特許第5732267号(P5732267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソフトバンクモバイル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000002
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000003
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000004
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000005
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000006
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000007
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000008
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000009
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000010
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000011
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000012
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000013
  • 特許5732267-通信システム、基地局及び通信制御方法 図000014
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5732267
(24)【登録日】2015年4月17日
(45)【発行日】2015年6月10日
(54)【発明の名称】通信システム、基地局及び通信制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/16 20090101AFI20150521BHJP
   H04W 28/04 20090101ALI20150521BHJP
   H04W 92/20 20090101ALI20150521BHJP
【FI】
   H04W28/16
   H04W28/04 110
   H04W92/20
【請求項の数】8
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2011-18335(P2011-18335)
(22)【出願日】2011年1月31日
(65)【公開番号】特開2012-160854(P2012-160854A)
(43)【公開日】2012年8月23日
【審査請求日】2014年1月30日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、総務省、「異なる大きさのセルが混在する環境下における複数基地局間協調制御技術の研究開発」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンクモバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】岡廻 隆生
(72)【発明者】
【氏名】藤井 輝也
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
【審査官】 倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−164864(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/048442(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムであって、
前記複数の基地局のいずれか一つの基地局が、各基地局からのデータの協調送信を制御する機能を有する協調元の基地局であり、前記複数の基地局の他の基地局が、前記協調元の基地局によってデータの協調送信が制御される協調先の基地局であり、
前記協調元の基地局は、
複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、
前記協調先の基地局と通信する基地局間通信部と、
前記複数の通信処理層におけるメディアアクセス制御層に協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、
前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その読み出した再送データと、該再送データに対する送信タイミング及び周波数を含む協調用リソース、変調方式並びにコーディング方式の情報を含む再送用の協調制御情報とを、前記協調先の基地局に送信し、前記再送用の協調制御情報に基づいて、前記記憶部から読み出した再送データを前記協調元の基地局の前記複数の通信処理層における物理層から前記通信端末に送信するように制御するとともに、前記再送用の協調制御情報に基づいて、前記協調先の基地局に送信した再送データを前記協調先の基地局から前記通信端末に送信するように前記協調先の基地局を遠隔的に制御する制御部と、を備え、
前記協調先の基地局は、
複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、
前記協調元の基地局と通信する基地局間通信部と、
前記協調元の基地局が前記協調先の基地局を遠隔的に制御するための協調用リソース制御部と、を備え、
前記協調用リソース制御部は、前記協調元の基地局から前記再送データと前記再送用の協調制御情報とを受信し、前記再送用の協調制御情報に含まれる変調方式及びコーディング方式で前記再送データの変調及びコーディングを行い、前記再送用の協調制御情報に含まれる協調用リソースの送信タイミング及び周波数を用いて前記協調先の基地局の記複数の通信処理層における物理層から前記通信端末に前記再送データを送信するように制御することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムであって、
前記複数の基地局のいずれか一つの基地局が、各基地局からのデータの協調送信を制御する機能を有する協調元の基地局であり、前記複数の基地局の他の基地局が、前記協調元の基地局によってデータの協調送信が制御される協調先の基地局であり、
前記協調元の基地局は、
複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、
前記協調先の基地局と通信する基地局間通信部と、
前記複数の通信処理層におけるメディアアクセス制御層に協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、
前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、前記協調送信対象の再送データに対する送信タイミング及び周波数を含む協調用リソース、変調方式並びにコーディング方式の情報を含む再送用の協調制御情報を前記協調先の基地局に送信し、前記再送用の協調制御情報に基づいて、前記記憶部から読み出した再送データを前記協調元の基地局の前記複数の通信処理層における物理層から前記通信端末に送信するように制御するとともに、前記再送用の協調制御情報に基づいて、前記協調先の基地局から読み出した再送データを前記協調先の基地局から前記通信端末に送信するように前記協調先の基地局を遠隔的に制御する制御部と、を備え、
前記協調先の基地局は、
複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、
