(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明はここで取り上げた実施形態に限定されることはなく、発明の技術的思想を逸脱しない範囲で組合せや改良が適宜可能である。
【0024】
(従来技術における問題点、およびその要因調査)
前述したように、本発明者等は、FPCにおける各種要求(例えば、樹脂フィルムと銅箔との優れた接合性、樹脂フィルム部分での優れた透過視認性)を満たすべく、銅箔エッチング除去後の樹脂フィルム部分での透過視認性を詳細に調査した。まず、樹脂フィルムの透明性を示す従来の指標(例えば、全光線透過率T
t、拡散透過率T
d、曇度H)の測定方法について確認・検討した。
【0025】
図1は、樹脂フィルムの透過光測定(較正測定、全光線透過率測定、拡散透過率測定)の基本方法(JIS K 7361、JIS K 7136)を示す断面模式図である。
図1に示したように、透過光測定を行う積分球には、測定光線(入射光束)を入射する入口開口と、平行光線が出射される出口開口と、光量を計測するための受光器開口と、望まない反射光をキャンセルするための補償開口(反射測定窓とも言う)とが設けられ、補償開口にはライトトラップボックスが接続されている。
【0026】
較正測定においては、入口開口に試料を設置せずに開放し、出口開口を白板によって塞ぎ、補償開口に試料を設置した状態で、入口開口から入射光束を入射して光量を測定する。これにより、試料からの反射光を含む環境の較正ができる。全光線透過率測定においては、入口開口に試料を設置し、出口開口を白板によって塞ぎ、補償開口を開放した状態で、試料の背面(積分球に対向しない面の意味)から入射光束を入射して光量を測定する。これを較正測定の光量と比較することにより、試料の全光線透過率T
t(%)が測定される。拡散透過率測定においては、入口開口に試料を設置し、出口開口を開放し、補償開口を白板(ヘイズ補償用白板)によって塞いだ状態で、試料の背面から入射光束を入射して光量を測定する。試料を透過した平行光線が出口開口から抜けるため、拡散透過率T
d(%)が測定される。曇度H(%)は、全光線透過率T
tに対する拡散透過率T
dの比率(T
d/T
t × 100)により算出される。
【0027】
図2は、従来の銅張積層板において銅箔を化学エッチング除去した後の樹脂フィルム部分での透過視認性の一例を示す写真であり、(a)透過視認するマーカーを、樹脂フィルムの下に密着させて配置した場合の透過視認性、(b)透過視認するマーカーを、樹脂フィルムの下で隙間(約10 mm)を空けて配置した場合の透過視認性である。
【0028】
図2(a)に示したように、透過視認するマーカーを、樹脂フィルムの下に密着させて配置した場合、マーカーに表示された文字を十分視認・判別することができる。これに対し、
図2(b)に示したように、透過視認するマーカーを、樹脂フィルムの下で隙間(約10 mm)を空けて配置した場合、マーカーに表示された文字を全く視認・判別できない。この実験から、樹脂フィルムを介した透過視認性は、樹脂フィルムとマーカーとの配置関係(特に、樹脂フィルムとマーカーとの距離)に強く影響されることが判った。
【0029】
なお、FPCに対する液晶部材やICチップの実装工程においては、長尺のFPCが連続的に搬送されながら位置決めがなされるため、FPC表面に傷を付けないように、通常、FPCと位置決めマーカーとの間には適当な隙間が空くように設定されている。
【0030】
上記実験は樹脂フィルムとマーカーとの配置関係のみを変化させたものなので、当然のことながら、樹脂フィルムの透明性を示す指標(例えば、全光線透過率T
t、拡散透過率T
d、曇度H)自体には変化がない。すなわち、樹脂フィルムとマーカーとの配置関係を考慮すると、透明性を示す従来の指標のみでは、樹脂フィルムを介した透過視認性を適切に評価できないことが判明した。
【0031】
樹脂フィルムを介した透過視認性を適切に評価できない要因について考察する。
【0032】
図3は、樹脂フィルムとマーカーとの配置関係、および透過視認する光路を概略的に示した模式図であり、(a)透過視認するマーカーを、樹脂フィルムの下に密着させて配置した場合、(b)透過視認するマーカーを、樹脂フィルムの下で隙間を空けて配置した場合である。
【0033】
図3(a)に示したように、透過視認するマーカーを、樹脂フィルムの下に密着させて配置した場合、マーカーが樹脂フィルムに密着していることから、マーカー表面での反射は、樹脂フィルムとマーカーとの界面での反射と見なすことができる。これは、樹脂フィルムを透過してからマーカー表面で反射するまでの距離を実質的にゼロと見なせることができ、樹脂フィルムを最初に透過したときの拡散光(拡散による光線の広がり)を考慮する必要がない。言い換えると、全光線透過率Ttで透過した光がほぼそのまま反射するものと考えられる。
【0034】
これに対し、
図3(b)に示したように、透過視認するマーカーを、樹脂フィルムの下で隙間を空けて配置した場合、樹脂フィルムを透過した光は、拡散透過率T
dに相当する拡散光を生じさせながらマーカー表面で反射し、反射光のうちで樹脂フィルムを再度透過した光のみが検知される。言い換えると、樹脂フィルムを透過してからマーカー表面で反射するまでにある程度の距離が存在する場合、樹脂フィルムを透過して直進する光(すなわち、平行光線)が重要になると考えられる。
【0035】
上記考察から、樹脂フィルムを介したマーカーの透過視認性とは、樹脂フィルムを透過した光が、マーカー表面で反射し、樹脂フィルムを再度透過して観測者(またはCCDカメラのような観測器)に検知されたものと考えられ、樹脂フィルムを往復透過する光が透過視認性の本質であると考えられた。すなわち、樹脂フィルムを往復透過する光を考慮すべきという点で、樹脂フィルムを一回だけ透過する光を計測した従来の指標(例えば、全光線透過率T
