(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
対向する第1のモールド及び第2のモールドと、前記第1のモールド及び前記第2のモールドの外周間を連結するテープ部材からなり、プラスチックレンズ材料が注入されるキャビティと、前記キャビティにプラスチックレンズ材料を注入するための注入部を有するモールド組立体と、
前記モールド組立体に取り付けられる注入補助部材と、を備え、
前記注入補助部材は、
筒状に形成された補助部材本体と、
前記補助部材本体の内部に設けられ、前記プラスチックレンズ材料を吐出するノズルが嵌合される嵌合部と、
前記補助部材本体の一端に設けられ、前記モールド組立体の前記注入部の周囲に密着する取付片と、を有し、
前記取付片は、前記補助部材本体の内部に連通する排出用孔を有し、
前記補助部材本体の内部は、前記嵌合部の内部と液密に仕切られている成形型。
第1のモールドと第2のモールドを対向させ、前記第1のモールド及び前記第2のモールドの外周間をテープ部材によって連結し、キャビティを有するモールド組立体を組み立てるモールド組立工程と、
注入補助部材における筒状の補助部材本体の一端に設けた取付片を、前記モールド組立体に密着させて取り付ける補助部材取付工程と、
前記補助部材本体の内部に設けた嵌合部にノズルを嵌合し、前記ノズルからプラスチックレンズ材料を吐出させて、前記キャビティに前記プラスチックレンズ材料を注入する注入工程と、
前記補助部材本体の他端を封止部材によって封止する封止工程と、
前記キャビティに注入したプラスチックレンズ材料を重合させる重合工程と、を有し、
前記取付片は、前記補助部材本体の内部に連通する排出用孔を有し、
前記補助部材本体の内部は、前記嵌合部の内部と液密に仕切られている
プラスチックレンズの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載されたプラスチック原料液注入装置では、プラスチック原料液の液面の高さを精密に制御することが難しかった。例えば、成形型内の容積、成形型外周部の厚みは、製造するプラスッチックレンズの形状によって異なる。そのため、吸気管内の負圧の変化を検知してからプラスチック原料液の注入を停止するまでのタイミングを常に同じにすると、プラスチック原料液の充填不足が生じたり、プラスチック原料液が成形型から溢れたりする場合がある。
【0010】
プラスチック原料液の充填不足が生じた場合は、重合中に成形型内の空気が気泡としてプラスッチックレンズに入り込む泡不良が発生してしまう。一方、プラスチック原料液が成形型から溢れた場合は、開口部の周囲にプラスチック原料液が付着して、粘着テープを再び張り合わせるときに密着不良が起き易くなる。密着不良が起きると、重合中に外部から空気が進入してプラスッチックレンズに泡不良が発生してしまう。
【0011】
なお、プラスチック原料液の液面の高さを精密に制御するために、プラスチック原料液をゆっくりと注入する、つまり、注入するプラスチック原料液の流量を小さくすることが考えられる。ところが、プラスチック原料液の流量を小さくすると、生産性の低下を招いてしまう。
【0012】
また、特許文献2に記載されたプラスチックの硬化物の製造方法では、生産性の向上を図ることが難しかった。粘着テープに設けられた注入孔は、成形型内の空気の排気口も兼ねるため、ノズルよりも大きく設定する必要がある。ノズルは、孔の断面積を大きくするほどプラスチック原料液の流量を大きくすることができ、充填を早く完了させることができる。しかし、ノズルの孔の断面積及び注入孔を大きくすると、それに伴い注入孔を封止する作業に要する時間も増加してしまう。
【0013】
さらに、特許文献2に記載されたプラスチックの硬化貨物の製造方法では、プラスチック原料液が注入孔から溢れ出てしまうことがある。この溢れ出たプラスチック原料液は、注入作業や重合工程に用いる機器、作業者などに影響を及ぼすという心配がある。
【0014】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、プラスチック原料液(プラスチック材料)の液面の高さを精密に制御する必要がなく、かつ、プラスチック原料液の流量を大きくして生産性の向上を図ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の成形型は、モールド組立体と、モールド組立体に取り付けられる注入補助部材とを備えている。
モールド組立体は、対向する第1のモールド及び第2のモールドと、第1のモールド及び第2のモールドの外周間を連結するテープ部材からなり、プラスチックレンズ材料が注入されるキャビティと、キャビティにプラスチックレンズ材料を注入するための注入部を有する。
注入補助部材は、筒状に形成された補助部材本体と、補助部材本体の内部に設けられ、プラスチックレンズ材料を吐出するノズルが嵌合される嵌合部と、補助部材本体の一端に設けられ、モールド組立体の注入部の周囲に密着する取付片とを有する。
取付片は、補助部材本体の内部に連通する排出用孔を有し、補助部材本体の内部は、嵌合部の内部と液密に仕切られている。
【0016】
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、モールド組立工程と、補助部材取付工程と、注入工程と、封止工程と、重合工程とを有する。
モールド組立工程では、第1のモールドと第2のモールドを対向させ、両者の外周間をテープ部材によって連結し、キャビティを有するモールド組立体を形成する。
補助部材取付工程では、注入補助部材における筒状の補助部材本体の一端に設けた取付片を、モールド組立体における注入部の周囲に密着させて取り付ける。
