(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ワーク保持ロッドは、各ワーク保持凹部が形成された面とは反対側の面に、前記巻線形成済みワークの間に存する線材余剰分の一部を受容するための複数の線材受領溝を等しい中心間隔で長さ方向に有している、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の巻線形成装置。
前記ワーク保持ロッドのワーク保持凹部に保持されている前記巻線形成済みワークが線材接合位置で停止したときに、該巻線形成済みワークの各導体パッドに前記巻線形成後の線材の一部分を接合するための線材接合機構をさらに備えている、
ことを特徴とする請求項4に記載の巻線形成装置。
前記ワーク保持ロッドのワーク保持凹部に保持されている前記接合済みの巻線形成済みワークが線材切断位置で停止したときに、該巻線形成済みワークの間に存する線材余剰分を前記巻線から切り離すための線材切断機構をさらに備えている、
ことを特徴とする請求項5に記載の巻線形成装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、説明の便宜上、
図1の右側、左側、奥側、手前側、上側、下側、並びに、
図2以降のこれらに対応する側を、それぞれ前、後、左、右、上、下と称する。
【0013】
《ワークと完成品》
先ず、巻線形成の対象であるワークWOと、完成品(ワークWOに巻線WWが設けられその終端WWaが接合されたもの、符号無し)について説明する。
【0014】
〈ワーク〉
ワークWOは、インダクタ等の電子部品に用いられる磁性コアであり、
図2(A)〜
図2(C)に示したように、横断面形が略正方形の鍔部WOaと、鍔部WOaの上面中心に位置する横断面形が略円形の柱部WObを一体に有している。また、鍔部WOaの左右側面には、巻線WWの各終端WWa(
図3(A)及び
図3(B)を参照)が接合される導体パッドWOcが対を成して設けられている。
【0015】
〈完成品〉
完成品は、
図3(A)〜
図3(C)に示したように、ワークWOの柱部WObの周りに巻線WW(線材WRを多重に巻き付けたもの)が設けられている。また、巻線WWの各終端WWaは、押し潰されたような態様でワークWOの各導体パッドWOcに接合されている。
【0016】
《巻線形成装置の構造》
次に、巻線形成装置CFD、即ち、移動と停止の繰り返しにより間欠搬送されるワークWOに停止時間を利用して巻線WWを順次形成する巻線形成装置CFDについて説明する。
【0017】
この巻線形成装置CFDは、
図1に示したように、ワーク保持ロッド10と、フレーム20と、フレーム20に配置されたロッド送り機構30と、フレーム20に配置されたワーク搬入機構40と、フレーム20に配置された線材巻き付け機構50と、フレーム20に配置された線材接合機構60と、フレーム20に配置された線材切断機構70と、フレーム20に配置された図示省略の完成品搬出機構と、フレーム20に配置されたロッド支持機構80を備えている。因みに、
図1は間欠搬送が停止時間に入った直後の状態を示す。
【0018】
〈ワーク保持ロッド〉
ワーク保持ロッド10は、
図4(A)〜
図4(D)に示したように、縦断面輪郭が略正方形であり、その上面には、上面視形状が略矩形の複数のワーク保持凹部10aが等しい中心間隔で長さ方向に設けられている。このワーク保持ロッド10の材料は好ましくは金属又は合成樹脂であり、その長さは、単位数、例えば50個のワークWOを保持可能な長さとなっている。各ワーク保持凹部10aの左右幅W2(ワーク保持ロッド10の左右幅も同じ)はワークWOの鍔部WOaの左右幅W1(
図2(B)を参照)よりも僅かに小さく、且つ、前後幅W3はワークWOの鍔部WOaの挿入を許容するためにワークWOの鍔部WOaの前後幅(左右幅W1と略同じ、符号無し)よりも僅かに大きくなっている。
【0019】
