特許第5732204号(P5732204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5732204-脱臭装置及び脱臭方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732204
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】脱臭装置及び脱臭方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/38 20060101AFI20150521BHJP
   B01D 53/81 20060101ALI20150521BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20150521BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20150521BHJP
   B01F 7/04 20060101ALI20150521BHJP
   A61L 9/14 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   B01D53/34 116A
   A61L9/16 DZAB
   B01D46/00 Z
   B01F7/04 B
   A61L9/14
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-126724(P2010-126724)
(22)【出願日】2010年6月2日
(65)【公開番号】特開2011-251250(P2011-251250A)
(43)【公開日】2011年12月15日
【審査請求日】2013年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】391061646
【氏名又は名称】株式会社流機エンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100082647
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 義久
(72)【発明者】
【氏名】西村 章
【審査官】 岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−023717(JP,A)
【文献】 特開2001−327833(JP,A)
【文献】 特開2006−088078(JP,A)
【文献】 実開平06−024724(JP,U)
【文献】 特開2005−270722(JP,A)
【文献】 特開昭60−232229(JP,A)
【文献】 特開2000−107562(JP,A)
【文献】 特開平05−031323(JP,A)
【文献】 実開昭61−150034(JP,U)
【文献】 特開平07−236804(JP,A)
【文献】 実開平05−095631(JP,U)
【文献】 特開平01−171623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/38
B01D 53/81
B01D 46/00
A61L 9/14
A61L 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気成分を含むガスの脱臭装置であって、
中和液を、直径5〜7μmの粒子で構成される霧にする霧化手段と、
この霧化手段によって得た前記中和液の直径5〜7μmの粒子で構成される霧と前記臭気成分を含むガスとを混合・攪拌する混合・攪拌手段と、
この混合・攪拌手段を経たガスに粉体状の吸着剤を混入する吸着剤混入手段と、
この吸着剤混入手段によって吸着剤が混入されたガスが供給されて、吸着剤がろ過面に付着し、清浄ガスが通されるフィルターと、
前記臭気成分を含むガスと混合する前記霧の量を、当該ガスの飽和水分量を超えない範囲内において、前記臭気成分の濃度及び当該臭気成分を含むガスの風量に応じて変化させる噴霧量制御手段と、を有する、
ことを特徴とする脱臭装置。
【請求項2】
前記混合・攪拌手段は、
前記霧及び前記臭気成分を含むガスが供給される筒体と、この筒体内に備えられた当該筒体の軸方向を軸として回転する回転羽根と、を有し、
前記筒体の一端開口が前記臭気成分を含むガスの供給口とされ、前記筒体の他端開口が当該臭気成分を含むガスの排気口とされ、
この排気口の後段に備わる前記フィルターに対して、前記回転羽根が押込みファンとして機能する構成とされた、
請求項1記載の脱臭装置。
【請求項3】