t、拡散透過率T
d、曇度H)のみでは、樹脂フィルムを介した透過視認性を適切に評価できないものと考えられた。
【0036】
(樹脂フィルムを介した透過視認性を判定するための指標)
透過視認性の良否を判定できる適当な指標が存在しないと、透過視認性を改善するために制御する項目が定まらないため、非常に大きな問題になる。言い換えると、前述した要求(樹脂フィルムと銅箔との優れた接合性と、樹脂フィルムを介した良好な透過視認性との両立)を満たせる銅張積層板を得るためには、少なくとも、樹脂フィルムを介した透過視認性の良否を判定できる適当な指標が必要である。
【0037】
前述の実験・考察から、樹脂フィルムを介した透過視認性は、樹脂フィルムを透過して直進する光(平行光線)が重要であることが判明した。そこで、樹脂フィルムを透過した平行光線について、さらに詳細に検討した。
【0038】
樹脂フィルムを透過した平行光線には、通常、直進光と狭角度散乱光とが含まれていると言われている。樹脂フィルムを介した透過視認性は樹脂フィルムを往復透過する光が重要であることを考慮すると、樹脂フィルムとマーカーとの間にある程度の距離が存在する場合、たとえ狭角度であっても散乱光の影響は無視できず、樹脂フィルムを透過して直進しそのまま反射直進する光(すなわち、直進光)が重要であると考えられる。なお、平行光線中の狭角度散乱光は、マーカー表面での反射においてマーカーの輪郭をぼやけさせる要因になると考えられる。
【0039】
直線光の指標(狭角度散乱光の影響を表す指標)に透明度Cがある。
図4は、樹脂フィルムの透明度測定の基本方法を示す断面模式図である。透明度Cは、
図4のようにして、試料を透過した平行光線の光量を中心センサーと外周センサーとからなるリングセンサーで計測し、式「C(%)= (I
c − I
r)/(I
c + I
r) × 100」(ただし、I
c:センターセンサー受光量、I
r:リングセンサー受光量)により求められる指標である。
【0040】
上述した透明性に関する各指標および本発明者等の数多くの実験・解析から、樹脂フィルムを介した透過視認性の指標(以下、透過視認度V
tと称す、単位:%)は、樹脂フィルムを透過した平行光線における直線光の比率として、式「V
t = (T
t − T
d) × C/100」(T
t:全光線透過率(単位:%)、T
d:拡散透過率(単位:%)、C:透明度(単位:%))で定義することができる。これにより、樹脂フィルムとマーカーとの間にある程度の距離が存在する場合であっても、透過視認度V
tが所定の値を満たすように制御することによって、良好な透過視認性を確保することができる。なお、「T
t − T
d」は、樹脂フィルムを透過した平行光線の比率(例えば、平行光線透過率T
pと称す)を意味する。
【0041】
[銅張積層板の構造]
図5は、本発明に係る銅張積層板の構造例を示す断面模式図である。
図5に示したように、本発明に係る銅張積層板10は、銅箔1と樹脂フィルム6とが樹脂接着層を介さずに直接積層された二層銅張積層板であって、樹脂フィルム6に対向する銅箔1の接合面に、下地銅めっき層2と粗化銅めっき層3と防錆層4とが形成されている。通常、銅箔1〜防錆層4を総称して表面処理銅箔5と称する。
【0042】
なお、
図5においては、樹脂フィルム6の片面に銅箔1(または表面処理銅箔5)が積層された二層片面銅張積層板を描いたが、本発明に係る銅張積層板は、樹脂フィルム6の両面に銅箔1(または表面処理銅箔5)が積層された二層両面銅張積層板であってもよい。
【0043】
(銅箔)
銅箔1に特段の限定はなく、従前の銅箔(例えば、電解銅箔や圧延銅箔)を用いることができる。FPCにおいて極めて優れた屈曲特性(例えば、100万回以上の屈曲特性)が要求される場合、圧延銅箔を用いることが好ましい。また、素材としては、純銅(例えば、タフピッチ銅(JIS H 3100 C1100)や無酸素銅(JIS H 3100 C1020))、および純銅にスズ(Sn)や銀(Ag)が微量添加された希薄銅合金がよく用いられる。以下では、特に断らない限り、銅箔1として圧延銅箔を用いた場合について説明する。
【0044】
(下地銅めっき層)
下地銅めっき層2は、銅箔1の直上に形成され、粗化銅めっき層3の下地となる層である。本発明においては、所定の下地銅めっき層2を設けることにより、その上に形成する粗化銅めっき層3の粗化形状(厚さ(凹凸)方向や面内方向の形状)を均等化・安定化することができる。本発明の下地銅めっき層2の平均厚さは0.1μm以上0.6μm以下が好ましい。平均厚さが0.1μm未満になると、下地銅めっき層の作用効果が不十分になる。平均厚さが0.6μm超では、作用効果が飽和しプロセスコストが無駄になる。素材としては、純銅または銅箔1と同じ組成が好ましい。
【0045】
本発明の下地銅めっき層2は、再結晶焼鈍処理が施されていない表面処理銅箔の状態において、下地銅めっき層2を構成する多結晶粒が銅箔1を構成する多結晶粒と異なる結晶方位関係を有するという特徴を有する。銅箔1を構成する多結晶粒は、少なくともその圧延面において、銅結晶の[022]面が優先配向した微細組織(いわゆる圧延集合組織:圧延面に対して2θ/θ法によるX線回折(XRD)測定を行うと、[022]面が主ピーク(最強ピーク)として現れ、[002]面が第2ピークとして現れる微細組織)を有している。
【0046】
