(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を
図1乃至8により説明する。始めに、合成樹脂キャップ1の構造について説明する。尚、本発明において開蓋方向A
1とは、キャップ1の周方向であって上蓋2を開蓋する際に回す方向を指し、閉蓋方向A
2はその逆方向であり、即ち、上蓋2を閉蓋する際に回す方向を指す。例えば、本実施形態では開蓋方向A
1とは、
図1における反時計回り方向(
図4乃至8における右方向に相当する)を指すが、雄螺子9b及び雌螺子5aの切り方によってその方向は変化するものである。
【0017】
合成樹脂製キャップ1は所謂スクリューキャップとして使用され、キャップ1は、上蓋2、中栓3及び封印帯4を有し、上蓋2は螺合によって中栓3に係止することができる。尚、中栓3は打栓装着により、容器の口部(図止せず)と嵌合する。
【0018】
上蓋2は、天壁2A及び天壁2Aの外縁から連続する側壁2Bにから構成される。天壁2Aの内面には雌螺子5aが形成された係止リング5、アウターリング6及びインナーリング7が立設される。係止リング5は、キャップ1が閉蓋させている際に、その下端面が中栓3の中栓本体10の天壁10Aに略接するように形成され、その下端面には、突部5bが設けられる。
【0019】
本実施形態において、上蓋2は略円筒形状(平面視略円形状)に成形され、係止リング5はアウターリング6の下端から延在するように設けられる。又、側壁2B、アウターリング6(係止リング5)及びインナーリング7は同心円上に形成される。そして、突部5bは、180°離間する位置に2箇所形成されている。尚、係止リング5とアウターリング6は個々に上蓋2より立設させることもできる。
【0020】
側壁2Bの下端面2aには蓋突起部8が設けられている。
図8に示す様に蓋突起部8は側面視略直角台形形状に形成され、その開蓋方向A
1の側面には傾斜面8aが、閉蓋方向A
2の側面には垂直面8bが形成される。本発明において、直角台形形状とは、台形であって、ある内角が直角である形状を指す(台形の定義上、4つの内角の内、ある隣り合う2つの内角が直角となる)。又、本実施形態において、蓋突起部8は上蓋2の周方向約180°離間する位置に2箇所形成される。尚、蓋突起部8の機能等の詳細については後述する(段落[0042]、[0043]及び[0047]を参照のこと)。
【0021】
中栓3は、注出筒9および注出筒9の下部に設けられ、注出筒9に連続する中栓本体10により構成される。注出筒9は、その先端9Aに流通口9aが形成され、そして、その胴部9Bには雄螺子9bが形成されている、雄螺子9bは、上蓋2を螺合によって係止するために形成されている。つまり、上蓋2は係止リング5の雌螺子5a及び胴部9Bの雄螺子9bが螺合することにより中栓3に係止されることとなる。
【0022】
尚、アウターリング6と係止リング5を別々に形成した場合には、雄螺子9bは、注出筒9の胴部9Bに形成せず、中栓本体10の天壁10Aの外面に、その外周面に雄螺子が形成された筒体(図示せず)を別途立設するかし、上蓋2を係止できるようにしてもよい。
【0023】
又、雄螺子9bの根元(本実施形態では、注出筒9の下端に相当する)には、位置決め突起22が形成されている。位置決め突起22は上蓋2の巻き閉め完了位置(キャップ1の開封前における上蓋2の係止位置に相当する)を決定するために形成される凸部であり、2つの凸部を1対として形成され、開蓋方向A
1側に位置する凸部は、閉蓋方向A
2側に位置する凸部より低くなっている。又、本実施形態において位置決め突起22は、位置決め突起23とともに、周方向に180°離間した二箇所に形成される。
【0024】
前記巻き閉め完了位置は、位置決め突起22,23に上蓋2の係止リング5に設けられた突部5bが開蓋方向A
1側に位置する凸部を乗り越え、閉蓋方向A