注入工程では、補助部材本体の内部に設けた嵌合部にノズルを挿入し嵌合させ、ノズルからプラスチックレンズ材料を吐出させてキャビティにプラスチックレンズ材料を注入する。
封止工程では、補助部材本体の他端を封止部材によって封止する。
重合工程では、キャビティに注入したプラスチックレンズ材料を重合させる。
取付片は、補助部材本体の内部に連通する排出用孔を有し、補助部材本体の内部は、嵌合部の内部と液密に仕切られている。
【0017】
上記構成の成形型およびプラスチックレンズの製造方法では、注入補助部材の嵌合部にノズルを嵌合させるため、注入補助部材に対するノズルの姿勢を簡単に固定することができ、プラスチックレンズ材料の安定した注入を行うことができる。
【0018】
また、注入補助部材の内部に設けた嵌合部にノズルを挿入して、キャビティにプラスチックレンズ材料を注入するため、キャビティを満たしてモールド組立体の注入部から溢れ出したプラスチックレンズ材料を、注入補助部材内に溜めることができる。したがって、プラスチックレンズ材料が外部に漏れることを防止することができるので、注入作業や重合工程に用いる機器、作業者などにプラスチックレンズ材料が付着しないようにすることができる。
【0019】
また、キャビティに注入するプラスチックレンズ材料の液面の高さを精密に制御する必要はない。さらに、ノズルの断面積及び注入部を大きくしても、補助部材本体の他端を封止することによってキャビティを簡単に密閉することができる。
【0020】
また、上記構成の成形型では、取付片が補助部材本体の内部に連通する排出用孔を有している。そして、補助部材本体の内部は、嵌合部の内部と液密に仕切られている。
【0021】
これにより、ノズルから吐出したプラスチックレンズ材料を、補助部材本体の内部に漏らすことなく、キャビティへ注入することができる。したがって、ノズルの周囲に漏れたプラスチックレンズ材料が排出用孔を塞ぐことが無く、注入されたレンズ材料の流入と入れ替えにキャビティから排出される空気の流れを妨げることはない。
【0022】
また、モールド組立体にプラスチックレンズ材料が満たされた後、注入部から溢れ出したプラスチックレンズ材料を円滑に補助部材本体内に導くことができる。また、キャビティに注入されたプラスチックレンズ材料に気泡が発生しても、その気泡を排出用孔から排出することができる。そして、気泡を再びキャビティ内に戻さないようにすることができる。
【0023】
また、上記構成の成形型は、注入突部を備える。この注入突部は、取付片から突出すると共に嵌合部の内部に連通する注入孔を有する。
【0024】
これにより、注入突部がキャビティにプラスチックレンズ材料を注入する注入口となり、ノズルの先端をキャビティに挿入しなくても、プラスチックレンズ材料の注入を行うことができる。したがって、ノズルの挿入量や、注入突部と排出用孔の位置と左右の大きさを常に同じにすることができ、これに伴い排出する空気も左右のバランスがとれる。特にレンズの厚みが薄いタイプでは、キャビティ内部へ流れ込むプラスチックレンズ材料が蛇行することなく、安定した注入を行うことができる。
【0025】
また、上記構成の成形型では、テープ部材にスリットを設けることによりモールド組立体の注入部を形成している。そして、注入突部は、注入部の周囲の一部を押圧する。
【0026】
これにより、注入突部は、プラスチックレンズ材料を注入する注入口としての役割と、テープ部材における注入部の一側をキャビティ内に押し込む押圧部としての役割を有する。注入突部が注入部の一側をキャビティ内に押し込むことにより、注入部を小さくしても、気泡が抜ける開口を確保することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、プラスチックレンズ材料の液面の高さを精密に制御する必要がなく、かつ、プラスチックレンズ材料の流量を大きくして生産性の向上を図ることができる。さらに、プラスチックレンズ材料の安定した注入を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の成形型及びプラスチックレンズの製造方法を実施するための形態について、
図1〜
図12を参照して説明する。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0030】
<成形型の第1の実施の形態>
[成形型]
まず、本発明の成形型の第1の実施の形態について、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1は、成形型の第1の実施の形態の斜視図である。
図2は、
図1に示す成形型をA−A′線で断面した断面図である。
図3は、成形型の第1の実施の形態に関わる注入部の第1の例を示す説明図である。
【0031】
成形型1は、モールド組立体2と、注入補助部材3と、封止部材4(
図7(d)参照)とを備えている。
【0032】
[モールド組立体]
モールド組立体2は、所定の間隔をあけて対向する第1のモールド21及び第2のモールド22と、これら2つのモールド21,22の外周間を連結するテープ部材23からなっている。
【0033】
第1のモールド21は、略円板状に形成されており、凹面からなるレンズ形成面21aを有している(
図2参照)。また、第2のモールド22は、第1のモールド21と等しい径の略円板状に形成されている。この第2のモールド22は、凸面からなるレンズ形成面22aを有している。第2のモールド22のレンズ形成面22aは、第1のモールド21のレンズ形成面21aに対向する。
【0034】
第1及び第2のモールド21,22は、例えば、金型に溶融ガラスを流し込んで成形し、レンズ形成面21a,22aを所定の曲率半径に研磨して最終成形されている。なお、本実施の形態では、ガラスによって第1及び第2のモールド21,22を形成したが、本発明に係る第1及び第2のモールドは、樹脂や金属によって形成することもできる。また、第1のモールドと、第2のモールドを別々の材料で形成してもよい。