これに対し、下地銅めっき層2を構成する多結晶粒は、当該圧延集合組織とは異なる微細組織を有する。具体的には、下地銅めっき層2の表面に対してXRD測定を行うと、銅結晶の[111]面および/または[002]面が優先配向している。なお、銅箔1は、再結晶焼鈍処理(例えば、CCL形成工程)により、銅結晶の[002]面が優先配向した微細組織(いわゆる立方体集合組織)に変化する。
【0047】
さらに、本発明の下地銅めっき層2は、再結晶焼鈍処理が施されていない表面処理銅箔の状態で断面組織観察を行った場合に、下地銅めっき層2を構成する多結晶粒の平均厚さが銅箔1を構成する多結晶粒の平均厚さよりも大きいという特徴を有する。
【0048】
本発明では、下地銅めっき層2の形成方法が従来技術と大きく異なり(詳細は後述する)、最終的な「樹脂フィルム部分での透過視認性」に関して明らかな効果を示す。ただし、下地銅めっき層2の上記特徴が「樹脂フィルム部分での透過視認性」に効果を示すメカニズムに関しては、残念ながら、現段階において解明できていない。
【0049】
(粗化銅めっき層)
粗化銅めっき層3は、下地銅めっき層2の直上に形成される。粗化銅めっき層3の粗化形状が、「樹脂フィルムと銅箔との接合性」および「樹脂フィルム部分での透過視認性」に対して直接的に影響する。粗化銅めっき層3の平均厚さは0.05μm以上0.3μm以下が好ましい。平均厚さが0.05μm未満になると、樹脂フィルム6と表面処理銅箔5との接合性が不十分になる。平均厚さが0.3μm超では、表面処理銅箔5を化学エッチング除去した後の樹脂フィルム6の透過視認性が不十分になる。平均厚さの規定以外は、従前の技術を利用できる。
【0050】
(防錆層)
防錆層4は、粗化銅めっき層3の直上に形成される。防錆層4は、本発明において必須の層ではないが、FPC(およびFPC用の銅張積層板)においてしばしば形成される層である。防錆層4の構成に特段の限定はなく、従前の技術を利用できる。例えば、ニッケルめっき層(平均厚さ9 nm以上50 nm以下)、亜鉛めっき層(平均厚さ1 nm以上10 nm以下)、3価クロム化成処理層(平均厚さ1 nm以上10 nm以下)、シランカップリング処理層(分子層レベルの厚さ)が、この順に積層される。なお、従来技術と同様に、樹脂フィルム6に対向する銅箔1の接合面と反対側の面に、防錆層4を設けてもよい。
【0051】
(樹脂フィルム)
樹脂フィルム6は、FPCにおける可撓性基材となる層である。樹脂フィルム6の素材に特段の限定はなく、従前の技術を利用できる。例えば、ポリイミドフィルムが好適に用いられる。
【0052】
本発明に係る銅張積層板10は、表面処理銅箔5が化学エッチング除去されたとき、化学エッチング除去後の残存した樹脂フィルム6において、式「V
t = (T
t − T
d) × C/100」(T
t:全光線透過率(単位:%)、T
d:拡散透過率(単位:%)、C:透明度(単位:%))で定義される透過視認度V
tが「V
t≧10%」である。また、樹脂フィルム6と表面処理銅箔5とのピール強度が0.5 N/mm以上である。
【0053】
[銅張積層板の製造方法]
本発明に係る銅張積層板の製造方法について、
図6を用いて説明する。
図6は、本発明に係る銅張積層板の製造工程の一例を示すフロー図である。なお、以下では、洗浄工程や乾燥工程の説明を省略する場合があるが、それらの工程は必要に応じて適宜行われることが好ましい。
【0054】
(S10)銅箔準備工程
本工程では、銅箔1を準備する。前述したように、銅箔1自体に特段の限定はなく、従前の銅箔(例えば、電解銅箔や圧延銅箔)を用いることができるので、銅箔準備方法にも特段の限定はなく、従前の方法を用いることができる。
【0055】
(S20)下地銅めっき層形成工程
本工程では、銅箔1の直上に下地銅めっき層2を形成する。下地銅めっき層2を形成する前に、電解脱脂処理および酸洗処理を行って銅箔1の表面を清浄化することは好ましい。電解脱脂処理は、銅箔1をアルカリ水溶液に浸漬し陰極電解脱脂を行う処理である。アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)を20 g/L以上60 g/L以下、炭酸ナトリウム(Na
2CO
3)を10 g/L以上30 g/L以下で含む水溶液を用いることができる。
【0056】
酸洗処理は、電解脱脂処理を行った銅箔1を酸性水溶液に浸漬し、銅箔1の表面に残存するアルカリ成分の中和および銅酸化膜の除去を行う処理である。酸性水溶液としては、例えば、硫酸(H
2SO
4)を120 g/L以上180 g/L以下含む水溶液や、クエン酸(C
6H
8O
7)水溶液、銅エッチング液等を用いることができる。
【0057】
下地銅めっき層2の形成は、硫酸銅および硫酸を主成分とする酸性銅めっき浴にて銅箔1を陰極とする電解処理により行う。酸性銅めっき浴の液組成、液温、電解条件、下地銅めっき層の平均厚さは、例えば下記の範囲から選択されることが好ましい。
硫酸銅五水和物:20 g/L以上300 g/L以下(50 g/L以上300 g/L以下がより好ましい)
硫酸:10 g/L以上200 g/L以下(30 g/L以上200 g/L以下がより好ましい)
添加剤:所定の有機系添加剤を添加
液温:15℃以上50℃以下
電流密度:2 A/dm
2以上15 A/dm2以下(限界電流密度末満とする)
処理時間:1秒間以上30秒間以下
平均厚さ:0.1μm以上0.6μm以下。
【0058】
所定の有機系添加剤としては、例えば、メルカプト基を持つ化合物(例えば、3-メルカプト-1-スルホン酸(MPS)、ビス(3-スルホプロピル)ジスルフィド(SPS))、界面活性剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリオキシアルキレンエーテル)、レベリング剤(例えば、ジアリルジアルキルアンモニウムアルキルサルフェイト)、および塩化物イオンを含む水溶液(例えば、塩酸水溶液)を、組み合わせた添加剤が用いられる。
