特許第5732146号(P5732146)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5732146色校正装置、ならびに色校正およびフレキソ印刷方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732146
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】色校正装置、ならびに色校正およびフレキソ印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 5/20 20060101AFI20150521BHJP
   B41F 5/24 20060101ALI20150521BHJP
   B41F 33/14 20060101ALI20150521BHJP
   B41F 35/02 20060101ALI20150521BHJP
   B41F 31/02 20060101ALI20150521BHJP
   B41M 1/04 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   B41F5/20
   B41F5/24
   B41F33/14 G
   B41F35/02
   B41F31/02 C
   B41M1/04
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-554840(P2013-554840)
(86)(22)【出願日】2012年2月9日
(65)【公表番号】特表2014-509279(P2014-509279A)
(43)【公表日】2014年4月17日
(86)【国際出願番号】EP2012052168
(87)【国際公開番号】WO2012113649
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2013年8月23日
(31)【優先権主張番号】11155963.9
(32)【優先日】2011年2月25日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513213830
【氏名又は名称】ボブスト ビーレフェルト ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Bobst Bielefeld GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ホワイトロウ,ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ブルースダイリンス,ウォルフガング
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−113936(JP,A)
【文献】 特開2004−255626(JP,A)
【文献】 特開平09−123408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/20
B41F 5/24
B41F 31/02
B41F 33/14
B41F 35/02
B41M 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にインク収容用のキャビティパターンを有する陰刻ローラ(12)と、
前記陰刻ローラ(12)と共にニップを形成する背圧シリンダ(14)と、
前記陰刻ローラ(12)と背圧シリンダ(14)の外周面の動きに同期して、前記ニップの間を通るように被印刷物のシート(18)を提供するコンベヤ(16)と、
前記ニップを通過する前記シート(18)の色値を測定し、所定のフレキソ印刷機により印刷して得られる印刷物の色を予測するために、前記コンベヤ(16)に対して配置された光学センサ(30)とを備え
前記陰刻ローラ(12)のキャビティパターンが、前記フレキソ印刷機に設けられたアニロックスローラ(78)のスクリーンに対応する形状であることを特徴とする色校正装置。
【請求項2】
前記陰刻ローラ(12)は、外周面に、それぞれ異なる複数のスクリーン(26)を有し、
前記複数のスクリーンは、それぞれ異なるインク収容量を有するインク収容用のキャビティパターンからなり、
前記複数のスクリーンは、前記陰刻ローラの長手方向に沿って帯状に配列されており、
光学センサ(30)は、前記校正装置内の定位置に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の色校正装置。
