(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る固体酸化物形燃料電池(SOFC)の構造体を示す。このSOFCは、長手方向(x軸方向)を有する平板状の支持基板10の上下面(互いに平行な両側の主面(平面))のそれぞれに、電気的に直列に接続された複数(本例では、4つ)の同形の発電素子部Aが長手方向において所定の間隔をおいて配置された、所謂「横縞型」と呼ばれる構成を有する。
【0017】
このSOFCの全体を上方からみた形状は、例えば、長手方向の辺の長さが50〜500mmで長手方向に直交する幅方向(y軸方向)の長さが10〜100mmの長方形である。このSOFCの全体の厚さは、1〜5mmである。このSOFCの全体は、厚さ方向の中心を通り且つ支持基板10の主面に平行な面に対して上下対称の形状を有する。以下、
図1に加えて、このSOFCの
図1に示す2−2線に対応する部分断面図である
図2を参照しながら、このSOFCの詳細について説明する。
図2は、代表的な1組の隣り合う発電素子部A,Aのそれぞれの構成(の一部)、並びに、発電素子部A,A間の構成を示す部分断面図である。その他の組の隣り合う発電素子部A,A間の構成も、
図2に示す構成と同様である。
【0018】
支持基板10は、電子伝導性を有さない多孔質の材料からなる平板状の焼成体である。後述する
図6に示すように、支持基板10の内部には、長手方向に延びる複数(本例では、6本)の燃料ガス流路11(貫通孔)が幅方向において所定の間隔をおいて形成されている。本例では、支持基板10の上下面における複数の発電素子部Aに対応する位置に、凹部12がそれぞれ形成されている。各凹部12は、支持基板10の材料からなる底壁と、全周に亘って支持基板10の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。各凹部12の長さ(x軸方向の寸法)は5〜50mmであり、幅(y軸方向の寸法)は2〜95mmであり、深さ(z軸方向の寸法)は0.03〜1.5mmである。
【0019】
支持基板10は、MgO(酸化マグネシウム)と、第1酸化物セラミックスと、を含んで構成される。なお、支持基板10が第1酸化物セラミックスを含んでいるのは、MgO単独の熱膨張係数(約14ppm/K)が、通常の電極材料の熱膨張係数(10〜13ppm/K)と比べて大きいことに起因して、支持基板10の等価熱膨張係数を通常の電極材料の熱膨張係数に近づけるため、である。従って、第1酸化物セラミックスとしては、熱膨張係数が通常の電極材料の熱膨張係数(10〜13ppm/K)と比べて小さいものが好適である。具体的には、「第1酸化物セラミックス」としては、Y
2O
3(イットリア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等が好適である。支持基板10は、「遷移金属酸化物又は遷移金属」を含んでいてもよい。「遷移金属酸化物又は遷移金属」としては、NiO(酸化ニッケル)又はNi(ニッケル)が好適である。遷移金属は、燃料ガスの改質反応を促す触媒(炭化水素系のガスの改質触媒)として機能し得る。
【0020】
このように、支持基板10が「遷移金属酸化物又は遷移金属」を含むことによって、改質前の残存ガス成分を含んだガスが多孔質の支持基板10の内部の多数の気孔を介して燃料ガス流路11から燃料極に供給される過程において、上記触媒作用によって改質前の残存ガス成分の改質を促すことができる。加えて、支持基板10が絶縁性の酸化物セラミックスを含むことによって、支持基板10の絶縁性を確保することができる。この結果、隣り合う燃料極間における絶縁性が確保され得る。
【0021】
支持基板10の厚さは、1〜5mmである。支持基板10全体の気孔率は15〜55%である。なお、気孔率の値は、後述する還元処理後の値である(他の気孔率の値についても同様)。なお、気孔率の測定は,樹脂埋めしたサンプル(還元処理後)の断面を研磨し、同断面についてのSEM(走査型電子顕微鏡)による画像(2次電子像)を解析することによって行われた。具体的には、「断面の総面積」に対する「断面上にて樹脂埋めされた領域に対応する部分の面積の総和」の割合が、その断面の「気孔率」であると定義された。SEMの加速電圧は5kV、SEMの倍率は5000倍、又は7500倍に設定された。気孔率の測定は、サンプルの任意の10箇所の断面について行われ、それらの平均値が気孔率の値として採用された。
【0022】
以下、この構造体の形状が上下対称となっていることを考慮し、説明の簡便化のため、支持基板10の上面側の構成についてのみ説明していく。支持基板10の下面側の構成についても同様である。
【0023】
図2及び
図3に示すように、支持基板10の上面(上側の主面)に形成された各凹部12には、燃料極集電部21の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極集電部21は直方体状を呈している。
【0024】
各燃料極集電部21の上面(外側面)には、凹部21aが形成されている。各凹部21aは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
【0025】
各凹部21aには、燃料極活性部22の全体が埋設(充填)されている。従って、各燃料極活性部22は直方体状を呈している。燃料極集電部21と燃料極活性部22とにより燃料極20が構成される。燃料極20(燃料極集電部21+燃料極活性部22)は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。各燃料極活性部22の4つの側面と底面とは、凹部21a内で燃料極集電部21と接触している。
【0026】
各燃料極集電部21の上面(外側面)における凹部21aを除いた部分には、凹部21bが形成されている。各凹部21bは、燃料極集電部21の材料からなる底壁と、全周に亘って燃料極集電部21の材料からなる周方向に閉じた側壁(長手方向に沿う2つの側壁と、幅方向に沿う2つの側壁)と、で画定された直方体状の窪みである。
【0027】
各凹部21bには、インターコネクタ30が埋設(充填)されている。従って、各インターコネクタ30は直方体状を呈している。インターコネクタ30は、電子伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。各インターコネクタ30の4つの側面と底面とは、凹部21b内で燃料極集電部21と接触している。
【0028】
燃料極20(燃料極集電部21及び燃料極活性部22)の上面(外側面)と、インターコネクタ30の上面(外側面)と、支持基板10の主面とにより、1つの平面(凹部12が形成されていない場合の支持基板10の主面と同じ平面)が構成されている。即ち、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で、段差が形成されていない。