【0059】
このような添加剤は、構成成分の試薬(市販品)を所定量配合して作製することが可能である。また、構成成分が予め配合されて市販されているめっき用薬液(例えば、メルカプト基を持つ化合物が配合されためっき用薬液、界面活性剤が配合されためっき用薬液、レベリング剤が配合されためっき用薬液)を混合して用いることも可能である。さらに、構成成分が予め配合されて市販されているめっき用薬液と、構成成分の試薬(市販品)とを混合して用いることも可能である。
【0060】
より具体的には、下地銅めっき浴中のメルカプト基を持つ化合物の濃度としては、例えばSPSの場合、10 mg/L以上60 mg/L以下が好ましく、10 mg/L以上45 mg/L以下がより好ましく、10 mg/L以上30 mg/L以下が更に好ましい。SPSの濃度が10 mg/L未満であると、本発明の効果が十分に得られないことがある。一方、SPSの濃度が60 mg/L超になると、本発明の作用効果が飽和して、無駄な材料コストが発生する。
【0061】
界面活性剤としては、例えば、荏原ユージライト株式会社製のCU-BRITE TH-R III(登録商標)シリーズの界面活性剤薬液を用いることができる。この場合、下地銅めっき浴中への添加濃度は、1 mL/L以上5 mL/L以下が好ましい。
【0062】
レベリング剤としては、例えば、荏原ユージライト株式会社製のCU-BRITE TH-R III(登録商標)シリーズの高分子炭化水素を主成分とするレベリング剤薬液を用いることができる。この場合、下地銅めっき浴中への添加濃度は、3 mL/L以上10 mL/L以下が好ましい。
【0063】
塩化物イオンを含む水溶液としては、例えば、市販の塩酸(塩化水素濃度35%〜37%)を用いることができる。この場合、下地銅めっき浴中への添加濃度は、0.05 mL/L以上0.3 mL/L以下が好ましい。
【0064】
ここで、メルカプト基を持つ化合物と界面活性剤とレベリング剤と塩化物イオンとを含む有機系添加剤自体は、従来から銅めっき処理における光沢剤として知られているが、光沢剤として添加・使用する場合の濃度(推奨濃度)は、通常0.5〜1.5 mg/L程度である。これに対し、本発明における該有機系添加剤(メルカプト基を持つ化合物)の濃度は、10〜60 mg/Lと、通常の光沢剤用途に比して桁違いに高いところに特徴がある。
【0065】
具体的な事例は後述するが、本発明の製造方法で形成した下地銅めっき層2は前述したような特徴を有し、本発明の下地銅めっき層2が組み込まれた銅張積層板10は、表面処理銅箔5を化学エッチング除去した後の樹脂フィルム6での透過視認性が良好であり、明らかに効果があると言える。ただし、本発明の下地銅めっき層2の特徴が「樹脂フィルム部分での透過視認性」に効果を示すメカニズムに関しては、残念ながら、現段階において解明できていない。
【0066】
(S30)粗化銅めっき層形成工程
本工程では、下地銅めっき層2の直上に粗化銅めっき層3を形成する。粗化銅めっき層3の形成は、硫酸銅および硫酸を主成分とする酸性銅めっき浴にて銅箔1を陰極とする電解処理により行い、粗化粒を下地銅めっき層2の表面に析出・成長させるものである。酸性銅めっき浴の液組成、液温、電解条件、粗化銅めっき層の平均厚さは、例えば下記の範囲から選択されることが好ましい。
硫酸銅五水和物:20 g/L以上300 g/L以下
硫酸:10 g/L以上200 g/L以下
その他成分:Fe,Mo,Ni,Co,Cr,Zn,Wから選ばれる一種以上の添加が好ましい
液温:15℃以上50℃以下
電流密度:20 A/dm
2以上100 A/dm
2以下(限界電流密度超とする)
処理時間:0.3秒間以上2.0秒間未満
平均厚さ:0.05μm以上0.3μm以下。
【0067】
粗化銅めっき層3の形成は、限界電流密度を超えた電流密度のめっき(いわゆる、ヤケめっき)によって行うので、析出・成長する粗化粒が過剰に巨大化しないように、めっき浴にFe,Mo,Ni,Co,Cr,Zn,Wから選ばれる一種以上の硫酸塩を添加することが好ましい。例えば、硫酸鉄七水和物を10 g/L以上30 g/L以下の範囲でめっき浴に添加する。これにより、粗化形状の制御が容易になる。なお、粗化形状は、各粗化粒が凹凸方向や面内方向に均等に析出・成長している限り特段の限定はなく、粒形状でもよいし、こぶ形状でもよいし、樹枝形状でもよいし、針形状でもよい。
【0068】
(S40)防錆層形成工程
本工程では、粗化銅めっき層3の直上に防錆層4を形成する。前述したように、防錆層4は本発明において必須の層ではないが、ここでは、防錆層4を形成する場合の工程例について説明する。防錆層4の形成は、ニッケルめっき処理と、亜鉛めっき処理と、3価クロム化成処理(クロメート処理)と、シランカップリング処理とからなる。
【0069】
ニッケルめっき処理(ニッケルめっき層の形成)は、例えば、下記のめっき条件から選択されることが好ましい。
硫酸ニッケル六水和物:280 g/L以上320 g/L以下
塩化ニッケル:40 g/L以上50 g/L以下
硼酸:40 g/L以上60 g/L以下
その他成分:他の金属元素(例えばCo)を添加してNi-Co合金めっき層としてもよい
液温:30℃以上60℃以下
電流密度:0.5 A/dm
2以上10 A/dm
2以下(限界電流密度末満とする)
処理時間:1秒間以上10秒間以下
平均厚さ:9 nm以上50 nm以下。
【0070】