【請求項3】
色校正装置内の定位置に取付けられた照明システム(32,34)を備え、
前記光学センサ(30)および前記照明システム(32,34)は、外部光から遮蔽されていることを特徴とする請求項2に記載の色校正装置。
【請求項4】
圧力源(70)に接続されることで、色校正装置を高気圧に保つ気密容器36を備えることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の色校正装置。
【請求項5】
前記背圧シリンダ(14)は、前記陰刻ローラ(12)を所定の力で付勢するように配置されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか記載の色校正装置。
【請求項6】
背圧シリンダ(14)の駆動系にワンウェイクラッチ(58)が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の色校正装置。
【請求項7】
前記コンベヤ(16)は、互いに平行に配列された一対の搬送ベルト(38)を備え、
前記一対の搬送ベルト(38)は、前記シート(18)の中央部が前記陰刻ローラ(12)と前記背圧ローラ(14)との間を通過する際に、前記シート(18)の両側縁を支持することを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の色校正装置。
【請求項8】
印刷前の用紙から、被印刷物となるシート(18)を所定の寸法で切断するために配置される切断システム(44,46,48)を備えることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の色校正装置。
【請求項9】
前記切断システム(44,46,48)の切断ダイ(46)の少なくとも一部分が、前記搬送ベルト(38)に固定され、前記シート(18)を保持するためのホルダとして構成されていることを特徴とする請求項7および8に記載の色校正装置。
【請求項10】
色校正装置を制御するために構成された制御ユニット(86)を備え、
前記制御ユニット(86)は、前記シート(18)の前縁が、前記背圧シリンダ(14)と前記陰刻ローラ(12)との間を通った後に、前記背圧シリンダ(14)を前記陰刻ローラ(12)に対する位置に配置し、前記シート(18)の後縁が通る前に、前記背圧シリンダを再度陰刻ローラ(12)から離すように、色校正装置を制御することを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の色校正装置。
【請求項11】
前記陰刻ローラ(12)の表面の洗浄を行うための位置に移動可能なように取り付けられたクリーニング装置(64)を備えることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の色校正装置。
【請求項12】
請求項1〜11の何れかに記載の色校正装置(10)を用いた色校正およびフレキソ印刷方法であって、
印刷に使用されるインクのサンプルを前記陰刻ローラ(12)にインキ着けするステップと、
印刷に用いられる被印刷物(82)としてのシート(18)を、前記陰刻ローラ(12)と前記背圧シリンダ(14)との間に形成されるニップの間に通過させ、これにより前記シート(18)上にインク層(28)を印刷するステップと、
前記インク層(28)の色値を測定するステップと、
フレキソ印刷工程を行った際に得られる印刷物の色を予測するために、測定された色値を使用するステップと、を備え、
前記フレキソ印刷工程は、色校正装置内の前記陰刻ローラ(12)のスクリーンに対応するスクリーンを有するアニロックスローラ(78)に前記インクを充填し、次いで、前記インクを印刷シリンダ(76)に転写し、前記印刷シリンダ(76)から前記被印刷物(82)に転写する工程であることを特徴とする色校正およびフレキソ印刷方法。
【請求項13】
前記陰刻ローラに設けられた、それぞれ異なる複数のスクリーン(26)を用いて、前記シート(18)に複数のインク層(28)を印刷し、前記インク層(28)について測定された色値の色空間座標(90)を、モニタ(88)に表示させることを特徴とする請求項12に記載の色校正およびフレキソ印刷方法。
【請求項14】
