(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
左右の側枠を有するフレームと、前記フレームの左右の側枠の一方に配設されたハンドルと、前記フレームの左右の側枠にそれぞれ配設された側板と、前記側板間に回転自在に支持されたスプールとを有するリール本体を具備し、前記スプールの回転制動力を調整可能な制動装置が反ハンドル側の側枠及び側板の間に配設された魚釣用リールであって、
前記制動装置は、前記スプールの回転制動力を調整するために釣り人にそれぞれ操作される複数の操作部と、前記操作部の調整状態を前記釣り人に視認させる複数の視認部とを有し、
前記反ハンドル側の側板は、外表面に窓部を有し、前記リール本体を把持した釣り人が前記側板の外側から前記窓部を通して複数の視認部を視認可能とし、
前記窓部内に露出する前記視認部及び前記操作部は、凹凸状の滑り止めが付され、前記側板の外表面に対して非突出状態に配置され、
前記窓部は、指が侵入可能な横長の形状を成し、上側よりも下側が突出する縁部が形成されたことを特徴とする魚釣用リール。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1から
図11を用いて本発明の第1実施形態による魚釣用リール10について説明する。
例えば
図1から
図3に示すように、本実施形態の魚釣用リール10は、両軸受型手巻きリールとして形成してある。
図1に示すように、ここでは釣り人が左手LHで釣竿8及び魚釣用リール10を保持し、右手RHで魚釣用リール10の右側部のハンドル30を回すように形成されている場合について説明する。ここでは、ハンドル30の右側に突出したツマミ30aを保持して後述するスプール20を回転させて釣糸を巻き取る。もちろん、左手LHでハンドル30を操作するようにハンドル30の配置が逆(左側部)であっても良い。
【0010】
なお、この実施形態において、前後、左右は例えば
図1(A)中に示すように、実釣中における前後、左右の方向を示す。上下は例えば
図1(B)中に示すように、実釣中における上下の方向を示す。
【0011】
図1から
図3に示すように、魚釣用リール10のリール本体12は、図示しない連結部材等で一体化される左右一対の側枠(右側枠14a及び左側枠14b)を連結して一体の枠体構造を形成するフレーム14を有し、この側枠14a,14bのそれぞれの外側に、例えば螺合あるいは嵌合等の手段を適宜に組み合わせて側板(右側板16a及び左側板16b)を取り付けて、全体的に剛性構造のハウジングとして形成されている。そして、魚釣用リール10のリール本体12は、右側枠14a及び左側枠14b間に配設されたリール取付脚部18を介して釣竿8に固定される。
リール本体12の左右一対の側枠14a,側枠14bの上側であって、側板16a,16bの間にはサムレスト19がフレーム14と一体成形されているが、例えばビス、螺合あるいは嵌合等の手段を適宜に組み合わせてフレーム14に取り付けられても良い。この実施形態では、サムレスト19の外観はスプール20に巻回された釣糸に親指LTをかけてサミング操作を行うためにリール10の後側が開いた略U字状である。
【0012】
釣糸が巻回されるスプール20は、左右の側枠14a,側枠14b間に回転自在に支持され、右側板16aはスプール20を回転駆動させる巻取り駆動部22(
図3参照)を支持し、この右側板16a及びフレーム14の右側枠14aにより形成された空間内に、巻取り駆動部22を形成する駆動力伝達系やドラグ系等の各種機構が収容されている。
【0013】
図3に示すように、このリール本体12の側枠14a,側枠14b間には、スプール20を装着してこのスプール20と共に回転するスプール軸26の両端部が、例えば図示のようなボール軸受28a,28bを介して回転自在に支持されている。このスプール軸26の一端側には、ハンドル30の回転を軸受32a,32bに支持されたハンドル軸34、ハンドル軸34に回り止め嵌合されたドラグ機構44を経由してドライブギヤ36を介して回転駆動されるピニオンギヤ38がこのスプール軸26と同軸上に配置されている。
なお、ハンドル軸34には、公知のスタードラグ(ドラグ調整ノブ)42が配設され、ドライブギヤ36には公知のドラグ機構44が配設されているが、これらについては説明を省略する。
【0014】
ドライブギヤ36を介して回転駆動されるピニオンギヤ38は、詳細には図示しない公知のクラッチ(伝達機構)48を介して、側板16a,16b間に配置したクラッチレバー50(
図3参照)と連動しており、このクラッチレバー50を下方に押圧作動することにより、クラッチ48がOFFとなり軸方向に沿って
図3中の右側に移動することができる。例えば、クラッチレバー50の操作により、スプール軸26の右端部にピニオンギヤ38が嵌合した位置すなわち巻取状態と、スプール軸26の右端部からピニオンギヤ38を分離した状態(スプールフリー状態)とに切り替えることができる。また、ピニオンギヤ38がスプール軸26の右端部に対して分離した状態で、ハンドル30を回転させると、図示しない公知の復帰機構を介して、ピニオンギヤ38がスプール軸26の右端部に嵌合して元の状態(巻取状態)に復帰し、スプール軸26と一体化されているスプール20が、ピニオンギヤ38と共に一体的に回転する。
【0015】
スプール20は、軸方向の両側に形成された1対の鍔部20a間に位置する円筒状の胴部20bを有し、胴部20bの内周側に位置する中央壁部20cを介してスプール軸26に一体的に装着され、1対の鍔部20aと釣糸巻回胴部20bの外周面とで形成される環状溝内に釣糸(図示しない)が巻回される。この環状溝の底部を形成する胴部20b上に釣糸(図示しない)を均等に巻回するため、ハンドル30の釣糸巻取り回転に連動して、1対の左右の側枠14a,側枠14b間を往復動する公知のレベルワインド機構(図示せず)が配置されている。このレベルワインド機構は、右側板16a内の駆動部と連動する係合子を左右に移動させることにより、ハンドル30の回転操作にともなって、釣糸をスプール20の胴部20b上に均等に巻き取ることができる。
【0016】
そして、フレーム14のうち、ハンドル30の反対側(反ハンドル側)に位置する左側枠14bと左側板16bとの間には、スプール20の過回転を防止する磁気制動装置(ブレーキ装置)54を配置してある。
磁気制動装置54は、スプール20と一体回転するように取り付けた導電体56を備える。
図4に示すように、本実施形態の導電体56は、スプール軸26に強固に固定されるボス部56aと、このボス部56aから半径方向外方に延びるディスク状部56bと、このディスク状部56bの外周縁部からハンドル30と反対側に延びる円筒状部56cとを有し、例えばアルミニウムあるいは銅等の非磁性の導電性材料で形成されている。
円筒状部56cは、後述する内側リング磁石68及び外側リング磁石70とほぼ等しい軸方向寸法を有し、その全体がこれらの磁石68,70間の環状間隙72内に挿入されている。このため、円筒状部56cは、これらのリング磁石68,70の側面側から漏れ出る磁束の範囲内に配置されている。これらの円筒状の導電体56は、非磁性の導電性材料で形成されているので、これらの磁束内を移動するときに、渦電流が誘導される。
【0017】
図2及び