【0035】
テープ部材23は、いわゆる粘着テープであり、第1及び第2のモールド21,22の外周に1周以上巻回されて貼り付けられている。テープ部材23の幅は、第1及び第2のモールド21,22の保持が可能な程度でよく、モールド外周部の一部または全て覆う長さに設定されている。したがって、本発明に係るテープ部材の幅としては、第1及び第2のモールド21,22間の間隙を密閉する長さであればよい。
【0036】
テープ部材23と、第1及び第2のモールド21,22のレンズ形成面21a,22aによって囲まれた空間は、キャビティ24になる。このキャビティ24には、プラスチックレンズ材料51(
図7(c)参照)が注入される。
【0037】
テープ部材23は、基材と、この基材の片面(粘着面)に形成された粘着層からなる。テープ部材23の基材としては、例えば、ポリエステルを挙げることができる。一方、粘着層としては、例えば、プラスチックレンズ材料51に溶け出したり、重合を阻害したりしないものがよく、例えば、シリコーン系の粘着剤などを挙げることができる。
【0038】
図3に示すように、テープ部材23は、注入補助部材3の後述する注入突部34が貫通する注入部23aを有している。この注入部23aは、テープ部材23に1本のスリットを設けることにより形成されている。スリットは、テープ部材23の長手方向と平行な直線状に形成されており、排出用孔33bの注入突部34とは反対側の辺から排出用孔33cの注入突部34とは反対側の辺までの距離と略等しい長さになっている。この注入部23aは、第1及び第2のモールド21,22が対向する方向に直交する平面上に位置する直線状のスリットからなっている。
【0039】
このように、注入部23aを直線状のスリットを設けることで形成すると、凸レンズのように中心部が厚く周縁部が薄い形状のレンズキャビティであっても、注入部を形成するためのスペースを確保することができる。
【0040】
[注入補助部材]
次に、注入補助部材3について、
図1、
図2、
図4及び
図5を参照して説明する。
図4は、注入補助部材3の斜視図である。
図5は、注入補助部材3の背面図である。
【0041】
注入補助部材3は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの加工が容易な熱可塑性樹脂を射出成形することによって形成される。この注入補助部材3は、略四角形の筒状に形成された補助部材本体31と、補助部材本体31の内部に設けられた嵌合部32と、補助部材本体31の一端に連続する取付片33と、取付片33に設けられた注入突部34とを備えている。
【0042】
補助部材本体31は、第1の側板部35と、この第1の側板部35に対向する第2の側板部36と、第2の側板部36に連続する傾斜板部37と、第1及び第2の側板部35,36に略直交する第3の側板部38及び第4の側板部39と有している。補助部材本体31の一端にある第1の開口部41Aは、取付片33によって囲まれており、注入突部34に設けられた、注入孔34aに連通している。補助部材本体31の他端にある第2の開口部41Bは、封止部材4によって塞がれる。
【0043】
第1の側板部35、第2の側板部36、傾斜板部37、第3の側板部38及び第4の側板部39は、それぞれ第1の開口部41Aの一辺を形成している。また、第1の側板部35、第2の側板部36、傾斜板部37、第3の側板部38及び第4の側板部39は、第2の開口部41Bの一辺を形成している。傾斜板部37は、取付片33側に向かうにつれて内部空間31aが狭くなるように傾斜している。
【0044】
第2の開口部41Bの周縁部には、固定片43が設けられている。この固定片43は、第1の側板部35、第2の側板部36、第3の側板部38及び第4の側板部39に連続して四角形の枠状に形成されている(
図1参照)。この固定片43には、封止部材4(
図7(d)参照)が密着して固定される。
【0045】
嵌合部32は、略円筒状に形成されている。この嵌合部32の軸は、第1及び第2の開口部41A,41Bが対向する方向と平行になっている。この嵌合部32の一部は、第1の側板部35と一体に形成されている。また、嵌合部32の軸方向の一端は、傾斜板部37の内面に液密に接続されており、他端は、固定片43と同一平面上に位置している。したがって、嵌合部32の筒孔(内部)32aは、補助部材本体31の内部空間31aと液密に仕切られている。
【0046】
嵌合部32には、プラスチックレンズ材料51を吐出するノズル101(
図7参照)が嵌合される。そのため、嵌合部32の筒孔32aは、ノズル101の径と略等しく又は少し大きく設定されている。
本実施の形態では、ノズル101の外径に応じて嵌合部32を円筒状に形成したが、本発明に係る嵌合部の形状は、使用するノズルの形状に応じて、例えば、三角形、四角形、楕円形など適宜設定される。
【0047】
嵌合部32の内面には、第1の開口部41A側に向かうにつれて径が連続的に小さくなるテーパ面32bと、このテーパ面32bの一端に連続する段部32cが設けられている。嵌合部32の段部32cには、ノズル101の外周面が当接する。これにより、ノズル101の挿入深さが規定される。
【0048】
取付片33は、第1の開口部41Aの周縁部に連続する略長方形の板状に形成されている。この取付片33は、円弧状に湾曲しており、モールド組立体2の外周面に対応した曲面33aを有している。つまり、取付片33の曲面33aの曲率半径は、モールド組立体2の外周面の曲率半径と略等しくなるように設定されている。取付片33の曲面33aは、モールド組立体2の外周面を形成するテープ部材23に接着部材45を用いて固着される。その結果、注入補助部材3は、モールド組立体2に取り付けられる。
