(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した回復訓練等においては、訓練室の床としては適度な硬さが必要である。また、付き添いを行う理学療法士等の負担も大きなものとなり、複数の患者の面倒を同時に見ることが困難になりつつある。更にこれらにより、従来の歩行アシストロボットは患者の転倒に関して安全性が欠けたものとの認識もあり、その普及の妨げとなっている場合がある。
【0007】
この点につき、上記特許文献1に記載されている歩行補助装置では、上述したような患者の転倒防止の観点については何ら考慮されていない。よって特許文献1に記載されている歩行補助装置では上記の各問題点を解決することはできない。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題点等に鑑みて為されたもので、その課題の一例は、上述したような患者の回復訓練等における補助を自立的且つ安全に行うことが可能な動作補助装置及び当該動作補助装置において用いられる動作補助制御用プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、歩行面上を歩行中における被補助者の動作を補助する動作補助装置において、前記被補助者の脚の膝関節部に装着されており、前記歩行に伴う当該膝関節部の屈曲動作
と、当該歩行に伴う当該膝関節部の伸展動作と、を補助する駆動ユニット等の補助手段と、前記補助手段が装着されている脚の踵が前記歩行面から離れたことを検出する足裏センサ等の踵状態検出手段と、
前記膝関節部の屈曲角度を検出する膝関節角度センサ等の膝関節角度検出手段と、前記脚の股関節部の屈曲角度を検出する股関節角度センサ等の股関節角度検出手段と、前記踵が前記歩行面から離れたタイミングから前記屈曲動作の補助を開始するよう
に前記補助手段を制御する
と共に、前記膝関節部の屈曲角度の最大値に応じて予め設定された閾値角度に前記股関節部の屈曲角度が達したタイミングから前記伸展動作の補助を開始するように前記補助手段を制御するCPU等の制御手段と、を備える。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、踵が歩行面から離れたことを検出し、踵が歩行面から離れたタイミングから膝関節部の屈曲動作の補助を開始するように補助手段を制御するので、被補助者の意思により踵が歩行面から離れたタイミングから屈曲動作の補助を開始することで、被補助者の意思に沿って自立的且つ安全にその動作を補助することができる。
また、膝関節部及び股関節部それぞれの屈曲角度を検出し、膝関節部の屈曲角度の最大値に応じて設定された閾値角度に股関節部の屈曲角度が達したタイミングから伸展動作の補助を開始するので、自然な歩行態様に近い制御により、被補助者に負担をかけることなく安全にその動作を補助することができる。
【0013】
上記の課題を解決するために、請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の動作補助装置において、前記閾値角度を変更するために用いられる操作部等の変更手段を更に備える。
【0014】
請求項
2に記載の発明によれば、請求項
1に記載の発明の作用に加えて、伸展動作の開始制御に用いられる閾値を変更することができるので、被補助者の状態に応じた動作補助ができる。
【0015】
上記の課題を解決するために、請求項
3に記載の発明は、請求項1
又は請求項
2に記載の動作補助装置において、前記補助手段はパルス幅変調方式により変調された駆動信号により駆動される補助手段であり、前記制御手段は、デューティー比が時間軸に沿って台形形状に変化する前記駆動信号により前記補助手段を制御するように構成される。
【0016】
請求項
3に記載の発明によれば、請求項1
又は請求項
2に記載の発明の作用に加えて、補助手段が、パルス幅変調方式により変調された駆動信号であってそのデューティー比が時間軸に沿って台形形状に変化する駆動信号により制御されるので、急激な動作を抑制して被補助者に負担なくその動作を安全に補助することができる。
【0017】
上記の課題を解決するために、請求項
