特許第5732232号(P5732232)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732232
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02D 41/34 20060101AFI20150521BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20150521BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20150521BHJP
   F02M 51/00 20060101ALI20150521BHJP
   F02M 63/00 20060101ALI20150521BHJP
【FI】
   F02D41/34 C
   F02D41/04 330F
   F02D45/00 312N
   F02D45/00 340C
   F02M51/00 A
   F02M63/00 P
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2010-253946(P2010-253946)
(22)【出願日】2010年11月12日
(65)【公開番号】特開2012-102702(P2012-102702A)
(43)【公開日】2012年5月31日
【審査請求日】2012年10月12日
【審判番号】不服2014-6235(P2014-6235/J1)
【審判請求日】2014年4月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 勝彦
【合議体】
【審判長】 林 茂樹
【審判官】 金澤 俊郎
【審判官】 槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−48730(JP,A)
【文献】 特開2003−97337(JP,A)
【文献】 特開2001−90592(JP,A)
【文献】 特開2000−227036(JP,A)
【文献】 国際公開第98/026169(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 41/00 - 45/00
F02M 39/00 - 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内噴射インジェクタと、
前記燃焼室に連通する吸気管内に燃料を噴射する吸気管内噴射インジェクタと、
前記筒内噴射インジェクタと前記吸気管内噴射インジェクタを制御する制御部とを具備する内燃機関において、
前記制御部は、
前記内燃機関が、前記吸気管内噴射インジェクタのみが動作する運転状態であって、更に、その運転状態が、前記吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正係数の学習域内に入ると
前記吸気管内噴射インジェクタからの燃料噴射量の、前記燃料噴射量補正係数である積分補正係数を学習し、学習した前記積分補正係数を、前記吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量と前記内燃機関の回転数とからなる領域を複数に分割した各分割領域毎に記憶し、
前記内燃機関が、前記筒内噴射インジェクタと前記吸気管内噴射インジェクタとが動作する運転状態では、
前記内燃機関の回転数と負荷の値とに基づいて、前記筒内噴射インジェクタと前記吸気管内噴射インジェクタとの燃料の噴射割合を決定し、
前記決定した燃料の噴射割合に基づいて、前記吸気管内噴射インジェクタから噴射する燃料目標噴射量を算出し、
前記吸気管内噴射インジェクタからの前記燃料目標噴射量に対応する前記分割領域に記憶された前記吸気管内噴射インジェクタの前記積分補正係数を用いて前記吸気管内噴射インジェクタが噴射する燃料噴射量を制御し、
更に、前記内燃機関が、前記筒内噴射インジェクタと前記吸気管内噴射インジェクタとが動作する運転状態であって、更に、その運転状態が、前記筒内噴射インジェクタの燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正係数の学習域内に入ると、
前記筒内噴射インジェクタの燃料噴射量の学習と前記吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量の学習のうち、前記筒内噴射インジェクタの燃料噴射量の学習のみを行い、前記燃料噴射量補正係数である、前記筒内噴射インジェクタが噴射する燃料噴射量の積分補正係数を学習して記憶することを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記制御部は、前記吸気管内噴射インジェクタの前記燃料噴射量補正係数を、前記吸気管内の圧力に基づいて補正することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記制御部は、
前記内燃機関が、前記吸気管内噴射インジェクタのみが動作する運転状態では、前記吸気管内噴射インジェクタからの燃料噴射量の積分補正係数を、前記吸気管内噴射インジェクタからの燃料噴射量と前記内燃機関の回転数とに対応して記憶するとともに、前記内燃機関の回転数と負荷の値とに対応させて記憶し、
前記内燃機関の回転数と負荷の値とに対応させて記憶させた前記吸気管内噴射インジェクタの積分補正係数を用いて前記吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1気筒に対し筒内噴射インジェクタと吸気管内噴射インジェクタとを備える内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
燃焼室に燃料を直接噴射する筒内噴射インジェクタと、吸気管内に燃料を噴射する吸気管内噴射インジェクタとを備える内燃機関では、筒内噴射インジェクタによる噴射量と吸気管内噴射インジェクタによる噴射量とを、エンジン回転数や負荷に応じた所定の分担率で分担し、燃料と吸入空気との混合気が理論空燃比となるよう空燃比フィードバック制御を行う(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−307756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空燃比フィードバック制御の要素としてフィードバック補正係数がある。フィードバック補正係数が固定のままでは、車両状態や環境の変化などにより、最適な空燃比フィードバック制御が困難となる。結果として、燃費の悪化、HC(炭化水素)排出量の増加、車両の走行性および操縦性の悪化を招いてしまう。そこでインジェクタ毎のフィードバック補正係数を学習するため、インジェクタを単独噴射させて学習の機会を設定する必要がある。
【0005】
しかしながら、フィードバックの補正係数を学習する運転状態が、インジェクタの単独噴射に適切なものであるとは限らない。(例えば,筒内噴射で全域噴射する場合と分割噴射する場合ではインジェクタ燃料噴射量は同一でも,噴射する筒内圧が異なる)。
【0006】
したがって、この学習のために一時的に燃費の悪化、HC(炭化水素)排出量の増加を招いてしまうことになる。
【0007】
本発明は、燃費の低減、CO排出量の削減、HC排出量の削減、車両の走行性および操縦性などの改善が図れる内燃機関を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる実施形態の内燃機関は、燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内噴射インジェクタと、燃焼室に連通する吸気管内に燃料を噴射する吸気管内噴射インジェクタと、筒内噴射インジェクタと吸気管内噴射インジェクタを制御する制御部と、を具備する。
