特許第5732188号(P5732188)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732188
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】ウェハボート
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20150521BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20150521BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   H01L21/68 N
   H01L21/205
   H01L21/31 B
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2009-19608(P2009-19608)
(22)【出願日】2009年1月30日
(65)【公開番号】特開2009-182332(P2009-182332A)
(43)【公開日】2009年8月13日
【審査請求日】2012年1月17日
【審判番号】不服2014-2786(P2014-2786/J1)
【審判請求日】2014年2月13日
(31)【優先権主張番号】12/011,981
(32)【優先日】2008年1月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501380070
【氏名又は名称】エーエスエム インターナショナル エヌ.ヴェー.
【氏名又は名称原語表記】ASM INTERNATIONAL N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】特許業務法人 武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デ・リデール, クリスチアヌス フェラルドゥス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファルセン, アドリアーン
【合議体】
【審判長】 長屋 陽二郎
【審判官】 石川 好文
【審判官】 刈間 宏信
(56)【参考文献】
【文献】 実開平1−167050(JP,U)
【文献】 特開2000−232151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/67-21/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理中に垂直方向に間隔を空けて配列されている状態でウェハ(1;41)を保持するためのウェハボートであって、
前記ウェハボートが、実質的に水平状態で前記ウェハを受け入れおよび保持するための、垂直方向に離間している複数の保持位置を含み、前記保持位置が、前記ウェハボートの前面(F)からアクセスされることができることで、ウェハの挿入および抜き取りを可能にし、
少なくとも1つの前記保持位置が、前記ウェハを支持するために前記ウェハの後方部分を係合する1つ以上の後方支持体(3;23;23’;33;33’;43)と、前記ウェハの互いに反対にある側方部分を係合し支持するための2つの側方支持体(2;2’;22;22’;32;32’;42;42’)とを含み、
前記1つ以上の後方支持体が、前記ウェハの前記後方部分を前記2つの側方支持体に対して第1の所定距離だけ垂直下方向に支持する位置に配置され、
前記ウェハの前記後方部分と前記2つの側方部分が同一水平面に配置された場合において、挿入されるウェハの中心線断面が水平線に対して中心付近で重力によって偏向する距離を偏向値α、挿入されるウェハの中心線断面が水平線に対して前記前面(F)で重力によって偏向する距離を垂下値δと表すと、δはαより大きくなるが、
前記第1の所定距離は、前記ウェハボートの前記前面(F)付近において、挿入された前記ウェハの前方部分が重力によって垂れ下がる量がαより大きくならないように制限されて設定される、
ことを特徴とするウェハボート。
【請求項2】
請求項1に記載のウェハボートであって、
前記ウェハボートが、前記ウェハボートの第1の端部にある第1の端部部材と前記ウェハボートの第2の端部にある第2の端部部材との間に実質的に垂直方向に伸びる、少なくとも1つの後方ロッドと、少なくとも2つの側方ロッドとを含み、
少なくとも1つの前記保持位置には、前記保持位置によって保持されるウェハの外周を取り囲むように設けられる内周を有するシールド要素が設けられ、