2側に位置する凸部との間に係止され、上蓋2の回動を規制することで決定される。つまり、位置決め突起22,23及び突部5bは雄螺子9bの切り方に合わせ適切な位置に設けられることとなる。尚、位置決め突起22,23は必ず設ける必要はなく、上蓋2の下端面2aが中栓本体10の天壁10Aに当接した位置を巻き閉め完了位置とすることもできる。
【0025】
又、注出筒9は、上蓋2によってキャップ1が閉蓋させている際に、インナーリング7及びアウターリング6との間の間隙2bに嵌合されるようになっており、即ち、注出筒9は、閉蓋時に、インナーリング7及びアウターリング6により、その内周面及び外周面の両面からシールされるようになっている。
【0026】
中栓本体10は、天壁10A及び天壁10Aの外縁から連続する側壁10Bにより構成される。中栓本体10には、前記容器の口部を中栓本体10に嵌合するために、天壁10Aの内面には、内筒18が側壁10Bと同心円上に立設されており、又、中栓本体10の側壁10B内面の下端部10a側に嵌合突条19が形成される。嵌合突条19は中栓本体10が前記容器に打栓装着された際に、該容器に形成された凹所に嵌合し、キャップ1を該容器に係止するためのものである。
【0027】
本実施形態では、中栓本体10は、その平面視の形状が上蓋2と略同形状(平面視略円形状)であり、その天壁10Aの中心部で注出筒9と連続している。
【0028】
中栓本体10の側壁10Bの外面には、凹所11及び係止凸部12が形成されている。本実施形態において、中栓本体10は後述するように封印帯4の内面4aに係合凸部13が設けられているため(段落[0033]を参照)、側壁10Bの外面は、閉蓋時に係合凸部13が側壁外面10Bを押圧し、閉蓋及び開蓋の妨げにならないように、中栓本体10の天壁10A側が切り欠けられている(以下、天
壁10A側の切り欠かれている箇所の側壁10Bの外面を上部側壁外面10Cと、下端部10a側の切り欠かれていない箇所の側壁10Bの外面を下部側壁外面10Dと謂う)。又、凹所11は下部側壁外面10Dに、係止凸部12は上部側壁外面10Cの4箇所に、互いが周方向に略90°離間するように各々形成されている。
【0029】
凹所11は係止凸部12の側部下方に連続し、下部側壁外面10Dに設けられ、キャップ1が開封された際、後述のように封印帯4の係合凸部13が嵌ることができるような大きさに形成される(段落[0043]を参照)。又、凹所11は中栓本体の周方向に部分的、且つ、等間隔に複数箇所設けられ、その底壁11cが嵌合突条19の頂部19aよりも高い位置となるように形成される。
【0030】
本実施形態において、凹所11は上部側壁外面10Cと面一になる様に形成される。又、上蓋2の開蓋方向A
1にある側面11aは垂直面であり、係止凸部12の垂直面12bと連続している。又、凹所11は、等間隔に隣り合う2つの凹所が、周方向略90°離間するように4箇所設けられている。従って、係止凸部12もまた同様に4箇所設けられていることとなる。尚、凹所11の機能等については後述する(段落[0043]乃至[0046]を参照)。
【0031】
係止凸部12は上部側壁外面10Cに形成される平面視略直角台形形状の凸所であり、キャップ1が開封される際に、封印帯4の係合凸部13を係止するように設けられる。又、その開蓋方向A
1の側面には、傾斜面12aが、閉蓋方向A
2の側面には垂直面12bが形成される。尚、係止凸部12の機能等の詳細は後述する(段落[0041]乃至[0046]を参照)。
【0032】
又、下部側壁外面10Dの上端には、凹所11が形成される箇所を除いて環状凸部10bが形成される。
【0033】
封印帯4は、上蓋2の下端面2aにブリッジ部14を介して上蓋2と一体に形成される。その形状は、キャップ1の形状に合わせて適宜決定される。尚、本実施形態では、封印帯4は環状であり、その上端4bには帯突起部15及び支持突起16が、その内面4aに係合凸部13が各々形成されている。