制御部は、内燃機関が、吸気管内噴射インジェクタのみが動作する運転状態であって、更に、その運転状態が、吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正係数の学習域内に入ると、吸気管内噴射インジェクタからの燃料噴射量の、燃料噴射量補正係数である積分補正係数を学習し、学習した積分補正係数を、吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量と内燃機関の回転数とからなる領域を複数に分割した各分割領域毎に記憶する。
内燃機関が、筒内噴射インジェクタと吸気管内噴射インジェクタとが動作する運転状態では、制御部は、内燃機関の回転数と負荷の値とに基づいて、筒内噴射インジェクタと吸気管内噴射インジェクタとの燃料の噴射割合を決定し、決定した燃料の噴射割合に基づいて、吸気管内噴射インジェクタから噴射する燃料目標噴射量を算出し、吸気管内噴射インジェクタからの燃料目標噴射量に対応する分割領域に記憶された吸気管内噴射インジェクタの積分補正係数を用いて吸気管内噴射インジェクタが噴射する燃料噴射量を制御する。
更に、内燃機関が、筒内噴射インジェクタと吸気管内噴射インジェクタとが動作する運転状態であって、更に、その運転状態が、筒内噴射インジェクタの燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正係数の学習域内に入ると制御部は、筒内噴射インジェクタの燃料噴射量の学習と吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量の学習のうち、筒内噴射インジェクタの燃料噴射量の学習のみを行い、燃料噴射量補正係数である、筒内噴射インジェクタが噴射する燃料噴射量の積分補正係数を学習して記憶する。
【0012】
請求項3に記載の発明の内燃機関では、請求項1または2に記載の内燃機関において、前記制御部は、前記吸気管内噴射量学習値を、前記吸気管内の圧力に基づいて補正する
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、筒内噴射インジェクタの燃料噴射量補正係数を学習する際に、筒内噴射インジェクタのみ単独で動作させるという運転状態にすることがないので、燃費の悪化、CO(二酸化炭素)排出量の増加、HC(炭化水素)排出量の増加を抑制することができる。
【0015】
また、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域において、吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量をより正確に補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関を示す概略図。
図2図1に示される図2は、内燃機関の内燃機関本体の運転状態を示す、体積効率と回転数とによって規定されるマップ。
図3図2に示される吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域を複数に分割した状態を示すマップ。
図4】吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域を示すマップ。
図5】吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域を、比例補正係数用に複数に分割した状態を示すマップ。
図6】吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域を、比例補正係数用に分割した状態を示すマップ。
図7】筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域を、積分補正係数用に複数に分割した状態を示すマップ。
図8】筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域を、比例補正係数用に分割した状態を示すマップ。
図9】吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域の各分割領域に、圧力値が記憶されている状態を示すマップ。
図10図1に示される内燃機関のECUの動作を示すフローチャート。
図11図1に示される内燃機関のECUの動作を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る内燃機関ついて図1〜11を用いて説明する。図1は、本実施形態の内燃機関10を示す概略図である。内燃機関10は、内燃機関本体20と、吸気管31と、排気管32と、本発明で言う制御部の一例であるECU(Electric Control Unit)50とを備えている。図1は、内燃機関10を示す概略図である。
【0018】
図1に示すように、内燃機関本体20は、一例として、複数気筒を有するレシプロ式内燃機関であり、例えば4気筒式ガソリンエンジンである。なお、図1は、内燃機関本体20が複数備える燃焼室のうちの1つの近傍を代表して示している。内燃機関本体20について、図1に示される1つの燃焼室の近傍の構造を代表して説明する。
【0019】
内燃機関本体20は、シリンダブロック21と、シリンダブロック21に組み付くシリンダヘッド22とを備えている。シリンダブロック21には、シリンダ23が形成されている。シリンダ23内には、コンロッド201を介してクランクシャフト200に連結されるピストン24が収容されている。シリンダ23とピストン24とシリンダヘッド22とによって燃焼室25が形成される。なお、図中、コンロッド201は、一部省略して示されている。
【0020】
シリンダヘッド22には、点火プラグ26と、吸気弁27と、排気弁28とが設けられている。吸気弁27は、シリンダヘッド22に形成されて燃焼室25に開口する吸気ポート29を開閉する。排気弁28は、シリンダヘッド22に形成されて燃焼室25に開口する排気ポート30を開閉する。吸気ポート29は、吸気管31に連通している。排気ポート30は、排気管32に連通している。
【0021】
ピストン24の下降により、燃焼室25内に吸気ポート29を通して、空気、または、空気と燃料との混合気とが供給される。吸気管31には、吸気量を検出するエアーフローメータ33と、吸気量(空気の量)を決定するスロットル弁34とが設けられている。
【0022】
また、シリンダヘッド22は、筒内噴射インジェクタ35を備えている。筒内噴射インジェクタ35は、燃焼室25に臨む位置に設けられている。筒内噴射インジェクタ35の燃料を噴射する噴射口は、燃焼室25内に位置している。筒内噴射インジェクタ35は、燃焼室25内に燃料を直接噴射する。本実施形態では、筒内噴射インジェクタ35は、1気筒に対して1つ設けられている。しかしながら、筒内噴射インジェクタ35の数は、1つに限定されるものではなく、複数設けられてもよい。
【0023】
吸気管31には、吸気管内噴射インジェクタ36が設けられている。吸気管内噴射インジェクタ36は、吸気ポート29に向かって燃料を噴射する。本実施形態では、吸気管内噴射インジェクタ36は、一例として一気筒に対して1つ設けられているが、これに限定されない。吸気管内噴射インジェクタ36は、例えば複数形成されてもよい。
【0024】