前記協調元の基地局と通信する基地局間通信部と、
前記複数の通信処理層におけるメディアアクセス制御層に協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、
前記協調元の基地局が前記協調先の基地局を遠隔的に制御するための協調用リソース制御部と、を備え、
前記協調用リソース制御部は、前記協調元の基地局から前記再送用の協調制御情報を受信し、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、前記再送用の協調制御情報に含まれる変調方式及びコーディング方式で前記再送データの変調及びコーディングを行い、前記再送用の協調制御情報に含まれる協調用リソースの送信タイミング及び周波数を用いて前記協調先の基地局の前記複数の通信処理層における物理層から前記通信端末に前記再送データを送信するように制御することを特徴とする通信システム
【請求項3】
求項1又は2の通信システムにおいて、
記再送用の協調制御情報に含まれる協調用リソースの周波数は、前記再送データの協調送信用に新たに決められた周波数であることを特徴とする通信システム。
【請求項4】
無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムにおいて前記複数の基地局からのデータの協調送信を制御する機能を有する協調元の基地局であって、
複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、
協調先の基地局と通信する基地局間通信部と、
前記複数の通信処理層におけるメディアアクセス制御層に協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、
前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記メディアアクセス制御層の記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その読み出した再送データと、該再送データに対する送信タイミング及び周波数を含む協調用リソース、変調方式並びにコーディング方式の情報を含む再送用の協調制御情報とを、前記協調先の基地局に送信し、前記再送用の協調制御情報に基づいて、前記記憶部から読み出した再送データを前記複数の通信処理層における物理層から前記通信端末に送信するように制御するとともに、前記再送用の協調制御情報に基づいて、前記協調先の基地局に送信した再送データを前記協調先の基地局から前記通信端末に送信するように前記協調先の基地局を遠隔的に制御する制御部と、を備えることを特徴とする基地局。
【請求項5】
無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムにおいて前記複数の基地局からのデータの協調送信を制御する機能を有する協調元の基地局であって、
複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、
協調先の基地局と通信する基地局間通信部と、
前記複数の通信処理層におけるメディアアクセス制御層に協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、
前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記メディアアクセス制御層の記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、前記協調送信対象の再送データに対する送信タイミング及び周波数を含む協調用リソース、変調方式並びにコーディング方式の情報を含む再送用の協調制御情報を前記協調先の基地局に送信し、前記再送用の協調制御情報に基づいて、前記記憶部から読み出した再送データを前記複数の通信処理層における物理層から前記通信端末に送信するように制御するとともに、前記再送用の協調制御情報に基づいて、前記協調先の基地局から読み出した再送データを前記協調先の基地局から前記通信端末に送信するように前記協調先の基地局を遠隔的に制御する制御部と、を備えることを特徴とする基地局。
【請求項6】
無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムにおいて協調元の基地局によってデータの協調送信が制御される協調先の基地局であって、
複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、
前記協調元の基地局と通信する基地局間通信部と、
前記協調元の基地局が前記協調先の基地局を遠隔的に制御するための協調用リソース制御部と、を備え、
前記協調用リソース制御部は、前記協調元の基地局から再送データと前記再送用の協調制御情報とを受信し、前記再送用の協調制御情報に含まれる変調方式及びコーディング方式で前記再送データの変調及びコーディングを行い、前記再送用の協調制御情報に含まれる協調用リソースの送信タイミング及び周波数を用いて前記複数の通信処理層における物理層から前記通信端末に前記再送データを送信するように制御することを特徴とする基地局。
【請求項7】
無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムにおいて協調元の基地局によってデータの協調送信が制御される協調先の基地局であって、
複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、
前記協調元の基地局と通信する基地局間通信部と、
前記複数の通信処理層におけるメディアアクセス制御層に協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、
前記協調元の基地局が前記協調先の基地局を遠隔的に制御するための協調用リソース制御部と、を備え、
前記協調用リソース制御部は、前記協調元の基地局から、再送用の協調制御情報を受信し、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、前記再送用の協調制御情報に含まれる変調方式及びコーディング方式で前記再送データの変調及びコーディングを行い、前記再送用の協調制御情報に含まれる協調用リソースの送信タイミング及び周波数を用いて前記複数の通信処理層における物理層から前記通信端末に前記再送データを送信するように制御することを特徴とする基地局。
【請求項8】
請求項4乃至7のいずれかの基地局において、
前記再送用の協調制御情報に含まれる協調用リソースの周波数は、前記再送データの協調送信用に新たに決められた周波数であることを特徴とする基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信により複数の基地局から通信端末にデータを協調送信することができる通信システム、並びに、その通信システムに用いることができる基地局及び通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の基地局の無線通信エリア(セル)が重複している境界エリアにおけるスループットの向上、通信品質の向上、通信帯域の有効利用等の実現するために、それら複数の基地局から当該通信端末に、同一内容のデータ又は互いに異なる内容データを協調して送信する通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この複数の基地局からの協調送信は、同一の周波数を用いて行う場合もあるし、互いに異なる周波数を用いて行う場合もある。また、複数の基地局から協調送信するタイミングについても、同一の送信時刻でタイミングを合わせて同期送信する場合もあるし、互いに異なる送信時刻でタイミングをずらして送信する場合もある。このような協調送信を行う通信システムでは、上記周波数及び送信タイミングのいずれの組み合わせにおいても、所定の周波数及び送信タイミングで上記協調送信を確実に実行できるように、地理的に離れた2地点それぞれに位置する複数の基地局間で協調用リソース(周波数及び送信タイミング)を管理する必要がある。