4に記載の発明は、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の動作補助装置において、前記踵が前記歩行面から離れたことが予め設定された時間内に検出されないとき、前記制御手段は前記補助手段を初期化するように構成される。
【0018】
請求項
4に記載の発明によれば、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、一定時間内に踵が歩行面から離れたことが検出されないとき補助手段が初期化されるので、踵が上がらずに被補助者に歩行の意志がないと見なされる時は補助手段を初期化することで、被補助者の意志に拘わらず補助手段が屈曲動作の補助を開始することによる危険性を回避することができる。
【0019】
上記の課題を解決するために、請求項
5に記載の発明は、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の動作補助装置において、前記制御手段は、前記被補助者の右脚に装着されている前記補助手段と、前記被補助者の左脚に装着されている前記補助手段と、を別個独立に制御するように構成される。
【0020】
請求項
5に記載の発明によれば、請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の発明の作用に加えて、補助手段の制御が右脚と左脚とで別個独立に行われるので、制御手段としての処理を簡素化できる。
【0023】
上記の課題を解決するために、請求項
6に記載の発明は、請求項1から請求項
5のいずれか一項に記載の動作補助装置に前記制御手段として備えられたコンピュータを、当該制御手段として機能させる。
【0024】
請求項
6に記載の発明によれば、踵が歩行面から離れたことを検出し、踵が歩行面から離れたタイミングから膝関節部の屈曲動作の補助を開始するように補助手段を制御するコンピュータが機能するので、被補助者の意思により踵が歩行面から離れたタイミングから屈曲動作の補助を開始することで、被補助者の意思に沿って自立的且つ安全にその動作を補助することができる。
また、膝関節部及び股関節部それぞれの屈曲角度を検出し、膝関節部の屈曲角度の最大値に応じて設定された閾値角度に股関節部の屈曲角度が達したタイミングから伸展動作の補助を開始するように補助手段を制御するコンピュータが機能するので、自然な歩行態様に近い制御により、被補助者に負担をかけることなく安全にその動作を補助することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、踵が歩行面から離れたことを検出し、踵が歩行面から離れたタイミングから膝関節部の屈曲動作の補助を開始するように補助手段を制御する。
従って、被補助者の意思により踵が歩行面から離れたタイミングから屈曲動作の補助を開始することで、被補助者の意思に沿って自立的且つ安全に
その動作を補助することができる。
また、膝関節部及び股関節部それぞれの屈曲角度を検出し、膝関節部の屈曲角度の最大値に応じて設定された閾値角度に股関節部の屈曲角度が達したタイミングから伸展動作の補助を開始する。
従って、自然な歩行態様に近い制御により、被補助者に負担をかけることなく安全にその動作を補助することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0028】
本発明を実施するための形態について、
図1乃至
図8を用いて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、例えば膝疾患を持つ患者(被補助者の一例)の回復訓練等としての歩行における膝関節の動作を補助する歩行補助装置に対して本発明を適用した場合の実施形態である。また
図1は実施形態に係る歩行補助装置を患者に装着した際の状態図であり、
図2は実施形態に係る駆動ユニットを患者の両脚に装着した際の状態図である。また
図3は当該歩行補助装置の構成を示すブロック図である。
図4は歩行補助装置における制御パターンを生成する動作例を示すフローチャートである。更に
図5は、当該歩行補助装置における膝関節部及び股関節部の屈曲角度の一例を示す模式図である。
図6は、当該歩行補助装置におけるセンサのデータと制御パターンの一例を示す模式図である。