試験対象外のスクリーンに対応する補間色値、予測された色値、および/または目標色値に対応する色空間座標(92,96,98)を前記モニタ(88)に表示することを特徴とする請求項13に記載の色校正およびフレキソ印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色校正装置、ならびに色校正およびフレキソ印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷業界では、印刷実行前に印刷製品、すなわち印刷製品の特定領域の色値について、印刷の運転が開始される前に予測することが望まれており、これによれば、色誤差を検出し、検出した誤差を、例えば、印刷機の設定を調整すること、インクのレシピを変更すること、および/またはフレキソ印刷の場合において異なるスクリーンの陰刻ローラを選択することにより、除去することができる。
【0003】
これに対し、被印刷物のサンプル上にインク層を塗布するためのインキ着けローラを備えた手持ち式の色校正装置を使用し、次いで、被印刷物上のインク層の色を検査するという方法が知られている。
【0004】
他の公知の色校正方法としては、印刷機のミニチュア版として構成される色校正装置を用いてフレキソ印刷工程全体を模擬することを試みるものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、印刷工程、特にフレキソ印刷工程において得られる印刷物の色の予測精度を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、外周面にインク収容用のキャビティパターンを有する陰刻ローラと、陰刻ローラと共にニップを形成する背圧シリンダと、前記陰刻ローラと背圧シリンダの外周面の動きに同期して、前記ニップの間を通るように被印刷物のシートを提供することに適応したコンベヤと、前記ニップを通過する前記シートの色値を測定し、所定のフレキソ印刷機により印刷して得られる印刷物の色を予測するために、前記コンベヤに対して配置された光学センサとを備え、前記陰刻ローラのキャビティパターンが、前記フレキソ印刷機に設けられたアニロックスローラのスクリーンに対応する形状である色校正装置を提案する。
【0007】
この色校正装置は、色校正を行う際の色の生成おいて高い再現性を確保できるだけでなく、色値の測定における高い再現性も確保することができる。これは、光学センサが色校正装置に内蔵され前記コンベヤに配置されており、色測定は常に同じ条件か、または少なくとも比較可能な条件の下で行われるためである。
【0008】
本発明に係る色校正およびフレキソ印刷方法は上記の色校正装置を使用するものであり、印刷に使用されるインクのサンプルを陰刻ローラにインキ着けするステップと、印刷に用いられる被印刷物としてのシートを、前記陰刻ローラと前記背圧シリンダとの間に形成されるニップの間に通過させ、これにより前記シート上にインク層を印刷するステップと、前記インク層の色値を測定するステップと、フレキソ印刷工程を行った際に得られる印刷物の色を予測するために、測定された色値を使用するステップと、を備え、前記フレキソ印刷工程は、色校正装置内の前記陰刻ローラのスクリーンに対応するスクリーンを有するアニロックスローラに前記インクを充填し、次いで、前記インクを印刷シリンダに転写し、前記印刷シリンダから前記被印刷物に転写する方法である。
【発明の効果】
【0009】
したがって、本発明によれば、色校正方法は、実際のフレキソ印刷工程よりは、むしろ輪転グラビア印刷工程をシミュレートすることとなる。これにより、色校正の色に影響を与えるパラメータおよび条件の数の変化を低減または排除することができるため、色校正工程の再現性が大幅に改善されるという利点を有する。なお、フレキソ印刷工程では、印刷物の色は、陰刻ローラの印刷シリンダに対して設定された圧力と、印刷シリンダが被印刷物と背圧シリンダに押し付けられている圧力によって影響される。これに対し、本発明に係る色校正の工程では、これら二つの変動値が、単一のパラメータ、すなわち、被印刷物および背圧シリンダに対して陰刻ローラに設定される圧力に置換される。さらに、色校正工程においては、輪転印刷機における実際のフレキソ印刷工程よりもはるかに遅いことから、色校正の色は、インクが被印刷物の上に付着するより前に乾いてしまう時間の長さによって大きく影響されてしまう。したがって、本発明における、陰刻ローラから被印刷物へインクが直接転写され、印刷シリンダの外周面上のインクの乾燥時間の影響を排除することができるというという点は、注目すべき利点である。
【0010】
一方、手持ち式の装置による色校正と比較すると、本発明は、例えば、陰刻ローラから被印刷物に加わる圧力のような変動値が、色校正装置の構成や設定により決定されるという利点を有することから、手持ち式の装置により得られる結果よりも、再現性が高い。