筒内噴射インジェクタ35が燃焼室25内に直接噴射する燃料は、燃焼室25内で、吸気ポート29を通って燃焼室25内に流入する吸入空気または混合気(空気と燃料との混合気)と混合される。吸気管内噴射インジェクタが噴射する燃料は吸気管31内で吸入空気と混合され、その混合気が吸気ポート29を通って燃焼室25内に流入する。
【0025】
これら混合気は、ピストン24の上昇によって圧縮され(圧縮行程)、点火プラグ26が発生する火花により点火して燃焼・爆発する(燃焼行程)。この燃焼・爆発によってピストン24が再び下降し、上記動作が繰り返される。燃焼・爆発によって生じるガスは、排気弁28が開いたときに排気ポート30を通って排出される(排気行程)。
【0026】
排気管32には、排出ガスの空燃比を検出する空燃比センサ37と、排出ガスを浄化する触媒38が設けられている。吸気管31には、圧力センサ39が設けられている。圧力センサ39は、吸気管31内において吸気管内噴射インジェクタ36の近傍に配置されており、吸気管内噴射インジェクタ36の近傍の圧力を検出する。
【0027】
符号40は燃料タンクを示している。燃料タンク40は、燃料を送り出すためのフィードポンプ41を備える。フィードポンプ41から燃料パイプ42に燃料が送り出され、その燃料が燃料パイプ42、分岐パイプ43a、およびその分岐パイプ43a上の高圧ポンプ44によって筒内噴射インジェクタ35に供給される。また、燃料パイプ42内の燃料が分岐パイプ43bによって吸気管内噴射インジェクタ36に供給される。
【0028】
ECU50は、筒内噴射インジェクタ35と、吸気管内噴射インジェクタ36と、エアーフローメータ33と、スロットル弁34と、空燃比センサ37と、圧力センサ39と、フィードポンプ41と、高圧ポンプ44と、点火コイル45と、クランク角センサ46と、冷却水温センサ47と、アクセル開度センサ48となどが接続されている。
【0029】
点火コイル45は、ECU50の制御によって動作して点火プラグ26に点火用の駆動電圧を供給する。クランク角センサ46は、ピストン24の上下動に連動するクランクシャフト200の回転角度を検出して、検出結果をECU50に送信する。冷却水温センサ47は、内燃機関本体20の冷却水温度を検出して、検出結果をECU50に送信する。アクセル開度センサ48は、アクセル開度(アクセルペダルの踏込み量)を検出して、検出結果をECU50に送信する。
【0030】
ECU50は、内燃機関本体20の制御に関する主要な機能として次の(1)〜(8)の機能を有する。
【0031】
(1)クランク角センサ46の検出角度から内燃機関本体20の回転数Neを検出(算出)する機能。なお、回転数Neは、クランクシャフト200の回転数である。クランクシャフト200は、本発明で言う出力軸の一例であり、クランクシャフト200の回転数は、本発明で言う出力軸回転数の一例である。
【0032】
(2)アクセル開度センサ48の検出開度とエアーフローメータ33の検出量とから、燃焼室25の体積効率Evを検出する機能。体積効率Evは、本発明で言う負荷を示す一例である。
【0033】
(3)回転数Neと体積効率Evとから、内燃機関本体20の運転状態が、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量または筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射量を最適量に補正する燃料噴射量補正係数を学習する学習域に入っているか否かを判定する機能。
【0034】
この機能について、具体的に説明する。図2は、内燃機関本体20の運転状態を示す、体積効率Evと回転数Neとによって規定されるマップ60を示している。マップ60は、ECU50が有している。
【0035】
図2に示すように、マップ60では、横軸は回転数Neを示しており、図中右側(横軸の矢印が進む方向)に進むにつれて回転数Neが大きくなる。縦軸は体積効率Evを示しており、図中上側(縦軸の矢印が進む方向)に進むにつれて体積効率Evが大きくなる。マップ60中、吸気管内噴射インジェクタ36のみで噴射する吸気管内噴射インジェクタ噴射域61と、吸気管内噴射インジェクタ36と筒内噴射インジェクタ35との両インジェクタが噴射する両インジェクタ噴射域62とが、境界線63によって仕切られている。
【0036】
吸気管内噴射インジェクタ噴射域61は、内燃機関本体20が低・中負荷状態である。両インジェクタ噴射域62は、高負荷状態である。
【0037】
また、マップ60中、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量または筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射量を最適量に補正する燃料噴射量補正係数を学習する学習域64が1点鎖線で囲まれて示されている。
【0038】
学習域64は、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を最適量に補正する燃料噴射量補正係数を学習する吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65と、筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射量を最適量に補正する燃料噴射量補正係数を学習する筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66と有している。
【0039】
吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65は、吸気管内噴射インジェクタ噴射域61内に形成されている。筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66は、両インジェクタ噴射域62に形成されている。吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65と、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66とは、境界線63によって区切られている。
【0040】
なお、燃料噴射量の最適量とは、燃焼室25内の空燃比が理論空燃比となる値である。本実施形態では、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を最適量に補正するために、また、筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射量を最適量に補正するために、各々において、比例補正係数と、積分補正係数とを用いて、燃料噴射量を補正する。本実施形態で学習を行うのは、積分補正係数である。比例補正係数は予め設定されており、学習されない。
【0041】
ECU50は、内燃機関本体20の体積効率Evと回転数Neとから、マップ60より、内燃機関本体20の運転状態が、学習域64にあるか否かを判定する。
【0042】
(4)内燃機関本体20の運転状態(回転数Ne、体積効率Ev)が、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65にあると判定された場合、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65を複数に分割した各分割領域において、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を最適量に補正する積分補正制御の積分補正係数を学習して記憶する機能。
【0043】