また、ワーク保持ロッド10の下面には、上から見て隣り合う2つのワーク保持凹部10aの前側の左縁下から後側の右縁下に至る複数の線材受容溝10bが等しい中心間隔で長さ方向に設けられている。各線材受容溝10bの縦断面形は略三角形であり、その深さ(符号無し)は線材WRの直径と略同じか直径よりも僅かに大きい。この各線材受領溝10bは、後記巻線形成済みワークWOの間に存する線材余剰分WRbの一部を受容する役目を果たす。さらに、ワーク保持ロッド10の左右両面には、縦断面形が略矩形のガイド溝10cがワーク保持ロッド10の上面と平行に設けられている。さらに、各ワーク保持凹部10aの底中心には、横断面形が略円形の永久磁石10dが埋設されている。この永久磁石10dは、ワーク保持凹部10aに搬入されたワークWOを磁力によって保持する役目を果たすエレメントである。
【0020】
〈フレーム〉
フレーム20は、
図1に示したように、後板20aと、上板20bと、下板20cと、前支柱20dを有している。また、上板20bには線材巻き付け機構50が取り付けられたブラケット20eが設けられ、下板20cにはワーク搬入機構40と線材接合機構60と線材切断機構70が取り付けられたテーブル20fが設けられ、前支柱20dにはロッド支持機構80が取り付けられたブラケット20gが設けられている。因みに、図示省略の完成品搬出機構は上板20b又は前支柱20dに取り付けられている。
【0021】
〈ロッド送り機構〉
ロッド送り機構30は、
図5(A)及び
図5(B)に示したように、フレーム10の後板10aに回転自在に支持された円柱状のロータ31と、回転ユニット32(符号32の図示は省略)と、フレーム10の後板10aの前面に設けられた環状の固定カム33と、ロータ31に設けられた主レバー34及び副レバー35と、主レバー34及び副レバー35を支持するシャフト36と、主レバー34を
図5(A)において反時計回り方向に付勢する第1バネ37と、副レバー35を後方に付勢する第2バネ38を備えている。
【0022】
ロータ31は、後側の軸心位置にロッド挿通孔31aを有し、ロッド挿通孔31aの前側に該ロッド挿通孔31aと連通した空洞31bを有し、空洞31bを構成する周囲壁に前後方向のスリット31cを有し、空洞31bの内面左右位置に前後方向の1対のガイド溝31dを有し、空洞31bの前端に第2バネ38の前端を支えるバネ受け板31eを有している。ロータ31の軸線は前後方向を向いており、回転ユニット32の作動によって、後から見て時計回り方向に回転する。ロッド挿通孔31aの縦断面形はワーク保持ロッド10の縦断面形(
図4(B)を参照)と相似形で僅かに大きく、ワーク保持ロッド10の前進のみを許容する。スリット31cの左右幅は主レバー34及び副レバー35の厚さの和よりも僅かに大きい。
【0023】
回転ユニット32は、フレーム10の後板10aの前面に設けられたモータ32aと、後板10aに回転自在に支持されたモータ軸32bに取り付けられた第1プーリ32cと、ロータ31の後部外面に取り付けられた第2プーリ32dと、第1プーリ32cと第2プーリ32dに巻き付けられた無端ベルト32eを有している。
【0024】
固定カム33の内径はロータ31の外径よりも大きく、ロータ31と同心となるように後板10aの前面に配置されている。また、固定カム33の前面は上死点(
図1において後板10aの前面から最も離れた箇所)から下死点(
図1において後板10aの前面に最も近づく箇所)を経由して上死点に戻るような態様のカム面33aとなっている。
【0025】
主レバー34と副レバー35は何れも略L字形で共通のシャフト36に回転自在に取り付けられており、シャフト36の左右両端はロータ31の1対のガイド溝31dに前後移動可能に嵌め込まれている。また、主レバー34の上部と副レバー35の上部はロータ31のスリット31cを通じて外部に突出しており、突出した上部の後面それぞれに凸部34aと凸部35aをそれぞれ有し、主レバー34はその前部にはワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに係合可能な係合突起34bを有している。
図5(B)のように主レバー34と副レバー35を上から見ると、主レバー34はワーク保持ロッド10上に位置し、副レバー35はワーク保持ロッド10の左側に位置しその下部右面をワーク保持ロッド10の左面に接している。先に述べたように、主レバー34と副レバー35は第1バネ37と第2バネ38によりそれぞれ付勢されており、しかも、第1バネ37の弾性力よりも第2バネ38の弾性力が大きいことから、両レバー34及び35の凸部34a及び35aは固定カム33のカム面33aに接していて、主レバー34の係合突起34bはワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに係合している。