【0011】
もちろん、上記方法で得られる測定色値は、実際のフレキソ印刷工程における印刷シリンダの影響を反映することができない。しかし、これらの影響は、経験的に決定でき、および/または数学的モデルによって説明することができるものであるため、校正刷りによるインク層について測定された色値に、このようなモデルを適用させれば、実際の被印刷物上で得られる色値を予測することが可能となる。
【0012】
色校正のために再現性の高い手順を用い、色を測定し、得られた色値を用いて印刷物の色を予測することで、予測精度を大幅に向上させることができる。
【0013】
本発明において、さらに具体的に選択可能な構成としては、従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明に係る方法では、陰刻ローラに備えられた複数のスクリーンを、被印刷物上の複数のインク層を印刷するために用いることで、測定された色値が、陰刻ローラの各スクリーンに対応して得られる。そして、最良の結果が得られた陰刻ローラのスクリーンを、実際の印刷工程に用いるものとして選択することができる。
【0015】
また、種々のスクリーンについて得られた複数の色値に基づいて、実際にテストされていないスクリーンの色値を補間することができる。
【0016】
本発明に係る色校正装置は、その外周面上に複数の異なるスクリーンを有する陰刻ローラによって構成することができる。そして、このような複数の異なるスクリーンは、それぞれ得られる複数のインク層が、陰刻ローラが一回転する間に被印刷物上に印刷されるように、陰刻ローラの長手方向に沿って帯状に配列されていることが好ましい。ここで得られるインク層は、シートがコンベヤにより移動する際に光センサを通過するため、校正装置に固定されて装着される光センサを使用することが可能であり、様々なインク層の色値を順次測定することができる。これは、色校正装置の構成を簡素化するだけでなく、色の測定が、常に同じ照明条件の下で行われるようにするができる。好ましくは、照明システムが、装置に固定して取り付けられ、色センサおよび照明システムが、外部光から遮蔽される。
【0017】
本実施形態においては、好ましくは、色校正装置は、インク層をシート上に形成する間に高気圧を維持することができる気密容器内に収容される。このように高気圧とすることで、陰刻ローラ表面のインクの乾燥を遅らせることとなるため、これにより、校正装置の陰刻ローラ表面のインクの滞留時間が、高速印刷機におけるアニロックスローラ(および印刷シリンダ)表面のインクの滞留時間と比較して長くなってしまうという影響を、少なくとも部分的に補うことができる。
【0018】
校正装置の背圧シリンダは、ゴム弾性表面層を有することができ、被印刷物の厚さに拘わらず、背圧シリンダと陰刻ローラの間のニップの線圧を常に同じにするため、陰刻ローラに対して所定の力で配置することができる。あるいは、背圧シリンダは、陰刻ローラに対する定位置に固定してもよい。
【0019】
陰刻ローラと背圧シリンダの周速差に起因して、陰刻ローラと被印刷物との間の滑りが発生して色値が変化してしまうため、これを回避するため、背圧シリンダは、陰刻ローラの周速と同一ではないが似たような周速で駆動させ、背圧シリンダの速度を被印刷物のシートが通過する際の陰刻ローラの速度に対して、容易に調整することができるように、背圧シリンダの駆動系にワンウェイクラッチを設けることが好ましい。そのため、背圧シリンダは、できるだけ小さな慣性モーメントを有するべきであり、例えば、背圧シリンダは、強化繊維炭素で形成することができる。
【0020】
また、色校正装置は、用紙から被印刷物を所定の寸法で切断、または打ち抜くために配置される切断システムをさらに含むことができる。これはオペレータにとって便利なだけではなく、ニップの線圧が常に同じになるように、被印刷物シートを常に同じ寸法、特に陰刻ローラの軸方向と同じ寸法とすることができるものである。
【0021】
本実施形態においては、好ましくは、ニップの間にシートを搬送するためのコンベヤには、互いに平行に配列された一対の搬送ベルトが備えられ、これにより、シート中央部が陰刻ローラと背圧シリンダとの間を通過する際に、シート両側の横縁部を支持することができる。そして、搬送ベルトには、シートを打ち抜くための切断ダイの少なくとも一部を固定することができ、これにより、シートが校正装置を通じて供給される際に、シートを保持するための支持部材として構成することができる。したがって、例えば手動により一旦シートが打ち抜かれると、色値の測定を含む他の校正プロセスを、オペレータによる介入を伴わずに、自動的に実行させることができる。