図7は歩行補助装置における制御動作例を示すフローチャートである。
図8は当該歩行補助装置における他の制御パターンの一例を示す模式図である。
【0029】
図1及び
図2に示すように、実施形態に係る歩行補助装置S(動作補助装置の一例)は、患者の下肢部(両脚)に着脱自在のテープ状固定具やバンド等の固定具6によってそれぞれ取り付けられる補助手段の一例としての一対の駆動ユニット10を備えている。なお以下の説明では、左脚用の駆動ユニット10を駆動ユニット11とし、右脚用の駆動ユニット10を駆動ユニット12として説明する。また駆動ユニット11及び駆動ユニット12に共通する説明を行う場合は、一般に駆動ユニット10として説明する。
【0030】
一つの(即ち、右脚と左脚のいずれか一方用の)駆動ユニット10には、
図1に示すように、患者の膝部5の関節部分に取り付けられ、膝関節を屈曲及び伸展させるリンク機構部3と、患者の股部9の関節部分に取り付けられ、股関節を屈曲及び伸展させるリンク機構部8と、が取り付けられている。
【0031】
先ずリンク機構部3は、
図1に示すように、例えば患者の大腿部に巻きつけられる上部脚当て4の側面に取り付けられる第一リンク3aと、患者の下腿部に巻きつけられる下部脚当て7の側面に取り付けられる第二リンク3bと、駆動ユニット10から動力を得て第一リンク3aに対して第二リンク3bを歩行の前後方向に揺動させる第三リンク3cと、を含んで構成される。第一リンク3aは、患者の腰部側から膝部5側に延びるように取り付けられ、第二リンク3bは患者の膝部5側から脚の先端(地面)側に延びるように取り付けられている。そして第一リンク3aと第二リンク3bとは、患者の膝部5近傍で回動可能に連結されている。
【0032】
この連結部には、第一リンク3aと第二リンク3bとの成す角度を示す膝関節角度データを出力する膝関節角度センサ(膝関節角度検出手段の一例)が内蔵されている。この膝関節角度センサは、例えばいわゆるポテンショメータ等により実現される。また、第三リンク3cの端部が、第二リンク3bの中央近傍に連結されている。上部脚当て4及び下部脚当て7は、それぞれが図示しない一対の脚当て部材を含んで構成されており、当該脚当て部材は患者の大腿部及び下腿部の周囲を覆うように配置され、固定具6によって着脱可能に取り付けられる。また、上部脚当て4及び下部脚当て7は、例えばポリプロピレン樹脂等を成形して形成されており、ユーザの大腿部と接する部分には、伸縮自在の図示しないスポンジ部材等が取り付けられている。
【0033】
一方リンク機構部8は、
図1に示すように、上記した上部脚当て4の側面に取り付けられる第一リンク8aと、患者の腰部に巻きつけられるベルト23の側部に取り付けられる第二リンク8bと、を含んで構成される。第一リンク8aは、患者の臀部側から膝部5側に延びるように取り付けられ、第二リンク8bは患者の腰部側から臀部側に延びるように取り付けられている。そして第一リンク8aと第二リンク8bとは、患者の股部9近傍で回動可能に連結されている。この連結部にも、第一リンク8aと第二リンク8bとの成す角度を示す股関節角度データを出力する股関節角度センサ(股関節角度検出手段の一例)が内蔵されている。この股関節角度センサも、例えばいわゆるポテンショメータ等により実現される。
【0034】
更に
図2に示すように、両脚にそれぞれ取り付けられる駆動ユニット11及び駆動ユニット12には、当該駆動ユニット11及び駆動ユニット12間でデータ通信するための通信ユニット20が着脱可能に取り付けられる。この通信ユニット20は、ケーブル21と、そのケーブル21の途中に配置される通信用基板及び制御用基板並びに電池等が収容された中継ボックス22と、を備え、上記ベルト23によって患者の腰部に取り付けられる。また通信ユニット20は、ケーブル21の両端に非接触でデータを通信可能な通信端子を備えた通信ヘッド25を備えている。一方、駆動ユニット10の筐体10aには、当該通信ヘッド25を挿入可能な孔部10bが設けられており、孔部10bに対して当該通信ヘッド25が着脱可能になっている。なお、上記中継ボックス22内の制御用基板には、実施形態に係る歩行補助装置Sとしての動作を制御する後述のCPU等が装着されている。更に駆動ユニット10は、電力を受電又は所定のデータを通信可能な図示しない通信ヘッドを筐体10aの内部に備えている。そして、駆動ユニット10の筐体10aに有する孔部10bには、通信ヘッド25が挿入されて、非接触で上記図示しない通信ヘッドに電気的に接続され、データ通信可能となっている。