【0029】
燃料極集電部21は、NiO(酸化ニッケル)と、第2酸化物セラミックスと、を含んで構成される。なお、燃料極集電部21が第2酸化物セラミックスを含んでいるのは、NiO単独の熱膨張係数(約14ppm/K)が、通常の電極材料の熱膨張係数(10〜13ppm/K)と比べて大きいことに起因して、燃料極集電部21の等価熱膨張係数を通常の電極材料の熱膨張係数に近づけるため、である。従って、第2酸化物セラミックスとしては、熱膨張係数が通常の電極材料の熱膨張係数(10〜13ppm/K)と比べて小さいものが好適である。具体的には、「第2酸化物セラミックス」としては、Y
2O
3(イットリア)、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、CSZ(カルシア安定化ジルコニア)等が好適である。燃料極集電部21の厚さ(即ち、凹部12の深さ)は、50〜500μmである。燃料極集電部21の気孔率は15〜55%である。
【0030】
燃料極活性部22は、電子伝導性を有する物質と、酸素イオン伝導性を有する物質と、を含んで構成される。「電子伝導性を有する物質」としては、NiO(酸化ニッケル)が好適である。「酸素イオン伝導性を有する物質」としては、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)等が好適である。燃料極活性部22の厚さは、5〜30μmである。燃料極活性部22の気孔率は15〜55%である。
【0031】
なお、燃料極集電部21内、並びに、燃料極活性部22内のNiOは、後述する還元処理によってNiに変化して、電子伝導性を獲得する。燃料極活性部22における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」は、燃料極集電部21における「気孔部分を除いた全体積に対する酸素イオン伝導性を有する物質の体積割合」よりも大きい。
【0032】
インターコネクタ30は、例えば、LaCrO
3(ランタンクロマイト)から構成され得る。或いは、(Sr,La)TiO
3(ストロンチウムチタネート)から構成されてもよい。インターコネクタ30の厚さは、10〜100μmである。
【0033】
燃料極20及びインターコネクタ30がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタ30が形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面は、固体電解質膜40により覆われている。固体電解質膜40は、イオン伝導性を有する緻密な材料からなる焼成体である。固体電解質膜40は、例えば、YSZ(8YSZ)(イットリア安定化ジルコニア)から構成され得る。或いは、LSGM(ランタンガレート)から構成されてもよい。固体電解質膜40の厚さは、3〜50μmである。
【0034】
即ち、燃料極20がそれぞれの凹部12に埋設された状態の支持基板10における長手方向に延びる外周面の全面は、インターコネクタ30と固体電解質膜40とからなる緻密層により覆われている。この緻密層は、緻密層の内側の空間を流れる燃料ガスと緻密層の外側の空間を流れる空気との混合を防止するガスシール機能を発揮する。なお、本願において「緻密」とは、「ガスが通過しない程度に高密度であること」を指し、具体的には、「気孔率が10%以下であること」を指す。
【0035】
なお、
図2に示すように、本例では、固体電解質膜40が、燃料極20の上面、インターコネクタ30の上面における長手方向の両側端部、及び支持基板10の主面を覆っている。ここで、上述したように、燃料極20の上面とインターコネクタ30の上面と支持基板10の主面との間で段差が形成されていない。従って、固体電解質膜40が平坦化されている。この結果、固体電解質膜40に段差が形成される場合に比して、応力集中に起因する固体電解質膜40でのクラックの発生が抑制され得、固体電解質膜40が有するガスシール機能の低下が抑制され得る。
【0036】
固体電解質膜40における各燃料極活性部22と接している箇所の上面には、反応防止膜50を介して空気極60が形成されている。反応防止膜50は、緻密な材料からなる焼成体であり、空気極60は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。反応防止膜50及び空気極60を上方からみた形状は、燃料極活性部22と略同一の長方形である。
【0037】
反応防止膜50は、例えば、GDC=(Ce,Gd)O
2(ガドリニウムドープセリア)から構成され得る。反応防止膜50の厚さは、3〜50μmである。空気極60は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSF=(La,Sr)FeO
3(ランタンストロンチウムフェライト)、LNF=La(Ni,Fe)O
3(ランタンニッケルフェライト)、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)等から構成されてもよい。また、空気極60は、LSCFからなる第1層(内側層)とLSCからなる第2層(外側層)との2層によって構成されてもよい。空気極60の厚さは、10〜100μmである。
【0038】
なお、反応防止膜50が介装されるのは、SOFC作製時又は作動中のSOFC内において固体電解質膜40内のYSZと空気極60内のSrとが反応して固体電解質膜40と空気極60との境界部分に電気抵抗が大きい反応層が形成される現象の発生を抑制するためである。
【0039】
ここで、燃料極20と、固体電解質膜40と、反応防止膜50と、空気極60とが積層されてなる積層体が、「発電素子部A」に対応する(
図2を参照)。即ち、支持基板10の上面には、複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが、長手方向において所定の間隔をおいて配置されている。
【0040】
各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(
図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(
図2では、右側の)発電素子部Aのインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極60、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の上面に、空気極集電膜70が形成されている。空気極集電膜70は、電子伝導性を有する多孔質の材料からなる焼成体である。空気極集電膜70を上方からみた形状は、長方形である。
【0041】
空気極集電膜70は、例えば、LSCF=(La,Sr)(Co,Fe)O
3(ランタンストロンチウムコバルトフェライト)から構成され得る。或いは、LSC=(La,Sr)CoO