【0022】
この工程においては、背圧シリンダを、シートの前縁部が通過した後のみ、陰刻ローラに対してセットされるようにし、そして、シートの後縁部が通過する前に、陰刻ローラから再度離れるように制御することができる。したがって、背圧シリンダは被印刷物シートだけに接触し、陰刻ローラのインク搬送周面には接触しない。これにより、各校正プロセスの後に、背圧シリンダをクリーニングする必要性を回避することができる。
【0023】
色校正装置において、各校正操作後に洗浄する必要がある唯一の部材は、陰刻ローラである。これに対して、背圧シリンダおよびクリーニングユニットを、共通の搬送キャリッジに搭載することにより、色校正処理が完了した際に、陰刻ローラの表面が自動的に洗浄装置で洗浄することができるような位置に移動し、陰刻ローラを洗浄することができる。
【0024】
本実施形態について、図面を用いて以下において説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明に係る色校正装置の概略断面図である。
図2図2は、図1に示す装置の主要部を示す平面図である。
図3図3は、フレキソ印刷工程を示す概略図である。
図4図4は、色校正装置に接続され、色校正装置および印刷物の色値を予測するようにプログラムされている処理装置のモニタ画面に表示される画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1に示すように、色校正装置10は、陰刻ローラ12、背圧シリンダ14、およびコンベヤ16を含むものである。コンベヤ16は、陰刻ローラ12と背圧シリンダ14との間に形成されるニップを通る被印刷物のシート18を供給するものである。
【0027】
陰刻ローラ12の周辺には、陰刻ローラ12の表面にインク着けするためのインキ溜20が配置されている。インキ溜20には、ピペット22により計量されたインクを充填することができる。インキ溜20は、内部のインクの温度および/または粘度を測定するためのプローブ24をさらに含む。
【0028】
本技術分野で一般的に知られているように、陰刻ローラ12の表面は、微細な溝のパターンが形成されおり、インキ溜20を通過する際にインクが充填される。図2に示すように、陰刻ローラ12の周面は、このような溝のパターンにより形成された複数のスクリーン26を担持する。スクリーン26は陰刻ローラの軸方向に延び、陰刻ローラの周方向に等間隔に分布している。溝の容積、すなわちスクリーンのインク搬送容量(面積あたりのインク量)は、スクリーンごとに異なる。
【0029】
シート18が陰刻ローラ12と背圧シリンダ14の間のニップを通じて供給された場合、図2に示すように、各スクリーン26は、被印刷物上にインク層28を印刷する。これらのインク層の色(図2の符号1−7)は、スクリーン26のインク収容容量の違いにより、互いに異なるものとなる。ここで、例えば、色を検知するための光学センサ30(たとえば、分光計)は、シート18が通過する際に連続的に各インク層28の色を測定するために、コンベヤ16上方の固定位置に取り付けられている。センサ30によって測定された色は、CIE XYZまたはCIEL*a*b*のように適切な色座標の色値により表現される。
【0030】
図1に示すように、センサ30はコンベヤ16上のシートを照らす照明システムの光源32と組み合わされる。他の光源である光源34は、透明または半透明のシートが下方から照らすことができるように、シートの搬送経路の下方に取り付けられている。色校正装置10全体は、気密容器36内に収容されており、センサ30と光源32、34は、この容器内の固定位置に取り付けられており、これにより、常に同じ照明条件下で、シート18上のインク層28の測定が行われることとなる。
【0031】
コンベヤ16は、一対の環状の搬送ベルト38を有し、これらの搬送ベルト38が、陰刻ローラ12の軸方向に互いに離間し、ガイドローラ40とテンションローラ42の周りを通る。
【0032】
下方切断ダイ(図2)の固定部44は、コンベヤの上流側の搬送ベルト38間のスペースに取り付けられている。また、下方切断ダイは、一対の可動部46を備え、一対の可動部46は、それぞれが搬送ベルト38の一方に固定または組み込まれている。そして、下方切断ダイは、固定部44および可動部46が組合わさって、大きな用紙から長方形のシート18を切り出すための、長方形の切断ダイとして形成される。また、下方切断ダイに対応する上方切断ダイ48(図1)がコンベヤ16の上方において回転可能なように取り付けられている。
