場合の効果を評価した(Furst, D.E., et al., J. Rheumatol, 1989; 16: 313-320参照)。この研究で、著者らは、メトトレキサートの用量を高くすると、細胞毒性増加へ向かう傾向を伴って用量比例有効性応答が得られることを述べている。しかしながら、Lambertらにより行われた別の研究は、メトトレキサートの用量増加による有効性の改善を見い出さなかった(Lambert, C. M., et al.. Arthritis and Rheumatism, 2004; 50: 364-371参照)。この研究では、64人の患者で筋肉内メトトレキサート投薬量を週当たり15mgから週当たり45mgに引き上げた場合の効果が評価された。著者らは、週当たり15mgの経口投与から筋肉内投与への切り替え後、数人の患者で、疾患活動性スコア(DAS)の改善を観測した(平均DAS28は5.6から5.2へ減少)。好ましいDAS28スコア(DAS28<3.2)を実現できていない54人の患者は、偽薬を与えられた患者と比べても疾患の改善に何ら差異を示さなかった。
【0091】
[0103]Visserとvan der Heijdeは、関節リウマチの被投与者でメトトレキサートの投薬量と投与方式を変えた場合の有効性に焦点を当てた幾つかの研究について再検討を行った(Visser, K., and van der Heijde, D., Annal. Rheum. Diseases, 2008; デジタルオブジェクト識別子10.1136/ard.2008.092668として2008年11月25日にオンライン発行、を参照)。著者らは、被投与者に対し15mg/週の経口投与から開始し、その後、25−30mg/週のピーク濃度(又は被投与者当たり最高認容用量)に到達するまで5mg/月用量ずつ引き上げ、続いて、応答が不十分であれば皮下投与に切り替えることが、関節リウマチでのメトトレキサートの最適な投薬及び経路手段であるように思われると結論付けた。
【0092】
[0104]
経口投薬での生物学的利用能の変動性
[0105]幾つかの研究は、メトトレキサートを経口投与した場合にはメトトレキサートの生物学的利用能の変動性が大きいことを明らかにしている。メトトレキサートの経口による生物学的利用能は、用量が増加するにつれて下降することを示唆する証拠がある。例えば、Hermanらは、関節リウマチの患者41人で週当たり10mg/m
2の用量で静脈内投与及び経口投与されたメトトレキサートの生物学的利用能を特徴付けた(Herman, R.A., et al, J. Pharm. Sci., 1989; 78: 165-171参照)。著者らは、経口投与されたメトトレキサートの吸収量は、同量の静脈内投与後に観測された全吸収量の約70%±27%に過ぎないことを見い出した。更に、Hamiltonらは、関節リウマチの患者21人で、開始投薬量を週当たり7.5mg、平均維持用量を週当たり17mgとして、筋肉内投与対経口投与によるメトトレキサートの生物学的利用能を比較した(Hamilton, R. A., and Kremer, J. M., Br. J. Rheum., 1997; 36: 86-90参照)。著者らは、経口投与後のメトトキシレートの全吸収量は、維持投薬量の間に、開始投薬量で見られた全吸収量に対し約13.5%下がることを見い出した。
【0093】
[0106]Kurnikらは、クローン病の患者で、15mgから25mgの範囲のメトトレキサートの経口用量の生物学的利用能を、同量を皮下投与した場合と比較した(Kurnik, D., et al., Alimentary Pharm. Ther., 2003; 18: 57-63参照)。著者らは、経口による生物学的利用能は経口用量を与えられた患者間で広範にばらつきがあり、平均生物学的利用能は、メトトレキサートを皮下的に与えられた患者で見られたメトトレキサートの全生物学的利用能の約73%であることを観測した。
【0094】
[0107]Hoekstraらは、関節リウマチの患者でメトトレキサートを25mg以上の用量で経口的に与えた場合と皮下的に与えた場合の生物学的利用能を評価した(Hoekstra,M. et al.,J. Rheum., 2004; 31: 645-8参照)。彼らは、経口による生物学的利用能は、平均すると、週当たり30mgの中央値投薬量で皮下投与されたメトトレキサートについて見られる生物学的利用能の僅か64%であったことを報告している。相対吸収量は被験患者で21%から96%までばらついた。
【0095】
[0108]Brooksらは、週当たり12.5mgから25mgの範囲の用量での、筋肉内投与対皮下投与によるメトトレキサートの薬物動態及び生物学的利用能を比較した(Brooks, P. J. et al., Arthritis and Rheumatism, 1990; 33: 91-94参照)。著者らは、ピーク血清濃度と生物学的利用能は両方の経路で同様であることを見い出したが、T
maxは、試験された5人の患者のうち4人で皮下投与後の方が早まっていることが確認された。
【0096】
[0109]Ogueyらは、関節リウマチ患者10人で、15mgの用量での経口によるメトトレキサートの生物学的利用能に対する食物の影響を評価した(Oguey, D., et al.. Arthritis and Rheumatism, 1992; 35:611-614O参照)。彼らは、経口による生物学的利用能は、空腹状態の後と満腹状態の後ではそれぞれ67%と63%で、食物によって影響を受けないことを報告しているが、彼らはまた患者間でのばらつきが高く、28%から94%までの範囲に及ぶことにも言及している。
【0097】
[0110]Hoekstraらは、関節リウマチの患者10人で、メトトレキサートの25mgから35mgの経口用量を2つの等量分に分割し8時間の間隔を空けて与えた場合の効果を評価した(Hoekstra, M., et al., J. Rheum., 2006; 33: 481-485参照)。彼らは、用量を分割した場合の生物学的利用能は、同じ量を1回の経口用量として与えたときには、非経口投与により実現される生物学的利用能の76%になるのに比べ、90%まで増加することを示した。
【0098】
[0111]
経口投与対皮下投与
[0112]近年、Braunらは、活動性関節リウマチの患者375人で、週当たり15mgの開始用量での経口投与対皮下投与によるメトトレキサートの臨床的有効性及び安全性を比較した、6ヶ月間の二重盲検法による対照臨床試験の結果を報告した(Braun, J. et al., Arthritis and Rheumatism, 2008; 58: 73-81参照)。16週後、皮下メトトレキサートを開始した患者では、経口メトトレキサートを開始した患者に比べ有意に多くの患者が、米国リウマチ学会の20%改善判定基準(ACR20)の実現に成功した。具体的には、皮下メトトレキサートを開始した患者の85%がACR20成果を実現したのに対し、経口メトトレキサートを開始した患者では77%であった。
【0099】
[0113]ACR20及び米国リウマチ学会(ACR)の70%改善判定基準(ACR70)においてスコアがより高くなる傾向が24週後で観測された。24週では、ACR20応答を有する患者の割合は、メトトレキサート皮下投与群(78%)の方がメトトレキサート経口投与群(70%)より有意に高かった。24週では、ACR70応答を実現した患者の割合も、メトトレキサートを皮下的に受けた患者の方がメトトレキサートを経口的に受けた患者よりも高かった(41%対33%)。
【0100】
[0114]24週後、関節腫脹数は、メトトレキサートを皮下的に受けた群の方が、メトトレキサートを経口的に受けた群より少なく(2対3)、疼痛関節数も同様であった(3.5対6)。健康評価問診票(HAQ)スコア中央値、即ち、広範に様々なリウマチ性疾患の患者での包括的な成績の測定値は、24週では、メトトレキサート皮下投与群の方が経口投与群に比べ低かった(0.4対0.5)。疾患活動性スコア(DAS28)の中央値、即ち関節リウマチ患者の疾患の活動を測る指標も、同様に、24週後では、メトトレキサート皮下投与群の方が経口投与群より低かった(3.3対3.7)。
【0101】
[0115]16週では、52人の患者(全被験者の14%)だけがACR20非応答者と分類された。しかしながら、これらの患者がメトトレキサートの15mg経口用量から15mg皮下用量へ切り替えたところ、そのうち30%は、ACR20応答陽性を示し、また皮下投与メトトレキサートの投薬量を15mgから20mgに増やしたところ、そのうちの23%強がACR20応答陽性を示した。
【0102】
[0116]診断から研究参加までに1年以上の時間が空いていて、事前に予防維持用の抗リウマチ化合物又はステロイドを受けていた下位患者群(n=98)では、メトトレキサート経口投与群とメトトレキサート皮下投与群の間のACR20応答者の割合の差が、経口投与群(63%)、皮下投与群(89%)と、全研究母集団内よりなおいっそう大きかった。更に、この患者群では、ACR20応答を実現するのに掛かる時間は、メトトレキサートの皮下投与(4週間)の方が、メトトレキサートの経口投与(6週間)より大凡2週間短かった。
【0103】
[0117]著者らは、メトトレキサートが被投与者に皮下投与された場合について、メトトレキサートの同用量が経口投与された場合と比べて、優れた臨床的有効性が実証されたと結論付けた。加えて、皮下投与は、有害事象の有意高率を伴わなかった。
【0104】
[0118]
経口投与対筋肉内投与
[0119]Wegrzynらは、関節リウマチの患者143人の調査で、経口投与対筋肉内投与によるメトトレキサートの有効性及び認容性を比較した(Wegrzyn, J. et at., Annul Rheum. Diseas., 2004; 63: 1232-1234参照)。この研究の患者は、当初メトトレキサートを筋肉内的に与えられたが、その後、研究に入るまでの大凡3ヶ月間供給を欠いた後に経口投与に切り替えられた。その後、47人の患者をメトトレキサートの筋肉内投与に戻し3ヶ月間観測した。
【0105】
[0120]メトトレキサート経口投与に切り替えた後、患者の49%から71%で症状(朝方の痛み及び関節痛)の増悪が報告され、48%で嘔気の体験が報告された。メトトレキサートの筋肉内投与に戻された群では、患者の40%から70%で症状(朝方の痛み及び関節痛)の改善が報告された。嘔気が報告された患者は若干少なかった(40%)。肝臓トランスアミナーゼは、経口メトトレキサートに切り替えた後に患者のほぼ25%で増加し、筋肉内投与に戻した後は減少した。