【0026】
このロッド送り機構30は以下のように動作する。間欠搬送が移動時間に入ると、ロータ31及びワーク保持ロッド10が後から見て時計回り方向に回転を開始し、回転角度が略15度に達すると、
図6(A)及び
図6(B)に示したように、凸部34aが凸部35aよりも先に下死点に向かって後退し、第1バネ37の付勢力によって主レバー34のみが
図6(A)において反時計回り方向に回転し、主レバー34の係合突起34bがワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aから外れる。この過程ではワーク保持ロッド10はその軸線を中心として略15度回転するだけで前進はしない。
【0027】
回転角度が略15度を超えて略45度に達するまでは、
図7(A)及び
図7(B)に示したように、凸部35aも凸部34aと同様に下死点に向かって後退し、第2バネ38の付勢力によって副レバー35が主レバー34と一緒にガイド溝31dに沿って後方移動する。この過程ではワーク保持ロッド10はその軸線を中心として略30度回転するだけで前進しない。
【0028】
回転角度が略45度を超えると、
図8(A)及び
図8(B)に示したように、凸部34aが凸部35aよりも先に上死点に向かって前進し、第1バネ37の付勢力に抗して主レバー34のみが
図8(A)において時計回り方向に回転し、主レバー34の係合突起34bがワーク保持ロッド10の1つ後側のワーク保持凹部10aに係合する。この過程ではワーク保持ロッド10はその軸線を中心として僅かに回転するだけで前進はしない。
【0029】
回転角度が略45度をさらに超えて略360度に達するまでは、
図9(A)及び
図9(B)に示したように、凸部35aも凸部34aと同様に上死点に向かって前進し、第2バネ38の付勢力に抗して副レバー35が主レバー34と一緒にガイド溝31dに沿って前方移動して
図5の位置に戻る。この過程ではワーク保持ロッド10はその軸線を中心として略315度回転しながら、隣り合う2つのワーク保持凹部10aの中心間隔分に相当する距離だけ前進する。
【0030】
要するに、ロッド送り機構30は、ワーク保持ロッド10をその軸線を中心として1回転させつつ隣り合う2つのワーク保持凹部10aの中心間隔分に相当する距離だけ前進させ、該1回転及び前進が終了した後に停止時間を挟んで再び同じ1回転及び前進を繰り返す役目を果たす。
【0031】
〈ワーク搬入機構〉
ワーク搬入機構40は、
図10に示したように、ワーク保持ロッド10の右側に配置されたワーク供給シュート41と、供給シュート41の右端に連設された図示省略の周知のパーツフィーダと、ワーク保持ロッド10の上側に配置されたワーク搬入ユニット42を備えており、ワーク搬入ユニット42は昇降及び左右移動を可能とした吸引チャック42aを有している。
【0032】
このワーク搬入機構40は以下のように動作する。パーツフィーダはボウル部に収容された多数のワークWOを柱部WObが上を向き、且つ、各導体パッドWOcが左右に位置する姿勢に順次整列し、整列後のワークWOをワーク供給シュート41のワーク通路41aに順次送り込む。間欠搬送が停止時間に入ると、待機位置(ワーク通路41aの最左端のワークWOの上側)にある吸引チャック42aは下降してワークWOを吸引し、吸引後に上昇して左方移動し、ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aの上側に達したところで下降してワークWOの鍔部WOaをワーク保持凹部10aに挿入し、挿入後に吸引を解除して待機位置に復帰する。ワーク保持凹部10aに搬入されたワークWOは、鍔部WOaがワーク保持凹部10aに挿入されているために前後方向にその位置がずれることはなく、且つ、鍔部WOaの下面を永久磁石10dの磁力によって吸着されるために左右方向にその位置がずれることもない。
【0033】
〈線材巻き付け機構〉
線材巻き付け機構50は、