【0033】
下方切断ダイおよび上方切断ダイにより形成される切断機構は、気密容器36の頂部壁の蓋部50を開くことにより、オペレータがアクセスすることができる。したがって、被印刷物の用紙は、搬送ベルト38と下方切断ダイの上に配置することができ、そして上方切断ダイ48を一時的に閉じることにより長方形のシート18を打ち抜くことができる。その後、上方切断ダイが再度持ち上げられ、切断されたシート18が固定部44および可動部46上に残り、用紙の残余外側部分が取り除かれる。下方切断ダイの可動部46は、シート18の両側周縁領域を保持するシートホルダとして構成される。例えば、下側切断ダイの可動部46は、シート18の周縁領域を引き寄せる吸引送風機と吸引ノズル(図示せず)を備えてもよく、これにより搬送ベルト38上にシートを固定する。
【0034】
陰刻ローラ12の両側では、搬送ベルト38の上方に環状の案内ベルト52が配置されている。これらの各案内ベルト52の下方延伸部は、シート18が供給される場合に、シートの周縁領域が搬送ベルト上に安全に保持されるために、搬送ベルト38の直上に水平に延びる。これにより、シートが陰刻ローラ12のインク着けされた周面にシートが付着するのを防止することができる。
【0035】
駆動モータ54および駆動ギア(図1では概略的にのみ示す)は、陰刻ローラ12と案内ベルト52とを同期して駆動するために設けられている。別の駆動モータ56は、コンベヤ16のために設けられている。駆動モータ54および56の速度は、シート18が搬送ベルト38上を搬送される速度と、陰刻ローラ12の周速度とが確実に同じ速度となるように電子的に同期されている。
【0036】
また、背圧シリンダ14は、駆動モータ54によって駆動され、ワンウェイクラッチ58を含む駆動系に連動している。ワンウェイクラッチ58は、駆動モータ54により課せられる速度よりも早い速度で背圧シリンダを回転させることができる。背圧シリンダ14の軸は、搬送キャリッジ62上に取り付けられた設定機構60により支持され、陰刻ローラ12に対して相対的に背圧シリンダ14を昇降させるようになっている。詳細には図示されていないが、設定機構60は、陰刻ローラ12と、通過するシート18とを接触させるために背圧シリンダ14を持ち上げるように配置され、陰刻ローラ12に対して背圧シリンダ14を所定の力で付勢する空気圧シリンダや偏心器等を含んでもよい。シート18は、所定の幅に切断されていることから、シート18に加わる力は、シートの厚さとは無関係に一定となるように予め設定された線圧に変換される。さらに、背圧シリンダ14は、ゴム弾性表面層を有していてもよい。背圧シリンダ14の本体は、背圧シリンダ14が軽量で低慣性モーメントを有するように、繊維強化炭素によって形成されることが好ましい。
【0037】
搬送キャリッジ62は、シート18の搬送方向に平行に水平方向に往復移動可能であり、また、陰刻ローラ12のためのクリーニング装置64を搬送する。図1の右側方向に搬送キャリッジ62を移動させることで、陰刻ローラ12を洗浄する自動洗浄工程を実行するために、クリーニング装置64は背圧シリンダの場所へ移動可能であり、また陰刻ローラ12の下側最深接触点に移動可能である。
【0038】
気密容器36の頂壁は、ピペット22へのアクセスを行うための他の蓋部66またはコネクタを有し、さらに、センサ30へのアクセスを行う他の蓋部68も有している。そのため、センサ30は、選択的に別のタイプの光センサ、例えばフレキソ印刷で使用される色センサに交換可能となっており、得られる測定結果について互いに直接比較することができるようになっている。
【0039】
気密容器36の全ての蓋部50、66および68が閉じられた場合、容器の内部は気密に封止される。圧縮機70(あるいは他の圧縮空気の供給源)と、通気弁72とは、容器内部の空気圧縮および排気の設定を行うことができるように、気密容器36に接続されている。
【0040】
上述した色校正装置10により、次のようにして、色校正サイクルを実行することができる。
【0041】