亜鉛めっき処理(亜鉛めっき層の形成)は、例えば、下記のめっき条件から選択されることが好ましい。
硫酸亜鉛:80 g/L以上120 g/L以下
硫酸ナトリウム:60 g/L以上80 g/L以下
その他成分:他の金属元素(例えばCu)を添加してZn-Cu合金めっき層としてもよい
液温:15℃以上35℃以下
電流密度:0.1 A/dm
2以上10 A/dm
2以下(限界電流密度末満とする)
処理時間:1秒間以上10秒間以下
平均厚さ:1 nm以上10 nm以下。
【0071】
3価クロム化成処理(3価クロム化成処理層の形成)は、例えば、下記の処理条件から選択されることが好ましい。
処理液:3価クロムの反応型クロメート液(3価クロムイオン濃度:金属クロム換算で70 mg/L以上500 mg/L未満。3価クロムイオンの供給源に特段の限定はなく、例えば、硝酸クロム、硫酸クロム、塩化クロムが挙げられる)
液温:15℃以上40℃以下
処理時間:3秒間以上30秒間以下
平均厚さ:1 nm以上10 nm以下。
【0072】
シランカップリング処理(シランカップリング処理層の形成)は、例えば、下記の処理条件から選択されることが好ましい。
処理液:シランカップリング液(積層する可撓性基材に適したものを選択する。例えば、可撓性基材がポリイミドからなる場合、アミノシランやアミノプロピルトリメトキシシランを主成分とするものを選択することが望ましい)
液温:15℃以上35℃以下
処理時間:3秒間以上40秒間以下
乾燥温度:100℃以上300℃以下
乾燥時間:5秒間以上35秒間以下
厚さ:分子層レベル。
【0073】
以上S10〜S40の工程により、本発明に係る銅張積層板10に好適な表面処理銅箔5(銅張積層板用の表面処理銅箔)が完成する。
【0074】
(S50)可撓性基材積層工程
本工程では、表面処理銅箔5と樹脂フィルム6とを積層する。二層銅張積層板の場合、表面処理銅箔5と樹脂フィルム6とが、樹脂接着層を介さずに加熱・押圧されて直接積層される。加熱・押圧の条件は、樹脂フィルム6の性状により適宜設定されるが、例えば下記の範囲から選択されることが好ましい。
温度:150℃以上400℃以下
圧力:0.5 MPa以上30 MPa以下
保持時間:1分間以上120分間以下。
【0075】
本工程における加熱により、通常、銅箔1(圧延銅箔)は再結晶焼鈍されて立方体集合組織に調質される。これにより、銅箔1の屈曲特性(最終的なFPCの屈曲特性)が飛躍的に向上する。なお、本工程のハンドリング中に、表面処理銅箔5の望まない変形(伸び、しわ、折れ等)を防ぐため、本工程に供される表面処理銅箔5(少なくとも銅箔1)は、再結晶組織に調質されていない状態(少なくとも焼鈍されていない状態)であることが好ましい。
【0076】
上記では、予め成形された樹脂フィルム6を可撓性基材として用いた場合について説明したが、本発明はそれに限定されるものではない。例えば、ポリイミドになるワニスを表面処理銅箔5の接合面に塗布し、熱処理によって該ワニスを硬化させて可撓性基材とする積層方法(キャスト法による二層銅張積層板の製造)であってもよい。
【0077】
以上の工程により、本発明に係る銅張積層板10が完成する。
【0078】
(FPC製造方法)
上記で得られた銅張積層板10に対し、回路配線の形成工程を行うことによりFPCが製造される。回路配線の形成工程は、通常、銅張積層板10の表面処理銅箔5の一部を化学エッチング除去することによりなされる。表面処理銅箔5がエッチング除去され残った樹脂フィルム6部分において、良好な透過視認性を確保することが、本発明の目的の一つである。
【実施例】
【0079】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
[実施例1の表面処理銅箔の作製]
以下の手順により、実施例1の表面処理銅箔5を作製した。はじめに、銅箔1として、無酸素銅からなる圧延銅箔(厚さ11μm)を準備した。次に、銅箔1に対して電解脱脂処理および酸洗処理をそれぞれ下記の条件で施して、銅箔1の表面を清浄化した。酸洗処理の後、銅箔1を水洗した。
【0081】
(電解脱脂処理)
溶液:水酸化ナトリウム40 g/Lと炭酸ナトリウム20 g/Lとを含む水溶液
液温:40℃
電流密度:10 A/dm
2
処理時間:10秒。
【0082】
(酸洗処理)
溶液:硫酸150 g/Lを含む水溶液
液温:室温(25℃)
処理時間:10秒。
【0083】
次に、銅箔1の片面に、下記のめっき条件により下地銅めっき層2を形成し、その後、水洗を行った。
(下地銅めっき処理)
硫酸銅五水和物:170 g/L
硫酸:70 g/L
添加剤1:有機硫黄化合物としてSPS 30 mg/L
添加剤2:界面活性剤として荏原ユージライト株式会社製のCU-BRITE TH-R III
シリーズの界面活性剤薬液 3 mL/L
添加剤3:レベリング剤として荏原ユージライト株式会社製のCU-BRITE TH-R III
シリーズの高分子炭化水素を主成分とするレベリング剤薬液 5 mL/L
添加剤4:塩化物イオンを含む水溶液として塩酸試薬原液 0.15 mL/L
液温:35℃
電流密度:7 A/dm
2
処理時間:10秒
平均厚さ:0.1μm。
【0084】
次に、下地銅めっき層2上に、下記のめっき条件により粗化銅めっき層3を形成し、その後、水洗を行った。
(粗化銅めっき処理)
硫酸銅五水和物:100 g/L
硫酸:70 g/L
その他成分:硫酸鉄七水和物 20 g/L
液温:30℃
電流密度:60 A/dm
2
処理時間:0.5秒
平均厚さ:0.05μm。
【0085】