【0003】
また、上記協調送信を行う通信システムとして、複数の基地局の1つを協調元のアンカー基地局として機能させ、その協調元の基地局がコアノード装置からデータを受信し、そのデータを他の協調先の基地局に分配することにより、各基地局から通信端末にデータを協調送信できるアンカー方式のものが知られている(非特許文献1参照)。このアンカー方式は、コアノード装置から複数の基地局それぞれに協調送信対象のデータを分配して各基地局から協調送信する方式に比べて、協調送信の制御に用いる制御信号を削減でき応答制御が早くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の通信システムのように複数の基地局が協調して通信端末にデータを協調送信しようとする場合、何らの原因により、データの協調送信に失敗する場合がある。例えば、複数の基地局の双方から協調送信されたデータそれぞれを通信端末が受信できないと、結果的に、当該データの協調送信が失敗したことになる。また、送信タイミングを示す情報が付加されたデータを協調先の基地局が受信したときに当該送信タイミングの時刻が既に経過していると協調送信の送信タイミングに間に合わず、その協調先の基地局から通信端末へデータを協調送信することができない。また、協調先の基地局が協調送信対象のデータの受信を失敗した場合も、その基地局から通信端末へデータを協調送信することができない。このようにデータの協調送信が失敗したときに、当該データを通信端末に再度協調送信する再送処理を行うことが考えられる。
【0005】
従来の移動体通信システム(例えば、LTE:Long Term Evolutionの移動体通信システム)における単独の基地局からの再送処理としては次のような処理が知られている。例えば、無線リンク制御層(RLC層)及びメディアアクセス制御層(MAC層)を含む通信レイヤ構造を有する基地局において、無線リンク制御層が通信端末から受信したARQ(Automatic Repeat-Request)に基づいて行う再送処理や、メディアアクセス制御層が通信端末から受信したHARQ(Hybrid Automatic Repeat Request)に基づいて行う再送処理が知られている。LTEにおけるARQやHARQにおいては、データを一回目に送信する際に、送信元となる基地局に再送キューを設け、再送キューにデータを保存した後に通信端末へ送信する。そして、通信端末において正常に受信できたかどうかを確認し、正常受信の場合はACKを、受信エラーが発生した場合はNACKを基地局へ返送する。基地局でACKを受信した場合は再送の必要がないため再送キューに保存されたデータを消去する。一方、NACKを受信した場合は、再送キューから当該データを取り出して再送することにより、受信エラーを補償することができる。
【0006】
しかしながら、上記従来のARQやHARQ等の再送処理は、基地局と通信端末との間の単一の無線区間を想定している。そのため、上記従来のARQやHARQ等の再送処理を前述の協調送信の場合にそのまま適用すると、協調元の基地局及び協調先の基地局がそれぞれ独立して再送処理を実行するため、各基地局が連携したデータの協調送信の再送処理とはならないおそれがある。例えば、各基地局から協調送信されたデータのうち協調元の基地局から協調送信されたデータについてのみ通信端末での受信に失敗した場合(通信端末からのACKのタイムアウト、又は、通信端末からのNACKの受信の場合)、協調元の基地局からのみデータが再送される。従って、協調元の基地局と協調先の基地局とが協調したデータの再送処理にならず、協調送信に失敗したデータの損失を確実に補償することができない。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、複数の基地局からのデータの協調送信に失敗した場合に、そのデータの協調送信の再送処理を確実に行うことができる通信システム、基地局及び通信制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信システムは、無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムであって、前記複数の基地局のいずれか一つの基地局が、各基地局からのデータの協調送信を制御する機能を有する協調元の基地局であり、前記複数の基地局の他の基地局が、前記協調元の基地局によってデータの協調送信が制御される協調先の基地局であり、前記協調元の基地局は、複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、前記協調先の基地局と通信する基地局間通信部と、前記複数の通信処理層の少なくとも一つに協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その読み出した再送データと、少なくとも送信時刻の情報を含む再送用の協調制御情報とを、前記協調先の基地局に送信し、前記記憶部から読み出した再送データを前記通信端末に送信するように制御する制御部と、を備え、前記協調先の基地局は、通信端末と無線通信する無線通信部と、前記協調元の基地局と通信する基地局間通信部と、前記協調元の基地局から前記再送データと前記再送用の協調制御情報とを受信し、前記協調元の基地局から受信した再送用の協調制御情報に基づいて、前記協調元の基地局から受信した再送データを前記通信端末に送信するように制御する制御部と、を備えることを特徴とするものである。
本発明に係る他の通信システムは、無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムであって、前記複数の基地局のいずれか一つの基地局が、各基地局からのデータの協調送信を制御する機能を有する協調元の基地局であり、前記複数の基地局の他の基地局が、前記協調元の基地局によってデータの協調送信が制御される協調先の基地局であり、前記協調元の基地局は、複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、前記協調先の基地局と通信する基地局間通信部と、前記複数の通信処理層の少なくとも一つに協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、再送用の協調制御情報を前記協調先の基地局に送信し、前記記憶部から読み出した再送データを前記通信端末に送信するように制御する制御部と、を備え、前記協調先の基地局は、複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、前記協調元の基地局と通信する基地局間通信部と、前記複数の通信処理層の少なくとも一つに協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、前記協調元の基地局から前記再送用の協調制御情報を受信し、前記協調元の基地局から受信した再送用の協調制御情報に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その読み出した再送データを前記通信端末に送信するように制御する制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係る基地局は、無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムにおいて前記複数の基地局からのデータの協調送信を制御する機能を有する協調元の基地局であって、複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、協調先の基地局と通信する基地局間通信部と、前記複数の通信処理層の少なくとも一つに協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その読み出した再送データと、少なくとも送信時刻の情報を含む再送用の協調制御情報とを、前記協調先の基地局に送信し、前記記憶部から読み出した再送データを前記通信端末に送信するように制御する制御部と、を備えることを特徴とするものである。