この機能について、具体的に説明する。図3は、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65を複数に分割した状態を示すマップ70である。ECU50は、マップ70を有している。マップ70に示すように、本実施形態では、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65は、横軸方向に4つに分割されるとともに縦軸方向に4つに分割されており、16個の分割領域MIZe11〜MIZe44を有している。
【0044】
分割領域MIZe11〜MIZe14は、回転数域が同じである。分割領域MIZe21〜MIZe24は、回転数域が同じである。分割領域MIZe31〜MIZe34は、回転数域が同じである。分割領域MIZe41〜MIZe44は、回転数域が同じである。
【0045】
ECU50は、マップ70に示されるように、分割領域MIZe11〜MIZe44のうち内燃機関本体20の運転状態に対応する領域で吸気管内噴射インジェクタ36の積分補正係数を学習し、記憶する。
【0046】
(5)内燃機関本体20の運転状態(回転数Ne、体積効率Ev)が、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65にあると判定された場合、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量Pwと回転数Neとによって規定される吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80を複数に分割した各分割領域において、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を最適量に補正する積分補正制御の積分補正係数を学習して記憶する機能。
【0047】
この機能について、具体的に説明する。図4は、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80を示すマップ81である。マップ81は、横軸は、回転数を示している。横軸は、図中右側(矢印の進む方向)に進むと大きくなる。縦軸は、燃料噴射量を示しており、図中上側(矢印の進む方向)に進むと大きくなる。吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80は、横軸に沿って4つに分割されるとともに縦軸に沿って4つに分割されており、16個の分割領域MIZp11〜MIZp44を有している。
【0048】
分割領域MIZp11〜MIZp14は、回転数域が同じである。分割領域MIZp21〜MIZp24は、回転数域が同じである。分割領域MIZp31〜MIZp34は、回転数域が同じである。分割領域MIZp41〜MIZp44は、回転数域が同じである。
【0049】
本実施形態では、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80は、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65の横軸に沿う分割に合わせて分割される。より具体的に説明すると、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65の分割領域MIZe11の回転数域は、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp11の回転数域と同じである。吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65の分割領域MIZe21の回転数域は、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp21の回転数域と同じである。吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65の分割領域MIZe31の回転数域は、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp31の回転数域と同じである。吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65の分割領域MIZe41の回転数域は、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp41の回転数域と同じである。
【0050】
ECU50は、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp11〜MIZp44で吸気管内噴射インジェクタ36の積分補正係数を学習し、記憶する。
【0051】
ついで、ここで吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を補正する比例補正係数について説明する。本実施形態では、比例補正係数は、上記したように、予め設定された値を用いており、学習されない。吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65は、比例補正係数用に複数に分割されており、各分割領域に比例補正係数が設定されている。
【0052】
図5は、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65を、比例補正係数用に複数に分割したマップ90を示している。ECU50は、マップ90を有している。マップ90は、一例として、横軸に沿って2つに分割され、縦軸に沿って2つに分割されており、4つの領域MPZe11〜MPIZe22を有している。各領域に、比例補正係数が予め設定されている。
【0053】
図6は、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80を、比例補正係数用に分割したマップ100を示している。ECU50は、マップ100を有している。図6に示すように、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80は、横軸に沿って2つに分割され、縦軸に沿って2つに分割されており、4つの領域MPZp11〜MPZp22を有している。
【0054】
(6)内燃機関本体20の運転状態(回転数Neと体積効率Ev)が、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66にあると判定された場合、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射割合と、筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射割合とを求める機能。
【0055】
この機能について、具体的に説明する。吸気管内噴射インジェクタ36の噴射割合と、筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射割合とは、内燃機関本体20の運転状態に応じて予め決まっており、例えばマップに記憶されている。ECU50は、このマップを有している。ECU50は、内燃機関本体20の運転状態に基づいてこのマップから両インジェクタ35,36の噴射割合を決定する。
【0056】
(7)内燃機関本体20の運転状態(回転数Ne、体積効率Ev)が、筒内路噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66にあると判定された場合、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66を複数に分割した各分割領域において、筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射量を最適量に補正する積分補正制御の積分補正係数を学習して記憶する機能。