なお、校正プロセスは図3に概略的に示されているフレキソ印刷機を用いて得られる印刷物の色を予測することを目的とするものとする。印刷機は、中央圧胴74と中央圧胴74の周囲に配置された多数の色デッキを有している。図3では、一つの色デッキのみが示されている。この色デッキは、印刷シリンダ76、アニロックスローラ78、およびチャンバードクターブレード80を備える。被印刷物82の巻取紙は、印刷シリンダ76に形成されるニップを通過するように、中央圧胴74の周囲に搬送される。アニロックスローラ78は、陰刻ローラ12と同じ表面素材を有しており、校正装置内部の陰刻ローラ12のスクリーン26の一つと同一か、または少なくとも類似するスクリーンを形成する微細なパターンのインク受の溝を有する。印刷機のアニロックスローラ78の溝には、チャンバードクターブレード80からインクが充填される。アニロックスローラ78は、印刷シリンダ76上にインクが搬送されるように、印刷シリンダ76の周面に対してセットされ回転する。印刷シリンダ76は、印刷シリンダ76上に装着された印刷プレートの凸版部が、被印刷物82上にインクを搬送し、そして画像が印刷されるように、被印刷部に対して回転し押圧する。上述した色校正装置10は、このように印刷される画像の色を予測するために用いられる。
【0042】
校正サイクルを開始するために、気密容器36内における高気圧となった空気を解放するように、通気弁72が開放される。オペレータは蓋部50を開け、搬送コンベア16上に、より詳細には、下方切断ダイの固定部44および可動部46に、被印刷物82と同じ材料である巻取材料の用紙を配置する。上方切断ダイ48は、用紙からシート18を切り出すために、下方切断ダイに回転可能に取り付けられ、下方に押圧される。そして、上方切断ダイ48が再び開き、用紙の残余部分が除去されて、蓋部50が再び閉じられる。
【0043】
ピペット22を使用して、チャンバードクターブレード80で使用するインクと同じ組成を有するインクのサンプルがインキ溜20内に充填される。その後、気密容器36が気密に封止され、オペレータは、校正装置10に接続された電子制御ユニット86のスタートボタン84(図4)を押すことにより、後述するさらなる制御を行う。
【0044】
通気弁72は閉じられ、陰刻ローラ12上のインクの蒸発が、印刷機(図3)による通常動作時(校正装置10における「印刷」速度よりも早い印刷速度の動作時)におけるアニロックスローラ78および印刷シリンダ76上のインクの蒸発減に相当する量に減少されるまで、気密容器36内の空気圧を上昇させるように、コンプレッサ70が動作する。
【0045】
下側切断ダイの可動部46の吸引送風機(図示せず)は、切断されたシート18の周縁領域を吸引して可動部46上、すなわち搬送ベルト38上にシートを保持するために動作する。駆動モータ54および56は、搬送コンベヤ16および案内ベルト52と同様に、陰刻ローラ12を駆動するために始動する。搬送ベルト38、およびこの上に固定されている可動部46は、シート18を陰刻ローラ12に向かって搬送する。この際においては、まだ、背圧シリンダ14は、陰刻ローラ12にもシート18にも接触しない下方位置に保持されている。その間、陰刻ローラ12上のスクリーン26は、インキ溜20からインクを吸い上げ、そして陰刻ローラ12が回転するにしたがって、このインクは陰刻ローラ12の周囲に沿って運ばれる。なお、この段階では、増加した気圧によって、インクの蒸発が抑制される。インクの温度と粘度は、プローブで計測され電子制御ユニット86内に記録される。
【0046】
シート18の前縁が陰刻ローラ12と背圧シリンダ14の間を通過する際に、設定機構60が起動し背圧シリンダ14を持ち上げて、シート18に対して所定の線圧で押圧する。駆動モータ54は、陰刻ローラ12の周速よりも僅かに遅い速度で、背圧シリンダ14を駆動させる。そして、背圧シリンダ14が、シート18と摩擦接触した直後に、背圧シリンダ14のゴム弾性層の圧縮量に拘わりなく、陰刻ローラ12とシート18との間に滑りが生じないように、ワンウェイクラッチ58が、正確に陰刻ローラ12の周速と同一になるまで背圧シリンダ14を加速させる。この際においては、背圧シリンダ14の慣性モーメントが低いおかげで、この速度調整は非常に短時間で行われる。
【0047】
その後、インキ溜20内でインキ着けされたスクリーン26は、続いて陰刻ローラ12と背圧シリンダ14との間のニップに到達し、インキ溜による複写方式によって、インクがシート18上に転写されることで、インク層28が形成される。
【0048】
シート18の後縁がニップに到達するよりも前に、背圧シリンダ14がインクで汚れることを防止するべく、背圧シリンダ14は再度下降し、シート18および陰刻ローラ12と接触しないようにするために離れる。
【0049】
一方、案内ベルト52は、シート18が搬送ベルト38上に滞在することで、陰刻ローラ12の周面に付着してしまうことを防止するべく、シート18を付勢する。
【0050】
