【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1の特徴を有する画像表示装置によって達成される。本発明のさらなる実施形態は、従属請求項に記載する。
【0013】
本発明による装置は、表示層と画像分離層を有する。画像分離層は、画像表示装置を裸眼立体視にするために、表示層上に表示された画像を、観察者の左眼用の第1の画像と、観察者の右眼用の第2の画像とに分けるように構成される。本装置は、表示層と画像分離層を、実質的に、与えられた二次元の輪郭の内側でのみアクティブにするための表示制御モジュールを有し、これにより表示層と画像分離層を前記輪郭の外側で実質的に透明な状態にする。
【0014】
表示層は、アクティブにされない限りは、実質的に透明である。アクティブにされると、表示層は、投影される人又はオブジェクトの輪郭(周囲)の外側で実質的に透明のままである。透明ディスプレイ自体は公知である。本発明は、好ましくは表示層にほぼ平行であり裸眼立体視効果を生み出す画像分離層をいっしょにした透明ディスプレイを提供する。表示された輪郭の外側の領域では、表示層が実質的に透明のままであるだけでなく、左眼用の画像と右眼用の画像への画像分離に関与する画像分離層も実質的に透明のままである。表示層と画像分離層は、これら2つの層を含むフラットディスプレイパネルに統合することもできる。
特に、表示制御モジュールは、輪郭を描く輪郭データを受け取ることができ、表示層と画像分離層を制御して、これらの層の、実質的に輪郭の内側だけをアクティブにし、この輪郭の外側は実質的に透明のままにする。さらに、本装置は、人又はオブジェクトの画像データ及び/又は奥行きプロファイルデータを受け取り、これらのデータから二次元の輪郭を検出し、表示制御モジュールに輪郭データを送信するように構成される輪郭検出モジュールを含んでもよい。この輪郭検出モジュールは、標準コンピュータ又は専用プロセッサ上のソフトウエアに実装されてもよい。輪郭検出のためのアルゴリズム自体は、例えば、上に挙げた[Gross03]及びこの中で引用される参考文献から公知である。これらのモジュールは、単独の画像処理装置に組み入れられても良いし、又は互いに独立であってもよいし、互いから遠く離れていてもよい。
【0015】
一般的にいえば、画像分離層は、第1の画像を第1の方向に投影し、第2の画像を第2の方向に投影するように構成され、この第1及び第2の方向は、観察角(observation angle)だけ離れている。観察角は、各画像部分(例えば各画素)に関して局所的に異なっていてもよく、ひいては画像によって変化してもよい。好ましい実施形態では、画像表示装置は、操作中に前記観察角を動的に調節するための手段を含む。この手段は、電気的に、所望の観察角を直接的又は間接的に表す方向データを受け取り、この方向データに従って観察角を調節できる。観察角は、一般的に、画像表示装置に近い観察者に対しては大きくなり、画像表示装置から離れている観察者に対しては小さくなる。公知の裸眼立体視ディスプレイでは、観察者の2つの眼のそれぞれ用に分離された画像が、観察者の目に正確に届くよう適切に偏向されるように、観察者は「スィート・スポット」に位置する必要があるが、本発明では、装置自体を画像ディスプレイに対する観察者の位置に適合させることができる。
【0016】
前記観察角を動的に調節するための手段は、特に、表示層と画像分離層の間の距離を制御するために、電気モータ型アクチュエータ又はピエゾ・アクチュエータ等の、少なくとも1つの電気機械アクチュエータを含むことができる。この手段は、代わりに又は付加的に、例えば、画像分離層がアクティブパララックスバリア等を有する場合には、アクティブパララックスバリアのラインの位置及び幅を適合させること等によって、画像分離層の外観(appearance)を適合させるための手段を有してもよい。
【0017】