臭気成分を含むガスの脱臭方法であって、
中和液を、直径5〜7μmの粒子で構成される霧とし、
この霧と前記臭気成分を含むガスとを混合及び攪拌し、
この混合及び攪拌をしたガスに粉体状の吸着剤を混入し、
この吸着剤が混入されたガスをフィルターに供給して、吸着剤をろ過面に付着させ、清浄ガスを通すとともに、
前記臭気成分を含むガスと混合する前記霧の量を、当該ガスの飽和水分量を超えない範囲内において、前記臭気成分の濃度及び当該臭気成分を含むガスの風量に応じて変化させる
ことを特徴とする脱臭方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア等の臭気成分を含むガスの脱臭装置及び脱臭方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
家畜、下水、し尿、堆肥、食品、鋳物等を扱う施設においては、臭気対策が重要な課題の1つであり、例えば、アンモニア等の臭気成分は、特定悪臭物質として1ppm以下に抑えるよう法規制されている。
【0003】
そこで、現在では、さまざまな脱臭装置・方法が提案されており、例えば、ゼオライトや活性炭等の吸着剤に酸性・アルカリ性の物質を添着し、この特殊加工した吸着剤に臭気成分を化学・物理吸着させる吸着法や、プラズマや高温酸化触媒等と臭気成分とを接触させる酸化分解法が提案されている(例えば、プラズマを利用した特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、特殊加工した吸着剤は再生利用ができず、また、コストが一般的な吸着剤の2〜3倍となるため、交換費用や処分費用等のランニングコストが嵩むとの問題を有する。また、酸化分解法は、イニシャルコスト、ランニングコスト、メンテナンスコストのいずれも嵩み、経済的でないとの問題を有する。
【0005】
そこで、臭気成分を含むガス(臭気ガス)の脱臭装置・脱臭方法としては、当該臭気ガスを酸性又はアルカリ性の水溶液(中和液)と接触させるガス洗浄法が注目される(例えば、中和液として硫酸溶液を使用した特許文献2参照。)。
【0006】
しかしながら、このガス浄化法は、次のような問題を有する。
すなわち、通常、中和液として強酸・強アルカリ溶液を使用することになるため、耐酸性・耐アルカリ性を考慮した高価な装置が必要になり、また、強酸・強アルカリのミストが飛散して二次被害が生じるおそれがある。中和反応によって中和液の濃度が低下するため、脱臭効果が不安定になり、また、中和液の濃度を制御する必要も生じる。さらに、ガス中の臭気成分の濃度変化に対応することができず、この点でも脱臭効果が不安定になり、濃度変化の程度によっては臭気成分が脱臭装置を抜けてしまうおそれもある。この他、ガス浄化法は、硫酸アンモニウム等の中和による生成物(固形物)を中和液から除去するために装置を停止して固液分離する必要があり、この点でもコストが嵩むとの問題がある。また、ガス中に混入しているダスト等の除去が必要で、このダスト等をフィルターによって除去する場合は、フィルターの目詰まり防止対策が必要になるとの問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005‐211764号公報
【特許文献2】特開2004‐130163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする主たる課題は、安定的に脱臭することができる経済的な脱臭装置及び脱臭方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題を解決した本発明は、次の通りである。
[請求項1記載の発明]
臭気成分を含むガスの脱臭装置であって、
中和液を、直径5〜7μmの粒子で構成される霧にする霧化手段と、
この霧化手段によって得た前記中和液の直径5〜7μmの粒子で構成される霧と前記臭気成分を含むガスとを混合・攪拌する混合・攪拌手段と、
この混合・攪拌手段を経たガスに粉体状の吸着剤を混入する吸着剤混入手段と、
この吸着剤混入手段によって吸着剤が混入されたガスが供給されて、吸着剤がろ過面に付着し、清浄ガスが通されるフィルターと、
前記臭気成分を含むガスと混合する前記霧の量を、当該ガスの飽和水分量を超えない範囲内において、前記臭気成分の濃度及び当該臭気成分を含むガスの風量に応じて変化させる噴霧量制御手段と、を有する、
ことを特徴とする脱臭装置。
【0010】
[請求項2記載の発明]
前記混合・攪拌手段は、
前記霧及び前記臭気成分を含むガスが供給される筒体と、この筒体内に備えられた当該筒体の軸方向を軸として回転する回転羽根と、を有し、