図11に示したように、フレーム10のブラケット20eに取り付けられたベース板51と、ベース板51に設けられた昇降ユニット52(符号52の図示は省略)と、昇降ユニット52のナット52cに取り付けられた昇降板53と、昇降板53に設けられた線材繰り出しプーリ54と、昇降板53に設けられたテンションユニット55(符号54の図示は省略)と、昇降板53に回転自在に設けられた線材巻き付けユニット56(符号57の図示は省略)と、昇降板53に設けられた回転ユニット57(符号57の図示は省略)を備えている。
【0034】
昇降ユニット52は、ベース板51に上下方向に仮設された回転自在なボールネジ52aと、ベース板51の上面に設けられたボールネジ回転用のモータ52bと、ボールネジ52aに設けられた昇降自在なナット52cを有している。ナット52cの回転は図示省略のガイドによって規制されているため、ボールネジ52aが回転しても上下方向にしか移動しない。
【0035】
線材繰り出しプーリ54は、数十mに及ぶ線材WRが巻き付けられており、その軸54aを昇降板53の上板部分に回転自在に支持されている。線材繰り出しプーリ54の軸線は上下方向を向いている。線材WRは、例えば銅線の周囲に熱可塑性プラスチック製の被覆が設けられたものである。
【0036】
テンションユニット55は、テンションローラ55aを線材WRに接しており、その軸55bは昇降板53の上板部分内に前後移動自在に支持され、且つ、バネ55cによって後方に付勢されている。つまり、線材繰り出しプーリ54から繰り出される線材WRには、バネ55cの付勢力に基づくテンションが付与される。
【0037】
線材巻き付けユニット56は、円柱状のロータ56aの上部に設けられた軸56a1を昇降板53の下板部分に回転自在に支持されている。ロータ56aの軸線は上下方向を向いており、回転ユニット57の作動によって、上から見て反時計回り方向に回転する。ロータ56aは軸56a1の上端からロータ56aの外周面に至る線材通路56a2を有すると共に、線材巻き付けスリーブ56bをその外周面に有している。つまり、線材繰り出しプーリ54から繰り出された線材WRは、ロータ56aの線材通路56a2を経由して線材案内スリーブ56bの内孔56b1を下方に移動することができる。また、ロータ56aの下部にはワークWOの柱部WObの上端に当接可能なワーク押さえロッド56cが設けられており、その軸56c1はロータ56の下部内に上下移動自在に支持され、且つ、バネ56c2によって下方に付勢されている。つまり、ワーク押さえロッド56cの下面は、バネ55cの付勢下でワークWOの柱部WObの上端を押さえ付けることができる。
【0038】
回転ユニット57は、昇降板53の下板部分の下面に設けられたモータ57aと、下板部分に回転自在に支持されたモータ軸57bに取り付けられた第1プーリ57cと、ロータ56aの軸56a1に取り付けられた第2プーリ57dと、第1プーリ57cと第2プーリ57dに巻き付けられた無端ベルト57eを有している。
【0039】
この線材巻き付け機構50は以下のように動作する。間欠搬送が停止時間に入ると、昇降板53が下降してワーク押さえロッド56cの下面がワークWOの柱部WObの上端に当接して該ワークWOを押さえ付ける。そして、ロータ56aが上から見て反時計回り方向に回転し、巻き付け開始位置(柱部WObの右側、
図1を参照))にある線材巻き付けスリーブ56bも同方向に回転して、線材WRを線材巻き付けスリーブ56bから引き出しながらワークWOの柱部WObに多重に巻き付けて巻線WWを形成する。因みに、線材巻き付けスリーブ56bの巻き付け終了位置は柱部WObの左側である。
【0040】
〈線材接合機構〉
線材接合機構60は、
図12に示したように、ワーク保持ロッド10の右側に配置された線材接合ユニット61と、ワーク保持ロッド10の左側に配置された線材接合ユニット62を備えており、両線材接合ユニット61及び62は左右移動を可能としたヒータ61a及び62aをそれぞれ有している。線材接合ユニット61のヒータ61aの左端はワークWOの右側の導体パッドWOcに向き合い、線材接合ユニット62のヒータ62aの右端は1つ前のワークWOの左側の導体パッドWOcに向き合っている。
【0041】
この線材接合機構60は以下のように動作する。間欠搬送が停止時間に入ると、線材接合ユニット61のヒータ61aの左端をワークWOの右側の導体パッドWOcに線材WRの一部分を押し付け、且つ、線材接合ユニット62のヒータ62aの右端を1つ前のワークWOの左側の導体パッドWOcに線材WRの一部分を押し付けて、該押し付けによって各一部分を押し潰して各導体パッドWOcに熱圧着により接合する。両ヒータ61a及び62aは接合完了後に待機位置に復帰する。