観察角を動的に調節するための手段は、表示層と画像分離層が、与えられた二次元の輪郭の実質的に内側だけアクティブにされるかどうかに関係なく、設けることができる。従って、本発明はまた、一般的に、表示層及び画像分離層を有する画像表示装置であって、この画像分離層が、表示層上に表示される画像を、第1の方向に投影される第1の画像と、第2の方向に投影される第2の画像とに分けるように構成されており、各画像部分に対する前記第1及び第2の方向が観察角だけ離れており、前記画像表示装置が操作中に前記観察角を動的に調節するための手段を有する、画像表示装置に関する。
【0018】
いくつかの実施形態において、表示層は、画像生成のための透明なLEDマトリックスを含むことができる。このようなマトリックス自体は公知である。特に、有機LED(OLED)マトリックスは公知である。他の実施形態では、表示層は、特に、投影装置によって照らされるように構成されてもよく、これにより投影層として機能してもよい。このため、表示層は、透明な異方性屈折又は異方性反射材料を含むことができる。
【0019】
画像分離層は、前記第1の画像と前記第2の画像を分けるために、画像分離層上に、好ましくは二次元の輪郭の内側にのみ、ほぼ平行なラインを複数有するアクティブパララックスバリアを生成するように構成することができる。いくつかの実施形態では、前記ラインはほぼ垂直であってよいが、他の実施形態では、前記ラインは異なる方向を有してよく、例えば斜めであってもよい。いくつかの実施形態では、画像分離層は、アクティブパララックスバリアを生成するために、LCD、特に、高コントラストを提供する白黒LCDを有してもよい。他の実施形態では、画像分離層は、第1の画像と第2の画像を分けるために、レンチキュラーレンズシステムマトリックスを有してもよい。
【0020】
画像表示装置は、さらに、表示層及び画像分離層が取り付けられるロボットユニットを有することができ、これによって、観察者と同じ部屋又は空間において、床上での画像表示装置の並進及び回転運動が可能になる。本装置は、画像表示装置が、他のオブジェクト、特に床上にある又は床上で動いている観察者又は他の画像表示装置と衝突するのを避けるために、さらに、少なくとも1つの衝突防止センサ、例えば超音波センサ又は赤外線(IR)センサを有してもよい。
【0021】
前記ロボットユニットは、表示層と画像分離層が与えられた二次元の輪郭の実質的に内側だけアクティブにされるかどうかに関係なく、設けることができる。従って、本発明はまた、表示層及び画像分離層を有する画像表示装置であって、画像表示装置を裸眼立体視にするために、前記画像分離層が、表示層上に表示される画像を、観察者の左眼用の第1の画像と、観察者の右眼用の第2の画像とに分けるように構成されており、さらに、床上での画像表示装置の並進及び回転運動を可能にするロボットユニットを有する画像表示装置に関する。
【0022】
画像表示装置には、ステレオカメラシステムやタイムオブフライトセンサ等の画像及び深度センサが搭載されていてもよい。これにより、1人の人の画像と奥行きデータを、第1の位置で取り込み、これを伝送し、第2の位置で表示することができる。この第2の位置では、ディスプレイの観察者の画像及び奥行きデータが同じ方法で取り込まれ、第1の位置に伝送され、第1の位置にてこのデータが元の人によって観察される。このようにして、元の人と観察者は、互いの相手のテレプレゼンスを非常にリアルに感じる。特に、本画像表示装置は、人又は他のオブジェクトの同時画像を複数取り込むための1以上のカメラと、前記複数の同時画像から仮想観察者の左眼及び右眼に対する分離画像を合成するための画像処理ユニットとを有してもよい。本装置は、さらに、画像表示装置とその周囲の観察者又はオブジェクトとの間の距離を測定することが可能な、少なくとも1つの深度センサ、好ましくはタイムオブフライトセンサを有することができる。
【0023】