前記筒体の一端開口が前記臭気成分を含むガスの供給口とされ、前記筒体の他端開口が当該臭気成分を含むガスの排気口とされ、
この排気口の後段に備わる前記フィルターに対して、前記回転羽根が押込みファンとして機能する構成とされた、
請求項1記載の脱臭装置。
【0011】
【0012】
[請求項記載の発明]
臭気成分を含むガスの脱臭方法であって、
中和液を、直径5〜7μmの粒子で構成される霧とし、
この霧と前記臭気成分を含むガスとを混合及び攪拌し、
この混合及び攪拌をしたガスに粉体状の吸着剤を混入し、
この吸着剤が混入されたガスをフィルターに供給して、吸着剤をろ過面に付着させ、清浄ガスを通すとともに、
前記臭気成分を含むガスと混合する前記霧の量を、当該ガスの飽和水分量を超えない範囲内において、前記臭気成分の濃度及び当該臭気成分を含むガスの風量に応じて変化させる
ことを特徴とする脱臭方法。
【0013】
(主な作用効果)
1)中和液を直径5〜7μmの粒子で構成される霧にして使用すると、装置等が濡れないため、耐酸性・耐アルカリ性を考慮した高価な装置が必要にならず、また、中和液の飛散による二次的被害が生じるおそれもない。
【0014】
2)直径5〜7μmの粒子で構成される霧及び臭気成分を含むガスを混合・攪拌したガスに粉体状の吸着剤を混入し、フィルターに通すと、フィルターに至る過程や、フィルター表面において、臭気成分が吸着剤に吸着され、脱臭効率が向上する。また、この吸着剤には、臭気成分と中和反応をしなかった霧を構成する超微粒子も吸着され、この吸着剤に吸着された超微粒子は、フィルター表面において臭気成分を中和する。したがって、脱臭効率が一段と向上する。さらに、当該フィルターは、臭気成分を含むガス中に混入しているダストをも捕捉するため、別途、ダストの除塵装置を設ける必要がない。
【0015】
3)臭気成分を含むガスに、中和液の直径5〜7μmの粒子で構成される霧や粉体状の吸着剤を噴霧・混入する方法によれば、臭気成分の濃度等に応じて脱臭効率を変化させることができ、脱臭効果を安定化することができる。
【0016】
4)なお、本発明の脱臭装置及び脱臭方法は、この他にもさまざまな作用効果を有しているが、詳細は後述する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によると、安定的に脱臭することができる経済的な脱臭装置及び脱臭方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本形態の脱臭装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、本形態の脱臭装置は、両端が開口する円筒状等の筒体26を有する。この筒体26は、一端開口から、脱臭処理の対象となるアンモニア、硫化水素、硫化メチル等の臭気成分を含むガスG1が供給され、この臭気成分を含むガスG1が当該筒体26内に噴霧された(中和液Xの)直径5〜7μmの粒子で構成される霧Xdとともに他端開口から排出される構成とされている。
【0020】
ここで、「直径5〜7μmの粒子で構成される霧」とは、ドライミスト(登録商標)などとも言われる「触れても濡れない霧」である。このように、中和液を直径5〜7μmの粒子で構成される霧Wdにして使用すると、装置等が濡れないため、耐食性の内面皮膜加工や耐食性材料の採用等による耐酸性・耐アルカリ性を考慮した高価な装置が必要にならず、また、中和液の飛散による二次的被害が生じるおそれもない。
【0021】
本形態において、この直径5〜7μmの粒子で構成される霧Wdは、筒体26内の他端開口側端部に備わる霧化手段25から噴霧される。この霧化手段25は、例えば、二流体ノズル、高圧ノズル、電気霧化ノズル等によって構成され、本形態においては、ポンプPによって貯留タンク23から送られてきた中和液Xが、コンプレッサー24からの圧気を利用して、直径5〜7μmの粒子で構成される霧Wdとされ、筒体26内に噴霧される構成とされている。
【0022】
この霧Wdを噴霧する方向は特に限定されないが、臭気成分との接触効率を高めるという観点からは、図示例のように、筒体26の一端開口に向かって、つまり、臭気成分を含むガスG1の流れと反対方向に噴霧するのが好ましい(向流方式)。
【0023】
また、霧Wdの原料となる中和液Xの種類は特に限定されず、脱臭の対象となる臭気成分の種類に応じて適宜決定することができる。具体的には、臭気成分がアルカリ性の場合は、例えば、硫酸水溶液、塩酸水溶液、炭酸水等の酸性水溶液を、臭気成分が酸性の場合は、苛性ソーダ水、石灰水、アンモニア水等のアルカリ性水溶液を使用することができる。なお、これら水溶液の濃度は特に限定されず、例えば、濃度3〜7%として使用することができる。