【0106】
[0121]Hoffmeisterは、関節リウマチ患者78人でのメトトレキサート早期体験の15年間を報告した。この研究の患者は、週に1度10mgから15mgの筋肉内メトトレキサートが与えられた(Hoffmeister, R.T., Amer. J. Med., 1983; 75(6A):69-73参照)。82%には治療後に穏やかな改善又は際立った改善があったと判定された。期待最大効果を実現した患者らは、経口メトトレキサートへの切り替えが許可された。経口メトトレキサートに切り替えられた48人の患者のうち、10人は切り替え後に悪化し、その後、筋肉内投与に戻すと改善した。
【0107】
[0122]総合すると、以上の動態研究は、総じて、非経口メトトレキサートの方が、同用量を経口的に与えた場合に対して、吸収性、有効性、及び認容性に勝ることを示唆している。
【0108】
[0123]幾つかの実施形態では、本明細書に開示されている1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤は、本開示による動力駆動式注入器によって、被投与者の組織の中へ約5秒未満で、約2mmから約10mmの深さに注入することができ、幾つかの実施形態では約3mmから約5mmの深さに、幾つかの実施形態では約3.5mmの深さに、注入することができる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示されている危険有害性薬剤は、動力駆動式注入器によって、被投与者の組織の中へ約200p.s.i.から約500p.s.i.の圧力範囲で注入することができ、幾つかの実施形態では、約300p.s.i.の範囲で、幾つかの実施形態では、約400p.s.i.で、また幾つかの実施形態では約500p.s.i.で、注入することができる。幾つかの実施形態では、動力駆動式注入器は、針支援式であり、幾つかの実施形態では針なしであり、幾つかの実施形態では、動力駆動式注入器は、針支援式ジェット注入器であり、幾つかの実施形態では、動力駆動式注入器は、針なしジェット注入器である。
【0109】
[0124]幾つかの実施形態では、ジェット注入器は、限定するわけではないが従来型の手動駆動式皮下シリンジ注入を含めた他の非経口送達方法と比べて、例えばメトトレキサートの様な危険有害性薬剤の薬物動態が影響を被らないように、又は実質的に影響を被らないように構成されている。幾つかの実施形態では、ジェット注入器は、例えば、薬物動態に影響を与え得る因子を選択することによって、危険有害性薬剤が被投与者の血流中に吸収される速さを維持するように、そして危険有害性薬剤の薬物動態及び/又は生物学的利用能を維持するために当該危険有害性薬剤を従来型の手動駆動式皮下シリンジ注入の場合と同じ速度又は実質的に同じ速度で被投与者の血流中に吸収させるように、構成されている。
【0110】
[0125]幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤を被投与者に、当該危険有害性薬剤の既知及び/又は所望の薬物動態に近似させるやり方で送達するために、危険有害性薬剤の注入の深さを改変することができる。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤の既知及び/又は所望の薬物動態を維持するために注入の深さを増加させる。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤の既知及び/又は所望の薬物動態を維持するために注入の深さを減少させる。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤をジェット注入器から被投与者の中へ、危険有害性薬剤の既知及び/又は所望の薬物動態に近似させるやり方で送達するために、ジェット注入器が利用する圧力を改変することができる。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤の既知及び/又は所望の薬物動態を維持するために圧力を増加させる。幾つかの実施形態では、危険有害性薬剤の既知及び/又は所望の薬物動態を維持するために圧力を減少させる。危険有害性薬剤の既知及び/又は所望の薬物動態を維持する上で役立てられる注入特性は、少なくとも一部は、治療される疾患の性質、個々の被投与者、及び注入される危険有害性薬剤に依存することになり、当技術で既知の標準的な技法によって求めることができる。
【0111】
[0126]幾つかの実施形態では、メトトレキサートの或る用量をジェット注入器から被投与者へ送達するのに、メトトレキサートの薬物動態が例えば従来型の手動駆動式皮下シリンジを含めた他の非経口的送達方法により投与された場合と同じか実質的に同じになるように送達するために、注入の深さが改変される。幾つかの実施形態では、メトトレキサートの或る用量をジェット注入器から被投与者へ送達するのに、メトトレキサートの薬物動態が、限定するわけではないが従来型の手動駆動式皮下シリンジを含めた他の非経口的送達方法により投与された場合と同じか実質的に同じになるように送達するために、注入の圧力が改変される。幾つかの実施形態では、メトトレキサートの或る用量をジェット注入器から被投与者へ送達するのに、メトトレキサートの薬物動態が、限定するわけではないが従来型の手動駆動式皮下シリンジを含めた他の非経口的送達方法により投与された場合と同じか実質的に同じになるように送達するために、注入の深さと注入の圧力が改変される。
【0112】
治療的使用
[0127]本開示の危険有害性薬剤は、限定するわけではないが、癌、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、乾癬性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、ステロイド耐性多発性筋炎又は皮膚筋炎、ヴェゲナー肉芽腫症、結節性多発性動脈炎、及び脈管炎を含め、開示されている危険有害性薬剤が治療上有効であることが知られているか、有効であると考えられているか、又は今後有効であると判定されるような疾患又は障害に苦しむ患者であって、幾つかの実施形態ではヒトである患者、に投与することができる。一部の特定の実施形態では、本開示の危険有害性薬剤は、関節リウマチを治療するのに使用されてもよい。
【0113】
[0128]以上に掲げられている疾患を治療する場合の、本開示によって提供されている危険有害性薬剤の適合性は、当技術において説明されている方法によって判定することができる。
【0114】
投薬
[0129]本明細書に開示されている特定の疾患の治療に有効となる危険有害性薬剤の量は、少なくとも一部は、疾患の性質に依存し、当技術で既知の標準的な技法によって求めることができる。加えて、最適投薬範囲を特定する上で助けとなるように、生体外又は生体内評定が採用されてもよい。投薬計画及び投薬間隔も、当業者に知られている方法によって求めることができる。投与される危険有害性薬剤の量は、数ある因子の中でも特に、治療される被投与者、被投与者の体重、疾患の重篤度、投与経路、及び処方する医師の判断に依存する。
【0115】
[0130]全身投与の場合、危険有害性薬剤の治療有効用量は、最初は体外評定から推定してもよい。開始用量は、当技術で既知の技法を用いて、体内データから、例えば動物モデルから、推定することもできる。その様な情報を使用すれば、ヒトでの有用な用量をより正確に求めることができる。当業者は、ヒトへの投与を動物データに基づいて最適化することもできるであろう。
【0116】
[0131]事前充填済み単発投与量事前設定型注入器で典型的に利用できる用量の様な、危険有害性薬剤の用量は、特定の危険有害性薬剤の等価のモル量又は質量が等価の用量を提供するように選択することができる。用量は、複数の投薬形態を含むことができる。例えば、患者でのメトトレキサートの治療有効用量は、1ミリリットル注入当たり約7.5mgから約150mgの範囲とすることができる。一部の特定の実施形態では、治療有効用量は、1ミリリットル当たり約15mgから約75mgの範囲のメトトレキサート濃度を備えることができ、一部の特定の実施形態では、1ミリリットル当たり約15mgから約50mgの範囲、また一部の特定の実施形態では、1ミリリットル当たり約15mgから約25mgの範囲である。一部の特定の実施形態では、メトトレキサートの治療有効用量は、約5mg/ml、約10mg/ml、約15mg/ml、約20mg/ml、約25mg/ml、約30mg/ml、約35mg/ml、約36mg/ml、約37mg/ml、約38mg/ml、約39mg/ml、約40mg/ml、約41mg/ml、約42mg/ml、約43mg/ml、約44mg/ml、約45mg/ml、約46mg/ml、約47mg/ml、約48mg/ml、約49mg/ml、約50mg/ml、約51mg/ml、約52mg/ml、約53mg/ml、約54mg/ml、約55mg/ml、約56mg/ml、約57mg/ml、約58mg/ml、約59mg/ml、約60mg/ml、約61mg/ml、約62mg/ml、約63mg/ml、約64mg/ml、約65mg/ml、約70mg/ml、約75mg/ml、約80mg/ml、約85mg/ml、約90mg/ml、約95mg/ml、約100mg/ml、約105mg/ml、約110mg/ml、約115mg/ml、約120mg/ml、約125mg/ml、約130mg/ml、約135mg/ml、約140mg/ml、約145mg/ml、及び/又は約150mg/mlから選択される。危険有害性薬剤の用量と適切な投薬間隔は、患者血液中の危険有害性薬剤の持続的治療有効濃度が維持されるように、そして一部の特定の実施形態では最低悪影響濃度を超えることなく維持されるように選択することができる。
【0117】
[0132]幾つかの実施形態では、構造式(I)の化合物を含めて危険有害性薬剤は、選択された成人の重度活動性関節リウマチ、及び非ステロイド系抗炎症化合物(NSAID)の様な一次療法に十分な応答がないか又はその様な治療を認容できない小児の活動性多関節炎型若年性関節リウマチの管理で、注入器により投与することができる。幾つかの実施形態では、成人の関節リウマチでの危険有害性薬剤の投薬量は、単回用量としては7.5mgを与え、3回分割用量としては2.5mgを12時間間隔で与えることができる。成人の関節リウマチでは、投薬量は、最適応答が実現されるように漸進的に調節してゆけばよい。しかしながら、危険有害性薬剤は、本明細書に開示されている注入できる経路別に25mgまでの用量で使用することができる。
【0118】