【0034】
係合凸部13は封印帯4の内面4aにおける上面4bの近傍に形成される凸所である。係合凸部13は平面視略直角台形形状であり、開蓋方向A
1の側面には垂直面13bが、閉蓋方向A
2の側面には傾斜面13aが形成される。本実施形態において、係合凸部13は、中栓本体10の係止凸部12と同じく、隣り合う係合凸部13が互いに周方向略90°離間した位置に4箇所形成されている。尚、係合凸部13の機能等の詳細については後述する(段落[0041]乃至[0046]を参照)。
【0035】
又、係合凸部13は、前記巻き閉め完了位置において、中筒本体10の係止凸部12に近接するように形成される。即ち、後述するように、キャップ1の開封の際に、直ちに係合凸部13は係止凸部12に係止されるようになっている。例えば、本実施形態では、上蓋2に、開蓋方向A
1への僅かな遊び、例えば、周方向略45°以内の遊び、があるように形成される。つまり、前記巻き閉め完了位置において、係合凸部13の垂直面13bと係止凸部12の垂直面12b間の距離は、封印帯4の内周長(本実施形態において上蓋2の内周長に略等しい)の凡そ1/8以下となっている。
【0036】
又、本実施形態では、封印帯4の上端4bには、キャップ1の内方に向かって延在する鍔部20が形成されている。鍔部20は、後述のように、係合凸部13が凹所11に嵌められる際(段落[0043]を参照)に、中栓本体10の環状凸部10bに引っ掛かるように形成される。又、この際に、中栓本体10に形成された係止凸部12が鍔部20に引っ掛かり、係合凸部13が凹所11へ移動することを阻害しないように、鍔部20には窓部21が形成される。窓部21は、鍔部20に形成された凹部であり、係合凸部13が係止凸部12に係止した際に、係止凸部12の上方に位置するよう形成される。本実施形態において、中栓本体10の係止凸部12の配置に応じて、隣り合う窓部21が互いに周方向略90°離間した位置に4箇所形成されている。又、その形状は、係止凸部12と略同形状となっている。
【0037】
帯突起部15は側面視略直角台形形状であり、キャップ1の
閉蓋方向A
2の側面には傾斜面15aが、
開蓋方向A
1の側面には垂直面15bが各々形成される。又、所定の間隔15cを空けて対向している2つの帯突起部15,15は1対として形成される。本実施形態において、帯突起部15は、封印帯4上の周方向約180°離間する位置に2対形成されている。
【0038】
キャップ1の開封前において、対となる2つの帯突起部15,15の間の間隙15cには、上蓋2の蓋突起部8が遊嵌合されており、蓋突起部8の傾斜面8aと帯突起部15の傾斜面15aが、蓋突起部8の垂直面8bが帯突起部15の垂直面15bとが互いに対向している。又、間隙15cの幅wは、その間を蓋突起部8が移動してもブリッジ部14が破断されない幅となっている。尚、帯突起部15の機能等の詳細については後述する(段落[0042]、[0043]及び[0047]を参照)。
【0039】
そして、支持突起16は帯突起部15に対して、封印帯4の周方向に約90°離間した位置に形成されている。支持突起16は帯突起部15と共にキャップ1が前記容器に打栓装着される際等に垂直方向の応力を支持し、ブリッジ部14に対して過度な垂直方向の応力が掛かり、ブリッジ部14が破断することを防止するためのものである。
【0040】
次に、本実施形態のキャップ1の開封工程ついて説明する。
【0041】
(1)上蓋2及び上蓋2に接合された封印帯4を開蓋方向A
1に回していくと、封印帯4に設けられた係合凸部13(その垂直面13b)は中栓本体10の係止凸部12の垂直面12bに係止され、上蓋2のみ回転を許容する。(
図6(A)及び
図7(A)を参照)。その際に、蓋突起部8の傾斜面8aは帯突起部15の傾斜面15aに接触する(