図3に示すように、この実施形態では磁気制動装置54は、スプール20の制動力の調整を行う第1及び第2の操作機構(スプール制動力調整部)110,112を有する。ここでは、これら第1及び第2の操作機構110,112が左側枠14bと左側板16bとの間に配設された例について説明する。釣り人が第1の操作機構110の第1の操作部(回動操作部)124を操作すると、スプール20に対する制動効果を大きく変化させて基準制動力を設定でき、第2の操作機構112のスプール制動力調整部(別の操作部、第2の操作部)172を操作すると、第1の操作機構110の第1の操作部124の操作による基準制動力(制動効果)を微調整できる。すなわち、操作部を複数化することによって、1つの場合よりも制動装置54の回転制動力をより詳細に設定でき、ロングキャスト(フルスイングキャスト)から身近なポイントへのショートキャスト等を行う際に、対象魚、釣場の状況などにより釣り人にとってベストなリール10のスプール26の制動特性を得ることができる。
【0018】
図5(C)に示すように、左側枠14bの平面部115には、後述するネジ(係合部)119が左側板16bの貫通孔118を通してそれぞれ螺合される3つのネジ穴(係合部)115aが形成されている。これらネジ穴115aはそれぞれ平面部115の縁部近傍に形成されている。
【0019】
図5(A)に示す左側板16bは、左側枠14bの平面部115を覆うとともに、左側枠14bから左方に突出した第1及び第2の操作機構110,112を覆う空間を有するカバー部材として形成されている。左側板16bの外観は、前側の上下方向幅が後側の上下方向幅に比べて小さく形成された略卵型の一部を成す形状を有する。本実施形態では左側板16bは、上下方向よりも前後方向を長くしているが、上下方向と前後方向を同じ寸法(例えば円形状)とするなど、左側板16bを適宜の形状に形成しても良い。
【0020】
左側板16bは、例えばABS、PA、PC等の樹脂や、FRP、アルミニウム合金、マグネシウム合金等で形成され、左手LHの掌を受ける外面部117と、上側縁部ULと、下側縁部LLとを一体的に有する。上側縁部UL及び下側縁部LLは左側板16bの前側及び後側で連続した状態に形成されている。
図4及び
図5(B)に示すように、外面部117は、左側枠14bに対して左側板16bを装着した状態で外側となり左手LHの掌を受けるように膨出した表面部(外表面部)OSと、左側枠14bに対向するように内側となり第1及び第2の操作機構110,112を収容する凹状の裏面部(内表面部)ISとを有する。
図1(B)に示すように、この実施形態における左側板16bの表面部OSは左手LHの掌の母指球周辺に当たる位置が滑らかな膨らみを持った状態に形成されている。左側板16bの裏面部ISは、左側枠14b及び左側枠14bに装着された第1及び第2の操作機構110,112との間に空間を形成する。
また、左側板16bの表面部OSはスプール軸26を延長した位置周辺(後述する第1の操作部124の周辺)から後述する第2の操作部184の周辺が最も膨らんでいる。例えば本実施形態では
図5(A)に示す左側板16bの表面部OSのうち、一点鎖線Eで示す部分(稜線部分)がその上下よりも左側枠14bの平面部115に対して最も突き出した部分(領域)である。本実施形態の場合、稜線部分Eはスプール軸26の軸芯Cを通る水平面(前後方向、及び、前後方向に直交する左右方向により形成される面)よりも上下方向上側にある。稜線部分Eをこのような位置に配置することによって、左側板16bの外面部117の表面部OSに対する法線が水平面よりも下向きとなる部分の面積、すなわち、掌に当たる面積を大きくでき、リール10の把持性を良好にすることができる。
【0021】
なお、一般に、両軸受型リールの場合、スプール軸26の支持構造や制動装置を収納するために、スプール軸26の軸芯Cの延長線上の左側板16bの表面部OSの部分やその周辺が最も左方(反ハンドル30側)に突出する傾向にある。このため、稜線部分Eはスプール軸26の軸芯Cの延長線上又はその周辺(例えば数mm程度上側又は下側に離れた位置)にあることも好ましい。
【0022】
左側板16bの上側縁部UL及び下側縁部LLは表面部OS及び裏面部ISに滑らかに連続して形成されている。上側縁部UL及び下側縁部LLは、この実施形態ではサムレスト19と左側枠14bは一体に形成されているが、別体であっても良い。
【0023】
そして、左側板16bを左側枠14bに固定する場合、
図5(A)に示す左側板16bの外面部117に形成された3つの貫通孔118と、
図5(C)に示す左側枠14bの平面部115に形成されたネジ穴115aとを同軸上に配置した状態で、これらにネジ119(
図2参照)を螺合することによって固定される。
【0024】
なお、下側縁部LLには、第1の操作部124の後述する操作突起(第1の操作部、回動操作部)160が回動操作可能に配置される操作開口部120(
図11(B)参照)が形成されている。操作開口部120は、左側枠14bと左側板16bとの間に浸入する例えば海水等を抜いたり、ゴミを排出するための開口としても機能する。
【0025】
図4に示すように、第1操作機構110は、セットプレート122と、例えば円形状を有する第1の操作部(回動操作部)124と、内側磁石ホルダ126と、外側磁石ホルダ128とを有する。
セットプレート122は、左側枠14bに対してネジ留めや嵌合等の手段により固定されている。セットプレート122は、スプール軸26及び軸受28bを収容する中央開口132と同心状に、スプール軸26側から小径部134aと大径部134bとを順に形成した支持台部134を有する。
小径部134aの外周部には、内側磁石ホルダ126を収容する環状溝136を形成してある。内側磁石ホルダ126は環状溝136に対して摺動可能である。この内側磁石ホルダ126の外周には、第1実施形態で説明した内側リング磁石68を固定してある。
大径部134bの内周部には、外側磁石ホルダ128を収容する環状溝138を形成してある。外側磁石ホルダ128は環状溝138に対して摺動可能である。この外側磁石ホルダ128の内周には、第1実施形態で説明した外側リング磁石70を固定してある。
すなわち、セットプレート122のうち、スプール20側には、内側磁石ホルダ126及び外側磁石ホルダ128が配設されている。そして、内側磁石ホルダ126は外側磁石ホルダ128に対して回動可能である。また、内側磁石ホルダ126は外側磁石ホルダ128とともにスプール軸26の軸方向への移動は可能であるが、単独での移動は規制されている。
【0026】
図5(C)には左側枠14bに対して
図5(A)に示す左側板16bを取り外した状態の第1の操作機構110のセットプレート122及び第1の操作部124を示す。セットプレート122の外側には、
図6(A)から
図6(D)に示す第1の操作部124が回動可能に配設されている。
図7はセットプレート122から第1の操作部124を取り外した状態を示す。
図8には、
図7中のVIII−VIII線に沿った方向から観察した状態を示す概略図を示す。
【0027】
第1の操作部124は、
図6(A)から
図6(D)に示すように、略環状に形成された環状部142と、環状部142の縁部から例えば環状部142の中心軸に略平行に延出された延出部144a,144bと、延出部144a,144bから環状部142の径方向外方に向かって突出したフランジ部146a,146bとを有する。