3(ランタンストロンチウムコバルタイト)から構成されてもよい。或いは、Ag(銀)、Ag−Pd(銀パラジウム合金)から構成されてもよい。空気極集電膜70の厚さは、50〜500μmである。
【0042】
このように各空気極集電膜70が形成されることにより、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、一方の(
図2では、左側の)発電素子部Aの空気極60と、他方の(
図2では、右側の)発電素子部Aの燃料極20(特に、燃料極集電部21)とが、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」を介して電気的に接続される。この結果、支持基板10の上面に配置されている複数(本例では、4つ)の発電素子部Aが電気的に直列に接続される。ここで、電子伝導性を有する「空気極集電膜70及びインターコネクタ30」が、「電気的接続部」に対応する。
【0043】
なお、インターコネクタ30は、前記「電気的接続部」における「緻密な材料で構成された第1部分」に対応し、気孔率は10%以下である。空気極集電膜70は、前記「電気的接続部」における「多孔質の材料で構成された第2部分」に対応し、気孔率は20〜60%である。
【0044】
以上、説明した「横縞型」のSOFCに対して、
図4に示すように、支持基板10の燃料ガス流路11内に改質後の燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、支持基板10の上下面(特に、各空気極集電膜70)を「酸素を含むガス」(空気等)に曝す(或いは、支持基板10の上下面に沿って酸素を含むガスを流す)ことにより、固体電解質膜40の両側面間に生じる酸素分圧差によって起電力が発生する。更に、この構造体を外部の負荷に接続すると、下記(1)、(2)式に示す化学反応が起こり、電流が流れる(発電状態)。
(1/2)・O
2+2e
−→O
2− (於:空気極60) …(1)
H
2+O
2−→H
2O+2e
− (於:燃料極20) …(2)
【0045】
発電状態においては、
図5に示すように、各組の隣り合う発電素子部A,Aについて、電流が、矢印で示すように流れる。この結果、
図4に示すように、このSOFC全体から(具体的には、
図4において最も手前側の発電素子部Aのインターコネクタ30と最も奥側の発電素子部Aの空気極60とを介して)電力が取り出される。
【0046】
(製造方法)
次に、
図1に示した「横縞型」のSOFCの製造方法の一例について
図6〜
図15を参照しながら簡単に説明する。
図6〜
図15において、各部材の符号の末尾の「g」は、その部材が「焼成前」であることを表す。
【0047】
先ず、
図6に示す形状を有する支持基板の成形体10gが作製される。この支持基板の成形体10gは、例えば、支持基板10の材料(例えば、MgOとY
2O
3)の粉末にバインダー、造孔材、分散材等が添加されて得られるスラリーを用いて、押し出し成形、切削等の手法を利用して作製され得る。以下、
図6に示す7−7線に対応する部分断面を表す
図7〜
図15を参照しながら説明を続ける。
【0048】
図7に示すように、支持基板の成形体10gが作製されると、次に、
図8に示すように、支持基板の成形体10gの上下面に形成された各凹部12に、燃料極集電部の成形体21gがそれぞれ埋設・形成される。次いで、
図9に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面に形成された各凹部に、燃料極活性部の成形体22gがそれぞれ埋設・形成される。各燃料極集電部の成形体21g、及び各燃料極活性部22gは、例えば、燃料極20の材料(例えば、NiとY
2O
3)の粉末にバインダー、造孔材、分散材等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
【0049】
続いて、
図10に示すように、各燃料極集電部の成形体21gの外側面における「燃料極活性部の成形体22gが埋設された部分を除いた部分」に形成された各凹部に、インターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成される。各インターコネクタの成形体30gは、例えば、インターコネクタ30の材料(例えば、LaCrO
3)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して埋設・形成される。
【0050】
次に、
図11に示すように、複数の燃料極の成形体(21g+22g)及び複数のインターコネクタの成形体30gがそれぞれ埋設・形成された状態の支持基板の成形体10gにおける長手方向に延びる外周面において複数のインターコネクタの成形体30gが形成されたそれぞれの部分の長手方向中央部を除いた全面に、固体電解質膜の成形膜40gが形成される。固体電解質膜の成形膜40gは、例えば、固体電解質膜40の材料(例えば、YSZ)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法、ディッピング法等を利用して形成される。
【0051】
次に、
図12に示すように、固体電解質膜の成形体40gにおける各燃料極の成形体22gと接している箇所の外側面に、反応防止膜の成形膜50gが形成される。各反応防止膜の成形膜50gは、例えば、反応防止膜50の材料(例えば、GDC)の粉末にバインダー等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
【0052】
そして、このように種々の成形膜が形成された状態の支持基板の成形体10gが、空気中にて1500℃で3時間焼成される。これにより、
図1に示したSOFCにおいて空気極60及び空気極集電膜70が形成されていない状態の構造体が得られる。
【0053】
次に、
図13に示すように、各反応防止膜50の外側面に、空気極の成形膜60gが形成される。各空気極の成形膜60gは、例えば、空気極60の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー、造孔材、分散材等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
【0054】
次に、
図14に示すように、各組の隣り合う発電素子部について、一方の発電素子部の空気極の成形膜60gと、他方の発電素子部のインターコネクタ30とを跨ぐように、空気極の成形膜60g、固体電解質膜40、及び、インターコネクタ30の外側面に、空気極集電膜の成形膜70gが形成される。各空気極集電膜の成形膜70gは、例えば、空気極集電膜70の材料(例えば、LSCF)の粉末にバインダー、造孔材、分散材等が添加されて得られるスラリーを用いて、印刷法等を利用して形成される。
【0055】
そして、このように成形膜60g、70gが形成された状態の支持基板10が、空気中にて1050℃で3時間焼成される。これにより、