前記シールド要素の互いに反対にある側方部分が、第1の垂直位置で前記側方ロッドに接続され、前記シールド要素の後方部分が、前記第1の垂直位置よりも下方にある第2の垂直位置で前記後方ロッドに接続され、その結果、前記ウェハボートの前記前面付近で前記シールド要素の前方部分が重力によって垂れ下がる状態が、前記第1の垂直位置と前記第2の垂直位置が垂直方向において同じ高さに配置される場合の構成と比べて、少なくとも部分的に補正されるが、過度には補正されない、
ことを特徴とするウェハボート。
【請求項3】
実質的に平坦で円形のウェハを保持するために設けられ、前記2つの側方支持体が、挿入されているウェハの幾何学的中心に対してほぼ正反対に配置されているけれども、前記ウェハボートの前記前面の方向にわずかにずれており、前記少なくとも1つの後方支持体が、前記2つの側方支持体から実質的に等距離で配置されている請求項1または2のいずれか1項に記載のウェハボート。
【請求項4】
αは前記少なくとも1つの後方支持体および前記2つの側方支持体が同一水平線上に配置された場合に挿入されている前記ウェハの中心から前記水平線までの垂直距離であり、δは前記少なくとも1つの後方支持体および前記2つの側方支持体が同一水平線上に配置された場合に挿入されている前記ウェハの垂れ下がる前方部分から前記水平線までの最大垂直距離であるとき、前記少なくとも1つの後方支持体が、前記2つの側方支持体の前記垂直位置に対してほぼδ−αの距離だけ垂直下方向に設けられる、
請求項3に記載のウェハボート。
【請求項5】
実質的に平坦で円形のウェハを保持するために設けられ、前記少なくとも1つの後方支持体が、前記2つの側方支持体の前記垂直位置に対して垂直下方向に設けられ、挿入されているウェハの前方部分が、前記ウェハの幾何学的中心から下方に垂れ下がらないようになっている先行する請求項のいずれか1項に記載のウェハボート。
【請求項6】
実質的に平坦で円形のウェハを保持するために設けられ、前記少なくとも1つの保持位置が、2つの後方支持体と2つの側方支持体とを含み、前記2つの側方支持体が、挿入されているウェハの幾何学的中心に対して実質的に正反対に配置され、前記2つの後方支持体が、前記ウェハの後方部分に沿って配置され、前記2つの側方支持体の間に伸びる前記後方部分が前記2つの後方支持体によって等距離に分割されるようになっている先行する請求項のいずれか1項に記載のウェハボート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造の分野、特にバッチ炉内で処理中の半導体ウェハを保持するためのウェハボートに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体の製造プロセスの過程で、半導体ウェハは、例えば熱処理、酸化または化学気相付着などの様々な処理ステップを受ける可能性がある。これらの処理ステップを効率良く実施するため、一般に、複数のウェハは、いわゆるウェハボート、すなわち炉または反応炉内で処理される間半導体ウェハを間隔を空けて配列されている状態で保持するためのキャリアの上に搭載される。ウェハボートは、通常垂直方向で使用される。すなわち、ウェハは水平方向で上下に置かれている。ウェハボートのおそらく最も一般的なタイプは、天部材と底部材との間に伸びる3本以上の垂直方向の平行なロッドを含んでいる。ロッドには垂直方向に離間する凹みが対応する高さに形成されている。各凹みは、ウェハの側方部を係合するために設けられる支持体として働き、同じ高さにある凹みは、実質的に水平方向にウェハを受け入れて支持するための保持位置を定義する。ウェハ上の重力ストレスを最小限に抑えるため、ロッドのうちの少なくとも2本は、ウェハボートの前面に向かって配置されているが、前面ではウェハが保持位置に挿入されたりそこから抜き取られたりする。さらに少なくとも1本のロッドが、ボートの背面に配置される。ウェハに対するロッドの配置は、ウェハをウェハボートに挿入したりそこから抜き取ったりすることができる必要があるという要件に従うので、前述の構成は、一般に、挿入されている各ウェハのほとんど半分近くは支持されず、何にも触れることなくぶら下がっている状態のウェハボートとなることを意味する。ウェハ自体の重さのために、このようなウェハの支持されない部分は垂れ下がりやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,287,112号