環状部142には例えば適宜の間隔ごとに目盛り(釣り人に第1の操作部124の調整状態を視認により認識させる視認部、認識手段)142aが付されている。これら目盛り142aは環状部142に対して突出していたり、着色により目立つように形成されている。
図1(B)及び
図2に示す目盛り142aには、例えば数字等が付されている。これら目盛り142aは、左側板16bの後述する第1の窓部(認識手段)212を通して視認可能である。このとき、目盛り142aは
図1(A)に示す上側からも視認可能であるし、
図1(B)及び
図2に示す左側からも視認可能である。
なお、環状部142の目盛り142aを左手LHの親指LTの指腹で操作する場合、目盛り142a自体が滑り止めとして機能するように、例えば凹凸状等の滑り止めが付されていることが好ましい。
【0028】
延出部144a,144bは、環状部142の中心軸に対して対向する位置に形成されている。フランジ部146a,146bは、延出部144a,144bのうち環状部142に対する遠位の位置から環状部142の中心軸に対して離れる方向に形成されている。
一方、セットプレート122には第1の操作部124のフランジ部146a,146bを回動可能に保持する1対の保持部150a,150b(
図5、
図7、
図9、
図10参照)が形成され、第1の操作部124を所定の範囲内で回動可能としている。なお、第1の操作部124の中心軸はスプール軸26の軸芯(中心軸)Cと略一致する。また、第1の操作部124はスプール軸26の軸芯C回りに回動するが、セットプレート122の1対の保持部150a,150bによって保持されているので、スプール軸26の軸方向には移動しない。
【0029】
図6(A)から
図6(D)に示すように、1対の延出部144a,144bには、環状部142の中心軸に向かって突出する内側突状部148a,148bが形成されている。セットプレート122の大径部134bの環状溝138に摺動可能に配設された外側磁石ホルダ128には、
図8に示すように、内側突状部148a,148bが係合される係合溝152が形成されている。この係合溝152は、スプール軸26と平行に形成された軸方向溝154と、軸方向溝154に連続し例えば略螺旋状に形成された螺旋状溝156とを有する。このうち、軸方向溝154は内側突状部148a,148bを外側磁石ホルダ128に着脱する際に用いられる。
【0030】
そして、第1の操作部124の内側突状部148a,148bが外側磁石ホルダ128の係合溝152に係合された状態で、第1の操作部124を回動させると、第1の操作部124の内側突状部148a,148bは外側磁石ホルダ128の係合溝152の螺旋状溝156をスプール軸26の軸方向に押圧する。すなわち、外側磁石ホルダ128がスプール軸26の軸方向に沿って移動する。
図4及び
図10に示すように、外側磁石ホルダ128と内側磁石ホルダ126とは互いにスプール軸26の軸方向に一体に動く構成となっているため、外側磁石ホルダ128とともに内側磁石ホルダ126もスプール軸26の軸方向に沿って移動する。
【0031】
図6(A)から
図6(C)に示すように、第1の操作部124は、環状部142から延出された突出部160aを介して操作突起160を有する。
図2及び
図5に示すように、この操作突起160は、リール10の左側板16bの下側縁部LLから突出するように形成されている。なお、左側板16bの下側縁部LLには、操作突起160の回動量を所定の範囲内に規制するように操作開口部120が規定されている。
なお、この実施形態による魚釣用リール10は、左側板16bの下側縁部LLの操作開口部120から第1の操作機構110の操作突起160を操作可能に露出させている。そして、操作突起160が左側板16bの下側縁部LLから突出する突出量は小さく、釣竿8及びリール10を握持保持したときに左手LHが当たらない位置にある。すなわち、左手LHで釣竿8とリール10を保持した状態で、第1の操作機構110の操作突起160と左手LHとの間に空間が形成される。このため、操作突起160に左手LHを当てるのを防止でき、意図せず操作突起160を操作する誤操作を防止できる。
【0032】
そして、
図9(A)から
図9(C)に示すように、セットプレート122に装着された第1の操作部124の操作突起160を操作し、操作突起160に連動して動く環状部(連動部材)142すなわち第1の操作部124をセットプレート122に対して回動させると、
図10(A)から
図10(C)に示すように、導電体56の円筒状部56cが内側磁石68と外側磁石70との間の環状間隙72に入る量が変更される。なお、
図9(A)に示す状態は
図10(A)に、
図9(B)に示す状態は
図10(B)に、
図9(C)に示す状態は
図10(C)にそれぞれ対応する。
【0033】
この実施形態では、
図8に示すように、外側磁石ホルダ128の係合溝152の螺旋状溝156は3つの段部156a,156b,156cを連続して有する。第1段部156aと第2段部156bとの間に、第2段部156bと第3段部156cとの間には共に段差(滑らかに連続していない部分)があり、第1の操作部124の内側突状部148a,148bが第1段部156aと第2段部156bとの間や第2段部156bと第3段部156cとの間を移動する際にクリック感が得られる。
第1段部156aは軸方向溝154に近接する位置にあり、第1段部156aに内側突状部148a,148bが係合されているときには、
図10(A)に示すように、内側磁石68及び外側磁石70に対する導電体56のディスク状部56bの位置(距離D1)は最も遠い。このため、導電体56の円筒状部56cが磁石68,70の間に配設されている量は小さい。
第2段部156bは、第1段部156aと螺旋状溝156の最も奥側の第3段部156cとの間にあり、
図10(B)に示すように、第1段部156aに内側突状部148a,148bが係合されている状態よりも内側磁石68及び外側磁石70に対する導電体56のディスク状部56bの位置は近い(距離D2<D1)。このため、導電体56の円筒状部56cが磁石68,70の間に配設されている量は、第1段部156aに内側突状部148a,148bが係合されている状態よりも大きい。
第3段部156cは螺旋状溝156の最も奥側にあり、
図10(C)に示すように、第2段部156bに内側突状部148a,148bが係合されている状態よりも内側磁石68及び外側磁石70に対する導電体56のディスク状部56bの位置は近い(距離D3<D2<D1)。このため、導電体56の円筒状部56cが磁石68,70の間に配設されている量は、第2段部156bに内側突状部148a,148bが係合されている状態よりも大きい。
【0034】
すなわち、操作突起160を
図9(A)に示す位置から
図9(C)に示す位置に向かって回動させると、
図10(A)から
図10(C)に示すように、円筒状部56cが環状間隙72に入る量が次第に大きくなる。このため、
図9(C)及び
図10(C)に示す位置では、磁石68,70により大きな磁力を受ける。一方、
図9(A)及び