[0133]一部の特定の実施形態では、本開示によって提供される危険有害性薬剤は、本開示の注入器により、1日当たり1回、1日当たり2回投与されてもよく、一部の特定の実施形態では、1日1回より長い間隔で投与されてもよい。投薬は、単独で提供されてもよいし、他の危険有害性薬剤と組み合わせて提供されてもよく、疾患の有効治療に必要とされる限り継続してもよい。投薬には、本明細書に開示されている危険有害性薬剤の1つ又はそれ以上を、満腹状態又は空腹状態の被投与者に投与することが含まれる。
【0119】
[0134]用量は、単回注入で投与されてもよいし、多回注入で投与されてもよい。多回注入が使用される場合は、多回注入のそれぞれの回に含まれる(単数又は複数の)危険有害性薬剤の量は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0120】
[0135]一部の特定の実施形態では、投与される用量は、中毒量未満である。本明細書に記載されている危険有害性薬剤の中毒性は、当技術ではよく知られており、細胞培養又は実験動物での標準的な薬学的手法、例えば、LD
50(母集団の50%を死に至らしめる量)又はLD
100(母集団の100%を死に至らしめる量)を求めることによって、判定することができる。中毒性と治療効果の間の用量比が治療指数である。一部の実施形態では、危険有害性薬剤は、高い治療指数を示す可能性がある。ヒトで使用するのに中毒性ではない投薬量範囲を策定する場合には、当技術並びにこれらの細胞培養評定及び動物研究から得られたデータを使用してもよい。危険有害性薬剤の用量は、例えば、血液中、血漿中、又は中枢神経系中の循環濃度において、治療上有効で且つ中毒性をほとんど或いは全く示さない循環濃度の範囲内とすることができる。
【0121】
[0136]治療中、用量又は投薬スケジュールは、1つ又はそれ以上の危険薬物の全身濃度において、疾患を治療するのに十分か又は定常状態の全身濃度を提供することができる。一部の特定の実施形態では、段階的に増量される用量が投与されてもよい。
【0122】
[0137]本開示の危険有害性薬剤は、本開示の動力駆動式注入器により投与されれば、自己投与による危険有害性薬剤の非臨床的投与が可能になることから、患者が医療専門家から注入を受けることが必須である場合に比べ、また毎週数回に上る投与、患者にとって不自由で憶えるのが難しい投薬計画を要する経口投薬形態に比べて、患者コンプライアンスを向上させるものと確信する。コンプライアンスは、本開示の動力駆動式注入器が(単数又は複数の)危険有害性薬剤を注入部位内へ送達する、約5秒未満という速さによって更に向上するであろう。加えて、本開示の動力駆動式注入器は、危険有害性薬剤を、制御された送達様式で更に正確に送達することができ、その結果、注入部位の外での危険有害性薬剤の曝露が低減され、幾つかの実施形態ではその様な曝露は完全に排除され得るものと確信する。幾つかの実施形態では、注入器は、使用者が手動駆動式又は従来型のシリンジを使用していれば行う必要のある危険有害性薬剤の引き上げが不要になるように、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤が事前充填済みである。これは、危険有害性薬剤を投与する場合の操作と正確な投薬を容易にし、特に薬を引き上げて自己注入するのに困難を来す疾患又は障害を有する患者にとってはそうである。従って、本開示の危険有害性薬剤の本開示の動力駆動式注入器による投与は、安全な送達手段を提供し、危険有害性薬剤の動力駆動式注入器の非使用者にとっての曝露の危険性を有意に低減し、動力駆動式注入器を利用する患者にとっての無益な中毒の危険性を低減することになるものと確信する。
【0123】
[0138]本明細書に開示されている危険有害性薬剤の投与は、危険有害性薬剤の経口投薬形態からその様な危険有害性薬剤の注入投薬形態へ転換すれば恩恵を享受できるはずであるのに、患者の医師らが現在の製品の選択肢は自己注入に実用的ではないと考えている、その様な患者への新しい選択肢を提示する。上記には、限定するわけではないが、構造式(I)の化合物が含まれる。本開示の動力駆動式注入器による危険有害性薬剤の投与は、更に、例えば関節リウマチの場合がそうである様に、何らかの程度の身体的機能障害を有する患者にとって簡便さと使い勝手のよさを高めるものと確信する。加えて、本開示の注入器による危険有害性薬剤の投与は、被投与者が注入を受けるために医療提供者を訪問する総回数を減らすことによって、被投与者の医療費全体を減少させるものと確信する。
【0124】
[0139]幾つかの実施形態では、危険薬物は、被投与者によって、本開示の針支援式動力駆動式注入器により約5秒未満で自己投与することができる。動力駆動式注入器の使用は、被投与者による自己投与をより手軽にし、危険有害性薬剤の被投与者による送達の一貫性を高め、危険有害性薬剤と関連のある中毒の危険性を低減し、ひいては、例えば関節リウマチの様な疾病を治療するのに危険有害性薬剤をより多く活用できるようになるものと確信する。更に、その様な注入器は、患者への完全用量送達の一貫性を高め、注入部位の外での危険有害性薬剤の損失の危険性を低減し、そして危険有害性薬剤の注入に伴う中毒の危険性を低減し、それにより患者コンプライアンス全体を底上げして、通常臨床的に実践されている生物製剤への切り替え前の危険有害性薬剤の治療的投薬の可能性を引き延ばすことによって、患者のための危険有害性薬剤の臨床的有用性を拡大することができるものと期待される。
【0125】
注入器
[00140]典型的な皮下シリンジは、注入を送達するのに使用者の指の1本又はそれ以上の押し出す力を利用している。幾つかの実施形態では、本開示の動力駆動式注入器は、被投与者が、その様な押し出し力を用いる必要なしに、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤を事前に設定された深さに1回の注入につき約5秒未満で繰り返し正確に投与するのを支援するように構成されている。
【0126】
[0141]動力駆動式注入器の既知の自動注入器実施形態は、医薬室の中に、当該室に収容されている医薬が指推進式シリンジによる圧力と速さに似た低速で射出されるように中度から低度の圧力を発生させる、エネルギー源を使用している。対照的に、本開示の動力駆動式注入器の自動注入器実施形態は、医薬室の中に、当該室に収容されている医薬が高速で射出され、被投与者の中へ約5秒未満で完全に注入されるように中度から高度の圧力を発生させる、エネルギー源を使用している。動力駆動式注入器の他の実施形態は、ジェット注入器であり、それらは針支援式のジェット注入器とすることもできるし、針なしのジェット注入器とすることもできる。ジェット注入器の実施形態は、医薬室の中に、医薬に注入器を流体ジェットと出てゆかせるのに十分な圧力、力、及び速さで医薬を噴出させるための高圧を発生させるべく、選択されたエネルギー源を有するように構成することができる。以下に更に詳細に説明されている様に、自動注入器又は皮下シリンジにより被投与者の中へ注入される医薬は針先端付近にボーラス状に送達されるのに対し、ジェット注入器から送達される医薬は、典型的には針先端から遠く離れた組織の中へ急速噴射され、典型的に医薬は針先端の近くにボーラス状に沈着しない。針なしジェット注入器は、流体ジェットが皮膚の外側の層を破って通過し、医薬をその下層に沈着させられるだけの十分な圧力と注入速度を使用している。針支援式ジェット注入器は、皮膚の外側部分を破って通過するための針を採用しているので、針なしジェット注入器より低い圧力を使用することができるが、但し医薬に針先端を流体ジェットとして出てゆかせられるだけの十分な高さの圧力と速度を有しているものとする。
【0127】
[0142]本明細書に開示されている注入器の幾つかの実施形態は、注入器の室の内部又は注入器内に収容されているカートリッジの内部に収容されている(単数又は複数の)薬剤の全体積を1回の発射で送達するように構成されている単発注入器である。他の実施形態では、注入器は、注入器又は注入器内のカートリッジの内容物の一部のみを注入するように構成されており、1回の発射で送達されるべき注入体積を選択できるようにするための投薬量設定機構又は調節可能な投薬量を提供するための他の機構を使用していてもよい。上記の実施形態のそれぞれでは、注入器は、事前充填済みとすることもできるし、医薬の投薬量を有するカートリッジを受け入れるように構成することもできる。代わりの実施形態は、当技術で知られている様に充填可能となるように構成されている。
【0128】
[0143]本開示により提供されている注入器は、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤を自己注入するために患者によって利用されてもよい。本開示の様々な態様は、医療提供者の支援なしの、被投与者による1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤の自己注入に関する。一部の特定の実施形態では、注入器は、自動注入器又は針支援式ジェット注入器の実施形態の様に、危険有害性薬剤を被投与者の目標組織の中へ注入するのに針を使用するが、他の実施形態は、針なし注入器であり、従って危険有害性薬剤を被投与者の目標組織の中へ注入するのに針は不要である。一部の特定の実施形態では、注入器は、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤を完全に且つ速く送達するのに十分な圧力を利用することができる。一部の特定の実施形態では、注入器は、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤を完全に且つ速く流体ジェットとして送達するのに十分に高い圧力を利用することができる。
【0129】
[0144]幾つかの実施形態では、本開示により提供されている動力駆動式注入器は、注入器を注入を送達する状態に置くために何らの事前準備又は前処理の段階も不要であり、それにより、危険有害性薬剤が空気に曝されたり、危険有害性薬剤が送達発射より前に注入器の針から過早に放出されたりすることが低減されるか又は排除される。その結果、被投与者又は注入器の非使用者が注入器に収容されている危険有害性薬剤に触れる危険性は、低減されるか又は排除される。
【0130】
[0145]
図1−
図5を参照すると、本開示による注入器の或る実施形態が提示されている。これらの図に示されている実施形態は、針注入器であり、使用されているばね並びに針及び注入出口を含めた送達導管次第で、自動注入器として構成することもできるし、針支援式ジェット注入器として構成することもできる。描かれている注入器12は、使用者が注入器12を扱えるように構成されていて、