図8(B)を参照)。
【0042】
(2)更に上蓋2を開蓋方向A
1に回そうとするとブリッジ部14が破断し、上蓋2と封印帯4は分離する。その際に、帯突起部15の傾斜面15aは蓋突起部8の傾斜面8aを押圧し、この時、帯突起部15(その傾斜面15a)は蓋突起部8の傾斜面8aに沿ってずれようとするため、結果として、帯突起部15を下方へと押し下げようとする力が働く。
【0043】
(3)この力によって、封印帯4の係合凸部13は係止凸部12の垂直面12b及び凹所11の側面11aに沿って降下し、封印帯4の係合凸部13は凹所11に嵌められ、凹所11の底壁11cまで降下しキャップ1の開封は完了する(
図6(B)を参照)。
【0044】
従って、本実施形態では、封印帯4は、キャップ1が開封された際に、少なくとも凹所11の高さΔhの分だけ下方に押し下げられていることとなり、開封前、h
0であった上蓋2と封印帯4との間の隙間17が、開封後には少なくとも隙間17Aの様にh
0+Δhまで広げられる(
図6(B)を参照)。因って、需要者は、封印帯4の位置及び/又は隙間17,17Aを視認することでキャップ1の開封を容易に確認することが可能である。尚、蓋突起部8及び帯突起部15を設けずに封印帯4の自重によって、係合凸部13が凹所11に嵌るようにすることもできる。
【0045】
又、本実施形態では、別々に成形された上蓋2を中栓3に最初に螺合する(セットする)際に、ブリッジ部14は破断されない様になっている。上蓋2を閉蓋方向A
2に回していくと、封印帯4の係止凸部12の傾斜面12aと中栓本体10の係合凸部13の傾斜面13aとが接触する(
図7(B)を参照)。
【0046】
このため、係合凸部13の傾斜面13aは係止凸部12の傾斜面12aに沿って滑動することができ、係合凸部13は係止凸部12によって係止されることなく、係合凸部13は係止凸部12を容易に乗り越えることができるようになっている。即ち、係止凸部12は開蓋方向A
1から閉蓋方向A
2へと係止凸部12を乗り越え、上記巻き閉め位置へと位置するようになっている。
【0047】
又、この際に、蓋突起部8(その垂直面8b)は帯突起部15の垂直面15bによって係止される(
図8(C)を参照)。これによって、上蓋2を回す力を封印帯4に伝達できるようになっている。
【0048】
このように本実施形態では、係止凸部12と係合凸部13及び蓋突起部8と帯突起部15は、上蓋2を(それと共に封印帯4も)回した際に、その垂直面8b,12b,13b,15b同士が接触する方向では互いに強く係止され、その逆方向、つまり傾斜面8a,12a,13a,15a同士が接触する方向、では係止されない又は非常に弱く係止されるような形状となっている。即ち、係止凸部12と係合凸部13及び蓋突起部8と帯突起部15は互いに一のラチェットとして働くようになっている。
【0049】
前述のように、本実施形態では、ブリッジ部14が破断されキャップ1が開封される際に、封印帯4が押し下げられ、封印帯4の内面4aに設けられた係合凸部13が凹所11に嵌るようにすることによって、開封前後で上蓋2と封印帯4の間の隙間17が広がるようになっているため、需要者が視認によって容易に開封の有無を確認することが可能である。
【0050】
又、凹所11は中栓本体10に部分的に且つ等間隔に設けられ、その底壁が嵌合突条19の頂部19aよりも高い位置となるように形成された凹所であるため、従来技術のように封印帯4を外方に広げなくともよく、又、キャップ1と前記容器との嵌合が弱くなることもない。
【0051】
尚、本発明は、本実施形態に限定されるものでなく、蓋突起部8、凹所13、係止凸部12、係合凸部13、ブリッジ部14、帯突起部15等の位置、大きさ、数等は適宜変更することができる。又、キャップ1はスクリューキャップに適用でき、様々な形状のキャップに、本発明を応用することが可能である。