図10(A)に示すように、円筒状部56cが環状間隙72に入る量が小さくなると、磁石68,70により受ける磁力が小さくなる。このように、第1の操作部124を操作することによって、スプール20の基準制動力を設定することができる。その基準制動力(抑制力)は第1段部156aに内側突状部148a,148bがある状態から、第2段部156b、第3段部156cと奥側に移動するにつれて大きくなる。
そして、スプール20を回転させると、導電体56には内側リング磁石68及び外側リング磁石70による磁界の影響で渦電流が発生するが、導電体56の円筒状部56cが磁石68,70の間に配設されている量(内側突状部148a,148bが段部156a,156b,156cに係合されている位置)に応じてスプール20の回転抑制力を規定する。
【0035】
図4及び
図11(A)に示すように、第2の操作機構112は、スプール制動力調整部172と、第1の操作機構110の内側磁石ホルダ126から延出された延出部174と、この延出部174の遠位端に固定された連動歯車176とを有する。延出部174と連動歯車176は一体でも良いが、別体とすると組み立て性が良いので別体であることが好ましい。
スプール制動力調整部172は、セットプレート122及び左側枠14bに対して螺合固定可能な螺合固定部182と、螺合固定部182の回りを回動可能な第2の操作部(回動操作部)184とを備えている。第2の操作部184は螺合固定部182によってセットプレート122に対して適度に押圧され、適当な力を加えないと第2の操作部184が回動しないようになっている。
【0036】
第2の操作部184は外周部184cの縁部184dに少なくとも凹凸による滑り止めKが形成された例えば円形ダイヤル形状(円形状)を有する。このような円形ダイヤル形状を有すると、
図11(A)に示す親指LTの腹部が外周部184cと側面184eの2面に跨る縁部184dへの押圧となって接触面積を大きく取れ、かつ、親指LTへの圧力を広範囲に分散できる。このため、第2の操作部184を操作し易い上、繰り返しの操作によっても左手LHの親指LTが痛くなり難い。また、親指LTを第2の操作部184に押し当てた際に凹凸部に親指LTの指腹が喰い込むので、操作の際の滑りを防止できる。
なお、凹凸による滑り止めKは第2の操作部184の外周部184cの全体や側面184eの全体に形成しても良い。また、第2の操作部184の径方向内方の側面184eに目盛り184f(釣り人に第2の操作部184の調整状態を視認により認識させる視認部、認識手段)が付されて形成されている。
【0037】
図11(A)に示すように、第2の操作部184の縁部184dの近傍の側面184eには、例えば環状に溝184aが形成されている。このため、指に水分が付着している場合に、その水分を溝184aに逃がすことができ、第2の操作部184を滑り難くすることができる。特に、左側板16bにより形成される後述する第2の窓部214内に親指LTを押し付ける場合、第2の操作部184の滑り防止効果により、第2の操作部184への親指LTの押し付け力は小さくて良い。なお、このような形状、機能をそのまま上述した第1の操作部124の環状部142の目盛り142aに用いることも好ましい。
また、第2の操作部184を回動させる際に、リーフスプリング192によりクリック音を発生させるとともに、第2の操作部184は、第2の操作部184を能動的に回動させるという人的な力を加えることによって回動するようになっている。すなわち、第2の操作部184の調整位置をズレ難くすることができる。
【0038】
そして、スプール制動力調整部172の第2の操作部184の外周には回動操作部側歯車184bが形成され、これが連動歯車176に噛み合わせられている。このため、第2の操作部184を左側枠14bに対して例えば
図2中のP方向に回動させると、回動操作部側歯車184bを介して連動歯車176をQ方向に回動させる。そして、連動歯車176に連結された延出部174を介して内側磁石ホルダ126が外側磁石ホルダ128に対してR方向に回動する。このため、内側リング磁石68に対する外側リング磁石70の相対位置が変化する。これにより、導電体56の円筒状部56cを配置した内側リング磁石68と外側リング磁石70との間に形成される環状間隙72の磁界の強さを微調整することができる。
【0039】
したがって、第1の操作機構110と第2の操作機構112とを組み合わせることによって、スプール20に対して所望の制動力を付与することができる。
なお、この実施形態では、第1及び第2の操作部124,184の上端位置は、上下方向ほぼ同じ高さにある。このため、第1及び第2の操作部124,184の特に上端近傍を操作する際に後述する開口202を前後方向に長く形成することによって、両者を1つの開口202を通して視認及び操作できる。
【0040】
図1(A)及び
図1(B)に示すように、左側板16bの外面部117には、左側からはもちろん、上側、上側やや後方側、上側やや左側等から第1及び第2の操作部124,184を視認可能とするとともに、左手LHの親指をあてがうことによってこれらを操作可能とする開口202が形成されている。開口202は左側板16bの外面部117の表面部OS及び裏面部IS間を貫通した状態に形成されている。開口202の上下方向の縁部の間には第1及び第2の操作機構110,112の第1及び第2の操作部124,184の上端近傍が配置されている。そして、開口202の上下方向の幅は
図11(A)に示すように、親指LTの指腹が第1及び第2の操作部124,184を押圧可能な幅に形成されている。
そして、
図5(A)に示すように、開口202は左側板16bの上下方向よりも前後方向に長く、開口202の前後方向の長さ(後述する枠体204の内部の前後方向の長さでも良い)L2は左側板16bの前後方向の長さL1よりも短く形成されている。特に、開口202の前後方向の長さL2を左側板16bの前後方向の長さL1の半分以上とし、第1及び第2の操作部124,184を確実に操作可能な空間を確保することが好ましい。これは、操作する指の移動や視認性のためである。開口202の前後方向の長さL2の上限は強度、剛性の確保から左側板16bの前後方向の長さL1の80%以下が好ましい。
そして、円形状の第1及び第2の操作部124,184は前後方向に離れているので、第1及び第2の操作部124,184を親指LTの指腹でそれぞれ別に回動操作可能であり、制動装置54の制動力を調整できる。
【0041】
図5(A)に示す左側板16bの稜線部分Eよりも上側(スプール軸26の軸芯Cよりも上側)は、左側板16bの表面部OS(
図11(A)及び
図11(B)に示す仮想延長面Sを含む)に対する法線が水平面よりも上向きとなる。このため、左側板16bの稜線部分Eよりも上側に開口202を形成した場合、開口202の縁部は上側よりも下側の方が左側に出っ張る。したがって、
図1(A)に示すように、第1の操作部124及び第2の操作部184の両者を上側又は上側後方側等から視認できる。
リール本体12の通常の把持状態では
図1(A)及び
図1(B)に示すように、リール本体12の上部(サムレスト19)に左手LHの親指LTを、リール本体12の下部や釣竿8に左手LHのその他の指(例えば人差し指から小指)を掛けて把持する。このように、リール本体12を通常に把持した場合、