次に、粗化銅めっき層3を形成した銅箔1に対し、下記のめっき条件により防錆層4を形成した。各処理間および最後に水洗を行った。なお、ニッケルめっき処理、亜鉛めっき処理および3価クロム化成処理は、銅箔1の両面に対して行い、シランカップリング処理は、銅箔1の接合面(粗化銅めっき層3の側)に対してのみ行った。
【0086】
(ニッケルめっき処理)
硫酸ニッケル六水和物:300 g/L
塩化ニッケル:45 g/L
硼酸:50 g/L
液温:50℃
電流密度:2 A/dm
2
処理時間:5秒間
平均厚さ:20 nm。
【0087】
(亜鉛めっき処理)
硫酸亜鉛:90 g/L
硫酸ナトリウム:70 g/L
液温:30℃
電流密度:1.5 A/dm
2
処理時間:4秒間
平均厚さ:7 nm。
【0088】
(3価クロム化成処理)
処理液:硝酸クロムを3価クロムイオンの供給源とした3価クロムの反応型クロメート液
(3価クロムイオン濃度:金属クロム換算で300 mg/L)
液温:30℃
処理時間:5秒間
平均厚さ:5 nm。
【0089】
(シランカップリング処理)
処理液:5%の3-アミノプロピルトリメトキシシランを含有するシランカップリング液
液温:室温(25℃)
処理時間:5秒間
加熱乾燥:200℃,15秒間。
【0090】
[実施例2,3の表面処理銅箔の作製]
実施例2,3の表面処理銅箔5は、下地銅めっき層2の平均厚さをそれぞれ0.3μm,0.6μmとした以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。
【0091】
[実施例4の表面処理銅箔の作製]
実施例4の表面処理銅箔5は、粗化銅めっき層3の平均厚さを0.11μmとして、粗化銅めっき層3の粗化粒を実施例1のよりも大きく形成したこと以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。
【0092】
[実施例5,6の表面処理銅箔の作製]
実施例5,6の表面処理銅箔5は、下地銅めっき層2の平均厚さをそれぞれ0.3μm,0.6μmとした以外は、上述の実施例4の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。
【0093】
[実施例7の表面処理銅箔の作製]
実施例7の表面処理銅箔5は、粗化銅めっき層3の平均厚さを0.3μmとして、粗化銅めっき層3の粗化粒を実施例4のよりも更に大きく形成したこと以外は、上述の実施例1の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。
【0094】
[実施例8,9の表面処理銅箔の作製]
実施例8,9の表面処理銅箔5は、下地銅めっき層2の平均厚さをそれぞれ0.3μm,0.6μmとした以外は、上述の実施例7の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。
【0095】
[比較例1,2の表面処理銅箔の作製]
比較例1の表面処理銅箔は、粗化銅めっき層3の平均厚さを0.03μmとして、粗化銅めっき層3の粗化粒を実施例2のよりも小さく形成したこと以外は、上述の実施例2の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。比較例1は、粗化銅めっき層3の平均厚さの影響を観ることができる。また、比較例2の表面処理銅箔は、下地銅めっき層2の形成にあたって所定の有機系添加剤を添加しなかったこと以外は、比較例1の表面処理銅箔と同様の条件で作製した。比較例2は、比較例1に加えて、下地銅めっき層2の形成における所定の有機系添加剤の影響を観ることができる。
【0096】
[比較例3,4の表面処理銅箔の作製]
比較例3の表面処理銅箔は、粗化銅めっき層3の平均厚さを0.35μmとして、粗化銅めっき層3の粗化粒を実施例8のよりも更に大きく形成したこと以外は、上述の実施例8の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。比較例3は、粗化銅めっき層3の平均厚さの影響を観ることができる。また、比較例4の表面処理銅箔は、下地銅めっき層2の形成にあたって所定の有機系添加剤を添加しなかったこと以外は、比較例3の表面処理銅箔と同様の条件で作製した。比較例4は、比較例3に加えて、下地銅めっき層2の形成における所定の有機系添加剤の影響を観ることができる。
【0097】
[比較例5の表面処理銅箔の作製]
比較例5の表面処理銅箔は、下地銅めっき層2の形成にあたって所定の有機系添加剤を添加しなかったこと以外は、実施例5の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。比較例5は、下地銅めっき層2の形成における所定の有機系添加剤の影響を観ることができる。
【0098】
[比較例6の表面処理銅箔の作製]
比較例6の表面処理銅箔は、粗化銅めっき層3の形成にあたってその他成分として鉄成分(硫酸鉄七水和物)を添加しなかったこと以外は、実施例5の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。比較例6は、粗化銅めっき層3の形成におけるその他成分の影響を観ることができる。
【0099】
[比較例7〜9の表面処理銅箔の作製]
比較例7〜9の表面処理銅箔は、下地銅めっき層2を形成しなかったこと以外は、それぞれ実施例1,4,7の表面処理銅箔5と同様の条件で作製した。比較例7〜9は、下地銅めっき層2の有無の影響を観ることができる。
【0100】
実施例1〜9および比較例1〜9の表面処理銅箔の作製条件一覧を後述の表1に示す。
【0101】
[銅張積層板の作製]