【0049】
図4に示すように、取付片33は、補助部材本体31の内部空間31aに連通する排出用孔33b,33cを有している。これら排出用孔33b,33cは、補助部材本体31の第1の開口部41Aに対向する位置に設けられており、第3及び第4の側板部38,39が対向する方向に適当な間隔をあけて配置されている。
【0050】
注入突部34は、取付片33の曲面33aから突出している。この注入突部34は、排出用孔33b,33c間に配置されており、嵌合部32の筒孔32aに対向している。注入突部34は、第3及び第4の側板部38,39が対向する方向と平行な長辺を有する長方形の板状に形成されており、注入孔34aを有している。
【0051】
注入突部34の注入孔34aは、第1及び第2の開口部41A,41Bが対向する方向に延びており、嵌合部32の筒孔32aに連通している。したがって、ノズル101から吐出されるプラスチックレンズ材料51は、嵌合部32及び注入突部34を通って、モールド組立体2のキャビティ24に注入される。
【0052】
[接着部材]
次に、接着部材45について、
図6を参照して説明する。
図6は、接着部材45の斜視図である。
【0053】
接着部材45は、取付片33の曲面33aをモールド組立体2の外周面に固着するための両面粘着テープである。この接着部材45は、取付片33と略等しい大きさに設定された長方形のシート状に形成されており、貫通孔45aを有している。この貫通孔45aは、注入補助部材3の排出用孔33b,33cを露出させると共に、注入突部34を貫通させる大きさの長方形に形成されている。
【0054】
接着部材45は、ポリエチレンの基材と、アクリル系の粘着剤からなる接着層を有する。この接着部材45の基材としては、ポリエステル、布系などを用いてもよい。また、粘着層としては、プラスチックレンズ材料51(
図7参照(c)参照)に溶け出したり、重合を阻害したりしないものがよく、シリコーン系の他にゴム系の粘着剤を用いてもよい。
【0055】
本実施の形態では、接着部材として両面粘着テープを用いた。しかしながら、本発明に係る粘着部材としては、プラスチックレンズ材料51に溶け出して密着性を損なわなければ、常温硬化型接着剤、熱硬化型接着剤、紫外線硬化型接着剤、ホットメルト接着剤などを用いてもよい。
【0056】
[封止部材]
次に、封止部材4について説明する。
封止部材4(
図7(d)参照)は、補助部材本体31の固定片43の外形と略等しい四角形のシート状に形成されている。この封止部材4は、ヒートシール方法又は接着剤等を用いて固定片43に密着して固定される。
【0057】
<プラスチックレンズの製造方法>
次に、成形型1を用いて行われる本発明のプラスチックレンズの製造方法について、
図7〜
図9を参照して説明する。
図7は、本発明のプラスチックレンズの製造方法を説明する説明図である。
図8は、注入補助部材3の注入突部34がテープ部材23を押圧した状態を示す説明図である。
図9は、注入補助部材3の嵌合部32にノズル101を挿入した状態の断面図である。
【0058】
成形型1を用いて行われるプラスチックレンズの製造方法では、モールド組立工程と、補助部材取付工程と、ノズル位置決め工程と、注入工程と、封止工程と、重合工程が行われる。
【0059】
[モールド組立工程]
まず、モールド組立工程について、
図7(a)を参照して説明する。
モールド組立工程では、第1のモールド21と第2のモールド22を所定の間隔をあけて対向させ、両者の外周間をテープ部材23によって連結する。これにより、モールド組立体2が組み立てられる。このモールド組立体2には、第1及び第2のモールド21,22のレンズ形成面21a,22aと、テープ部材23によって密閉されたキャビティ24が形成される。
【0060】
次に、テープ部材23に注入部23aを設ける。この注入部23aは、例えば、工具やレーザなどを用いてテープ部材23に直線状の切り込みを入れることにより形成される。なお、注入部23aは、第1のモールド21と第2のモールド22の外周間を連結する前に、テープ部材23に形成しておいてもよい。
【0061】
[補助部材取付工程]
次に、補助部材取付工程について、
図7(b)及び
図7を参照して説明する。
補助部材取付工程では、注入補助部材3をモールド組立体2に取り付ける。つまり、注入補助部材3に設けた取付片33の曲面33aを、モールド組立体2の外周面に接着部材45によって密着させて固定する。
【0062】
取付片33の曲面33aは、モールド組立体2の外周面に対応した(略同一の)曲率半径に設定されている。そのため、取付片33の曲面33aをモールド組立体2の外周面に確実に密着させることができる。
【0063】
注入補助部材3は、注入突部34が注入部23aの短手方向の一側に当接するようにモールド組立体2に取り付けられる。これにより、注入補助部材3の注入突部34が、モールド組立体2に設けられた注入部23aの周囲であって注入部23aの短手方向の一側を押圧する。その結果、テープ部材23における注入部23aの一側がキャビティ24内に押し込まれ、開口48が形成される(
図8参照)。すなわち、スリットである注入部23aに、排出用孔33b,33cとキャビティ24とを連通する開口48が形成される。
【0064】
[ノズル位置決め工程]
次に、ノズル位置決め工程について、
図7(c)及び
図9を参照して説明する。
ノズル位置決め工程では、注入補助部材3の嵌合部32にノズル101を挿入し、嵌合させる。このノズル位置決め工程は、次の工程である注入工程の一部に含んでもよい。
【0065】