本発明に係る他の基地局は、無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムにおいて前記複数の基地局からのデータの協調送信を制御する機能を有する協調元の基地局であって、複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、協調先の基地局と通信する基地局間通信部と、前記複数の通信処理層の少なくとも一つに協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、再送用の協調制御情報を前記協調先の基地局に送信し、前記記憶部から読み出した再送データを前記通信端末に送信するように制御する制御部と、を備えることを特徴とするものである。
本発明に係る更に他の基地局は、無線通信により複数の基地局から通信端末へデータを協調送信可能な通信システムにおいて協調元の基地局によってデータの協調送信が制御される協調先の基地局であって、複数の通信処理層を介して通信端末と無線通信する無線通信部と、前記協調元の基地局と通信する基地局間通信部と、前記複数の通信処理層の少なくとも一つに協調送信対象のデータを記憶する記憶部と、前記協調元の基地局から、少なくとも送信時刻の情報を含む再送用の協調制御情報を受信し、前記協調元の基地局から受信した再送用の協調制御情報に基づいて、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その読み出した再送データを前記通信端末に送信するように制御する制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0010】
本発明に係る通信制御方法は、複数の基地局のいずれか一つの協調元の基地局が、各基地局からのデータの協調送信を制御し、その他の協調先の基地局が、前記協調元の基地局によってデータの協調送信が制御されることにより、無線通信により前記複数の基地局から通信端末へデータを協調送信するときの通信制御方法であって、前記協調元の基地局が、複数の通信処理層を介して前記通信端末へ協調送信対象のデータを送信するときに、前記複数の通信処理層の少なくとも一つに前記協調送信対象のデータを記憶するステップと、前記協調元の基地局が、前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記記憶されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その読み出した再送データと、少なくとも送信時刻の情報を含む再送用の協調制御情報とを、前記協調先の基地局に送信し、前記記憶部から読み出した再送データを前記通信端末に送信するステップと、前記協調先の基地局が、前記協調元の基地局から前記再送データと前記再送用の協調制御情報と受信するステップと、前記協調先の基地局が、前記協調元の基地局から受信した再送用の協調制御情報に基づいて、前記協調元の基地局から受信した再送データを前記通信端末に送信するステップと、を含むことを特徴とするものである。
本発明に係る他の通信制御方法は、複数の基地局のいずれか一つの協調元の基地局が、各基地局からのデータの協調送信を制御し、前記複数の基地局の他の協調先の基地局が、前記協調元の基地局によってデータの協調送信が制御されることにより、無線通信により前記複数の基地局から通信端末へデータを協調送信するときの通信制御方法であって、前記協調元の基地局が、複数の通信処理層を介して通信端末へ協調送信対象のデータを送信するときに、前記複数の通信処理層の少なくとも一つに前記協調送信対象のデータを記憶するステップと、前記協調元の基地局が、前記協調送信対象のデータの協調送信に失敗したとき、前記記憶部に記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、再送用の協調制御情報を前記協調先の基地局に送信し、前記記憶部から読み出した再送データを前記通信端末に送信するステップと、前記協調先の基地局が、複数の通信処理層を介して前記通信端末へ前記協調送信対象のデータを送信するときに、前記複数の通信処理層の少なくとも一つに前記協調送信対象のデータを記憶するステップと、前記協調先の基地局が、前記協調元の基地局から前記再送用の協調制御情報を受信するステップと、前記協調先の基地局が、前記協調元の基地局から受信した前記再送用の協調制御情報に基づいて、前記記憶されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その読み出した再送データを前記通信端末に送信するステップと、を含むことを特徴とするものである。
【0011】
本発明において、前記複数の通信処理層は、無線リンク制御層とメディアアクセス制御層とを含み、前記無線リンク制御層と前記メディアアクセス制御層の少なくとも一方に前記協調送信対象のデータを記憶してもよい。
また、本発明において、前記協調元の基地局から前記協調先の基地局に送信される前記再送用の協調制御情報は、前記再送データの協調送信用に新たに決められた周波数リソースの情報を含んでもよい。
【0012】
なお、本発明において、前記複数の基地局からの協調送信(再送の場合も含む)は、同一の周波数を用いて行ってもよいし、互いに異なる周波数を用いて行ってもよい。
また、本発明において、前記複数の基地局からの協調送信(再送の場合も含む)は、同一の送信時刻でタイミングを合わせて行ってもよいし、互いに異なる送信タイミングでタイミングをずらして行ってもよい。
また、本発明において、前記複数の基地局からの協調送信されるデータは、同一の内容のデータであってもよいし、互いに異なる内容のデータであってもよい。
また、本発明において、前記協調用リソースは、複数レベルに送信電力を設定可能な場合は協調送信に用いる送信電力を含んでもよく、また、複数種類のアンテナを使用可能な場合は協調送信に用いるアンテナを含んでもよい。
また、本発明において、前記協調先の基地局は、1つの基地局であってもよいし、2つ以上の基地局であってもよい。すなわち、互いに協調してデータを協調送信する複数の基地局は、一の協調元の基地局と一の協調先の基地局との組み合わせであってもよいし、一の協調元の基地局と二以上の協調先の基地局との組み合わせであってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、協調元の基地局は、何らかの原因によりデータの協調送信に失敗したとき、その協調元の基地局における複数の通信処理層の少なくとも一つに記憶されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その再送データと、少なくとも送信時刻の情報を含む再送用の協調制御情報とを協調先の基地局に送信する。そして、協調元の基地局は、所定の送信時刻に、前記読み出した再送データを通信端末に送信する。一方。協調先の基地局は、協調元の基地局から前記協調制御情報を受信し、その協調制御情報に基づいて、所定の送信時刻に、前記受信した再送データを前記通信端末に送信する。このように協調送信対象のデータの協調送信に失敗した場合でも、協調元の基地局及び協調先の基地局が連携し、その失敗した協調送信対象のデータを通信端末に確実に協調送信することができる。