【特許文献2】米国特許第4,640,223号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体ウェハをウェハボートに挿入したりそこから抜き取ったりするためのエンドエフェクタ(end effector)を含むウェハ取扱装置には、連続して重ねられているいずれの2枚のウェハ間の空間にもアクセス可能であり、その空間でエンドエフェクタの何らかの操作が可能であることが必要である。例えば、処理後にウェハボートから1枚以上のウェハを抜き出すためには、エンドエフェクタは、ウェハのそれぞれの中央部などの適切な位置でウェハを係合するために1対以上のウェハ対の間の隙間空間(単数または複数)に到達できることが必要である。ウェハが垂れ下がっていると、いずれか2枚のウェハ間の空間へのアクセス性が悪化するとともに、操作に使用することができる有効な余裕空間が狭くなる。これまで、この問題はウェハボートの保持位置間の垂直方向の空間を広くすることによって対処されてきたが、これはボード当たりのウェハ容量を減少させ、ひいてはプロセスの効率を低下させる。本発明は、前記欠点を無くしてウェハの垂れ下がりに関連する前述の問題を緩和または解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態によれば、処理中に垂直方向に間隔を空けて配列されている状態でウェハを保持するためのウェハボートが提供される。ウェハボートは、実質的に水平状態でウェハを受け入れおよび保持するための、垂直方向に離間している複数の保持位置を含む。保持位置は、ウェハボートの前面からアクセスされることができることで、ウェハの挿入および抜き取りを可能にする。少なくとも1つの保持位置は、ウェハの後方部分を係合するための後方支持体と、ウェハの互いに反対にある側方部分を係合するための2つの側方支持体とを含む。後方支持体は、ウェハボートの前面付近で挿入されているウェハの前方部分が重力によって垂れ下がる状態が少なくとも部分的に補正されるように、2つの側方支持体よりも低い位置に設けられる。
【0006】
本発明の別の形態によれば、同様の原理は、ウェハボートに装着可能な、いわゆるシールド要素、すなわちシールドリングに適用されてもよい。シールドリングは、ウェハボートの特定の保持位置と関連しており、端部効果を防止して実際のウェハ表面上で発生する付着の均一性を改善するため、処理されるウェハの付着表面を拡張する働きをする。このようなシールドリングを有するウェハボートの実施例が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、本開示に関連する後述されるシールドリングは、何らウェハを支持しないで単にウェハの周囲を取り囲むだけである点に留意されたい。本開示のこの形態によるウェハボートは、ウェハボートの第1の端部にある第1の端部部材とウェハボートの第2の端部にある第2の端部部材との間に垂直方向に伸びる、少なくとも1つの後方ロッドと、少なくとも2つの側方ロッドとを含む。ロッドには、実質的に水平状態でウェハを受け入れて支持するための垂直方向に離間する複数の保持位置の支持体を定義する凹みが設けられている。保持位置は、ウェハボートの前面からアクセス可能であることで、ウェハの挿入および抜き取りを可能にする。少なくとも1つの保持位置には、前記保持位置によって保持されるウェハの外周を取り囲むように設けられる内周を有するシールド要素が設けられている。シールド要素の互いに反対にある側方部分は、側方ロッドに接続されており、シールド要素の後方部分は、シールド要素の側方部分が側方ロッドに接続されている位置よりも低い位置で後方ロッドに接続されており、その結果、ウェハボートの前面付近でシールド要素の前方部分が重力によって垂れ下がる状態が少なくとも部分的に補正される。
【発明の効果】
【0007】
本発明のウェハボートによれば、ウェハボートは、実質的に水平状態でウェハを受け入れおよび保持するための、垂直方向に離間している複数の保持位置を含み、保持位置は、ウェハボートの前面からアクセス可能であることで、ウェハの挿入および抜き取りを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】(a)はウェハボートに挿入され、1つの後方支持体および2つの側方支持体によって支持される円形ウェハを示す略上面図、(b)は従来のウェハボート内で連続して重ねられている2枚のウェハの中心線断面を示す略側面図、(c)は本発明によるウェハボート内で連続して重ねられている2枚のウェハの中心線断面を示す略側面図である。
図2】従来のウェハボートに挿入されている円形ウェハを示す略斜視図である。