図2に示されている構成要素の殆どを実質的に収納している、外ハウジング部材14を有している。幾つかの実施形態では、外ハウジング14は、スナップ嵌め又は押し嵌めによるか或いは接着剤や溶接などを使用して互いに貼り合わされるように構成することができるとされる2つの嵌め合い部分14a、14bから形成されている。ハウジング14は、その中に、1つ又はそれ以上の液体医薬、例えば1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤などを貯蔵し分注するように構成されている流体室22を含んでいる。
図2に示されている実施形態では、流体室22は、ハウジング14内に嵌る事前充填済みシリンジ18の中に形成されているが、(単数又は複数の)医薬が事前に充填されているものや再充填可能なものなどがある既知のカートリッジ型式を含め、流体室の他の型式を使用することもできる。加えて、流体室22は、ハウジング14内に一体に形成することもできる。
【0131】
[0146]図示の実施形態では、安全部材80が、外ハウジング14の近位端に設置されており、複数のタブによって、それらタブを外ハウジング14に形成されている整合用開口部に通して安全部材80と外ハウジング14の間に押し嵌めを形成することによって、ハウジングに取り外し可能に取り付けられている。安全部材80は、例えば注入器12の出荷中又は取り扱い中の注入装置の意図せぬ射出を防止するか又はその可能性を低減するように構成されている。安全部材80は、注入器12を拘束なしに使用できるようにするのに注入器12の使用者が取り外すことができる。注入器の代わりの実施形態は、安全部材80なしの構造とすることができる。
【0132】
[0147]或る別の実施形態では、スリーブ16が、ハウジング14内に収納及び取り付けされており、シリンジ支持部材の役目を果たしている。幾つかの実施形態では、スリーブ16は、カープル又は当技術で既知の型式の容器であって例えばBD Hypak(商標)事前充填済みシリンジ(Becton, Dickinson and Company)などである事前充填済みシリンジ18を保持及び配置するように構成されている。描かれている実施形態で使用するのに適した事前充填済みシリンジの1つの例に、Becton Dickinson Hypak(商標)の様な、様々な寸法及び容積のものが入手可能であって医薬が事前充填されて販売されているものがある。幾つかの実施形態では、シリンジ本体のガラスは、針に接着させることができる。事前充填済みシリンジを使用すれば注入器を組み立てる際の医薬の取り扱いがやり易くなり、医薬がどの様に事前充填済みシリンジに保存され挙動するかについては非常に多数の知見がある。幾つかの実施形態では、スリーブ16は、ハウジング12に、スナップ、接着剤、溶接、又は別の既知の取り付け方法などにより、実質的に固定されている。事前充填済みシリンジ18は、その内部に流体室22を画定している容器部分20であって、例えば1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤の様な注入できる医薬が事前充填されている容器部分20を有することができる。他の実施形態では、医薬容器及び室は、例えば、ハウジングや針ハブ32又は注入器の他の注入出口部分と一体化されているか又はそれらの中に保持されている室の様な他の構造によって提供されている。事前充填済みシリンジ18の遠位端には、注入支援針24がある。針24は、当技術では知られている様に、患者の組織、幾つかの実施形態では皮膚である組織、を穿刺するように構成されている。当技術で知られている様に、針24を貫いて針孔が延びている。孔は、流体室22の中の医薬と流体連通していて、医薬を注入するために針先端26が開口している。
【0133】
[0148]流体室22の、針24とは反対側の近位端には、流体室22の医薬をシールしているプランジャ28がある。幾つかの実施形態は、シリンジ壁は、流体室22を画定している管状部分を備えており、管状部分は幾つかの実施形態では遠位端が閉鎖し近位端が開口している。プランジャ28は、管状部分に滑動可能に受け入れられている。事前充填済みシリンジ18は、プランジャ28を遠位方向に変位させると、流体室22の体積が減少し、医薬が室22から針24の孔を通って強制的に外に出されるように構成されている。流体室22の遠位端には、針が取り付けられている針ハブ部分32がある。シリンジ壁の近位端からは半径方向にシリンジフランジ35が延びている。カートリッジ、カープル、又は医薬を収容するための室を画定している他の容器、を使用している注入器実施形態では、針は、例えばカートリッジ、カープル、又は他の容器に直接接続するとか、又は注入器の別の部分である例えばそのハウジングなどに別体の針ハブによって接続するなど、異なったやり方で室と流体接続することができる。
【0134】
[0149]
図2に描かれている実施形態では、事前充填済みシリンジ18は、フランジ35とシリンジ壁とハブ部分32が一体構造であるシリンジ本体36を有している。幾つかの実施形態ではシリンジ本体36を構成している材料はガラスであるが、他の実施形態では、例えばプラスチックや金属の様な他の材料を使用することもできる。
【0135】
[0150]事前充填済みシリンジ18の遠位端を半径方向に配置するのに、幾つかの実施形態では、スリーブ16は、シリンジ壁の外側に当接する構成とすることができる狭口径部分51を有している。これは特に、針を患者の皮膚の中へ挿入するときに有益である。狭口径部分51は、エラストマーの様な弾性材料で作ることもできるし、一連の半径方向に整列した弾性的に撓むことのできる指の様な様式で、スリーブ16のその残り部分と一体に作ることもできる。加えて、シリンジ18の近位部分は、衝撃吸収装置33によって所定の場所に保持することができ、衝撃吸収装置33は、幾つかの実施形態では、シリンジ本体36の近位側を半径方向に位置付け、またジェット注入器実施形態での様に、流体室22又は容器20の中に圧力上昇を発生させるラム60の急射出の衝突による衝撃を吸収する。
【0136】
[0151]ハウジング14内には、トリガ機構も収納することができる。幾つかの実施形態では、トリガ機構は、外ハウジング14に、例えばスナップ、接着剤、溶接、又は他の既知の取り付け方法などにより取り付けることができる内ハウジング54を含んでいる。トリガ突起56は、内ハウジング54の近位端から内向きに張り出し、外に向けて弾性的に付勢されている。トリガ突起56は、ラム60の陥凹58に、装置の射出より前にラム60が遠位方向に動くのを防止するべく当該陥凹58と制止関係に受け入れられている。ラム60は、エネルギー源によって注入器10の遠位端に向けて動かされ、エネルギー源は、幾つかの実施形態では圧縮ばね52であるが、他の実施形態では、エラストマーばね又は圧縮ガスばねやガス生成器の様な他の適したエネルギー源を使用することができる。本開示の注入器と共に使用するのに適した圧縮ばね52の一例はコイルばねである。代わりの実施形態では、当技術で既知の他の適したトリガ機構を使用することもできる。
【0137】
[0152]射出が起動されるまでラム60を近位位置に保持するべくトリガ突起56を陥凹58と制止関係に維持するため、内ハウジング54の外部にラッチハウジング64を設けることができる。ラッチ64は、外ハウジング14の内側を内ハウジング54に対して、幾つかの実施形態では軸方向に、滑ることができ、また幾つかの実施形態では、ラッチ64は内ハウジング54を取り囲んでいる。幾つかの実施形態では、ラッチ64は、外ハウジング14に対して自由に動くことができ、安全部材80が取り外された後、トリガ突起56により掛けられる圧力によってようやく所定場所に固定される。幾つかの態様では、ラッチハウジング54を外ハウジング14の近位端から離れるように付勢するものは、ばねなどを含め、何も存在していない。代わりの実施形態は、装置が起動されるとシャトル前進して皮膚に針を刺す医薬容器を使用することもでき、また幾つかの実施形態は、当技術で知られている様に、ハウジングの近位端又は側面の様な注入器の別の部分にあるボタンによって起動されるトリガ機構を使用している。
【0138】
[0153]ハウジング14は、外ハウジング14に対して動かせる針ガード66を有することができる。
図2に示されている針ガード66の実施形態では、針ガード66は、針24がガード66内に配置されている保護位置にある。針ガード66が一杯に伸ばされ保護位置に入ると、リッジ65(
図8)が外ハウジング14の内面に当接して、針ガード66をハウジング内14に維持する。針ガード66は、幾つかの実施形態では外ハウジング14の中へ、近位方向に注入位置まで引き込むことができ、注入位置で、針先端26と針24の遠位部分は
図6B及び
図6Cに示されている様に患者への挿入に向けて露出している。幾つかの実施形態では、注入位置では、ガード66が近位方向へ動くことが防止されている。
【0139】
[0154]針ガード66は、ガード66が近位方向に変位するとき、ガードがラッチ64を近位方向に滑らせ、トリガ突起56を陥凹58から解放するという具合に、ラッチ64と連携することができる。幾つかの実施形態では、ラッチ64は、注入器12の射出より前はトリガ突起58を付勢してラム60との制止関係に配置された状態に維持するべく内ハウジング54に連携式に当接するラッチ掛け部分68を有している。幾つかの実施形態では、ガード66の注入位置への引き込みよりラッチ64が近位方向に滑らされると、ラッチ掛け部分68がそれが接触している内ハウジング54の部分を滑り越し、トリガ突起56をラム60の陥凹58から離れるように屈曲させ、トリガ突起56が陥凹58から、ひいては制止関係から、半径方向外向きに動けるようにする。これが起こると、ばね52はラム60を付勢してプランジャ28に押し当て、注入器12を射出させる。
【0140】
[0155]幾つかの実施形態では、針ガード66を覆って、出荷中又は注入より前の取り扱い中の偶発的な変位を防止するように、注入器12の遠位端にキャップ110を取り付けることができる。キャップ110は、外ハウジング14の遠位端に、押し嵌めやねじ嵌めなどによって取り付けることができる。一部の特定の実施形態では、キャップ110は、内側へ張り出して(
図9)遠位方向を向いているリッジ114を形成している一対の突起112を含むことができる。その様な実施形態では、針ガード66は、突起112の遠位リッジ114に当接してキャップ110を注入器12に固定するように構成されている一対の半径方向に張り出しているフランジ67(