そして、気密容器36内の高気圧の空気を開放するために、通気弁72が開かれる。
【0051】
シート18が、センサ30の位置に到達すると、照明システムが起動し、シートが固定センサ30の下方を通過する際にインク層28の色が測定され、記録される。この測定された色値は、後の処理のために電子制御ユニット86に送信される。
【0052】
その後、シート18をコンベア上に保持したまま、下方切断線の可動部46を、図1に示す位置に戻すために、コンベヤ16の搬送方向が反転される。そして、シートが陰刻ローラ12と背圧シリンダ14の間のギャップを通過したとき、クリーニング装置64が作動位置に運ばれて陰刻ローラ12の周面を洗浄するために、搬送キャリッジ62は図1の右方に移動する。図2示すように、搬送ベルト38は、陰刻ローラ12の軸端部外側を通過するものであるため、インクで染色されることはない。
【0053】
最終的には、蓋部50を開けてシート18を取り出すことができ、これにより、次の校正サイクルを開始することができる。
【0054】
透明被印刷物の裏面を印刷するために校正が必要となる場合(実際の印刷プロセスにおいては裏側になる)には、透明シートを介してセンサ30によりインク層の色を測定するべく、上面側に形成されたインク層28を有するシート18を取り出して、手動で逆にしてもよい。
【0055】
センサ30により測定された各インク層28の色値は、電子制御ユニット86で処理され、制御ユニットに備えられたタッチスクリーンなどのモニタ88上に表示される。
【0056】
本技術分野で一般的に知られているように、色値は、例えば、L*a*b*色空間のように、三次元色空間で表現される。オペレータによって選択されるこの色空間の三次元斜視図および/またはこの色空間の二次元スライスを表示するために、モニタ88を使用できる。図4に示す例では、モニタ88が、L値が固定されたa−b−面のスライスを表示する。各スクリーン1から7の測定された色値は、ドット90で表示され、対応するスクリーン番号(1―7)が表示される。図4に示す例では、実際には測定が行われていないスクリーンであっても、インク収容容量が、すでに測定が行われた複数のスクリーン26における量の間の値であるスクリーンについては、色値が、電子制御ユニット86により補間され、対応するドット92が追加されることで表示される。
【0057】
インク層28が形成された校正プロセスは、印刷シリンダ76を含む印刷機の実際のフレキソ印刷プロセス(図3)とは正確に同一ではない。しかし、印刷機においては発生するが、校正工程ではシミュレートすることができない印刷シリンダ76の影響や、その他の影響は、経験的データおよび/または数学的モデルに基づいて電子制御ユニット86で算出され、図4の矢印94よって記号化されて表され、ドット90、92が、それぞれ、その計算の結果に対応したドット96上にマッピングされる。このため、各ドット96は、印刷された製品の色を表すこととなる。すなわち、各ドット96は、ドット96の算出が行われたスクリーン(実際に色値が測定されたスクリーン、または色値が補間されたスクリーン)に対応したアニロックスローラ78のスクリーンによる予測により、被印刷物82上の印刷画像を表すこととなる。
【0058】
図4のドット98は、所望の画像領域について指定されている目標色を表す。このため、ドット96の位置に対するドット98の配列を比較することにより、可能な限り目標色(ドット98)を近似させるのに最適なスクリーン(すなわち、アニロックスローラ78)を選択することが可能である。
【0059】
例示ではドット96のいずれも、ターゲットカラーを表すドット98とは一致しない。このことは、目標色に近づけるために、インクの配合を変更する必要があることを意味する。この際においては、どのように配合を変更するべきか(例えば、現在のインクに顔料を添加する)は、当技術分野で知られているアルゴリズムを使用してもよい。この際における、アルゴリズムは、色空間座標で指定された方向に色値をシフトさせるためにどのように配合を変更しなければならないかを計算するものである。図4のドット100は、実際に修正されたインク組成物を用いて到達できる色値を示す。
【0060】
上記の計算では、プローブ24により得られた測定結果に基づいて、インクの粘度と温度の影響についても考慮することができ、印刷機のインク温度およびインク粘度に対応する目標値が与えられてもよく、またドット96により表される予測色値も、印刷機における実際のインク粘度および/またはインク温度を考慮して修正することができる。
図1
図2
図3
図4