【0057】
この機能について具体的に説明する。図7は、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66を積分補正係数用に複数に分割した状態を示すマップ110である。ECU50は、マップ110を有している。マップ110に示すように、本実施形態では、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66は、積分補正係数学習用に横軸方向に4つに分割されており、4個の分割領域DIZe11〜DIZe14を有している。
【0058】
ECU50は、分割領域DIZe11〜DIZe14のうち内燃機関本体20の運転状態に対応する領域で積分補正係数を学習し、記憶する。
【0059】
ここで、筒内噴射インジェクタの燃料噴射量を補正する比例補正係数について説明する。上記したように、比例補正係数は、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66に予め設定されており、学習されない。
【0060】
図8は、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66を、比例補正係数用に分割した状態を示すマップ120である。ECU50は、マップ120を有している。図8に示すように、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66は、本実施形態では一例として、横軸に沿って2つの分割領域に分割されており、DPZe11,DPZe12を有している。各領域DPZe11,DPZe12とには、各々異なる比例補正係数が予め設定されており、記憶されている。
【0061】
(8)筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66で吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を、吸気管31内の圧力に基づいて補正する機能。
【0062】
この機能について具体的に説明する。図9は、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80のマップ81を示している。図9に示すマップ81では、各分割領域MIZe11〜MIZe44に、各領域の運転状態に対応する圧力値Pb11〜Pb44が予め設定されていることが示されている。この圧力値は、例えば、実験などによって得られる値である。より具体的には、各運転状態において圧力値を複数回検出し、これらの平均値を各領域での圧力値として記憶している。
【0063】
ECU50は、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66で吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を決定する際に、吸気管31内の圧力値RPb(吸気管31内において吸気管内噴射インジェクタ36の近傍の圧力値)と、吸気管内噴射インジェクタ36の目標燃料噴射量と回転数Neとに基づいて検索される吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp11〜MIZp44のうちの対応する分割領域に記憶される圧力値(Pb11〜Pb14のうちのいずれか)に基づいて、圧力補正値を算出する。圧力補正値をXとすると、
【数1】
【0064】
となる。ここで、Pbは、Pb11〜Pb44のうちのいずれかであり、上記対応する分割領域に記憶される圧力値である。
【0065】
ECU50は、上記の式で得られる圧力補正値Xを、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66での吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量にかけることによって、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を補正する。
【0066】
つぎに、ECU50の動作を説明する。図10,11は、ECU50の動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、内燃機関10(内燃機関本体20)の運転が開始されてから、定期的に実行される。なお、図10,11に示されるフローチャート中では、吸気管内噴射インジェクタ36をMPIと記載し、筒内噴射インジェクタ35をDIと記載する。吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域を、MPIEv−Ne学習域と記載する。吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域を、MPIPw−Ne学習域と記載する。筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域を、DIEv−Ne学習域と記載する。ECU50の動作パターンとして、以下の3つを有している。
【0067】
(1)内燃機関本体20の運転状態が、学習域64にない状態での動作。
【0068】
(2)内燃機関本体20の運転状態が吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65にある状態での動作。
【0069】
(3)内燃機関本体20の運転状態が筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域6にある状態での動作。
【0070】
まず、上記(1)の、内燃機関本体20が学習域64にない状態での動作について説明する。
【0071】
図10に示すように、ステップST1では、ECU50は、クランク角センサ46の検出角度から回転数Neを検出する。回転数Neが検出されると、ついで、ステップST2に進む。
【0072】
ステップST2では、ECU50は、アクセル開度センサ48の検出開度およびエアーフローメータ33の検出量から体積効率Evを検出する。体積効率Evが検出されると、ついで、ステップST3に進む。
【0073】
ステップST3では、ECU50は、回転数Neと体積効率Evとから、内燃機関本体20の運転状態が、図2のマップ60に示される学習域64にあるか否かを判定する。(1)の運転状態は、学習域64にはないので、ECU50は、内燃機関本体20の運転状態が学習域64にないと判定する。内燃機関本体20の運転状態が学習域64にない状態であると、オープンループ制御となり、燃料噴射量の補正係数の学習は行われない。
【0074】
ついで、上記(2)の状態である、内燃機関本体20の運転状態が吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65にある状態でのECU50の動作を説明する。なお、ステップST3までは、(1)の運転状態と同じである。ステップST4では、(2)の運転状態は、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65にあるので、ついで、ステップST5に進む。ステップST5では、ECU50は、内燃機関本体20の運転状態が、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65にあるか否かを判定する。上記の通り、内燃機関本体20は吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65にあるので、ついでステップST6に進む。