また、本発明の他の態様によれば、協調元の基地局は、何らかの原因によりデータの協調送信に失敗したとき、その協調元の基地局における複数の通信処理層の少なくとも一つに記憶されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、少なくとも送信時刻の情報を含む再送用の協調制御情報を協調先の基地局に送信する。そして、協調元の基地局は、所定の送信時刻に、前記読み出した再送データを通信端末に送信する。一方。協調先の基地局は、協調元の基地局から前記協調制御情報を受信し、その協調制御情報に基づいて、その協調先の基地局における複数の通信処理層の少なくとも一つに記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出す。そして、協調先の基地局は、所定の送信時刻に、前記読み出した再送データを前記通信端末に送信する。このように協調送信対象のデータの協調送信に失敗した場合でも、協調元の基地局及び協調先の基地局が連携し、その失敗した協調送信対象のデータを通信端末に確実に協調送信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す説明図。
図2】(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、同通信システムにおける協調送信開始前、協調送信中及び協調送信終了後における通信の一例を示す説明図。
図3】同通信システムにおける協調通信中の基地局の通信レイヤ構造に着目した機能ブロック図。
図4】再送処理可能な基地局の通信レイヤ構造に着目した構成例の機能ブロック図。
図5】同再送処理の制御例のシーケンス図。
図6】再送処理可能な基地局の通信レイヤ構造に着目した他の構成例の機能ブロック図。
図7】同基地局による再送処理の制御例のシーケンス図。
図8】再送処理可能な基地局の通信レイヤ構造に着目した更に他の構成例の機能ブロック図。
図9】同基地局による再送処理の制御例のシーケンス図。
図10】再送処理可能な基地局の通信レイヤ構造に着目した更に他の構成例の機能ブロック図。
図11】同基地局による再送処理の制御例のシーケンス図。
図12】再送処理可能な基地局の通信レイヤ構造に着目した更に他の構成例の機能ブロック図。
図13】同基地局による再送処理の制御例のシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す説明図である。本実施形態に係る通信システム10は、複数の無線基地局装置として、第1の基地局110及び第2の基地局120を備えている。これらの基地局110、120は、有線又は無線の通信回線を介して相互に通信することができ、互いに協調することにより、各基地局110、120の無線通信エリアが重複した境界エリアに存在する通信端末(以下「端末」という。)200に協調送信対象のデータを協調送信することができる。この協調送信により、端末200による通信時におけるスループットの向上、通信品質の向上および通信帯域の有効利用を実現できる。
【0016】
なお、本実施形態では、互いに協調してデータを送信可能な複数の基地局が2つである場合について説明するが、当該複数の基地局は3つ以上であってもよい。また、本実施形態では、複数の基地局から協調送信された複数のデータを1台の端末で受信する場合について説明するが、当該協調送信された複数のデータを受信する端末は複数台であってもよい。また、本実施形態では、複数の基地局から同一の周波数でタイミングを合わせて所定の送信時刻にデータを協調送信する場合について説明するが、各基地局から協調して送信される電波の周波数は互い異なるものであってもよいし、各基地局から協調送信する送信時刻は互いに異なってもよい。
【0017】
図1において、上記複数の基地局110、120のうち、一方の第1の基地局110が、各基地局からのデータの協調送信を制御する機能を有する協調元の基地局である。また、他方の第2の基地局120が、協調元の基地局110によってデータの協調送信が制御される協調先の基地局である。これらの基地局110、120は、3GPP(Third Generation Partnership Project)の仕様においては「NodeB」と呼ばれたり、更に、LTE(Long Term Evolution)の仕様では発展型のNodeBとして「eNodeB(evolved Node B)」と呼ばれたりする場合がある。また、協調元の基地局はアンカー基地局やマスター基地局と呼ばれ、協調先の基地局はスレーブ基地局と呼ばれる場合もある。
【0018】
通信システム10は、複数の基地局110、120に協調送信対象のデータを配信するコアノード装置(以下「コアノード」という。)130を含んでもよい。コアノード130は、データ通信網141を介して外部のネットワークと通信することができる。コアノード130と複数の基地局110、120とは、パケット網などのデータ通信網140を介して接続されている。通信システム10は、データ通信網140を含んでもよい。また、通信システム10は、複数の基地局110、120から協調送信される複数のデータを受信可能な端末200を含んでもよい。また、端末200は、通信サービスの利用者によって使用されるためユーザ装置(UE:User Equipment)と呼ばれる場合があり、移動可能なものであるため移動局と呼ばれる場合もあり、また、無線機と呼ばれる場合もある。
【0019】
端末200は、携帯電話機等の移動通信端末であってもよく、基地局110、120及びデータ通信網140等で構築されるネットワークは、移動通信ネットワークのセルラーネットワークであってもよい。データ通信網141は、移動通信ネットワークのコアネットワークであってもよい。基地局110、120の無線通信エリアはそれぞれ、互いに大きさが異なるマクロセル、マイクロセル、フェムトセル、ピコセル等の各種セルのいずれかであってもよい。
【0020】
端末200と無線通信可能な複数の基地局110、120のうちいずれか一つは、複数の基地局110、120からデータを協調して送信する協調通信動作を制御する機能を備える協調元の基地局である。協調元の基地局以外の他の基地局は、協調元の基地局によって協調動作させるように制御される被協調基地局としての協調先の基地局である。協調元の基地局110は、例えば、端末200と通信可能な複数の基地局のうち端末200との無線通信において受信電界強度が最も大きく無線通信品質が最も高いものが選択される。協調元の基地局110の選択は、端末200等から受信して取得した受信電界強度等の無線通信品質の情報に基づいて、端末200と通信可能な基地局が自律的にかつ動的に切り換わるようにしてもよい。
【0021】
図2(a)、(b)及び(c)はそれぞれ、本実施形態に係る通信システム10における協調送信開始前、協調送信中及び協調送信終了後における通信の一例を示す説明図である。
図2(a)に示す協調送信開始前においては、第1の基地局110の無線管理エリアであるセル110a内に端末200が在圏している。第1の基地局110は、コアノード130から送信対象のデータを受信すると、そのデータについて生成された無線電波の送信信号を、第1のセル内の端末200に送信する。端末200は、第1の基地局110からデータの受信の際に、第1の基地局110及びその近隣の第2の基地局120の電波の受信強度を計測し、フィールド情報として第1の基地局110に報告する。ここで、例えば上記受信強度の差が協調送信開始の閾値内であれば、第1の基地局110は、各基地局110、120の双方のセル110a、120aが重複している境界エリアA内に端末200が存在していると判断し、協調開始指示を出す。これにより、第1の基地局110及び第2の基地局120から端末200への協調送信が可能な状態になる。ここで、第1の基地局110が協調元の基地局として機能し、第2の基地局120が協調先の基地局として機能する。
【0022】