図1に示したSOFCが得られる。なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、燃料極20(集電部21+活性部22)中のNi成分が、NiOとなっている。従って、燃料極20(集電部21+活性部22)の電子伝導性を獲得するため、その後、支持基板10側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが800〜1000℃で1〜10時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。以上、
図1に示したSOFCの製造方法の一例について説明した。
【0056】
(クラックの発生の防止)
上記実施形態に係るSOFCが、通常の環境下とは異なり、熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、
図15に示すような「支持基板10のガス流路11の内壁を起点とする、支持基板10の主面に向かうクラック」が発生する場合がある(
図15の矢印を参照)。この現象は、ガス流路11の内壁に応力が集中し易いことに起因する、と考えられる。係るクラックが発生する可能性を低減することは重要である。
【0057】
以下、支持基板10の内部に形成される気孔について、20μm未満の気孔径を有する気孔を「第1気孔」と呼び、20μm以上の気孔径を有する気孔を「第2気孔」と呼ぶ。なお、或る断面上に存在する気孔の径とは、「その断面上にてその気孔が占める面積と同じ面積を有する等価円の直径」と定義される。
【0058】
上記実施形態の製造過程では、多孔質の支持基板10(焼成体)を作製するため、支持基板の成形体10g(焼成前)に造孔材(粉体)が分散・混入される。混入される造孔材の粒径は数μmレベルである。従って、これら造孔材の粒子が凝集することなく成形体10g内に確実に分散した状態で成形体10gが焼成されると、支持基板10(焼成体)の内部には、「第1気孔」(径が20μm未満)のみが形成され得る。しかしながら、このように非常に小さい造孔材の粒子を凝集することなく成形体10g内に分散させることは、実際には非常に困難である。
【0059】
従って、上記実施形態では、造孔材の凝集に起因して、支持基板10の内部には、第1気孔のみならず、「第2気孔」(径が20μm以上)も不可避的に形成される(
図16を参照)。なお、
図16では、第2気孔のみが示され、(第2気孔より小さい)第1気孔は示されていない。第2気孔の最大径は200μmであった。また、支持基板10内の全体において、第1、第2気孔は、それぞれ、概ね均一に分布している。
【0060】
本発明者は、上述したクラックの起点となる「ガス流路11の内壁」に近い領域である「流路近傍領域」に着目した。
図17に示すように、「流路近傍領域」とは、「支持基板10におけるガス流路11の内壁からの距離が100μm以下の領域」を指す(
図17にて微細なドットで示した領域を参照)。即ち、上記実施形態では、各「流路近傍領域」は、肉厚が100μmの円筒状の領域に対応する。この流路近傍領域の内部においても、第1気孔と、第2気孔とが存在し得る。
【0061】
以下、
図16に示すように、「流路近傍領域に存在する第2気孔」のうち、「ガス流路11の内壁に露呈するように存在する第2気孔」を、特に「表面第2気孔」と呼び、「ガス流路11の内壁に露呈しないように存在する第2気孔」を、特に「内部第2気孔」と呼ぶ。「表面第2気孔」と「内部第2気孔」とを合わせて、「全体第2気孔」とも呼ぶ。また、「流路近傍領域に存在する第1気孔」と「流路近傍領域に存在する第2気孔」とを合わせて、「全気孔」とも呼ぶ。
【0062】
流路近傍領域における全気孔の気孔率(流路近傍領域の総体積に対する、全気孔の総体積の割合)を、「全気孔の気孔率Sa」と呼び、流路近傍領域における全体第2気孔の気孔率(流路近傍領域の総体積に対する、全体第2気孔の総体積の割合)を、「全体第2気孔の気孔率Sb1」と呼ぶ。
【0063】
「全気孔の気孔率Sa」は、「流路近傍領域の断面の総面積」に対する「流路近傍領域の断面に存在する全気孔が占める面積の総和」の割合とも定義され得る。「全体第2気孔の気孔率Sb1」は、「流路近傍領域の断面の総面積」に対する「流路近傍領域の断面に存在する全体第2気孔が占める面積の総和」の割合とも定義され得る。ここで、「断面」とは、y−z平面(支持基板10の長手方向に垂直な平面)に沿う断面を指す(
図17を参照)。
【0064】
本発明者は、上記実施形態に係るSOFCが熱応力的に過酷な環境下で稼働される場合における上述したクラックの発生の有無が、「全気孔の気孔率Sa」、及び、「全体第2気孔の気孔率Sb1」と強い相関があることを見出した。以下、これらのことを確認した試験Aについて説明する。
【0065】
(試験A)
この試験Aでは、
図1に示したSOFCについて、「全気孔の気孔率Sa(%)」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1(%)」が異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表1に示すように、11種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。
【0067】
各サンプル(
図1に示すSOFC)にて、支持基板10は、長手方向(x軸方向)の長さが50〜500mmで、幅方向(y軸方向)の長さが10〜100mmで、厚さが1〜5mmの平板状を呈していた。支持基板10のガス流路11(具体的には、6本)の断面は円形であり、その直径は0.3〜4.5mmであった。支持基板10は、MgO及びY
2O
3、MgO及びYSZ、又は、MgO及びCSZ等によって構成された。支持基板10について、全気孔の気孔率Saの調整は、支持基板の成形体10gの作製に使用されるスラリー内に含まれる造孔材の量及び径を調整すること等によってなされた。全体第2気孔の気孔率Sb1の調整は、前記スラリーに含まれる分散材の量を調整することによってなされた。一般に、上述した「造孔材の凝集」の発生頻度は、分散材の量に依存する。従って、分散材の量を調整することによって、「造孔材の粒子の凝集」の発生頻度(即ち、第2気孔の発生頻度、ひいては、全体第2気孔の気孔率Sb1)を調整することができる。
【0068】
支持基板10全体の気孔率は15〜55%であった。第2気孔の気孔径は、20〜200μmの範囲内であった。支持基板10の焼成は、1400〜1500℃にて、1〜20時間に亘って行われた。各サンプルに対して施された上記還元処理は、800〜1000℃にて、1〜10時間に亘って行われた。
【0069】