【0035】
次に、実施形態の歩行補助装置Sの構成について、より具体的に
図3を用いて説明する。
【0036】
実施形態の歩行補助装置Sは、
図3に示すように、右足駆動系Rと、左足駆動系Lと、中継ボックス22内の上記制御用基板に備えられた制御手段の一例としてのCPU(Central Processing Unit)42と、患者又は理学療法士等が操作可能な位置に備えられ且つCPU42に対する指令操作を行うための操作ボタン等を備える変更手段の一例としての操作部41と、CPU42に接続され且つ患者又は理学療法士等が視認可能な位置に備えられた液晶ディスプレイ等からなる表示部40と、を備えている。なお、CPU42は、オペレーティングシステムや歩行補助装置Sを制御する制御プログラムや、制御パターンを生成するための制御パターン生成プログラム等のソフトウェアや、検出したデータや、生成した制御パターン等のデータを記憶する記憶部(図示せず)を有している。この記憶部は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク又はシリコンディスク等により構成されている。
【0037】
また各脚の駆動系(右足駆動系R及び左足駆動系L)には、それぞれ、上記駆動ユニット10と、上記固定具6並びに上部脚当て4及び下部脚当て7と、膝関節角度センサ16を含むリンク機構部3と、股関節角度センサ15を含むリンク機構部8と、踵状態検出手段の一例としての足裏センサ17と、が含まれている。駆動ユニット10には、駆動手段の一例としてのDCモータ50と、各リンクに接続されているギア部52と、DCモータ50からの駆動力を、ギア部52を介して各リンクに伝達する駆動手段の一例としてのクラッチ部51と、が含まれている。
【0038】
以上の構成において、DCモータ50の回転方向及び回転速度の制御及びクラッチ部51における開放/接続の制御は、それぞれCPU42により行われる。更に足裏センサ17は、
図1に例示するように右足及び左足の足裏にそれぞれ装着されており、各脚が床又は地面から離れたこと及びそれらに接地したことをそれぞれ示す信号をCPU42に出力する。また膝関節角度センサ16は上記膝関節角度データを生成してCPU42に出力し、更に股関節角度センサ15は上記股関節角度データを生成してCPU42に出力する。
【0039】
次に、
図1乃至
図3を用いて説明した構成を備える歩行補助装置Sにおける制御パターン生成について、具体的に
図4乃至
図6を用いて説明する。
【0040】
まず、歩行補助装置Sが患者に装着され、制御パターン生成の処理が行われる。
【0041】
図4に示すように、歩行補助装置Sは、クラッチ部51を開放する(ステップS1)。具体的には、歩行補助装置SのCPU42は、クラッチ部51を開放し、DCモータ50からリンク機構部3への駆動力の伝達を遮断する。これにより、リンク機構部3が、DCモータ50の永久磁石等による抵抗力の影響を受けずにフリーに動き、患者が脚を動かし易くなる。
【0042】
次に、歩行補助装置Sは、股関節角度センサ15のデータを取得し、股関節角度の補正値を決定する(ステップS2)。歩行補助装置Sを装着した患者が立ち止まった状態のとき、CPU42は、股関節角度センサ15から、第一リンク8aと第二リンク8bとの成す角度θH(股関節部の屈曲角度の一例)を示す股関節角度データを取得し、角度θHの補正値とする。なお、CPU42は、取得した股関節角度データをCPU42の記憶部に記憶する。また、患者に動きがあり、データに変動がある場合、CPU42は、股関節角度データの平均値を算出し、この平均値を角度θHの補正値とする。
【0043】
ここで、
図5(A)に示すように、患者の膝部5の関節部分における角度θkは、患者60の大腿部(第一リンク3aに対応)を基準に測定される。患者の股部9の関節部分における角度θHは、患者60の体幹部(第二リンク8bに対応)を基準に測定され、基準より患者60の大腿部が歩行方向の後方にある場合がプラスであり、歩行方向の前方にある場合がマイナスである。歩行面65は、床又は地面等である。