【0075】
ステップST6では、ECU50は、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量Pwを算出する。Pw={(体積効率Ev)÷100×(行程容積)×(空気比重)÷(14.7)×(A/F−F/B係数)×MPI学習値}となる。
【0076】
(A/F−F/B)係数は、(比例補正係数+積分補正係数)である。ECU50は、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65が比例補正係数用に複数に分割されたマップ90を用いて分割領域MPZp11〜MPZp22のうち内燃機関本体20の運転状態に対応する領域に記憶される比例補正係数を検索する。
【0077】
また、ECU50は、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65が積分補正用に複数に分割されたマップ70を用いての分割領域MIZe11〜MIZe44のうち内燃機関本体20の運転状態に対応する領域に記憶される積分補正係数を検索する。なお、積分補正係数が一度も学習が行われていない状態では、各分割領域MIZe11〜MIZe44に記憶される積分補正係数は、初期値として例えば1が記憶されている。
【0078】
MPI学習値は、燃焼室25内の空燃比が理論空燃比となるように、吸気管内噴射インジェクタ36から噴射される燃料量を補正する係数である。空燃比センサ37の検出値に基づいて、燃焼室25に供給される燃料と空気との混合気が理論空燃比になるように、MPI学習値は、変化する。MPI学習値は、例えば0〜2の間で変化する値である。より具体的には、空燃比が理論空燃比よりもリッチであると判定されると、吸気管内噴射インジェクタ36から噴射される燃料量を小さくするべく、MPI学習値は1以下に設定される。また、空燃比が理論空燃比よりもリーンであると判定されると、吸気管内噴射インジェクタ36から噴射される燃料を多くするべく、MPI学習値は1以上に設定される。
【0079】
なお、MPI学習値は、本ステップST6で設定された燃料量を、空燃比センサ37の検出値に基づいてフィードバック制御することによって、後のステップで決定される。MPI学習値が一度も学習されていない状態では、MPI学習値は、初期値として例えば1が設定されている。吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量が算出されると、ついで、ステップST7に進む。
【0080】
ステップST7では、ECU50は、ステップST6で算出された燃料量を噴射すべく、吸気管内噴射インジェクタ36を動作して燃料を噴射する。燃料を噴射すると、ついで、ステップST8に進む。
【0081】
ステップST8では、ECU50は、燃料噴射量を理論空燃比に近づけるべく、空燃比センサ37の検出結果に基づいてMPI学習補正する。ついで、ステップST9に進む。
【0082】
ステップST9では、ECU50は、ステップST1,ST2,ST6で得た体積効率Ev、回転数Ne、燃料噴射量Pw、積分補正係数×MPI学習値の情報をまとめる。ついで、ステップST10に進む。
【0083】
ステップST10では、ECU50は、学習タイミングであるか否かを判定する。学習タイミングとは、予め決定されているタイミングであって、予め決定される所定時間間隔おきにおとずれる。本実施形態では、一例として、0.5秒間隔で学習タイミングとなる。
【0084】
学習タイミングでない場合は、ステップST11に進む。ステップST11では、ステップST9でまとめた、体積効率Ev、回転数Ne、燃料噴射量Pw、積分補正係数×MPI学習値の情報より、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65の分割領域MIZe11〜MIZ44のうち対応する領域で、積分補正係数×MPI学習値の平均値を計算する。ついで、ステップST12に進む。
【0085】
ステップST12では、ステップST9でまとめた、体積効率Ev、回転数Ne、燃料噴射量Pw、積分補正係数×MPI学習値の情報より、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp11〜MIZp44のうち対応する領域で、積分補正係数×MPI学習値の平均値を計算する。
【0086】
ステップST10で学習タイミングとなるまでは、ステップST1〜ST12の動作が繰り返される。ステップST10で学習タイミングとなると、ステップST13に進む。ステップST13では、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65の分割領域MIZe11〜MIZe44にて、ステップST11で計算された、積分補正係数×MPI学習値を、新しい積分補正係数として記憶する。ついで、ステップST14に進む。
【0087】
ステップST14では、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp11〜MIZp44にて、ステップST12で計算された、積分補正係数×MPI学習値を、新しい積分補正係数として記憶する。このように、ステップST13,ST14において、積分補正係数が学習される。
【0088】
上記されたステップST1〜ST14までの動作は、内燃機関本体20の運転状態が吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65にある状態の間繰り返される。
【0089】
ついで、上記(3)の内燃機関本体20の運転状態が筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66にある状態でのECU50の動作を説明する。ステップST4までは、(2)の動作と同じである。内燃機関本体20は、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66にあるので、ステップST5からステップST15に進む。筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66では、吸気管内噴射インジェクタ36と筒内噴射インジェクタ35とが噴射を行う。ステップST15は、図11に示されている。
【0090】
図11に示すように、ECU50は、ステップST15では、ステップST1,ST2で得られる体積効率Ev情報と、回転数Neの情報とから、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射割合と、筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射割合とを算出する。吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射割合と筒内噴射インジェクタ35の噴射割合とが検出されると、ついで、ステップST16に進む。
【0091】
ステップST16では、ECU50は、筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射量を算出する。筒内噴射インジェクタ35の燃料噴射量をZとすると、Z=(体積効率Ev)÷(100)×(行程容積)×(空気比重)÷14.7×(A/F−B/F係数)×DI学習値×筒内噴射インジェクタの噴射割合となる。
【0092】
A/F−B/F係数は、筒内噴射インジェクタ35の(比例補正係数+積分補正係数)である。ECU50は、マップ110,120より、内燃機関本体20の運転状態に対応する領域に記憶される比例補正係数と積分補正係数とを検索する。なお、積分補正係数が一度も学習されていない状態では、積分補正係数は、初期値として例えば1が記憶されている。