各サンプルについて、「全気孔の気孔率Sa」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1」の測定は、支持基板10の(x軸方向における)任意の10箇所の「断面」について行われ、それらの平均値が「全気孔の気孔率Sa」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1」としてそれぞれ採用された。表1に記載された各水準についての「全気孔の気孔率Sa」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1」の値(%)は、N=10の平均値である。
【0070】
この試験Aでは、上記還元処理後の各サンプルについて、「燃料極20に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで2時間で上げた後に750℃から常温まで4時間で下げるパターン」を10回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、「支持基板10のガス流路11の内壁を起点とする、支持基板10の主面に向かうクラック」の発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した断面の観察によってなされた。この結果は表1に示すとおりである。
【0071】
表1から理解できるように、「全気孔の気孔率Saが25〜50%であり、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1が6.5%以下」であると、そうでない場合と比べて、上述したクラックが発生し難い。これは、流路近傍領域内にて存在する第2気孔(即ち、比較的大きい気孔)の数が多過ぎると、何等かの理由によってガス流路11の内壁に応力が集中し易くなること、に起因する、と考えられる。
【0072】
なお、表1から理解できるように、「全体第2気孔の気孔率Sb1」が0.025%より小さいサンプルを作製することはできなかった。これは、上述した「造孔材の凝集」の発生頻度の低減について限度があることに関連する、と考えられる。
【0073】
以上より、「全気孔の気孔率Saが25〜50%であり、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1が6.5%以下(或いは、0.025〜6.5%)」である場合に、そうでない場合と比べて、上述したSOFCが熱応力的に過酷な環境下で稼働された場合においても、上述したクラックが発生し難くなる、ということができる。
【0074】
ところで、本発明者は、更に、上述したクラックの起点となる「ガス流路11の内壁」そのものに露呈する上記「表面第2気孔」(
図16を参照)にも着目した。ここで、流路近傍領域における表面第2気孔の気孔率(流路近傍領域の総体積に対する、表面第2気孔の総体積の割合)を、「表面第2気孔の気孔率Sb2」と呼ぶ。「表面第2気孔の気孔率Sb2」は、「流路近傍領域の断面の総面積」に対する「流路近傍領域の断面に存在する表面第2気孔が占める面積の総和」の割合とも定義され得る。ここで、「断面」とは、「全気孔の気孔率Sa」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1」と同様、y−z平面(支持基板10の長手方向に垂直な平面)に沿う断面を指す(
図17を参照)。
【0075】
本発明者は、「全気孔の気孔率Saが25〜50%であり、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1が6.5%以下(或いは、0.025〜6.5%)」である場合において、「表面第2気孔の気孔率Sb2」が0.3%以下(或いは、0.001〜0.3%)」であると、上述したクラックがより一層発生し難くなる、ことをも見出した。以下、このことを確認した試験Bについて説明する。
【0076】
(試験B)
試験Bでは、
図1に示したSOFCについて、「全気孔の気孔率Sa(%)」、「全体第2気孔の気孔率Sb1(%)」、及び「表面第2気孔の気孔率Sb2(%)」が異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表2に示すように、8種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。
【0077】
各サンプルについて、全気孔の気孔率Saは25〜50%の範囲内に調整され、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1は6.5%以下(或いは、0.025〜6.5%)の範囲内に調整された。各サンプルについて、表2に示した項目以外の各部材の寸法、材質、製造過程等は、試験Aのものと同様である。表面第2気孔の気孔率Sb2の調整は、ガス流路11の内壁にコーティングされた支持基板10と同じ材料からなる薄膜(焼成膜)の気孔率を調整することによってなされた。この薄膜(コーティング膜)は、支持基板10と共焼成された。
【0079】
この試験Bでは、試験Aで実行された熱サイクル試験より熱応力的に過酷な熱サイクル試験、即ち、「燃料極20に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで1時間で上げた後に750℃から常温まで2時間で下げるパターン」を20回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、上述したクラックの発生の有無が確認された。この結果は表2に示すとおりである。
【0080】
表2から理解できるように、「表面第2気孔の気孔率Sb2」が0.3%より大きいと、上述したクラックが発生し易い。これは、ガス流路11の内壁に露呈する表面第2気孔の数が多すぎると、何等かの理由によってガス流路11の内壁に応力が集中し易くなること、に起因する、と考えられる。
【0081】
なお、表2から理解できるように、「表面第2気孔の気孔率Sb2」が0.001%より小さいサンプルを作製することはできなかった。これは、上述した「造孔材の凝集」の発生頻度の低減について限度があることに関連する、と考えられる。
【0082】
以上、表1、及び表2の結果より、支持基板10の気孔率が15〜55%であり、且つ、「全気孔の気孔率Saが25〜50%であり、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1が6.5%以下(或いは、0.025〜6.5%)」である場合に上述したクラックが発生し難くなり、更に、この場合において、「表面第2気孔の気孔率Sb2が0.3%以下(或いは、0.001〜0.3%)」であると、上述したクラックがより一層発生し難くなる、ということができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、
図6等に示すように、支持基板10に形成された凹部12の平面形状(支持基板10の主面に垂直の方向からみた場合の形状)が、長方形になっているが、例えば、正方形、円形、楕円形、長穴形状等であってもよい。また、支持基板10は平板状を呈しているが、円筒状であってもよい。