【0042】
〈線材切断機構〉
線材切断機構70は、
図13に示したように、ワーク保持ロッド10の右側に配置された線材切断ユニット71と、ワーク保持ロッド10の左側に配置された線材切断ユニット62を備えており、両線材切断ユニット71及び72は左右移動を可能としたカッター71a及び72aをそれぞれ有している。線材切断ユニット71のカッター71aの左端はワークWOの右側の導体パッドWOcの下部に向き合い、線材切断ユニット72のカッター72aの右端は1つ前のワークWOの左側の導体パッドWOcの下部に向き合っている。
【0043】
この線材切断機構70は以下のように動作する。間欠搬送が停止時間に入ると、線材切断ユニット71のカッター71aの左端をワークWOの右側の線材接合部分WRaの下端に押し付け、且つ、線材切断ユニット72のカッター72aの右端を1つ前のワークWOの左側の線材接合部分WRaの下端に押し付けて、該押し付けによって各接合部分WRaの下端において線材WRを切断する。両カッター71a及び72aは切断完了後に待機位置に復帰する。
【0044】
〈完成品搬出機構〉
図示省略の完成品搬出機構は、ワーク搬入機構40と同様、昇降及び左右移動を可能とした吸引チャックを備えている。
【0045】
この完成品搬出機構は以下のように動作する。間欠搬送が停止時間に入ると、待機位置(ワーク保持ロッド10の完成品を保持しているワーク保持凹部10aの上側)にある吸引チャックは下降して完成品を吸引し、吸引後に上昇して左方移動し、ワーク保持ロッド10から外れたところで吸引を解除して待機位置に復帰する。吸引チャックによってワーク保持凹部10aから取り出された完成品は、吸引が解除されたところで落下してその下側に置かれたボックスに回収される。
【0046】
〈ロッド支持機構〉
ロッド支持機構80は、フレーム20のブラケット20fに回転自在に支持された支持ロータ81を備えている。支持ロータ81はロッド送り機構30のロッド挿通孔31aと同じ縦断面形のロッド挿通孔81aを軸心位置に有しており、ワーク保持ロッド10の前進のみを許容する。つまり、ワーク保持ロッド10は回転及び前進ができるようにロッド送り機構30のロッド挿通孔31aとロッド支持機構80のロッド挿通孔81aに挿通されていると共に、両ロッド挿通孔31a及び81aによって略水平な姿勢を維持している。
【0047】
《巻線形成装置による完成品作製手順》
前記巻線形成装置CFDによって
図3(A)〜
図3(C)に示した完成品を作製するに際しては、先ず、
図1に示したロッド送り機構30のロッド挿通孔31aにその後側からワーク保持ロッド10を挿入し、該ワーク保持ロッド10の前端をロッド支持機構80のロッド挿通孔81aに挿入する。両ロッド挿通孔31a及び81aに挿通されたワーク保持ロッド10は
図1に示したように初期段階ではその上面が上を向いている。
【0048】
そして、線材巻き付け機構50の線材巻き付けスリーブ56b(
図1に示した巻き付け開始位置にある)から線材WRを引き出し、引き出した線材WRを前側の線材受容溝10bに入れてその先端をワーク保持ロッド10に巻き付けて固定する。
【0049】
そして、ロッド送り機構30を動作させて、
図5〜
図9を引用して前記〈ロッド送り機構〉で説明したように、ワーク保持ロッド10をその軸線を中心とし後から見て時計回り方向に1回転させつつ隣り合う2つのワーク保持凹部10aの中心間隔分に相当する距離だけ前進させ、該1回転及び前進が終了した後に停止時間を挟んで再び同じ1回転及び前進を繰り返す。この1回転及び前進の時間は間欠搬送の移動時間に該当し、停止時間は間欠搬送の停止時間に該当する。因みに、移動時間と停止時間の合計時間が1.0secの場合、移動時間と停止時間の時間比率は概ね3:7である。
【0050】
