(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732051
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】荷重を取り扱う装置においてエネルギーを回収するシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/06 20060101AFI20150521BHJP
B66B 1/30 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
B66B1/06 K
B66B1/30 Z
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-521161(P2012-521161)
(86)(22)【出願日】2010年7月20日
(65)【公表番号】特表2012-533492(P2012-533492A)
(43)【公表日】2012年12月27日
(86)【国際出願番号】IT2010000320
(87)【国際公開番号】WO2011010335
(87)【国際公開日】20110127
【審査請求日】2013年7月4日
(31)【優先権主張番号】FI2009A000162
(32)【優先日】2009年7月23日
(33)【優先権主張国】IT
(31)【優先権主張番号】FI2010A000080
(32)【優先日】2010年4月29日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512012458
【氏名又は名称】ソルダイニ,フルビオ
(74)【代理人】
【識別番号】100147935
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 進介
(74)【代理人】
【識別番号】100080230
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 詔二
(72)【発明者】
【氏名】ソルダイニ,フルビオ
【審査官】
日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−025040(JP,A)
【文献】
特開昭57−160874(JP,A)
【文献】
特開平10−067469(JP,A)
【文献】
特開2000−255918(JP,A)
【文献】
特開2005−104681(JP,A)
【文献】
特開2006−089225(JP,A)
【文献】
特開2008−254909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00 − 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重を取り扱う装置においてエネルギーを回収するシステムであって、荷重(2)が電気モーター手段(M)によって垂直方向に移動し、該電気モーター手段(M)は、その動作状態に応じて、レベルが所定の値よりも低いか又は高い電気エネルギーを消費する、システムにおいて、
前記電気モーター手段によって消費される電気エネルギーの量を瞬間毎に感知する感知手段と、前記電気モーター手段(M)の出力シャフト(6m)の回転を電気エネルギーに変換する傾向にある少なくとも1つの発電機(G)とを備え、
前記電気モーター手段(M)によって消費された電気エネルギーが所定の値よりも低いことを前記感知手段が検知した場合には前記少なくとも1つの発電機(G)が起動され、
前記電気モーター手段(M)によって消費された電気エネルギーが前記所定の値よりも高いことを前記感知手段が検知した場合には前記少なくとも1つの発電機(G)の起動がされないことを特徴とする、システム。
【請求項2】
前記システムは、前記電気モーター(M)と前記発電機(G)との間に位置決めされて該電気モーター(M)と該発電機(G)との間で作用する接続手段(F)を備え、それによって該接続手段(F)は前記発電機(G)のシャフトを前記モーターのシャフト(6m)に接続すること、及び、前記感知手段は、前記電気モーター手段(M)によって吸収された電気エネルギーが所定の値よりも小さい場合には、前記シャフト(6g、6m)を互いに接続し、前記電気モーター手段(M)によって吸収された電気エネルギーが前記所定の値よりも小さい場合には前記シャフト(6g、6m)を互いから分離するように、前記接続手段(F)を駆動することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記荷重(2)は、ケーブル(3)の第1の端に懸吊され、該ケーブル(3)は反対の端が釣り合い荷重(4)に接続されており、前記荷重(2)は、前記電気モーターによってプーリー(5)又は前記ケーブル(3)を動かす傾向にある他の好適な要素を通じて垂直方向に移動されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの発電機(G)に接続されている変極スイッチ(TP)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの発電機(G)の電気出力部に接続されている所定の量のバッテリー(BA)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