図11(B)に示すように、人差し指から小指の付け根の近傍を親指LTの付け根の近傍よりも左側板16bに強く当てる必要がある。一方、スプール軸26の軸芯Cの延長線上よりも上側の部分には掌を強く当てる必要がない(掌は必ずしも当たる必要はない)。したがって、窓部212,214がスプール軸26の軸芯Cの延長線上よりも上側、すなわち親指LTの付け根の近傍にあれば、窓部212,214が形成されていることは把持性に影響を与え難くすることができる。
したがって、
図11(B)に示すように、左手LHでリール10を把持する際、左手LHを左側板16bの稜線部分Eよりも上側に当接させる必要性が少なく、稜線部分Eよりも上側の部分を把持のために用いる必要性が少ない。このため、稜線部分Eよりも上側は左手でリール10を把持する際に影響を与え難く、稜線部分Eよりも上側の略全部を開口202として形成しても良い。一方、第1の操作部124及び第2の操作部184の両者を上側又は上側後方側等から視認できる状態を確保できれば、開口202の一部は
図5(A)に示す稜線部分E上にあっても良い。
【0042】
開口202の縁部には例えば環状に形成された枠体204が取り付けられている。枠体204は例えば左手LHの親指LTを保護し、開口202(左側板16b)の強度及び剛性を維持する補強部材として用いられ、かつ、左側枠14bの平面部115と左側板16bとの間にゴミや海水等が浸入するのを防止することができる。枠体204は左側板16bより硬度が低く、摩擦係数が小さい材料が好ましく、例えばPTFE、ナイロン、ABS樹脂、アセタール樹脂(POM)などの樹脂材が用いられることが好ましい。枠体204は上述した樹脂材等で一体成形され、開口202に対して外面部117の裏面部IS側から表面部OS側に向かって嵌め込まれて接着等により固定されることが好適である。枠体204は、例えば親指LTが強く擦れるため、未塗装、未メッキ仕上げとすることが好ましい。また、
図11(A)及び
図11(B)に示すように、枠体204は、左側枠14bの平面部115(
図5(C)参照)に向かって肉厚に形成されている。
図1(A)に示すように、左側板16bの開口202に取り付けられた枠体204は、親指LTを置く部分として形成され、
図11(A)及び
図11(B)に示す仮想延長面Sに面一の位置から左側枠14bの平面部115(
図5(C)参照)に向かって延出されている。すなわち、この実施形態では、枠体204は第1及びの第2の操作部124,184にそれぞれ向かって水平方向に延出されている。そして、
図11(B)中に符号205で示す部分(枠体204のうちの下側部分)は左側板16bの開口202の下側縁部よりも肉厚に形成されている(二重構造に形成されている)ので、左側板16b自体を補強できるとともに、開口202の剛性及び強度を高めることができる。
【0043】
そして、開口202の縁部に環状に形成された枠体204の下側に親指LTを押し当てると、親指LTは枠体204の下側に向けた力を掛けることとなる。このとき、親指LTが枠体204に強く擦れるので、親指LTに負担を掛けるのを防止するため、R形状に丸められている。そして、
図11(A)及び
図11(B)に示すように、枠体204の左側端部は左側板16bの表面部OSの仮想延長面Sから外方に突出させることなく、外面部117の表面部OSと枠体204との境界は滑らかに形成され、特に、外面部117の表面部OSと枠体204との境界は面一に形成されていることが好ましい。
【0044】
図5(A)に示すように、この実施形態では、枠体204は開口202内の空間を前後に仕切る仕切り部(支柱)206を有し、この仕切り部206によって、第1の操作部124の環状部142を視認可能とするとともに操作可能とする第1の窓部(貫通穴)212と、第2の操作部184を視認可能とするとともに操作可能とする第2の窓部(貫通穴)214とを形成する。すなわち、第1の窓部212は第2の窓部214の後方に形成されている。そして、開口202のうちの後側の空間である第1の窓部212と、前側の空間である第2の窓部214とを仕切り部206によって分けているので、第1の窓部212及び第2の窓部214の位置を視認しなくても、手触り(触覚)でそれぞれの位置を容易に認識できる。
なお、枠体204によって形成される第1及び第2の窓部212,214は、それぞれ上下方向よりも前後方向に長く形成されていることが好ましい。
【0045】
そして、第1の窓部212を通して第1の操作機構110の第1の操作部124の環状部142の一部である上端部近傍を視認及び操作可能であり、第2の窓部214を通して第2の操作機構112の第2の操作部184の一部である上端部近傍を視認及び操作可能である。第1の操作部124の環状部142を、
図11(B)中に破線で示す左側板16bの表面部OSの仮想延長面Sから外方に突出させることがない非突出状態に、第1の窓部212の内側に配置した状態で外部に露出させている。同様に、第2の操作部184を、
図11(A)中に破線で示す左側板16bの表面部OSの仮想延長面Sから外方に突出させることがない非突出状態に、第2の窓部214の内側に配置した状態で外部に露出させている。
この実施形態のように、例えば円形状の操作部124,184を用いる場合、第1及び第2の窓部212,214に左手LHの親指LTの指腹を押し当てて操作部124,184の一部に対して前後方向に力を加えれば、操作部124,184が回転する。したがって、上下方向に親指LTの指腹が入る程度の狭い隙間だけで確実な操作を行うことができる。なお、親指LTの太さは釣り人や手袋の有無等によって異なるので、上下方向の幅を実際の親指LTの指腹が入るよりもやや太めの親指の指腹が入るように設定することが好適である。
この場合、仕切り部206により操作部124,184が分離されているので、意図せず操作部124,184を同時に操作することが防止されている。
【0046】
図11(A)中に破線で示す左側板16bの表面部OSの仮想延長面Sから第2の操作部184までの距離は、例えば0mmから5mm程度で、0.5mmから3.0mm程度であればなお好ましい。すなわち、第2の操作部184は左側板16bの表面部OSに対して突出しないように露出されている。
図11(B)中に破線で示す左側板16bの表面部OSの仮想延長面Sから第1の操作部124(環状部142)までの距離も同様であることが好ましい。このため、第1の操作部124は左側板16bの表面部OSに対して突出しないように露出されている。
なお、仮想延長面Sの形状は、左側板16bの第1及び第2の窓部212,214の周囲の形状によって変わる。第1及び第2の窓部212,214の周囲がこの実施形態のように曲面の場合、仮想延長面Sも曲面であり、第1及び第2の窓部212,214の周囲が平面の場合、仮想延長面Sも平面である。
そして、左側板16bの表面部OSの仮想延長面Sから第1及び第2の操作部124,184が外方に突出しないことの判断は、リール取付脚部18を水平に配置したときに、第1及び第2の窓部212,214の水平方向及び上下方向の短寸法方向で判断するものとする。この実施形態では