【0044】
また、
図5(A)は、歩行補助装置Sの装着位置のずれがなく、患者60が直立して歩く場合である。一方、
図5(B)に示すように、患者60が前屈みで歩く等の癖がある場合や、歩行補助装置Sの装着位置のずれがある場合があるので、CPU42は、角度θHの補正値(角度α)として、補正された角度φ=θH−αとして、股関節角度データをステップS2で取得する。
【0045】
次に、歩行補助装置Sを装着した患者60が3、4歩程歩く状態で、歩行補助装置Sは、股関節角度センサ15、膝関節角度センサ16、及び、足裏センサ17のデータを取得する(ステップS3)。具体的には、CPU42は、股関節角度センサ15から角度θHを示す股関節角度データを取得し、膝関節角度センサ16から、第一リンク3aと第二リンク3bとの成す角度θk(膝関節部の屈曲角度の一例)を示す膝関節角度データを取得する。足裏センサ17に関しては、CPU42は、足裏センサ17から、脚が床又は地面等の歩行面65から離れたこと及びそれらに接地したことを示す信号を取得する。
【0046】
図6に示すように、CPU42は、膝関節角度センサ16からの角度θkを示す膝関節角度データを取得し、股関節角度センサ15から角度θHを示す股関節角度データを取得し、足裏センサ17から足裏センサのデータShを取得する。なお、CPU42は、取得した股関節角度データ、膝関節角度データ、及び、足裏センサ17のデータを、CPU42の記憶部に記憶する。
【0047】
次に、歩行補助装置Sは、取得した足裏センサのデータShに基づき足裏センサのデータShの閾値を決定する(ステップS4)。具体的には、CPU42は、
図6に示すように、足裏センサのデータShがLOWからHIGHになったとする閾値(足裏センサON閾値)や、足裏センサのデータShがHIGHからLOWになるとする閾値(足裏センサOFF閾値)を、取得した足裏センサのデータShから設定する。なお、チャタリング防止のため、足裏センサON閾値と足裏センサOFF閾値とは異なってもよい。
【0048】
次に、歩行補助装置Sは、足裏センサ17のデータに基づき、歩行周期、遊脚期、及び、立脚期を特定する(ステップS5)。具体的には、CPU42は、
図6に示すように、足裏センサのデータShがHIGH(脚が床又は地面から離れた状態)になった時点taから、足裏センサのデータShがLOW(脚が床又は地面に接地した状態)になった時点tdを経て、再び足裏センサのデータShがHIGHになった時点teまでの期間T3(踵の離床時(ta)から、次の踵の離床時(te))を歩行周期として特定する。そして、CPU42は、
図6に示すように、足裏センサのデータShがHIGHになった時点taから、足裏センサのデータShがLOWになった時点tdを遊脚期の期間T2(踵の離床時(ta)から踵の着床時までの時間(td))として特定し、足裏センサのデータShがLOWになった時点tdから、再び足裏センサのデータShがHIGHになった時点teまでを立脚期(T3−T2)として特定する。
【0049】
なお
図6において、「立脚期」とは、歩行において左右いずれか一方の脚に患者の体重がかかっている期間を示す。また「遊脚期」とは、歩行において当該いずれか一方の脚に患者の体重がかかっていない期間(換言すれば、次の立脚期に移行するためにその脚を床又は地面から離して(浮かせて)前に移動させている期間)を示す。
【0050】
次に、歩行補助装置Sは、膝関節角度のデータのピーク箇所を特定する(ステップS6)。具体的には、CPU42は、取得した膝関節角度センサ16からの角度θkを示す膝関節角度データが、遊脚期において最大となるピーク箇所θkp、即ち、膝関節部の屈曲角度が最大値になる極値タイミングtbを特定する。この膝関節部の屈曲角度の最大値は、
図5(A)に示すように、患者60の大腿部を基準とした値であり、膝は最も屈曲した状態である。
【0051】
次に、歩行補助装置Sは、股関節に関する閾値角度を設定する(ステップS7)。具体的には、CPU42は、極値タイミングtbにおける股関節角度データである角度θH1を求め、股関節に関する閾値角度θH1とする。なお、閾値角度θH1は、