図1から分かるように、間欠搬送が停止時間に入る度に、(P1)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aがワーク搬入位置で停止し、(P2)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されているワークWOが線材巻き付け位置で停止し、(P3)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されている巻線形成済みワークWOが線材接合位置で停止し、(P4)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されている接合済みの巻線形成済みワークWOが線材切断位置で停止し、(P5)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されている切断済みの巻線形成済みワークWOが完成品搬出位置でそれぞれ停止する。
【0051】
(P1)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aがワーク搬入位置で停止すると、
図10を引用して前記〈ワーク搬入機構〉で説明したように、ワーク搬入機構40が動作してワーク保持凹部10aにワークWOが搬入され保持される。
【0052】
(P2)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されているワークWOが線材巻き付け位置で停止すると、
図11を引用して前記〈線材巻き付け機構〉で説明したように、線材巻き付け機構50が動作してワークWOの柱部WObに線材WRが多重に巻き付けられて巻線WWが形成される。
【0053】
図14(A)〜
図14(F)を引用して補足すれば、線材巻き付けスリーブ56bから引き出された線材WRは前側の線材受容溝10bに受容されおり、線材巻き付けスリーブ56bの巻き付け開始位置はワークWOの柱部WObの右側である(
図14(A)を参照)。依って、線材巻き付けスリーブ56bが上からみて反時計回り方向に回転すると(
図14(B)を参照)、線材WRは
図14(C)及び
図14(D)のようにしてワークWOの柱部WObに多重に巻き付けられて巻線WWが形成される。
【0054】
線材巻き付けスリーブ56bの巻き付け終了位置はワークWOの柱部WObの左側であるため、巻線形成後に間欠搬送が移動時間に入ってワーク保持ロッド10と一緒に巻線形成済みワークWO(
図14(E)を参照)も後から見て時計回り方向に1回転しながら前進すると、巻き付け終了位置に至った線材WRは後側の線材受容溝10bに受容されつつ(
図14(F)を参照)、再び巻き付け開始位置に至る。また、移動時間を利用してロータ56aを180度回転させて線材巻き付けスリーブ56bを巻き付け終了位置から巻き付け開始位置(
図14(A)を参照)に戻す。
【0055】
(P3)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されている巻線形成済みワークWOが線材接合位置で停止すると、
図12を引用して前記〈線材接合機構〉で説明したように、線材接合機構60が動作して巻線形成後の線材WRの各一部分が押し潰されつつ各導体パッドWOcに接合される。
【0056】
図15を引用して補足すれば、巻線形成後の線材WRは
図14(E)に示したように両側の導体パッドWOc上を通っており、線材接合機構60の各ヒータ61a及び62aは平坦な端面を有していて各導体パッドWOcに向き合っているため、各ヒータ61a及び62aの左端及び右端を各線材WRの一部分に押し付けると、同部分が略楕円形に押し潰されつつ熱圧着によって各導体パッドWOcに接合される。線材WRが熱可塑性プラスチック製の被覆を有する場合でも、各ヒータ61a及び62aによる熱圧着によって被覆が溶融するため、各線材接合部分WRaは各導体パッドWOcに電気的に接続される。
【0057】
(P4)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されている接合済みの巻線形成済みワークWOが線材切断位置で停止すると、
図13を引用して前記〈線材切断機構〉で説明したように、線材切断機構70が動作して各線材接合部分WRaの下端おいて線材WRが切断される。
【0058】
図16(A)及び
図16(B)を引用して補足すれば、線材切断機構70の各カッター71a及び72aの切断位置は好ましくは