図8)と一体に形成することができる。幾つかの実施形態では、キャップ110の上稜線116(
図9)は、外ハウジング14の遠位端に、突起112の遠位リッジ114がフランジ67に押し当てて保持されるような具合に当接することができる。キャップ110のこの配列は、キャップ110がガード66とハウジングの間に並置されることで、針ガード66が近位方向にハウジングの中へ押し込まれることを防止しており、針ガード66を保護位置に固定して、注入機構の偶発的な射出防止に役立っている。
【0141】
[0156]幾つかの実施形態では、キャップ110は、ハウジング14に対して捻れば注入器12から取り外すことができ、キャップ110を捻れば、突起112がフランジ67との整列を脱し、キャップ110を遠位方向に針ガード66から離せるようになる。キャップ110を誤って捻り、そのせいでキャップ110が注入器12から偶発的に取れるのを防止するため、幾つかの実施形態では、キャップ110を最後まで回し切って外せるようにする前に、始めに強い力が必要になるように、例えばキャップ110をその閉位置からパチンと離すことが必要になるように、キャップ110はハウジング14及び/又は針ガード66に係合されている。例えば、キャップ110の上稜線116は、
図9に示されている様に傾斜を付けることができる。傾斜は、図示の様に曲線を含んでいてもよいが、稜線116は概ね一方の縁118が他方の縁120より高くなっていればよい。幾つかの実施形態では、外ハウジング14の遠位端は、キャップ110の上稜線118の輪郭に整合する輪郭を有するものとすることができる。この配置構成は、キャップ110を捻れるようにするためにキャップ110を撓ませることが必要で、キャップ110を針ガード66に対して捩れさせるのに必要な力が大きくなるようにしている。或る代わりの実施形態では、キャップ110は、フランジ67とのねじ式又はカム式の連携を有することもできるし、キャップ110を回転させて取り外せるようにする別の配置構成を一体に有することもできる。
【0142】
[0157]キャップ110は、その組み立て中に注入器12に取り付けることができる。これは、キャップ110を正しく整列させ、キャップ110を針ガード66に対しキャップに近位方向の向きの力を加えながら突起112がフランジ67の後ろへ来るように捻ってゆくことによって成し遂げられる。代わりに、フランジ67は、針ガード66に形成されている対応するタブ69に載せることによって内向きに撓ませられる構造にすることもできる。その様な実施形態では、ばね72があるとフランジ67の内向きの撓みに干渉する恐れがあるため、キャップ110はばね72の組み付け前に針ガード66に組み付けておけばよい。代わりに、キャップ110は、針ガード66に押圧して突起112にフランジ67を乗り越えさせられるように弾性的に変形可能なものとすることもできる。
【0143】
[0158]幾つかの実施形態では、針ガード66は、圧縮コイルばね72によって弾性的に、保護位置に向かって遠位方向に付勢されるようにすることもできる。更に、針ガード66は針24を通過させる軸方向の開口部74を有することができ、開口部は所望の注入器の型式に準じた寸法であってよい。幾つかの実施形態では、注入器12の構造は、使用者が注入器12の遠位端を患者の皮膚に当てて押すと、注入器12を皮膚の中に押し込むのと実質的に同じ速さで針24を挿入位置の皮膚の中へ押し込むことができるようにしている。針24が挿入点に所望の穿刺深さ一杯まで挿入されたら、トリガ機構が始動して注入器12に医薬を注入部位の中へ注入させる。
【0144】
[0159]針支援式ジェット注入器を使用する皮下注入の場合の様な幾つかの実施形態では、針ガード66は、針24を皮膚表面の下約5mmまでの穿刺深さに挿入できるように構成することができる。幾つかの実施形態では、穿刺深さは、約4mm未満であり、また幾つかの実施形態では、約3mm未満である。幾つかの実施形態では、挿入深さは、少なくとも約0.5mmであり、また幾つかの実施形態では、少なくとも約1mmである。別の実施形態では、針先端26が針ガード66を越えて伸びる距離又は針ガード66の皮膚に触れている遠位面を越えて伸びる距離は、約5mmまでであり、幾つかの実施形態では約4mmまで、また幾つかの実施形態では約3mmまでである。幾つかの実施形態では、伸張距離は少なくとも約0.5mmであり、幾つかの実施形態では少なくとも約1mm、また幾つかの実施形態では少なくとも約2mmである。幾つかの実施形態では、針先端26は、針ガード66を越えて少なくとも約2.5mmの距離だけ針ガード66の皮膚の注入位置に接している部分の向こう側に伸びている。
【0145】
[0160]針支援式ジェット注入器を使用する筋肉内注入の様な別の実施形態では、注入器12は、針24を患者の中へ皮膚の穿刺深さまで、或いは代わりに針ガード66の遠位端より向こう側約15mmまでの距離に、挿入できるように構成することができる。幾つかの実施形態では、この距離は、約10mmから約14mmの間とすることができる。幾つかの実施形態では、針先端26の穿刺深さ又は針ガード66より向こう側の距離は、約12mmから約13.5mmの間とすることができ、また幾つかの実施形態では約12.7mmとすることができる。全穿刺長さを約0.5mmから約20mmの間として、異なった皮膚下深さへのジェット注入に合わせて他の露出針24長さを選択することができる。これらの実施形態では、針ガード66は、幾つかの実施形態では針全体を覆っている位置とされる保護位置から、針24の先端26の所望長さが露出している注入位置へ引っ込むように構成することができる。
【0146】
[0161]安全部材80は、外ハウジング14の遠位端に取り外し可能に取り付けることができて、本体84と本体から延びる一対の弾性的に可撓性の脚部82を含むものとすることができる(
図4A及び
図4B)。脚部82は、外ハウジング14の近位面に形成されている対応する孔又はスロット15の中へ伸びるように構成されており、安全部材80をハウジング14上に維持するようにスロット15内に押圧嵌めされる形状とすることができる。脚部82は、外に向けて付勢されており、その外面に、外ハウジング14の内側にスロット15の位置で係合して安全部材80のハウジング14への維持を強化するように配置されているタブ86を更に含むことができる。幾つかの実施形態では、脚部82は、使用者が注入をしたくなったときに安全部材80を外ハウジング14から取り外せる形状である。但し、幾つかの実施形態では、脚部82は、外ハウジング14への取り付けから偶発的又は意図せずして抜け落ちてしまうのを防止している。
【0147】
[0162]脚部82は、外ハウジング14に正しく取り付けられると、ラッチ掛け部分64の最も近位側の面に当接して(
図3)、注入機構を始動させることになるラッチ掛け部分64の近位方向への押しのけや他の動きを妨害又は防止する。幾つかの実施形態では、脚部82は、ハウジング14及び注入器12のトリガ機構との関係においては、ラッチ掛け部分64が脚部82をスロット15から出てゆかせるのに必要な力が、出荷中の振動に起因するか又は出荷中や取り扱い中の注入器12の落下による急な衝撃によってラッチ掛け部分64がその位置から押しのけられるのを防止するのに十分であるように、構成されている。注入器12の誤射出を防止するのに、代わりの安全部材を使用することもできる。
【0148】
[0163]注入器12が針支援式ジェット注入器として構成されている実施形態では、ばね72と事前充填済みシリンジ18は、危険有害性薬剤の様な医薬をジェット注入するように構成することができる。よって、ばね72は、プランジャ28に、流体室22内の圧力を、医薬を針24から流体ジェットとして噴出させるのに十分な高さのレベルまで上昇させるのに足り得る力を加える。幾つかの実施形態では、ジェット注入は、医薬を針先端26から遠く離れた場所まで推進するのに十分な速度と力を用いての注入器12の針先端26からの医薬の注入である。
【0149】
[0164]針支援式か針なしかを問わず、幾つかのジェット注入器の実施形態は、医薬室22の中に、そこから医薬を流体ジェットとして注入器12を出てゆかせるのに十分な力と速度で噴出させるための高い圧力を発生させるように、選択されているエネルギー源を有している。ジェット注入器は、基本的に医薬を被投与者の中へ経皮的に「噴射」し、それにより被投与者の目標組織のより広い表面積を医薬に曝すことにより、医薬を被投与者の皮膚下のより広い表面積に亘って速く送達するものと考えられている。
【0150】
[0165]自動注入器によって送達される場合、医薬は、典型的に自動注入器から出ると近くに沈着する、というのも、医薬は注入器出口から遠くへ発射されはせず、よって自動注入器の針先端付近にボーラス状に送達されるからである。これは、自動注入器では、注入を組織の様な抵抗性のある媒体の中へ送達するには、空中への送達とは反対に、注入時間が余計に要るからである。対照的に、本明細書に開示されている動力駆動式注入器の実施形態、具体的には開示されているジェット注入器の実施形態は、抵抗性のある媒体への注入対空中への注入で注入時間に差がないことを示している。ジェット注入器によって送達される医薬は、基本的に、針先端から遠く離れた被投与者の組織の中へ速く噴射されるため、医薬はジェット注入器を単一の液滴又はボーラスとして出てゆかず、従って被投与者へ針先端近くにボーラスとして送達されない。よって、本明細書に開示されているジェット注入器を使用することにより、医薬を被投与者の組織の中へより効率良く分散させることができる。加えて、ジェット注入器は医薬を高い圧力と速度で送達するため、送達された医薬は針又は注入軌道の周りで注入部位から後戻りして漏れ出る傾向が極めて低い。従って、医薬が送達された深さから注入部位に向かって戻る、及び/又は被投与者の皮膚表面に戻る逆漏れは、ジェット注入器の使用により有意に低減することができる。従って、1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤の様な、本開示による1つ又はそれ以上の医薬を送達するのに、ジェット注入器が使用されたら、信頼性高く全用量が所望の深さに送達されることに加え、注入部位の外の医薬への曝露の危険性が低減され、それにより、非使用者及び被投与者本人にとっての医薬の曝露の危険性が低減されることになる。逆漏れの防止又は低減は、確実に医薬を注入部位の所望の深さに留まらせることによって、コンプライアンスを改善する上で有益である。これにより、送達の有効性が改善されるのみならず、医薬が注入部位から他の組織、組織層、及び/又は注入部位の外に移動することが回避される。逆漏れの防止又は低減は、収容されている危険有害性薬剤の様な医薬を単一区域に封じ込めておく上でも有益であり、それによって、被投与者及び/又は被投与者の近傍の他の個体にとっての、皮膚表面への逆漏れによる不慮の曝露が未然に防止される。その様な曝露には、例えば、被投与者の皮膚上の医薬との直接接触、又は霧化した医薬が空気や他の媒体を介して被投与者又は近辺の個体に到達することによる接触が含まれる。加えて、多くの場合、手動駆動式皮下シリンジ又は自動注入の低速注入を使用している患者では、手動駆動式注入器を注入部位から過早に、発射が完了する前に離してしまい、患者の組織の外の医薬への曝露の原因になってしまう危険性、そして一部の場合には害を及ぼす医薬の煙霧化を招く危険性がある。これは、手動駆動式皮下シリンジ又は自動注入器による注入に要する、5秒、10秒、又は15秒程度の、或いはそれより延びる場合もある、長い注入時間が原因である場合が多い。