図6に示すように、屈曲動作補助期間T1(踵の離床時taから膝関節のピークθkpの極値タイミングtb)を設定するために利用される。
【0052】
次に、歩行補助装置Sは、屈曲動作トリガ及び伸展動作トリガを設定する(ステップS8)。具体的には、CPU42は、制御パターンにおいて、遊脚期における補助の制御(特に屈曲動作の補助制御)を開始する補助開始トリガ(屈曲動作トリガ)を、足裏センサ17のデータが足裏センサON閾値以上のとき(踵の離床時ta)と設定する。またCPU42は、制御パターンにおいて、遊脚期における補助の制御(特に伸展動作の補助制御)を終了する補助終了トリガを、足裏センサ17のデータが足裏センサOFF閾値以下のとき(踵の着床時td)と設定する。そして、CPU42は、制御パターンにおいて、遊脚期における屈曲動作の補助制御から、伸展動作の補助制御に切り替えるための伸展動作トリガを、股関節角度センサ15のから角度θHを示す股関節角度データが、閾値角度θH1以下になったとき(極値タイミングtb)と設定する。
【0053】
次に、歩行補助装置Sは、膝関節制御用の駆動信号のパターンを生成する(ステップS9)。具体的には、CPU42は、PWM(Pulse Width Modulation)のデューティー比が、
図6に示すように、時間軸に沿って台形形状に変化する駆動信号Dを生成する。
図6に示すように、歩行補助装置Sにおいて補助動作の制御をt1からt7の時間に割り当て、脚の踵が床又は地面から離れた状態になった時点taを歩行の起点(補助の起点)とし、屈曲動作における駆動信号Cの立上り時間を時間t1とし、PWMのディーティー比が100%の持続時間をt2とし、立下り時間をt3とし、正の台形波形とする。なお、時間t1において、起動を早くするため、デューティー比が0%からではなく、CPU42は、例えば35%位からスタートさせる。また、伸展動作の立下り時間をt4とし、PWMのデューティー比が−100%の持続時間をt5とし、立上り時間をt6とし、負の台形波形とする。また、CPU42は、生成された制御パターンをCPU42の記憶部に記憶する。
【0054】
なお、駆動信号Cに関して、立上り、立下り時間は、例えば、t1、t3、t4、t6=0.1秒とする。そして、持続時間t2は、屈曲動作補助期間T1から、t2=T1−t1−t3のように算出される。持続時間t5は、屈曲動作補助期間T1と遊脚期の期間T2から、t5=T2−T1−t4−t6のように算出される。
【0055】
立脚期における時間t7は、脚の屈曲、伸展動作が終了しても、歩行補助装置Sにおける機械の原点出しをするための伸展延長時間である。時間t7は、歩行周期の期間T3と、遊脚期の期間T2とから、t7=a×(T3−T2)のように算出される。ここで、係数aは0〜1の値である。a=1の場合は、立脚期の間中、少しずつ伸展動作の力が、脚に加えられることになる。
【0056】
次に、歩行補助装置Sにおける制御時の動作について、
図7を用いて説明する。
【0057】
歩行補助装置Sにおける制御時の動作においてCPU42は、駆動信号Dの制御パターンを記憶部から読み出し(ステップS10)、その制御パターンに従い、歩行補助装置Sを装着した患者60の動作を補助する。即ちCPU42は、動作の補助が開始されると、例えば、患者の片方の脚(例えば、右脚)の足裏センサ17のデータが足裏センサON閾値以上となったか否かを監視している(ステップS11)。ステップS11の監視において足裏センサ17のデータが足裏センサON閾値以上となっていない場合(ステップS11;NO)、CPU42はそのまま監視を継続し、患者が右脚を上げることで右足駆動系Rの足裏センサ17のデータが足裏センサON閾値以上になったときに(補助開始トリガが感知されたとき。ステップS11;YES。)、CPU42は、駆動信号Dの制御パターンに従い、PWMのデューティー比を漸増させて右足駆動系RのDCモータ50を駆動させ始める(ステップS12)。そして、ギア部52及びクラッチ部51を介して、リンク機構部3に駆動力が伝達し、患者の右脚の膝が屈曲され始める。これと並行してCPU42は、股関節角度センサ15からの角度θHを示す股関節角度データのモニタを開始する(ステップS12)。
【0058】
次にCPU42は、駆動開始から時間t1(