図2に示す第1及び第2の窓部212,214の上下方向が前後方向に比べて短寸法方向であるため、仮想延長面S上に図示しない基準線が第1及び第2の窓部212,214の上下方向に採られ、その基準線に第1及び第2の操作部124,184が触れているか否かで突出しているか否かが判断される。なお、基準線は、第1及び第2の窓部212,214の周囲が曲面であるからこの実施形態では曲線である。また、この曲面は第1及び第2の窓部212,214の周囲の曲率面が延長した形で定義付けられる。
【0047】
図5(B)に示すように、この実施形態では、仕切り部206は左側板16bの内側で略L字状に形成されている。このため、仕切り部206は、屈曲部208によって上下方向及び左右方向の両方向に延びている。このように仕切り部206が略L字状に形成されていることにより、枠体204の上下方向及び左右方向を効果的に補強できる。
仕切り部206は明確な屈曲部208を有する略L字状に限ることはなく、例えば1/4円弧や楕円弧等の一部として形成されていることも好ましい。この場合も仕切り部206で枠体204の上下方向及び左右方向を効果的に補強できる。
図5(A)に示すように、この実施形態では仕切り部206の前後方向の幅は、上側を下側に比べて大きくしている。特に、仕切り部206の前側縁部及び後側縁部は共に略円弧状に形成されている。この形状により、
図2に示す円形状の第1及び第2の操作部124,184の操作性及び視認性を確保しつつ、第1及び第2の操作部124,184の外縁部と枠体204との間の隙間を小さくすることができる。
なお、
図11(B)に示すように、枠体204のうち第1の窓部212の上側部分には、上側から下側、特に第1の操作部124の環状部142に向かって延出された延出部218を有する。延出部218により、第1の操作部124を操作可能としつつ、上下方向の空間幅を小さくして左側板16b内に例えばゴミ等が侵入するのを防止することができる。
【0048】
図2及び
図5(A)に示すように、枠体204のうちの下側には2つの突起(釣り人に第1及び第2の操作部124,184の調整状態を視認により認識させる視認部)216a,216bが形成され、一方の突起216aは第1の窓部212に向かって延出され、他方の突起216bは第2の窓部214に向かって延出されている。一方の突起216aは第1の操作部124の環状部142の目盛り142aを指し示し、他方の突起216bは第2の操作部184の目盛り184fを指し示す。
このように、突起216aは
図5(A)に示すように枠体204のうちの下側に形成され、環状部142の目盛り142aの数値がいくつであるかを表わすポインタとして機能する。このとき、
図11(B)に示すように、第1の操作部124の環状部142の目盛り142aと枠体204の突起216aとは近接した位置にあるので、突起216a及び環状部142の目盛り142aは見る角度によらず、突起216aが指し示す位置を特定できる。すなわち、釣り人は目盛り142a及び突起216aの両視認部で第1の操作部124の調整状態を視認により容易に認識できる。
同様に、突起216bは
図5(A)に示すように枠体204のうちの下側に形成され、第2の操作部184の目盛り184fの数値がいくつであるかを表わすポインタとして機能する。このとき、
図11(A)に示すように、第2の操作部184の目盛り184fと枠体204の突起216bとは近接した位置にあるので、突起216b及び第2の操作部184の目盛り184fは見る角度によらず、突起216bが指し示す位置を特定できる。すなわち、釣り人は目盛り184f及び突起216bの両視認部で第2の操作部184の調整状態を視認により容易に認識できる。
【0049】
なお、突起216aは必ずしも左側板16bの枠体204に設けられている必要はなく、例えば左側枠14bの平面部115に固定されていたり、左側枠14bに対してネジ留めや嵌合等の手段により固定され第1の操作部124に対して移動しないセットプレート122に設けられていることも好適である。同様に、突起216bは必ずしも左側板16bの枠体204に設けられている必要はなく、例えば左側枠14bの平面部115に固定されていたり、螺合固定部182に設けられていることも好適である。
さらに、目盛り142aは必ずしも第1の操作部124の環状部142自体に設けられている必要はなく環状部142と一緒に動く部材として形成されていれば良い。同様に、目盛り184fは必ずしも第2の操作部184自体に設けられている必要はなく第2の操作部184と一緒に動く部材として形成されていれば良い。
また、視認部としては目盛り142a,184fに限ることはなく、制動力の大小を表わす表示、行いたいキャスティングの方法(ロングキャスト用/ショートキャスト用)等を表わすようにしても良い。これらの表示は視認部としての突起216a,216bとともに、又は、突起216a,216bに代えて、左側板16bの外面部117の表面部OSから把持性が低下しないように突出しないように設けることも好ましい。
【0050】
なお、仕切り部206を含む枠体204はリール10を把持した手に与えるフィーリングを向上させることができる。また、枠体204に装飾等が施されて意匠性を向上させることができる。更には、枠体204は他部品(左側板16b)との関係において最適な材料を選択できる。また、枠体204を適宜に設計することにより、開口202の開口量が大きくなればなるほど、開口202の縁部に配設され窓部212,214を形成する枠体204による強度及び剛性を良好に維持しようとする補強効果を大きくすることができる。
【0051】
このように形成された魚釣用リール10を
図1(A)に示す上側から見た場合、左側板16bの表面部OSに対する法線が水平状態よりも上向きにある位置では、表面部OSは上側よりも下側の方が左側に出っ張る。このような位置(表面部OSに対する法線が水平状態よりも上向きにある位置)に開口202及び枠体204が形成されているので、開口202及び枠体204の上側よりも下側の方が左側に出っ張る。このため、開口202に枠体204を配設した場合であっても、
図11(A)及び
図11(B)に示すように、枠体204の外表面が仮想面S上にあるので、第1の窓部212を通して第1の操作部124の環状部142の目盛り142aの一部を視認可能である。
図11(B)に示すように、突起216aに隣接する目盛り142aを読むことによって、第1の操作部124の調整状態を上側から観察できる。したがって、左側板16bの表面部OSを上側(釣り人の顔側)に向かって傾けなくても第1の操作部124の環状部142の状態を確認することができる。このように、第1の操作部124の調整状態を確認したい場合、魚釣りの際の釣竿8及びリール10の移動量、顔の移動量を抑制した状態で視認により確認することができる。
釣り人はリール10を左手LHで保持した状態で左側板16bの第1の窓部212を通して第1の操作部124の環状部142の上側部分に親指LTを押し当てることができる。このように、第1の操作部124の環状部142を親指LTの指腹に触れるように配置しているので、指の感覚で第1の操作機構110の状態(基準制動力)を容易に認識できる。この場合、親指LTの指腹に触れる環状部142をそのまま操作しても良いし、操作突起160を操作しても良い。すなわち、スプール20の基準制動力を調整する場合、環状部142を操作しても良いし、操作突起160を操作しても良い。