図3】ウェハボートに挿入され、1つの後方支持体および2つの側方支持体によって支持され、さらにシールドリングによって取り囲まれている円形ウェハを示す略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の上および他の特徴は、以下の詳細な説明および添付図面から完全に理解されるであろう。
【0010】
図1(a)は、ウェハボートの保持位置に実質的に水平に挿入されている円形ウェハ1の略上面図を示す。示されるウェハ1の上方に置かれているウェハボート内のウェハ、およびあるはずのウェハボートの天部材は、明確さの理由から示されていない。ウェハ1は、2つの側方支持体2,2’および1つの後方支持体3によって支持され、各支持体は、ウェハボートの構造の一部である垂直ロットにある凹みとして形成されてもよい。2つの側方支持体2,2’は、ウェハ1の幾何学的中心4に対してほぼ正反対に配置されているが、ウェハ1の適切なバランスをとるためにウェハボートの前面Fの方向にわずかにずれており、同一の垂直軸または高さを有している。後方支持体3は、ウェハボートの前面F、すなわちウェハがウェハボートに挿入されたりそこから抜き取られたりされる側とは反対側に配置されている。3つの支持体2,2’,3を示されるように空間的に配置することによって、支持体2,2’,3によって定義される保持位置はウェハボートの前面Fからアクセス可能であるという要件に従い、使用するウェハ表面領域を最小限にすることを犠牲にしてもウェハ1を最大限に支持することを確保している。しかしながら、ウェハの円周に沿う支持体の位置と1枚のウェハを支持する支持体の数とはともに、本発明が実施されるのを妨げることなく、実際のウェハボートにおいて変更されてもよい。例えば、支持体の数は、場合により垂直方向に離間する凹みを有する垂直ロッドを追加で設けることによって、図1(a)に示される3つから4つに増やされてもよい。このような4本ロッドのウェハボートを使用して、垂直方向に離間する一連の保持位置であって各保持位置が2つの後方支持体および2つの側方支持体を有する保持位置を提供することもできる。2つの側方支持体は、保持される円形ウェハの中心に対して正反対に配置されてもよいが、これに対して2つの後方支持体は、ウェハの後方部分に沿って、好ましくは、ウェハの円周に沿って測定される、ボートの後方にあるいずれか2つの隣接する支持体間の最短距離がほぼ等しくなるように配置されてもよい。したがって、本発明は、図1(a)に示されるように、円周に沿って設けられる、保持位置当たり3つの支持体を有するウェハボートに関して主に記載されるが、示される支持体の数も示されるその円周上の位置も本発明にとって本質的ではないことは留意されるべきである。4つ以上の支持体を利用してウェハの保持位置を定義する場合には、ウェハボートの前面に最も近い2つの支持体は、一般に側方支持体と称されてもよく、これに対してウェハの後方端部に沿って配置される支持体は、一般に後方支持体と称されてもよい。
【0011】
図1(b)は、図1(a)に示されるように円周方向に設けられるウェハの支持体を有する従来のウェハボート内で、連続して重ねられている2枚のウェハの中心線断面21,21’が重力の作用で垂れ下がる様子を側面図で概略的に示している。これによって、ウェハの中心線断面は、ウェハの中心線、すなわち、後方支持体からウェハの幾何学的中心を通って伸びる線についてのウェハの断面として定義される。例えば、図1(a)で、ウェハ1の中心線は5で示される。図1(a)に示されるウェハボートの後方および側方の支持体の配置を考慮すると、最も大きく垂れ下がるのは、ウェハの中心線断面である。
【0012】
従来のウェハボートでは、保持位置の後方支持体(単数または複数)および側方支持体は、同一垂直座標で配置される。これは図1(b)から分かるが、垂直方向に離間する2つの保持位置にある後方支持体23,23’は、それぞれ対応する側方支持体22および22’(の対)と同じ高さで配置されている。その結果、挿入されているどの2枚のウェハの中心線断面21,21’も、ウェハボートの前面Fに近づくに従ってそれらの水平線Hから次第にそれていくことになる。すなわち、2枚のウェハは、それらの理想形、すなわち無重力状態の位置から次第にそれていく。なお、明確さの理由から、水平線Hは、中心線21を有するウェハが置かれている上方の保持位置についてのみ示されている。ウェハの中心線断面21のその水平線Hに対する中心4付近での偏向距離が、記号αで示され、中心線断面21のその水平線Hに対するウェハの前方Fでの偏向距離が、記号δで示される。一般に、直径300mmのウェハでは、αは約0.3mmであるが、δは約0.6mmである。450mm径ウェハなどの直径がさらに大きいウェハでは、これらの値はさらに大きくなるのは明らかである。ウェハの中心線断面21,21’のウェハボートの前面F付近での偏向量が大きいほど、ウェハ間の空間へのアクセスが困難になり、ウェハ間に到達および/または操作するために水平方向に作動するエンドエフェクタにとって利用できる空間が狭くなる。この事を説明するため、図1(b)に示される状態においてエンドエフェクタが効果的に利用可能な操作空間が、斜線領域24で示される。