【0151】
[0166]幾つかの実施形態では、注入器12は、例えば危険有害性薬剤の様な、患者又は他の個体に害を及ぼす医薬を、ジェット注入により、医薬の逆漏れや空気又は患者の皮膚の外表面に対しての医薬の曝露の危険性及び曝露下の事故を防止するか又は有意に低減するやり方で送達するように構成されており、その様に送達するように注入が行われる。
【0152】
[0167]表1は、注入後に被投与者の皮膚表面に到達した医薬の逆漏れを比較する臨床試験の結果を示しており、針支援式ジェット注入器を手推進式皮下シリンジと比較したデータが提示されている。総注入数は、臨床試験のそれぞれの群につき126であり、全てが訓練された医療専門家によって投与された。
【0154】
表1:注入後の被投与者皮膚表面への医薬の逆漏れ。%=投与された全126注入中の割合。
【0155】
[0168]ジェット注入器は医薬を速く送達し、幾つかの実施形態では約2秒未満で送達するため、患者が注入器を自分の組織に刺して保持しなくてはならない時間の量は、典型的なシリンジ又は自動注入器で送達される注入に比べ、劇的に減少する。従って、本開示によるジェット注入器の利用は、患者のコンプライアンス及び指示順守の向上をもたらし、ひいては注入用量の正確投与の向上をもたらすことになるものと確信する。加えて、ジェト注入器が医薬を送達する速さは、その速さのおかげで医薬を注入している被投与者自身が体験する疼痛量が最小限に抑えられ、多くの場合、疼痛は存在しなくなることで、定期注入の患者コンプライアンスを更に増進させる。
【0156】
[0169]
図10に示されているグラフを参照して、符号132は、注入器12の実施形態が射出された時点を表し、符号134は注入の完了時点を表している。幾つかの実施形態では、プランジャ28が医薬容器20の遠位壁に当たると、注入は完了である。符号136は、注入中の初期圧力とピーク圧力を表し、符号130は、注入中の最終圧力を表している。幾つかの実施形態では、ばね72は線形ばね定数を有しており、注入支援針24は、注入を始める前に皮膚を穿刺するのに使用されている。注入の圧力は、従って、注入の開始132から注入が完了する134まで実質的に直線状に低下する。注入終了134時点の最終圧力130は十分に高いため、ラム60の射出行程の終了時点においてさえ、医薬はなおジェット注入されており、針先端26の周りにボーラス状に沈着する医薬の量は極微量か又は皆無である。
【0157】
[0170]針支援式ジェット注入器の幾つかの実施形態では、注入中のピーク圧力136は、約1,000p.s.i.未満であり、幾つかの実施形態では950p.s.i.未満、幾つかの実施形態では900p.s.i.未満、幾つかの実施形態では850p.s.i.未満、幾つかの実施形態では800p.s.i.未満、幾つかの実施形態では750p.s.i.未満、幾つかの実施形態では700p.s.i.未満、幾つかの実施形態では650p.s.i.未満、幾つかの実施形態では600p.s.i.未満、幾つかの実施形態では550p.s.i.未満、幾つかの実施形態では500p.s.i.未満、幾つかの実施形態では450p.s.i.未満、幾つかの実施形態では400p.s.i.未満、また幾つかの実施形態では350p.s.i.未満である。幾つかの実施形態では、注入の終了時1080に、流体室22の中の医薬に加えられている圧力130は、少なくとも約80p.s.i.になることもあれば、幾つかの実施形態では少なくとも約90p.s.i.、幾つかの実施形態では少なくとも約100p.s.i.、幾つかの実施形態では少なくとも約150p.s.i.、幾つかの実施形態では少なくとも約200p.s.i.、幾つかの実施形態では少なくとも約250p.s.i.、幾つかの実施形態では少なくとも約300p.s.i.、幾つかの実施形態では少なくとも約350p.s.i.、幾つかの実施形態では少なくとも約400p.s.i.、幾つかの実施形態では少なくとも約450p.s.i.、また幾つかの実施形態では少なくとも約500p.s.i.になることもある。幾つかの実施形態では、初期圧力136は約330p.s.i.とすることができ、最終圧力130は約180p.s.i.である。幾つかの実施形態では、初期圧力136は約300p.s.i.であり、注入の終了時134の大凡110p.s.i.まで低下してゆく。本明細書に論じられている他の実施形態については他の注入速度が使用されている。例えば、針なしジェット注入器は、約4,000p.s.i.以上の範囲の注入圧力を掛けることができる。ジェット注入器の他の実施形態は、少なくとも約80p.s.i.又は少なくとも約60p.s.i.の様な低い注入圧力を利用している。対照的に、既知の自動注入器は、典型的に、60p.s.i.より低い圧力を使用する。
【0158】
[0171]
自動注入器及び針支援式ジェット注入器の両方の実施形態の幾つかで使用されている針は、26ゲージから28ゲージの間であり、幾つかの実施形態は約27ゲージである。所望の注入を生み出すべく、例えばミニ針を含めた他の構成要素が協働的に構成されている場合、他の針ゲージを使用することもできる。幾つかの実施形態では、注入器12の構成要素は、1つ又はそれ以上の医薬を経皮注入部位にジェット注入するように構成することができる。
【0159】
[0172]流体室22に収容されていて、そこから注入される医薬の量は、約0.02mLから約4mLの間とすることができ、幾つかの実施形態では約3mL未満、幾つかの実施形態では約1mL未満である。利用される特定の(単数又は複数の)医薬及び所要投薬量によっては、それより大きい体積が選択される場合もあろう。幾つかの実施形態では、医薬の所望量を収容する事前充填済みシリンジ18がジェット注入器12の残りの部分の中に組み付けられている。幾つかの実施形態では、事前充填済みシリンジ18は、1つ又はそれ以上の医薬を約0.02mLから約4.00mL収容している。幾つかの実施形態では、事前充填済みシリンジ18は、1つ又はそれ以上の医薬を約1mL収容している。
【0160】
[0173]針支援式ジェット注入器の実施形態では、注入速度は、約0.75mL/秒未満であり、幾つかの実施形態では約0.6mL/秒未満、幾つかの実施形態では少なくとも約0.2mL/秒、幾つかの実施形態では少なくとも約0.3mL/秒、また幾つかの実施形態では少なくとも約0.4mL/秒未満である。幾つかの実施形態では、注入速度は、約0.75ml/秒未満、約0.7ml/秒未満、約0.65ml/秒未満、約0.6ml/秒未満、約0.55ml/秒未満、約0.5ml/秒未満、約0.45ml/秒未満、約0.4ml/秒未満、約0.35ml/秒未満、約0.3ml/秒未満、及び約0.25ml/秒未満から選択される。幾つかの実施形態では、注入速度は、少なくとも約0.2ml/秒、少なくとも約0.25ml/秒、少なくとも約0.3ml/秒、少なくとも約0.35ml/秒、少なくとも約0.4ml/秒、少なくとも約0.45ml/秒、少なくとも約0.5ml/秒、少なくとも約0.55ml/秒、少なくとも約0.6ml/秒、少なくとも約0.65ml/秒、及び少なくとも約0.7ml/秒から選択される。幾つかの実施形態では、医薬の全量注入は、約5秒未満で完了し、幾つかの実施形態では約4.5秒未満、幾つかの実施形態では約4秒未満、幾つかの実施形態では約3.5秒未満、幾つかの実施形態では約3秒未満、幾つかの実施形態では約2.5秒未満、幾つかの実施形態では約2秒未満、また幾つかの実施形態では約1.5秒未満で完了する。幾つかの実施形態では、注入には少なくとも約1秒掛かり、幾つかの実施形態では少なくとも約1.5秒、幾つかの実施形態では少なくとも約1.75秒、幾つかの実施形態では少なくとも約2秒、幾つかの実施形態では少なくとも約2.5秒、幾つかの実施形態では少なくとも約3秒、幾つかの実施形態では少なくとも約3.5秒、幾つかの実施形態では少なくとも約4秒、また幾つかの実施形態では少なくとも約4.5秒掛かる。幾つかの実施形態では、医薬の注入は、少なくとも約0.5mL/秒で起こり、1mLの注入を約1秒で完了する。幾つかの実施形態では、医薬0.5mlの注入は約1秒未満で起こる。幾つかの実施形態では、医薬1.0mlの注入は約2秒未満で起こる。但し、本明細書に開示されている注入器12の代わりの実施形態については他の注入速度が実施可能である。例えば、幾つかの実施形態では、注入器12は、毎秒約1.5mLとされ得る針なしジェット注入器での典型的な流量を送達するように構成することができ、幾つかの実施形態では、注入器12は、0.3秒で約0.5mLとされ得る自動注入器の典型的な流量を送達するように構成することができる。
【0161】
[0174]注入速度は、多数の因子、例えば医薬を注入するのに使用される針のゲージ、医薬そのものの粘度、シリンジ筒の中でのプランジャ28の滑走力、及び注入される医薬の温度などによって、温度なら粘度に直接的に作用し得るといった具合に、影響を受ける。様々な実施形態では、組織の抵抗性は、本開示の注入器の実施形態が実現できる注入速度には影響しない。様々な態様では、これらのパラメータは、或る注入体積を所望の様式で送達するべく選択され、最適化される。その様な選択及び最適化は、当業者であれば過度の実験なしに容易に成し得るであろう。
【0162】