上記の実施例1〜9および比較例1〜9の表面処理銅箔を用いて、以下の条件により、実施例1〜9および比較例1〜9の銅張積層板を作製した。なお、銅張積層板としては、表面処理銅箔の粗化面(粗化銅めっき層3を形成した側の面)を樹脂フィルムに対向させて、樹脂フィルムの両面に表面処理銅箔を積層した二層両面銅張積層板を作製した。
樹脂フィルム:ポリイミドフィルム(厚さ25μm、株式会社カネカ製、ピクシオ)
温度:300℃
圧力:5 MPa
保持時間:15分間。
【0102】
[FPC模擬試料の作製]
実施例1〜9および比較例1〜9の銅張積層板に対して、両面の表面処理銅箔の一部を化学エッチング除去し、ポリイミドフィルムの両面が所定の面積で露出したFPC模擬試料(実施例1〜9および比較例1〜9)を作製した。化学エッチング除去は、塩化第二鉄のスプレーエッチングにより行った。
【0103】
[表面処理銅箔およびFPC模擬試料の性状調査]
(1)表面処理銅箔の下地銅めっき層のXRD測定
実施例1〜9および比較例1〜9の表面処理銅箔において、下地銅めっき層を形成した段階で該下地銅めっき層の表面に対して、X線回折装置(株式会社リガク、型式:Ultima IV)を用いてXRD測定を行った。結果は後述の表1に併記する。なお、圧延銅箔の表面に対しても同様のXRD測定を行い、{022}Cu面に優先配向していること(圧延集合組織を有していること)を別途確認した。
【0104】
(2)表面処理銅箔の下地銅めっき層の微細組織観察
実施例1〜9および比較例1〜9の表面処理銅箔に対して、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、下地銅めっき層/圧延銅箔の界面付近の断面微細組織を観察した。また、撮影したSEM像から、圧延銅箔を構成する多結晶粒の平均厚さと下地銅めっき層を構成する多結晶粒の平均厚さとを求めた。結果は後述する。
【0105】
(3)表面処理銅箔の粗化銅めっき層の表面粗度測定
実施例1〜9および比較例1〜9の表面処理銅箔において、粗化銅めっき層を形成した段階で該粗化銅めっき層の表面粗度を測定した。測定装置として表面粗さ測定機(株式会社小坂研究所、型式:SE500)を用い、十点平均粗さRzjis(JIS B 0601:2001)を測定した。測定条件は、触針径を2μm、測定速度を0.2 mm/s、測定長を4 mm、抜き取り基準長さを0.8 mm、荷重を0.75 mN以下とした。結果は後述の表1に併記する。
【0106】
(4)露出したポリイミドフィルム部分での透過視認度測定
実施例1〜9および比較例1〜9のFPC模擬試料における露出したポリイミドフィルム部分対して、ヘイズメーター(BYKガードナー・ヘイズ-ガード プラス、株式会社東洋精機製作所)を用いて、該ポリイミドフィルムの全光線透過率T
t、拡散透過率T
d、透明度Cを測定し、平行光線透過率T
pと透過視認度V
tとを前述の定義式を用いて算出した。結果を後述の表2に示す。
【0107】
(5)表面処理銅箔とポリイミドフィルムとの間のピール強度測定
実施例1〜9および比較例1〜9のFPC模擬試料における表面処理銅箔が残存している部分(回路配線部分)に対して、JIS C6481に準拠してピール強度の測定を行った。結果を後述の表2に併記する。
【0108】
(6)露出したポリイミドフィルム部分での透過視認性の確認実験
実施例1〜9および比較例1〜9のFPC模擬試料における露出したポリイミドフィルム部分の下に透過視認するマーカーを配置し、該マーカーとポリイミドフィルムとの距離を「0 mm → 約10 mm」で変化させて、当該ポリイミドフィルムを介した透過視認性を目視で確認した。
【0109】
【表1】
【0110】
【表2】
【0111】
前述したように、銅箔1の表面(圧延面)は、{022}Cu面に優先配向しており、圧延集合組織を有していることが確認された。これに対し、表1に示したように、実施例1〜9の表面処理銅箔5の下地銅めっき層2では、その表面が{111}Cu面および/または{002}Cu面に優先配向しており、銅箔1の圧延面と異なる結晶方位を有していることが確認された。
【0112】
また、下地銅めっき層2の形成において所定の有機系添加剤を使用した比較例1,3,6においても、下地銅めっき層2の表面が{111}Cu面に優先配向していた。一方、下地銅めっき層2の形成において所定の有機系添加剤を使用しなかった比較例2,4,5は、下地銅めっき層2の表面が銅箔1の圧延面と同じ{022}Cu面に優先配向していた。
【0113】
なお、所定の有機系添加剤を使用して形成した下地銅めっき層2は、その結晶配向性が時間の経過と共に変化していく様が観察されたことから、室温再結晶が生じているものと考えられた。そのため、上記のXRD測定は、結晶配向性の経時変化を考慮して、変化が十分に完了していると考えられる時間(例えば、3日間)が経過してから行ったものである。一方、所定の有機系添加剤を使用しないで形成した下地銅めっき層2では、その結晶配向性に経時変化は観察されなかった。
【0114】
図7は、比較例5および実施例5の表面処理銅箔における「下地銅めっき層/圧延銅箔」の界面付近の断面微細組織のSEM観察像であり、(a)比較例5、(b)実施例5である。
図7(a),(b)に示したように、いずれの場合においても、銅箔1は、扁平状の多結晶粒から構成されており、該多結晶粒の平均厚さは約0.07μmと見積もられた。
【0115】
下地銅めっき層2の微細組織を比較すると、比較例5と実施例5との間に大きな差異があることが判る。
図7(a)に示したように、比較例5の下地銅めっき層2を構成する多結晶粒は、銅箔1のそれらと同様の扁平形状を有しており、銅箔1の多結晶粒からエピタキシャル成長しているかのような微細組織を有している。そのため、比較例5の下地銅めっき層2を構成する多結晶粒の平均厚さも、銅箔1と同様に、約0.07μmと見積もられた。