第1の操作部124の環状部142を操作する場合、上側部分に押し当てた親指LTを第1の窓部212に沿って前後方向に移動させる。このように第1の操作部124の環状部142を回動操作可能である。そして、操作突起160をスプール軸26の軸芯C回りに回動操作する場合、操作突起160を操作しながら環状部142の目盛り142aを第1の窓部212を通して例えば上側から観察できる。
【0052】
同様に、リール10を
図1(A)に示す上側から見た場合、第2の窓部214を通して第2の操作部184の目盛り184fの一部を視認可能である。このため、
図11(A)に示すように、突起216bに隣接する目盛り184fを読むことによって、第2の操作部184の調整状態を上側から観察できる。したがって、左側板16bの表面部OSを上側に向かって傾けなくても第2の操作部184の状態を確認することができる。このように、第2の操作部184の調整状態を確認したい場合、魚釣りの際の釣竿8及びリール10の移動量、顔の移動量を抑制した状態で視認により確認することができる。
釣り人はリール10を左手LHで保持した状態で左側板16bの第2の窓部214を通して第2の操作部184の上側部分に親指LTを押し当てることができる。すなわち、第2の操作部184を親指LTの指腹に触れるように配置しているので、指の感覚で第2の操作機構112の状態(基準制動力(制動効果)を微調整した状態)を容易に認識できる。第2の操作部184を操作する場合、上側部分に押し当てた親指LTを第2の窓部214に沿って前後方向に移動させる。このように第2の操作部184を回動操作可能である。
【0053】
この実施形態に係るリール10をリール取付脚部18を介して釣竿8に取り付けた釣り具を用いて魚釣りを実際に行う場合の一連の動作について簡単に説明する。(1)ハンドル30を操作して釣糸を巻き取るとともに、左手LHでリール10を保持しつつ、親指LTで第1及び/又は第2の操作部124,184を操作、又は、人差し指LFで操作突起160を操作し、次キャスティング時の調整を行う。(2)そして、釣糸の巻取りを完了する。(3)釣竿8とリール10を左手LHから右手RHに持ち替えて、右手RHで釣竿8とリール10を持つ。(4)このように持った状態でキャスティングする。キャスティング等を行うことによってスプール20を回転させると、導電体56には内側リング磁石68及び外側リング磁石70による磁界の影響で渦電流が発生し、第1の操作部124及び第2の操作部184の調整状態に応じてスプール20の過回転を抑制する。
すなわち、この実施の形態に係る釣り具を用いると、釣竿8を操作しながら、又は、リール10のハンドル30を操作しながら親指LT又は人差し指LFでスプール20の制動調整を行うことができる。このとき、リール10の上側等から窓部212,214を見て目盛り142a,184fの位置を目視観察することもでき、また、手触りで目盛り142a,184fの位置を認識して制動装置54の調整状態を認識することもできる。したがって、右手RHで釣竿8とリール10を持った後に左手LHで第1及び第2の操作部124,184、操作突起160を調整する(スプール20の制動調整を行う)手間を省くことができる。このため、制動装置54の状態把握(操作部124,184の状態を視認)から制動装置54の操作部124,184の操作に至る一連の動作を正確かつスピーディに実践できるので、一連の動作のサイクルを短縮でき、一定時間内での投入回数を多くすることができるので、魚釣りのチャンスを逃し難い。そして、第1及び第2の操作部124,184、操作突起160を操作するのに釣竿8を持ち替えたりする手間がないので、魚釣りをしながら次の投入プランに合わせてスプール20の制動力を調整できる。
そして、この実施形態では、第1の操作機構110に加えて第2の操作機構112を設けているので、良好な握持保持性の維持を図りながら、釣り場の実情に適した幅広い制動力調整が可能となる。
【0054】
また、表面部OSには突起物がなく、かつ、第1及び第2の操作部124,184は左側板16bの表面部OS(仮想延長面Sを含む)よりも左側枠14bの平面部115側に配設され左側板16bの外側に対して非突出状態にあり、操作突起160が左手LHに接触することが防止されているので、第1及び第2の操作部124,184が掌に喰い込むことがなく、握持保持性が良く、左手LHの親指LTで第1の操作部124、操作突起160及び第2の操作部184を誤操作するのを防止できる。そして、リール10を握持保持する際に第1の操作部124、操作突起160及び第2の操作部184のいずれもが左手LHに勝手に接触することが防止されているので、キャスティング操作においても第1の操作部124、操作突起160及び第2の操作部184が邪魔になることなく支障なく安定して行える。また、実釣時や釣り場移動時に第1の操作部124、操作突起160及び第2の操作部184に外力が加わり難くなるので、第1の操作部124、操作突起160及び第2の操作部184に傷が付いたり、第1の操作部124、操作突起160及び第2の操作部184の回転操作性が低下したり、磁気制動装置54に支障をきたすことを防止できる。そして、必要な場合には親指LTを動かして第1及び第2の操作部124,184の一部に親指LTを掛けることによって、容易に第1及び第2の操作部124,184を操作できる。
以上説明したように、制動装置54の調整状態をリール本体12を握持保持した釣り人の視覚及び/又は触覚(視覚及び触覚の少なくとも一方)により認識させる認識手段(目盛り142a,184f、窓部212,214、突起216a,216b)を左側板16bに設けた。このため、釣竿8及びリール10の移動量や釣り人の顔の移動量を減少(ゼロを含む)させた状態で制動装置54の調整状態を確認できるので、特にルアー釣りの場合など、実際の釣りを邪魔せずに、必要な場合に制動装置54の調整を容易に行うことができる。
【0055】
また、第1及び第2の操作部124,184に凹凸を有する滑り止めを形成することによって、第1及び第2の操作部124,184の凹凸を親指LTに引っ掛けることができ、第1及び第2の操作部124,184を操作しようとする際の滑りを防止できる。このため、滑り止めがない場合よりも弱い力を付加した状態で第1及び第2の操作部124,184を操作できる。このため、釣り人の疲労を低減できる。
【0056】
この実施形態では、左側板16bの開口202を通して2つの操作部124,184を操作可能な例について説明したが、第2の操作部(一方の操作部)184だけ操作及び視認の両者を行うことが可能であるが、第1の操作部(他方の操作部)124はその調整状態を視認可能であるだけ(第1の操作部124の環状部142を直接は操作できない)でも良い。この場合、例えば第1の窓部212の前後方向や上下方向の開口量を、操作可能である場合よりも小さく形成できる。なお、第1の操作部124は上述したように操作突起160によって操作可能である。
また、この実施形態では枠体204が仕切り部(支柱)206を有するものとして説明したが、開口202の縁部に直接仕切り部206が形成されていることも好ましい。さらには、各窓部212,214それぞれが例えば環状の枠体で形成され(例えば2つの枠体が前後に並設され)、仕切り部206でそれらの枠体が嵌合等されていることも好ましい。