【0024】
霧Wdの噴霧量は、特に限定されるものではないが、ガスG1中の臭気成分の濃度やガスG1の風量等に応じて、変化させると好適である。本形態においては、ガスG1中の臭気成分の濃度を検出する検出器21が備えられており、この検出器21によって、筒体26内に供給されるガスG1中の臭気成分の濃度が検出される。この検出値は、霧Wdの噴霧量制御手段22に伝達され、この噴霧量制御手段22によってポンプPの駆動力が制御される。この制御によって、霧化手段25に送られる中和液Xの量が制御され、もって霧Wdの噴霧量が制御される。
【0025】
ただし、この霧Wdの噴霧量は、臭気成分を含むガスG1の飽和水分量を超えない範囲内において、制御する。飽和水分量を超えて噴霧すると、装置等が濡れてしまうおそれがあり、特に後段に備わるフィルター29Bが濡れて、目詰まり等の問題が生じるおそれがある。
【0026】
なお、本形態においては、脱臭処理後のガスG2中に含まれる臭気成分の濃度を検出する検出器31も備えられており、この検出器31による検出値によって、脱臭効果を確認し、あるいは霧Wdの噴霧量を調節することもできる。また、検出器21や検出器31による検出値に基づいて、吸着剤Yの混入量を調節することもできる。
【0027】
筒体26内に噴霧された直径5〜7μmの粒子で構成される霧Wdは、臭気成分を含むガスG1とともに筒体26の他端開口から排気された後、混合・攪拌手段27において混合及び攪拌をされる。当該混合によってガスG1中の臭気成分と霧Wdとの中和反応が生じ、また、この中和反応の効率が攪拌によって高められる。このように中和反応の効率が高まるのは、当該攪拌によって、霧Wdの表面を覆う境界層が剥離されるためである。
すなわち、臭気成分を含むガスG1及び霧Wdが単に流れている状態、つまり、両者G1,Wdが随伴移動している状態においては、霧Wdの周りに位置するガスG1が分子間引力によって当該霧Wdに引き寄せられ、当該霧Wdの周りを覆うように境界層を形成する。そして、この境界層によって他のガスG1中の臭気成分が霧Wdと接触し難くなり(接触阻害)、例えば、風速条件や筒体26の長さ等を変化させても、反応効率が向上しないことになる。これに対し、本形態においては、当該攪拌によって、霧Wdと臭気成分を含むガスG1との相対速度差が高まるため、剪(せん)断応力等によって、境界層が剥離され、反応効率が向上する。
【0028】
混合・攪拌手段27の具体的な形態は、特に限定されるものではないが、本形態の混合・攪拌手段27は、両端が開口する円筒状等の筒体27Aと、この筒体27A内に備えられた当該筒体27Aの軸方向を軸として回転する回転羽根27Bと、から主になる。そして、上記筒体26の他端開口から排出された霧Wd及び臭気成分を含むガスG1は、筒体27Aの一端開口(供給口)から供給され、他端開口(排気口)から排気される。加えて、本形態においては、この排気口の後段に備わるフィルター29Bに対して、上記回転羽根27Bが押込みファンとして機能する構成とされている。
【0029】
したがって、本形態の脱臭装置においては、フィルター29Bに臭気成分を含むガスG1を通気させるための通気手段を小型化し、あるいは図示例のように省略することができる。また、この形態によると、筒体26内の霧Wd及び臭気成分を含むガスG1を吸引する手段も小型化又は省略することができる。なお、本形態においては、筒体27Aの一端開口(供給口)が筒体26の他端開口(排気口)と連続しており、吸引・排気効率が極めてよいため、吸引・排気手段を省略している。
【0030】
加えて、本形態によると、フィルター29Bに対するガスG1の押込み力(通風力)や、筒体26からのガスG1の吸引力を、例えば、回転羽根27Bの回転速度や数を変えることによって、変化させることができる。図示例では、回転羽根27Bが2つ備えられている形態を示しているが、回転羽根27Bを1つとすることも、3つ以上の複数とすることもできる。なお、この回転羽根27Bの駆動源たるモーターMは、処理の安定性をより向上させるために、図示例のように、筒体27A外に配置するのが好ましい。
【0031】
混合・攪拌手段27における霧Wd及び臭気成分を含むガスG1の攪拌時間(滞留時間)は特に限定されず、例えば、0.01〜0.5秒、好ましくは0.05〜0.1秒とすることができる。この攪拌時間は、例えば、筒体27Aの長さや径、回転羽根27Bの回転速度等を変化させて、調節することができる。また、この攪拌時間は、例えば、混合・攪拌手段27自体を、直列的に複数連接することによって、調節することもできる。
【0032】