図9に示すように、ノズル101は、円筒状に形成されており、基部101aと、基部101aに連続するテーパ部101bと、テーパ部101bの基部101aとは反対側に連続する先端部101cとを有している。テーパ部101bは、先端部101cに向かうにつれて連続的に径が小さくなっている。したがって、先端部101cの径は、基部101aの径より小さくなっている。
【0066】
注入補助部材3の嵌合部32にノズル101を挿入すると、ノズル101のテーパ部101bが嵌合部32の段部32cに当接し、先端部101cが補助部材本体31の傾斜板部37に当接する。これにより、嵌合部32に対するノズル101の挿入深さが規定される。また、ノズル101の径方向への移動が嵌合部32の段部32cによって係止される。
【0067】
これにより、注入補助部材3に対するノズル101の位置決めを確実に行うことができる。その結果、注入補助部材3に対するノズル101の姿勢を常に同じにすることができ、プラスチックレンズ材料51(
図7(c)参照)の安定した注入を行うことができる。
【0068】
なお、ノズル101の先端部101cと注入突部34との間に設ける空間部47は、ノズル101の先端から先の空間を、極力小さくすることが好ましい。この空間部47を設けることにより、プラスチックレンズ材料51に気泡が生じた場合に、その気泡を空間部47に留めることができる。
この空間部47が大きすぎると、空気溜まりが生じてしまう。そして、ノズルから吐出されたプラスチックレンズ材料51が空気溜まりの下にあるプラスチックレンズ材料51の液面を叩くことにより、微小な気泡が発生する。この微小な気泡は、キャビティ24内での動きが緩やかであるため、レンズ外周部まで移動する。その結果、レンズ外周部まで移動した微小な気泡を取り除く作業が必要になり、作業時間の増加を招く。
【0069】
また、本実施の形態では、ノズル101のテーパ部101bを嵌合部32の段部32cに当接させる構成とした。しかしながら、ノズルは、径が変化しない円筒状のものであってもよい。その場合は、嵌合部32のテーパ面32bにノズルを嵌合させるとよい。
【0070】
[注入工程]
次に、注入工程について、
図7(c)を参照して説明する。
注入工程では、ノズル101からプラスチックレンズ材料51を吐出させて、キャビティ24に注入する。
【0071】
ここで、プラスチックレンズ材料51について説明する。本実施の形態では、熱により重合して硬化する熱硬化性樹脂組成物をプラスチックレンズ材料51として用いる。具体的には、プラスチックレンズ材料51として、ビスイソシアナトメチルビシクロヘプタンと、1−メルカプト−2,3−ビスメルカプトエチルチオプロパンと、ペンタエリスリトールテトラキスメルカプトプロピオネートを混合し、重合触媒としてジブチルチンジクロライドを用いたモノマーを用いる。
【0072】
本発明に係るプラスチックレンズ材料51としては、上述したような熱硬化性樹脂組成物の他に、紫外線等の光により重合し硬化する光硬化性樹脂組成物を用いることができる。光硬化性樹脂組成物は、光硬化性モノマーと、光重合開始剤とを含有するものである。
【0073】
ノズル101から吐出されたプラスチックレンズ材料51は、嵌合部32の筒孔32a及び注入突部34の注入孔34aを通って、注入突部34から吐出される。このとき、注入突部34から吐出されたプラスチックレンズ材料51は、第2のモールド22のレンズ形成面22aを伝わってキャビティ24に充填される。そのため、キャビティ24に充填されたプラスチックレンズ材料51に気泡が生じることを抑制することができる。
【0074】
その後、プラスチックレンズ材料51の注入を進めると、プラスチックレンズ材料51がキャビティ24を満たす。そして、プラスチックレンズ材料51は、取付片33の排出用孔33b,33c(
図4参照)を通って、補助部材本体31の内部空間(内部)31aにあふれ出る。また、プラスチックレンズ材料51がキャビティ24を満たした後にノズル101から吐出されたプラスチックレンズ材料51は、嵌合部32の筒孔(内部)32aに溜まる。
【0075】
プラスチックレンズ材料51の注入は、注入補助部材3の内部空間31aに適量のプラスチックレンズ材料51が溜まるまで行う(
図7(d)参照)。プラスチックレンズ材料51の注入が終了すると、ノズル101は、注入補助部材3から引き出される。
このとき、キャビティ24内のプラスチックレンズ材料51に気泡が生じていても、開口48(
図8参照)からキャビティ24の外側、つまり、補助部材本体31の内部空間31aへ気泡を排出することができる。
【0076】
[封止工程]
次に、封止工程について、
図7(d)を参照して説明する。
封止工程では、注入補助部材3の第2の開口部41Bを封止部材4によって封止する。
【0077】
本実施の形態では、ヒートシール方法によって封止部材4を固定片43に密着させて固定する。これにより、キャビティ24と、そのキャビティ24に連通する補助部材本体31の内部空間31a及び嵌合部32の筒孔32aが密閉される。
【0078】
上述したように、注入補助部材3の内部空間31aに適量のプラスチックレンズ材料51が溜まると、プラスチックレンズ材料51の注入が終了される。そのため、プラスチックレンズ材料51は、注入補助部材3の内部空間31aを満たすことはなく、また液量の多少の増減が起きても、封止部材4がプラスチックレンズ材料51に触れることはない。
【0079】
したがって、封止工程では、プラスチックレンズ材料51の影響を受けずに第2の開口部41Bを確実に封止することができる。また、第2の開口部41Bを封止部材4によって簡単に封止することができ、作業性を向上させることができる。
【0080】
[重合工程]
次に、重合工程について説明する。
重合工程では、キャビティ24に注入したプラスチックレンズ材料51を重合させる。