【0013】
従来のウェハボートに挿入されるウェハが垂れ下がる様子を3次元で視覚化するのに役立つように、図2が追加された。この図は、全て同じ垂直座標を有する2つの側方支持体42,42’および1つの後方支持体43によって支持されるウェハ41を示す。線HおよびH’は、垂れ下がらない、すなわち重力がなかった場合にウェハ41が広がることになる水平面を定義する。但し分かるように、ウェハは垂れ下がっている。水平面に対して垂れ下がっている量は、ウェハが距離αだけ垂れ下がっているウェハの中心44と、ウェハの中心線45上にあるウェハ41の前方部分の先端部との両方について示されている。この先端部では、最大でδで示されるだけ垂れ下がっている。
【0014】
図1(c)は、今回、本発明によるウェハボート内で連続して重ねられている別の2枚のウェハの中心線断面31,31’の略側面図を示す。さらに、2枚のウェハは、後方支持体33および33’並びに側方支持体32および32’(の対)によってそれぞれ支持されており、同時に、ウェハの円周に沿う支持体の一般的な配置は、図1(a)で示される略上面図と一致している。しかしながら、図1(b)に示される状態と比較すると、後方支持体33,33’は高さが下げられて、これらの関連する側方支持体32,32’(の対)の下方に配置された。その結果、ウェハの中心線断面31,31’は、重力によって下がったままであるが、ウェハの前端部、すなわちウェハボートの前面F付近のウェハ端部は、図1(b)で示される状態と比較して上方に移動した。図1(c)から明らかに分かるように、これによる直接的な効果は、ウェハ間の空間に対するアクセス性が向上すること、およびウェハをウェハボートに挿入したりそこから抜き取ったりするどのウェハ取扱装置の部分にとっても操作空間が広がることである。
【0015】
いずれか2枚のウェハの中心線断面31,31’の前端部の最適な位置決めを達成するためには、保持位置の後方支持体33,33’は、これらの関連する側方支持体32および32’(の対)の垂直方向の位置から下方に距離δ−αの位置にそれぞれ配置されるべきである。αおよびδの定義は以前に与えられたもので図1(b)に示されている。保持位置の側方支持体の位置から下方に距離δ−αの位置に保持位置の後方支持対を配置することによって、挿入されているウェハの前端部の最大偏向は、δからほぼαまで低減されるが、ウェハの中心における偏向は同じ状態のままである。その結果、挿入されているウェハの中心も前端部もその無重力位置に対して距離α以上は垂れ下がらないで、前記ウェハ部分の位置は両方ともほぼ同じ高さになる。これによって、例えば、ウェハをその中心で支持するエンドエフェクタは、処理後にウェハを取り上げるため、ウェハボート内に置かれている2枚以上のいずれのウェハの間にも容易に入り込むことができる。このエンドエフェクタは、取り上げるウェハの後方端部までわざわざ入り込む必要はなく、ウェハの中心より向こう側がどんなに湾曲していても障害とはならない。δがほぼ0.6mmでαがほぼ0.3mmの前述の300mm径ウェハの場合、後方支持体33,33’が距離δ−αだけずれている状態は、α≒δ−α≒0.3mmである状態となる。これは、図1(c)に示されるように、後方から前方に伸びるウェハの中心線断面は、水平線Hとほぼ平行であることを意味する。この最も有利な状態では、ウェハの中心線断面は無重力環境と似ており、この環境によって、2枚のウェハ間へのアクセス性は最適となり、エンドエフェクタは必要に応じてウェハの後方端部までわざわざ到達することが可能になる。他の直径を有するウェハでも同様な結果を得ることができるのは言うまでもない。
【0016】
当業者によって理解されるように、単一の保持位置で2つ以上の後方支持体が使用される場合には、これらの後方支持体の個別の垂直位置は、ウェハの前方部分を適切なレベルで効果的に配置するように、好ましくは、挿入されているウェハの前端部がほぼ距離αだけ垂れ下がるように選択されるべきである。実際には、個別の後方支持体のいずれも側方支持体の下方で距離δ−αの位置に配置されなくても、この結果を得ることができる。
【0017】