さらに、この実施形態では、開口202を左側板16bの表面部OSに形成した例について説明したが、左側板16bの表面部OS及び上側縁部ULの両者にまたがって開口202が形成されていることも好適である。これらの場合、開口202が左手の親指が当たる位置よりも前方側にあれば、握持しているリール10の手が視認の妨げになり難く、かつ、開口202がリール10の操作の妨げになり難い。また、開口202は同様の理由で
図1(B)及び
図2に示すようにリール10を配置したときに左側板16bの上下方向の半分より上側に形成されることが好ましい。そうすると、窓部212,214を通して第1及び第2の操作部124,184を目視観察する場合に釣り人自身の顔を動かしたり、釣竿8及びリール10を動かす量を減らすことができる。
【0057】
次に、
図12から
図14を用いて第2実施形態について説明する。この実施形態は第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材にはできるだけ同じ符号を付し、説明を省略する。これは後述する第3及び第4実施形態においても同様である。
図12はこの実施形態に係る魚釣用リール10の左側面図を示す。
図13(A)から
図14(B)に示すように、左側板16bの開口202からは、枠体204が除去されている。その代わりに、枠体204が左側板16bの開口202に一体成形されている。他の構造は第1実施形態と同じであるから説明を省略する。このため、この実施形態においても第1実施形態の左側板16bと同様に2つの窓部212,214が形成されている。
枠体204を開口202に一体的成形することによって、開口202の縁部の厚さを厚くしているので、開口202の縁部を効果的に補強できる。この場合、
図13(B)、
図14(A)及び
図14(B)に示すように、左側板16bと枠体204とを別に作成する必要がなく、同一部材で一体成形しているので、左側板16bの製造コストを低下させることができる。
【0058】
次に、
図15及び
図16を用いて第3実施形態について説明する。
図15はこの実施形態に係る魚釣用リール10の左側面図を示す。なお、
図15中のXIV(A)−XIV(A)線に沿う断面は第2実施形態の
図14(A)に示す断面と同じであり、XIV(B)−XIV(B)線に沿う断面は第2実施形態の
図14(B)に示す断面と同じである。
図16(A)及び
図16(B)に示すように、この実施形態に係る左側板16bの開口202からは、第2実施形態と同様に、枠体204が除去され枠体204が左側板16bと一体成形されている。そして、窓部212,214の間は、補強用の略L字状の仕切り部206ではなく、外面部117の表面部OS及び裏面部ISによる曲面206aとして形成されている。ここで、第1の窓部212は第1の開口であり、第2の窓部214は第2の開口であるので、第1及び第2実施形態で説明した開口202よりもそれぞれ小さく形成されている。このため、第1の窓部212及び第2の窓部214の間に第1及び第2実施形態で説明した補強用の略L字状の仕切り部206を配設しなくても、強度及び剛性が良好な状態を維持できる。
このように、第1の窓部212と第2の窓部214との間に複雑な形状がないので、第1及び第2実施形態に係る左側板16bに対してさらに低コストで左側板16bを製造できる。
【0059】
図16(A)に示すように、第1の窓部212の前後方向の長さL3と、第2の窓部214の前後方向の長さL4とを合わせた長さ(L3+L4)は左側板16bの全体の前後方向の長さL1の半分以上とし、第1及び第2の操作部124,184を確実に操作するための空間を確保することが好ましい。
なお、この実施形態に係る各窓部212,214に、第1実施形態で説明した枠体204が配設されることはもちろん好適である。
【0060】
次に、
図17から
図19を用いて第4実施形態について説明する。
図17はこの実施形態に係る魚釣用リール10の左側面図を示す。
図18(A)から
図19(B)に示すように、この実施形態に係る左側板16bの開口202からは、第2及び第3実施形態と同様に枠体204が除去され、1つの窓部213として形成されている。
そして、開口202の上側縁部及び下側縁部は共に左側枠14bの平面部115に向かって折り返されている。すなわち、開口202の縁部は他の部分よりも肉厚にして補強されている。
この実施形態に係る窓部213の縁部に、第1実施形態で説明した枠体204が配設されることはもちろん好適である。この場合、枠体204に仕切り部206は不要である。
【0061】
第1実施形態から第3実施形態では2つの窓部212,214を有する例を、第4実施形態では1つの窓部213を有する例について説明した。すなわち、窓部の数は1つでも複数でも良い。
また、上述した第1から第4実施形態では2つの操作部124,184を窓部212,214(213)を通して操作可能、かつ、視認可能として説明したが、例えば第2の操作部184だけ操作可能とし、第1の操作部124を操作突起160だけで操作可能し、窓部212からは操作部124の調整位置(例えば調整した数値)のみ視認可能とすることも好ましい。
また、上述した第1から第4実施形態では2つの操作部124,184を窓部212,214(213)を通して操作可能、かつ、視認可能として説明したが、第2の操作部184を例えば操作突起160と同様の構造だけで操作可能とし、第1の操作部124を操作突起160だけで操作可能し、窓部212,214を通して第1及び第2の操作部124,184の調整状態だけを視認可能としても良い。この場合、第1の操作部124の操作突起160の前方に第2の操作部184の操作突起が左側板16bの下側縁部LLにおいて並設されていることとなるので、いずれの操作突起を操作しようとしているか、釣り人は容易に認識できる。
また、開口202を
図5(A)、
図13(A)、
図16(A)、
図18(A)に示す稜線部分Eよりも下側に配置しても良い。この場合、開口202は左側板16bの外面部117の表面部OSに対する法線が水平状態よりも下向きとなるので、操作部124,184を視認し難い状態となる。一方、操作部124,184を親指LT以外の指(例えば人差し指)で触覚により認識させることができるとともに、その操作部124,184を操作可能とすることができる。
また、上述した第1から第4実施形態では、それぞれ第1及び第2の操作部124,184を回転部材として形成する例について説明したが、第1及び第2の操作部が例えば矩形状の窓部に沿って移動可能なレバー状やスライドスイッチ状に形成されている等、第1及び第2の操作部の形状、操作方法は種々のものを用いることができる。
上述した第1から第4実施形態では、左側枠14bに対して左側板16bを3つのネジ119で固定する例について説明したが、例えば嵌合を用いても良いし、嵌合とネジ固定とを組み合わせても良いし、適宜の構造で固定可能である。
なお、上述した実施形態では磁気ブレーキ装置を用いて説明したが、遠心摩擦ブレーキ装置や他のブレーキ装置を左側枠14bと左側板16bとの間に配置したときにもブレーキの状態を認識できるようにすることも同様に可能である。
これまで、いくつかの実施形態について図面を参照しながら具体的に説明したが、この発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で行なわれるすべての実施を含む。