【0081】
本実施の形態では、プラスチックレンズ材料51を充填した成形型1を加熱炉(不図示)に入れて重合させる。これにより、プラスチックレンズ材料51が硬化し、プラスチックレンズ(不図示)が形成される。本例では、加熱炉内の温度を約20時間かけて120℃まで昇温したが、封止部材4によって封止された注入補助部材3の内部空間31a、筒孔32a及びキャビティ24の密閉性が損なわれることはなかった。
【0082】
なお、プラスチックレンズ材料として、光硬化性樹脂組成物を用いた場合は、光照射装置によって紫外線、可視光線などの光をプラスチックレンズ材料に照射して重合させる。
【0083】
重合工程が終了すると、硬化したプラスチックレンズ材料51を離型して、プラスチックレンズを取り出す。取り出されたプラスチックレンズは、例えば、フィニッシュドレンズやセミフィニッシュドレンズになる。
【0084】
フィニッシュドレンズは、両方の光学面が成型時に完成されている。セミフィニッシュドレンズは、一方の光学面が成型時に完成されており、他方の面を受注等によって対応する度数に個々に切削される。このセミフィニッシュドレンズは、累進屈折力レンズやプリズム処方レンズなどの特殊レンズに採用できる。
【0085】
本実施の形態の成形型1及びプラスチックレンズの製造方法によれば、テープ部材23に設けた注入部23aの周囲であって注入部23aの短手方向の一側を注入補助部材3の注入突部34によって押圧する。これにより、テープ部材23における注入部23aの一側がキャビティ24側に押し込まれ、注入部23aに気泡が抜ける開口48が形成される。
【0086】
そして、テープ部材23を押圧した注入突部34からプラスチックレンズ材料51を吐出させる。これにより、プラスチックレンズ材料51を注入するための開口の縮小化を図りながら、気泡が抜ける開口48を確保することができる。
【0087】
本実施の形態の成形型1及びプラスチックレンズの製造方法によれば、キャビティ24を満たして注入部23aから溢れ出したプラスチックレンズ材料51を、排出用孔33b,33cを通して注入補助部材3の内部空間31aに溜めることができる。したがって、キャビティ24に注入するプラスチックレンズ材料51の液面の高さを精密に制御する必要はない。しかも、プラスチックレンズ材料51の注入工程において、プラスチックレンズ材料51が成形型1の外部に漏れることを防止する。これにより、注入工程や重合工程に用いる機器、作業者などにプラスチックレンズ材料51が付着する心配がない。
【0088】
本実施の形態の成形型1及びプラスチックレンズの製造方法によれば、ノズル101を注入補助部材3の嵌合部32に嵌合させる。これにより、注入補助部材3に対するノズル101の位置決めを確実に行うことができるため、注入補助部材3に対するノズル101の姿勢を常に同じにすることができる。その結果、プラスチックレンズ材料51の安定した注入を行うことができる。
【0089】
本実施の形態の成形型1及びプラスチックレンズの製造方法によれば、注入補助部材3の第2の開口部41Bを封止部材4によって封止する。そのため、注入補助部材3を封止する作業が煩雑になることはなく、キャビティ24を簡単に密閉することができる。
【0090】
本実施の形態の成形型1及びプラスチックレンズの製造方法によれば、注入突部34から吐出されるプラスチックレンズ材料51が、第2のモールド22のレンズ形成面22aを伝わってキャビティ24に充填される。これにより、キャビティ24に充填されたプラスチックレンズ材料51に気泡が生じることを抑制することができる。
【0091】
本実施の形態の成形型1によれば、線状のスリットによって注入部23aを形成したため、注入突部34を貫通させたたきの開口を小さくすることができる。また、注入部23aを簡単に形成することができると共に、加工形状が単純であるため、加工の方法も多くの選択肢から選択することが可能となる。また、テープ部材23の切れ端が発生することが無く、キャビティ24内のプラスチックレンズ材料51にテープ部材23の切れ端が混入しない。
【0092】
また、本実施の形態の成形型1によれば、注入突部34がテープ部材23における注入部23aの一側をキャビティ24内に押し込む。そのため、押し込まれたテープ部材23側に気泡が位置しても、成形型1を傾けることにより、その気泡を開口48側へ簡単に移動させることができる。その結果、キャビティ24内のプラスチックレンズ材料51に生じた気泡を開口48から補助部材本体31の内部空間31aへ容易に排出させることができる。
【0093】
本実施の形態の成形型1によれば、注入補助部材3に設けた取付片33の曲面33aの曲率半径を、モールド組立体2の外周面の曲率半径と略等しくした。そのため、取付片33の曲面33aをモールド組立体2の外周面に密着させることができる。その結果、注入補助部材3の内部空間31a及びキャビティ24を確実に密閉することができる。
【0094】
本実施の形態の成形型1によれば、注入突部34の断面が細長の略長方形に形成されているため、外周部分の厚みが薄いプラスチックレンズを形成する場合にも、注入突部34をキャビティの外周に対向させることができる。
【0095】
本実施の形態の成形型1によれば、嵌合部32の内面の一部が、注入突部34側に向かうにつれて連続的に径が小さくなるテーパ面32bになっている。そのため、ノズル101を嵌合部32に嵌合させる場合に、ノズル101及び成形型1の位置制御を高精度に行う必要がなく、ノズル101の注入補助部材3への挿入作業を簡単に行うことができる。
【0096】
<成形型の第2の実施の形態>
[成形型]
次に、本発明の成形型の第2の実施の形態について、
図10及び
図11を参照して説明する。
図10は、成形型の第2の実施の形態の斜視図である。