【0084】
また、上記実施形態においては、平板状の支持基板10の上下面のそれぞれに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられているが、支持基板10の片側面のみに複数の凹部12が形成され且つ複数の発電素子部Aが設けられていてもよい。また、上記実施形態においては、支持基板10の一つの主面上に、電気的に直列に接続された複数の発電素子部Aが配置された所謂「横縞型」と呼ばれる構成が採用されているが、支持基板10の一つの主面上に一つの発電素子部Aが配置される構成(所謂「縦縞型」)が採用されてもよい。
【0085】
また、上記実施形態においては、燃料極20が燃料極集電部21と燃料極活性部22との2層で構成されているが、燃料極20が燃料極活性部22に相当する1層(Ni+酸化物セラミックス)で構成されてもよい。
【0086】
加えて、上記実施形態においては、各燃料極20(集電部21及び活性部22)が支持基板の主面に形成された凹部12に埋設されているが、
図18に示すように、支持基板の主面に凹部が形成されず、各燃料極20(集電部21及び活性部22)が支持基板の主面から突出するように形成されていてもよい。
【0087】
以上、
図1に示す構成を備えた燃料電池における「支持基板のガス流路の内壁におけるクラックの発生の防止」について説明してきた。本発明者は、
図19〜
図21に示す構成を備えた燃料電池における「燃料極の表面におけるクラックの発生の防止」についても、上記と同様のことが適用され得ることを見出した。以下、この点について説明する。
【0088】
(構成)
先ず、
図19〜
図21に示す燃料電池(固体酸化物形燃料電池)の構成について簡単に説明する。この燃料電池は、セル100とセパレータ200とが交互に積層された構造を有している。この構造は、「平板スタック構造」とも呼ばれる。なお、
図20に示すように、この燃料電池では、最も上方に位置するセル100の上側に位置するセパレータを特に上側蓋部材300と呼び、最も下方に位置するセル100の下側に位置するセパレータを特に下側蓋部材400と呼ぶ。
【0089】
図21に示すように、セル100は、固体電解質層120と、固体電解質層120の上面に積層された燃料極110と、固体電解質層120の下面に積層された空気極130と、からなる平板状の焼成体である。セル100の平面形状は、例えば、1辺の長さが10〜300mmの正方形である。
【0090】
セル100の厚さ(z軸方向の長さ)は全体に渡って均一であり、例えば、110〜2100μmである。燃料極110、固体電解質層120、及び、空気極130の厚さはそれぞれ、例えば、50〜2000μm、1〜50μm、及び、50〜2000μmである。
図21に示す例では、セル100を構成する部材のうち燃料極110が最も厚く、従って、燃料極110がセル100全体を支持する構造となっている。
【0091】
燃料極110は、例えば、NiとYSZとを含む多孔質材料で構成される。固体電解質層120は、例えば、YSZを含む緻密質材料で構成される。空気極130は、例えば、LSM(La(Sr)MnO
3:ランタンストロンチウムマンガナイト)を含む多孔質材料で構成される。燃料極110、固体電解質層120、及び、空気極130の気孔率はそれぞれ、15〜55%、0〜10%、15〜55%である。燃料極110、固体電解質層120、及び、空気極130の常温から1000℃での平均熱膨張率はそれぞれ、およそ、12.5ppm/K、10.8ppm/K、及び、11(10.8)ppm/Kである。
【0092】
図20及び
図21に示すように、セパレータ200は、平板部210と、枠体部220と、を備えている。セパレータ200の平面形状は、セル100の平面形状と同形である。枠体部220は、平板部210の周縁部をその全周に亘って囲むように位置している。枠体部220の厚さ(z軸方向の長さ)は、平板部210の厚さ(z軸方向の長さ)より大きい。枠体部220は、平板部210に対して、上方及び下方の両方に突出している。
【0093】
セパレータ200は、Ni系耐熱合金(例えば、フェライト系SUS、インコネル600及びハステロイ等)で構成されている。セパレータ200の常温から1000℃での平均熱膨張率は、例えばフェライト系SUSであるSUS430の場合、およそ12.5ppm/Kである。従って、セパレータ200の熱膨張率は、セル100の平均熱膨張率よりも大きい。
【0094】
各セル100の周縁部は、その上側及び下側に隣接するセパレータ200のそれぞれの枠体部220によって、接合材(ガラス材料等)を介して挟持されている。この結果、
図21に示すように、各セル100について、セル100とセル100の上側に隣接するセパレータ200との間にて、燃料ガスが流通する燃料流路が区画・形成され、セル100とセル100の下側に隣接するセパレータ200との間にて、空気が流通する空気流路が区画・形成されている。従って、セパレータ200は、燃料ガスと空気との混合を防止する機能を果たす。
【0095】
以上、
図19〜
図21に示した燃料電池に対して、各燃料流路に燃料ガス(水素ガス等)を流すとともに、各空気流路に空気を流し、この燃料電池を外部の負荷に接続することによって、
図1に示した燃料電池と同様、上述した化学反応式(1)及び(2)に基づく発電が行われる。
【0096】
(製造方法)
次に、
図19〜
図21に示す燃料電池の製造方法について簡単に説明する。先ず、セル100は、シート(燃料極110となる層)の下面にセラミックスシート(固体電解質層120となる層)を印刷法等によって形成し、その積層体を1400℃・1時間にて焼成し、その焼成体の下面にシート(空気極130となる層)を印刷法等によって形成し、その積層体を1200℃・1時間にて焼成することにより、形成される。セパレータ200は、Ni系耐熱合金の薄板材料に対して、切削加工、プレス加工等に施すことによって形成される。
【0097】
次に、完成したセル100とセパレータ200とを交互に、且つ、隣接するセル100の周縁部とセパレータ200の枠体部220との間にガラス材料が介在する状態で積層し、この積層体(のガラス材料)に対して熱処理(830℃/1hr)が施される。この結果、ガラス材料が固化することによってこの積層体が一体化されて、平板スタック構造を有する
図19に示す燃料電池が完成する。
【0098】
なお、この時点では、酸素含有雰囲気での焼成により、燃料極110中のNi成分が、NiOとなっている。従って、燃料極110の電子伝導性を獲得するため、その後、燃料流路側から還元性の燃料ガスが流され、NiOが800〜1000℃で1〜10時間に亘って還元処理される。なお、この還元処理は発電時に行われてもよい。
【0099】
(クラックの発生の防止)
図19に示す燃料電池が、通常の環境下とは異なり、熱応力的に過酷な環境下で稼働されると、