図6参照)が経過したか否かを判定し(ステップS13)、時間t1が経過していないときは(ステップS13;NO)そのまま屈曲動作を継続させ、一方時間t1が経過したとき(ステップS13;YES)、CPU42は、PWMのデューティー比を100%にする(ステップS14)。
【0059】
次にCPU42は、駆動開始から時間(t1+t2)(
図6参照)が経過したか否かを判定し(ステップS15)、時間(t1+t2)が経過していないときは(ステップS15;NO)、PWMのデューティー比を100%としたまま屈曲動作を継続させ、一方時間(t1+t2)が経過したとき(ステップS15;YES)、CPU42は、PWMのデューティー比を漸減させ始める(ステップS16)。そして、患者の右脚の膝にかかる駆動力が減少し始める。
【0060】
次にCPU42は、駆動開始から時間(t1+t2+t3)(
図6参照)が経過したか、又は、股関節角度センサ15から角度θHを示す股関節角度データが閾値角度θH1以上になったか否かを判定する(ステップS17)。ステップS17の判定において、駆動開始から時間(t1+t2+t3)が経過しておらず、且つ角度θHを示す股関節角度データが閾値角度θH1以上になっていない場合(ステップS17;NO)、CPU42はそのまま屈曲動作を継続させ、一方駆動開始から時間(t1+t2+t3)経過、又は、角度θHを示す股関節角度データが閾値角度θH1以上になったとき(伸展動作トリガが感知されたとき。ステップS17;YES)、CPU42は、遊脚期における屈曲動作の補助制御から、伸展動作の補助制御に切り替える(ステップS18)。PWMのデューティー比がプラスからマイナスへと反転する。ここで、
図6に示すように、膝関節角度センサ16からの角度θkを示す膝関節角度データが極値タイミングtbは、股関節角度センサ15から角度θHを示す股関節角度データが極値になるタイミングtc(股関節部が前方に出始めるタイミング)より前にあるので、歩行補助装置Sは、タイミングtcよりも早めに伸展動作の補助を行う。
【0061】
次にCPU42は、伸展動作開始から時間t4(
図6参照)が経過したか否かを判定し(ステップS19)、伸展動作開始から時間t4が経過していないときは(ステップS19;NO)そのまま伸展動作を継続させ、一方伸展動作開始から時間t4が経過したとき(ステップS19;YES)、CPU42は、PWMのデューティー比を−100%にして伸展動作を継続する(ステップS20)。
【0062】
次にCPU42は、伸展動作開始から時間(t4+t5)(
図6参照)が経過したか否かを判定し(ステップS21)、時間(t4+t5)が経過していないときは(ステップS21;NO)、PWMのデューティー比を−100%としたまま伸展動作を継続させ、一方時間(t4+t5)が経過したとき(ステップS21;YES)、CPU42は、PWMのデューティー比を漸増させ始める(ステップS22)。
【0063】
次にCPU42は、伸展動作開始から時間(t4+t5+t6)(
図6参照。遊脚期の期間T2)が経過したか、又は、右足駆動系Rの足裏センサ17のデータが足裏センサOFF閾値以下になったか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23の判定において、伸展動作開始から時間(t4+t5+t6)が経過しておらず、且つ足裏センサ17のデータが足裏センサOFF閾値以下になっていない場合(ステップS23;NO)、CPU42はそのまま伸展動作を継続させ、一方伸展動作開始から時間(t4+t5+t6)経過したら、又は、右足駆動系Rの足裏センサ17のデータが足裏センサOFF閾値以下になったとき(補助終了トリガが感知されたとき。ステップS23;YES)、CPU42は次に、歩行補助装置Sにおける機械の原点出しをするため、PWMのデューティー比を0%にせずに、−30%程で、伸展動作の延長を行う(ステップS24)。そしてCPU42は、遊脚期が終了してから時間t7(
図6参照)が経過したか否かを判定する(ステップS25)。ステップS25の判定において時間t7が経過していない場合(ステップS25;NO)、CPU42はそのまま伸展動作の延長を継続する。一方時間t7が経過したとき(ステップS25;YES)、CPU42は、右脚についての補助を終了する。