2つの対応する接続手段(F、F’)によって前記電気モーター(M)の2つのそれぞれのシャフト(6m、6m’)に接続されている2つの発電機(G、G’)を備えることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記接続手段は電気クラッチであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
前記感知手段は、前記電気モーター(M)によって吸収される電流を感知することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
前記モーター(M)のローター及び前記発電機(G)のローターが同じ前記シャフト(6m)に取り付けられていることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記モーター(M)及び前記発電機(G)はそれらの共通のシャフト(6m)と共に単一の収容構造体(SC)の内部にあることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リフト等の荷重を取り扱う装置、貨物引上げ装置及び同様の装置、又はクレーン等の吊り上げ装置においてエネルギーを回収するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
リフト及び貨物引上げ装置等の装置には通常、荷重を運搬するようになっているキャビン又は部屋(room:積載用室)と、プーリーに巻き付いているケーブルによってキャビン又は部屋に接続されている釣り合い荷重と、プーリーを動かして回転させるようにプーリーに運動学的に接続されているモーターとが想定される。実際には、モーターのエネルギー消費を制限するために、モーターは、必要な動作(運動が摩擦に変化すること等に起因する種々の損失を考慮しない)が、キャビン及びその内容物の全重量には対応せず、キャビン重量の値とその対応する釣り合い荷重との差に対応するような条件下で動作される。
【0003】
キャビン重量及びその内容物の値が釣り合い荷重の値よりも大きいケースでは、モーターは(キャビンの)上昇運動においてより多くのエネルギーを消費する。同じ荷重条件下では、対応する下降運転において、モーターの動作の代わりに、キャビンが加える重量の力が実質的に用いられる。
【0004】
逆に、キャビン重量及びその内容物の値が釣り合い荷重の値よりも小さい場合、モーターは下降運動においてより多くのエネルギーを消費する。これらの荷重条件下では、キャビンの上昇運転においては、モーターの動作の代わりに、釣り合い荷重によって加えられる重量の力が実質的に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特にモーターの動作条件がエネルギー要件に対して有利であるときにエネルギーを回収することであり、実際面では、釣り合い荷重を用いるリフト、貨物引上げ装置のような吊り上げ装置について、キャビンの上昇運転においてキャビンの重量(その荷重を含む)の値が釣り合い荷重の値よりも小さいとき、及びキャビンの下降運転においてキャビンの重量(その荷重を含む)の値が釣り合い荷重の値よりも大きいときにエネルギーを回収することである。同様に、釣り合い荷重を用いない吊り上げ装置のケースでは、下降段階で荷重に作用する重力によってエネルギーが回収される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの結果は、本発明によって、請求項1に記載されている特徴を有するシステムを提供するという着想を採用することによって達成されている。
【0007】
本発明の更なる特徴は従属請求項の主題である。
【0008】
本発明の利点は特に以下で説明されるものである:
特許請求の範囲に規定された範囲に明確に含まれる装置を用いることによってエネルギーが比較的高い効率で回収される、
システムは、新たに構成された吊り上げ装置において適用することができるが、クレーン及び同様の装置等の吊り上げ装置を含む既存の装置が必要条件を再び満たすため(requalification)(「改造」)に採用することもできる、
システムは、従来のシステムと比較して追加コストがかなり少なく、そのコストは、該システムを用いることによってエネルギー節減の点から早いうちに償却される、
エネルギーの量が低いという吊り上げ装置の要件によって、全般的に環境へのプラスの効果を伴って消費、エネルギー節減の観点から利点を提供する、
その構造は頑丈であり、その特有の特徴部が、時間経過において、極めて長期間の使用の後であっても変わらないままであることを可能とする。
【0009】