図2(b)に示す協調送信中において、協調元の基地局110は、コアノード130から受信したデータを協調送信のため、協調先の基地局120に分配する。この協調先の基地局120に分配されるデータは、必要に応じてカプセル化などの変換処理が行われて協調先の基地局120に転送される。例えば、協調元の基地局110から協調先の基地局120へのデータの分配を行うとき、GTPv2(GPRS Tunneling Protocol Version2)などのトンネリングプロトコルを使用することができる。また、協調先の基地局120へデータを転送する際には協調制御情報をデータに付加する。協調制御情報は、例えば、協調通信に用いるパラメータ情報である送信信号の変調方式やコーディング方式等のMCS(Modulation and Coding Scheme)情報、電波の受信品質情報(例えば、CQI:Channel Quality Indication)、送信周波数、送信タイミングなどの情報を含んでいる。そして、各基地局110、120においては、上記協調制御情報に基づき、端末200にデータの協調送信が行われる。
【0023】
図2(c)に示す協調送信終了時において、協調元の基地局110は、例えば上記各基地局110、120の電波の受信強度差が協調終了の閾値以上になると、端末200が境界エリアAから出て協調先の基地局120のセル120aのみのエリアに在圏するようになったと判断し、協調先の基地局120及び端末200に協調終了指示を出す。これにより、各基地局110、120による協調通信が終了し、第1の基地局110は協調元としての役目を終え、第2の基地局120は協調先としての役目を終える。その後、第1の基地局110は、端末200へのデータの分配を停止する。第2の基地局120は、コアノード130に対してパス切替指令を出し、コアノード130から第2の基地局120へデータ送信の経路を変更させる。
【0024】
図3は、図2(b)に示す協調通信中における、協調元の基地局110及び協調先の基地局120の通信レイヤ構造に着目した機能ブロック図である。各基地局110、120は、図示しないインターネットプロトコル層(IP層)のほか、データ収斂プロトコル層(PDCP層)111、121、無線リンク制御層(RLC層)112、122、メディアアクセス制御層(MAC層)113、123、及び物理層(PHY層)114、124からなる、多層の通信レイヤ構造を有している。PDCP層111、121では、データの圧縮及び暗号化並び伸張及び復号化等の処理を行う。RLC層112、122では、データの分割、結合、順序制御及び再送(ARQ:Automatic Repeat-Request)等の処理を行う。MAC層113、123では、データの送信のスケジューリング、多重化、再送(HARQ:Hybrid Automatic Repeat Request)等の処理を行う。従って、RLC層112およびMAC層113はそれぞれARQ再送キュー112a,122a,HARQ再送キュー113a、123aを備えている。なお、RLC層112、122における再送(ARQ)処理は、数100msの間隔(例えば、100ms〜150ms間隔)で自動実行され、MAC層113、123における再送(HARQ)処理は、比較的短い数msの間隔(例えば、8ms間隔)で自動実行される。PHY層114、124では、端末200との間で送受信される高周波の送受信信号の変調、復調、符号化等の処理を行う。このPHY層114、124は、端末200と無線通信する無線通信部として機能する。
【0025】
また、複数の基地局110、120はそれぞれ、基地局間通信部115、125とスケジューラ116、126とを備えている。基地局間通信部115、125は、有線又は無線の通信回線を介して、自己以外の他の基地局と通信するものである。また、スケジューラ116、126はそれぞれ、各基地局110、120における処理・動作を制御する制御部117、127の一部を構成し、前述のRLC層112、122、MAC層113、123及びPHY層114、124を制御して、どのリソース(時間および周波数)を使用してデータを送信するかを決定する。
【0026】
また、協調先の基地局120は、協調元の基地局110から送信される協調制御信号に基づいて協調送信対象のデータの協調用リソース(送信周波数、送信タイミング)やMCSを遠隔的に制御するための協調用リソース制御部128を備えている。
【0027】
図3において、協調用リソース制御部128は、協調元の基地局110のMAC層113から通信回線を介して、協調送信対象のデータを受信し、協調先の基地局120内のPHY層124に転送する。また、協調用リソース制御部128は、協調元の基地局110のスケジューラ116から通信回線を介して、協調制御情報(送信周波数の情報、送信タイミングの情報、MCS情報、受信品質情報等)を受信する。協調用リソース制御部128は、協調元の基地局110から受信した協調制御情報に基づいて、協調先の基地局120内のPHY層124における協調送信対象のデータの送信を制御する。
【0028】
なお、協調用リソース制御部128を独立に設けずに、協調用リソース制御部128の機能を、協調先の基地局120内の制御部127に組み込むように構成してもよい。
【0029】
また、図3では、協調通信動作の説明の都合上、協調先の基地局120についてのみ協調用リソース制御部128を設けているが、図3における協調元の基地局110が協調先の基地局となる場合もある。そのため、図3における協調元の基地局110についても上記協調用リソース制御部を備えるように構成してもよい。
【0030】
上記構成の通信システムに用いる基地局110、120のハードウェアは、例えば、アンテナのほか、送信増幅器、受信増幅器、無線信号処理部、ベースバンド信号処理部、有線伝送路インターフェース部、コンピュータ装置などで構成される。また、これらのハードウェア構成のうち、アンテナ、送信増幅器及び受信増幅器は前述の無線通信部に対応し、有線伝送路インターフェース部は前述の基地局間通信部に対応する。コンピュータ装置は、例えばマイクロコンピュータで構成され、前述の制御部117、127や協調用リソース制御部128として機能し、予め組み込まれた所定の制御プログラムに基づいて各部を制御する。特に、コンピュータ装置は、所定の制御プログラムに基づいて無線信号処理部やベースバンド信号処理部を制御することにより、例えば前述のPDCP層、RLC層、MAC層及びPHY層などの複数の通信レイヤ構造を介して、送受信のデータや信号を処理する。
【0031】
上記構成の通信システムによれば、複数の基地局110、120が互いに協調し、データ通信網140のような非同期網を介して受信したデータを、所定の周波数及び送信時刻(例えば、同一の周波数及び同一の送信時刻)の無線通信リソースで端末200に協調送信できる。
【0032】
以下に、図3に示す構成の通信システムにおいて複数の基地局110、120から端末200へデータを協調送信する協調通信に失敗した場合のデータ再送処理について、いくつかの例を示して説明する。
【0033】
図4は、図3に示す構成を用いて、協調通信の際に実施することのできる再送処理の一番目の例を示した図である。図4に示す方式では、協調元基地局110のMAC層113に設けられたHARQ再送キュー113aにおいて、協調用データの再送処理が行われる。
【0034】
図5は、図4の協調元の基地局110及び協調先の基地局120によるデータ再送処理の一制御例を示すシーケンス図である。図5において、協調元の基地局110は、コアノード130から協調送信対象のデータを受信する(ステップ1)と、その協調送信対象のデータをHARQ再送キュー113aに保存する(ステップ2)とともに、協調送信対象のデータを協調先の基地局120に送信する(ステップ3)。その後、予め設定された所定の協調用リソース(周波数及び送信時刻)で、各基地局110、120から端末200に協調送信対象のデータが送信される(ステップ4、4’)。ここで、何らかの原因により端末200が各基地局110、120から協調送信されたデータの受信に失敗すると、その失敗した旨を示す受信失敗応答(NACK)を送信元の基地局110に送信する(ステップ5)。
【0035】