図16(A)の符号CPで示した位置、即ち、各接合部分WRaの下端に設定されているため、各カッター71a及び72aの左端及び右端を位置CPに押し付けて線材WRを切断すると、巻線形成済みワークWOの間に存する線材余剰分WRbが各巻線WWから切り離される。切り離された線材余剰分WRbは
図16(B)に示したように自重により落下するが、落下し難い場合にはワーク保持ロッド10の下側に線材余剰分WRbを強制的に引き離す手段、例えば昇降可能な可動クランプや昇降可能な吸引チャック等を別途配置しておくと良い。
【0059】
(P5)ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されている切断済みの巻線形成済みワークWOが完成品搬出位置で停止すると、前記〈完成品搬出機構〉で説明したように、完成品搬出機構が動作してワーク保持凹部10aに保持されている切断済みの巻線形成済みワークWO(完成品)が搬出される。
【0060】
《巻線形成装置によって得られる効果》
前記巻線形成装置CFDによれば、主として下記E1〜E4の効果を得ることができる。
【0061】
(E1)前記巻線形成装置CFDは、複数のワーク保持凹部10aが等しい中心間隔で長さ方向に設けられたワーク保持ロッド10に移動(1回転及び前進)と停止の繰り返しを付与し、ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aがワーク搬入位置で停止する度にワーク搬入機構40を動作させてワーク保持凹部10aにワークWOを搬入して保持させ、ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されているワークWOが線材巻き付け位置で停止する度に線材巻き付け機構50を動作させてワークWOの柱部WObに線材WRが多重に巻き付けて巻線WWを形成できる。
【0062】
つまり、ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されている巻線形成済みワークWOの間に存する線材余剰分WRaを、ワーク保持ロッド10の上面以外の面に巻き付けるようにしてワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されているワークWOに順次巻線WWを形成できるので、隣り合うワーク保持凹部10aの中心間隔を小さくするほど線材余剰分WRb、所謂捨て線材の長さを短くすることができる。しかも、線材余剰分WRbに弛みが残存することがないため、巻線形成済みワークWOの巻線WWに緩みが生じることもない。
【0063】
(E2)前記ワーク保持ロッド10には、各ワーク保持凹部10aの底中心にワークWOを吸着する永久磁石10dが埋設されており、ワーク保持ロッド10が移動(1回転及び前進)と停止を繰り返しても、各ワーク保持凹部10aに保持されているワークWO又は巻線形成済みワークWOに脱落や位置ずれを生じることがないので、ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに搬入し保持されたワークWOに対する巻線WWの形成を良好に行うことができる。
【0064】
(E3)前記ワーク保持ロッド10の下面には、巻線形成済みワークWOの間に存する線材余剰分WRbの一部を受容する複数の線材受容溝10bが等しい中心間隔で長さ方向に設けられているので、線材受容溝10bが無い場合に比べて線材余剰分WRaの長さをより一層短くすることができる。
【0065】
(E4)前記ワーク保持ロッド10の長さは、単位数のワークWOを保持可能な長さとなっているため、完成品を搬出した後に再利用することができる。また、完成品搬出機構を動作させなければ、単位数の完成品が保持されたワーク保持ロッド10を電子部品製造の次工程場所に運搬することもできる。
【0066】
《巻線形成装置の構造変形例》
(M1)前記巻線形成装置CFDでは、
図2(A)〜
図2(C)に示した形状のワークWOを示したが、他形状のワークを用いても前記同様の効果を得ることができる。例えば、
図17(A)〜
図17(C)に示したように、横断面形が略正方形の上下2つの鍔部WOaと、2つの鍔部WOaの対向面中心に位置する横断面形が略円形の柱部WObを一体に有するワークWOを用いることができる。また、
図2(A)〜
図2(C)に示したワークWOと