図22に示すような「燃料極110の燃料流路に面する表面を起点とする、燃料極110の内部に向かうクラック」が発生する場合がある(
図22の矢印を参照)。この現象は、燃料極110の表面に応力が集中し易いことに起因する、と考えられる。係るクラックが発生する可能性を低減することは重要である。
【0100】
以下、燃料極110の内部に形成される気孔について、上述と同様、20μm未満の気孔径を有する気孔を「第1気孔」と呼び、20μm以上の気孔径を有する気孔を「第2気孔」と呼ぶ。この燃料電池の製造過程においても、多孔質の燃料極110(焼成体)を作製するため、燃料極用のシート(焼成前)に造孔材(粉体)が分散・混入される。混入される造孔材の粒径は数μmレベルである。従って、これら造孔材の粒子が凝集することなくシート内に確実に分散した状態でシートが焼成されると、燃料極110(焼成体)の内部には、「第1気孔」(径が20μm未満)のみが形成され得る。しかしながら、このように非常に小さい造孔材の粒子を凝集することなくシート内に分散させることは、実際には非常に困難である。
【0101】
従って、上記燃料電池では、造孔材の凝集に起因して、燃料極110の内部には、第1気孔のみならず、「第2気孔」(径が20μm以上)も不可避的に形成される(
図23を参照)。なお、
図23では、第2気孔のみが示され、(第2気孔より小さい)第1気孔は示されていない。第2気孔の最大径は200μmであった。また、燃料極110内の全体において、第1、第2気孔は、それぞれ、概ね均一に分布している。
【0102】
本発明者は、上述したクラックの起点となる「燃料極110の燃料流路に面する表面」に近い領域である「流路近傍領域」に着目した。
図24に示すように、「流路近傍領域」とは、「燃料極110における燃料流路に面する表面からの距離が100μm以下の領域」を指す(
図24にて微細なドットで示した領域を参照)。即ち、この燃料電池では、各「流路近傍領域」は、厚さが100μmの平板状の領域に対応する。この流路近傍領域の内部においても、第1気孔と、第2気孔とが存在し得る。
【0103】
以下、上述した
図16と同様、
図23に示すように、「流路近傍領域に存在する第2気孔」のうち、「燃料極110の表面に露呈するように存在する第2気孔」を、特に「表面第2気孔」と呼び、「燃料極110の表面に露呈しないように存在する第2気孔」を、特に「内部第2気孔」と呼ぶ。「全体第2気孔」、「全気孔」、「全気孔の気孔率Sa」、及び「全体第2気孔の気孔率Sb1」の定義は、上述と同じである。
【0104】
本発明者は、上記燃料電池が熱応力的に過酷な環境下で稼働される場合における上述した燃料極110のクラックの発生の有無が、「全気孔の気孔率Sa」、及び、「全体第2気孔の気孔率Sb1」と強い相関があることを見出した。以下、これらのことを確認した試験Aについて説明する。
【0105】
(試験C)
この試験Cでは、
図19に示した燃料電池について、「全気孔の気孔率Sa(%)」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1(%)」が異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表3に示すように、10種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。
【0107】
各サンプル(
図19に示すSOFC)にて、セル100は、その平面形状が1辺の長さが10〜300mmの正方形であり、その厚さが110〜2100μmであった。燃料極110、固体電解質層120、及び、空気極130の厚さはそれぞれ、例えば、50〜2000μm、1〜50μm、及び、50〜2000μmであった。セル100を構成する部材のうち燃料極110が最も厚く、従って、燃料極110がセル100全体を支持する構造となっていた。
【0108】
燃料極110は、NiとYSZからなる多孔質材料で構成された。固体電解質層120は、YSZからなる緻密質材料で構成された。空気極130は、LSM(La(Sr)MnO
3)からなる多孔質材料で構成された。燃料極110、固体電解質層120、及び、空気極130の気孔率はそれぞれ、15〜55%、0〜10%、15〜55%であった。
【0109】
燃料極110について、全気孔の気孔率Saの調整は、燃料極用のシートの作製に使用されるスラリー内に含まれる造孔材の量及び径を調整すること等によってなされた。全体第2気孔の気孔率Sb1の調整は、前記スラリーに含まれる分散材の量を調整することによってなされた。一般に、上述した「造孔材の凝集」の発生頻度は、分散材の量に依存する。従って、分散材の量を調整することによって、「造孔材の粒子の凝集」の発生頻度(即ち、第2気孔の発生頻度、ひいては、全体第2気孔の気孔率Sb1)を調整することができる。
【0110】
燃料極110全体の気孔率は15〜55%であった。第2気孔の気孔径は、20〜200μmの範囲内であった。燃料極110の焼成は、1400〜1500℃にて、1〜20時間に亘って行われた。各サンプルに対して施された上記還元処理は、800〜1000℃にて、1〜10時間に亘って行われた。
【0111】
各サンプルについて、「全気孔の気孔率Sa」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1」の測定は、燃料極110の(y軸方向における)任意の10箇所の「断面」について行われ、それらの平均値が「全気孔の気孔率Sa」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1」としてそれぞれ採用された。表3に記載された各水準についての「全気孔の気孔率Sa」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1」の値(%)は、N=10の平均値である。
【0112】
この試験Cでは、上記還元処理後の各サンプルについて、「各燃料流路に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで2時間で上げた後に750℃から常温まで4時間で下げるパターン」を10回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、「燃料極110の燃料流路に面する表面を起点とする、燃料極110の内部に向かうクラック」の発生の有無が確認された。この確認は、目視、並びに、顕微鏡を使用した断面の観察によってなされた。この結果は表3に示すとおりである。
【0113】
表3から理解できるように、「全気孔の気孔率Saが20〜50%であり、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1が10%以下」であると、そうでない場合と比べて、上述したクラックが発生し難い。これは、流路近傍領域内にて存在する第2気孔(即ち、比較的大きい気孔)の数が多過ぎると、何等かの理由によって燃料極110の表面に応力が集中し易くなること、に起因する、と考えられる。