[0175]幾つかの実施形態では、他のやり方であれば長い注入時間を要することになる粘性医薬であっても、針のゲージを変えることにより上述の速度で被投与者の中へ注入することができる。例えば、幾つかの実施形態では、粘性物質を注入するのに本開示の針支援式注入器と共に26ゲージの針を利用することができ、幾つかの実施形態では、粘性物質を注入するのに本開示の針支援式注入器と共に27ゲージの針を利用することができ、また幾つかの実施形態では、粘性物質を注入するのに本開示の針支援式注入器と共に28ゲージの針を利用することができる。上記実施形態のそれぞれでは、注入の速度は以上に開示されている速度と同じである。従って、注入される医薬の粘性に従って針のゲージを変えることにより、注入の速度を維持することができる。幾つかの実施形態では、本開示の注入器の1つ又はそれ以上の実施形態と共に72ゲージの針を利用し、水溶液1.0mlを空中に、約1.0秒から約2.0秒の間の継続時間で送達することができ、幾つかの実施形態では約1.5秒から約2.0秒の間の継続時間で、また幾つかの実施形態では約1.7秒で送達することができる。幾つかの実施形態では、本開示の注入器の1つ又はそれ以上の実施形態と共に72ゲージの針を利用し、水溶液1.0mlを組織中に、約1.0秒から約2.0秒の間の継続時間で送達することができ、幾つかの実施形態では約1.3秒から約2.0秒の間の継続時間で、幾つかの実施形態では約1.5秒で、また幾つかの実施形態では約1.3秒で送達することができる。幾つかの実施形態では、本開示の注入器の1つ又はそれ以上の実施形態と共に72ゲージの針を利用し、10%w/wポリエチレングリコール20,000水溶液に匹敵する粘度を有する粘性溶液1.0mlを空中に、約1.0秒から約5.0秒の間の継続時間で送達することができ、幾つかの実施形態では約2.5秒から約5.0秒の間の継続時間で、幾つかの実施形態では約4.3秒で、また幾つかの実施形態では約4秒で送達することができる。幾つかの実施形態では、本開示の注入器の1つ又はそれ以上の実施形態と共に72ゲージの針を利用し、20%w/wポリエチレングリコール20,000水溶液に匹敵する粘度を有する粘性溶液1.0mlを空中に、約10秒から約15秒の間の継続時間で送達することができ、幾つかの実施形態では約12秒から約15秒の間の継続時間で、また幾つかの実施形態では約14秒で送達することができる。
【0163】
[0176]動的粘度にあたるcgs物理単位はポイズ(P)であり、これはASTM標準でセンチポイズ(cP)と表記されるのがより一般的である。典型的に、20℃の水溶液は大凡1cPの粘度を有する。幾つかの実施形態では、本開示の注入器は、1.0又はそれに近いcPを有する水溶液では27ゲージの針を通して0.5ml/秒の流量又は注入速度を発生させるように構成されている。幾つかの実施形態では、本開示の注入器は、1.0又はそれに近いcPを有する水溶液では27ゲージの針を通して0.5ml/秒の皮膚内への流量又は注入速度を発生させるように構成されている。
【0164】
[0177]米国特許第6,391,003号は、26ゲージ及び27ゲージの針を使用した場合のガラスカートリッジ内の医薬へ成功裏に適用することができる圧力の実験結果を開示している。表2は、針支援式ジェット注入器と共に使用することができる異なったピーク圧力を用いた例示となる注入、特にガラス製の事前充填済みシリンジを使用した場合の注入を示している。
【0166】
表2:針支援式ジェット注入器により送達され得る例示的な注入。
【0167】
[0178]当業者には、高い圧力及び流量は、実質的に医薬の逆漏れなしに所望の深さを実現する適切な分散を伴ったジェット注入を実現するべく、常にではないにしても典型的には患者の皮膚中へのより短い針穿刺と共に使用されることになるのが認識されるであろう。代わりの実施形態は、それより高いか又は低い注入圧力を使用することができる。例えば、針なし注入器は、針を用いずに皮膚を穿刺するのにより高い圧力を使用するであろうし、自動注入器なら、典型的に、手動駆動式シリンジ注入をまねるより低い圧力を使用することになろう。
【0168】
[0179]針支援式ジェット注入器の幾つかの実施形態では、医薬を皮膚の異なった部分に注入するのに、そして幾つかの実施形態では同時に何らの逆漏れもなしに注入するのに、短針を使用することができる。27ゲージの針24で、針ガード66の遠位面より向こう側に約2.5mm伸びる針24を使用し、流体室22の圧力については、約300p.s.i.でピークに達し大凡100p.s.i.で終了し結果的に流量が約0.5mL/秒になる圧力を使用すれば、医薬1mLを、例えば表1に示されている試験された注入の約100%で有意な逆漏れなしに成功裏に注入することができ、試験では注入部位の僅かな濡れ又は或る程度とはいえやはり僅かな濡れが観測されただけであった。こうして、本開示の針支援式ジェット注入器では、患者の皮膚の厚さ、年齢、体重、又は他の因子に関係なく、非常に短い針を使用して1つ又はそれ以上の医薬のジェット注入を信頼性高く行うことができる。
【0169】
[0180]幾つかの実施形態では、動力源としてのばねの型式、ばねによって送達される力の調節、及び/又はばねを組み立てられた注入器内に包装するやり方の選択が、完全注入を被投与者に送達するのに要する時間の量の有意な削減、注入を送達するのに要するばね力の有意な削減、及び貯蔵寿命の延長に導く。例えば、多くの既知の自動注入器に見られるばねは、約0.8−1.5mlの体積範囲にある典型的な注入が被投与者の中へ10−15秒で完全に送達されるように構成されている。対照的に、本開示の注入器の実施形態は、体積にして約0.8−約1.0mlの完全注入を約1秒から約5秒で送達するように、幾つかの実施形態では約2秒から約4秒で、また幾つかの実施形態では約3秒で、送達するように構成されている各々のばねを有することができる。本開示の自動注入器の実施形態が使用された場合のこの時間の短縮は、完全注入を送達するのに要する時間が短くなれば患者が体験する疼痛も少なくなることから、患者コンプライアンスを向上させるものと確信する。
【0170】
[0181]加えて、幾つかの実施形態では、ばね材料は、例えば
図16に示されている様に注入の行程長さに亘ってばね力を減少させることのみを目的に選択されることもある。多くの既知の自動注入器は、1回の注入過程に亘るばね力で大凡20%未満の減少を示している。対照的に、本開示の注入器の実施形態は、それらのばね力が、1回の注入過程に亘って少なくとも約25%減少するように構成することができ、幾つかの実施形態では1回の注入過程に亘って少なくとも約25%から約50%、幾つかの実施形態では1回の注入過程に亘って少なくとも約30%から約50%、また幾つかの実施形態では1回の注入過程に亘って約50%減少するように構成することができる。
【0171】
[0182]更に、ばねの包装中及び末端使用者又は患者への出荷中にばねが過剰に圧縮された状態に置かれないように、ばねの材料を選択したりばねを注入器にセットしたりすることができる。このことは好都合であり、というのも、ばねは長時間に亘って過度に圧縮されると、過剰応力状態となり、時間の経過と共に力の損失を呈するからである。例えば、多くの既知の自動注入器は、貯蔵寿命の大部分をそれらのばねが圧縮された状態で過ごすように包装されている。このやり方で包装されている場合、その様な既知の自動注入器は、自動注入器が棚の上で使用されるのを待っている間にばね力に低下を来す。対照的に、本開示の注入器の実施形態は、圧縮された状態で時間を経ても力の損失が少ないように十分な弾性を有する材料で作られたばねを有すること、及び/又は完全に組み立てられた注入器の中に、注入時まで一杯に圧縮された状態にはならないようにして構成されているばねを有することができる。このやり方だと、本開示の注入器の実施形態は、典型的な貯蔵寿命に亘ってそれらのばね力の約0%から約15%を失う。幾つかの実施形態では、本開示の注入器は、3年の貯蔵寿命に亘ってそれらのばね力の約10%から約12%を失う。
【0172】
[0183]単発注入器の幾つかの実施形態では、注入器12は、ロック要素の様な使用不能化機構であって、注入機構と関係付けられているロックリング70として提供されていてもよい使用不能化機構を含んでいる。
図6A−
図6Dに示されている様に、ロックリング70は、スリーブ16と針ガード66の間に配置されており、1回の注入周期に限定して針ガード66が外ハウジング14に対して動くことを許容するように、スリーブ16及び針ガード66と作用し合うことができる。これには、保護位置(
図6A)から注入位置(
図6B、
図6C)へ移り、次に圧縮ばね72の力の下に保護位置(
図6D)に戻る運動が含まれる。針ガード16が注入周期の終わりに保護位置に戻ったとき、ロックリングは、スリーブ16及び針ガード66に対して、それらの間の更なる運動が拘束されるように配置され、その結果、注入器はそれ以上注入を行うことができなくなり、針24は注入器12のハウジング14内に安全に維持される。
【0173】
[0184]
図6A−
図6Dに示されている様に、1ロック掛け周期を通しての針ガード66の運動が、ロックリング70をスリーブ16に対して注入位置からロック位置へ動かす。注入位置では、ロックリング70は、当該ロックリング70の上腕部71が、例えば、スリーブの外面に形成されている近位切欠92の様な、医薬室22と関係付けられている装置部分に係合するように配置されている。上腕部71が近位切欠92内に係合することで、ロックリング70は解放可能に注入位置に維持される。
図7に示されているように、ロックリング70は、直接的にでも間接的にでも何れでもよいが、例えばスリーブ16を取り囲むなどにより医薬室22を取り囲めるように形状を概ね環状とすることができる。ロックリング70は、更に、一対の下腕部73を含んでおり、下腕部それぞれはその端にタブ74が形成されている。ロックリング70が注入位置に入ったとき、タブ74は、針ガード66がロックリング70の上で所定の距離に亘って滑動可能となるように針ガード66に形成されているスロット95に受け入れられる。針ガード66が外ハウジング14に対して注入位置へと入ってゆくと、針ガード66はロックリング70上を滑ってゆき、するとタブ74がスロット95の端に到達して内向きに押圧され、針ガード66が注入位置へ動き続けられるようにする。注入位置に到ると、タブ74は針ガード66の孔96と整列し、下腕部73がその自然な位置に戻れるようにし、するとタブ74の上面が孔96の縁に係合し、それによってロックリング70が針ガード66に連結される。
【0174】
[0185]針ガード66が保護位置に戻る際、針ガード66はロックリング70を遠位方向に引きずり、上腕部71を近位切欠92から解放させる。幾つかの実施形態では、上腕部71と近位切欠92は、嵌め合い傾斜面であって、上腕部71の傾斜面が、例えば近位ノッチ92の中へ張り出すなどによって、医薬室22と関係付けられる注入器12の別の部分に係合するが、但しそれに対して遠位方向に向かう運動によって外向けに押し出されるような嵌め合い傾斜面を備えて形成されている。この構成のおかげで、針ガード66が静止したままのスリーブ16の上を遠位方向に保護位置に向かって動いてゆく際、針ガード66はロックリング70を針ガードと一体に動かして、注入位置から出てゆかせることができる。