【0064】
なお、左足駆動系Lが装着されている場合には、歩行補助装置Sは、左足駆動系Lに関しても同様の制御を行う。
【0065】
以上説明したように、実施形態に係る歩行補助装置Sの動作によれば、患者60の踵が歩行面から離れたことを検出し、踵が歩行面から離れたタイミングから膝関節部の屈曲動作の補助を開始するようにDCモータ50を制御するので、患者60の意思により踵が歩行面から離れたタイミングから屈曲動作の補助を開始することで、患者60の意思に沿って自立的且つ安全にその動作を補助することができる。
【0066】
また、膝関節部及び股関節部それぞれの屈曲角度を検出し、膝関節部の屈曲角度の最大値に応じて設定された閾値角度θH1に股関節部の屈曲角度が達したタイミングから伸展動作の補助を開始するので、自然な歩行態様に近い制御により、被補助者に負担をかけることなく安全にその動作を補助することができる。
【0067】
更に、DCモータ50が、PWMにより変調された駆動信号Dであってそのデューティー比が時間軸に沿って台形形状に変化する駆動信号Dにより制御されるので、急激な動作を抑制して被補助者に負担なくその動作を安全に補助することができる。
【0068】
更にまた、DCモータ50の制御が右脚と左脚とで別個独立に行われるので、CPU42としての処理を簡素化できる。
【0069】
次に、
図8を用いて、歩行補助装置Sにおける他の制御パターンの一例について説明する。
図8は、実施形態に係る歩行補助装置Sにおける他の制御パターンの一例を示す模式図である。
【0070】
実施形態に係る閾値角度θH1は、例えば操作部41における操作により、例えば患者60又は理学療法士の意思により変更可能とされている。この場合、例えば
図8に示すように、設定された閾値角度をθH1からθH2に変更すると、駆動信号D2の制御パターンにおいて、遊脚期における屈曲動作の補助制御から、伸展動作の補助制御に切り替えるタイミングtfが時間(tb)よりも早くなる。即ち、患者の脚に対して、早めに伸展動作の補助動作が開始され負荷として働き、リハビリ効果を高めることができると共に、患者60の状態に応じた動作補助ができる。なお閾値角度θH2の値は、患者の状態、リハビリのスケジュール等に応じて決定される。ここで、PWMのデューティー比が100%の持続時間t8が、駆動信号Dの制御パターンにおける持続時間t2よりも短くなり、PWMのデューティー比が−100%の持続時間をt9が、駆動信号Dの制御パターンにおける持続時間t5より長くなる。
【0071】
また、歩行補助装置Sは、踵が歩行面65から離れたことが予め設定された時間内に検出されないとき、補助手段(駆動ユニット10、11、12)を初期化する制御パターンを生成してもよい。例えば、患者
が立ったままの状態
で歩こうと
しない場合、患者に歩行の意思がないとみなし、歩行補助装置Sは、駆動ユニット10、11、12の状態をリセットさせ、一連の歩行の制御パターンの発生を停止させる。この場合、一定時間内に踵が歩行面65から離れたことが検出されないとき、補助手段(駆動ユニット10、11、12)が初期化されるので、患者に歩行の意思がない状態で脚を上げても補助動作が行われないため、患者の意思に反するような形で補助をすることを防止でき、また、クラッチ部51が開放され患者が脚をフリーに動かせるので、歩行補助装置Sによる被補助者の動作補助上の利便性を向上させることができる。更には、患者60の意志に拘わらずDCモータ50が屈曲動作の補助を開始することによる危険性を回避することができる。
【0072】
なお、上述した実施形態では、膝疾患を有する患者の回復訓練等としての歩行を補助する歩行補助装置Sに対して本発明を適用した場合について説明したが、これ以外に、回復訓練等との一環としての駆け足等の移動を補助する移動補助装置に対して本発明を適用することもできる。
【0074】
更に、
図4又は
図7に示すフローチャートに対応するプログラムをフレキシブルディスク、コンパクトディスク又はハードディスク等の記録媒体に記録しておき、又はインターネット等のネットワークを介して取得して記憶しておき、それを汎用のマイクロコンピュータで読み出して実行することにより、当該マイクロコンピュータを実施形態に係るCPU42として動作させることも可能である。