混合・攪拌手段27を経たガスG1、つまり、筒体27Aの他端開口(排気口)から排気されたガスG1には、後述するフィルター29Bに通されるに先立って、粉体状の吸着剤Yが混入される。この吸着剤Yの混入により、霧Wdと中和反応していないガスG1中の臭気成分が吸着剤Yに吸着され、脱臭効率が一段と向上する。
【0033】
吸着剤YをガスG1に混入する吸着剤混入手段の具体的な形態は特に限定されず、本形態においては、上端側が円筒状、下端側が下方に先細りの円錐状とされた粉体タンク28と、この粉体タンク28の下端部開口に接続されたロータリーフィーダー、テーブルフィーダー等からなる定量フィーダー28Aと、この定量フィーダー28Aから切り出された吸着剤Yを空気圧送するブロワBと、で主に構成されている。
【0034】
本形態において、吸着剤Yは、その種類が特に限定されず、例えば、活性炭、ゼオライト等の多孔質吸着性粉体を使用することができる。
【0035】
吸着剤Yが混入されたガスG1は、フィルター29Bが備わるバグフィルター装置29に送られる。このバグフィルター装置29の具体的な形態は特に限定されず、図示例では、上端側が円筒状、下端側が下方に先細りの円錐状とされた収容槽29Aと、この収容槽29A内に配置された適宜の数の、図示例では2つのフィルター29Bと、収容槽29Aの下端部開口を仕切るロータリーフィーダー等からなる切出し手段29Dと、各フィルター29Bの上方に配置されたパルスジェット29Cと、で主に構成されている。
【0036】
本形態によると、ガスG1に混入された吸着剤Yは、収容槽29A内に供給された後、円筒状等とされたフィルター29Bの外周面に付着する等し、ガスG1中の臭気成分を更に吸着する。また、吸着剤Yは、臭気成分と中和反応しなかった霧Wdを構成する超微粒子も吸着する。したがって、この吸着剤Yに吸着された超微粒子が、フィルター29Bの表面(外周面)において臭気成分を更に中和し、結果、脱臭効率が一段と向上する。また、当該フィルター29Bは、ガスG1中に混入しているダストも捕捉するため、別途、ダストの除塵装置を設ける必要がない。
【0037】
このように本形態においては、フィルター29Bの外周面に吸着剤Yを積極的に付着させ、吸着剤Yの付着層を厚く形成するものではない。したがって、フィルター29Bの通気抵抗が大きなものとはらならず、前述回転羽根27Bによって、ガスG1をフィルター29Bに通気させることができる。もちろん、通気抵抗を減らすために、フィルター29Bの面積を通常より大きくする必要もない。
【0038】
フィルター29Bにおいて、臭気成分等を吸着した吸着剤Yは、重力等によって収容槽29Aの底部に落下し、切出し手段29Dによって切り出され、回収される。回収された吸着剤Yは、肥料等として利用することや、適宜の再生処理を施す等した後、粉体タンク28内に投入する吸着剤Yとして再利用することなどができる。
【0039】
また、フィルター29Bに付着した吸着剤Y及びダストは、パルスジェット29Cから適宜の間隔をおいてエアを噴出し、円筒状とされたフィルター29Bの中心側から外方に向かってエアを吹き出すことにより、払い落すこともできる。この点、本形態においては、フィルター29Bの外周面に吸着剤Yの付着層を厚く形成する必要がないため、新たな吸着剤Yが所定の付着層厚となるまでの吸着・中和反応効率の低下等は問題とならない。
【0040】
以上から明らかなように、本形態の脱臭装置においては、従来の脱臭装置におけるように中和液を滞留させて利用し、あるいは循環させて利用するものではなく、いわゆるワンパスでの利用となるため、硫酸アンモニウム等の中和による生成物(固形物)が大きくならない。したがって、フィルター29Bが目詰まり等するおそれがない。また、フィルター29Bに付着した吸着剤Yを払い落す等して脱臭処理を継続することができ、装置を停止する必要もない。
【0041】
他方、フィルター29Bによって吸着剤Yが取り除かれた後の清浄ガスG2は、適宜、大気中に放風することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、家畜、下水、し尿、堆肥、食品、鋳物等を扱う施設において使用する臭気成分を含むガスの脱臭装置及び脱臭方法として、適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
21,31…検出器、22…噴霧量制御手段、23…貯留タンク、24…コンプレッサー、25…霧化手段、26,27A…筒体、27…混合・攪拌手段、27B…回転羽根、28…粉体タンク、28A…定量フィーダー、29…バグフィルター装置、29A…収容槽、29B…フィルター、29C…パルスジェット、29D…切出し手段、B…ブロワ、G1,G2…ガス、P…ポンプ、Y…吸着剤。
図1