協調元の基地局110は、端末200からの受信失敗応答(NACK)をMAC層113で受信する(ステップ5)と、該当するデータのHARQによる再送処理を決定する(ステップ6)。そして、協調元の基地局110は、HARQ再送キュー113aに保存されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出し(ステップ7)、その読み出した再送データと、再送用の協調制御情報とを、協調先の基地局120に送信する(ステップ8、9)。この再送用の協調制御情報は、例えば、再送タイミング情報、送信周波数、データの再送処理である旨の情報、変調方式やコーディング方式を指定するMCS情報などを含む。
【0036】
協調元の基地局110は、上記HARQ再送キュー113aから読み出した再送データを、端末200に送信する(10)。一方、協調先の基地局120は、協調元の基地局110から受信した再送データを、再送用の協調制御情報に基づいて端末200に送信する(10’)。以上により、各基地局110、120から端末200に再送データが協調送信される(ステップ10、10’)。端末200は、各基地局110、120から協調送信された再送データの受信に成功すると、その成功した旨を示す受信成功応答(ACK)を協調元の基地局110に送信する(ステップ11)。
【0037】
図6は、図3に示す構成を用いて、協調通信の際に実施することのできる再送処理の二番目の例を示した図である。図に示す方式では、協調元の基地局110のRLC層112に設けられたARQ再送キュー112aにおいて、協調用データの再送処理が行われる。
【0038】
図7は、図6の協調元の基地局110及び協調先の基地局120によるデータ再送処理の一制御例を示すシーケンス図である。図7中の処理のうち図5と同様な部分については、説明を省略する。図7において、協調元の基地局110は、コアノード130から協調送信対象のデータを受信する(ステップ1)と、その協調送信対象のデータを、HARQ再送キュー113aではなく、RLC層112のARQ再送キュー112aに保存する(ステップ2)。協調元の基地局110は、端末200からの受信失敗応答(NACK)をRLC層112で受信する(ステップ5)と、該当するデータのARQによる再送処理を決定し(ステップ6)、ARQ再送キュー123aに保存されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出す(ステップ7)。協調元の基地局110は、その読み出した再送データと、協調制御情報とを、協調先の基地局120に送信する(ステップ8、9)。この再送用の協調制御情報は、例えば、再送タイミング情報、送信周波数、データの再送処理である旨の情報、変調方式やコーディング方式を指定するMCS情報などを含む。上記再送用の送信時刻になると、協調元の基地局110は、上記ARQ再送キュー112aから読み出した再送データを、端末200に送信する(10)。一方、協調先の基地局120は、再送用の協調制御情報に含まれる情報に基づき、協調元の基地局110から受信した再送データを、端末200に送信する(10’)。以上により、各基地局110、120から端末200に再送データが協調送信される(ステップ10、10’)。
【0039】
図8は、図3に示す構成を用いて、協調通信の際に実施することのできる再送処理の三番目の例を示した図である。図8に示す方式では、協調元の基地局110のMAC層113に設けられたHARQ再送キュー113aおよび協調先の基地局120のMAC層123に設けられたHARQ再送キュー123aにおいて、協調用データの再送処理が行われる。
【0040】
図9は、図8の協調元の基地局110及び協調先の基地局120によるデータ再送処理の一制御例を示すシーケンス図である。図9中の処理のうち図5と同様な部分については、説明を省略する。図9において、協調先の基地局120は、協調元の基地局110から協調送信対象のデータを受信する(ステップ3)と、その協調送信対象のデータを、HARQ再送キュー123aに保存する(ステップ4)。つまり、協調送信対象のデータは、協調元の基地局110のHARQ再送キュー113aだけでなく、協調先の基地局120のHARQ再送キュー123aにも保存される。協調元の基地局110は、端末200からの受信失敗応答(NACK)をMAC層113で受信する(ステップ6)と、該当するデータのHARQによる再送処理を決定し(ステップ7)、再送用の協調制御情報のみを協調先の基地局120に送信する(ステップ8)。つまり、協調元の基地局110は、協調先の基地局120に再送データを送信しない。この再送用の協調制御情報は、再送タイミング情報、送信周波数、変調方式やコーディング方式を指定するMCS情報などとともに再送データを特定するためのIDが含まれている。協調元の基地局110は、HARQ再送キュー113aに保存されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出す。一方、協調先の基地局120は、協調元の基地局110から受信した再送用の協調制御情報に基づいて、HARQ再送キュー123aに保存されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出す(ステップ10)。そして、協調元の基地局110は、上記HARQ再送キュー113aから読み出した再送データを端末200に送信し、協調先の基地局120は、再送用の協調制御情報に含まれる情報に基づき、その基地局120内のHARQ再送キュー123aから読み出した再送データを端末200に送信する(ステップ10’)。
【0041】
図10は、図3に示す構成を用いて、協調通信の際に実施することのできる再送処理の四番目の例を示した図である。図10に示す方式では、協調元の基地局110のRLC層112に設けられたARQ再送キュー112aおよび協調先の基地局120のRLC層122に設けられたARQ再送キュー122aにおいて、協調用データの再送処理が行われる。
【0042】
図11は、図10の協調元の基地局110及び協調先の基地局120によるデータ再送処理の一制御例を示すシーケンス図である。図11中の処理のうち図5及び図7と同様な部分については、説明を省略する。図11において、協調先の基地局120は、協調元の基地局110から協調送信対象のデータを受信する(ステップ3)と、その協調送信対象のデータを、ARQ再送キュー122aに保存する(ステップ4)。つまり、協調送信対象のデータは、協調元の基地局110のARQ再送キュー112aだけでなく、協調先の基地局120のARQ再送キュー122aにも保存される。協調元の基地局110は、端末200からの受信失敗応答(NACK)をRLC層112で受信する(ステップ6)と、該当するデータのARQによる再送処理を決定し(ステップ7)、再送用の協調制御情報のみを協調先の基地局120に送信する(ステップ8)。つまり、協調元の基地局110は、協調先の基地局120に再送データを送信しない。この再送用の協調制御情報は、再送タイミング情報、送信周波数、変調方式やコーディング方式を指定するMCS情報などとともに再送データを特定するためのIDが含まれている。協調元の基地局110は、ARQ再送キュー112aに保存されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出す。一方、協調先の基地局120は、協調元の基地局110から受信した再送用の協調制御情報に基づいて、ARQ再送キュー122aに保存されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出す(ステップ10)。そして、協調元の基地局110は、上記ARQ再送キュー112aから読み出した再送データを端末200に送信し、協調先の基地局120は、再送用の協調制御情報に含まれる情報に基づき、その基地局120内のARQ再送キュー122aから読み出した再送データを端末200に送信する(ステップ11、11’)。
【0043】