原則的に、同じ部屋(第1の場所)には多数の観察者とこのような画像表示装置があることが想定される。第2の場所にはこの部屋のコピーが作り出され、第1の場所にある画像表示装置は、この第2の場所にいる人であり、第1の場所に実在する人とオブジェクトは、この第2の場所で対応する画像表示装置によって置き換えられるだけである。このコンセプトは、もちろん、同時に2つより多い場所に拡張することができる。
【0024】
本装置は、少なくとも1つの付加的な画像分離層を有することができる。この付加的な画像分離層は、第1の画像分離層とは反対側にある、表示層の裏側に配置することができる。こうして、本装置は、例えば、人又はオブジェクトの前及び後を表示でき、両側から眺めることができる。付加的に又は選択的に、付加的な画像分離層を、第1の画像分離層の上側、つまり、第1の画像分離層の、表示層とは反対側にある側に配置することができる。こうして、本装置は、裸眼立体視画像を1人より多い観察者に送るために使用することができる。このコンセプトは、もちろん、一般化して、付加的な画像分離層を複数にすることができる。好ましくは、表示制御モジュールは、前記輪郭の外側で、表示層及び複数の画像分離層を実質的に透明にするために、付加的な画像分離層も与えられた二次元の輪郭の実質的に内側だけアクティブにされるように構成される。第1の画像分離層に対してだけでなく、付加的な画像分離層の少なくとも1つに対しても、独立に、観察角を動的に調節するための手段を設けることができる。
【0025】
本装置は、特にテレプレゼンス及びテレコラボレーションでの利用に適するよう記載してきたが、利用の範囲はこれに限定されず、他の環境においても使用することができる。
【0026】
他の態様では、本発明は、人又はオブジェクトを観察者に表示する方法を提供し、本方法は、以下の工程を含む:
−透明表示層及び画像分離層を有する画像表示装置を提供する工程、
−人又はオブジェクトの画像データと、人又はオブジェクトの二次元の輪郭を表す輪郭データとを提供する工程、
−前記表示層は前記輪郭の内側でのみアクティブであり、前記表示層は、前記輪郭の外側の領域では基本的に透明なままであるように、前記画像データに基づき、観察者の左及び右眼のために、表示層上に人又はオブジェクトの画像を表示する工程、及び
−画像表示装置を裸眼立体視にするために、表示層上に表示された画像を、観察者の左眼用の第1の画像と、観察者の右眼用の第2の画像とに分けるように、前記画像分離層を制御し、前記画像分離層は前記輪郭の内側のみアクティブであり、輪郭の外側の領域は基本的に透明である工程。
【0027】
本方法は、さらに以下の工程を含んでもよい:
−少なくとも2つの別々のカメラで前記画像データを、好ましくはステレオカメラシステムで立体画像を取り込む工程、
−基準位置からの人又はオブジェクトの奥行きプロファイルデータを、例えば、少なくとも1つの深度センサを用いて、好ましくは、少なくとも1つのタイムオブフライトセンサを用いて取り込む工程、
−取り込んだ画像データ及び奥行きプロファイルデータから輪郭データを検出スル工程、及び
−観察者への遠近感が、取り込んだ人又はオブジェクトの基準位置からの遠近感に相当するように、人又はオブジェクトの画像を表示する工程。
【0028】
さらに別の態様において、本発明は、観察者に人又はオブジェクトを表示する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
−表示層及び画像分離層を有する画像表示装置を提供する工程、
−観察者の左及び右眼のために、表示層上に人又はオブジェクトの画像を表示する工程、
−画像表示装置を裸眼立体視にするために、前記表示層上の画像を、観察者の左眼用の第1の画像と、観察者の右眼用の第2の画像とに分けるように前記画像分離層を制御し、これにより、前記第1の画像を第1の方向に投影し、前記第2の画像を第2の方向に投影し、前記第1の方向と第2の方向は観察角だけ離れている工程、及び
−前記観察角を動的に調節する工程。
【0029】
特に、この方法は、以下の工程を含んでもよい:
−画像表示装置と観察者の間の距離データを、好ましくは画像表示装置に付属の付加的なタイムオブフライトセンサによって取り込む工程、
−画像表示装置に対する観察者の目の空間位置を推測する工程、及び
−前記観察者の目の推測された空間位置に応じて、前記観察角を動的に調節する工程。
【0030】
観察角の調節は、以下のパラメータのいずれかを調節することによって達成することができる:
−上述の、表示層と画像分離層との間の距離、及び
−上述の、画像分離層の外観、例えば、アクティブパララックスバリアの場合、ライン幅及び/又はライン位置。
【0031】
選択的又は付加的に、前記方法は、装置を移動させることにより、装置と観察者の間の距離を観察角に合うように調節することを含むこともできる。
【0032】
これらの方法は、もちろん、画像表示装置を輪郭の外側で実質的に透明のままにする、上述の方法と組み合わせてもよい。
【0033】
さらに別の態様では、本発明は、以下の工程を含む、観察者に人又はオブジェクトを表示する方法を提供する:
−表示層及び画像分離層を有する画像表示装置を提供する工程、
−観察者の左及び右眼のために、表示層上に人又はオブジェクトの画像を表示する工程、
−前記画像表示装置を裸眼立体視にするために、前記表示層上の画像を、観察者の左眼用の第1の画像と、観察者の右眼用の第2の画像とに分けるように、前記画像分離層を制御する工程、及び
−前記画像表示装置をロボットユニットにより動かす工程。
【0034】
特に、この方法は、
−少なくとも2つの別々のカメラを用いて基準位置からの人又はオブジェクトの画像データを取り込む、好ましくは、ステレオカメラシステムを用いて立体画像を取り込む工程と、
−観察者に対する画像表示装置の位置が、基本的に連続的に、取り込んだ人又はオブジェクトの基準位置に対する位置にマッチしているように、ロボットユニットにより画像表示装置を動かす工程と、
−画像上への観察者からの遠近感が、取り込んだ人又はオブジェクトへの基準位置からの遠近感に相当するように、画像データに基づき、人又はオブジェクトの画像を表示する工程と、を含んでもよい。
【0035】
また、これらの方法の特徴を、上述の他の方法のいずれかと組み合わせてもよい。これらの方法は、上述の画像表示装置を操作する方法として実行することもできる。
【0036】
特に好ましい実施形態では、以下の特徴を有する、人又はオブジェクトを観察者に表示する方法を提供する:
a. 少なくとも2つの別々のカメラを用いて、人又はオブジェクトの画像データを、好ましくは、ステレオカメラシステムを用いて立体画像を取り込み、
b. 少なくとも1つの深度センサ、好ましくは少なくとも1つのタイムオブフライトセンサを用いて、基準位置からの人又はオブジェクト及びその周囲の奥行きプロファイルデータを取り込み、
c. 取り込んだ画像データと奥行きプロファイルデータを画像表示装置に送り、
d. 工程(c)の前又は後に、画像認識モジュールによって、取り込んだ画像データ及び奥行きプロファイルデータから人又はオブジェクトの輪郭を検出し、
e. 画像表示装置と観察者との間の距離データを、好ましくは、画像表示装置に付属の付加的なタイムオブフライトセンサによって取り込み、
f. 前記距離データから観察者の目の空間位置を推測し、
g. 観察者への遠近感が、取り込んだ人又はオブジェクトの基準位置からの遠近感に相当し、且つ、表示層が、遠近的に調節され縮小拡大された(scaled)輪郭の内部だけアクティブで、この輪郭の外側の領域で基本的に透明のままであるように、観察者の左及び右眼のために、別々に、画像表示装置の透明な表示層上に人又はオブジェクトの拡大縮小された画像を合成し、及び
h. アクティブパララックスバリアを生成するように、画像表示装置の画像分離層を制御して、バリアは遠近的に調節され縮小拡大された輪郭の内側だけアクティブであり、画像分離層は、この輪郭の外側の領域は実質的に透明であるようにする。