【0093】
I学習値は、燃焼室25内の空燃比が理論空燃比となるように、筒内噴射インジェクタ35から噴射される燃料量を補正する係数である。空燃比センサ37の検出値に基づいて、燃焼室25に供給される燃料と空気との混合気が理論空燃比になるように、DI学習値は、変化する。DI学習値は、例えば0〜2の間で変化する値である。より具体的には、空燃比が理論空燃比よりもリッチであると判定されると、筒内噴射インジェクタ35から噴射される燃料量を小さくするべく、DI学習値は1以下に設定される。また、空燃比が理論空燃比よりもリーンであると判定されると、筒内噴射インジェクタ35から噴射される燃料を多くするべく、DI学習値は1以上に設定される。
【0094】
なお、DI学習値は、本ステップST6で設定された燃料量を、空燃比センサ37の検出値に基づいてフィードバック制御することによって、後のステップで決定される。DI学習値が一度も学習されていない状態では、DI学習値は、初期値として例えば1が設定されている。筒内噴射インジェクタ35から噴射する燃料噴射量が算出されると、ついで、ステップST17に進む。
【0095】
ステップST17では、ECU50は、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射割合より、吸気管内噴射インジェクタの燃料目標噴射量を算出する。燃料目標噴射量が算出されると、ついで、ステップST18に進む。
【0096】
ステップST18では、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を補正する比例補正係数と積分補正係数とを検索する。具体的には、ECU50は、ステップST1で得られる回転数Neと、ステップST17で算出される吸気管内噴射インジェクタ36の燃料目標噴射量とから、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp11〜MIZp44のうちの対応する領域に記憶される比例補正係数と積分補正係数とを検索する。比例補正係数と積分補正係数とが検索されると、ついでステップST19に進む。
【0097】
ステップST19では、ECU50は、現在の吸気管31内の圧力値RPb情報を取得する。ついで、ステップST20に進む。
【0098】
ステップT20では、ECU50は、ステップST17で算出された、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料目標噴射量とステップST1で取得した回転数Ne情報とより、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp11〜MIZp44のうちの対応する分割領域に記憶される圧力値Pbを検索する。ついで、ステップST21に進む。
【0099】
ステップST21では、ステップST19で取得される吸気管31内の圧力値RPbと、ステップST20で検出される圧力値とから、圧力補正値Xを算出する。
【数2】
【0100】
となる。ついで、ステップST22に進む。
【0101】
ステップST22では、ECU50は、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量Pwを算出する。ここで求める吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量は、ステップST17で算出した燃料目標噴射量に、ステップST21で算出した、圧力補正値をかけたものである。
【0102】
具体的には、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量Pw=(体積効率Ev)÷100×(行程容積)×(空気比重)÷14.7×(A/F−F/B係数)×圧力補正値×MPI噴射割合となる。A/F−F/B係数は、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZp11〜MIZp44に記憶される(比例補正係数+積分補正係数)である。吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量が算出されると、ついで、ステップST23に進む。
【0103】
ステップST23では、ステップST16で算出される燃料噴射量を筒内噴射インジェクタ35から噴射し、かつ、ステップST22で算出される燃料噴射量を吸気管内噴射インジェクタ36から噴射する。ついで、ステップST24に進む。
【0104】
ステップST24では、ECU50は、空燃比センサ37の検出結果に基づいて、理論空燃比になるように、DI学習値を補正する。ついで、ステップST25に進む。
【0105】
ステップST25では、ステップST1で取得した体積効率Ev情報と、ステップST2で取得した回転数Ne情報と、ステップST16で算出した積分補正係数×DI学習値の情報とを1つにまとめる。ついで、ステップST26に進む。
【0106】
ステップST26では、学習タイミングか否かを判定する。学習タイミングとは、予め決定されているタイミングであって、予め決定される所定時間間隔でおとずれる。本実施形態では、一例として、0.5間隔で学習タイミングとなる。ステップST26で学習タイミングではないと判定されると、ついで、ステップST27に進む。
【0107】
ステップST27では、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域6の分割領域DIZe11〜DIZe14において、ステップST25でまとめられた体積効率Ev情報、回転数Ne情報、積分補正係数×DI学習値の情報とから、対応する分割領域で積分補正係数×DI学習値の平均値を算出する。ステップST26で学習タイミングと判定されるまでは、ステップST1〜ステップST26の動作が繰り返される。
【0108】
ステップST26で学習タイミングであると判定されると、ステップST28に進む。ステップST28では、ステップST27において分割領域DIZe11〜DIZe14で算出された、積分補正係数×DI学習値の平均値を、新しい積分補正係数として記憶する。
【0109】
上記されたステップST1〜ST28までの動作は、内燃機関本体20の運転状態が、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66にある状態の間繰り返される。
【0110】
このように構成される内燃機関10では、吸気管内噴射インジェクタ36のみ噴射を行う際に吸気管内噴射インジェクタ36の積分補正係数の最適値を学習し、吸気管内噴射インジェクタ36と筒内噴射インジェクタ35とで燃料噴射を行う際に筒内噴射インジェクタ35の積分補正係数の最適値を学習することによって、燃費の低減、CO排出量の削減、HC排出量の削減することができる。
【0111】
また、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66において、吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を補正するために、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の各分割領域MIZe1〜MIZe44,MIZp11〜MIZp44のうち対応する分割領域に記憶される比例補正係数と積分補正係数とを用いた。このことによって、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66での吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量をより正確に算出することができる。