【0116】
一方、
図7(b)に示したように、実施例5の下地銅めっき層2を構成する多結晶粒は、銅箔1のそれらと全く異なる微細組織を有していることが確認された。また、実施例5の下地銅めっき層2を構成する多結晶粒の平均厚さは、約0.15μmと見積もられ、銅箔1のそれよりも大きいことが確認された。
【0117】
粗化銅めっき層3の表面粗度に関しては、表1に示したように、実施例1〜9および比較例1〜9の表面処理銅箔において、特段の差異が見出せなかった。言い換えると、金属の表面粗さを示す一般的な指標(ここではRzjis)では、後述する特性(特に、化学エッチング除去により露出した樹脂フィルムを介した透過視認性)の制御・良否判定が困難であることが確認された。
【0118】
表2に示したように、実施例1〜9のFPC模擬試料は、平行光線透過率T
pと透明度Cとが高く、その結果、高い透過視認度V
tが得られた。また、目視による、ポリイミドフィルムを介した透過視認性の確認実験においても、良好な透過視認性を示すことが確認された。
【0119】
図8は、実施例5のFPC模擬試料において表面処理銅箔を化学エッチング除去した後の露出したポリイミドフィルム部分での透過視認性の一例を示す写真であり、(a)透過視認するマーカーを、ポリイミドフィルムの下に密着させて配置した場合の透過視認性、(b)透過視認するマーカーを、ポリイミドフィルムの下で隙間(約10 mm)を空けて配置した場合の透過視認性である。
図8(a),(b)に示したように、いずれの場合においても、マーカーに表示された文字を十分視認・判別することができる。
【0120】
なお、前述した
図2は、比較例5のFPC模擬試料におけるポリイミドフィルムを介した透過視認性の結果である。
図2と
図8とを比較すると、ポリイミドフィルムを介した透過視認性の差異は、一目瞭然である。種々の透過視認性確認実験から、十分な透過視認性を確保するためには、透過視認度V
tは少なくとも10%以上が必要であることが確認された。
【0121】
回路配線部分のピール強度(樹脂フィルムと銅箔との接合性)に関しては、実施例1〜9のFPC模擬試料のいずれにおいても、0.5 N/mm以上を示し、要求特性を十分満足していることが確認された。
【0122】
比較例1,2のFPC模擬試料は、粗化銅めっき層3の平均厚さを本発明の規定よりも薄くした(粗化銅めっき層3の粗化粒を小さく形成した)試料であり、高い透過視認度Vt(良好な透過視認性)を示したものの、回路配線部分のピール強度が不十分であった。また、比較例2のFPC模擬試料は、下地銅めっき層2の形成において所定の有機系添加剤を使用しておらず、比較例1のFPC模擬試料と比較して、拡散透過率T
dが増大し、透明度Cが大きく低下していた。
【0123】
比較例3,4のFPC模擬試料は、粗化銅めっき層3の平均厚さを本発明の規定よりも厚くした(粗化銅めっき層3の粗化粒を大きく形成した)試料であり、高いピール強度を示したものの、透過視認度V
tが大きく低下した。また、比較例3と比較例4とを比較すると、透明度Cに大きな差異があった。
【0124】
比較例5のFPC模擬試料は、実施例5との比較により、下地銅めっき層2の形成における所定の有機系添加剤の影響を観ることができる。その結果、比較例5では、拡散透過率T
dが増大し、透明度Cが大きく低下していた。言い換えると、本発明における表面処理銅箔の製造方法のように、下地銅めっき層2の形成の際に所定の有機系添加剤を添加することにより、最終的なFPCにおいてエッチングにより露出させた樹脂フィルムの拡散透過率T
dを減少させ、透明度Cを向上させることができると考えられる。
【0125】
比較例6のFPC模擬試料は、実施例5との比較により、粗化銅めっき層3の形成におけるその他成分の影響を観ることができる。その結果、比較例6では、拡散透過率T
dが増大していた。これは、粗化銅めっき層3の形成において、個々の粗化粒の大きさが不揃いになったことに起因する可能性が考えられる。
【0126】
比較例7〜9のFPC模擬試料は、表面処理銅箔で下地銅めっき層2を形成していない試料であり、実施例1,4,7と比較して、全光線透過率T
tが減少し、拡散透過率T
dが増大し、透明度Cが大きく低下していた。この結果から、表面処理銅箔において下地銅めっき層2を形成することの意義は大きいと考えられる。
【0127】
以上説明したように、本発明に係る実施例1〜9の銅張積層板から作製したFPCは、樹脂フィルムと銅箔との優れた接合性が維持され、かつ銅箔を化学エッチング除去して露出させた樹脂フィルム部分での透過視認性に関して、樹脂フィルムと位置決めマーカーとの配置関係によらず、優れた透過視認性を確保できることが確認された。
【0128】
上述した実施形態や実施例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実施例の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
【課題】樹脂フィルムと銅箔との優れた接合性が維持され、かつ銅箔が化学エッチング除去されて残った樹脂フィルム部分での透過視認性に関して、優れた透過視認性を確保しながら樹脂フィルムと位置決めマーカーとの配置関係で高い自由度を有するFPCおよび該FPCを得るための銅張積層板を提供する。
【解決手段】本発明の銅張積層板は、樹脂フィルムと銅箔とが直接積層された銅張積層板であって、前記樹脂フィルムと前記銅箔とのピール強度が0.5 N/mm以上であり、前記銅箔の一部が化学エッチング除去されたとき、化学エッチング除去後の残存した前記樹脂フィルムにおいて、式「V