図17(A)〜
図17(C)は示したワークWOの鍔部WOaの横断面形を略円形、略楕円形、又は角数が5以上の多角形としたワークも用いることができ、この場合にはワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aの上面視形状を各鍔部の挿入を許容する略円形、略楕円形、又は多角形とすると良い。
【0067】
(M2)前記巻線形成装置CFDでは、
図4(A)〜
図4(D)に示した形状のワーク保持ロッド10を示したが、他形状のワーク保持ロッドを用いても前記同様の効果を得ることができる。例えば、左右幅2をワークWOの鍔部WOaの左右幅W1と略同じか左右幅W1よりも僅かに大きくしたワーク保持ロッドを用いても良く、各ガイド溝10cを除外したワーク保持ロッドを用いても良く、各線材受領溝10bの縦断面形を略矩形又は略半円形としたワーク保持ロッドを用いても良く、各線材受領溝10bを除外したワーク保持ロッドを用いても良い。また、各線材受領溝10bを除外し、且つ、線材受領溝10bの深さ分だけ上下寸法を小さくしたワーク保持ロッドを用いても良く、各線材受領溝10bを下面から左右両面に及ぶ溝としたワーク保持ロッドを用いても良い。さらに、ワーク保持ロッドの縦断面形は必ずしも四角形である必要は無く、少なくとも複数のワーク保持凹部10aが等しい中心間隔で長さ方向に設けられていれば、縦断面形が略円形や略楕円形等のワーク保持ロッドを用いても良い。何れの場合もワーク保持ロッドの縦断面形に合わせて各ロッド挿通孔31a及び81aの縦断面形を変えれば、ワーク保持ロッドに移動(1回転及び前進)と停止の繰り返しを付与できる。
【0068】
加えて、前記巻線形成装置CFDでは、各ワーク保持凹部10aの底中心に永久磁石10dが埋設されたワーク保持ロッド10を示したが、永久磁石10dの代わりとなるエレメントとして、ワークWOの着脱が可能な粘着力を有する粘着シートを各ワーク保持凹部10aの底に設けて、ワーク保持凹部10aに搬入されたワークWOを粘着力によって保持するようにしても良い。
【0069】
(M3)前記巻線形成装置CFDでは、
図5(A)及び
図5(B)に示した構成を有するロッド送り機構30を示したが、ワーク保持ロッド10に移動(1回転及び前進)と停止の繰り返しを付与できるものであれば、他構成のロッド送り機構を用いても前記同様の効果を得ることができる。また、固定カム33のカム面33aの態様を左右逆にし、主レバー34と副レバー35の位置を左右逆にすれば、ワーク保持ロッド10を後から見て反時計回り方向に回転させながら前進させることもできる。
【0070】
(M4)前記巻線形成装置CFDでは、
図11に示した構成を有する線材巻き付け機構50を示したが、間欠搬送の停止時間を利用してワークWOに線材WRを巻き付けて巻線WWを形成できるものであれば、他構成の線材巻き付け機構を用いても前記同様の効果を得ることができる。また、ロータ56aを上から見て時計回り方向に回転させれば、線材WRをワークWOの柱部WObに同方向に多重に巻き付けることもできる。さらに、ワーク保持ロッド10のワーク保持凹部10aに保持されているワークWOに線材WRを巻き付けるときに該ワークWOに傾きや位置ずれを生じる恐れがある場合には、線材巻き付け位置におけるワーク保持ロッド10の下側に昇降可能な可動クランプを別途配置して、ワークWOが線材巻き付け位置で停止した直後に該ワークWOの左右側面を可動クランプによって把持して保持力補助を行うようにすると良い。
【0071】
(M5)前記巻線形成装置CFDでは、ヒータ61a及び62aを用いて線材接合部分WRaを形成する線材接合機構60を示したが、他構成の線材接合機構を用いても前記同様の効果を得ることができる。例えば、レーザビームを照射することによって同様の線材接合部分WRaを形成する機構や、ハンダ付けを行うことによって線材接合を行う機構で代用しても良い。
【0072】
(M6)前記巻線形成装置CFDでは、カッター71a及び72aを用いて線材接合部分WRaの下端を切断する線材切断機構70を示したが、線材WRを挟んで切断する可動ニッパーを有する機構や、レーザビームの照射によって切断を行う機構で代用しても良い。勿論、切断位置は、線材余剰分WRbを巻線WWから切り離すことができれば、線材接合部分WRaの下端に限らない。