特筆すべきは、挿入されているウェハの前端部が、ウェハの理想的な(すなわち、無重力の)位置から持ち上げられてウェハの前端部の位置が垂れ下がる状態が過度に補正されるほど、後方支持体を関連する側方支持体の位置に対して低く設けないことである。こうすることによって、重力自体が作用するのとほぼ同じように、ウェハ間の隙間空間に対するアクセス性が低下するので、実際、本発明で扱う問題は解決されないであろう。半導体製造に関わる他の問題は、ウェハが垂れ下がることには関連しないが、水平に位置合わせされている状態からある角度をなしてウェハの支持体を位置調整することによって対応することもある。基板上に付着させるための化学的気相付着反応炉が開示されている(例えば、特許文献2参照)。その反応炉は、複数のウェハ支持体を保持するウェハボートを受け入れるようになっており、各支持体は、ウェハを平坦な表面対表面で接触する状態で置くことができる上面のある支持板を含む。特許文献2で開示される発明に従ってウェハを処理する際には、ウェハを均一に加熱および冷却して結晶のすべりを防ぐことが重要である。特許文献2で開示されるように、これは、水平方向に対してウェハを傾けてウェハ表面をヒータの放射により多くさらすことによって部分的に達成される。
【0018】
前述のように、対象物の後方支持体の位置を下げてウェハの前方部分が垂れ下がることに起因するアクセス性/操作性への悪影響を緩和または解決するという原理は、シールドリングにも適用することができる。したがって、ウェハの支持体に関して上で与えられた説明は、必要な変更を加えて(mutatis mutandis)シールドリングの支持体にも同様に当てはまる。とは言うものの、明確にするためにさらにここでいくらか述べる。
【0019】
図3は、ウェハボートに挿入されている円形ウェハ51の略上面図を示す。ウェハ51は、前述のように1つの後方支持体53および2つの側方支持体52,52’によって支持されており(図1(a)を比較)、シールドリング54で取り囲まれている。シールドリング54の内径は、ウェハボートの円筒状エンベロープの周囲にぴったりと合うようになっている。シールドリング54と挿入されているウェハ51との間のリング状の隙間55はかなり狭くてもよいが、図3では明確にするために拡大して示されている。シールドリング51は、例えば、溶接によって垂直ロッドに固定されてもよい。シールドリングの自由吊り下げ状態の前方部分が垂れ下がる効果に対処するため、後方部分が後方ロッドに固定されている位置を、側方接続部の垂直位置に対して下向きに移動させる。
【0020】
本発明の前述の2つの形態は、単一のウェハボートで組み合わされてシールドリングが装着されているウェハボートを作製してもよく、ウェハの支持体とシールドリングのウェハボート構造への接続部とはともに、前面付近でウェハおよびシールドリングが垂れ下がる状態が少なくとも部分的に補正されるように配置される。シールドリングを有するウェハボートで本発明の一形態を実施することによって、アクセス性/操作性の問題が緩和されるが、多くの状況では、両方の形態を実施することで初めて最適な結果が得られる。
【0021】
特定の実施形態を参照しながら本発明について説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなしに、様々な変更を加えることができ、等価物を本発明の要素に代替することができることは、当業者によって理解されるであろう。例えば、ウェハ支持体は、必ずしも凹みとして形成される必要はなくて、ウェハボート構造の垂直ロッドから突出する相対的に小さいブラケットとして提供されてもよい。さらに、前述のように、ウェハに対する支持体の数および位置は、その時点の特定の用途によって変化してもよい。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなしに、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるように多くの改変を加えてもよい。したがって、本発明は、この発明を実施するために開示されるいかなる特定の実施形態にも限定されないものであって、本発明は、添付の特許請求の範囲に含有される全ての実施形態を含むものとする。
【符号の説明】
【0022】
1、41、51 ウェハ
2、2’、22、22’、32、32’、42、42’、52、52’ 側方支持体
3、23、23’、33、33’、43、53 後方支持体
4、44 ウェハの中心
5、45 ウェハの中心線
21、21’、31、31’ ウェハの中心線断面
24、34 斜線領域
54 シールドリング
55 隙間
F ウェハボートの前面
H、H’ 水平線
図1
図2
図3