【0114】
なお、表3から理解できるように、「全体第2気孔の気孔率Sb1」が0.04%より小さいサンプルを作製することはできなかった。これは、上述した「造孔材の凝集」の発生頻度の低減について限度があることに関連する、と考えられる。
【0115】
以上より、「全気孔の気孔率Saが20〜50%であり、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1が10%以下(或いは、0.04〜10%)」である場合に、そうでない場合と比べて、上述した燃料電池が熱応力的に過酷な環境下で稼働された場合においても、上述した燃料極のクラックが発生し難くなる、ということができる。
【0116】
ところで、本発明者は、更に、上述した燃料極のクラックの起点となる「燃料極110の表面」そのものに露呈する上記「表面第2気孔」(
図23を参照)にも着目した。ここで、流路近傍領域における表面第2気孔の気孔率(流路近傍領域の総体積に対する、表面第2気孔の総体積の割合)を、「表面第2気孔の気孔率Sb2」と呼ぶ。「表面第2気孔の気孔率Sb2」は、「流路近傍領域の断面の総面積」に対する「流路近傍領域の断面に存在する表面第2気孔が占める面積の総和」の割合とも定義され得る。ここで、「断面」とは、「全気孔の気孔率Sa」及び「全体第2気孔の気孔率Sb1」と同様、x−z平面に沿う断面を指す(
図24を参照)。
【0117】
本発明者は、「全気孔の気孔率Saが20〜50%であり、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1が10%以下(或いは、0.04〜10%)」である場合において、「表面第2気孔の気孔率Sb2」が0.5%以下(或いは、0.001〜0.5%)」であると、上述したクラックがより一層発生し難くなる、ことをも見出した。以下、このことを確認した試験Dについて説明する。
【0118】
(試験D)
試験Dでは、
図19に示した燃料電池について、「全気孔の気孔率Sa(%)」、「全体第2気孔の気孔率Sb1(%)」、及び「表面第2気孔の気孔率Sb2(%)」が異なる複数のサンプルが作製された。具体的には、表4に示すように、8種類の水準(組み合わせ)が準備された。各水準に対して10個のサンプル(N=10)が作製された。
【0119】
各サンプルについて、全気孔の気孔率Saは20〜50%の範囲内に調整され、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1は10%以下(或いは、0.04〜10%)の範囲内に調整された。各サンプルについて、表4に示した項目以外の各部材の寸法、材質、製造過程等は、試験Cのものと同様である。表面第2気孔の気孔率Sb2の調整は、燃料極110の燃料流路に面する表面にコーティングされた燃料極110と同じ材料からなる薄膜(焼成膜)の気孔率を調整することによってなされた。この薄膜(コーティング膜)は、燃料極110と共焼成された。
【0121】
この試験Dでは、試験Cで実行された熱サイクル試験より熱応力的に過酷な熱サイクル試験、即ち、「各燃料流路に還元性の燃料ガスを流通させながら、雰囲気温度を常温から750℃まで1時間で上げた後に750℃から常温まで2時間で下げるパターン」を20回繰り返す熱サイクル試験を行った。そして、各サンプルについて、上述した燃料極のクラックの発生の有無が確認された。この結果は表4に示すとおりである。
【0122】
表4から理解できるように、「表面第2気孔の気孔率Sb2」が0.5%より大きいと、上述したクラックが発生し易い。これは、燃料極110の表面に露呈する表面第2気孔の数が多すぎると、何等かの理由によって燃料極110の表面に応力が集中し易くなること、に起因する、と考えられる。
【0123】
なお、表4から理解できるように、「表面第2気孔の気孔率Sb2」が0.001%より小さいサンプルを作製することはできなかった。これは、上述した「造孔材の凝集」の発生頻度の低減について限度があることに関連する、と考えられる。
【0124】
以上、表3、及び表4の結果より、燃料極110の気孔率が15〜55%であり、且つ、「全気孔の気孔率Saが20〜50%であり、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1が10%以下(或いは、0.04〜10%)」である場合に上述した燃料極110のクラックが発生し難くなり、更に、この場合において、「表面第2気孔の気孔率Sb2が0.5%以下(或いは、0.001〜0.5%)」であると、上述した燃料極110のクラックがより一層発生し難くなる、ということができる。
【0125】
なお、セル100を構成する部材のうち燃料極110が最も厚い構造ではない場合(例えば、固体電解質膜120が最も厚い場合)においても、燃料極の内部の気孔の調整に関して、表3及び表4と全く同じ結果が得られることが別途判明している。
【0126】
更には、上記試験C及び試験D(表3及び表4)に示した結果は、セル100において燃料極110が最も厚い構造(従って、燃料極110がセル100全体を支持する構造)における燃料極の内部の気孔の調整に関するものであった。これに対し、セル100において空気極130が最も厚い構造(従って、空気極130がセル100全体を支持する構造)における空気極の内部の気孔の調整に関しても、上記試験C及び試験Dと同様の試験を行ったところ、上記表3及び表4と全く同じ結果が得られることが別途判明している。
【0127】
具体的には、空気極130の内部の気孔に関し、空気極130の気孔率が15〜55%であり、且つ、「全気孔の気孔率Saが20〜50%であり、且つ、全体第2気孔の気孔率Sb1が10%以下(或いは、0.04〜10%)」である場合に空気極130のクラックが発生し難くなり、更に、この場合において、「表面第2気孔の気孔率Sb2が0.5%以下(或いは、0.001〜0.5%)」であると、空気極130のクラックがより一層発生し難くなる。なお、この場合における「流路近傍領域」とは、「空気極130における空気流路に面する表面からの距離が100μm以下の領域」(厚さが100μmの平板状の領域)を指す。
【解決手段】この燃料電池では、ガス流路11が内部に形成された支持基板10の表面に、燃料極20、固体電解質40、及び空気極60が順に積層された発電素子部Aが形成される。支持基板の気孔率が15〜55%である。支持基板10の内部の気孔として、20μm未満の気孔径を有する複数の第1気孔と、20μm以上の気孔径を有する1つ又は複数の第2気孔と、が存在する。支持基板10におけるガス流路11の内壁からの距離が100μm以下の領域を「流路近傍領域」と定義したとき、「流路近傍領域」における第1、第2気孔からなる全気孔の気孔率(Sa)が25〜50%であり、「流路近傍領域」における第2気孔の気孔率(Sb1)が6.5%以下である。