図12は、図3に示す構成を用いて、協調通信の際に実施することのできる再送処理の五番目の例を示した図である。図12に示す方式では、協調元の基地局110のRLC層112に設けられたARQ再送キュー112a、協調元の基地局110のMAC層113に用いられたHARQ再送キュー113a、協調先の基地局120のMAC層123に設けられたHARQ再送キュー123aにおいて、協調用データの再送処理が行われる。以上により、本構成例は、HARQによる再送処理及びARQによる再送処理の両方に対応することができる。
【0044】
図13は、図12の協調元の基地局110及び協調先の基地局120によるデータ再送処理の一制御例を示すシーケンス図である。図13中の処理のうち図5図9及び図11と同様な部分については、説明を省略する。図13において、協調元の基地局110は、コアノード130から協調送信対象のデータを受信する(ステップ1)と、その協調送信対象のデータを、ARQ再送キュー112aだけでなくHARQ再送キュー113aにも保存する(ステップ2)。一方、協調先の基地局120は、協調元の基地局110から協調送信対象のデータを受信する(ステップ3)と、その協調送信対象のデータを、HARQ再送キュー123aに保存する(ステップ4)。つまり、協調送信対象のデータは、協調元の基地局110のARQ再送キュー112a及びHARQ再送キュー113a並びに協調先の基地局120のHARQ再送キュー123aの3箇所に保存される。
【0045】
本構成例において、協調元の基地局110が、端末200からの受信失敗応答(NACK)をMAC層113で受信した(ステップ6)場合は、該当するデータのHARQによる再送処理を決定し(ステップ7)、再送用の協調制御情報のみを協調先の基地局120に送信する(ステップ8)。この再送用の協調制御情報は、再送タイミング情報、送信周波数、変調方式やコーディング方式を指定するMCS情報などとともに再送データを特定するためのIDが含まれている。また、協調元の基地局110は、HARQ再送キュー113aに保存されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出す。一方、協調先の基地局120は、協調元の基地局110から受信した再送用の協調制御情報に基づいて、HARQ再送キュー123aに保存されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出す(ステップ10)。そして、協調元の基地局110は、上記HARQ再送キュー113aから読み出した再送データを端末200に送信し、協調先の基地局120は、再送用の協調制御情報に基づいて、その基地局120内のHARQ再送キュー123aから読み出した再送データを端末200に送信する(ステップ11、11’)。
また、本構成例において、協調元の基地局110が、端末200からの受信失敗応答(NACK)をRLC層112で受信した(ステップ6)場合は、該当するデータのARQによる再送処理を決定し(ステップ7)、ARQ再送キュー112aに保存されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出す。以降は図8、9に示す手順により再送が行われる。
RLC層における再送(ARQ)処理は、数100msの間隔(例えば、100ms〜150ms間隔)で自動実行され、MAC層における再送(HARQ)処理は、比較的短い数msの間隔(例えば、8ms間隔)で自動実行される。つまり、協調送信において誤りが発生すると、はじめに再送間隔の短いHARQによる再送が行われ、HARQでも誤りが補償できない場合にARQによる再送が行われることになる。図12の構成例及び図13の制御例では、このように協調送信対象のデータについてHARQ再送で失敗した場合およびARQ再送で失敗した場合のいずれにおいても、そのデータの再送処理を確実に行うことができる。
【0046】
なお、上記図4図13の構成例及び制御例において、データ再送処理時に協調元の基地局110から協調先の基地局120へ送信される再送用の協調制御情報は、協調元の基地局110で新たに決定された協調用の周波数リソースの情報を含んでもよい。各基地局110、120と端末200との間に無線通信の品質がより優れた周波数リソースをデータ再送処理に用いることにより、再送データの協調送信をより確実に完了することができる。
【0047】
以上、本実施形態によれば、協調元の基地局110は、何らかの原因によりデータの協調送信に失敗したとき、その協調元の基地局110におけるRLC層112又はMAC層113の少なくとも一つに記憶されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、その再送データと、少なくとも送信時刻の情報を含む再送用の協調制御情報とを協調先の基地局120に送信する。そして、協調元の基地局110は、所定の送信時刻に、前記読み出した再送データを端末200に送信する。一方。協調先の基地局120は、協調元の基地局110から前記協調制御情報を受信し、その協調制御情報に基づいて、所定の送信時刻に、前記受信した再送データを端末200に送信する。このように協調送信対象のデータの協調送信に失敗した場合でも、協調元の基地局110及び協調先の基地局120が連携し、その失敗した協調送信対象のデータを端末200に確実に協調送信することができる。
また、本実施形態によれば、協調元の基地局110は、何らかの原因によりデータの協調送信に失敗したとき、その協調元の基地局110におけるRLC層112又はMAC層113の少なくとも一つに記憶されている協調送信対象のデータを再送データとして読み出し、少なくとも送信時刻の情報を含む再送用の協調制御情報を協調先の基地局120に送信する。そして、協調元の基地局110は、所定の送信時刻に、前記読み出した再送データを端末200に送信する。一方。協調先の基地局120は、協調元の基地局110から前記協調制御情報を受信し、その協調制御情報に基づいて、その協調先の基地局120におけるRLC層122又はMAC層123の少なくとも一つに記憶されている前記協調送信対象のデータを再送データとして読み出す。そして、協調先の基地局120は、所定の送信時刻に、前記読み出した再送データを端末200に送信する。このように協調送信対象のデータの協調送信に失敗した場合でも、協調元の基地局110及び協調先の基地局120が連携し、その失敗した協調送信対象のデータを端末200に確実に協調送信することができる。
また、本実施形態によればデータ再送処理時に協調元の基地局110から協調先の基地局120へ送信される再送用の協調制御情報に、協調元の基地局110で新たに決定された協調用の周波数リソースの情報を含めることにより、再送データの協調送信をより確実に完了することができる。
【0048】
なお、上記実施形態では、各基地局110、120から協調送信されるデータが同じ内容の同一データである場合について説明したが、本発明は、互いに異なる内容のデータを協調送信する場合にも同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 通信システム
110 協調元の基地局(第1の基地局)
120 協調先の基地局(第2の基地局)
111、121 データ収斂プロトコル層(PDCP層)
112、122 無線リンク制御層(RLC層)
112a、122a ARQ再送キュー
113、123 メディアアクセス制御層(MAC層)
113a、123a HARQ再送キュー
114、124 物理層(PHY層)
115、125 基地局間通信部
116、126 スケジューラ
117、127 制御部
128 協調用リソース制御部
130 コアノード
200 端末
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】
【特許文献1】特開2009−171382号公報
【0051】
【非特許文献1】厳 宝山、岡廻 隆生、林 秀樹、「複数基地局間協調送信のためのネットワーク制御システムの基本設計と実装」、電気通信学会2010年電子情報通信学会ソサイエティ大会講演論文集、119頁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13