当業者は各々、限定的な意味でみなされるべきではない本発明の実用に際した説明として与えられる以下の記載及び添付の図面によって、本発明のこれらの特徴、並びに更なる特徴及び利点をより良く理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるシステムの可能な実施形態に関する図である。
【
図3】本発明によるシステムの更なる実施形態を示す図である。
【
図4】本発明によるシステムの更なる実施形態を示す図である。
【
図5】本発明によるシステムの更なる実施形態を示す図である。
【
図6】本発明によるシステムの更に別の実施形態を示す図である。
【
図7】本発明によるシステムの更に別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付の図面の
図1及び
図2を参照すると、本発明によるエネルギーを回収するシステムを、図においてリフトによって概略的に表されている吊り上げ装置と協働させて用いることができる。
【0012】
吊り上げ装置は、垂直方向に移動される荷重を収容するようになっているキャビン2を備える。
【0013】
キャビン2は、プーリー5に巻き付いているケーブル3によって釣り合い荷重4に接続されている。既知の方法では、キャビン2の吊り上げは釣り合い重り4の位置低下に対応し、その逆もまた同様である。
【0014】
キャビン2は、その垂直方向の双方向移動において、図示されていない垂直トラックに沿って駆動され、同様に、本発明とは厳密には関連しない他の詳細は図示されておらず、かつ/又は本明細書において言及されていない。
【0015】
プーリー5のシャフトがキャビン2の下降移動又は上昇移動に従って一方の方向又は他方の方向へ回転することを可能にするモーターMがプーリー5に作用する。
【0016】
モーターMは対応するシャフト6mを駆動し、該シャフト6mには、出力シャフト6mの回転を電気エネルギーに変換する傾向にある発電機Gが接続されており、発電機Gは、その出力部において所定の量のバッテリーBに接続されている。命令に応じてモーターMのシャフト6mを発電機が直接作用するシャフト6gに接続する接続手段又はクラッチFが、モーターMと発電機Gとの間に配置されている。
【0017】
クラッチFの機能は、重力に起因する「プラスの動作」に由来するエネルギーを貯蔵する必要がある場合にのみモーターMのシャフト6mを発電機Gのシャフト6gに接続することである。
【0018】
クラッチFは、電気クラッチ、すなわち、モーターMのエネルギー吸収における所定の閾値の検出によって自動的に電気的に作動することができる接続手段であることが有利である。実際には、接続手段FはモーターMがエネルギーを吸収していないときに2つのシャフト6m及び6gを接続する。発電機Gに関連する電気的又は機械的な変極スイッチ(change pole switch)(IP)が、シャフト6gの回転方向とは関係なくバッテリーを充電することを可能にすると想定される。
【0019】
上述したシステムの機能中に、以下の構成を仮定することが可能である:
a.釣り合い荷重4の重量よりも小さいキャビン2(及び担持される荷重)の重量;
b.釣り合い荷重4の重量よりも大きいキャビン2(及び担持される荷重)の重量;
c.釣り合い荷重4の重量と等しいキャビン2(及び担持される荷重)の重量。
【0020】
ケースa(キャビンの重量が釣り合い荷重の重量よりも小さい)では、キャビンが上方へ移動する場合、キャビン2の上方への推力は釣り合い荷重4に作用する重力によって決まるため、モーターMはエネルギーを必要としない。このケースでは、接続手段Fは発電機OをモーターMのシャフトに接続して、シャフトの機械的エネルギーをバッテリーBに貯蔵される電気エネルギーに変換することを可能にし、所望のように使用することができるようにする。逆に、キャビンが下方へ移動する場合には(下降)、モーターMは、既に述べたようにキャビン2に対してより大きい値を有する釣り合い荷重4の重量の力を克服するためにエネルギーを提供しなければならない。このケースでは、接続手段は介在せず、2つのシャフト6m及び6gは分離されたままである。
【0021】
ケースb(キャビンの重量が釣り合い荷重の重量よりも大きい)では、キャビンが下方へ移動する場合、キャビン2の下降は釣り合い荷重4よりも大きい重量を有するキャビン2に作用する重力によって決まるため、モーターMはエネルギーを必要としない。このケースでは、接続手段Fは発電機GをモーターMのシャフトに接続し、シャフトの機械的エネルギーを電気エネルギーに変換してバッテリーBに貯蔵することを可能にする。逆に、キャビンが上方へ移動する場合には(上昇)、モーターMは、キャビン2及びその内容物の重量の力を克服するためにエネルギーを提供しなければならない。このケースでは、接続手段Fは介在せず、2つのシャフト6m及び6gは分離されたままである。
【0022】
ケースcでは、モーターMは、種々の摩擦によって与えられる抵抗を克服するために非常に小さいエネルギー要件しか有しない。しかし、前述した「プラスの動作」は得ることができず、したがって接続手段Fは2つのシャフト6m及び6gを分離したままとする。
【0023】