図11は、
図10に示す成形型をB−B′線で断面した断面図である。
【0097】
第2の実施の形態の成形型61は、第1の実施の形態の成形型1(
図1参照)と同様の構成を有している。この第2の実施の形態の成形型61が成形型1と異なる点は、注入補助部材63の嵌合部65のみである。そのため、ここでは、注入補助部材63の嵌合部65について説明し、成形型1と共通する構成には同じ符号を付けて重複する説明を省略する。
【0098】
嵌合部65は、略円筒状に形成されている。この嵌合部65の軸は、第1及び第2の開口部41A,41Bが対向する方向と平行になっている(
図11参照)。この嵌合部65の一部は、第1の側板部35と一体に形成されている。また、嵌合部65の軸方向の一端は、傾斜板部37の内面に液密に接続されており、他端66は、固定片43よりも内側に位置している。そして、嵌合部65の筒孔(内部)65aは、補助部材本体31の内部空間31aと液密に仕切られている。
【0099】
嵌合部65には、プラスチックレンズ材料51を吐出するノズル102(
図11参照)が嵌合される。そのため、嵌合部65の筒孔65aは、ノズル101の径と略等しく又は少し大きく設定されている。
【0100】
ノズル102は、第1の実施の形態の成形型1に嵌合するノズル101(
図9参照)とは、形状が異なっている。ノズル102は、円筒状に形成されており、基部102aと、基部102aに連続するテーパ部102bとを有している。つまり、ノズル102には、ノズル101の先端部101cに相当する部分が設けられていない。したがって、テーパ部102bが端面を形成している。
【0101】
嵌合部65の内面には、第1の開口部41A側に向かうにつれて径が連続的に小さくなるテーパ面65bと、このテーパ面65bの一端に連続する段部65cが設けられている。嵌合部65の段部65cには、ノズル102におけるテーパ部の外周面が当接する。これにより、ノズル101の挿入深さが規定される。
【0102】
嵌合部65の段部65cは、第1の実施の形態に係る嵌合部32の段部32cよりも、第1の開口部41A側に設けられている。これにより、ノズル102を嵌合部62に嵌合したときに、ノズル102の先端であるテーパ部102bと注入突部34との間に設ける空間部を小さくすることができる。その結果、プラスチックレンズ材料51に気泡が生じた場合に、その気泡を空間部に留めることができ、かつ、空間部に空気溜まりが生じることを防止することができる。
【0103】
本実施の形態では、ノズル102の外径に応じて嵌合部65を円筒状に形成したが、本発明に係る嵌合部の形状は、使用するノズルの形状に応じて、例えば、三角形、四角形、楕円形など適宜設定される。
【0104】
本実施の形態の成形型61においても、第1の実施の形態の成形型1と同じ効果を得ることができる。
さらに、成形型61では、嵌合部65の他端66が固定片43よりも内側に位置している。これにより、第2の開口部41Bを封止部材4(
図7(d)参照)によって塞いだときに、補助部材本体31の内部空間31aと嵌合部65の嵌合孔32aとが独立した空間にならないようにすることができる。その結果、嵌合孔32aに残るプラスチックレンズ材料51の余剰分が少ない場合、その全てが、キャビティ24内へ引き込まれないようにすることができる。
【0105】
<注入部のその他の例>
次に、本発明の成形型に係る注入部のその他の例について、
図12を参照して説明する。
図12は、本発明の成形型に係る注入部の例を示す説明図である。
【0106】
[注入部の第2の例]
図12(a)は、本発明の成形型に係る注入部の第2の例を示す説明図である。
図12(a)に示すように、注入部23bは、テープ部材23の長手方向と平行な直線状の第1スリット71aと、この第1スリット71aに略直交し、第1スリット71aの中央部に接続される第2スリット71bからなっている。第1スリット71aは、排出用孔33bの注入突部34とは反対側の辺から排出用孔33cの注入突部34とは反対側の辺までの距離と略等しい長さになっている。
【0107】
注入補助部材3(
図4参照)は、注入突部34の長手方向の中央が注入部23bの第2スリット71bに略一致し、かつ、注入突部34と第1スリット71aとの間に間隙が生じるようにモールド組立体2に取り付けられる。このとき、注入補助部材3の注入突部34が、注入部23bの第2スリット71bを横断するようにして、注入部23aの周囲の一部を押圧する。その結果、テープ部材23における注入部23aの一側がキャビティ24内に押し込まれ、排出用孔33b,33cとキャビティ24(
図2参照)とを連通する開口(不図示)が形成される。
【0108】
[注入部の第3の例]
図12(c)は、本発明の成形型に係る注入部の第3の例を示す説明図である。
図12(c)に示すように、注入部23cは、テープ部材23の長手方向と平行な直線状の第1スリット72aと、この第1スリット72aの一端に直交する第2スリット72bと、他端に略直交する第3スリット72cからなっている。
【0109】
第1スリット72aは、排出用孔33bの注入突部34とは反対側の辺から排出用孔33cの注入突部34とは反対側の辺までの距離と略等しい長さになっている。第2スリット72b及び第3スリット72cは、注入突部34の短手方向の長さよりも長くなっており、それぞれ第1スリット72aに接続されている。
【0110】
注入補助部材3は、注入突部34の長手方向に延びる一辺が注入部23cの第1スリット73aに略一致するようにモールド組立体2に取り付けられる。これにより、注入突部34が、テープ部材23における第1スリット72aの第2及び第3スリット72b,72c側を押圧する。その結果、テープ部材23における3つのスリット72a〜72cに囲まれた部分がキャビティ24内に押し込まれ、排出用孔33b,33cとキャビティ24とを連通する開口(不図示)が形成される。