【0175】
[0186]針ガード66が保護位置に到達すると、上腕部71はスリーブ16に形成されている遠位切欠93の上へ来て、上腕部71の上面が遠位切欠93の上面94に係合する。更に、その様な位置では、ロックリング70のフランジ77が針ガードの面67に当接して、針ガード66がロックリング70に対して遠位方向に動くのを制止する。この係合により、ロックリング70はスリーブ16に対して近位方向に動くことができなくなる。ロックリング70がこの構成では針ガード66に連結されているため、そしてスリーブ16が外ハウジング14に取り付けられているため、針ガード66は、外ハウジング14に対してロックされ、注入位置に戻ることができない。これにより、注入器12の使用後に針24が偶発的に露出されることが防止される。代わりの実施形態は、注入器又はその一部の再使用を防止するのに他の機構を使用することができる。幾つかの実施形態は、その様な機構を採用しておらず、従って注入器は再使用することができる。幾つかの実施形態では、医薬の注入後、それ以降の注入は自動的に防止され、注入後にノズル先端やジェット注入ノズルの様な注入器の諸部分に残っているかもしれない医薬の残余への曝露又はそれとの接触は、注入器12の構造によって防止又は回避させることができる。
【0176】
[0187]
図11を参照すると、針なしジェット注入器の或る実施形態の遠位端が示されている。描かれている注入器は、針注入器の実施形態に関して以上に説明されている様に注入を射出するのに本明細書に記載されているシステムを使用することができるが、医薬を被投与者の中へ注入するのに針の代わりにジェットノズル202が使用されている。ノズル202は、医薬200を、ノズル202から、外側の皮膚層を突き、所望の注入深さまで進み続けるのに十分な強さの流体ジェットとして、出てゆかせるように選択された直径を有するジェット出口204を画定している。
【実施例】
【0177】
[0188]以下の実施例は、本明細書に開示されている注入器の実施形態を使用して1人又はそれ以上の被投与者の中へ注入された1つ又はそれ以上の危険有害性薬剤の注入及び薬物動態を詳細に説明している。当業者には、材料及び方法の両方に対し、多くの修正が、本開示の範囲を逸脱することなく実践され得ることが自明であろう。
【実施例1】
【0178】
[0189]オス及びメスのゲッティンゲンミニブタにおいて本開示の自動注入器又は既知の皮下針/シリンジ組合せの何れかを用いた皮下投与後に実現された危険有害性薬剤メトトレキサートの全身曝露を説明及び比較するため薬物動態分析(PK)を実施した。
【0179】
[0190]メトトレキサートと対照品目の両方を投与した。被験品目と対照品目の投与、血液採取、及びこの研究のための処理は、Charles River Preclinical Services社(オハイオ州スペンサービル)にて、FDA準拠外GLP(医薬品安全性試験実施基準)条件の下に行った。血漿濃度の提示データは、研究等級レベル3液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC−MS/MS)法により作成した。
【0180】
[0191]メトトレキサートは、ミニブタの同じ動物個体の組に対し二者択一的に自動注入器又は針/シリンジを用いて皮下注入により投与した。注入は、1日目と8日目に行った。表3は、研究のPK部分の実験計画法を示している。
【0181】
【表3】
【0182】
a:1日目と8日目で同じ3体の動物個体/性別を使用した。
【0183】
[0192]表4のスケジュールに従い、全動物個体から血液サンプル(大凡1mL)を、K
2EDTAを入れた管の中へ採取した。全サンプルは処理して血漿にしてから、メトトレキサート及び7‐OH代謝産物の濃度について分析した。7‐OH代謝産物についての血漿濃度結果はPK分析の対象としなかった。
【0184】
【表4】
【0185】
a:投薬前採取サンプル。
X:サンプルを採取。
【0186】
[0193]それぞれの動物個体のPKプロファイルは、有効なコンピュータソフトウェア(米国カリフォルニア州マウンテンビューのPharsight Corp.社によるWinNonlineバージョン5.2.1)を使用したメトトレキサート血漿濃度データの非コンパートメント分析によって目標サンプリング時点で特徴付けた。脈管外投与経路と血漿マトリックスに基づいてモデルを選択した。PKパラメータ推定の目的上、投薬前濃度をゼロと見なした。
【0187】
[0194]線形台形法(線形内挿法)を使用してメトトレキサート血漿濃度対時間曲線下面積(AUC)を計算した。現実的である場合は、少なくとも最後3つの観測濃度値を使用した最良適合線に基づき、PKプロファイルの末期排泄相を特定した。末期排泄相の勾配は、非加重濃度データを使用し、ログ−線形回帰を用いて計算した。被験品目の被験体系における全身曝露を表すPKパラメータを、動物個体毎に、(予測ではなく)観測された血漿濃度値、投薬計画、AUC、及び末期排泄相速度定数(K
el)から推定した。最良適合線(R
sq)の決定係数が0.800未満であるか、又はAUCの無限時間への外挿が総面積の20%より多かった場合は、K
elの確定に依存するパラメータを報告しなかった。
【0188】
[0195]該当する場合には、研究実施中に得られた数値データを、マイクロソフトのエクセル2000/2003の記述統計学(平均偏差と標準偏差)の計算に掛けた。
【0189】
[0196]表5及び表6に示されている様に、1日目と8日目の投薬前に採取された数個のサンプルでメトトレキサートは下定量限界(LLOQ=0.2mg/mL)を上回っており、即ち、オス個体番号S5196559(針/シリンジ、8日目、0.558ng/mL)、オス個体番号S5196206(針/シリンジ、8日目、0.222ng/mL)、及びメス個体番号S5195684(自動注入器、8日目、3.19ng/mL)であった。これらの結果は、メトトレキサートの高濃度を含んでいる前のサンプルから計器が持ち越されていることに起因すると考えられる。メトトレキサートは、自動注入器を用いた投与(1日目)後の、オス個体番号S5196273及びS5196206からの24時間後サンプルを除く全投薬後サンプルで定量化可能であった。
【0190】
【表5】
【0191】
BQL:定量限界未満(BQL<0.200ng/mL)。BQL濃度は平均計算ではゼロの値を代入した。
n/a:該当せず。
【0192】
【表6】
【0193】
BQL:定量限界未満(BQL<0.200ng/mL)。BQL濃度は平均計算ではゼロの値を代入した。
n/a:該当せず。
【0194】
[0197]表7並びに
図12、
図13、及び
図14に示されている様に、メトトレキサートの最大血漿濃度は、両装置共に最初の採取時点(0.25時間)に観測されており、注入部位からの吸収が急速であることを示している。T
max後、メトトレキサート濃度は見たところ二重指数式に下降した。推定できるところでは、メトトレキサートの末期排泄半減期は1.81時間から4.90時間の範囲となる。
【0195】
【表7】
【0196】
a:T
maxについて報告された中央値。
b:AUC(0−inf)の外挿が20%より多いか又はRsqが<0.800であったため、値を報告せず。
-:計算せず。
【0197】
[0198]表7及び表8、並びに
図14及び
図15に示されている様に、自動注入器又は針/シリンジの何れかを用いて得られる曝露は非常に似通っていた。
【0198】
【表8】
【0199】
[0199]表7、
図13、及び
図14に示されている様に、オスとメスの間に際立った差はなかったが、曝露について、特に針/シリンジ投与では、メスの方が極僅かであるが曝露がより大きい傾向が観測された。
【0200】
[0200]要約すると、オス及びメスのゲッティンゲンミニブタにおいて自動注入器装置又は針/シリンジの何れかを用いてメトトレキサート12.5mgを皮下投与した後の血漿中のメトトレキサートの薬物動態を特徴付けた。メトトレキサートの最大濃度は、概して、用量投与後間もなく(0.25時間)観測され、その後は見かけ二重指数式に下降した。メトトレキサートの末期排泄半減期は1.81時間から4.90時間の範囲であった。自動注入器又は針/シリンジの何れかを用いて実現された曝露はどちらも同程度であった。PKパラメータの中で際立った性別関連の差はなかった。
【実施例2】
【0201】
[0201]本開示の自動注入器と、2つの既知の従来型自動注入器であるEnbrel(登録)SureClick(商標)自動注入器(米国カリフォルニア州サウザンドオークスのImmunex Corporation社)とHUMIRA(登録商標)ペン(米国イリノイ州アボットパークのAbbott Laboratories社)の両注入器との間で、0.8−1.0mlの範囲の溶液の完全注入を送達するのに要するばね力と時間の両方を説明及び比較するため、注入比較を行った。
【0202】
[0202]この試験のために対照品目を投与した。2つの既知の自動注入器の結果を平均した。比較の結果を
図16に示している。
図6に示されている様に、完全注入を送達するのに要した時間は、既知の自動注入器では10秒であるのに対し、本開示の自動注入器からの完全注入の送達に要した時間はたったの3秒である。従って、既知の自動注入器の使用者は、完全注入を受けるためには当該自動注入器を注入部位にまる10秒間に亘って保持しなくてはならない。対照的に、本開示の自動注入器の使用者は、当該自動注入器を注入部位に3秒間しか保持する必要がない。
【0203】
[0203]加えて、
図16に示されている様に、本開示の自動注入器では、完全注入を送達するのに要したばね力は3秒で大凡50%減少している。これは、既知の自動注入器で見られる10秒で大凡20%未満というばね力の減少とは対照的である。
【0204】
[0204]本明細書で使用する場合、「約」という用語は、対応する数と数の範囲の両方を指すものと理解されたい。また、全ての数的範囲は、本明細書では、当該範囲内のそれぞれの整数全部を含むものと理解されたい。
【0205】
[0205]本開示の例示的な実施形態を開示しているが、数多くの修正及び他の実施形態が当業者によって考案され得る余地のあることが理解されるであろう。例えば、様々な実施形態の特徴は、他の実施形態で使用することができる。従って、付随の特許請求の範囲は、本開示の精神及び範囲内に入る全てのその様な修正及び実施形態を対象として包含するものとする。