例えば、クラッチがシャフト6m及び6gを接続しなければならないか否かを判断するには、モーターMによって吸収される電流の強度を検出し、これを所定の閾値と比較することで、モーターMによって吸収される電流が所定の閾値よりも小さい場合にのみ上記シャフト間の接続を決定することが可能である。文脈的に、シャフト6mの回転方向の検出、すなわちシャフト6mの回転方向の制御が可能である。
【0024】
図2は、発電機G、G’が1つよりも多くの複数ある、本発明の別の可能な実施形態を示す。このケースでは、発電機の数は2つであり、発電機は、モーターMによって表される2つの対応するシャフト6m、6m’の2つの対向する端に接続可能な2つのシャフト6g、6g’に取り付けられている。
【0025】
上述した両方の可能な実施形態において、「専用の」装置の使用に由来する利点が明らかであり、実際には、モーターMは、電気エネルギーをプーリー5のシャフトの回転による機械的エネルギーに変換するために用いられ、単数又は複数の発電機G、G’は、シャフト6g、6g’の回転の機械的エネルギーを、バッテリーBAに蓄積される電気エネルギーに変換するために用いられる。このように、モーター手段の機能は、発電機の機能も果たすモーターMによって果たされ、したがって、モータ及び単数又は複数の発電機は、果たされるべき機能に関連して(性能及び効率の点からも)最も好適な特徴を有するようにそれぞれ選択することができ、この理由から、システムの全体的な効率は、モーターが発電機としても用いられるシステムの効率よりも高い。
【0026】
釣り合い荷重を有しない吊り上げ装置のケースでは、モーターのシャフトと発電機のシャフトとの接続は、荷重の下降段階においてのみ行われる。
【0027】
上記の記載から、更に、モーターMから発電機Gへの連結/連結解除機構の存在によって、発電機Gがブレーキとしては作用しないことが明らかである。換言すると、発電機Gは、モーターMの性能及び効率に悪影響を与えることなくその機能を果たす。
【0028】
システムの更なる実施形態が
図3〜
図5に示されている。
【0029】
図3の図面を参照すると、発電機Gは、タイミングベルトプーリーPによってモーターMに連結されている。この図では、
図4及び
図5における参照符号と同様に、参照符号「FP」及び「FC」が、釣り合い荷重のロープ及びキャビンのロープをそれぞれ示す。
【0030】
図4の図面を参照すると、モーターM及び発電機Gを含む群がロードセルCCに載っており、発電機Gはベルト伝動装置によって減速機Rに接続されている。このケースでは、電気クラッチの使用は想定されず、発電機Gは、その励磁回路に作用することによって起動又は起動解除される。
【0031】
図5の図面を参照すると、電気クラッチFは、4つの三つ組みプーリーによって形成されている群によってキャビンローブFCに接続されている(4つの三つ組みであるのは、この実施形態ではロープFCの数が4本であるためである)。この図において、上述したプーリーは「A」、「B」及び「C」によって示されている。その軸において電気クラッチが発電機Gに接続されているプーリー「B」はプーリー「A」及び「C」のそれぞれと係合するが、これらのプーリーは互いに係合しない。キャビンロープFCはプーリー「A」及び「C」の接触によって引っ張られ、これによって更にプーリー「B」の回転が決まる。この群は、モーター室V内に位置決めされると共に垂直方向及び水平方向のダンパーを用いてフレームに取り付けられている支持体SC内に位置付けられており(すなわちロープに垂直方向に作用する)、動作時のロープに特有の振動の妨げを回避する。
【0032】
図6及び
図7に示されている実施形態によると、モーターM及び発電機Gは同じシャフト6mを有し、発電機Gは、関連する励磁回路(図中に参照符号「E」によって概略的に示す)に自動的に作用することによって起動又は起動解除され、それによって、重力のプラスの動作があるときにのみ起動される。実際には、このケースでは、発電機GはモーターMがエネルギーを吸収していないときにのみ起動される。
【0033】
図6の図を参照すると、参照符号「FP」及び「FC」は、釣り合い荷重のロープ及びキャビンのロープをそれぞれ示し、一方で参照符号「FR」は、必要なときに荷重にブレーキをかけるために用いることができる、シャフト6mに取り付けられている電磁ブレーキを示す。
【0034】
モーターM及び発電機Gにより、それらの共通のシャフト6mを用いて形成されているユニットは、単一の収容構造体SC内にあり、これは、モーターM及び発電機Gを両方とも収容しているため設置作業及び保守作業を簡単にする。
【0035】
図7において、参照符号「SM」及び「SG」はモーターMのステーター及び発電機Gのステーターをそれぞれ示し、一方で参照符号「RM」及び「RG」はモーターMのローター及び発電機Gのローターをそれぞれ示す。
【0036】
発電機の出力は、バッテリーではなく任意の他の種類の電気器具に給電するようになっていることができる。
【0037】
全ての構成の詳細は、要素の形状、寸法、配置、使用する材料の性質に関する限り、採用される解決策の着想の範囲から逸脱することなく、それによって、本特許に付与される保護の範囲(limits)内にあるままで、任意の均等な方法で変えることができる。