【0111】
[注入部の第4の例]
図12(c)は、本発明の成形型に係る注入部の第4の例を示す説明図である。
図12(c)に示すように、注入部23dは、テープ部材23の長手方向と平行な直線状の第1スリット73aと、この第1スリット73aの一端に直交する第2スリット73bと、他端に略直交する第3スリット73cからなっている。
【0112】
第1スリット73aは、排出用孔33bの注入突部34とは反対側の辺から排出用孔33cの注入突部34とは反対側の辺までの距離と略等しい長さになっている。第2スリット73b及び第3スリット73cは、注入突部34の短手方向の長さよりも長くなっており、それぞれ第1スリット73aに接続されている。
【0113】
注入補助部材3は、注入突部34が注入部23dの第2スリット73b及び第3スリット73cの先端部間の中央に当接するようにモールド組立体2に取り付けられる。これにより、テープ部材23における3つのスリット73a〜73cに囲まれた部分が注入突部34に押圧されてキャビティ24内に押し込まれる。その結果、注入部23dに、排出用孔33b,33cとキャビティ24とを連通する開口(不図示)が形成される。
【0114】
[注入部の第5の例]
図12(d)は、本発明の成形型に係る注入部の第5の例を示す説明図である。
図12(d)に示すように、注入部23eは、テープ部材23の長手方向と平行な直線状の第1スリット74a及び第2スリット74bと、これら2つのスリット74a,74bの一端を連結する第3スリット74cを有している。
【0115】
第1スリット74a及び第2スリット74bは、テープ部材23の短手方向に対向しており、排出用孔33bの注入突部34とは反対側の辺から排出用孔33cの注入突部34とは反対側の辺までの距離と略等しい長さになっている。第3スリット74cは、2つのスリット74a,74bに略直交し、注入突部34の短手方向の長さよりも長くなっている。また、第1スリット74a及び第2スリット74bの他端には、3つのスリット74a〜74cに囲まれた部分とそれ以外のテープ部材23の領域との接続部を小さくする2つのスリット74dが設けられている。
【0116】
注入補助部材3は、注入突部34が2つのスリット74a,74b間に配置され、かつ、注入突部34の一辺が第1スリット74aに略一致するようにモールド組立体2に取り付けられる。これにより、注入突部34が、テープ部材23における2つのスリット74a,74b間を押圧する。その結果、テープ部材23における3つのスリット74a〜74cに囲まれた部分がキャビティ24内に押し込まれ、排出用孔33b,33cとキャビティ24とを連通する開口(不図示)が形成される。
【0117】
以上説明したように、本発明に係る注入部は、複数のスリットによって形成することもできる。また、本発明に係る注入部の形状を適宜設定することにより、テープ部材23のキャビティ24内に押し込まれる部分の形状を変更することが可能である。
【0118】
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した第1及び第2の実施の形態では、第1のモールド21のレンズ形成面21aを凹面とし、第2のモールド22のレンズ形成面22aを凸面とした。しかしながら、本発明に係るレンズ形成面としては、形成するプラスチックレンズの形状に応じて適宜設定することができる。
【0119】
上述した第1及び第2の実施の形態では、ノズル101(102)の先端を嵌合部32(65)内に配置させ、注入突部34の注入孔34aからプラスチックレンズ材料51を吐出する構成とした。しかしながら、本発明に係る成形型としては、取付片33にノズルが貫通する貫通孔を設けると共に、その貫通孔の周囲にテープ部材の注入部を押圧する突起を設ける構成としてもよい。
【0120】
この場合は、ノズルが嵌合部に嵌合すると、ノズルの先端部が取付片を貫通してキャビティ内に配置される。このような構成は、ノズルの外径が小さい(例えば、本実施の形態に係る注入突部34程度の大きさ)場合に適用するとよい。また、このような構成を適用する場合は、ノズルを貫通させるための貫通孔が排出用孔を兼ねる構成であってもよい。
【0121】
上述した第1及び第2の実施の形態では、テープ部材23に直線状のスリットを設けることにより注入部23aを形成した。しかしながら、本発明に係る注入部は、曲線状のスリットから形成することもできる。また、テープ部材の長手方向の両端を付き合わせることにより形成してもよい。
【0122】
また、本発明に係る注入部としては、線状のスリットによって形成することに限定されるものではなく、例えば、開口部にしてもよい。この場合においても、注入突部34によって開口部の周囲の一部を押圧することにより、その開口部を排出用孔33b,33cとキャビティ24とが連通する程度に広げるようにしてもよい。
【0123】
上述した第1及び第2の実施の形態では、注入突部34を長方形の板状に形成した。しかし、本発明に係る注入突部としては、板状に限定されるものではなく、円柱状、角柱状、半球状などその他の形状にしてもよい。さらに、本発明に係る注入突部の数は、1つに限定されるものではなく、2つ以上にしてもよい。
【0124】
上述した第1及び第2の実施の形態では、取付片33の曲面33aの曲率半径を、モールド組立体2の外周面の曲率半径と略等しくした。しかしながら、本発明に係る取付片としては、曲面の曲率半径を変化させる方向に弾性変形可能に構成してもよい。このように構成すると、外周面の曲率半径が異なる各モールド組立体に対して共通の注入補助部材を用いることができ、汎用性を向上させることができる。