【0112】
この点について具体的に説明する。一例として、図2中に符号P1で示す位置での内燃機関本体20の運転状態での吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を補正する場合について説明する。吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を補正するために、体積効率Evと回転数Neとによって規定される、吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域65に記憶される比例補正係数と積分補正係数とを用いると、マップ70,90に示される分割領域MIZe14,MPZe12に記憶される積分補正係数と比例補正係数とを用いることになる。
【0113】
しかしながら、分割領域MIZe14,MPZe12は、位置P1とはずれており、それゆえ、位置P1に対して適切な比例補正係数と積分補正係数ではない。
【0114】
一方、燃料噴射量Pwと回転数Neとによって規定される、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80を用いることによって、位置P1での燃料噴射量Pwと回転数Neと同じ状態の比例補正係数と積分補正係数とを得ることができる。このことによって、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66での吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量をより正確に算出することができる。
【0115】
また、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66で積分補正係数を学習する場合、吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域80の分割領域MIZe11〜MIZe44,MIZp11〜MIZp22に記憶される積分補正係数と比例補正係数とを用いるが、分割領域MIZe11〜MIZe44,MIZp11〜MIZp22での吸気管31内の圧力値は、学習時の吸気管31内の圧力値とは異なる。しかしながら、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66での吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量を、吸気管31内の圧力値に基づいて補正することによって、筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域66での吸気管内噴射インジェクタ36の燃料噴射量をより正確に算出することができる。
【0116】
なお、1つのシリンダについてのみ説明したが、複数のシリンダを有する場合にも同様に実施可能である。その他、この発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。そして、上述した実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内噴射インジェクタと、
前記燃焼室に連通する吸気管内に燃料を噴射する吸気管内噴射インジェクタと
を具備し、
前記吸気管内噴射インジェクタの燃料制御学習は、前記吸気管内噴射インジェクタのみが動作する運転状態で行われ、
前記筒内噴射インジェクタの燃料制御学習は、前記筒内噴射インジェクタと前記吸気管内噴射インジェクタとが動作する運転状態に行われる
ことを特徴とする内燃機関。
[2]
燃焼室内に直接燃料を噴射する筒内噴射インジェクタと、
前記燃焼室に連通する吸気管内に燃料を噴射する吸気管内噴射インジェクタと、
前記筒内噴射インジェクタと前記吸気管内噴射インジェクタとを制御する制御部と
を具備し、
前記制御部は、
前記吸気管内噴射インジェクタのみが噴射しかつ負荷と出力軸回転数とによって規定される吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域を複数に分割した各分割領域において、前記吸気管内噴射インジェクタからの燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正係数を学習して記憶するとともに、前記吸気管内噴射インジェクタのみが噴射しかつ燃料噴射量と出力軸回転数とによって規定される吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域を複数に分割した各分割領域において、前記吸気管内噴射インジェクタからの燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正係数を学習して記憶し、
前記筒内噴射インジェクタと前記吸気管内噴射インジェクタとがそれぞれの燃料噴射割合で燃料を噴射しかつ負荷と出力軸回転数とによって規定される筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域において、前記吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量を、前記吸気管内噴射インジェクタの燃料目標噴射量と出力軸回転数とを用いて前記吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域の前記各分割領域のうちの対応する領域に設定される前記燃料噴射量補正係数を用いて補正して決定し、かつ、前記筒内噴射インジェクタ用負荷―回転数学習域を複数に分割した各分割領域において、前記筒内噴射インジェクタからの燃料噴射量を補正する燃料噴射量補正係数を学習して記憶する
ことを特徴とする内燃機関。
[3]
前記制御部は、前記筒内噴射インジェクタ用学習域での前記吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量を、前記吸気管内の圧力に基づいてさらに補正する
ことを特徴とする[2]に記載の内燃機関。
[4]
前記制御部が前記吸気管内噴射インジェクタ用負荷―回転数学習域で学習する前記燃料噴射量補正係数は積分補正係数であり、前記制御部は、前記吸気管内噴射インジェクタ用負荷―回転数学習域に予め決定される比例補正係数を用いて前記吸気管内噴射インジェクタの燃料噴射量を補正しながら前記積分補正係数を学習して記憶し、
前記制御部が前記筒内噴射インジェクタ用負荷―回転数学習域で学習する前記燃料噴射量補正係数は積分補正係数であり、前記制御部は、前記筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域に予め決定される比例補正係数を用いて前記筒内噴射インジェクタの噴射燃料を補正しながら前記積分補正係数を学習し記憶する
ことを特徴とする[2]または[3]に記載の内燃機関。
【符号の説明】
【0117】
10…内燃機関、25…燃焼室、31…吸気管、35…筒内噴射インジェクタ、36…吸気管内噴射インジェクタ、50…ECU(制御部)、65…吸気管内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域、66…筒内噴射インジェクタ用負荷−回転数学習域、80…吸気管内噴射インジェクタ用燃料量−回転数学習域、200…クランクシャフト(出力軸)。
図1
図2
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図11